世の中のすべての萌えるを。

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きのうものすごい、恐ろしい体験をした

1 :名無しさんちゃうねん :2002/08/18(日) 15:15
夜、部屋に一人っきりのとき
どこからともなく・・・
壁のむこうから誰かの喘ぎ声が聞こえてきたんや・・・




みたいな感じで書いていってやー。

37 :名無しさんちゃうねん :2003/09/24(水) 01:51 ID:???
 彼女たちが高校を卒業してから、四ヶ月ほどの時が流れた。
 大学生となった彼女たちに、長い夏休みが訪れる。高校の頃の夏休みとは桁
違いの日数を、自由に費やせるのだ。
 そこで提案されたのが、みな揃っての旅行である。
 皆、例年どおり美浜ちよの別荘に行く心づもりであった。しかし、美浜ちよ
自身が、留学先でごたごたと雑事が絶えぬらしく、都合のあう日がなかったた
め、今年は彼女ぬきで集まることと相成った。

 数度にわたる電話やメールのやりとりから定められた事項は次の通り。
 集合場所は、海岸沿いの旅館の一室。
 集まる人数は、智、暦、春日歩、榊、神楽にかおりんを加えた六人である。
はじめ、暦はかおりんを呼ぶことには否定的であった。なぜなら、現在彼女は
大学受験のため浪人中の身。『天王山』とも呼ばれる夏の貴重な時間のうち数
日を遊んで暮らすのは、かおりんにとってあまりにも危険であると暦は考えた
のである。
 しかし、仕切り役の智は、暦の危惧にまるでとりあわなかった。
「去年の夏だって、ちよちゃんの別荘にみんなで行ったじゃん? 数日勉強し
てないからって、どうってことないって。それに受験生にも息抜きは必要だし
さー」
 軽口を叩き、直後にかおりんに誘いをかけたのである。
 勿論、はじめ、かおりんは遊びに行くことに乗り気ではなかった。
 しかし、「榊も来る」と智が告げた途端にかおりんの態度は豹変し、鼻息も
荒く二つ返事で誘いを受け入れたのである。
――彼女の受験生活は、よほど潤いに欠けたものであるようだ。  (1/5)

38 :名無しさんちゃうねん :2003/09/24(水) 01:51 ID:???
 約束の日。
 かおりんは、足どりも軽く、集合場所である海岸沿いの旅館に向かった。
 夕陽が赤い。一日じゅう夏の日差しを受けとめていたアスファルトの舗道か
ら、むっとする熱気が立ちのぼってくる。地面から流れる暖気の渦が、体全体
にまとわりつきながら空気に溶け込んでゆく。
 額から流れる汗を、手にした花柄のハンカチでさっと拭った。
「暑いなあ」
 呟いた。
 その顔には笑みがのぞいている。
 頬が心もち赤いのは、暑さのためばかりではない。

 海を眺めながら坂を登りつめると、しばらく先の道筋に旅館が見えた。
「はたごや……はたごや」
 手元のメモ用紙と行く先に見える看板の文字を見比べ、確かめる。遠くの文
字がよく見えないので、看板を見やる時に少し目を細めた。勉強のしすぎで少
し視力が落ち……もとい、視力が悪くなったのかもしれない。
 ともあれ、行く手に見える旅館は彼女が目指している場所に間違いないとい
うことが確認できた。懐かしい友たち、そして憧れの人と再び会える喜びに、
かおりんはすっかり有頂天になって急ぎ足で坂道を下ったのである。(2/5)

39 :名無しさんちゃうねん :2003/09/24(水) 01:51 ID:???
 302号室。
 木目の鮮やかな薄茶色の扉の前に立ち、かおりんは胸に手を当てた。
 目を閉じ、大きく息を吸い込む。
 ゆっくりと息を吐き終えると、ノブに手を伸ばし、扉を押し開けた。
 がちゃと音がして、戸が開く。
 玄関と部屋の間に、山の絵が描かれた襖があった。
「来たよー」
 声をかけながら、襖を横にひいた。
 部屋は畳敷き、中央にテーブルがおかれていて、左側の壁には押入れ、右側
の壁には寝るときにテーブルをたてかけて置けるだけのスペースがあった。部
屋の奥には大きな窓があり、窓の向こうには海の見えるベランダがある。
 そして、テーブルの周りには智、暦、大阪、神楽が座っていた。それぞれの
手元に湯のみとカードがある。どうやら、トランプか何かをしているところの
ようだ。
「お、きたかかおりん」
 神楽がトランプから目を離し、入ってきたかおりんに声をかけた。
「ひさしぶりー」
 他の三人も、続いて挨拶する。 
 一人足りない。
「あの、榊さんは?」
 かおりんは、部屋を見回しながら四人に尋ねた。
 答える者はなかった。
 皆、顔をうつむけ、黙っている。
「……どうか、した?」
 かおりんが問いかけた。四人は頭を寄せ、ひそひそと何か話し合っている。
「どうしたのよー」
「……かおりん、何も聞いてないのか?」
 不満げに声を上げたかおりんに、暦が低い声で言った。
「……榊は――、ここに来る途中、交通事故で死んだんだ」     (3/5)

40 :名無しさんちゃうねん :2003/09/24(水) 01:51 ID:???
 放心状態だった。
 温泉に入っているときも、夕飯を食べるときも、彼女はうわのそらだった。
 他の四人も、元気がない。
 そうこうして、間もなく寝る時間がやってきた。
 いつもならばはしゃいで枕投げなどをするであろう智も、さすがに今日はお
となしく布団にもぐる。
「それじゃ、電気消すよ」
 全員が布団に入ったのを確認して、暦がスイッチに手を伸ばした。
 その時である。
 扉をノックする音がした。
「は、はい」
「……遅れた……」
 かおりんが反射的に起き上がりながらノックに応じると、ドアの向こうから
聞き覚えのある声が聞こえた。低い、静かな声がひとつ――まさしく、それは
ここに来る途中交通事故で死んだはずの榊の声だった。 
「榊さん!」
 かおりんは、叫ぶと、電気仕掛けの人形のように立ち上がった。
「待て、かおりん!」神楽が遮った。
「あいつは……死んだんだ」暦が静かに呟く。
「ドアを開けちゃだめだかおりん、連れて行かれるぞ」智が布団の中で震えながら叫ぶ。
「こんな時は死んだふりやー」大阪はそう言って目を閉じた。
 かおりんは、止まらなかった。
 神楽を押しのけ、入り口に走った。
(榊さん――榊さん!)
 ドアに飛びつき、鍵を開けた。                 (4/5)

41 :名無しさんちゃうねん :2003/09/24(水) 01:52 ID:???
 目の前に、榊の長身があった。
 長い黒髪、切れ長の眼、筋の通った細い鼻、小さな口――
 昔のままの、榊だった。
「榊さん……」
 かおりんは、うっとりと榊を見つめる。
「……かおりん」
 榊が、口を開いた。
「……今回のことは、……残念だったな」
「え?」
「……まだ、聞いてないのか。
 あいつら四人は、ここに来る途中、交通事故で……死んだんだ」
「えっ!」
 榊の言葉に驚き、振り返って見ると、部屋の中には誰もいなかった。 (5/5)

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