世の中のすべての萌えるを。

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きのうものすごい、恐ろしい体験をした

1 :名無しさんちゃうねん :2002/08/18(日) 15:15
夜、部屋に一人っきりのとき
どこからともなく・・・
壁のむこうから誰かの喘ぎ声が聞こえてきたんや・・・




みたいな感じで書いていってやー。

573 :@小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:11 ID:???
【隧道】


《大阪のはなし》

「あっ!榊さん。夕食の買い物ですかー?」
「あー。榊ちゃんやー」
日曜の午後のこと、榊がスーパーで買い物をしていると、ふいに声をかける者が現れた。
ふり返ると、美浜ちよと大阪こと春日歩が買い物かごを下げて立っていた。
「うん…。お母さんから頼まれたんだ。ちよちゃんも、夕食の材料を?」
榊がちらっとちよの買い物かごを見ると、既にキャベツや肉、牛乳が入っている。
「はい。そうですよ。今日は私が炊事当番なんです」
「え?ちよちゃんが作るのか…。凄いな…」
榊はちよがエプロン姿で台所に向かって料理をしている場面を想像して頬を赤らめた。
「榊ちゃんとこは、今夜はなんなんー?」
大阪が榊の買い物かごを覗く。
「え…と。たぶん、寄せ鍋だと思う…」
「寄せ鍋かー。ええなー。あ、そや。ウチはなんやと思うー?」
大阪のかごには、カレールーの素と、ジャガイモ、人参、葱、豚の細切れ肉が入っている。
「カレーライス…かな?」
「惜しいなー。ウチは今晩はカレーうどんやー。うどんは今から買うんや」
「あ。それで葱を買ってたんですね」
ちよもカレーライスだと思っていたらしい。
「…ちよちゃんは?何を作るの?」
「回鍋肉と、中華スープと、中華サラダですよ」
「わー。ちよちゃんは今晩は中国人や。冷しゃぶにする榊ちゃんは日本人や。ほならカレーうどんの私は何人やろなー?」
「大阪さんったら…」
3人は会話を弾ませながら、一緒に買い物をした。

574 :A小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:12 ID:???
「…そういえばなー」
買い物をしながら、大阪が切り出した。
「うちからは回り道になるんやけど、○○駅の近くに高架下をくぐる道路があるやろ」
「うん」
「あそこ、出るらしいで」
「…な、何が?」
榊はうわずった声で聞き返す。
「これ」
大阪はニヤリと口の端を吊り上げて笑いながら、右手を高めに、左手を低めにだらんとさせて、幽霊のまねをした。
「昼でも暗いあそこはな、女の人の霊が出るそうやでー。」
「お、大阪さんー。恐い話は止めてください。私も榊さんも恐いのは苦手ですー」
「その人全身血だらけで濡れたようになっていてなー。
 交通事故で死んだ人だとか、事件に巻き込まれてあの高架下で殺された人とも言われてるらしいんや」
「やーめーてー」
「………」
ちよが耳を塞いで怖がったので、大阪はあわてて話を止めた。
「あ、ごめん、ごめん。かんにんや。雨の日しか出ないらしいから。
 今日は晴れてるし、予報でも降水確率低かったからきっと大丈夫や」
「そ、そうなんですか。ホッとしました」
しかし、この季節の大気の状態というのは実に不安定であり、天気予報もそうは当てにならない。
3人が揃って買い物を済ませスーパーを出てみると、来たときには晴れていたはずの空は
雲が低く下がってどんよりとしており、今にも降り出しそうになっていた。
ちよと榊はジト目で大阪を見る。
「だ、大丈夫や。噂話やし、通らなければ問題あらへんし」
大阪は慌ててフォローした。
「大阪さんは回り道かも知れませんけど、私と榊さんはあそこを通るんですよー」
ちよは即座に反論する。
「…降らないウチに行けば、少し遠回りしてあそこを通らずに行けるかも知れない…」
「そやそや。降らないうちに帰ればいいんや。ほ、ほな、さいならー」
「あ、大阪さん」
「さ、ちよちゃん。急ごう」

575 :B小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:13 ID:???
《異界への分岐点》

ちよは大阪の後ろ姿を恨めしげに見送ったが、すぐに気を取り直して自転車をこぎ出した。
ちよはいつもより急いでこぎ、榊もちよのペースに合わせて自転車を走らせた。
しかし、あともう少しで例の高架下と回り道との分岐という辺りで、頬に冷たい物が当たり始めた。
空を見上げるとさっきよりも雲が低く垂れ込めている。
そして、

ピカーーーッ        ドドドドドーーー

と突然の雷。雷が苦手な2人にとっては最悪の事態である。
ちよの身体が硬直した。榊も顔面蒼白になっている。
2人はとりあえず雨をしのごうと高架下に入った。

この高架下の隧道は長さ30m程度で、対向2車線の車道と狭い歩道がガードレールで仕切られている。
どこにでもあるような隧道なのだが、車通りも人通りもあまり多くはない。
随道内の照明は定期的な保守点検がされていないのか、ぼんやりとしていて照明と言うにはその役割を
果たしていないような代物だった。また、雨のせいもあるが、空気は湿っぽく淀んでおり
あまり長くいると気分が悪くなりそうである。
2人にとってはいつもの見慣れた風景のはずなのだが、大阪からあんな話を聞かされた後で
改めて見るとけっこう不気味な条件を揃えた隧道であることに気付く。
否応無しにこの風景から恐怖心と想像力がかき立てられ、入るのを躊躇してしまう。
回り道をすればここを通らずに済むが、家までの行程は倍近くなる。その間雷雨に曝されることになる。
ここを通れば早く家に着くが、出来れば見たくない物を見てしまうかも知れない。
外は雷雨、しかし幽霊は恐い。究極の選択である。

ピカーーーーーーッ       バリバリバリッ ズドドドドドォーーー

再び曇天が雷光に照らされ、空を割らんばかりの雷鳴が轟いた。
結局、雷に背中を押されるかたちで、2人は高架下を進んでいった。

576 :C小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:14 ID:???
「…あれ?」
隧道に入ったとき、榊は思わず声を出した。
「ど、どうかしましたか?榊さん?」
ちよが怯えた表情で榊を見上げる。
「…い、いや。なんでもない…」
「そ、そうですか?本当になんでもないですよね?」
「う、うん。私の気のせいだ…。ごめんね」
この隧道は、2人が居る側から抜けると反対側で上り坂になるため、
向こう側から入ってくる車や人が入口手前からでも確認できる。
2人が隧道に入る前、榊には向こう側から入ってくる自転車が見えた。
狭い歩道なので一旦外に出て待った方がいいかなと思ったので、その自転車を見たのは確かなはずだった。
しかし、今、隧道の中には自分たち以外には誰もいない。
入ってきたのなら、今前方に見えているはずだ。
(引き返したのかな?きっとそうに違いない。そういうことにしておこう)
「ちよちゃん、行こう。本降りになる前に」
榊は後のちよを気にしながら、自転車を走らせ始めた。ちよもそれに続く。
ほぼ同時に、雨が強く降り出した。

577 :D小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:14 ID:???
《佇む者》

榊は前方の出口からの外明かりを頼りに、自転車を走らせた。
後ろでは、ちよが置いてかれまいと必死にこいでいる。
短い隧道なのだが、今はとても長く感じられる。

ふと、前方の歩道上に誰かが立っているのが見えた。
入ったときには見えなかったため、まるで突然わいて出てきたような錯覚を覚える。
出口から差し込む淡い明かりのシルエットからして、女の人のようであった。
大阪が言っていたことが、榊の脳裏をよぎる。
『女ノ人ノ霊ガ出ルソウヤデー』
噂話だ…!噂話だ…!
榊は自分に言い聞かせた。
歩道は歩行者の脇を自転車ですり抜けるには狭すぎる。
自転車を降り、押しながら横を通るしかない。
榊が降りると、ちよもそれに続いて降りた。
「榊さん…あの人…」
ちよが不安げに榊に話しかける。
「大丈夫…」
答えたが、心なしか声が震える。

近づくにつれて、女の姿がはっきりと見えてきた。
服装からしてOLらしく、雨をしのいでたのか、上着を頭上に被せて両手で持ちながら立っている。
顔は俯いているのと、上着と長い前髪で隠れているのとではっきりとは見えないが、全体の雰囲気から若く見えた。
女はしばらくここで雨をやり過ごすためか、一向に動く気配はなく、ただそこに佇んでいる。
榊は軽く会釈をし、その女の脇を通り抜けようとしたが、・・・
「……ちゃった…」
すれ違いざま女が何かを言った。
何と言ったのか聞き取れず、榊は反射的に「え?」とふり返ってしまった。ちよも女の顔を見上げる。
「…濡れ…ちゃった…」
2人の足が止まった。無視してやり過ごせばいいものを、つい女の方を見てしまう。
「わたし…こんなに…濡れちゃった…」

578 :E小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:15 ID:???
間近で見ると、女は全身ずぶ濡れだった。
前髪の先や、服の裾からはポタポタと滴が垂れている。
ただ、その滴は暗がりで分かりにくいが、赤くてやや粘りけがあるように見えた。
『ソノ人全身血ダラケデ濡レタヨウニナッテイテナー』
再び大阪の言葉が頭をよぎる。
この女をずぶ濡れにしている赤い液体は…、ひょっとすると…。
そう思った途端、2人の鼻腔を生臭ささと鉄臭さが混ざったような異臭が刺激した。

ザーーーーーーーッ

雨音は一層強くなり、隧道の中に響き渡る。
女は、俯いたままじっと佇んでいる。
榊とちよは、金縛りにあったように動けない。

579 :F小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:16 ID:???
《狩り》

ふいに、女が動いた。
ゆらりと、緩慢な動作で腕を下ろし、顔を両手で覆い、そしてゆっくりとだが榊たちの方へ向き直った。
鈍い照明に照らされて赤くヌメヌメと光る手は、時折その指の隙間から赤い液をブジュッブジュッと
嫌な音を立てながら溢れさせる。
女は顔を覆う手の指を徐々に広げ、その隙間から目らしきものを覗かせ始めた。

「キャーーーーーーーー!!」
榊もちよも、堪えていた恐怖心をはじけさせた。
派手にガシャガシャと音を立てながら自転車に跨り、勢いよくペダルを踏む。
互いに互いを気遣う余裕もなく、がむしゃらに自転車を漕いで
とにかくその場から逃げようとした。
恐怖で足がすくんでいるせいか、ペダルがとても重たい。
出口まであと20m足らずだったが、遙か遠くに感じられた。

どれくらいの時間を走ったのか、何とか隧道を出たときには雨足も弱まり、
東の空は夜のように暗いが、西の空には晴れ間も見えていた。
榊は崩れ落ちるように自転車を降り、そのままその場にへたり込んだ。
そして気が付いた。
ちよちゃんがいない。

榊は狼狽した。
一緒に走り出したのは覚えているのだが、今ここには自分しかいない。
ちよちゃんはどうしたのだろうか?
振り返り隧道の中を覗いてみるが、中は相変わらずぼんやりと暗く、向こうの出口の光以外はよく分からない。
彼女はまだ出て来ていないのか。
もう一度目を凝らす、がやはり分からない。
榊は自転車のスタンドを立てると、意を決して隧道の中へ入っていった。

580 :G小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:17 ID:???
《ちよ狩り》

ちよは自転車を必死で漕いでいた。
あの妙な女の人から離れようと無我夢中で自転車を漕いだが、気が付くと一人で走っていた。
前を走っていた榊はとうに先へ行ってしまったようである。
前方にぼんやりと見える出口には彼女の影は見えない。
もう榊さんはこの隧道から出ていってしまったのだろうか?
それにしても何と遠い出口なのか。
いつもならどんなにゆっくりこいでも、ものの十数秒もあれば出られる隧道である。
それが今はまるでkm単位に長いトンネルのようだ。
一人で走っている心細さと、大した距離もないはずなのに一向に出口へ近付けない
この理解し難い状況に、彼女の心は挫けてしまいそうだった。

ふと、ちよの周囲が薄暗くなった。
下を見ると、自分のややはっきりと見える影よりも2回りほど大きな影が、ぼんやりと囲うように重なっていた。
その影は、自分の挙動とは関係無しに左右へフワフワと揺れ、気のせいか徐々に大きくなってきている。
誰かが後ろにいる?
そう思った瞬間、背後から
「ウフフフッ」
と女の笑い声が聞こえた。
一瞬にして、ちよの全身に鳥肌が立った。
「うわあぁぁぁぁん」
今まで堪えてきたモノが弾け、思わず泣き叫ぶ。

背中に悪寒が走った。
直後、何者かが背後から腕を回して覆い被さり、ちよの耳元で囁いた。

「つ か ま え た…」

冷たい腕だった。しかも真っ赤な液体でヌラヌラと濡れている。
ふりほどこうと身体を振ろうとしたが、次第に服を浸透して肌に触れてくる液体の感触に身体が強張った。
右側から何者かが顔を覗こうとしてくる。
鼻腔を刺激する強い鉄臭。
視界の隅に映るのは真っ赤なサッカーボール大の塊。
ちよはその豊かな想像力で、何が自分を覗こうとしているのかを理解してしまい、そして…。
自らの意志で気絶した。
遠のく意識の中、ちよは誰かに腕を引っ張られるのを感じた。

581 :H小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:18 ID:???
《帰還》

「…よちゃーん、ちよちゃーん、どないしたんやー?しっかりしぃー」
ちよが目を開けると、心配そうにこちらを見ている大阪と榊がいた。
「え…。あれ?榊さん。それに大阪さんも」
榊は目に涙を一杯に溜め、ただひたすらに
「ちよちゃんごめんね。置いていってごめんね」
と詫びている。
「そんな榊さん。私も無我夢中で榊さんのことを考える余裕なかったですし。それより…」
榊をなだめつつ、ちよは大阪に向き直った。
「大阪さんはどうしてここに?」
「私が置き去りにしてしまったちよちゃんを、大阪さんが助けてくれたんだ」
ちよへの負い目が彼女を雄弁にしたのか、榊は大阪が答えるより先に話し始めた。
「私がガード下から出たら、ちよちゃんが居なくて。
 それで私、慌てて引き返して・・・。
 入ってしばらく歩いたら、ちょうどちよちゃんが自転車で転びそうになっているのが見えて・・・。
 私、走ったんだけど間に合わなくて・・・。
 そしたらちよちゃんの後ろから大阪さんが出てきて、すんでの所でちよちゃんを抱き止めたのよ。」
言い終えると榊は袖で涙を拭いながら、しゃくりあげた。
「榊ちゃーん。もう大丈夫やで。せやからもう泣かんといてや。」
大阪が榊を慰める。そしてちよに向き直り、
「いやー。あんな話をしてしもたもんで、やっぱり心配になって引き返してきたんや。ふたり恐がりやろ?」
と、照れたような、バツが悪そうな顔をした。
「やーびっくりしたで。心配になって引き返してきたら、ちょうどふたりがガード下に入っていくところやったんやけど。
 声かけよう思たら、ふたりとも急に自転車に跨って走り出してん。
 ちょっと待ったぁ思て、追い掛けたら、榊ちゃんはぴゅーってあっと言う間に見えんようなってしもたんやけど、
 ちよちゃんがなんかえらくゆっくりこいでるねんな。
 そしてな、追いついて声かけたらちよちゃん急に倒れてしもて、わたし咄嗟に手を引っ張って抱き止めたんよ」
ちよは怪訝な表情をしながら大阪の顔を見つめ
「それだけですか?他になにも無かったですか?」
と問い掛けた。大阪さんは何も見ていない?

582 :I小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:18 ID:???
大阪は二人の顔を交互に見つめ
「ん?さっき言うた通りやで?」
と不思議そうに答えた。
「なんやふたりとも暗い顔してるけど・・・。ひょっとして、ほんまになんか出たんか?」
榊とちよは何と答えたモノかと逡巡し、その沈黙の間が大阪の問いを肯定した。

「ほんとうに大阪さんは何も見ていないんですよね?」
「え?ふたりは何を見たん?」
「大阪さんが言ったままのものを見たんですよ。それよりまずこのトンネルから出ましょう」
三人は立ち上がり、出口へ向かって歩き始めた。
歩きながら、ちよと榊は各々が見たモノを、大阪に聞かれるままに詳しく話す。
途中でトンネルからは出てしまったが、出て少し歩いたところで立ち止まり、話を続けた。
一通り話を聞いた大阪は
「えーほんまに出たんかー。わたしも見たかったなー。」
と驚いてみせる。本当に何も見ていないのであろう。
「でも、すっごく怖かったんですよ?私はもう二度と見たくないです」
「私も・・・ダメだ・・・」
榊もちよも、あからさまに嫌そうな顔をして答える。
「でもやー。すぐ後ろに来てた私には何も見えへんかったんは、なんでやろなー?
 ひょっとすると二人とも、二人ともめっちゃ恐がりやから
 わたしが言うたことと、急な大雨と雷さんで暗示にかかったんかもしれへんなー?」

あれほどの恐怖体験を暗示の一言で片付けられそうになったちよは、少しムッとなった。
あんなに怖かったのに、怖さのあまり気絶までしたのに・・・。それが暗示のせい?
しかし、見ていない者からしたらもっともな指摘ではある。あれは恐怖心の為せる業だったのかもしれない。
何より、ドングリまなこでこちらを見つめる大阪のほんわかとした顔を見ていると、本当にそんな気がしてきた。
少し気が晴れてくる。

「暗示ですか。そうかもしれませんね。私の苦手な雷もあったことですし、いろいろ怖い想像が働いたのかも知れません」
「・・・そうだね。怖かったけど、たぶん神経のせいなんだね。」
ちよと榊の表情が少しだけ晴れた。
「あー。そういうつもりで言うたんやのうて、わたしもその女の人を見てみたかったんやけどなー。」
「いいんです。気のせいですから」

583 :J小麦 ◆KOMUGI :2005/01/19(水) 00:19 ID:???
《手土産》

「さて。帰りますか。お父さんとお母さんがきっと心配しています。」
ちよがそう言うと、榊と大阪も本来の目的、おつかいを思い出した。
「あー。はよ帰らんとお母はんに怒られるわー」
言いつつ大阪は、ちよと榊と同方向に歩き出す。
「大阪さん、家は反対方向じゃないんですか?」
言われて大阪は
「やーちよちゃんと榊ちゃんにはえらい恐い思いさせてもたから、せめて送らせて。」
とはにかんだ。

帰る方向を見ると先刻の豪雨が嘘のように晴れ上がり、
西の地平線に沈もうとしている夕日が壮大な夕焼け空を作っていた。
3人は後ろをふり返ったが、そこには何の変哲もない隧道がぼんやりと口を開いているだけである。
榊とちよにとっては、昨日までの見慣れた風景であった。
今はその風景に、言い表せない違和感を感じているのだが、その正体は未だに分からない。
やはり、大阪の言うとおり、暗示にかかってしまったのかも知れない。
やがて3人は家の方向へ向き直ると自転車を押し、
いつものように明日のことなどを話しながら歩き始めた。

強い西日に照らされて、彼女たちの後ろには影法師が伸び、ユラユラと揺れていた。


長い、長い、四つの影法師が・・・。

(fin)

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