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もし大阪が猫だったら。
- 1 :名無しさんちゃうねん :2002/09/20(金) 14:37
- そりゃもう猫かわいがり。
- 224 :名無しさんちゃうねん :2005/07/10(日) 23:24 ID:???
- そこであえて
榊×大阪→大阪×榊
大阪猫を可愛がりながら弄っていたつもりが
いつのまにか胸や首筋(ry
- 225 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/07/11(月) 19:17 ID:???
- ああもう、猫大阪(完全な猫ね)飼いたい(拉致・監禁になりそう)
- 226 :名無しさんちゃうねん :2005/07/11(月) 22:10 ID:???
- >>224
猫大阪発情期?
- 227 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/07/12(火) 21:25 ID:???
- >>224
しかもそっち方面かいw
- 228 :名無しさんちゃうねん :2005/07/17(日) 17:19 ID:???
- ・・・や・・・なにするの?・・・歩ネコぉ・・・
- 229 :名無しさんちゃうねん :2005/07/26(火) 13:39 ID:???
- ふるふるふるむーん
- 230 :名無しさんちゃうねん :2005/07/27(水) 22:18 ID:???
- ネコミミモード
- 231 :名無しさんちゃうねん :2005/07/27(水) 23:12 ID:???
- (・∀・)オオサカモード(Oo Saka Mode)で〜す♪
- 232 :名無しさんちゃうねん :2005/07/28(木) 00:01 ID:???
- >>224 禿萌
- 233 :名無しさんちゃうねん :2005/07/29(金) 05:35 ID:???
- >>224
うわ! それですっげーいいこと思いついた
・・・・・でもいわない♥
- 234 :名無しさんちゃうねん :2005/07/30(土) 22:04 ID:???
- >>233
SSネタに使うかもしれないので、できる限りでなくとも教えていただければ。
- 235 :名無しさんちゃうねん :2005/07/31(日) 02:07 ID:???
- >>234さん、ひょっとしてあなたは「一応作者」さんなんですか?
…他のヤツらも猫になるんですか………他の5人のピンチを大阪猫が救ったり悪役に友達の復讐をしたりする
展開を気長に待っていたのですが……まあ、そのへんは作者さんの自由ですしね。とりあえず>>234を読んで
僕が言いたいことだけを言っておきました。
ところで一応作者さんならオムニバスの第1話のUPはまだ時間がかかりそうですか? (長文すみません)
- 236 :名無しさんちゃうねん :2005/07/31(日) 05:07 ID:???
- >>234
自分の好きに書いたらいいのでは? それがファンフィクション
- 237 :名無しさんちゃうねん :2005/07/31(日) 14:47 ID:???
- >>224
うはwwwwwwwwwwwwww
- 238 :一応作者 :2005/07/31(日) 23:52 ID:???
- >>235
私ではありません。
一話はできているのですが、何だか、皆さん各自の談話を楽しんでおられた様なので邪魔しないようにしてました。
一話の大雑把な展開は、コートのおじさんが赤に染まっていくと言う、ある種、王道に沿ってますw
- 239 :名無しさんちゃうねん :2005/08/01(月) 00:31 ID:???
- >>238
そうですか。頃合いを見てUPしていただければ嬉しいです。季節的に夏ですし怖そうな話も読んでみたい気もしますし。
- 240 :名無しさんちゃうねん :2005/08/02(火) 11:39 ID:???
- >>238
投下お願いします
- 241 :一応作者 :2005/08/02(火) 17:25 ID:???
- 今晩、怖い番組見て、その後すぐに投下できたら……ええのに。
怖い気分を和ませたいです
- 242 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/08/03(水) 10:46 ID:???
- >>241
丁度『化猫』ってのがありましたからね。
楽しみにして待ってます。
- 243 :名無しさんちゃうねん :2005/08/04(木) 18:43 ID:???
- 一応作者さん、投下まだですか?
・・・それと43あげ
- 244 :一応作者 :2005/08/05(金) 02:15 ID:???
- 書いてるうちにかなりアレな方向になってしまいました。
オムニバスってことで、そこんとこは大目に見てやってくださいw
- 245 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:16 ID:???
- おーぷにんぐ
茹る様な熱気が支配する夏。
日も暮れかけ、宵闇に包まれつつある帰り道を一人の女生徒が歩いている。
「熱いなぁ……帰ったら麦茶でも飲もう」
土手に面した、人通りも少ない砂利道。
少女は暑さからくる苛立ちを抑えながら、少し早歩きになる。
青と白の涼しげな夏服に髪を流しながら、夕日に彩られてゆく少女。
そんな彼女の後姿を興味深そうに眺める男が一人。
「汗びっしょりだし……ああ、シャワー浴びたい」
胸元をパタパタと外気にさらす行為が、男にとって十分すぎるほどの挑発となる。
パタパタ……パタパタ……。
少女がそうするように、男もまた自前の煤けた紺色のコートを揺らし、自分の素肌を外気にさらす。
夏に、足元まであるコート。
あからさま過ぎる装い。
パタパタ……パタパタ……。
「いけない子だ……そんなに熱いなら、俺と同じように、全部脱げばいい」
パタパタ……パタパタ…………バサッ。
夕陽に染められた夏の小道に、少女の悲鳴が響く。
- 246 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:16 ID:???
- 「あぢぃぃ……あっ? 諸連絡? 誰か代わりに言えよぉ」
某私立高等学校のとある教室にて。
夏の暑さにやられた、2−3担任の谷崎ゆかりが教卓の上でのびきっていた。
あと一週間で夏休みということもあってか、生徒達もやる気というものが欠け始めている。
「ゆかりちゃん、先生だろぉ……しっかりしろよぉ」
「うるさいわねぇ……言えばいいんだろ、言えば。あー……痴漢が出るから皆気をつけろー……以上」
「ふわぁーい…………って、痴漢!? 痴漢って、あの痴漢!? だって、痴漢って言ったらやっぱり――」
「痴漢痴漢うるせーっ!!」
「……気をつけよう」
「痴漢……だ、大丈夫かな」
生徒達は担任の言葉に、それぞれの見解を示す。
遭遇を危惧する者。不謹慎にもわくわくする者。暑さで何も聞いていない者。
色々な考えがあるものの、それは飽くまで常識の範疇内に留まっているものばかりであった。
「痴漢ですか……怖いですね」
しかし。
この2−3のクラスの中で唯一人、他の者達の考えなど及びもしない所を彷徨している者がいる。
「大阪さんも気を付けてくださいね」
「……」
- 247 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:17 ID:???
- 橙に染まっていく校舎を背に、4人の少女がのろのろと歩きながらだべっていた。
「結局、ちよすけは子供なんだよ。特に、食べ物の好みとかさ。」
「子供じゃありませんっ。立派な高校生です」
「まぁ、高校生も未成年だから、一応は子供ってことになるけど……精神面では智の方がよっぽど子供だな」
「純粋って言ってくれないか、よみ君?」
「ああ、ごめん。純粋な馬鹿だったな」
いつも通りの戯れ。
子供のようにムキになって抗議してくる少女を、余裕綽々の笑みを浮かべてあしらう眼鏡の女の子。そして、そのやり取りを微笑ましく見守る小さな少女。
「まぁまぁ、智ちゃんも抑えて……」
「止めるなちよすけ……このラード娘には、わたしの本当の怖さを嫌というほど味わわせなくちゃならないんだ」
「誰がラード子だっ!!」
「ノンノン、よみ君。『子』じゃなくて、『娘』だよ。『娘』という字を使うことによって、子供の輝きを失ってしまった灰色のよみにも、そこはかとない可愛さが付くんだから。ね?」
「ね? じゃねぇーっ!! 『ラード』が付いてる時点で、可愛さ云々からかけ離れてるだろうが!!」
「じゃあ、牛脂娘。牛って所が、ちょっとだけ高級なイメージを――」
「脂から離れろっ!!」
- 248 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:17 ID:???
- 帰り道も半ばを過ぎた頃。一番小さな女の子――美浜ちよが、ちょっとした異変に気付いた。
「あれ……? そう言えば、大阪さん、どうしたんでしょう?」
「あっ、そう言えば、いない」
確かに、校門を出たときには、四人の影があった。しかし、いつ頃からか、一人の少女の姿が見えなくなっていた。
「また、どっかで自分の世界に飛んでんだろ。いつものことだ」
眼鏡少女の暦がそう言うものの、ちよは浮かない顔をしている。
「でも、今日、ゆかり先生が……最近、この辺りに痴漢が出るって」
「ああ、確かにそんなこと言ってたっけ……ちょっと心配だな」
「今頃、あの華奢な身体をいいように弄られてたりして……」
場の空気が半端に凍る。
暦とちよが、あまりにも不謹慎な発言をした智をジト目で睨んだ。
「な、なんだよ……ちょっとしたジョークだろ?」
「智ちゃん、大阪さんが心配じゃないんですか?」
「そ、そりゃあ心配だよ。でもさ、大阪を狙う奴なんているのかー?」
「そ、それは……」
口元に手を当て、うーん、複雑な表情を浮かべるちよ。
そんなちよを見かねて、暦が口を開く。
「そういう問題じゃないだろ。世の中には『制服が燃える』だけのビデオを見て興奮する奴だっているんだから……大阪だって、十分狙われる危険性はあるぞ」
ちよと智が、ハッとして顔を上げ、暦を見つめる。
「「せいふくがもえる?」」
智ならまだしも、ちよまでもが論点から逸脱した。
「よみ、何なの、その『制服が燃える』ビデオって?」
暦が漏らした一言により、話はさらにずれていく。
- 249 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:17 ID:???
- わたしは走っていた。
せんせの話を聞いた時から、うずうずして堪らなかった。
「はぁ、はぁ……」
痴漢はあかん。
絶対にあかん。
「はぁ、はぁ……おらへんなー」
昼休み、智ちゃん達とのお昼をけって、にゃもせんせの所に行った。
にゃもせんせは、詳しいことを教えてくれた。
学校から駅に向かう途中にある、小さい裏道。コートのおっちゃん。
「ほんまに、ここでええのやろか……」
土手の上から下を眺める。
夕陽がちょっとだけ差し込んでる小さな砂利道。
ここで、にゃもせんせのクラスの子が襲われた……。
「あ、あっ、ああ……」
声にならない変な笑いがこみ上げてきた。
むっちゃ興奮する。心臓バクバクや。
心を落ち着けようと、深呼吸をしていると、風が吹いてきた。
風に吹かれた髪が首筋に当たって、ちょっとこそばゆい。
「五時頃やったっけ……あと三十分もあるやん」
おっちゃんが五時ぴったりに来たら、笑い死にしてまう。
来たらええなぁ……。おっちゃん、絶対に来てな。
「美少女がお待ちしてますー」
草の上に腰を下ろす。体育座りでおっちゃんを待つことにする。
きらきらと目に眩しい夕陽が差し込んでくる。
「はよ来てな……おっちゃん」
それにしても、久しぶりに変なテンションやー。
- 250 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:17 ID:???
- 「じゃあさ、わたしの制服も燃やすだけでお金になるってわけ?」
「まあ、それをカメラで撮影すれば、そういうことになるな……って、お前、本気で燃やすつもりしてるんじゃないだろうな?」
「えっ? 何で?」
「何で? じゃないだろ。第一、制服燃やしたら学校に何着てくるんだ? それとも、わざわざ新しいの買うのか?」
暦の問いに、腕組みをして難しい顔をする智。
どういうわけか、ちよまでもが難しい顔をしている。
「……あっ、中学の頃の制服があるじゃん」
「あっ……わたし、持ってません……」
どういうわけか、しょんぼりとするちよ。
「馬鹿智。大切な思い出を変態に譲るのか、お前は?」
「そ、それは……吐き気を催す程嫌だ」
「吐き気を催す程嫌なら、そんな馬鹿げたことは考えるな。第一、燃やさなくても、専門のお店に持っていけば、買い取ってくれるんだから」
暦の一言に、智とちよが消沈した顔を上げる。
「古着屋さんで制服も買い取ってくれるんですか?」
「いや、古着屋じゃないよ、ちよちゃん」
疑問符を頭に浮かべ、ちよは暦に正解を促す。
暦は少しだけ逡巡した後、口を開いた。
「その……ブルセラって知ってるかな?」
三人の少女達を、大分傾いた陽がオレンジに染め上げていく。
もはや、三人の頭の中には、大阪――春日歩のことは微塵も残っていなかった。
- 251 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:18 ID:???
- スーツ姿の男が公園のトイレへ入っていく。
出てくると、紺色のコートを身に纏っていた。
「今日も……この前みたいな収穫があるといいな」
懐から、しわくちゃになったピンク色の布らしきものを取り出す。
男は、それを鼻元に寄せると、音を立てながら匂いを嗅いだ。顔筋が緩みまくっている。
「さて……行くか」
ひとしきり匂いを嗅ぐと、懐から取り出したものをコートのポケットに突っ込み、男は公園を出た。
男はこれといった当ても無く、ただ、前回の所業どおりに事が運べばいいと、同じ場所を訪れていた。
何も無い土手に隣接した、何もない小道。
気体に胸を詰まらせながら、ゆらゆらとコートを揺らす。きょろきょろと辺りを伺うが、人影は見当たらない。
「やっぱり、そうそう上手くいかないか……んっ?」
男の目に、小道の隅にひっそりと立っている物が目に入った。
「痴漢出没注意……?」
男が見つけたのは、痴漢に対する注意を喚起する立て看板だった。前回来た時にはなかったものだ。
男はその看板を訝しげに見つめると、深い溜息を吐いた。
「困るなぁ、こうやって『痴漢』の一言で括っちゃうの。俺はコートの男だ。痴漢だなんて、かっこ悪い」
- 252 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:18 ID:???
- やれやれ、と肩を竦めると、男は看板に向かって悪態をつき始めた。
変態は痴漢とは違う。痴漢は電車の中だけじゃない。コートのおじさん歴2年を舐めるな。露出は文化だ。
「ったく、こんな看板は目障りなだけだ」
男は看板に向き合うと、足を地面にジリジリと擦りつけた。
そして、勢いよく掛け声を上げると同時に、看板めがけて自らの足を振り上げた。
「せいっ!!」
振り下ろした足は、見事に看板の真ん中に命中し、看板は鈍い音を響かせながら地面に伏せた。看板は真ん中から真っ二つに折れ曲がっている。
「やれやれ……」
男は再度溜息を吐くと、空を仰いだ。
瞳に映るは、白のトライアングル。
「っ!? あ、あれは……」
男が目を細めて、土手の上を見据える。
「うははっ……」
男の口元が緩み、卑しい笑いが零れた。
「ターゲット……みーつっけた」
- 253 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:18 ID:???
- 「それじゃあ、また明日」
「はい。お二人とも、気を付けて帰ってくださいね」
「ちよちゃーん、ブルセラ長者になろうねー」
暦に小突かれながら、智は夕陽を背に自分の家へと帰っていった。
残されたちよも、自宅へ帰るべく、歩を進める。
「実に有意義な時間でした。世の中にはまだまだ知らないことがたくさんありますねー」
意気揚々と帰り道を歩く。
「ただいまー」
お出迎えは愛犬の忠吉さん。今日は帰宅時間が普段よりも遅くなったので、宿題を後回しにする。
「忠吉さん、お散歩行きましょう」
主の申し出に元気よく返事をする忠吉。
ちよは紐を取り、袋を持って、玄関を出る。鞄は一旦部屋に置いてきたが、服は制服のままだ。
家の敷地を出ると、電柱の後ろから見慣れた人物が現れた。
「榊さんも一緒に行きましょう」
「うん……」
いつも散歩を共にする榊は、ちよ達よりも先に家に帰っていたようだ。なので、服は私服。
隣に大きな犬と、大きなお姉さんを連れ立って、散歩コースを周る。
そうして、休憩の場所――近所の公園に到着した。
水道で忠吉の喉を潤している間、榊はその様子をじっと見守り、ちよは暮れゆく空を眺めていた。
「きれいです……」
ぽつりと率直な感想。
夏になって、陽が長くなったことを改めて実感する。
と、ちよは空を眺めながら、何か、引っ掛かりを感じた。
何か、とても大切なことを忘れているような……。
顎に手を当て、首をかしげて唸る。
「ちよちゃん、そろそろ行こう……」
榊の声で、ちよの意識は一旦遮断させる。
「えっ……あ、はい。じゃ、行きましょう、忠吉さん」
何かを忘れている気がするが、どうにも思い出せない。
心に残るわだかまりを抱えながら、ちよは再び散歩を開始した。
- 254 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:19 ID:???
- 暗い。
真っ暗や。
「……あかん、いつの間にか寝てもうたみたいや……」
けど、空にあるはずの星が見えない。
天気予報では晴れマークが出てたのに……。
「……おや、ようやくお目覚めのようだね」
後ろから男の人の声が聞こえる。
「どうだい、目覚めの気分は?」
「すっきりや。せやけど、星が見えへんよー?」
「はっ? あはは、そりゃそうさ。だって、ここは俺の部屋だからね」
後ろを振り向こうとしたが、身体が動かない。
体育座りのまんま寝てたんや……お尻が痛い。
「なぁ、なんでわたしの身体動かへんのー?」
「縛ってあるからさ。ここに連れてきた時にロープでね。それにしても、随分とぐっすり寝てたみたいだね。全然、起きる気配がなかったよ」
ロープか。なら動かないのも無理は無い。
そう言えば、足と手が少し痛い気がする。
「さて……起きたところで、早速だけど……わかってるよね?」
「何のことー?」
この人、何言うてんのやろ……。
そもそも、この人誰なん?
あと、ここはどこなん?
あかん……もう、わけわからん。
「コートの男を自負しているからね……多少不便でも、コートは脱がない。これが俺の信条だからね」
コート……。
思い出した……たしか、わたしはあの土手の上で、コートのおっちゃんを待っていた。
そしたら、いつの間にか眠っていた。
そして、目が覚めたら、こんな真っ暗な部屋にいた。
そんで……。
「なぁ、わたし連れてきたの、あんたなん?」
「ああ、そうさ。俺が、あまりにも無防備な姿で寝入っている君をここへ連れてきたんだ」
「そやったら……コート着たおっちゃん見かけへんかった?」
「……はっ?」
「せやから、おっちゃんや、コート着たおっちゃん。あの土手の下におらへんかったー? わたし、途中で寝てしもてん、見逃したかもしれへんのや」
「……ははっ」
何が可笑しいのだろう。
後ろの男の人が突然、アホみたいに大笑いし始めた。
部屋が暗いだけに、何か気持ち悪い。
「いやぁ、ごめんごめん。くくっ……あまりの君の鈍感さが、俺のツボに入ったみたいだ」
「鈍感? わたし、鈍感かなー……」
「自覚してないんだね……あはは。じゃあ、俺が直接教えてあげるよ。まず、コートのおじさんなんて者はいない」
笑いを堪えたように、男の人が喋っている。
「嘘やー。にゃもせんせ言うとったもん」
「その人がどう言ったかは知らないけど……少なくとも、『おじさん』じゃない」
「……え?」
「俺はコートの……『お兄さん』だっ!!」
- 255 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:19 ID:???
- お兄さん………………なんや、そーやったんかー。
「君の制服、この前、俺が可愛がってあげた娘と同じ制服だね」
何で気付かんかったのやろ……あかんわ。
「暗いのに、何でわかるん?」
「この暗視カメラが、君の可愛い姿を捉えてるからね。便利だよ、こういうものが簡単に手に入る世の中ってのはさ」
なんや、スパイみたいでかっこええけど………………許すわけにはいかへんなー。
この男の人は、痴漢や。痴漢はあかん。
痴漢はあかん言うとるのに、何でするのやろ……不思議や。人間の神秘や。
そやけど、いくら神秘でも、わたしは許すわけにはいかへん。
「使命やからな」
「んっ? 何か言ったかい?」
身体が熱くなってきた……。
ああ、お尻の辺りがこそばゆい。
耳元がめっちゃくすぐったい。
胸がどきどきする……興奮や。体育祭の時みたいに、心臓がバクバクなってるわー。
爪の先の感覚があんまりあらへん……ほんま、これだけは慣れへんわ。
「耳がキーンってするわー。たしか、鼻摘まむと……あんまり、変わらへんわ」
「な、なっ……な、なんだこれは……」
ドクドク聞こえる……男の人の心臓やな。
あー……頭がえらいすっきりしよるわ。
身体がちくちくしよる……気分わるー。
「そ、その耳……お、俺を喜ばせようとしてるのか……?」
何言うとんのやろ、この痴漢男。
見える、見えるわー。段々と、コートの男の姿が見えてくるわ。
「なんや、ボロいコートやなー。そんなん着て歩いたら、下が裸やなくても、気色悪いわー」
「な、なんだと……」
拳が震えとる……わー、怒ってる、怒ってる。せやけど、全然、凄みがあらへんなー。
やっぱり、痴漢なんて言うんは、大したことあらへん奴ばっかやなー。
「っ!? ロ、ロープが……ど、どうやって切ったんだ? まさか、ナイフでも持ってるのか?」
「そんなもん、持ってへんよー」
「なら、どうやって切った?」
「あー……こうやってや」
身体を曲げて、足に括りついてるロープを爪で撫でる。
プツプツと切れて、紐が床に散らばっていく。
「ど、どうなってるんだ……」
- 256 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:19 ID:???
- 「こ、このーっ!!」
男は、床を蹴って少女に飛び掛った。
しかし、確実に少女めがけて飛び掛ったはずなのに、男の腕の中には何も無かった。
クス、と背後から笑い声が聞こえる。
「何やってるん? 幅跳びなら、グラウンドでやってや」
振り返って見ても、そこには闇があるだけ。暗視カメラは少女の手元にある。
男は額から汗の瀑布が流れる。
長年、武道で培ってきた精神が、本能が、警鐘を鳴らしている。
「テープってどうやって出すのやろ……あれ? テープがあらへん」
「でやぁぁっ!!」
反射的に身体を屈して、少女めがけて一気に放つ。一撃必殺の自信がある、急所狙いの正拳。
しかし……拳は空を穿っていた。
少女の――敵の場所は感覚でわかるのに、拳が当たる寸前で敵の気配は消える。
「あー……もうわけわからん。わたし機械は苦手やねん」
「くっ……」
こうなったら、最早、体力の続く限り乱撃しかない。
男は、カメラに気を取られている敵との間合いを一気に縮め、まずは渾身の正拳を繰り出した。
続いて、回し蹴り。回転から繋ぐ手刀。
「せやっ!!」
エルボーに裏拳、足払い、モンゴリアンチョップ、自作爆裂拳、頭突き。
思いつく限りの攻撃を間髪入れずに次々と繰り出す。
「うおおぉぉぉぉぉっ!!」
しかし、どの攻撃も一打として当たらない。
ただ空を切り、穿つのみ。
気配は目の前にあるのに……。男には理由がさっぱりわからない。
どこにでもいそうな、華奢な身体つきの少女。
自分よりも一回りは小さい少女。
その少女に、どうしてこうも簡単に攻撃をかわされてしまうのだろうか。
なぜこんなにも、自分は本気になっているのだろうか。
そして……。
「止まって見えるわー」
身体はどうして、逃げることを推奨しているのだろうか。
- 257 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:20 ID:???
- カメラのことはもう諦めることにする。
わたしは、カメラを宙に投げると、目の前に落ちてくると同時に右手を横に薙いだ。
ゴトゴトと音を立て、小さくなったカメラが床に落ちた。
傷になってしまうのは、この際どうでもいい。
そろそろ……痴漢を退治しよう。
「まずは、そのハエみたいにうるさい手からやな」
さっきから目の前をピュンピュンと動き回ってる邪魔な二つの手を、わたしの爪で軽く撫でる。
途端に、カメラが床に落ちるのよりも鈍い音がしたかと思うと、痴漢の掛け声が悲鳴に変わった。
床に目をやると、凄い勢いで黒い水溜りができていた。
鼻をくすぐる鉄くさい臭い……。
「あ、んっ……あぁ……」
背筋を幾本もの静電気が突き刺した。
心臓の音がうるさい。体中が熱い。
身体が弾けそうだ。
「うああああぁぁっ!! う、うで、うで、うでぇぇぇっ!!」
水溜りの水を体中に塗りたくって、男が床で踊っている。
物凄くダサイ踊りだ。滑稽すぎて、笑いが零れる。
おまけに、笑っていると、本当に自制が利かなくなってくる。
「いたい、いたいぃぃぃっ!! だ、だれかあぁっ!!」
痴漢の声が耳に響く。
ダメだ………………限界だ。
「んふぅ……も、もう……我慢……できへん……」
色が反転した。
白黒の世界が、真っ赤に染まっていく。
身体の感覚が鈍くなってくるような、身体の芯が凍りつくような錯覚に襲われる。
わたしは、喉が張り裂けんばかりの大声を上げると、いまだ踊り続けている男に飛び掛った。
- 258 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:20 ID:???
- 大きな敷地の、大きな家の中で、けたたましい電話の音が鳴り響く。
その音に反応して、ちよが電話へと向かう。
「はい、もしもし、美浜です」
『あっ、ちよちゃん?』
電話の主は智だった。
「智ちゃん? どうしたの?」
『いや、それがさ、さっきシャワー浴びてる時に思い出したんだよ』
「思い出した……? 何を思い出したの?」
思い出す、という言葉に、ちよの中のわだかまりが首をもたげる。
『大阪のことだよ。ほら、途中からいなくなってたじゃん』
智の言葉に、わだかまりが消えてゆく。
ちよは、ポンッと手を打って、一人納得した。
『それでさ、大阪の携帯にかけても出ないんだよ。だから、もしかしたらと思って……』
語尾が不安そうに消え行くのを、ちよも同じ思いで聞いていた。
「探しましょう、智ちゃんっ!!」
『うんっ!! よみにはもう連絡したから、今からそっちに向かうよ』
- 259 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:20 ID:???
- 「大阪さーんっ!! 大阪さーんっ!!」
「しーっ、ちよちゃん。こんな時間に、周りの家の人に迷惑だよ」
「あっ、すみません……って、智ちゃん!!」
電話口での真剣さはどこにいったのだろうと、ちよは溜息をついた。
智は暦に容赦ないツッコミをうけている。
「でもさー、こんなところで呼んでたって、ほとんど意味ないんじゃない?」
「じゃあ、お前には何か思い当たる場所でもあるのか?」
「ふっふっふっ……この智ちゃんの名推理で、お二方の舌を噛んでごらんにいれましょう」
「噛んでどうすんだよっ!! 巻くんだろっ!!」
「よみさん……しーっ」
「あのなぁ……確かに、隣の組の生徒はここで襲われたらしいけど……」
「智ちゃんを信じたわたしが馬鹿でした……」
智が来たのは、月の明かりぐらいしか頼りがない、暗く、細い小道。
通算、二度の被害が起きている現場。
「で、でも、まだ希望が無くなったわけじゃないだろ?」
「わけのわからん方向に話を肥大化させるな」
「大阪さーん……」
月光に投影される、三つの影。
小道に伸びたその影は、本体同様に、不安そうに見える。
そして、その三つの影を、土手の上から見下ろすもう一つの影があった。
- 260 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:20 ID:???
- 気が付いたら、血の臭いが充満した部屋にいた。
「うぅ……気分悪いわー……」
外の空気が吸いたいと思った。
おまけに、やけに頭がボーッとする。
「暗くてようわからん……スイッチ、スイッチはどこやー?」
両手で前の宙を掻いて、電気のスイッチを探す。
ゆっくりと前進していくと、壁に手が触れた。
そのままズリズリと手を滑らせていく途中で、右手に何かを握り締めていることに気が付いた。
なんやろう……暗くてようわからん。
「スイッチ、スイッチ……あっ、あったー」
左手でスイッチを押すと、部屋がパーッと明るくなった。
目が少しチカチカする。
目を瞑って、ゆっくりと開ける。
「わっ、パンツや」
慌てて手を離す。わたしが右手に握り締めていたのは、誰かのパンツだった。
床に落ちたピンク色のパンツが、床一面に広がっている赤い水にすぐさま染まっていく。
赤いパンツ……なんかやらしいわー。
「あー……見事にバラバラやなー」
床や天井、壁には、スーパーでよく見かける『赤身』がそこらじゅうに散らばっていた。
部屋一つが、何かの芸術作品になったみたいだ。
せやけど……何か、物足りなさを感じるわー。
「うーん……なんやろなー……」
この肉は痴漢の肉。
せやったら、痴漢らしい何かをここの真ん中に飾りたい。
痴漢らしいもの……コートはズタズタやしなー……。
考えているうちに、何だか、お尻の辺りがスースーしていることに気が付いた。
「……あ、穴あきパンツ……」
尻尾で穴が開いてしまった、わたしのパンツ。
色は白で、きっとこの部屋には欠けている色。
穴が開いてるパンツ……なんや、ようわからへんけど、めっちゃエロい気がする。
「よっしゃ、決めた。最後の一筆は、わたしの穴あきパンツに決定やー!!」
血で転ばないように、ゆっくりと片足を上げて、下着をずらしていく……。
もう片方の足を通して、ついに穴あきのパンツを手にした。
「ほな………………あっ」
重大なミスに気付いてしもた。
部屋は一面真っ赤。わたしのパンツは真っ白。
欲しい色は白のまま。
せやけど……。
「置く場所が………………あらへん」
- 261 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:21 ID:???
- あふたぁー。
「お前、一体今までどこに行ってたんだよ?」
「企業秘密や」
「企業秘密って……どれだけ心配かけたと思ってんだよ!!」
突然、激昂した智の迫力に歩は大きな瞳を丸くする。
よく見ると、智の目にはうっすらと涙らしき物が浮かんでいた。
「智ちゃん、なんで泣いてるん?」
「う、うるさい……な、泣いてなんか……」
慌てて目をごしごしと擦る智を見て、暦とちよは安堵にも似た面持ちで見つめていた。
無事に戻ってきてくれた、大切な友人。
「でも、本当によかったです。無事で何よりです、大阪さん」
えへへ、と笑いながら言うちよ。
「企業秘密って言葉には引っ掛かるが……まぁ、それは明日問い詰めてやるよ」
「大変やー、よみちゃんが本気になったら、わたし……わたし…………」
「おいっ、何で顔を赤らめるんだよっ!! へ、変な勘違いするなっ!!」
暦が歩を追いかける。
非常に緩慢な動きで逃げる歩を、暦は握った拳を振り上げながら追いかける。
暗い夜道で、足場の悪い砂利道で。
「よみちゃーん、わたしを捕まえてー」
「コ、コラーーッ!! お前、絶対わかってやってるだろーっ!!」
普段の歩を見てれば、当然、予想のつく結果だった。
……転倒。
「ば、馬鹿っ、ちゃんと前見て走らないから……」
「だ、大丈夫ですか、大阪さんっ!!」
「あはははっ、智ちゃんを舐めたから天罰が下ったのだーっ」
三人それぞれ違うことを口にしつつも、皆、地面に突っ伏している大阪へと駆け寄る。
と、月明かりに浮かび上がった歩の姿を見て、三人の思考は――停止した。
「「「なっ………………」」」
転んだ拍子に捲れ上がった、歩のスカート。
そのスカートの下に本来あるべき物が見当たらない。
あるのは、形のよい、艶々とした色白の臀部だけ。
世間一般で言う――ノーパンだった。
「お、大阪、お前まさか……」
智は今日の帰り道での出来事を思い出していた。
親友が口にした、あの言葉。
「し、下着……」
ちよは先程、歩が口にした言葉を反芻していた。
企業秘密……。
「………………」
暦は確信していた。
歩の発言と、あの商売。
「うぅっ……鼻がヒリヒリするわー」
自分の鼻を手でさすりながら、歩がゆっくりと身体を起こす。
じわりと浮かんだ涙で視界がぼやけながらも、歩は目の前の三人の様子がおかしいことに気が付き、口を開いた。
「どうかしたん……?」
- 262 :『猫大阪』 :2005/08/05(金) 02:21 ID:???
- 非予告。
知らなくてもいいことは沢山ある。
知らない方が幸せなことなど、世の中には溢れている。
誤解でも何でもいい。
とにかく、真実を知られなければいい。
まさか、パンツが隠れ蓑になるとは……。
また倒すべき対象が現れても、今回得た誤解という名の隠れ蓑を使えば、最悪の事態は防げそうだ。
笑いがこみ上げる……。
口は達者なほうではないが、それでも、その場限りの嘘を吐くことぐらいできる。
心配は無くなった……。
夜風が吹いた。
涼しい風が、髪を靡かせると同時に、スカートの中まで進入してくる。
「あかん…………癖になりそうや」
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