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千尋様の野望キタ━━━━(゚∀゚)━━━━
- 1 :千尋ふりーく :2002/12/30(月) 01:08 ID:???
- 厨房と言うならそれもよし……
言われる覚悟で立てましたー。
脇役千尋様が数々のレギュラー陣を倒し
最後に主人公の座を手に入れる
そんなスレしたいです〜。
- 310 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/03/24(水) 16:58 ID:???
- 「んにーひー。そんなことしていいのかしらねえ」女教師が意味ありげに笑った。「何がいいたいんですか?」強
い目つきで東野が返す。彼女が何について警告しているか、どことなく、わたしには判った。頭はナイフみたい切
れて、考えは矛のように鋭い天才。それと戦うことになるのなら、とどのつまり、 「CHERISH A SNAKE IN YOUR
BOSOM! YOU UNDERSTAND, TOHNO?」 谷崎がまくし立てる。「ぇ……。何がいいたいんですか?」 同じ質問
を今度は反対の意味で、東野が繰り返した。「やれやれ、あれからぜんっぜん英語力ついてないのね」「ぼ、ぼす
とんのヘビ!」「ブーッ」 谷崎は顎を上げて言った。「優勝したら教えたげるわ」
背丈が榊よりも気持ち高い東野。スポーツをやらせて彼の右に出る者はいない。優勝候補としてまず筆頭に上
がる男だった。でも、彼なら「平気」だと信じられる。さっきの応急処置を、無駄骨になんかしない。
東野が困り顔で振り返った。神楽に質問しても無駄そうだ。その横では美浜ちよが、教えるべきか教えるまいか
を迷っていた。「あー」 ここで初めて、谷崎にはぐらかされたことに気がついたようだ。ついでに、教室が鎮まって
いたことにも気づいたようだ。
- 311 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/03/26(金) 22:41 ID:???
- 驚怖が加速度的に発熱させた混乱も、時間が徐々に冷やしてくれた。ずいぶん長い間騒いでいた気がするけ
ど、実際には10分となかったようだ。わたしたちは逃げ口のないことを悟り、横に倒れた机と椅子、そして静寂
に溺れていた。
逃げ回っては逆に危ないとを予見したのか、榊は席に留まっていた。オーサカもジッと座っていたが、こちらは
判断したからじゃなくて、判断に時間が掛かっていたからだろう。かおりんも無事だった。なぜか榊の後ろにいた。
榊の後ろに、とにかく。
三人は異常と正常のボーダーライン上で、それぞれ、だんまり、ぼんやり、じっくりをしている。
「はいはーい、みんな落ち着いたかにゃー? 説明を再開するわよー」
谷崎が、ゴミ袋のように転がる大田慎一の胴体を指差した。逃げようとした生徒に踏まれたのか、学生服には
茶色い足跡が5つ6つプリントされている。
「無理矢理外そうとすると、まぁこんな感じで、あんたたちのつけてる首輪は爆発します。防水耐震かつ特殊な波
形を用いているので穴掘って隠れたり建物に引きこもってもムーダ、電波はちゃんと届きます。 ですからみいな
さぁんー、ズルなんか考えず、ルールを守って楽しく殺し合いましょう」
生首が不時着した松田机が、倒れずに残っていた。誰もがそれを避けるように立ち回ったせいかもしれない。
恐怖に歪んだ慎一の顔は、机上に広がった液性の赤絨毯に鎮座している。慎一の顎が5センチほど左に外れ
て、まるっきりマンガみたいな顔になっていた。首が飛ばされて顎が外れるということは、下顎骨はどこかで首と
繋がってるらしい。乾いた瞳は、偶然こちらを見つめていた。
汗ばんだ手の平を、わたしはぎゅっと握り締めた。神楽も、東野も、ああなるんだ。谷崎ゆかりに従わなかっ
たら。それでも殺し合うわけにはいかない。どうにかして、立ち向かわなければならないんだ。わたしは頭をひ
ねり始める。考えろ。いまが考えるべき時間だ。
「それからー、このゲームにはタイムリミットがつくわよー。 もし、24時間経って一人も死者が出なかったら。そ
んときゃ、エリアに関係なく全員の首輪が爆発しまっす」
- 312 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/03/31(水) 19:46 ID:???
- 「たとえ何人残っていようとその場で全員死にます。気いつけることー」
一人やられたんだ。これは脅しじゃない。慎一は、見せしめの意味もあったのかもしれない。
恐る恐る、わたしは考えた。最悪の場合みんなの首が同時にジャンプする。
だとしたら、であるとしたら、だ。なんとか全員が結束して作戦を練ったにしても、24時間経つまでには打開策
をみつけ、実行しなければならない。そうでないと日が沈むつど、タイムアウトによる全滅を防ぐために、誰か一
人の命を政府への生け贄として捧げることを迫られるのだから。
「今年は優秀な選手がいるというこのなので、お上のほうからもかなり期待がかかってます。ミズホの国の防衛
のために、いいデータが採れるよう、ひとり一人がベストを尽くし――――」
そうなったときは、誰が生け贄になる? 力が弱くて足手まといになる生徒。まず真っ先に、オーサカが標的に
なる。もしくは、体育の苦手な井上檀(女子2番)か。東野や神楽はいい。己が大事な「戦力」だと自覚してるから。
でも、いざクラスが団結して一ヶ所に集まり、それでも上手い解決策を見い出せなかったとき――――23時間
経ち、多数決で人が殺さなければならないような状況にハマりこんだとしたら。これといって運動が得意なわけ
でもなく、自分の価値に自信のない生徒は、やがて「次の生け贄は俺かもしれない」という恐怖を抱かざる得な
いんじゃないだろうか。そうなった彼も、やっぱり自分が一番かわいい。だから、やられる前に他をやる。カッタ
ーナイフで首を切り、ベルトやスカーフで首を締め。ちょっと工夫すれば、なんでも凶器になるんだから。上手く
こなせば、24時間は無問題だ。だけれど殺したその瞬間から、次へのカウントダウンが始まる。彼は、次の日
も、そのまた次の日も同じことを繰り返さなければならないんだ。それに他の生徒だってやられっぱなしではな
い。裏切り者を見つけ出し、彼を率先して生け贄にするだろう。そして挙げ句の果ては、殺し合いになってしまう。
全員が結束したところで、結局は何もかもが無駄になる。それなら最初から、誰も結束なんて考えない。
袋小路だった。
我がクラスの天才が教卓の傍で小さくなっている。茶色いお下げの中央では、どんな思考が旋回しているのだ
ろうか。谷崎がのってりした口調で続けていく。
「そんからー、死んだ生徒と禁止エリアを伝える定時放送について。通称“哀キャッチ” つうBGMを合図に、6時
間ごとにするけどー、例外が一度だけ。最後の一人が決まったら、その人に放送で連絡しまーす」
- 313 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/03/31(水) 19:46 ID:???
- 最後の一人。
わたしは床に座り直した。
信じてやしない神に誓っていいが、わたしに殺し合う気なんて微塵もない。みんなだってそうだろう。うん。そう
であって欲しい。そうじゃなっきゃ困る。えっと、そうだよね。もしそうじゃなかったとしたら。……これはIFの世
界。自分自身に強調した。仮にみんなが「やる気」になったとしたら。わたしが最後の一人、選ばれた人間にな
る蓋然性についても考えてみた。
その確率と、(神楽が取ったテストの点)÷10 とを比べても、なんか負けそうだった。わたしは榊みたいにに
卓越した人間じゃないし、美浜ちよのような才媛でもない。神楽ほどココ一番に強くもなければ、水原暦ほど優
等生でもない。ついでに言えば、智くらい非常識な運や爆発力もなく、オーサカの何時如何なる場所でも寝られ
るというスキルもない。何しろわたしはテストで平均点との同点を3度連続で取ったことがある、普通を三回重ね
た普通人間なのだから。でも戦って生き残る確率と、この無人島から脱出できる確率。こちらをいざ比べてみる
と、前者が高いんじゃないだろうか。脱走者は過去に2人しかないが、優勝者は47年の初大会以来だいたい毎
回でている。ポジティブに単純計算すると1/40。わたしは榊ほど警戒されていなければ、美浜ちよほど泣き虫
じゃない。神楽よりは細かい思案が行き届くし、水原暦ほど縛られていない。ついでに言えば、智水準の大音声
で位置を悟られることもなく、オーサカほど睡眠時間を必要としないので有利だ。
せんずるところは、我も人なり、彼も人なり。
殺し合うか。
ありえない脱出にかけるか。
どちらも低いなら、選ぶまでもなかった。
わたしは、戦わない。協力して、脱出してみせる。かおりんも、美紀も、智も暦も大山もみんな友達だ。
慎一の死を無駄にはしない。
「説明はだいたいこんなもんだけど、なんか質問があるひといるー?」
机と椅子が散らばってすっかり教員時代の自分のデスクみたいになった教室を見回し、谷崎は訊いた。
約5秒の鎮静の後、顔を上げ、手を挙げる生徒が一人だけいた。
- 314 :名無しさんちゃうねん :2004/04/03(土) 09:51 ID:gv2Zv5vI
- 作者の人は感想とか入れられると反って迷惑かな?
もしそうだったらごめん。
楽しみに見とるよ。
- 315 :247 :2004/04/04(日) 18:08 ID:???
- 感想レスありがとうございます。
しばらく手がつけられなかったのですが、おかげでヤル気がBINBIN湧きました。
- 316 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/04(日) 18:10 ID:???
- #8 少年法未適用
「あの……」
脅えながら、そろそろと手を挙げていた。
「はーい、ちよちゃん」
美浜ちよの発声器官は、言語野に見合った発達をしていない。
「なんで、わたしたちがせん、しゅちゅされたんですか?」
だから噛んだ。選出。谷崎がプッと馬鹿にしたように吹き出すと、美浜ちよは半泣きのまま不愉快そうな顔を
した。器用だな、と思った。子供扱いされたくないらしい。谷崎は相手をとことんまでに見下したアメリカ人のみ
たいに肩をあげ、
「ッカンピューターが全国の学級から無作為に選び出した結果デース」 と吹いた。
どうして訊いたのだろうか。対象となるクラスがランダムということは、大東亜共和国の人民なら中学生でも
知っていることなのに。美浜ちよはただ目を伏せて、おさげの位置を直した。
「…………」
再び、沈黙。
鉄板越しに雨音がする。
血と銃弾ですっかり忘れていたけど、分校の外では雨が降っていたんだ。わたしは携帯の時刻表示をみる。
0時前。体内時計が狂っていた。そして、いろんなことが狂ってきた。
- 317 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/04(日) 18:11 ID:???
- 「あんたたちの中には、昨日まで友達だった奴と殺し合わなきゃならんとは、そんなのムチャクチャだーなん
て感想もってる奴もいるかもしんないけどー、社会に出るとそんなことは言ってられませーん。まだ判らん子も
いるかもしんないけどー、オトナはみんな削り合って生きてるわけよ。あーつまり、コホン。よーするに、実社会
の練習だと思って軽く受けてください」
なにが軽く受けてくださいだ。谷崎は両腕を広げた。
「周りを見渡してみなさーい、みんなやる気になってるわよー」
わたしは他の生徒達の顔を窺う。やる気になってる? そんなわけない。化粧した女子高生、野村章子(女子
14番)と珍しく目が合う。すぐに視線を逸らされてしまった。家がクリスチャンという三田満里子(女子21番)を
みやる。眼鏡のリムに覆われた双眸は落ち着きなくふれ動き、隣人愛を説いているようにはみえない。神楽彪
乃。信仰する教師に捨てられたショックがまだ尾を引いているのか、死んだ目をしていた。窓際。初めからクラ
スメイトをジャガイモくらいにしか認識してないのか、榊は視線を動かしもしなかった。
結局、わたしの視線を真正面から受け止めてくれたのは、驚愕したまま固まっている、大田慎一だけだった。
なによこれ……
不信が影を落とす。
「質問ないー? もう受け付けねーぞー」
- 318 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/04(日) 18:13 ID:???
- しんとした空気が教室を押し潰す。
誰も目を合わせてくれないので、わたしは仕方なく生首のオブジェ(=大田慎一)を眺めた。同じ委員だった
から、彼(今となっては、アレ)とは何度か会話していた。普段は優しいけれど、男子では珍重に値する、芯の
ある優しさをもっていた。でも今回、それが裏目にでた。慎一は引越しのアルバイトもしていた。お金なんか貯
めて何に使うの? 訊くと、黒野菊江の誕生日に何か買ってやりたい。女の子の好きなものが判らないから、
何を買えば喜ばれるだろうと相談を持ちかけられた。慎一は自分よりも菊江のことを大事に想っていたし、慎
一のやさしさがどれほど貴重なものか、一番知っていたのが菊枝だった。そのときわたしは、もちろん慎一本
人ではないが、将来もし彼氏にするなら、彼みたいな人がいいかもしれない、となんとなく感じた。その慎一が
首から下をなくし、机の上にコトンと座っている。わたしとお喋りしたあの顎は、左に5センチずれている。わた
しの声を聞いた耳からは、血が一筋垂れている。何かが零れていった。
黒野菊江がスカートに顔を埋め、くしゃくしゃに泣いている。慎一と親しかった相沢和樹(男子1番)は、やつ
れた顔にロンゲが被さるままにしていた。
ああ。そうか。不意に気づいた。いつだって悲しみは、後からやってくるんだ。
時間が経って、いろいろ考えて、やっと今頃になって、慎一の死の実感が湧いてきた。
あれ?
変だった。頬が熱いと思ったら、涙が伝っていた。さっきまで平気だったのに。
わたしはため息をつこうとして、上手くつけずに息詰まった。こんな気持ちをもれなく40人分味わったころに
は、壊れてオーサ化してしまう。誰か、誰でもいい。この重苦しい沈黙を破って欲しかった。
- 319 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/05(月) 21:59 ID:???
- 「ちよちゃんはまだ11歳なのに、参加しなくちゃいけない、かな」
静かな口調で、しかし重みをもった声が左から聞こえた。視線が窓際に集中する。まさか。いや。韓国生まれ
の原光治が、転校初日にいきなり流暢な標準語で自己紹介したのと同質の驚きが教室を刺激した。
説明が始まって以来、まるで銅像のように黙りこくっていた榊弥生だったからだ。
「ええもちろん。このクラスの人間なら誰だろうと参加する義務があります」
挙手もない、つぶやきに近いその質問も谷崎があっさり退けた。
考えにくいことに。
普段ならほとんど(いや、全く)発言をしない榊が起立し、この時ばかりはと食い下がった。机と椅子の大半が
倒れ、殆どの生徒が床に直接腰掛けている中、榊弥生が立つとかなり際立ってみえる。かおりんに教えてもらった
榊の身長は、この学年の女子でトップだ。
「でも、たしか法律だと11才は、プログラム高等学校の部から対象年齢外の筈です。つまり、ちよちゃんはゲー
ムの対象外……?」
神楽がこうべを上げた。なんでそんなことを知っているのか、誰もが注目した。榊が弁護士志望だとは聞いて
いない。注視には「あの榊弥生が発言した」という驚きも含まれていた。むしろ大きかった。
谷崎は不機嫌そうに榊を睨みつける。
「あのね榊さん。 美浜さんはみんなと同じ高校生なのよ?」
谷崎は足元の小動物に、有史以来一度も使ったのことのない美浜さん、という呼名を意識的に用いてからこう
継いだ。
「飛び級で例外的に入学したのだから、例外で学校行事に加わってるでしょ? 学食の利用も許可されてるし、
みんながやってることも同じようにやらせる。今日みたいにみんなと林間学校に行くこともあるの」
「………」
「だから当然このゲームにも、みんなと同じように出てもらいます」
- 320 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/05(月) 21:59 ID:???
- 榊は黙って谷崎の目を見据えている。その目は相変わらずの顔だったが、一歩も譲れない、そんな鬼気迫った
オーラが感じられるような気がした。
「まーだ納得しなようねー」
谷崎は黒板の前に立ち、チョークをとった。緯線の傾いた「与津場島全図」の横に、スラスラと筆記体で英文を
書き記す。
Every bean has its black.
また箴言だった。
「はーいこの文を、水原さん」
突如指名された水原暦、うろたえながらも模範解答は忘れない。「……豆にはみな黒点がある」
「そのとおり。これはアメリカのことわざでー、お豆にはみーんな黒点があるように、人間も短所や不足している
ところはみんーなもっていて、それも多種多様だという意味です。このクラスには体育ができない人、背が低い人、
争いごとが苦手な人、いろいろな人がいると思います。ですがあ、それはその人の個性であって、決して物事を
妥協するための理由にはなりませーん、まして逃げる理由にもならないなんて当たり前のことです。美浜さんは
確かに小っちゃくて力もありませんがー、それをカバーするだけの長所をもっていまーす。ほかの人にも同じこと
がいえます」
どうあれ、確かにそれがこの国の平等教育だった。フランスの思想家、ヴァレリーも『作家論』で綴っている。
『世の中には想像する天才があるように、探す天才もあり、書く天才があるように、読む天才もある』うちのクラス
にはスポーツの天才もいれば、学術の天才もいる。でも、ツッコミの天才や居眠りの天才に、殺し合いの場でそ
の天才能力をどう生かせというのだろう。殺人ゲームに分け入って、「よしなさい」とハリセンでツッコミをいれろと
いうのだろうか。
「いい? あんたたち。人間はいかなる場合でも平等です。それは男女差だけでなく、年齢差でも同じことです。年
食ってるほうがエライーみたいのがあるけど、そんなのジジイが勝手に決めたことです。70歳の老政治家も、生
後3ヶ月の赤ん坊さえ、ここ大東亜共和国の旗の下に命の価値はみな平等なのです」
谷崎は黒板のサイドに掛かっている国旗をバン、と叩いた。周りの下士官たちは担当官の不敬罪を見て見ぬ
フリをした。なにが平等だ。この女は自分でも気づかない最下層で、太陽は自分を中心に回ってると思っている。
榊はゆっくりまばたきして顎を引いた。
- 321 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/11(日) 19:01 ID:???
- 「権利の平等は義務の平等でもありまぁす。どっこい忘れちゃいけません。この国の高校生であるのなら、なす
べき義務はあるんです。あんたたちは全国の高校生代表としてぇプログラムの対象に選ばれました。これはたぁ
いへん名誉なことです」
ちょっと芝居がかってきた。
「みんな、この名誉を誇りに思ってください。歓びましょう。郷土のために死ねることを。感じてください。若い双肩
に、その重みを。プログラムの死は死ではあぁりません。貴重なサンプルデータとなり、未来永劫、大東亜共和
国の土に生きつづけることなのです。この国の総統が、平等の中から、この機会をお与えになりました。そのお
考えに間違いなんてあ ・ り ・ え ・ ま ・ せ ・ ん」
何が楽しいのか、谷崎はくるっと一回転すると、笑顔で怒った。
「――――なにより、このゲームは公平です」
ペン回しの容量で、白いチョークを躍らせる。
「等しき人間がぁ、公平な条件で戦う。このルールに何の不満がありましょーか。このプログラムはぁ、50年続
けられてきた古き良き伝統ってやつです。先人はみんーな立派に戦っていきました。それなのに、自分勝手なエ
ゴィーズムから、“和” を乱すなんてなぁ愚の骨頂です。大東亜共和国総統、ひいては人民全体への冒涜といって
も過言ではないでしょー」
そして榊に向きかえった。
「……ですからあ、『ちよちゃんはまだちっちゃいから許したげて』……なんて甘っちょろいことぬかすじゃねえ!!」
歯を剥き出して叫ぶより先に、チョークはビュンッと投げつけられていた。でも榊はもっと前、谷崎が投げる姿勢
をとった時点で動いていた。長い両手でガードする。
- 322 :命 :2004/04/12(月) 18:00 ID:kdxNReMA
- 富士樹海の廃墟の町を知りませんか。
情報があるなら是非ください
- 323 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/15(木) 19:01 ID:???
- ばきゃん。
白い石は進路をそれて、榊に当たらず、その前方右にいる森村広子(女子23番)の額にぶちあたって破裂(!)し
た。砕けやすい長チョークとはいえ、力もコントロールもデタラメだ。
「いひぃだぁぁい……」
とばっちり大王、森村広子はタマちゃんみたいな顔で広いおでこをさすっていた。それを一瞥して、ぽそっとつぶ
やく榊弥生。つゆほどにも気に掛けず、谷崎は不敵な笑みを浮かべた。
「それにぃ、あんたは知らないかもしんないけど、適齢外でもちゃーんと例外をとるって法律で決められているのよ」
「………」
「わかったらとっとと座んなさい」
「……」
榊はまだ何か言いたげだったが、引き際を感じたのか、席について黙り込んでしまった。
目線の針を受けながら、榊はふすんと頬杖をついた。
…………。
不可解だ。
詐欺師、政治家、戦略家、頭が切れる人間は一般に恐ろしい。なぜなら、利用されるかもしれないからだ。やく
ざ、気違い、狂信家。何を考えているのか判らない人間は、枠の内側にいるものにとって不安。行動が読めない
からだ。
頭が切れる上に何を考えているのか判らない人間が窓際に座っていた。
あの開山堂秘仏扉なみに開かない口を開き、わざわざ美浜ちよを弁護したのはなぜだろう。もしかすると、
「今後のこと」を考えてみたんじゃないだろうか。つまり、ゲームが始まる前に 「やさしいお姉さん像」をかおりん
みたいな人に刷り込んでおき、より近づきやすく、より殺しやすく……
- 324 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/15(木) 19:02 ID:???
- ちがう。ちがう違う。
仮にもクラスメイトだ。2年間机を並べてきた学友を、疑る意味なんてどこにもない。信じろ。決して簡単なこ
とではないけれど、全てはそこから始まるんだ。
教室に落ちる沈黙。
あれ?
今になって気づく。この沈黙は、さっきまでと違っていた。曲がり気味の目線だけが、榊の全身にプスプスと刺
さっている。
《チッ、お前はいいよ》
《人のこと心配してる余裕があるってか》
《榊さん、いつもとちがう。なんかおかしいよ》
そんな視線だ。嫌な視線だ。空気が重い。……これはつまり、つまり、優勝候補への嫉妬? 榊がいなければ、
自分の生き残る確率はずいぶん上がるのに、そう考える生徒がいるのだろうか。
もう何度目だ。わたしは教室を見渡す。いつもと違うみんなを見つけた。
- 325 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/04/15(木) 19:02 ID:???
- クラスに活気が無い。酸素は薄いのに気圧は上がって張り詰めている、そんな感じだ。神楽をみればよく判
る。追い詰められた熊のように、じっと静止中の神楽。対象的に智はまるっきり 《今日は登校日なんだ……》
モード。いつか世界史の老教師が第二次世界大戦で行われた朝鮮侵略の残虐行為について熱弁を振るいだ
したときみたいに、誰もが下を向いていた(しかしそのあいだ、当の原光治はなぜか嬉しそうにしていた。ただ
し今は、頭脳明晰で感情的な彼も例外ではない)。
心音が聞こえるくらい静か。休み時間の喧騒は遠く八組まで響き行く、ここ、きわやか三組が、だ。葬式でも
おっぱじめそうな顔(現にひとり死んでいる)の中でなお、いつもと同じ雰囲気を保っているのは、榊弥生とオー
サカだけだった。
後ろからつん、と肩をつつかれて、手に小さなメモ用紙を握らされた。ダブりの森野さんだ。なんだろう。「見た
らまわす」と素早く耳打ちされた。メモはしわくちゃになっていて、受けた者が一人じゃないことを示していた。
内容はこうだ。
南端の港で集まろう。みんなで考えれば、きっと何とかなる。
大山
そうか。こうやって秘密裏に連絡をとっておけば、どんな形でゲーム開始したとしても、後で必ず再集合できる。
このメモは、教室右後ろの端にいる大山から窓際前方のわたしまで、少なくて8人、多くて15人は経由している。
大山は気がつくから、同じメモをいくつも作って別の方向に送らせているだろう。
メモを水原暦の手に握らせた。大丈夫。まだみんな、疑心暗鬼にはまったわけじゃない。
- 326 :DEATH ジャッカル :2004/04/29(木) 21:46 ID:???
- 割り込み失礼。
おお!!変なタイトルのスレだと冗談半分で来てみたらすごい超大作が!!
応援してます。がんばってください!
>>313
つかぬ事を聞きますがその2人の脱走者と言うのはやはり本編の2人ですかね。
だとしたらあずまんが大王の世界とBATTLEROYALEの世界が一緒か……
ギャップがスゴイな……
いえ、馬鹿な質問と感じたら答えなくてもいいです。どうも失礼しました。
- 327 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/05/04(火) 19:46 ID:???
- #9 明るく、楽しく、元気よく
たっぷり間をとって質問がないのを確認すると、谷崎は腕時計に目を落とした。ケースは貰いものだから高くて、
バンドは買ったから安物のやつ。
「えー、んじゃあ毎年やるんですけど、余った時間を使って、こっから士気を高めましょう」
説明はおおかた終了らしい。それにしても士気? みんなのやる気を引き出すために、円陣を組む、わけない
か。逆に結束してしまうか。
「こう教室をみまわすとー、殺る気まんまんになってる子もいりゃぁ……」
確定条件の笑みを浮かべ、谷崎は榊弥生をみた。
「いまひとつ状況を呑みきれてない子もおるよおでー」
そっぽを向いているので、彼女の表情は確認できない。できたところでどうせ無表情だけど。
谷崎は手をひらひらさせた。
「ま、いきなりのことで悪いたー、思ってんだけどね」
「“これから殺しあうぞー” という意気込みをつけてもらうために、先生によっては紙配って、“わたしたちは殺し
合いをします” とか3回書かせたりもするそうだけど、みんなもう高校生だから、んなめんどくせーことする必要な
いでしょう。ちょうど国旗があることだし、選手宣誓で済ませちゃいましょう」
「そいじゃ生徒を代表して体育委員」
- 328 :名無しさんちゃうねん :2004/05/22(土) 20:49 ID:???
- 割り込み失礼。
私にとっては大阪板で一番楽しみにしているSSなので続きを楽しみにしています。
というか、楽しんでいたのに今まで感想レスしなくてごめんなさい。
作者様にはちよちゃんを差し上げたい。
__ 、
r'´:: .:::`ヽ ゙_,,..ノ''"゙、
f´`i:: ..:;f´`i ゙_,,..ノ''"
レ'ゝ;;;;;;;;;ゝノ'
/~~~~ i_]つ やる気 出ろ〜
、'_______」 やる気 出ろ〜
/ l l l l i
- 329 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/05/28(金) 16:13 ID:???
- #9 明るく、楽しく、元気よく
谷崎は腕時計に目を落として(バンドが安物のやつだ)、説明がおおかた終了した
旨を伝えた。
今の空気には、ざらざらした恐怖と屈折した希望が入り混じっている。
教壇を歩む谷崎ゆかり。
「えー、んじゃあ毎年やるんですけど、余った時間を使って、こっから士気を高めま
しょう」
士気? ちょっと動揺した。みんなのやる気を引き出すために、円陣を組む、わけ
ないか。逆に結束してしまうか。
「こう教室をみまわすとー、殺る気まんまんになってる子もいりゃぁ……」
確定条件の笑みを、榊弥生へ浮かべた。
「いまひとつ状況を呑みきれてない子もおるよおでー」
そっぽを向いているので、榊の表情は確認できない。できたところでどうせ無表情
だけど。
谷崎は手をひらひらさせた。
「ま、いきなりのことで悪いたー、思ってんだけどね」
「“これから殺しあうぞー” という意気込みをつけて、ゲームを円滑に進めるためにや
るちょっとしたオマケです。先生によっては紙配って、“わたしたちは殺し合いをします”
とか3回書かせたりもするそうだけど、みんなもう高校生だから、んなめんどくせーこと
する必要ないでしょう。ちょうど国旗があることだし、選手宣誓で済ませちゃいましょう」
「そいじゃ生徒を代表して体育委員」
え?
谷崎は何て言った。
- 330 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/05/28(金) 16:14 ID:???
- 「体育委員は前に出てきんしゃーい」
は。
ああ、わたしだよ。
男子の体育委員は……大田慎一。だめだ。慎一はゲームに参加しない。
「はい、みんな立って立ってー。ほら、スタンダアップ!」
谷崎に促され、みんなはぼろぼろ立ち上がっていく。わたしは戸惑いがちに立ち
上がった。
意識してのろのろと歩いた。
選手宣誓といっても、一体なにを言えば良いのか。体育大会では何て言ってたっけ。
木村のアレは、参考にならない。教壇の前で逡巡していると、あらかじめ決まってい
たのか、端に立っている兵士が小さく折りたたまれた紙切れを差し出してきた。
開く。
…………。
無言で差し返そうとすると、なんと兵士が銃を突きつけてきた。
銃口がブラックホールにみえる。
背中が汗ばんでくる。こんなの、言うだけだ。うん。言えば済むことなんだ。国旗の
前に立ち、仕方なく手を挙げた。
「……宣誓」
「声が小さい」
ああっ!
わたしはもう、ヤケになっていた。
右手を天高く張り挙げる。
叫んでやろうじゃないの。
- 331 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/05/28(金) 16:14 ID:???
- 「宣誓! わたしたち三組一同は、日ごろの学習の成果を存分に発揮し、最後の一
人になるまで、明るく、楽しく、元気よく殺しあうことをここに誓います!」
回れ右をして、生徒全員と相対した。復唱だ。みんなの視線が突き刺さる。
「復唱! “ワタシタチハ、殺シ合イヲシマス”!」
「「ワタシタチハ、殺シ合イヲシマス!」」
40の声が一斉に、狂った言葉を復唱する。滝野智が冗談ばかり言うその声で、オ
ーサカが訛りかかったその声で、美浜ちよが幼さの残るその声で、狂った呪文を復唱
している。
「復唱! “ヤラナキャ、ヤラレル。先ニ殺レ”!」
「「ヤラナキャ、ヤラレル。先ニ殺レ!」」
わたしは回れ右して、再び国旗に向き直った。
「第42回プログラム! 生徒代表、女子12番、奈継沢千尋」
国旗に頭を下げる。もし時間を止められたら、割いて破って畳んで丸めて、オーサカ
のよだれ拭きにしてやる。
「よくできました」
谷崎ゆかりに初めて褒められた。
- 332 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/05/28(金) 16:14 ID:???
- #10 いよいよいよ
「――――幸せは誰かが運んできてくれるもんなんかじゃありません。自分の力で勝
ち取るもんです。プログラムは、あんたたちが立派な大人になるための試練だと思っ
てください」
ひととおりのスピーチを終わりに、谷崎はバシッと教卓叩く。
「さあ、未来へのファースト・ステップです!」
前方戸口の鍵が開けられ、ストレッチャーが数台運び入れられた。林間学校へ持っ
て行った個人の旅行鞄に、見覚えのない紺色のディパックが山積みされている。
「いよいよこれから一人ずつこの分校を出発してもらうわけなんだけどー、戦う高校生
のために、先生から特別プレゼントがあるわよー」
谷崎はディパックを一つ、拾い上げた。
「ひとりワンセット。中には食料、飲料水のペットボトル。 地図と名簿。懐中電灯、時計。
それと武器が入っています」
チャックを引き、もろもろの品が並べられていく。給食にでそうなコッペパンが4つ。ミ
ネラル・ウォーター2本。与津場島の地図……
「手ぶらのまんま出発させたら、スポーツの得意な奴がどーしても有利になっちゃうわ
ねー」
懐中時計を取り出したところで、谷崎が手を止めた。
「ほんだから、平等の思念に基づいて、つーのもなんだけど、ディパックによってそれぞ
れ別の武器が入ってます。不確定要素を加えることで、だれにでも平等なチャンスを与
えるわけね」
武器を取り出さないまま、リバースで支給品をしまっていく。
場違いに呑気なたとえだが、福袋のようなものか。中にはいっているのがセーターで
も商品券でもなく、友達を殺すための凶器の。あのディパックには、何が入っているの
だろう。
「んー、見たいかしらー?」
誰かが唾を飲む。
「きしししし。チラリズム」
矢先が鋭く光っている。
小型の、女性用だろうか。クロスボウ、だった。
- 333 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/05/28(金) 16:15 ID:???
- 「女の子で事情がある人もいると思うんで、ディパックと一緒に、個人の荷物もここで返
しとくわよー」
そして谷崎は横の兵士から透明のビニール袋を受け取った。中には無数の紙片が入
っている。
「分校を出た瞬間からゲームが始まります。最初に誰が出るかは公正にクジで決めて、
その人から出席番号順に行ってもらいましょう」
ゲーム参加者としては先に出たほうが有利かと思ったが、実際そういうわけでもなさそ
うだった。確かに人より先に出れば、その分フリータイムを得ることができる。武器の確
認や、身を隠す時間が多めにもらえる。でも逆に後から出れば、その分セフティータイム
が延びる。いきなり訳のわからないまま戦場に投げ出されるよりも、安全な教室でじっくり
プランを練ったほうがいいかもしれない。
もちろん戦うためでなく、逃げ出すため、もしくは“政府と”戦うためのプランだ。
代表して学級委員(美浜ちよ)が、紙片を一枚つまみとらされた。谷崎は受け取って広
げ、腰に手の甲を当てながらつぶやく。
「まっ、あんまし変わんないわねー」
一呼吸おいて、
「ほいじゃ、名前を呼ばれた人は荷物を受け取って、元気な返事といっしょに戦場へ突っ
走ってください」
- 334 :名無しさんちゃうねん :2004/05/30(日) 12:32 ID:UGH5zvCA
- ここ読んでる人で、なんかお勧めのバトロワ系SS知らない?
- 335 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/06/07(月) 16:42 ID:???
- 「男子3番、大川光人くん」
いきなり名前を呼ばれた大川は、喉の奥から掻き出すような返事をして立ち上がる
と、転びそうになりながら教壇の前に行った。兵士にディパックを投げ渡され、しばら
く踏みとどまっていると、怒鳴られ、追い立てられるように外へと走った。
【ゲーム開始】
携帯の時刻表示と教室の掛け時計は、0時7分を示していた。
「生徒間に2分のインターバルをおきます。 女子3番は心の準備をしときなさーい」
番号順で1人につき2分のブランクができるなら、女子12番のわたしまでは……えっ
と、38分の余裕があるはずだ。長くも短くもない時間だ。わたしみたいだった。
出入り口付近には、大川光人・双子の兄である雅人が座っている。遺伝子レベルの
そっくりさんで、髪も同じGIカットだから、代わりに雅人が出発していても谷崎は気づか
なかったかもしれない。
大川光人。
このお年頃の男は相手にナメられるのを極端に嫌うため、無闇に髪を脱色してみせ
たり、腰パンというファッションを試してみたり、色々工夫らしきことをしている。後藤も
さり気なくその口だ。でも、ちゃんと毎日出席してくるし、会話を聞いていると母の三人
称が「お母さん」だったりする。しかしながら、大川兄弟に至ってはしっかり勉強してい
て、そこはかとなく東大組の一員だった(双葉学園高校の年間東大生搬出量は現役の
みで40人。中高一貫でもないのにこの数は驚異的らしいけど、3人に1人が東大にい
く某女子高に比べれば低い割合だから、クラス内に“東大組”と称される区分が存在す
る。水原暦とか、大山将明とかがそれだ)。後藤らは不良というよりむしろ、不良という
観念に陶酔するセミ不良といったところ。
「女子3ばーん、大野多美子」
床を歩く多美子の左足が上がる度に、たぱ、たぱ、と床に張り付く音がした。森和良
介の吐き捨たガムを踏んだんだろう。双葉学園二年にいる、後藤や大川のなりきれ
ない[本物の不良]、その森和だ。
厳正な神社の一人息子が、どうして不良なんてやってるのかは知らない。
「男子4番、大島雄貴」
- 336 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/06/07(月) 16:42 ID:???
- 骨折した柊琴乃の斜め前で、特注サイズの学生服が起立した。双葉学園、相撲部
一名。それが大島だった。遠い昔(具体的には昭和初期から中期ごろ)は野球も剣道
もなんでもできる、三組でいえば東野みたいなスポーツマンが相撲をやったらしい。で
も現在この国では優秀な人材がバスケやサッカーにがっぽり取られてしまい、腕立て
伏せもろくにできず、巨大なだけが取り柄です、なんて男が相撲をやるようになった。
大島は身長が190近くあり、サッカー部でゴールキーパーを務める中本高次
(男子11番)(中本の口癖は『余裕だ』。これまでの展開で、その口癖も治っただろう)
よりも背が高い。にもかかわらず、体育の授業ではオーサカ級のどんくささをみせてい
た。土俵でモンゴル人やハワイ人ばかり活躍する現状は、責められない気がする。
だから大島が、通りざまにあの草食恐竜みたいな男が、柊琴乃から松葉杖を一本剥
ぎ取るのは予想できるはずがなかった。
「いや! いかないで、大島君! 私、それがないと歩けな……」
異常事態は、人を判らなくする。
「うぅあ、うあああ!!」
松葉杖は二本ないと正常に機能しない。大島は、柊琴乃から何を奪い去ったのだろう。
固くて丈夫な、スチール製の松葉杖の片割れ。それは、歩くことを奪ったんだと思う。大
きな学生服は廊下の闇に溶け、消えていった。
「かぐらー。女子4番、神楽」
「……」
神楽は膝を拳で叩き、腰を上げた
「神楽彪乃ー」 やや苛付いた様子で谷崎が呼ぶ。
「……はい」
ゆらりと教卓まで近づく神楽。
谷崎を見上げる。
「はっ? あんた何よ、その反抗的な目は」
- 337 :247 【あずまんがバトルロワイアル】 :2004/06/19(土) 15:47 ID:???
- 猛禽類のような目。神楽がこんなに敵意いっぱいの目で谷崎のことを見たのは初めてだった。
活発な神楽が、担任時代、谷崎に意見することは少なかった。人付き合いのあっさりした彼女
は、馬の合わない相手と無理に近づこうとしない。悪いことは悪いと糾弾するのは慎一で、悪い
なら悪いから近寄らない。それが、結局は女性の神楽が自然に身につけた処世術のようだった。
彼女は理不尽な怒りを起こさないために、わがままな大人をあえて避けていたような節があっ
た。そのぶんだけ黒沢に懐き、榊と打ち解けようとしていた。
無理もない。だって神楽は、谷崎に下剤を飲まされかけたから。
「殺し合いよー。戦いよー。あんたが好きそうな行事じゃなーい」
手を肩の高さに挙げて、谷崎がうたう。意味も無く。
ギッと歯を食いしばって、神楽は言った。神楽じゃないみたいな口調だった。
「……一緒にするな」
パンッ!
平手打ちがとんだ。
神楽は赤くなった頬を押さえながら、谷崎を睨みつけている。
「だいたいナマエキなのよ、あんたは」
谷崎は塩素でほんより脱色されたその頭を乱暴に掴んで、髪の毛をくしゃくしゃさせながらいった。
「せいぜい、その出来損ないの頭でどおーやれば榊から逃げ通せるかを考えることね」
「まっ、逃げるなんてム・リなんだけどねー」
ケタケタという笑い声。
その相手の神経を逆撫でするような言い方に、神楽が逆上しないはずもなく、
- 338 :名無しさんちゃうねん :2004/07/06(火) 09:57 ID:???
- >>247
大変とは思いますが、続きを楽しみにしております。
レスがほとんど無いのは、読み手の皆さんが、話の流れを妨げたくないからだと思います。
- 339 :名無しさんちゃうねん :2004/07/08(木) 21:17 ID:UO/PpxrE
- tada mokumokuto kakitudukeru syokunin no ikizama ni kanjiiru tokoro ga aru
- 340 :しゅ :2004/07/08(木) 21:51 ID:bZ3hzOfo
- いまさらですが私も以前より拝見させてもらってます
>338さんの仰るとおり妨げるのもどうかと思ったのでレスを控えさせてもらってたんですけど
一言応援しているとだけ言わせてください
- 341 :名無しさんちゃうねん :2004/07/28(水) 18:46 ID:wO8On.8I
- 作者が書き込んでいない今こそが、感想を入れるチャンスだ、諸君!!
- 342 :名無しさんちゃうねん :2004/07/28(水) 22:14 ID:qKkwUtCQ
- 予断ですが、仮装競走でカオナシやったの誰なんでしょう?
- 343 :名無しさんちゃうねん :2004/08/02(月) 18:22 ID:Y/XZTYco
- >>342
背の高い人で、千尋と同じクラスの人でしょう。
……誰?
そもそも千尋と同じクラスの人って誰かはっきりしてる?
- 344 :へーちょ :へーちょ
- へーちょ
- 345 :名無しさんちゃうねん :2004/08/09(月) 00:03 ID:???
- >>342
後藤君とか?
- 346 :名無しさんちゃうねん :2004/08/10(火) 11:38 ID:???
- >>345
後藤……質問スレでのキャラならありえないこともないが…
- 347 :名無しさんちゃうねん :2004/08/20(金) 07:23 ID:h8naTGz6
- バトロワ続ききぼん
- 348 :名無しさんちゃうねん :2004/11/11(木) 14:51 ID:XODukgL.
- 作者様降臨希望age
- 349 :2005年2月2日2時 :2005/02/02(水) 14:35 ID:???
- いぇい!
あげ
- 350 :名無しさんちゃうねん :2005/05/16(月) 19:29 ID:???
- バトロワマダー?(AA略
- 351 :名無しさんちゃうねん :2005/05/17(火) 12:41 ID:???
- >>342
長谷川くんだよ ハァハァ
- 352 :長谷川 ◆71EpTLVkiI :2005/05/21(土) 23:43 ID:???
- >>351
ガッガッガッガッガッ
おい!!
- 353 :名無しさんちゃうねん :2005/07/10(日) 03:49 ID:???
- あげ
バトロワ続ききぼん
- 354 :名無しさんちゃうねん :2005/11/06(日) 21:52 ID:???
- バトロワの続きは…まだなのか!?
- 355 :名無しさんちゃうねん :2005/11/08(火) 13:53 ID:CV1raFhE
- まだかー!
- 356 :名無しさんちゃうねん :2007/09/14(金) 23:46 ID:UsyE/dZo
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\ \ ´ `‐‐'/ ,'i:::! !/
ヾ,‐-\ i ,/ '!/
\ト、\ ゝ ,'´ !'
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レ'゙'ヽ、\\ ゙、 ゙'ヽ、 ,,、-‐ '~ ///\
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.| ゙ヽ,\\\ ヽ-‐''´ `i ┌二二 ン / |
l \゙ヽ、ヽ‐-----, ゙、 i ',゙、、  ̄ / |
゙, \ ヽ‐'''",ァ/ ゙、 l 〉i,ヽ / |
l \ ∨く L ゙、 ,' /"/,' / |
- 357 :名無しさんちゃうねん :2007/09/19(水) 19:38 ID:???
- まだあったのか
- 358 :名無しさんちゃうねん :2008/04/30(水) 00:44 ID:wb7rcNH.
- もう続きは絶望的か・・・
>>334
ラグナロクのバトロワおもしろかったよ・・・
- 359 :名無しさんちゃうねん :2009/09/02(水) 16:45 ID:0FTTnJiU
- 一年ぶり記念カキコ
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