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スレッドが大きすぎます。残念ながらこれ以上は書き込めません。

あずまんが大王で仮面ライダー

1 :名無しさんちゃうねん :2003/03/05(水) 00:06 ID:4yMPUvXI
みんな、ずっと、一緒…の筈だったのに、どうしてこんな事に!?
こんなの、酷すぎるよ…だが、それがお前達の運命だ
戦え、戦わなければ生き残れない……
果たして、彼女たちはどう戦い、どう生き残るのか!?
byあずま士郎(一部改竄)


前々スレ
あずまんが大王で仮面ライダー龍騎
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1023956889/l50

前スレ
あずまんが大王で仮面ライダー龍騎2
http://comic2.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1040046719/l50

関連HP
あずまんが大王で仮面ライダー龍騎(オーディソ氏のSS保管所)
http://members.tripod.co.jp/AzumangaRyuki/index.html

410 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:09 ID:???
◆SwudF.K6さん、>>385-398 乙です。
「第35話 信じる力」堪能させていただきました。

暦と智のやりとりがいい感じ♪
子供をあやす大阪さんもいいッス。
ちなみに私の脳内では、彼女は将来、保母さんになる設定です(w
そして、コピーベントによるE.O.W.使用、カコイイ!
恐ろしいカードですなぁ、コピーベントは。

今回はメインキャラ誰も死ななかったけど、大阪さん、不穏な動き?

続きが楽しみです。

ミネルヴァの梟さん、>>400-408 乙です。
十二章、堪能させていただきました。

こちらもまた暦と智がいい感じ♪
日常での二人のやりとりが丹念に描写されてますね。
そして、ガイ登場!芝浦?の台詞が、いかにも奴ら
しい小憎らしさにあふれてました。
智、暴走して捕まった挙句、人質になりそうッス(w

続きが楽しみです。

さて、私も続きをアプします。・・・・・・でも、スレの容量がそろそろ?

411 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:11 ID:???
『仮面ライダー 神楽』 第九話 <壱>

 ――その後の行動は、脊髄反射で行われたかの如く迅速だった。

「令子さん、ども! 編集長、すみません! 今日は帰りませんので、戸締りお願いします!」

 まるでマラソン選手が給水所で行うように、走りながら令子に携帯を返し、次いで大久保に一礼
すると、そのまま一気に加速してドアから飛び出した。
 エレベーターを待つなどもどかしく、階段を駆け下りる。いや、飛び降りたといったほうが正し
いだろう。一段一段などすっ飛ばし、踊り場からフロアへ、そしてまた踊り場へと跳躍しているの
だから。

 頭の中では、先ほどの谷崎の言葉がぐるぐる回っていた。
(にゃもが辞表・・・・・・)(あんたのせいで・・・・・・)(恩知らず・・・・・・)(恩知らず・・・・・・)

「畜生、なんで、なんで、そうなっちまうんだ。先生は何ひとつ悪くないじゃないかっ!」

 ――予想だにしなかった出来事だった。
怒り、驚き、戸惑い、そして悲しみ。いくつもの感情が、まるでミキサーにかけられた果物のよ
うに砕けて混ざり、わけのわからない衝動となって、この娘を駆り立てていた。
 視界がぼやけてよく見えなくなっている。いつの間にか、自分が泣いているのにさえ神楽は気づ
かなかった。
 心身両面の障害物が、彼女の卓抜した身体能力に微妙な狂いを与え・・・・・・そして、結果を出した。
 最後の踊り場に着地する時、神楽は右足首を捻り、そのまま一階までころげ落ちてしまったのだ。

「うがぁぁぁっ!」

 無人のフロアに苦悶の叫びが響いた。
捻挫と、打撲の激痛が襲う。
 ・・・・・・歯を食いしばり、立ち上がった。
 早く、一刻も早く恩師のもとに駆けつけるために。

 ・・・・・・だが、もはや立っているのが精一杯だった。走るどころか、歩くことさえおぼつかない。

「くそ、こんな時に! 動け、私の脚! 何の為にいつも鍛えてるんだ。動けよっ!」

 再び、フロアに神楽の悲痛な叫びが響き渡った。

412 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:12 ID:???
「わ〜! な、なにデタラメいってんのよ、私がいつ辞表を出したっ!?」
「あー、ご免。なんか、あのバカの声聞いてたら、からかってやりたくなってさぁ」

場面変わって、神楽の母校。いまや夜の帳の降り始めた駐車場に、女教師二人の声が響く。

「な、何よ。じゃあ、今のホントに神楽なの! なんで、あんたが番号を?」

 未だ黒沢は、事態が把握できていなかった。無理もないことだ。

 ――ことの始まりは、てんやわんやの一日がやっと終わり、二人で家路に就こうとした時だった。
 黒沢は気がかりだったことを直接神楽に問いただそうと決心し、メモリーに入っていた彼女の携帯
番号にかけてみたのだ。
 しかし、だめだった。神楽は番号を変えてしまっていた。
 途方に暮れる黒沢を尻目に、谷崎は鼻で笑うと、いずこかに電話をかけ始め・・・・・・この騒動が始ま
ったのだ。

「さぁねぇ? ま、あんたもなーんにも教えてくれないんだからぁ、私も教える義務はないでしょ、
んん?」
「・・・・・・いい加減にして!!」

 突然の一喝!谷崎も思わず気おされて、息を呑んだ。

「ひとの気も知らないで! そんなに無断欠勤のわけ教えて欲しいなら、この後、イヤって言うほ
ど話してやるわよ! だけど、なんで神楽を、あのコを巻き込むの!バカぁ!」
「・・・・・・バカだぁ? バカはそっちだっての! 何よ、神楽、神楽ってうっとおしい!」

 谷崎も負けてはいない。お得意の逆切れで応戦だ。

「何ぃ! 教え子気遣ってなにが悪いのよ! ああ、どうしよう。あのコの性格からして、そんな
こと聞かされたら真に受けて大騒ぎよ。今すぐにでも飛んで来ちゃうわ!」
「はっ、そんなわけねー。そこまで神楽もバカじゃないっての。だいたいあんたはさぁ」

 そんな調子の不毛な言い争いが、十分ほど続いた後だった。

――キィィィン キィィィン

「・・・・・・え、ちょっと待って!」

 さらに口喧嘩がエスカレートしようとするところで、体育教師は唐突に会話を切った。
 あわてて辺りを見回す。聞こえたのだ、忌まわしいあの音が。

「・・・・・・あんた、何やってんの? いきなり」
「いいから、静かにっ!」

 谷崎を背にかばう姿勢をとって、さらに周囲を注視した。アドレナリンが放出され、胸の鼓動が
高まる。同僚を、旧友を、いやそれ以上の存在である彼女を怪物の餌食になど、絶対にさせない。
もし、目の前で変身せねば守れないなら、躊躇などしない。決意を固めて黒沢は、バッグの中に手
を入れ、デッキを強く握り締めた。

413 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:17 ID:???

・・・・・・そこへ、何者かが躍り出た!車の陰より!

「くっ!」

 反射的に黒沢がデッキを取り出そうとする・・・・・・が、わずかに早く、それは言葉を発した。

「せ、せんせぇ!黒沢先生っ!」
「ええ、か、神楽?」
「はぁ? 神楽ぁ?」

 そう、それはまさしく神楽!先ほどまでさんざん話題にしていた元・教え子だったのだ。

「何よ、こいつ? ホントにスッとんで来やがった・・・・・・」
「か、神楽・・・・・・なの?あんた、いったい・・・・・・え?」

 どうして、どうやって、ここへ?そう、問いかけた黒沢の言葉は途切れた。
まだ息も荒いままで自分を見つめていた娘の目から、たちまち大粒の涙がこぼれ出したからだ。

「せ、せんせ・・・・・・わ、私、わたひ・・・・・・えっく、辞表、うっく、せ、責任、ひっく」

 涙だけではない。止まらないしゃくり上げに途切れ途切れになりながら、その口から絞り出され
た言葉。その迫力が半端な問いかけをはばからせたのだ。――正直なところ、何を言っているのか
は理解できなかったが。

「・・・・・・神楽」

 だが、黒沢は確かに感じ取った。真っ直ぐに、あまりにも真っ直ぐに自分に向けられた思慕の情
を。敬い、慕ってくれる純な気持ちを。
 そして、気づいた。それこそが実は、近況だとか、あの時逃げた理由だとか表面的な事柄でなく、
自分がこの娘に確認したかったこと、そのものであったと。

「ひっく、私、わたひは」
「もう、いいわよ。神楽。わかったから・・・・・・もう」
「えっ?何、何がよ?主語がないじゃん?」

首をかしげる谷崎をヨソに、なおも子供のように泣きじゃくる神楽を黒沢はそっと抱きしめる。
その目尻にも、光るものがあった。

「ハァ?何なのこの展開は?わけわかんねー!・・・・・・ったく、ホントつきあいきれないわ、体育会
系のノリには!」

 一人取り残された形になって英語教師は、しごくまっとうなご意見を口にし、満月かかる夜空を
仰いだ。

414 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:18 ID:???
第九話 <弐>

「く! こいつ、契約モンスターが何匹いるんだ?」

 四方に視線を走らせながら、男は吐き捨てるように言った。
 その身は緑を基調。随所が銀のメカニカルな防具で鎧われている。――仮面ライダーゾルダ。

 場所は都内某所の公園・・・・・・の裏側、鏡の中の世界。谷崎が見上げた時より更に高所に位置を変
えた満月が、煌々と敷地内を照らしている。その明るさが逆に暗さを際立たせる木々の陰から、無
数の光る目が彼を凝視していた。

「今日はついてないね、ホント。おっと!」

 耳に障る声をたてて襲い来た二体の影を、銃――マグナバイザーで撃ち落す。
 しかし、それらはしばし地に倒れ苦しげにもがいただけで、すぐに回復すると、高々と跳ねて木
陰へと逃げ去った。かなりの素早さだ。

「しかし、邪魔になんないのかねぇ、あんな長い角二本もつけて」

 揶揄のつぶやきにも、疲労がありありとみえた。すでに幾度も手痛い一撃を受けてしまっている。
あのモンスター達から。そして、それらを率いるライダーから。本人は決して認めないだろうが、
彼は今、まさに窮地に立たされているのだった。

「・・・・・・ったく、なんでこうなるのよ。軽くひと仕事のはずがさぁ」

 ことの起こりは家路の途中、停留所に止まったまま動かなくなっている路線バスを見つけたこと
だった。乗客も、運転手までも誰もいない。――すなわち、新たな失踪事件の発生。
 北岡は、予感した。まだ、この事件の元凶が近くに居る事を。
 そして、それは的中した。
 鳴り出した耳障りな音。バスの窓ガラス内を走るモンスターの影。赤く昆虫めいた体とブーメラ
ンのような武器。
 北岡は迷わず変身した。最近、契約モンスターへの『餌』の供給が途絶えている。この機会を逃
す手はない。所詮、相手は一匹。すぐに済むものと読んでいた。
 だが、その当ては外れた。
 同じ獲物を狙って別の狩人が乱入し、戦いを挑んできたのだ。

「まぁ、ライダー同士が出会ったんだから戦うのは当然だけど、こういうゴチャゴチャしたのは好
きじゃないんだよね・・・・・・っと!」
『シュート・ベント』

 召喚したギガランチャーを、モンスターの一番密集した場所へ発射する。

415 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:19 ID:???
「ギッ!」「ギギッ!」「ギギギーィ!」

 しかし、着弾より早く奴らは跳び去った。爆音とともに、空しく樹木や土砂のみが吹き飛ぶ。

「ちっ、鬱陶しいな。ぴょんぴょん跳ねてさぁ、おたくら、もしかしてバッタ?」
「カモシカとかじゃないの? オレもよく知らないけど」

 敵ライダーが答えた。やたら明るくて軽い口調だ。
 その声を合図のように、今度は三体の怪物がそれぞれ違う方向から飛び掛ってきた。おのおの手
にした二股の武器で突いてくる。

「知らないって、自分のモンスターだろ? ・・・・・・おおっと!」
「ギ〜〜!!」

 ランチャーを振り投げ、二体を跳ね飛ばす。残りの一体の突きはマグナバイザーの銃把で逸らし、
体勢を崩したところへ蹴りを叩き込んだ。
 だが、これで凌ぎ切ったと安堵したのがマズかった。その虚を突かれ、敵ライダーの廻し蹴りを
頭部に受けてしまったのだ。軽い脳震盪が起き、意識が混濁する。

「うぐ・・・・・・ぐ!」
「隙あり! ってね。それ、それっ!」

 奴は畳み掛けるように、宙からの二段蹴りを肩口に打ち込んできた。
 モロに食らってゾルダは後方に倒れた。衝撃で手から離れた愛銃が、芝生の上を転がってゆく。

「キマったね! どう、オレって強いでしょ?」

 もがくゾルダを見下ろして、奴は勝ち誇った。すっかり浮かれている様子だ。

「実はオレ、これが対ライダー戦初勝利なんだ。うれしーなぁ、帰ったらお祝いしなきゃ」

 勢いよく右膝を上げ、そこに装着されている召喚機にカードを挿入する。

『ファイナル・ベント』
 認証音と同時に、四方八方に散らばっていたモンスター達は、素早く己が主の背後に整列した。

「祝いの酒は、やっぱ高い赤ワインかな。キンキンに冷やしてさ・・・・・・それ行けぇ!それ、それ!」
「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」

 奴の掛け声とともに、モンスター達はスキップのように小刻みに跳ねながら、ゾルダへと突進を
開始した。

416 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:20 ID:???
 ――いまや、その命、風前の灯!ここがゾルダ終焉の地になるのか?

 否!逆に、敵の有様を見ていた彼の目に、再び強い光がともった。勝機を見出したのだ。

「うぉぉぉぉっ!」

 マグナバイザーを拾い上げ、カードを挿入!
『ファイナル・ベント』

「おいおい、いまさら遅いって」
「・・・・・・いや、ちょうどいい」
「ギッ!ギッ!ギギャーー!」

 うそぶくゾルダへ最初の一撃を加えようとした列先頭の三匹が、唐突に跳ね飛ばされた。大地よ
り現れた鋼鉄の巨人・マグナギガに激突してしまったからだ。

「ほーら、いいタイミングだろ?」

 ゾルダの手が、マグナギガの背にセットされた愛銃の引き金にかかる。
 次の瞬間、辺りは灼熱と爆炎の地獄と化した。


 ややあって、静寂を取り戻しつつある戦場から聞こえてきたのは、意外にも笑い声だった。

「うふ、うふ、ふはははは。なんだよ、あれ? どっから攻めてくるかわからなくて苦労してたの
に、わざわざ同じ方向に並んでくれちゃって。なんていうの? カモネギ?ははは・・・・・・、それで
もさぁ、俺を蹴り倒してすぐに発動させてたら決まってたかもしれないのに、のんびり能書き垂れ
てんだから、くっふっふっ」

 声の主はゾルダだった。まだふらつく体を直立不動の相棒に持たれかけながら、それでも身を震
わせて笑っている。常に気取りと余裕をまとっているこの男には珍しいことだ。

「はぁーっ・・・・・・まぁ、負けるわけないんだけどね、この俺が。とくに、赤ワインをキンキンに冷
やそうなんて馬鹿にはさ。さてと」

 やっと笑いの発作も納まったようだ。ゾルダは周囲に目をやり、戦果の確認を行う。美しかった
樹木も芝生も吹っ飛び、ただの荒地になりはてたその上に、光る球体が三個浮かんでいた。

「たった三匹か?主人に似ずに、行動迅速ときた。どうやら、ライダーの方も仕留めそこなったみ
たいだな・・・・・・ま、いいか。食っていいぞ、マグナギガ」

 重低音の鳴き声で答えると、鋼鉄の巨人は球体をその口内へと吸い込んでいった。

「美味しいの、それ? さてと、帰るか。ゴロちゃん、ディナーの支度して待ってるだろうから」

417 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:23 ID:???
第九話 <参>

 同じ頃、公園内のトイレ――現実世界側の――に、鏡から躍り出たばかりの異形の姿があった。
 その身は黒を基調とし、体の随所を覆う防具は茶色。兜と両の肩当には、湾曲した金の角が装飾
されていた。召喚機は右膝につけたガゼルバイザー。その名を仮面ライダー・インペラーという。

 ――焦げ臭い匂いをさせていた。匂いだけでなく、実際、体のあちこちは、煙をあげて燻ってい
た。無理もない。ゾルダのファイナルベントを食らったばかりなのだから。とっさに配下のモンス
ター一匹を盾にして直撃は免れたが、それでもダメージは少なくない。

「嘘だろ・・・・・・あんなのアリかよ? うぐっ、痛ぇ〜」

 鏡が割れるような音とともに変身がとけ、現れたのは長身の青年だった。面長の顔はなかなかの
二枚目。身につけているスーツも高級そうだ。――いまいち、着こなせていないが。
 彼の名は佐野満。歳は21と若いが、大企業の社長である。急逝した父の跡を継ぎ就任したのは、
まだほんの半年前のことだ。

「はぁはぁ・・・・・・ミサイルだのレーザーだの、卑怯だよなー」

 壁に手をついて体をささえ、いまだ荒い呼吸でゾルダを罵る。
 契約モンスターは一匹だけである他のライダーに言わせれば、唯一、群れ単位で従えることが出
来るインペラーも充分『卑怯』なのだが。

 ――ギギッ! ギギィー! ギ! ギィー!

 人ならぬものの呻き声が聞こえてきた。佐野は、ハッと顔を上げる。その目に飛び込んできたの
は、鏡の中に群れなす己の契約モンスターたちの姿だった。

 メガゼール、ギガゼール、マガゼール、ネガゼール、オメガゼール、そしてその眷属たち。

 契約者、すなわち支配者であるはずの佐野に向ける眼差しは、不満と憎悪に満ちていた。

418 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:23 ID:???
「わかってるって。腹が減ってるんだろ? なんとかする、なんとかするからさ」

 佐野は必死になだめた。もうずいぶんの間、『餌』を与えてない。そのことがいずれどのような
結果を生むか、もちろん知っているから。

「今日は上手くいくはずだったんだ。赤い虫みたいな奴を狩ってさ。あの緑のライダーが邪魔さえ
しなきゃ。そうだよ、悪いのはあいつなんだって。恨むんなら・・・・・・」

 ――ギィ〜〜!! ギィ〜〜!!

 ゼール達の声に、さらに怒気が増した。数体がこちら側に出てきて、佐野を取り囲む。

「え、何?『契約は破棄された』って? まさか、オレを食うの? ちょ、ちょ、ちょっと」

 困惑など意に介さず、怪物どもは彼の体を掴み、鏡の中へと押し込み始めた。

「待て、ちょっと、おい、止めろ、止めろ、うわ〜っ」
「社長! どうなされました、社長!」

 その時、屋外から声がかけられた。彼のお抱え運転手である。家まで送り届ける途中、急に公園
脇で車を止めさせ飛び出していったきり戻らない主人を探しにきたのだ。
 武道の有段者でもあるこの男は、事態が尋常でないことを悟るや、躊躇せずに中へと飛び込んだ。
 しかし・・・・・・!

「うわ〜、何だ、何だぁ!」

 目にした光景は、理解の範疇を超えていた。己が雇い主を囲む者どもの、その姿――大きな角。
毒々しい色の肌。何かのケモノに似た相貌。そして、こちらを睨むあまりにも禍々しい視線。
 男の思考は停止してしまった。構えをとることすら忘れて、ただ立ち尽くす。

419 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:25 ID:???
「ギッギ〜♪」

 ゼール達は歓喜の声をあげた。現れたのは敵でなく、ただの『餌』だと知ったのだ。
 佐野の体を放り捨て、哀れな男へと殺到する。

「わわっ! わー、わー、わー!」
「お、おい! ちょっと待っ・・・・・・」

 待て、と言い終えるより早く、運転手は鏡の中へ連れ去られてしまった。悲鳴だけを残して。

「待てって、おい・・・・・・うわっ」

 佐野は絶句した。ミラーワールドを覗くことが出来る――そんなデッキ所有者の能力が災いし、
惨劇を目の当たりにしてしまったのだ。

 運転手の体が、群がるゼール達によってたちまち解体されてゆく。無造作に引き抜かれる手足。
裂かれた腹。引きずり出された臓物はことさら美味なのか、奪い合いになっている。生首が、ひと
齧りされては他の奴に廻され、だんだん小さくなってゆく。

「うっ、ウゲェェ〜」

 とうとう耐え切れなくなって、佐野はその場に膝を着いて嘔吐してしまった。

 ――ギィ〜? ギギギィ〜!
「止めろ、もうオレに話しかけるな! わかった、わかったから・・・・・・」

 手で耳をふさぎ、それでも聞こえてくるゼールどもの鳴き声に身もだえしながら、佐野は叫んだ。
わかったか?次はお前がこうなるぞ!奴らはそう言っているのだ。今日のところは思わぬ『餌』の
おかげで見逃されたが、もう失敗は許されないだろう。絶対に・・・・・・。

「えっく、えっく、なんとか、なんとかしなきゃ。なんとか・・・・・・」

 外を通りかかったカップルが、トイレから聞こえてくる男のすすり泣きを耳にし、気味悪がって
足早にその場を去っていった。

420 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:27 ID:???
第九話 <四>

(豆電球って、結構明るいよな。慣れてくると、まぶしいぐらいだ)

 神楽は半開きの目で天井を見上げながら、そう思った。
ほぼ真上にぶらさがる照明器具は、実用本位のシンプルなデザイン。部屋の主の性格を想わせる。
ひとつだけ残された小さな明かりが、今宵の夜空に輝く満月のかわりに、体育教師の住まう室内を
煌々と照らしていた。

(・・・・・・ふぅ。なんてゆーか、ホントどたばたしてたな、今夜は)

 小さなため息とともに、神楽は出来事を回想してみた。

 ――あれから。
 さすがに、泣きながら抱き合っただけで全て了解、はいサヨナラでは本当の電波な師弟になって
しまう。せっかくの機会なのだから、積もる話も語りつくしたい。三人で黒沢のアパートに移り、
そこで宴会となった。
 神楽の近況報告、特に大学を辞めるハメになった話は、教師二人の心を大いに揺さぶった。黒沢
は怒りと悲しみ、谷崎は揶揄と笑い、というリアクションの差はあれど。
 話がOREジャーナルのことに至ると、今度は神楽の方が驚くネタが谷崎から提供された。令子
が大学時代の後輩で、在学中はよくつるんで遊んだというのだ。次々と語られる思い出話の中の令
子は真面目だけど打たれ弱い秀才タイプ。現在のタフな彼女からは想像もできない。その間にどれ
だけの努力と克己があったのだろうか?いつの日にか聞いてみたいなと思った。

 ――そして。
 各自ずいぶん酒も回り、お堅い黒沢の口からさえも過去の『えろえろよ〜』な話が披露され、神
楽自身も大学にいたころ少々付き合った男の話なんかも打ち明けてしまったりの果てに、じゃあそ
ろそろ寝るか、ということになって現在に至る。

 その現在・・・・・・神楽は狭いシングルベッドの上、左からは黒沢にヘッドロックを、右からは谷崎
に腰へのタックルを決められた状態で、眠るどころか身動きも出来ず、天井を見上げているのだ。
 床に寝ようとする神楽を、遠慮するなとベッドに上げようとする黒沢と、三人じゃ狭いからと放
り出そうとする谷崎が、綱引きのように引っ張り合ううちに双方寝入ってしまい、この形に収まっ
たわけだ。

(く、なまじ酒が強えーと、こーゆーとき損だよな。つぶれるほど酔ってねぇし・・・・・・)

 苦笑いを浮かべながら、神楽は体の位置を眠りやすい形に変えようともがいてみた。
 その動きに刺激されてか、谷崎がウゲッとうめき声をあげる。

421 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:28 ID:???
(まずいぞ! ゆかり先生吐くんじゃねーか? べろべろに酔ってたからなぁ)

 谷崎は三人の中では一番酒が弱い、が、飲むピッチは最速だった。厄介なお人である。

(悪いけど、隔離だ隔離! ゲロまみれはご免だぜ。第一、今回の騒ぎだって、この人の大ウソが
原因じゃねーか! 床に転がって反省しろってんだ。ったく)

 神楽は谷崎の腕を振り解き、お尻と脚をうまく使ってベッドから押し出した。ゴトンと床に落ち
た音と、痛っ!という寝言が聞こえたが知らぬふり。この程度、与えてしかるべき罰というものだ。
おかげで神楽が渡るハメになった危ない橋の事を思えば。

 打撲と捻挫を負い、切羽詰って変身してしまったのは、まあいい。確かにライダーになれば怪我
の治りは格段に早い。移動にミラーワールドを使おうとしたのもOKだ。おかげでライダーはライ
ドシューターなる乗り物が使えることを知る事ができた。しかし、変身前後のことも含めて、ほん
の十分ほどで到着したのは、やはりマズかった。『電話もらった時、偶然、学校の近くに令子さん
と取材に来てたんですよー』で、ごまかせたのは奇跡であろう。

(後で令子さんに確認されたら、一発でアウトだな。まぁいいや、そんときゃーそんときで考えり
ゃいいって。ふぁぁ)

 悪霊?をベッドから追い払ったせいか、ずいぶん体が楽になり、やっと眠たくなってきた。
 ちなみに頭に絡みつく黒沢の腕は、そのままにしておいた。こちらは少しも不快ではないから。

(なんかこれって、黒沢先生に腕枕してもらってるみたいだな・・・・・・えっと・・・・・・まあいいや。女
同士だし、気にしなくても。・・・・・・それにしても、たまってたモンみーんな打ち明けたらすっきり
したぜ。大学辞めちまった件も、先生は、私が悪いんじゃーないって同情してくれたし・・・・・・もち
ろん、わかってくれるって信じてたけどな。ふぁーぁ、眠ぅ)

(・・・・・・でも、前にかおりんに言われちまったみたいに、どっか怖がってたとこがあったのかも。
もし、非難されたらって。馬鹿だよなー私って。先生はやっぱり、先生だった。私の大好きな)

 仰向けから左を下にする側臥に姿勢を変え、そっと恩師の胸元に顔をうずめてみた。

(先生の教え子は私ひとりじゃない。もちろんだけど・・・・・・今だけは・・・・・・私だけの・・・・・・)

 ゆっくりと神楽はまどろみの淵へと沈み、久々に夢も見ないほど深い深い眠りについた。

422 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:30 ID:???
第九話 <五>

 ――明けて、日曜の朝。気持ちよく晴れわたった空の下。

「それじゃあ、先生。失礼します!」
「お疲れ様。気をつけて帰るのよ。また遊びにきなさい。私にできることならなんでも相談にのる
から」
「ありがとうございます! では」
「じゃあね」

 そんな会話を残して、駅に向かうバスは神楽を乗せて走り去った。
 黒沢はしばしその後を見送ったのち、踵を返して歩き出した。

 ――いえ、結構です。バス停の場所は、だいたいわかりますから。
 と、恐縮する神楽を
 ――いいのよ、気にしなくても。コンビニに行くついでだから。
 そう押し切って、ここまで付き添ってきたのだ。

 もちろん、コンビニの件は嘘ではない。二日酔いで瀕死の谷崎の、100%の桃ジュースが飲み
たい、などというわがままなリクエストゆえだ。でも、所詮はいいわけ。本音は神楽との別れが名
残惜しかったからに過ぎない。

(あのコったら。今朝目が覚めてみたら、私にしがみつくようにして眠ってるし・・・・・・うふふ)

 思い出すと、自然と笑顔になってしまう。
 水島真奈美の失踪以来――その仇を討って後も――決して晴れる事の無かった心の中が、今やす
っきりと晴れている。今日の青空のように。

(何を勘違いしていたんだろ、私は。いつの間にか、生徒と信頼関係を築けて当然と思いこんでた。
ほんの駆け出し教師の分際で、思い上がりも甚だしいってものよ。うまくいかなくて当たり前なの
に。気持ちのすれ違いなんて、よくあることなのに。あーあ、いやになっちゃうな。ふふふ)

 横断歩道を渡り、コンビニに入った。100%は無かったが、いちおう桃の果汁入りのジュース
はあった。あの女には、これで十分だ。朝っぱらから床をゲロまみれにして、自分と神楽にひと仕
事させた罪人なのだから。フルーツゼリーとかヨーグルトとか、二日酔いでも口に出来そうなもの
もいくつか見つくろって買った。

423 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:31 ID:???
(これまで上手くいってるって思えたのは、私の力量というより、むしろ生徒たちに恵まれていた
からだったのよ。水泳部の連中や、担任したクラスの子等。その他にも、ちよちゃん、智ちゃん、
水原、榊、大阪、かおりん。個性的だけど、基本的には素直で良い子たち。みんなから私は力をも
らっていたのね。その中でも、一番はやっぱり神楽かな? えこひいきはいけないけど、波長が合
うっていうかなんていうか・・・・・・ふふふ、ホント、可愛いやつ)

 行く手にバス停が見えてきた。先ほど神楽が乗ったのとは逆方向のものだ。一組の親子がいる。
子供はまだ4〜5歳といったところ。なにか嬉しい事があるのだろう、ぴょんぴょん跳ねて大はし
ゃぎだ。あんまり飛び跳ねすぎて、黒沢が横を通り過ぎようとした時、バランスを崩してころびか
けた。

「おっと、危ない!」
「きゃはは♪ きゃはは♪」

 とっさに抱きとめた黒沢の腕の中で、なおも少女はご機嫌に体をくねらせた。暖かく、柔らかい
感触。なんだか母性本能をくすぐられて、お日様の匂いのする髪に軽くほお擦りしてしまった。

「あ、すみません。こら、結花ちゃん! お姉さんにありがとうは?」
「きゃはは♪ はは♪」
「もう! 失礼しました、この子ったら」

 まだ若い――自分と同じ年頃であろう――母親が、頭をペコペコ下げながら少女を抱き取る。そ
のえらく人の良さそうな雰囲気が、少し話をしてみたい気にさせた。

「いいえ。可愛いお嬢ちゃんですね。お出かけですか?」
「いえいえ。主人が長期出張から帰ってくるので、バス停まで迎えに来てるんです。さっき駅か
ら『これからバスに乗る』って電話があったら、この子、迎えに行くってきかなくて」
「そうなんですか。よかったねー、結花ちゃん♪」
「ぱぱがねぇ〜、ばすでかえってくーの♪ ばす、ばすぅ〜♪」

 しゃがんで目線を同じ高さに下げ優しく語りかけると、少女は体全体で力いっぱい嬉しさを表現
しながら応えた。
(うひーっ、かわいいーっ!)
 黒沢はもう一度、少女を抱きしめたくなってしまった。

「・・・・・・あ。あのバスのようです。結花ちゃん、パパが来るよ〜」
「わーい、わーい、ぱぱのばすぅ〜〜♪」

 遠くにこちらに向かうバスの姿が見える。
黒沢は親子に別れの挨拶をすると、谷崎の待つアパートへと歩み始めた。ちょうどバスの来る方
角に進む形になる。

424 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:32 ID:???
(ふふふ、あんなに大喜びで。・・・・・・子供か。あーあ、また来週あたり、母さんがお見合いの話と
か持ってきそうな予感だわ。早く孫の顔見たいとか言ってさぁ。やれやれ・・・・・・はっ!!)

 ――キィィン キィィィン

 そこへまたしても、あの音!
 教師としての懊悩。適齢期の女性としての悩み。・・・・・・等々、およそ『日常』といわれる側に属
する全ての営みを中断してまで、果たさなければならない『非日常』の義務。
 その始まりのベルが鳴っている。

(くっ、近いな。どこだ! ・・・・・・え!!)

 ちょうど目前まで迫ったバスの車内を見て、黒沢は愕然とした。
 車内に乗客がいないのだ。この時間帯では、ありえない。あの音が鳴る舞台でのこの状況からは、
たった一つの結論にしかたどり着けない。――みんな、モンスターに喰われたのだ。
 そして今まさに、最後の一人である運転手が、フロントガラスの中へと引きずり込まれていった。
 コントロールを失った車体は、勢いそのままに歩道へ乗り上げる。
 その先には、バス停とさっきの親子が!母親はあまりの突然の事態に反応できず、娘を抱きしめ
たまま立ちすくんでいる。

「危ないっ!」

 黒沢は走った。バスよりも早く!
 ライダーは生身の時でも、若干は契約モンスターから『力』の供給を得る事ができるのだ。
 車体を追い抜いてバス停へ至り、親子もろとも抱きかかえて大きく横へ跳躍する!
 一瞬遅れて、バスは彼女らの代わりに停留所の標識をなぎ倒した。さらに進み、道沿いの商店に
突っ込んで、やっと止まった。

「・・・・・・逃げて!」

 黒沢は親子を抱きしめ、万感の想いを込めた一言を発した。あれほど待ち焦がれた人を永遠に失
った母と子に、かけてやれるのはその言葉だけだった。
 何が起きたかも飲み込めないまま、母親は泣きじゃくる我が子を抱えて走り去った。

「・・・・・・許せない! 絶対に!!」

 先ほど買い物をしたコンビニに駆け戻った。事故の見物に行ったのか、店内は無人だ。黒沢はト
イレの鏡を使って「変身!」の声も荒々しく、その身を有角の異形へと変えた。

 ――この時、微妙な違和感を彼女は感じていたのだが、逸る心がそれを看過させてしまった。後
で、命取りとなるのも知らずに。

425 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 15:42 ID:???
前半終了です。一休み。

容量あとわずかのイエローカードが出てます。

皆様、次スレはどーしましょう?
タイトルは? テンプレは?

426 :名無しさんちゃうねん :2003/05/25(日) 19:31 ID:???
勝手ながら次スレを立てさせていただきました。

あずまんが大王で仮面ライダー2
http://www.patipati.com/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=1053858612

427 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/05/25(日) 20:55 ID:???
>>426
おお、なんと親切なお方だ!感謝です!
景気付けに(?) 後半はあっちにアプいたします。

428 :xPTaKino :2003/06/06(金) 03:36 ID:???
>>◆SwudF.K6氏 >>385-397
>いやほら、ご飯の途中だったんだけどさ、あんましうるさいから持って来ちゃった」
>飯を食べよう!」
とも 食ってばっかりw
智と暦のペアはいかにも幼馴染という感じで微笑ましいですな。

智と暦の関係を見て「私も誰かにあんなに信頼されてみたい」と思いながら
「戦ってみたい」という意思が芽生えはじめる大阪……
ライダーの力は残酷ですな

>>ミネルヴァの梟氏>>400-408
こちらも智と暦のエピソードですな。
仲のいい二人の間に割り込んでくるガイは本当に外夷って感じ
>「わたしは太ってないぞ!お汁粉だろうが、ファンタグレープだろうがなんでもいい!」
↑よみ……w

ほんとに無性にムカつくなあ>ガイ

今後の智が心配だ……

>>いらだとばる氏>>411-424
>「キマったね! どう、オレって強いでしょ?」
>「実はオレ、これが対ライダー戦初勝利なんだ。うれしーなぁ、帰ったらお祝いしなきゃ」
なんだこいつw
しかも逆転負けして運転手が食われる惨劇を目のあたりにするというおまけつき……悲惨な……
>むしろ生徒たちに恵まれていた
千尋が入ってへん……(泣

結花は将来オルフェノクになりますか?w

429 :xPTaKino :2003/06/06(金) 03:38 ID:???
新スレに移行……
こっちに書いても人目に触れるんだろうか(汗

コソコソ

430 :名無しさんちゃうねん :2003/06/06(金) 04:36 ID:???
 ∧_∧ ッパシャッパシャ
 (   )】
 /  /-′イイヨイイヨー
 ノ ̄ゝ

431 :SwudF.K6 :2003/06/06(金) 13:41 ID:???
>>428
コメント読んだー。ありがd(´ー`)ノ

432 :いらだとばる ◆rOzGUTic :2003/06/06(金) 22:42 ID:???
>>428
おおっ、前半には前半でご感想をいただけるとは、感激っす!

> しかも逆転負けして運転手が食われる惨劇を目のあたりにするというおまけつき……悲惨な……

私の作中の設定では、既に百合絵たんとケコーンしてラブラブな夫婦になってますので、そ
れはそれでー(w

> 千尋が入ってへん……(泣

スマソ!忘れてました。

> 結花は将来オルフェノクになりますか?w

その突っ込みを待っていたー(w
父失踪→母、一人で子育て。そして事故死。→親戚に引き取られて(後略)という伏線。
・・・・・・嘘です。
原作二巻P28で榊に声をかけた女の子が元ネタっす。

新スレにアプされたご感想に関するお礼や返事等は、次の話アプする時の冒頭にて。
◆xPTaKinoさんのSSの続きも早く読みたいっす♪
ではでは。

433 :名無しさんちゃうねん :2003/08/05(火) 02:14 ID:???
ミネルバの梟氏が現れない……(´・ω・`)
移転で難民になっとるんやろうか

434 :名無しさんちゃうねん :2003/08/05(火) 23:08 ID:???
トップからなら自動的にこっちへ飛べるはずなんですが。
俺もミネルバ氏の消息がとても心配・・・・・・
SSも佳境のところでしたからね。

435 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:11 ID:???
>>106

とりあえずまだ確定ですが・・・
こちらに仮うぷ
誰か気付くかな? 

436 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:12 ID:???
あずまんがファイズ

第1話 [Φ's−ファイズ]

pi-[5] pi-[5] pi-[5] 
その細い、しかし水を掻くことに適するようにしなやかに鍛えこまれた右手の人差指がボタンを押
すたび、電子音とともに少女の左手が持つ携帯電話のディスプレイに数字が打ち込まれる。

日常の場ならば、それはなんら不自然な光景ではない。
客観的に見て少し目を引く点を強いてあげるとすれば、少女の持つ携帯が、最近普及しているもの
よりも一回り以上大きいという点だろうか。
見るものが見れば、それが世界の最尖端を走る超無節操大企業・スマートブレイン社のロゴが入っ
た製品であることが分かるだろう。そして、その道に詳しいものなら首を傾げるかもしれない。
スマートブレインが新しい携帯電話を開発したなんて聞いたことがない、と。
しかし、それも別に説明が付けられぬほどおかしなことではない。

[SMARTBRAIN]、とロゴの入った、薄暗闇の中でも鈍く光る携帯を持つ少女、ぱっと分かる特徴
としても、身長は高くもなく低くもない。
髪の毛はショートでもないしロングでもない。
胸の大きさは人並み以上だが、それを本人の前で言うと彼女は激昂するだろう。
陽も落ち、生ぬるい闇の中、少女の纏っている黒の上下は闇に溶け込もうとして失敗しているよう
にも見える。その容姿の中で目を引くのは、身に着けている奇妙な金属のベルト。
しかし、それすら、この際たいした問題ではない。

437 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:13 ID:???
そう、もし少女の目の前に、剣をもち佇む灰色の異形の存在さえなければ。
そしてその後ろに、塵と化した、かつては人間と呼ばれていた存在の成れの果ての姿がなければ。

生物かどうかも分からない異形の怪物。
その姿に似たものを探せ、といわれれば見つけることはたやすいだろう。
ただし、RPGなどのゲームの中において、の話だが。
それはまるで、ギリシャ神話のなかでミノス王が、あのイカロスの父であるダイダロスに作らせた
迷宮ラヴィリンスに閉じ込めた半牛半人の化け物、ミノタウロスそのもの。

当然ながらケンタウロスと違って、ミノタウロスの半分の牛は上半身に位置している。

まるで生命の息吹というものを拒否するように、彫像を思わせる色をしているその体。
動いていなければ、それはどこかの美術館に一流の美術品として飾られていてもおかしくはない。
そして、その事実は、それが動いている姿に、より悪夢的な印象を強めている。

少女に歩み寄ろうとする怪物のその後ろには三人分の人間が倒れ伏している。
いや、正確を記すなら、すでにそれは『人間』とよべる代物ではない。そして、それを為したのは
もちろん少女の前に立つ異形の怪物である。
嬲るようにゆっくりと歩を進めるその怪物は、明らかに少女を次の獲物に定めている。

そんな目の前の怪物にも恐れを見せない少女。少なくともその素振りは外には出ていない。
左手の携帯電話のディスプレイに表示されている、三つ並んだ[5]の文字。
そして、少女は、最後に,ENTERのボタンを強く、しかし確実に押した。
さらに、ただの一動作、勢いよく右手でそれを折りたたみ、そのまま右手に持ち替える。
そして右手とともに天高くかざされるその携帯、ファイズフォン。

438 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:13 ID:???
『Standing by−』

まるで、次に言う言葉を待ちわびているように、その携帯電話から発せられた意味不明の機械音は、
一旦言葉を切った。それに被さるように少女が言葉を続ける。

「・・・変身!」

その言葉と同時に、ファイズフォンは少女に巻きつかれた、バックル部分がくぼんだベルト―そう
としか形容しようがない―に垂直に差し込まれた。かちりと言う音と共に、折りたたまれたファイ
ズフォンがバックルと重なる形で横倒しにセットされる。
それは、まるでそこが本来あるべき場所であるように、ぴたりと収まった。

『−COMPLETE!』

感情のこもっていないはずの機械音が、なぜかうれしそうに、あるいは誇らしげに響き渡る。

その声と連動するかのようにベルトから伸び、少女の体を覆いつくす、血の色に似て非なる紅きラ
イン。そのラインで囲まれた部分は、その紅と対照的に黒く輝き、少なくとも日常着る服の素材と
は根本的に違うなにかで包まれていく。そして、それと同時にまるでなにかから体を守るかのよう
に、胸に、足に、手に現れる銀色の甲冑。
顔には金色に輝く巨大なる眼と、まるで昆虫のような触覚。そして、見ようによっては牙−それも
肉食動物というより、昆虫のそれ−に見えなくもない口。
少女の体を一秒にも満たぬ間で覆うその装甲。
その姿はどう贔屓目に見ても、人間とはかけ離れている。
といっても、むろん、その眼前の灰色の異形と似通っている部分もない。

「キサマは・・・」

灰色の怪物の、戸惑ったようなその声。
怪物が発するのは、紛れもない、日本語。
そして、怪物の横、その影が映るはずのコンクリートの壁に映し出される、人間の姿。

439 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:13 ID:???
「そうだな、正義の味方ってやつだろ」

「そうか、キサマ、スマートブレインからのマワシモノか・・・・・・」

「そういうこと」
怪物から発せられるうめき声に小さく頷きながらそう答えつつ、一瞥もせず彼女の手は腰につくフ
ァイズフォンをベルト=ファイズドライバからはずすと、ブラインドタッチでそのボタンを押して
いく。
ボタンを押す指が描く綺麗な三角形。

1−0−6−enter

『BURST MODE』
名称はブーストモードだが聞きようによってはバスターモードとも聞こえなくはない。
どちらにしてもたいした違いはないが。

そのまま、普通の携帯ならありえない、パネルと横方向に曲げられ、ファイズフォンは「く」の形
へと変化する。
それは、そう、見ようによっては銃の形にも見えるだろうか。
そして、それが虚仮脅しでない証に、その先には銃口らしきものまで存在する。

「ダレにもジャマはさせん、オレは、オレはっ!」

「あー、はいはい」
フォンブラスタへと変化したファイズフォンを手にしながらの投げやりなそのせりふ。
そこには余裕すら感じ取れる。
ただ油断していない証拠としてその視線は一瞬たりとも眼前の怪物からはずされてはいない。

「キサマも死ねぇ!」
なにかの危険を感じたか、剣を持ち、彼女、この状態の呼び名は仮面ライダーファイズだ、へと踊
りかかる化け物、否、不死の怪物オルフェノクに彼女はその手の銃を向けた。
そして一度だけ、トリガーにあたる部分に触れている指に力を込める。

440 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:14 ID:???
don don don
三回の大気を焼く音と赤光に次ぎ、オックスオルフェノクの体に小さく、しかし深い穴が穿たれる。
不死でも痛みを感じるのか、うずくまり動きを止めたオックスオルフェノクを冷酷に見つめると、
彼女は最後の仕上げをすべく、ファイズフォンを元の一文字に戻してベルトに再度はめ込んだ。
ファイズフォンから引き抜かれるスマートブレインのロゴの部分『ミッションメモリ』
右腰からはずされ、ミッションメモリを差し込まれ、そのまま右足にセットされる発煙筒ほどの大
きさの筒、ファイズポインタ。

『READY』

オックスオルフェノクは剣を杖の代わりに起き上がろうとしている。
それにかまわず、彼女は再びファイズフォンのボタンに手を伸ばす。それは時間との勝負。

pi――『EXCEED CHARGE』
その音声とともに、ファイズの体を流れる、人のそれよりもはるかに鮮やかな赤き血潮・フォトン
ブラッドを通り、右足に集結しているのが分かる、何かの力。

一応このスーツのことについてはある程度聞かされているが、理解度はゼロに近しい。
携帯電話やメールの仕組みを理解している人間がほんの一握りなのと同じだ。
理解しなくても使用できるなら、無理してまで理解する必要はない。

この技は仕損じれば後がないだけに、何度目になっても慣れというものは存在しない。
ファイズとなった彼女の切り札、不死の存在であるはずのオルフェノクの存在を無に返す必殺技、
クリムゾンスマッシュ!

跳躍、そして、空中で、立ち上がったオックスオルフェノクにめがけ紅き螺旋が展開される。
さしづめ、オルフェノクにとっては釘を刺される直前の藁人形の気分だろうか、などといらないこ
とが一瞬頭によぎるが、一連の動作によどみは存在しない。

「くそぉぉぉぉぉぉ」

そして、直後、紅き煌きはオルフェノクの体を貫いた。

一瞬の後、断末魔の叫びすら許されず、クリムゾンスマッシュを受け、オルフェノクは不死のはず
の命を失い、青白い炎とともにあるべき姿、塵へと変える。

441 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:14 ID:???
「・・・」
消滅し、ほとんど残らぬオルフェノクの存在した証、灰色の塵にしか見えないその残骸、そしてそ
のさらに先にある、中身を失った服と元は人間だったものの成れの果てに目をやると、人の姿に戻
った少女は、わずかに申し訳なさそうな表情を浮かべ踵を返した。

その背中の後ろで、彼女の髪をふわりと浮かせた、春に似合わぬ冷たい風に吹かれ、わずかに残っ
たその残骸も闇の彼方と散っていった。





Open your azu for the next Φ's ------[覚醒‐awaking]

「は〜い、ファイズのモニタ、ご苦労様でしたぁ〜」
「約束は守ってもらえるんだろうな?」
「なんでっ!?」
「逃げても、待っとるんは絶望だけやで、神楽ちゃん・・・」
「・・・覚醒したか」

―――――戦わなければ生き残れない!

442 :ミネルヴァの梟 ◆pXyy/aAePc :2003/08/07(木) 23:17 ID:???
>>435
確定ですが、じゃねぇー
暫定ですが、の間違いでつ

構想はあれど・・・
ファイズはライダー3人だけだと思ってたのにー

443 :名無しさんちゃうねん :2003/08/09(土) 04:23 ID:???
キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*

444 : ◆f.SwudF.K6 :2003/08/11(月) 11:08 ID:???
キタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!!

ミネルヴァの梟さん乙です。只今脳みそが働いていないので感想はまた後程。
進行中のファイズのストーリーを考えるのは本当に難しいですね(;´ー`)
とりあえず私は映画版を見て構築を確定させたいなーって気分です。

ちなみにちよ助達アズフェノクは身体の一部分だけオルフェノク化
する突然変異みたいな種族に考えていたりします。
具体的に言うと槍とか持たしたり猫耳つけたり…w
決してカコイイオルフェノクとして書けないから、ではない…ですじょ。
…まぁまったり待ってくださいです。
(´ー`)はっはっは

445 :名無しさんちゃうねん :2003/08/13(水) 20:58 ID:???
445(σ・∀・)σ ゲッツ

446 :いらだとばる ◆5jrOzGUTic :2003/08/14(木) 11:51 ID:???
ミネルヴァの梟 氏、乙です。
よ、予告編が3月16日!! 五ヶ月近く練りに練ったわけですね、凄い!

> pi-[5] pi-[5] pi-[5] 
まず冒頭のこの表現がカコイイ!555ネタ書く時は参考にさせていただきます♪

他の場面でも、毎度の事ながら冴えた描写が! 555の姿とか、装備とか。
ボキャブラリィが豊富ですな〜♪

> としても、身長は高くもなく低くもない。
> 髪の毛はショートでもないしロングでもない。
> 胸の大きさは人並み以上だが、それを本人の前で言うと彼女は激昂するだろう。

そして気になる555の中の人は誰? 「胸」で激昴するから神楽? いやい
や、そう思わせて、実は・・・・・・ってのが上手ですからなー、この方は。油断
できん(w

続きを熱くお待ちしております。では〜♪

447 :名無しさんちゃうねん :2003/10/28(火) 12:29 ID:Ru/bcIlg
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/kamen/1066032380/

448 :◆f.SwudF.K6 :2003/10/28(火) 13:29 ID:???
_| ̄|○…お願いですから眠っているスレをageないでください…

449 :◆5KxPTaKino :2003/10/28(火) 22:43 ID:???
残り10KBか……

450 :名無しさんちゃうねん :2004/11/01(月) 16:01 ID:???
>447
http://so.la/test/read.cgi/kamen/1066032380/

451 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:37 ID:???
http://www.2chdat.net/data/html/10231634/1090033200.html
http://www.2chdat.net/data/html/10231634/1076553553.html
http://www.appletea.to/~charaneta/ikkoku/kako/049/049460780.html
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/035078479/970-1001

452 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:41 ID:???
***ビッグファルコン***

岡「…諸君、色々と心配をかけたようだな」
三浦「いえ、総理も長官たちもご無事で何よりでした」
小田切「スカイキャンプに君臨していた一条総司令も、
 つい先刻、三輪長官と共に日本国外へ退去したようです」
江戸川「そういえば、白河代議士の腹心だった警察幹部の
 南雅彦という男はどうした?」
三浦「正木本部長からの話では、特警隊やブレイブポリスが
 南の私邸や研究施設に踏み込んだところ、すでに蛻の殻だったとか」
桃太郎「取り逃がしたか……。
 ところで、長官方は今までどちらに?」
岡「軍情報部で工作員をしていました」
桃太郎「工作員? あなた方が?」
嵐山「うむ、経歴を買われましてな」
美佐「総理、お父さん…いえ、嵐山長官も岡長官も忍者の末裔なんです」
桃太郎「なるほど…それで…」
岡「ええ。任務で世界中を自由に飛び回れたおかげで、ティターンズ派の
 動きも掴みやすかった」
万丈「こうして長官たちが日本に戻られたのですから見通しは明るいですね」
鉄山「しかしティターンズが、戒厳令を布いたそうだね」
伝正夫「はい。現在、ダカール付近は、通信、交通が制限されています」
嵐山「ふむ…では、例のルートを使うか」
ブレックス「そうですね」
飛羽「例のルート?」
嵐山「情報部にいた時に、ティターンズの配備状況は調べておいた」
江戸川「ジャミトフのクセも知っているからね。ダカール南東の一角に、
 配備の手薄な死角がある。西の方で陽動作戦を行えば、
 さらに進入はたやすくなるはずだ」
ブレックス「それで鉄山将軍、ダカールでの手はずは?」
鉄山「整っている。TV放送の用意一式と、中継局をおさえる用意も、
 完了した。あとは准将を、ダカールまでお連れするだけだ」
ブレックス「そうですか、よろしく頼みます」

453 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:42 ID:???
***ビッグファルコン***
江田島「よく戻って来てくれたな、倉間」
鉄山「ああ…日本を留守にしている間、お前には随分迷惑を
かけてしまった」

志田京介「あの2人、知り合い……友人だったのか?」
ドモン「ああ……聞くところによると、ライダースーパー1=一也の
師匠である玄海老師、そして俺の師匠──東方不敗マスター・アジアとは
若き日の友であり、ライバルだったらしい」
曙四郎「なるほど、お互い怪人やMSを素手で倒せる者同士の縁ってわけか」

鉄山「これからどうする?」
江田島「フフフ…ティターンズと事を構えるには、まだ戦力が足りん。
男塾の総力を挙げ、各地から強者どもを引っ張ってくるつもりよ」

***同・司令室***

岡「丁姫が私と嵐山長官をお呼びらしい。後のことは頼む、左近寺博士」
嵐山「急ぎましょう、山地・日向の両館長に戸隠白雲老師、帯庵和尚に
鶴姫家の義輝殿も既に向かわれている……」
左近寺博士「それでは、護衛はボルテスチームにさせましょう。
追って、ビッグファルコンも新拠点『α』に移動します!」

454 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:45 ID:???
***都内の某出版社***

蒼軌「編集長、何か御用ですか?」
編集長「ああ蒼軌さん、忙しいところ呼び出したりしてごめんなさい。
 確か菫川ねねね先生はあなたの担当だったわよね?」
蒼軌「はい、そうですが…」
編集長「紹介するわ。こちらはイギリスから英国政府の用向きを
 預かっていらしたジャック・バンコランさんよ」
蒼軌「英国政府の…?」
バンコラン「どうも、バンコランです」
蒼軌「…あっ、どうもはじめまして。菫川先生の担当をさせて頂いております
 編集者の蒼軌といいます」

握手を交わす蒼軌とバンコラン。

編集長「それでなんだけれども、バンコランさんは
 菫川先生にどうしてもお会いしたいそうなの。悪いけれど
 この方を先生のお宅まで案内してもらえるかしら?」
蒼軌「それは構いませんが……今日いきなり押しかけたりして
 先生のご機嫌に触らなければいいんですが……」
バンコラン「あなた方の会社に迷惑はかけない。
 緊急の事態なので一刻も早く会わせてもらいたい」
蒼軌「あのー…失礼ですが菫川先生に一体
 どのようなご用件が?」
バンコラン「いや、実際に用があるのは彼女ではない。
 彼女の高校時代の元教師だ」
蒼軌「……???」

455 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:45 ID:???
***菫川ねねねのマンション***

蒼軌「ここが先生の部屋です」

バンコランを伴ってマンションへとやって来た蒼軌は、
ドアの前でベルを鳴らす。

ねねね「あれ、蒼軌さん久しぶり」
蒼軌「いやぁー先生、ご無沙汰してます」
ねねね「今日どしたの? 原稿の締め切りなら、まだ大分先のはずでしょ」
蒼軌「はい、それが……」
バンコラン「失礼する」

ここでいきなりバンコランが間に割って入る。

ねねね「誰よアンタ」
バンコラン「私はバンコラン。英国情報部の者だ。
 読子・リードマンと話がしたい。彼女は今どこにいる?」

バタンッ!!

バンコランの言葉を聞いた途端、ねねねはいきなり鬼のような形相になり、
一方的に玄関のドアを閉めてしまった。

バンコラン「おい! 開けろ! 何を勘違いしている!?
 私はMI6の人間だ! 大英図書館などとは関係ない!
 彼女に…読子・リードマン=ザ・ペーパーにどうしても緊急の用事がある!
 こらっ、開けろと言っているのが聞こえないのかっ!!」
蒼軌「あの…バンコランさん。菫川先生は一度こうと決めたら
 絶対に曲げない方です。事情はよく分かりませんが、
 今日のところは一旦引き揚げられては?」
バンコラン「うーむ…やむを得んか……」

456 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:46 ID:???
***東京・靖国神社前***

その日…、表向きは某出版社勤務の編集者で、実は
代々伊勢付きの風使いの一族で「天の龍」の一人という
裏の顔も持つ蒼軌征一狼は、朝早くから待ち合わせをしていた。

譲刃「――あっ!? 蒼軌さぁ――ん!!」
蒼軌「やあ譲刃さん。おはようございます。
 わざわざ呼び出したりしてすみません」
譲刃「頂いた名刺に電話したら、部署変更になったって言われて
 びっくりしました――!」
蒼軌「少女まんが誌から小説連載部門のほうに異動になったんですよ。
 今度菫川ねねね先生にうちの出版社でも小説を書いて頂けることになって、
 その担当です」
譲刃「え――っ!? ひょっとして女子高生の時に文壇デビューした
 あの菫川ねねね先生ですか!?」
蒼軌「……はははは、ひょっとしなくてもそうですよ。
 ところで三峰のお婆さまや草薙さんはお元気ですか?」
譲刃「もちろん♪ 方向音痴の私が久しぶりの東京で迷ってないか、
 きっと今頃やきもきしてます」
蒼軌「でもちゃんと靖国神社まで来られましたね」
譲刃「それで、今日は私たち二人でどこに行くんですか?」
蒼軌「ちょっと、図書館まで……」
譲刃「……図書館?? わかりました。行こっ、犬鬼♪」

犬鬼「わんっ!!」

457 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:47 ID:???
***国立国会図書館・一般書庫***

アニタ「相変わらず本の山だらけの広いところだよねー」
ねねね「さっ、急いでセンセを捜して! ここのどっかにいる筈だから」
マギー「……えっ? 私たち…三人だけでですか?」
ねねね「しょーがないでしょ! ミシェールは今センセの埼玉の実家の方で
 ジュニアと仲良くやってんだから。文句言う前にとっとと捜す!」
アニタ「(やや不服そうに)はぁ〜い」

露骨に不満そうな表情を浮かべながらも
ともかく言われたとおりに読子を捜し始めるアニタ。
他の二人も必死になって読子の姿を捜し求める。

ねねね「おーい! センセーどこだー! 居たら返事しろー!」
読子「は〜い、読子ちゃんで〜す」
ねねね「――居たかっ!!」

奥のほうから、可愛らしいがどこか緊張感に欠けている声が聞こえた。
その声は紛れもなく、よく聞き慣れた読子・リードマンの声である。
案の定、彼女は本の山に埋もれていた。読子の腕を三人で掴んで
引っ張り起こす。

アニタ「やれやれ、またか……」
読子「ふぅ〜助かりました。動けなくなっちゃって困ってたんです」
アニタ「困ってたんです、じゃないよ! ホントにもう!」
読子「す…すみません……」
ねねね「ほらっ、ボケッと突っ立ってないで早くここから逃げるわよ!」
読子「……逃げる?? あのー先生、何かあったんですか?」
ねねね「詳しい話は後でするが、アンタを追って昨日私のマンションに
 英国情報部を名乗る人間が来たのよ!」
読子「英国情報部?」
ねねね「なんかよく分かんないんだけど、大英図書館の時みたいに
 面倒なことになると厄介だから早く避難して!」

???「――いや、まだ全員その場に居てもらおう」

ねねね「……ア、アンタは!?」

458 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:48 ID:???
“美少年キラー”の異名をとり、MI6きっての切れ者との評も高い、
ジャック・バンコラン少佐――先日、ねねねのマンションに
読子を訪ねてきた人物である。

読子「あ、あなたは確か……」
ねねね「アンタ、あたしたちをつけて来たの!?」
バンコラン「失敬だな。神保町のビルにも君のマンションにも居ないとすると、
 自然と消去法だけでここへとたどり着く。尾行などするまでもない話だ」

傍にいるアニタとマギーも、すかさず武器である紙を取り出して身構える。

バンコラン「よせっ! お前たちと事を構えるつもりなど最初からない!
 私はICPOからの要請で彼女を保護しに来たんだ」
アニタ「本当か!?」
読子「アニタさん、マギーさん、ここは退いてください。
 この人は敵じゃないと思います……たぶんですけど……」
ねねね「たぶんって……センセ、この人のこと知ってるの?」
バンコラン「私が若い頃に、当時MI6の工作員であった彼女の父親には
 大変世話になったことがある」
アニタ「な〜んだ、そうだったんだ」
バンコラン「大英図書館の残党が君を狙っている。
 今すぐに私と一緒にここを出るんだ!」
読子「えっ! で…でも本が!!」
バンコラン「そんなものは全部置いていけ! 気の毒だが
 大好きな本に囲まれて過ごす日々もしばらくはお預けだ」

???「困りますねバンコラン少佐、彼女を勝手に連れて行かれては……」

読子「ジョーカーさん!?」

459 :名無しさんちゃうねん :2004/11/03(水) 08:48 ID:???
読子「今日は本当にお客さんの多い日ですね〜」
ねねね「――んなこと言ってる場合かっ!!」

ジョーカー「ええ、また会えて私も嬉しいですよ、読子」

ショー・カーペンター、またの呼び名を通称:ジョーカー。
元大英図書館特殊工作部の責任者であり、貧民層からのしあがり、
若くして英国の影の支配者ジェントルメン直属の部下として、
英国海軍やMI6の責任者と肩を並べるまでに上り詰めた男である。
ジェントルメン復活計画による英国の世界支配を企てたが
かっての仲間であった読子や、アニタら紙使い三姉妹の活躍によって阻止され、
それを最後に表舞台からは姿を消したはずであったが―――

ねねね「あんた、ジュニアにジェントルメンの人格の一部を注入されて、
 廃人になったんじゃなかったの!?」
ジョーカー「お久しぶりです菫川先生。それが不思議なものでしてね、
 こうして今も私はぴんぴんしているんですよ」
バンコラン「ジョーカー……ジェントルメンの寵愛をいいことに
 大英図書館を私物化し、女王陛下の名誉に泥を塗った野心家め!」
ジョーカー「これはこれは…言ってくれますね、バンコラン少佐。
 ですがその言葉、そっくりそのまま貴方にお返しします。
 この私こそが英国を最も心から愛しているのです。そうですね――
 貴方にはあのマリネラの豚まん国王の腰巾着のほうがお似合いですよ」

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