世の中のすべての萌えるを。

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あずまんがSS書きの控え室8

1 :名無しさんちゃうねん :2005/09/13(火) 00:21 ID:???
 ストーリーの構成、キャラの造り方、言葉の使い方など、あずまんがのSSや
小ネタを作成する上で困ったことや、悩んでいること、工夫していること等を話し合う
スレです。
 また〜り楽しんでいただければ幸いです。
 ここで新作をUPすることも可です。

★主な注意事項
1. sage進行でお願いします。
2. 対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
3. 他人の作品を善意であっても批評しないでください。(自分の悪いところを
教えてくださいというのは可です。)
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します。

6 :真相は闇の中 1 :2005/09/29(木) 00:55 ID:???
 少し風の強い日の放課後、榊はちよと一緒に下校していた。
「あっ、そうだ。榊さん」
 ちよの言葉に反応するように、顔を見つめた。ちよはまっすぐに輝いた目をして、榊の
顔を見つめている。

「先日、アメリカの知り合いから手紙が届きまして、そこに面白い話が書いてあったんで
すよー」
「どんな話なの……?」
「その知り合いのお友達の話なんですけど、仕事で日本に来ていたんですよ。で、仕事を
終えて、アメリカに帰る日のことなんですけど、色々とお土産を買いすぎちゃって、持ち
運ぶのが大変だったらしいんですよ」
 一瞬、強い風が吹き、髪を揺らしていった。それをかき上げるようにして直すと、改め
て、ちよの顔を見つめた。

「両手にたくさんお土産があって、しかもかなり重たかったから、普通に歩くのも大変だ
ったそうです。それなのに駅の階段を上らなくちゃならなくって、息を切らし、汗をかき
ながら上っていたんです。すると、突然一人の若い女性が現れて、荷物を持つのを手伝っ
てくれたんですって。日本の女性はとても親切だって感激していました。で、その駅と言
うのがここの近くの駅なんですよ。あまりにも近くなのでビックリしました」
「へぇ、そうなんだ……」
 ここから見えるわけでもないのに、その駅の方角へ目をやってしまった。駅が見えるわ
けでもないし、その様子を窺い知る要素もない。

「最初にこの手紙を読んだときに、この若い女性って榊さんじゃないかって思ったんです
よ。だって、榊さんはとっても親切だし、こういうことも率先してしそうだから」
「いや、私じゃない……。私だったら、きっと助けてあげようと思っても、何もできない
だけで終わりそうだし……」
 駅の階段で荷物を持ったまま悪戦苦闘している外国人の姿を想像してみた。とても、自
分が助けに入れそうには思えない。やはり、何とかしようと思っても、見ているだけで終
わりそうだ。

7 :真相は闇の中 2 :2005/09/29(木) 00:56 ID:???
「でも、文面を読んでいくうちにこの女性は榊さんじゃないって思ったんですよ」
 ちょっと話が気になったので、駅で悪戦苦闘としている外国人の想像図を一度打ち切り、
ちよの話に集中することにした。
「どうしてだ……?」
「実は、その女性はあまり英語が得意じゃないらしいんですよ。いきなり『ヘルプミー』
と連呼するもんだから、自分は痴漢か何かで捕まるんじゃないかと思って、本当に焦った
って書いてありましたから」
「そういうときって、最初に『May I help you?』って尋ねるんだよね……?」
「はい。それから、『I will carry your baggage』と言うんですけど、その女性はそれを知
らなかったらしいので、榊さんじゃないなと思いまして。榊さんならきっと分かると思い
ますし」
 強い風が吹いたために、髪がまた乱れている。一旦正面を向いて、髪を直すと、ゆっく
りとちよの方へと向き直した。

「確かに、英語の受け答えは分かるけど……。でも、実際に人助けをするのとは別問題だ
……。きっとその女性は勇気のある人なんだろうな……」
「私も英語の受け答えはできますけど、荷物を持つほどの力はないですから、手伝うのは
無理です。でも、言葉が通じないのに、困っている人を助けようとするのは、本当にすご
いと思います」
 その言葉にうなずきつつ、自分にはない勇気を持っているその女性に対して、心から尊
敬の気持ちを覚えた。

「でも、一体どんな人なんだろう……?」
「何か、すごく陽気な人らしいですよ。別れ際に、『イエーイ』と親指を突き立てて見送っ
てくれたらしいですから」
「陽気で親切な人か……」
「もしかしたら、私たちの知っている人かもしれませんね」
「うん、この近くの駅なら、その可能性はあるかも……」
 今度はその女性の姿を想像してみる。思い浮かぶのは、明るくて、気持ちがまっすぐな
女性の姿だ。頭の中で一人の女性がイメージに浮かぶ。もし、彼女だとしても違和感はな
さそうだ。

8 :真相は闇の中 3 :2005/09/29(木) 00:57 ID:???
「でも、もしその人が私たちのクラスの人だとして、その話をゆかり先生が聞いたら怒るか
もしれませんね。『何でいきなりヘルプミーなのよ。ちゃんと英語の勉強してんのか』とか言
い出しそうですし」
 ちよが笑みを浮かべながら呟いた。
「うん、そうかも知れない……」
 榊もちよと視線がぶつかったこともあって、笑みを返した。
 でも、きっと彼女に違いない、明日にでも本人に聞いてみようかな……。
 榊が心の中でそう決意した直後だった。ちよが放った言葉がその決意をあっけなく砕い
てしまった。

「あっ、そう言えば、その知り合いの家に猫が生まれて、写真を送ってくれたんですよ。メイン
クーンのメスなんですけど、とってもかわいいんですよー」
「えっ……。それはいいな……」
 言葉では平静を装っているものの、頭の中で猫の想像図が駆け巡っている。こうなったら、
もう子猫のことしか考えられず、さっきの女性のことなど次第にかき消されていく。
「明日、その写真持ってきましょうか?」
「うん……」
 頬が赤らむのを感じながら、小さくうなずいた。
 子猫の写真か……。かわいいんだろうな……。あぁ、いいなぁ……。どんな感じだろう
……。楽しみだな……。
 みるみるうちに頬が赤くなっていくのが自分でも分かる。もう頭の中は完全にその子猫
で支配されている。風が髪を乱していても、それに気が付かないくらいだ。

「でも、この前のテストで――」
 ちよが何かを呟いているのは分かったが、今の榊は子猫の想像図にすっかり気を取られ
てしまったため、何を言っているかまでは分からなかった。
「榊さん、どうしたんですか?」
 不思議そうな顔を浮かべて呼びかけるちよの声も遠く感じるほどに、榊は子猫の想像図
に酔いしれていた。そこにはさっきの女性が介在する余地などない。
 こうして、その女性のことはすっかり脳裏から消え去ってしまい、その後、榊がその女
性の正体を突き止めることがないまま、時は流れるのであった。
(終わり)

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