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あずまんがSS書きの控え室8
- 1 :名無しさんちゃうねん :2005/09/13(火) 00:21 ID:???
- ストーリーの構成、キャラの造り方、言葉の使い方など、あずまんがのSSや
小ネタを作成する上で困ったことや、悩んでいること、工夫していること等を話し合う
スレです。
また〜り楽しんでいただければ幸いです。
ここで新作をUPすることも可です。
★主な注意事項
1. sage進行でお願いします。
2. 対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
3. 他人の作品を善意であっても批評しないでください。(自分の悪いところを
教えてくださいというのは可です。)
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します。
- 99 :ひねくれ者 :2006/08/05(土) 00:29 ID:???
- 遂に、私は驚愕の事実を手に入れた。
それは、テレビを見ていたときに、ひょんなことから知ったんや。まさか、しゃっくり
を止めるツボがあるなんて、そんなん知らんかったわ。
せやけど、これを知った以上、この前のようにしゃっくりが止まらなくなって、大変な
目に遭わなくても済むんや。もう、あんな思いをするのは嫌やからな。
これで私は他の人とはちょっと違う知識を得たんや。「まめちしき」が一個増えたわ。豆
と関係ないから、豆の知識やないけどな。
よし、早速効果があるか試してみるで……って、しゃっくりが出てないのに、ツボを突
いてもしょうがないわ。
ほんなら、しゃっくりを出せばええんやな……って、ここで私は重大なことに気付いた。
しゃっくりってどうやって出せばええのん?
よく考えたら、くしゃみやあくびと違って、しゃっくりって自発的に出そうと思って出
せるもんやない。自分の意思とは関係ないときに出るもんやないか。
計画は最初のところでつまずいてもうた。しかも、自分の力じゃどうすることもできへ
んやないか。
こうなったら、自分で辛いものを食べて、しゃっくりを出すしかない。効果を試すため
にはこういう犠牲も必要や。
そういうわけで、私は台所から唐辛子を持ってきたんや。
「この前はよみちゃんの激辛唐辛子コロッケを食べてしゃっくりが出たんやから、ワサビ
よりは唐辛子がええかもしれないな。せやけど、あんな死にそうな思いはしたくない。今
回は少なめにしてみるか」
キャップを開け、少しだけ手の平に乗せてみる。赤い小さな塊が、私の目の前にある。
- 100 :ひねくれ者 :2006/08/05(土) 00:29 ID:???
- 「これを飲めば、しゃっくりが出るはずや。そう、これを飲めば……」
頭の中では分かっているんやけど、それを飲む勇気が湧いてこない。呼吸が小刻みに震
えとるのが自分でも分かる。それに、赤い魔物が手の平で踊っているように見えるんや。
「せやけど、しゃっくりを出さなあかんのや!」
意を決して、赤い魔物を一気に口の中に入れた。
数秒後に、出たには出たんや……。
涙が、両方の目からとめどなく溢れ出とる……。せやけど、今の私にそれを止めること
はできへん……。
あと、咳もさっきから出まくっとる……。むせて咳き込んだことで、息苦しくてかなわ
んわ……。
まさにこの世の地獄や……。
私は今、何でこんなことをしたのかっていう後悔が、頭の中でぐるぐると渦巻いとる。
しかも、その渦で目が回りそうや。
それなのに、肝心なしゃっくりはちっとも出てこないやんか。作戦は失敗や。
「何でや、あんだけ唐辛子を口の中に入れたのに、何で出てこないんや……?」
涙が止まらへん。唐辛子の辛さで泣いとるのか、しゃっくりが出てこない悔しさで泣い
とるのか自分でも分からへん。せやけど、涙をぬぐうこともできないほどにショックを受
けていることだけは、紛れもない事実や。
「あかん、ほんまにしゃっくりは出とらへん。もしかして、もっと唐辛子を食べないとあ
かんかったんか……? せやけど、これ以上やったら、私は死んでまう。これ以上の唐辛
子なんてあかんわ」
結局、私はしゃっくりを止めるツボを突く実験、並びにしゃっくりを出す実験を諦める
ことにしたんや。むしろ、今は涙を止めるツボを教えて欲しいわ。
それにしても、出たときは止まらなくて私を困らせたのに、出て欲しいときには全然出
てくれずに、私を困らせるなんて、しゃっくりは本当にひねくれ者や……。
(終わり)
- 101 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2006/08/05(土) 01:02 ID:???
- >>99-100
お疲れです。
うわwww
大阪さんの喋り方とか、行動とかがイイww
確かに、しゃっくりって自分だと出来ませんしねw
- 102 :名無しさんちゃうねん :2006/08/18(金) 12:48 ID:???
- いい感じの流れだな。
- 103 :眠名有 ◆h8AqQULsMs :2006/08/18(金) 13:53 ID:???
- >>99-100
遅くなったけど
乙ですー
大阪さんらしさがとてもでていますねw
- 104 :名無しさんちゃうねん :2006/10/15(日) 02:17 ID:???
- 就職試験に明け暮れて二時間目書くの忘れてました! すいません
- 105 :名無しさんちゃうねん :2006/10/20(金) 16:33 ID:???
- >>104
試験に受かってからで良いって・・自分の人生が一番大事。
- 106 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/10/28(土) 11:34 ID:???
- >>90
無粋かも知れへんけど一応指摘しとくな。
「役不足」ゆーんは役の方が不足しとるねんでー。
キムリン古文の先生なんやからそういうのはきちんとしとると思うねん。
- 107 :693 :2007/04/29(日) 00:45 ID:???
- 長谷川小説です。良かったら改善すべき点などを教えてください。
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1074518861/697-706
- 108 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:22 ID:???
- 窓から見える暮れかけの空には真っ白な月が浮かんでいる。
「行かなくちゃ」
誰に言うわけでもなく、自分の胸に言い聞かせるように呟くと、力任せにドアを開けて、
外に飛び出した。
少しだけ夜の冷たさを感じるそよ風が体に吹き付けている。
これから自分がしようとしていることを考えると、風が妙に胸に沁みて、もどかしい気
分になってくる。
夕方になると榊がちよと一緒に忠吉さんの散歩に出かけることをかおりんが知ったのは、
つい昨日のことだった。
散歩コースも散歩する時間帯もほぼ固定しているらしく、午後七時ごろに最終目的地で
ある街の景色が一望できる小高い丘のある公園に行けば、確実にいるとのことだ。
これほどの有力情報を手に入れた以上、みすみすと見逃す手はない。
――七時に公園に行こう
今朝から、かおりんの脳裏にはその思いだけが支配されていた。
最愛の人・榊と逢えるひとときを心待ちにしながらも、なかなか進まない時計の針に苛
立ちが隠せなかった。いっそのこと自分が時計の針を進めてしまいたいという衝動を堪え
ながらも、今日の授業を終え、天文部の部会も半ばうわの空の状態でやり過ごした。
時計の針は六時四十分を過ぎたところだ。ここからなら歩いて十分ちょっとで公園に着
く。そんなに急がなくても七時には十分に間に合うはずだ。
頭では分かっている。しかし、気持ちが既に走り出して制御がきかなくなった状態では、
どうにも抑えきれなかった。
不意に、前を歩いていたスーパーの袋を両手に提げている主婦を足早に追い越していた。
もしかしたら、もう来ているのかもしれない。そうすれば、一分でも、いや、一秒でも
長く一緒にいられるかもしれない。
そんな淡い期待が脳裏をかすめ、歩みを緩めることを許さなかった。
最初のうちは早歩きだったのが、次第にジョギングするぐらいのスピードになっている
のが自分でも分かった。
「逢いたい、榊さんに早く逢いたい……」
一歩踏みしめるたびに強くなる思いは、次第に歩幅だけでなく心臓の拍動も加速させて
いる。
居ても立ってもいられない思いに急かされてか、最終的には全力疾走に近い状態になった。
- 109 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:23 ID:???
- 結局、公園の入り口に着いたのは六時五十分過ぎと、十分もかからずに到着してしまった。
今まで全力で走り続けたこともあって、さすがに丘の上までの坂道を走るほどの余裕は
残されていなかったため、ここからは歩くことにして少しでも呼吸を整えることにした。
そうでもしないと、あまりにも高鳴る鼓動に心臓が口から飛び出してしまいそうだ。
車一台が通れるほどの道幅がある遊歩道を歩きながら、丘の上に愛しき女性がいること
を考えてみた。それだけで、胸の奥が焼け焦げてしまいそうな気分だ。
逢うことができたら、いや、絶対に逢えるのだから、逢ったらどんな話題をしようか、
そして、どうやって自分の想いを伝えようか、頭の中でそればかりが駆け巡り、言葉の形
成を妨げている。
思考回路がショートしかけているだけではなく、小刻みに指が震えている感覚も自分自
身で認識できた。
――どうしよう、このままだとうまく言葉を伝えられないかもしれない。
一瞬だけ、帰ろうかという気持ちが芽生えたが、この瞬間を心待ちにしていたのだから、
そんな勿体ないことはできない。
小刻みに震える呼吸を必死に隠しながら、ようやく丘の頂上にある展望台にたどり着いた。
今のところ、それらしき人影はない。
まだ来ていないのだろうか。展望台にある時計の針は六時五十五分だし、ちょっと早か
ったようだ。
目当ての人が居なかったことで、妙に肩の力が抜けてしまったこともあり、近くのベン
チに腰を下ろすことにした。
夕陽は遠くの山の彼方へと姿を隠し、街の景色はゆっくりと濃い青に染まろうとしてい
る。その真上に半分だけの月がポツンと浮かんでいる。
まるで自分の満たされない心のようだ。きっと空の上に浮かんでいるのが私の心の半分
で、そして、欠けてしまったもう半分は、親愛なるあの人が持っているはずだ。
一度、深く息を吸い込んだ。少し肌寒い空気が体に入り込んだことで、冷静さを取り戻
せた気がする。
今度は頭の中で伝えたい言葉を反芻することにした。
単に「好き」という言葉だけでは片付けられないほど、幾重にも積み重なった想いをど
う伝えたらいいのか、どれだけ心に響くメッセージを届けらえるのか、ひたすら頭の中で
イメージしてみたものの、なかなか上手く言葉に出てこない。
- 110 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:23 ID:???
- ただ、初めて出逢った頃から、知らず知らずのうちに膨らんでいった恋心が胸を締め付
けるだけだった。
「最初のうちは、もっともっと榊さんのことを知りたいと思っていただけなのにな……」
苦しさを感じた胸の内を支えるように、きゅっとセーラー服の胸元をつかんだ。
「いつの間にか知れば知るほどに、今度はもっともっと近付きたいって思うようになった
んだっけ……」
しかし、現状はなかなか近付くことができず、遠くで憧れの視線で見つめるのが精一杯
だった。
「本当はもっとそばに居たいのに……」
踏み出せない自分の心の弱さに気持ちが沈んでいくのを感じた。しかし、落ち込んでい
る場合ではない。あと数分後にはここに本人が来るのだから。
「今日こそ私の想いを伝えなきゃ!」
想いを新たに立ち上がると、ふと遠くで誰かが話している声が聴こえた。
「もしかして?」
無意識に近くにあった木の陰に身を隠すと、そっと声の主が自分の思っている人かどう
か確認してみた。
「あぁ、榊さんだ……」
正確には愛犬の忠吉さんと忠吉さんのリードを持ったちよがいて、隣に榊が歩いている
のだが、かおりんの視界は榊しか捉えていなかった。
「制服姿も凛々しくて素敵だけど、ブルージーンズに長袖のシャツという私服もサマにな
ってて素敵。何を着てもかっこいい」
やかんを乗せたらすぐに沸騰するんじゃないかというぐらいの勢いで、頭の中の温度が
高まっていくのを感じた。だが、一つ問題があることにも気付いた。
「どうしよう、何て挨拶すれば。それになんでここにいるのか説明しないと……」
別のことに頭を支配されていたこともあって、肝心なことを忘れていた自分の迂闊さに
唇を噛んだ。
しかし、迷っている場合ではない。
意を決して、勢いよく前に一歩踏み出すと、二人と一匹の間に自らの姿を現した……
まではよかったが、「こここここ、こんばにゃー」と言葉がおかしくなってしまった。
加えて、若干緊張している分も手伝って、声が裏返っている。
- 111 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:23 ID:???
- 「こんばんはー。こんなところで逢うなんて奇遇ですね」
「そ、そうだね」
ちよと会話しているはずなのに、視線は常に榊にロックオンされたままだ。視線に気づ
いたのか、榊も軽く会釈した。
――あぁ、榊さんが私だけに挨拶をしてくれたぁ。
それだけで、今日ここに来てよかったと心から実感できた。ちょっとでも気を抜いたら
喜びのあまり失神してしまいそうだ。
「きょ、今日はほら、空がきれいで、月もきれいで、だったらちょっと夜空でも眺めよう
かなと思って、こ、ここに来たんですよ。私、天文部ですし」
「そうなんだ……」
榊が空を見上げている。視線の先にはさっき見上げた半分の月が相変わらず所在なげに
漂っている。
いつも物憂い顔で空を見上げている美しい顔立ちが間近に迫っている。
教室でしか見られない顔を、今見ているのは私だけなのだ。
「あっ、榊さーん」
――しまった。もう一人いたことを忘れていた。一人で榊さんをじっと見ていたいけど、どうやっ
てそれをすればいいの? さすがにちよちゃんに席を外してとは言えないし……。
しかし、その悩みはすぐに解決した。
「近所の愛犬家の方も散歩に来ているみたいなので、ちょっと挨拶してきますね」
「あぁ、分かった……」
ちよが「忠吉さん、行こう」と呼びかけて、その愛犬家と思しき少し恰幅のいい女性の
ところへと走っていった。
榊はそれを見て小さく手を振っている。
――あぁ、何て幸運なの? やっぱり日ごろから行いがいいとこういうときに千歳一隅の
チャンスが巡ってくるのよね。
心の中で何度もガッツポーズをしながら、再び榊の顔を見た。
今度はお互いに視線がぶつかった。ちょっと気まずさを感じたため、不意に視線を月へ
とずらした。
- 112 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:24 ID:???
- 「今夜の月は上弦の月と言って、新月から満月へと向かう途中の状態なんです」
「へぇ、そうなんだ……」
「月が向かって右半分だけ見える状態が上弦の月で、左半分だけのときは下弦の月という
んですよ」
月を見つめながら、何か納得したかのように榊がうなずいている。
「大体正午ごろに昇って、夕方に南中して、深夜は西の空に沈んでいくんです。今はこれ
から段々西へと傾いていくところですね」
「すごいね、何でも知っているんだ……」
「いいえ、大した事はありません」
予期せぬ形で褒められたことで思わず両手を振りながら謙遜した。実際、天文部の先輩
からの受け売りだということもあるが、それ以上に尊敬する人から「すごい」という言葉
が出たことだけで、恐れ多い気分だった。
「この月はあと一週間もすれば、満月へと変わっていくでしょう」
「そうか……。余り月の変化を気にしたことがなかったけど、そういうことを知るとちょ
っとずつ変化を見たいって気になるな……」
ちょっとだけいいムードになってきた。今なら自分の想いを言えそうな気がする。
「あの、榊さん……」
ふと愛しき人の名を呼んだ。怖くて顔を直視できないが、名前を呼んだことでこっちを
見ている気がする。
一瞬だけ、沈黙が場を支配した。
――言わないと、このチャンスを逃したらいつ言うのよ。弱気になっている場合じゃないわ。
不安も怖さもあるけど、それを勇気に変えていかないと。
しかし、やっぱり顔を直視することはできず、月を見つめたままの状態で口を開いた。
「この月は引力によってやがて満ちて大きな円を描く時が来ると思います。でも、私の心
はずっと欠けたままなのです。私にも欠けた心を満たす引力が必要なのです」
榊は何も言わず、黙って話を聞いている。心臓が徐々に高鳴っているのを感じた。
「私の引力となるのは、大切な人が私のそばで微笑んでくれることなのです。そうするこ
とで、愛しくてかけがえのない喜びが得られて、生きる強さが得られるのです」
ふと視線を落とした、遠くのビル街のあちこちに灯りが点り始めている。
心臓はさっきよりも高鳴っている。このままだと榊にも聴こえるんじゃないかと思うほ
どの大きさだし、それに比例して早くもなっている。
- 113 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:24 ID:???
- 「だから、この際言っちゃいます。榊さん、私はあなたの――」
正直、ここから先のどんな言葉を口にしたのか、全く記憶になかった。ただ、一つだけ
言えることがある。
「おーい、榊ちゃーん!」
突然現れたけたたましい叫び声によって、完全にかき消されたことは確かだった。
――と、ともぉー。何てことしてくれるのよ……。
「お前、声でかすぎ」
気持ちを代弁するように、暦が呟いた。
「あっ、かおりんもいるじゃん」
人の気も知らずに、呑気に挨拶をしている智の何も考えていなさそうな顔が妙に腹立た
しくなり、思わず視線がきつくなった。
「おい、大丈夫か? 顔色良くないみたいだけど」
そりゃ、せっかくのいい場面を台無しにされたら顔色だって悪くなるじゃない、と言っ
てやりたかった。
だが、一気に緊張の糸が切れてしまって、今となっては貧血に近い状態だし、倒れそう
になるのを必死にこらえるのが精一杯なので、せめてもの抵抗として睨みつけるのが限度
だった。
「あっ、二人も来てたんですか」
愛犬家との挨拶を終えたちよも戻ってきて、榊が忠吉さんの頭を撫でている。
ちよだけでなく、智と暦の二人も来た以上、もはや榊と二人っきりになれるチャンスは
限りなくゼロに近かった。
――せっかくのチャンスだったのに……。
薄れそうになる意識の中では、あと一歩で告白できなかった自分の運のなさを嘆くのが
関の山だった。
「ちよちゃんの家に行ったら、忠吉さんの散歩に出かけたって聞いてさ。ここじゃないか
と思ったらなぁ、予想通りだったってわけ」
「なぁ、花火持ってきたんだけど、一緒にやらない?」
智が持っていたコンビニの袋から花火を取り出した。
- 114 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:24 ID:???
- 「それは別にいいですけど、ここは花火禁止ですから、別のところでやりましょう」
「よーし、そうと決まれば、全員早速開始!」
「お前は元気だなー」
智と暦が先頭に立って歩き出した。ちよも「行きましょ」と呼びかけ、忠吉さんのリー
ドを持って歩き出した。
「私たちも行こうか……」
「そ、そうですね」
今日どころか明日の分のエネルギーを使い切った気分になったせいか、全身を脱力感が
襲っている。並んで歩くのが精一杯で、何かを話そうという気分にはなれなかった。
今はただ榊と一緒に歩けることで、ささやかな幸せを感じる以外に何もできそうになかった。
――自分の気持ちは伝えられなかったけど、榊さんと一緒に帰れるだけまだ幸せなのかな。
愛しき人と並んで歩ける。遠巻きに見つめることしかできない学校生活から比べると、
それだけでも十分進歩している。ステップアップはしているはずだと、自分自身にそう言
い聞かせることにした。
「ところで、さっきの話なんだけど……」
「えっ……」
体が一瞬のうちにぎゅっと凝縮する気分になった。まさか、さっきの話の続きができる
のか? 願ってもないチャンスの到来に、再び体に力が入るのを感じた。
「さっきのあの話……」
「は、はい……」
「さっきの……」
夜の冷たい風が熱を持った頬に吹き付けてきたが、今はそれを感じる余裕はない。繰り
出される次の言葉を待つこと以外に今の自分にはできることはないのだ。
「月の話、とても面白かった……」
「あっ、そのことですか」
途端に体の力が抜け、さっきの脱力状態よりも更に力が抜けて、その場にしゃがみこん
でしまいそうだった。
- 115 :月を見上げて :2009/07/11(土) 15:25 ID:???
- 「また今度、聞かせてもらえないかな……」
「えっ、いいんですか?」
一度は尽きかけた気持ちがまた湧き上がってきた。
「星座とかってロマンチックな話が多いから、もっと知りたいなって思って……」
「は、はい! 私でよければ喜んで!」
左手をぐっと握り締めて、小さくガッツポーズを作った。
――告白はできなかったけど。これで榊さんと一歩お近付きになれたわ!
今日は帰ったらまずは天文の資料を片っ端から調べよう、そして、ロマンチックな話を
収拾して、今度会ったときの話題にしよう、頭の中で次から次へと行動計画が目まぐるし
く動いている。
できることなら、今すぐ帰って調べたいけど、これから一緒に花火ができるのだから、
それを楽しむことにしよう。
――榊さん、好きです。
心の中で、叫んでみた。当然、隣を歩いている女性には届いていない。それでもよかった。
今はただ、そばにいられる喜びをかみしめるだけで十分だ。そう、今はまだこれで。だ
けど、心の中でもう一度叫んでみだ。
――今度こそはきっと私の思いを伝えますから、その時は私の気持ちを受け取ってくださいね。
(終わり)
- 116 :名無しさんちゃうねん :2009/08/07(金) 02:01 ID:???
- >>108-115
かおりんの微妙な恋心が伝わってきますね。
榊さんの一言に一喜一憂する姿がとても良かった。
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- へーちょ
- 145 :名無しさんちゃうねん :2010/02/21(日) 20:24 ID:???
- 何があったか知らんが
マルチポストはやめろ、
このタクランケ。
- 146 :rwLuFETxvwYpwI :2012/05/21(月) 12:39 ID:???
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