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一行小説リレー「あずまんがバトルロワイヤル」
- 1 :名無しさんちゃうねん :2002/12/03(火) 23:52 ID:vuigWsI6
- では、スタート!!!
- 509 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:56 ID:???
- しかし草木も眠る丑三つ時。 空は真っ暗。 ゲーム初日。 みなさんなかなか姿をあらわしてくれません。
軽く2時間ほど散策しましたが、みなさん、特に男子なんかはおとなしい臆病者が揃ってますからさっぱりでてきません。
ほらほらー、ちーよですよー。 天才ですよー。 防弾チョッキですよー。 拳銃ですよー。 …………だれもいませんね。
ああ、いったい何故わたしはこんな無人島で貴重な時間を費やし、馬鹿な愚民どもを駆除しなければならないのでしょうか?
政府のイベントというのはいつもこうです。 費やされる無駄な時間。 無駄な資本。 無駄な労働力。
こんなこと考えているうちに夏休みの課題・納税促進標語ができあがってしまいました。 「税金を ぼくらのために つかってね」。
ゆかり先生ならいい評価くれそうです。 …………ああ暇ですねえ!
うたでもうたいましょうか? ♪頃しっましょ〜、頃しっましょ〜、さってさってだれがー氏んだかな? はいっ、逝きました!
…………ほんと誰もいないんですかぁ! 右腕が早く引き金をひきたくてうずうずしてるんです。
このお下げが早く血をみせろ、血をみせろって催促してくるんですよ! いいかげん出てきてください!
いまなら特別、 苦しまずによみの国におくってあげますから!
はあ。 こうなにも起こらないとついつい無駄な思考をめぐらせてしまいます。 考えたくないことまでつい考えてしまうのは
思考が休むのを嫌うという天才の持つ辛い性質です。 腹が立つクラスのおバカさんたちの顔がうかんできました。
あの谷崎とか言う担任教師はバカ代表です。 英語教師の癖にろくな知識がなく、いうかと思えば週末の体育教師とのレズ話や、
くだらないゲームの話、過去に家庭教師をした男の話ばかりです。 はい先生、イタすぎて笑えません。
教師が相当のバカですから、必然的に生徒もバカとなります。 身近な例を挙げると----------------------
たまに変なことを口走る下品な方言奴僕、 天才の私といえど奴の脳内構造はとても理解できません。 わかりやすく言うと知障ってことです。
胸ばかりが肥大した暴力的な黒人奴僕。 体型からいってどう考えても水泳向きではないことに未だ気づかない阿呆さんですね。
いわずと知れたネコオタ奴僕。 対人恐怖症、自閉症、分裂症、妄想癖に加え初期段階の顔面神経麻痺症を持ち合わせた病気の温床です。
メガネデブ奴僕。 いいかげんヒステリーは何とかして欲しいものです。 もう死んだから関係ないですけど。
空回り暴走奴僕。 思ったことはすぐ口に出し思いついたことは後先考えず実行します。 自制心のない猿です。
他にもいちいちズームアップになって鬱陶しい百合奴僕や、存在すら感じられない宮崎奴僕。 ひょろひょろのガリ勉奴僕に
担任教師に殴られて入院し米帝行きを中止にされた染め毛奴僕。 まったく、このクラスいやこの学校にはろくな人間がいません。
この前もメガネデブ奴僕が、この私にこの上なき暴言を吐いてくれました。 完璧超人である私が唯一の弱点としている「はやくちことば」
を発するよう会話を巧みに誘導し、なかなか成功しない私を見下ろして、「かわいいなぁ」 とかほざきやがったんです。
- 510 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:57 ID:???
-
ムカついた。 かわいいだと? この野郎。
いっとくが私はかわいいと思われるのが大っ嫌いだ。 「かわいい」という感情は相手を自分と同等もしくは目下に意識する場合に
生まれるわけで、クラスの阿呆どもから「かわいい」と思われるということは、つまり見下されているということになるのだ。
アイツラに見下されてるなんて、考えるだけで血管が引き裂けそうになる。
そう、私はいつもアイツラに見下ろされて過ごしている。 授業中も、休み時間も、体育の時間も、私服で合う日さえ。
アイツラの視線の中には、いつも感情がこもっている。 やいチビ、かわいいよちよちゃん、 おいちよすけ。 ……やめろ反吐がでる。
あの下品な方言女さえ私を見下ろしているのだ。 そして言う。 「ちよちゃんはかわいいな〜」
血液が逆流してくらくらするのを必死の笑顔でごまかしつつ、今すぐこの女を絞め殺したいという衝動にかられながら、
--------仮にやろうとしても手が届かない無念さに押しつぶされそうになりながら--------
満面の笑みをうかべてやるのだ。 おのれ腐れ方言、いつかその耳障りなほんわかボイスを一生利けないようにしてやる。
いっておくが、私とクラスの凡人たちとでは格が違う。
例えば家。 街から少し離れた穏やかな住宅地に、どーんと佇む○○○坪。 豪勢な庭には猛獣(忠吉)が放し飼いだ。
庭園には花が咲き、 川が流れ 鳥が歌う。美術品が数多く存在し、侵入者はケロベロスによって駆逐される。
それ比べればクラスの連中の家など犬小屋よりも下だ。汚いスモッグにたかれながら、群馬県の農民がつかった
水道水のお古でその身体を洗う、今日もわかめかもやしでも食ってるんだろう。 いいざまだ。
私はアルプスのミネラル・ウォーターと高級松坂牛で夕食を飾る。
さらに恵まれた才能。 私ほどの頭脳をもっていると高校の勉強では物足りなくなる。 例えば微分・積分。
これマスターするのに私は2時間を要さなかった。 それに比べガリ勉奴僕(大山)などは毎日眠る時間を削って勉強し、
それで私の足元にさえ及ばない。 智などは論外で、まだ三角比が理解できずにいる。
加えてこの容姿。 「かわいい」と思われるのは反吐がでるが、ルックス、左右の対称性、芸術的なヘアースタイル、どれをとっても
完璧だということは認めてやる。 ときどき鏡を眺めると、自分でもうっとりしてしまうことがあるからだ。 嗚呼、なんて美しいんだ私。
こんな風に私の完璧振りを挙げていくときりがないが、まあこれだけ話せば相当の馬鹿じゃないかぎりは、
私がいかに偉大で価値のある人間かということが解ってもらえると思う。
そう。 人間には価値というものがある。 そして世の中の大部分を占める価値のない人間は価値のある人間に
全力で奉仕しなければならないと私は考えている。 3歳のとき原文を読んだ「罪と罰」 の理論だ。
ラスコーリニコフはあっさりバレるへぼ殺人をやらかしたが、私は違う。 真の天才だ、あの理論は通用する。
IQ200(まあ、人はよく賢さの尺度としてIQを出したがるが、私にいわせればナンセンスだ。 あんなもの睡眠と体調による
頭の冴え具合と運、年齢からいくらでも変動する) を軽く超越する私の知識と戦略をもってすれば、クラスの低脳どもなど
赤子の手を捻るようなもの。 いってみれば、私は生き残って当然の立場にあるのだ。
- 511 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:58 ID:???
- だから私はこのプログラムを勝ち抜いてみせる。 普通に考えればこうまで小柄で か細い11歳の少女が
17歳の高校生達にまじって殺し合いをしても、生き残ることはまず難しいかもしれない。 それも担任教師のわがままで
各部活動から半強制的に強豪が集められているこのクラス。 ボンクラ黒人ほか各部エース・優秀選手陣たちがまあまあ
ハイレベルな殺し合いを繰り広げていくことだろう。 しかし、私は生き残る。 私の手にはどんな非力な少女でも人差し指を引くだけで
強靭な筋肉を突き破って穴を空けられる魔法の鉄塊が収まっているし、私の体にはどんな鋭利な刃物も、音速の銅弾さえも
うけつけない魔法の布が巻きつけてある。 そして何よりも、私には最強の武器 「かわいさ」 が備わっているのだ。
私がちょっと同情を引くセリフをはいて泣いたマネをしてやれば、クラスの連中は大抵のことは聞いてくれる。
ちょろいもんだ。 私はこうやってクラスメートを奴隷のように使ってきた。 この能力は過剰なやさしさと理解不能な冷酷さが
同居する現代っ子の前者の感情を大いに刺激してくれる。 うまく同情をひいて松山あたりを味方につければ
原作のヒロインさんみたいに何もせず最後まで生き残ることもできるかもしれない。 外見は武器だ。
ワルサーPPK、特殊防弾チョッキ、そしてこの容姿と生かせるものはなんでも生かし、この苦境をのりこえてみせる。
月明かりに照らされる山道を歩きつつ、私はそう決意するのだった。
と、そのとき。 私の耳にばらばらばらっ、という小刻みに震えたような音が届き、それと同時に背中に複数の衝撃が走った。
熱い。 奇襲されたと気づく。 防弾チョッキの上とはいえ背中には半田コテでつっつかれたような熱を感じる。
弾丸が制服の背中を破るのがわかった。 私は瞬時に判断する、 防弾チョッキの存在を悟られないようにすれば
後々有利にコトを運べる、と。 私は銃弾の衝撃ではじき飛ばされながら、後ろを振り向いた。 こんなふうに仰向きで倒れれば
破れた制服の背中が隠れ、防弾チョッキが向こうから見えなくなる筈だ。 完璧な被弾者の演技をしつつ、私は枯れ葉のように
地面へ崩れ落ちてみせた。 我ながらアカデミークラスの演技、当然だ。 私の学校生活そのものが演技なのだから。
もちろん倒れ際に相手の顔を確認しておくのを忘れない。 敵を知り、己をしればなんとやら。
- 512 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:58 ID:???
- 真夜中の月と重なるようにしてたたずんでいたのは、腰まで伸ばした不潔な黒い髪、攻撃的な印象のツリ目。
そして整形を疑われるほどぴくりとも動かないポーカーフェイス。 疑う余地もない。 榊とかいうネコオタ奴僕だった。
昔話に出てくる妖怪雪女みたいに病的な白い肌がマシンガンを抱えている。 榊はあの魚臭い手で引き金を引き、
この私の美しい背中に傷をつけたのだ。 BR中でなければ賠償金6億円を請求しているところだろう。
榊…… 私は両親の財力を使い世界各地ありとあらゆる場所を回り、そこでたくさんの人間とつきあってきたが
そのなかでさえ、これ程ムカついた女は見たことがなかった。 背が高く、スポーツも勉強もできて
歌がうまい。 この時点で殺したくなるのだが、かてて加えて胸がやたらでかいという特徴をもつ。
私と並ぶとまるで異星人なのだが、このネコオタは雌にやたらもてるという性質をもっている。
天才の私が難問・奇問といわれる難解数学を華麗に解いてみせてもクラスの馬鹿どもは退屈そうなあくびをするだけなのに
(そもそも智などは、理解していない) このツリ目デカパイ女がちょっと走っただけで、メスどもは黄色い声をあげやがる。
くそっ、早く走れるのがそんなカコイイかだったら鉄道オタにでもなってやがれ。 それともチチが目当てか
あの揺れるチチがいいのか? じゃあ牛でも飼ってろカゥボーイ。
しかもこのネコオタ、普段は石像のように黙りこくっている癖にどういうわけか私を前にするとやたら弁が立つ。
休み時間や昼休み、いつものぴくりとも動かない顔でちよちゃんちよちゃんちよちゃんちよちゃん…………
そして自分の赤裸々なプライベート生活について頼みもしないのに語り出す。
猫が好きという事。 猫をいじめるのが好きという事。 猫を二階から落とすのが好きという事。 猫を浴槽に入れて(自粛)が好きという事。
将来は獣医になって猫の解剖をしてみたいということ。 などなどの個人的な夢を、私が制してやらなければ永遠に。
そう、このネコオタ奴僕は、普段寡黙で通している分のうっぷんを、まとめて私に吐きだしてくるのだ。
しかもこいつと話したあとは必ずといっていいほど-------- あー、名前忘れた。 オカッパのレズ奴僕が私に絡み
石像女の情報をききだそうとしてくる。 刑事かそれとも軍事スパイレベルのききこみに私がうんざりしながら答えると、
根掘り葉掘りさらに奥深くまで引き出そうとしやがる。 正直にやつのネコオタぶりについて話してやったら、
「うそいってんじゃないわよ」と叫びつつ大型カメラのカドでこの私の頭を殴りつけやがった。 てめえいま脳細胞が4千個は氏んだぞ!
……あるいはネコオタは、これを狙って私と話しているのかもしれない。 あいつはかわいいものをいたぶるのが趣味なのだ。
レズ奴僕を利用して間接的に私を痛めつけ、変質的な悦びを感じているという線も考えられなくもない。
だとしたらヤツの行動は極刑に値する。 この私を殴りつけたのだ。 この金の脳細胞をいたずらに破壊するなどとは
世界遺産を知らず踏み潰していくゴジラの如き愚行。 罪という名の質量は生存可能範囲をとうに超えている。
ヤツには死をもって償ってもらわねば。
- 513 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:58 ID:???
- 榊がのんびりした歩調で丘を下りてきた。 今は死んだフリという戦略行為を遂行中ゆえ 薄目でしかその姿を確認できないが
魚臭い手にはウージーサブマシンガンを構え、 不潔な長髪とスイカみたいな胸を下品な感じに揺らしているのだろう。
ネコオタよ、隙あらば撃ち殺してやる。 お前が小動物を痛めつけることで性的快楽をえる変質者であることは百も承知だ。
11歳の少女なんてヨダレが出るほど殺したかったのだろう。 だからこそ真っ先に私を探し出し、銃弾をばら撒いてきた。
恐らくネコオタはこう考えている。 もし私に打ち込んだ銃弾が急所をはずしていたり、私が防弾チョッキを着ていた場合
私がワルサーで反撃にでる危険がある。 だからこそ用心深くも銃口をあげたまま歩み寄るのだ。 向こうは引き金に指が
かかっている上、広範囲に攻撃可能なサブマシンガンをもっている。 撃ち合いにもちこんで不利になるのはこちら側だ。
では起きあがり、目に涙を溜めながら命乞いする哀れな少女を演じるというのはどうか。 普通のバカ相手ならこれで
見逃すどころか、弾よけになって文字どうり最後まで行動を共にしてくれるかもしれない。 だがネコオタは違う。 恐らく榊は、もし私が生きていた
場合それをやらせるためわざと銃口をあげ近づいてきた。 最初の奇襲で死んでいたなら限られた弾丸を無駄にしなくて済むし
もし私が説得のしようと起き上がったなら撃ち殺せばいい。 現に榊は丘上から無言で狙撃してきた。 殺意は確実にあった。
第一、この失言症女に十分なコミニュケーション能力が備わっているかどうかさえ怪しい。 こういった、問答無用でこの高等な
脳髄に穴を空けられる危険も考慮にいれると、 やはりこのケースに限ってはかわいさアピール作戦は控えたほうがいいかもしれない。
榊の足音が響く。
ならば死体作戦を通すのみ。 高校入学以来三年間、私はこの天才的頭脳と情報技術を用い数多くの犯罪に手を染めてきたが
どれひとつとして表沙汰にならなかった。 その理由の一つは私の見事なまでの演技力にある。 「ちよちゃん」 という可愛いキャラクター
を作り出し、無邪気な少女を演じ続けることによって私が陰でしていることを知られるどころか疑う者さえ出なくしているのだ。
そう、そしてこの演技力は絶海の孤島、クラスメート同士の殺し合い現場においても健在だ。 さあ私の完璧な演技をみろ。
いいかネコオタ、 私はお前が嫌いだ。 殺したいくらい嫌いだ。 背の高いところが嫌いだ。 胸の大きいところはもっと嫌いだ。
私が後輩から「かわいいね」と頭を撫でられてる横で、尊敬と憧れのまなざしをうけているところはもっともっと嫌いだ。
ほんとうは語彙が貧弱で人と会話する自信のないネコオタの分際で寡黙な一匹狼ぶってるのはさらに嫌いだ。
憎らしさをスカウターで計測すると方言が10、暴走バカが50、 ネコオタはマックス255KI(キロアイ)はいく。
だがその気持ちを表に出しこの完璧な演技にスキをつくるような愚かなまねはしない。 私は今宵この島に転がるどのクラスメートの
死体よりも死体らしく倒れてみせる。 みたか、一切の感情が介入しないこの演技。 完全なる死体、完全なる美がここにある。
これこそが凡人と天才の差。 お前はこの罠に見事ひっかかり、私が死んでいると完全に思い込むだろう。 やがて手が疲れてきた
こともありサブマシンガンの銃口を下ろすのだ。 そしてそのときこそお前の最後。 死んだはずの私はむくりと起き上がり
お前が反応する前に、 その無駄に脂肪の付いた左胸に鉛の弾をぶちこんでやる。 私はアメリカで受けた射撃訓練でも天才的才能を
発揮した。 距離数メートルなら確実にあてられる。 ネコオタと違い私が急所を外すことなどない。 私は戦略的勝利を手にするのだ。
- 514 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:59 ID:???
-
榊の気配がすぐ傍まで来ている。 おかしい…………ネコオタの奴、銃をおろす気配を一向にみせない。
ここまで近づけば私が死んでいることなどとうに気づいていていいはずなのだが。 まだ演技が足りないのか?
……ネコオタよ、この死に様をみろ。 よ〜くみろ。 お前がこの私を、この少女を殺したのだ。 お前は無情にも丘の上から
その殺人器具を用い哀れなる少女を撃ち殺した。 お前は罪深い。 だから銃口をさげろ。 私がその罪を償わせてやる。
すっと、榊の手が私の腹をさわった。 どうやら私が本当に死んだかどうか確認したいらしい。 ……いいだろう、 ここからが私の演技の
みせどころだ。 ただの死体のフリなど三流役者にもできる。三流と一流の分かれ目はあらゆる状況に対しどのように対応できるかだ。
例え間近からみつめられても、例え身体の一部を触られても決して微動だにしない完璧な演技。 これこそ生と死を分かつ、
天才の演技と凡人のなりきりを分ける違いでもあるのだ。 ……さあ榊、思う存分触るがいい。 お前が触れば触るほど私の死は疑いから
確信へと近づいていくだろう。 そしてお前が安心し、その銃口をおろしたときこそ演技終了の合図だ。 ワルサーの引き金は、指にかかっているぞ。
榊は手を滑らせるようにして数回摩ると、こんどは胸の辺りをこねるように触ってきた。 ……くっ、疑り深いやつだ
まだ調べ足りないというのか? ふんっ、そこまでに調べたいというのならこちらもとことん付き合ってやろうではないか。
さあみろ、そして騙されろ。 これこそ完全無比なる死体、 (故)美浜ちよだ。 おまえの節穴EYEでこの演技が見破れるか。
榊は私の体をべたべたと触ってくる。 さっきから片手でしか触ってこないところを考えると、いまだに左手の指は引き金に
かかっているというわけか。 なかなかネバるな、ネコオタ。 そうでなければこちらとしてもやり甲斐がない。
榊の手が顔面を撫でた。 いつも女性自身をまさぐっているせいか、こいつの手は異常に魚臭い。 しかも今はどういうわけか
手の表面がぐしょぐしょに汗ばんでいて顔にはりつくと言いようもない不快感を味あわされた。 カサブタや傷跡で余計な手相が
できあがってるから、まるで宇宙人にいじられているような気持ち悪い錯覚を覚える。 …………やめろっ、お前の手は腐った魚だ。
片手を巧みに使い顎の下をさすったあと、鼻の穴に指を突っ込みくちょくちょと掻き回す。
私はくしゃみが出そうになるのを必死に抑えながら、完璧な演技をつづける。 息はとめたままだ。
眉毛の上を擦り耳の裏側をくすぐってくる。 指の先をハケみたいに使って、首元をさする。 さらに唇をつまんで引っ張る。
鰯のような異様な臭いと17歳とは思えないフィンガー・テクが容赦なく顔の神経に襲い掛かってくる。 しかし決して顔をしかめてはいけない。
未だ銃を構えている用心深いネコオタに演技がばれてしまっては元も子もない。 これは生死をかけた我慢比べなのだ。
榊は諦めたようにため息をつくと、私の顔面から手をはなした。 ……勝ったのか? いやまだだ。 銃口はまだおろされていない。
- 515 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 20:59 ID:???
-
荒い息づかいが聞こえる。
なにかに気づいたようだった。 榊が急に鼻息をあらくし、悦びの声を漏らす。 ばさばさしたロングヘアーが膝小僧にふれた。
恐る恐る薄目をあけてみると、 榊の目は私のソックスに釘付けになっている。 何か信じられないものを見るような目で、穴が開くほど
靴下をみつめていた。 しまった! 今日のソックスは猫柄、しかも小学生女子の間でかわいいと評判のHECHOブランドだ。
ネコオタで少女趣味の榊がもっとも喜びそうな品だ。 まずい、これでは猫にマタタビをつきつけるようなものではないか。
「…………」
榊の手がのびてくる。 ああやっぱり、 …やめろ、魚の臭いがこびり付く。 頼むから触るなぁ…………ああ、触った! 汚らしい手で触りやがった!
…………終わった。 この靴下は二度と使えない、おととい海外から取り寄せたのに。 洗濯してもどうせ落ちないさ、 この臭いは呪いだからな。
榊は靴下をひっぱったり裏返したりして念入りに観察してくる。 目をつむっていても その視線は痛いほど感じられた。
くるぶしから上のあたりにある四つの猫の縫絵。 それを拝もうと必死になって私の足を変な方向に折り曲げてくるのだ。
もう私が生きてるか死んでるかなんて関係ない。 だが、銃口を突きつけることだけは忘れてねえ。 ……動いたら殺される。
榊の爪がすねを引っかいた。 乱暴な手つきで靴下を脱がそうとしてくる。 おのれネコオタ、見るだけでは飽き足らず
ブランドソックスを自分のものにしてしまおうという魂胆か。 そもそも履けるサイズでないのがわからないのか。
それ以前にソックスを脱がすにはまず靴から脱がせねばなかろう、靴下だけ引っ張ってどうする。 やはり今のこいつは狂っている。
榊が靴の紐を解こうと必死で右手を動かす。 ほどけないのも無理はない。 ゲーム開始前、走っているうちに脱げたりしないよう
私は古来インドに伝わる伝説のしばり方でばっちり結びつけておいたのだから。 おまけにこの靴は、丈夫なうえ品質がよいことで
有名なブランド00000社製のものだ。 アーミーナイフを用いてもその靴を脱がすことはできない。 おまけに左手はマシンガンで
ふさがっている。 ついでにその銃口は未だに私へ向けられている。 たのむからその物騒なの降ろしてよ、おねえちゃん。
そもそも絶望的なまでに不器用なお前が、片手で他人のソックスを脱がそうなんてのが土台無理な話なんだよ。
でもそんな正論は、まちがっても今の榊に通用しない。 なぜならこいつは かわいいものを前にすると自我をなくし 餌に食いつく
ジャガーのように凶暴になる 世に2人といないネコオタだから。 こいつにとって猫の靴下など 思春期の少年にとってのエロ本に等しい。
ハァー、ハァーという吐息で自分自身の思考をかき消し、ただ本能の赴くまま 引き千切らんばかりに少女の靴下に食いついてくる。
- 516 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 21:00 ID:???
- たっぷり4,5分は苦戦して、とうとう諦めたらしい。 榊は私のソックスから手を離した。
そうだ、それでいい。 手垢で汚れたとはいえこの高級品を貴様にくれてやるものか。
靴下だけではない、私の着るものは全て$3桁以上のブランド品なのだ。 ティッシュだって貸してやるものか。
そもそも、安っぽい制服につつまれて学校に行くと、他の安っぽい連中と同じにみえそうでやるせない。
だからこそ、こうやってソックスとか、靴とか、下着とかで貧乏な連中と差をつけているのだ。
靴とか、下着とか。
……………………下着とか。
榊の手が、なめくじのように私の足をすりあがってきた。
やめろ……………… 今度はどこへ向かう気なんだ?
榊の汗ばんだ手は、ふとももを擦るように、私の足を徐々に徐々に登ってくる。 舌で舐めるように。
私の脳裏に 猫の靴下を脱がそうと執拗なまでに奮闘する榊の姿が蘇った。 さっきは足だったからよかったものの、今度は。
たのむ……お願いだ。 そこまでいじられて完璧な演技を通せる自信がない……
榊の息遣いが荒々しくなっていく。 榊の手はガタガタと震えながら、スカートのすそを強引に引っつかむ。
やめろっ!
私は耐え切れず目をあけてしまった。
そして見た。 榊が、信じられない顔で笑っていた。
口の左先が不自然にひきつって、意味不明な皺ができている。 石灰みたいに白い歯を中途半端にみせて、
途切れ途切れに息を漏らしているのだが、ごぼごぼと空気のこぼれる音だけで、目が全く笑っていない。
これ以上は描写できない。 不気味すぎる。 声を出さない息と表情だけの笑い。 とにかく人間の顔じゃなかった。
こいつ…………こんな顔で哂うのかっ…………
かつてないおぞましさを感じ、 私は本能的に危険を察知したのか、気がつくと拳銃を持ち上げていた。
自分の身を守るため反射的にやってしまったことなのだが これがいけなかった。
- 517 :名無しさんちゃうねん :2003/08/18(月) 21:00 ID:???
- 榊「っ!」
私が拳銃をあげたのと同時に、ウージーサブマシンガンから光の線が差した。
その線は短い弧を描いて私の側頭部に到達し、激しい痛みとともに音の感覚を奪い去った。
さらに連続して発射されるオレンジ色の光に、私の頭皮は水面のように波打っていく。
弾丸が肉を破り、骨を削る。 目の周りの骨が砕け、その衝撃で目玉が宙へ踊り出した。
容赦なく発射される弾丸と、悦びに満ち満ちた榊の表情。 その先には焼けだだれたマイヘッド。
ああ私の大脳が、海馬が、高級な脳細胞組織が失われていく。 お前のネコばっかなファンタジック世界とは違う、天才の脳細胞が。
榊「…………」
榊「…………ふふ」
榊「ふふ…… くく…… ハハハハ!!」
無人島には銃声だけが響き渡っていた。
途切れることのない、銃声が。
(終)
- 518 :名無しさんちゃうねん :2003/08/21(木) 18:37 ID:???
- すさまじいSSだな………
- 519 :名無しさんちゃうねん :2003/08/25(月) 09:05 ID:???
- バロまんが大王
(クラス替え)
七原「また一緒のクラスだといいなー」
国信「シューヤとは一度別になりたいかな、施設に入ったときからずっと一緒だ」
七原「まーそーいうなよ」
川田「すごいな。 ずっと一緒のクラスなんて俺にはいない」
七原「そりゃそうだ」
(行間)
三村「おーい、ノブ」
中川「ノブ君、ちょっと」
七原「ノブー」
林田「慶時ー、 国信慶時ー」
赤松「これが、噂に聞くバトルロワイアルか……」
大木「武器、すげぇなあ」
↑初めての人
川田「そっちのに換えてくれ」
↑やったことある人
(空港)
坂持(嘉門)「それじゃー出席とりまーす! みんないますかぁー? もう死んだ人いない
かなぁ!?」
七原「はいはい俺死んでまーす!」
坂持「生きてるじゃないかぁー!」
坂持「はーい、これからみんなに殺し合ってもらうわけですけどぉ、最後の一人になるまでが殺し合いでーす!」
七原「はやっ!」
桐山(とばしてるなぁ……)
- 520 :名無しさんちゃうねん :2003/08/25(月) 09:06 ID:???
-
(自力スイカ割り)
大木「BRだー! 殺し合いしよーぜ!」
七原「銃とかマシンガンとかないかな」
中川「ないわねぇ」
大木「ナタ! ナタでいこう」
【大木立道 死亡:残り38名】
(海の幸)
桐山「どんな武器がもらえるのかな」
七原「どんな武器がほしいんだ?」
生徒「オレ拳銃ー!」 「マシンガン」 「防弾チョッキ」 「手榴弾」
中川「ブーメランー」
七原「ブーメラン!?」
(やりかねん)
南端に来ました
小川「いい夜景ね。 いい風だね」
山本「なんか飛び降りてもぴゅーってとべそうだ」
小川「…………」
(指摘)
杉村「前から言おうと思ってたが桐山、お前のマシンガンの持ち方は間違っている」
桐山「…………?」
杉村「お前は片手で振り回してる。 本来はこうやって、前方グリップを下げて両手でもつんだ」
桐山「………………(パラパラパラ)」
杉村「違う」
桐山「…………(パラパラパラパラ)」
杉村「……違う」
桐山「………………(paraparapara)」
杉村「どうでもいいからそれ以上殺すな」
- 521 :名無しさんちゃうねん :2003/08/25(月) 09:07 ID:???
-
(対決)
キタノ「残り7人でーす」
川田「よし、ついにあの転校生と対決や」
七原「おーっと川田君。 誰か忘れてないか?」
川田「また弾除けになるんか? 役立たず」
(ひとり)
卜部「黒澤ってクラブはいってるのか?」
黒澤「いや……入ってない」
卜部「俺ラグビー部やってんだけどさ、どうだ? 黒澤も」
黒澤「…………」
卜部「……なんてな、ウソウソ。 じゃあな」
黒澤(…………誘って欲しかった)
(サメだー)
七原「先生、稲田の話だけ世界が違います」
高見「気にしないで」
- 522 :名無しさんちゃうねん :2003/09/15(月) 19:59 ID:???
- 人がいないな。
やっぱりあずまんが世界に 「血」 とか 「内臓」 とか 「殺し合い」 とかは似合わないのか?
- 523 :名無しさんちゃうねん :2003/09/17(水) 18:38 ID:???
- >>508-517
表現とかはすごくおもしろいんだけど・・・・・・・・・・・
キャラ壊れすぎ
- 524 :名無しさんちゃうねん :2003/10/08(水) 19:04 ID:???
- test
- 525 :エヴァンゲリオン :2003/12/07(日) 16:40 ID:???
- ぐぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
- 526 :名無しさんちゃうねん :2004/02/11(水) 09:38 ID:???
- これが記念すべきあずバト一作目。
書いた人は他に何を書いたのか知りたい。
- 527 :名無しさんちゃうねん :2004/03/13(土) 23:20 ID:???
- 保守
- 528 :名無しさんちゃうねん :2004/03/23(火) 10:57 ID:???
- 大阪「なんや夢か。」(完)
- 529 :名無しさんちゃうねん :2004/05/09(日) 23:03 ID:cqrQxuQU
- と、大阪が目を覚ましたとき、教室にゆかりが入ってきた。
ゆかり「今日はちょっと皆さんに殺し合いをやってもらいます」
- 530 :名無しさんちゃうねん :2004/05/16(日) 16:47 ID:???
- 金正日に核兵器を撃ち込まれて全滅しましたとさ。
メデタシデメタシ。
- 531 :名無しさんちゃうねん :2004/05/16(日) 20:21 ID:???
- しかし、すべて死に絶えたかに見えたこの地にも、生き残りは存在した。
とも「いやー、びっくりしたなー。日本、めちゃくちゃじゃん」
ちよ「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないですよー」
- 532 :名無しさんちゃうねん :2004/05/17(月) 17:24 ID:???
- しかし、その後に待ち受ける運命など、彼女たちは知るよしも無かった・・・
【第3回あずまんがバトルロワイヤル】
- 533 :名無しさんちゃうねん :2004/08/08(日) 16:11 ID:1VKFr9pA
- へーちょ
- 534 :名無しさんちゃうねん :2004/08/08(日) 17:50 ID:???
- なんとしても終わらせたい香具師がいるようだなw
まぁ、漏れもこのすれにはあまり感心せぬが
- 535 :名無しさんちゃうねん :2004/08/08(日) 20:27 ID:???
- だって、本当はバトルロワイアルなのに皆バトルロワイヤルっていうんだよ(つд`)
と揚げ足をとる漏れは吊ってきますね(`・ω・´)=3
- 536 :名無しさんちゃうねん :2004/08/28(土) 12:05 ID:zJAdyfqw
- ゆかり「はーい、今日は皆さんにちょっとお笑いバトルロワイアルをしてもらいまーす!」
【第3回あずまんがお笑いバトルロワイアル開催!】
- 537 :MAD WRITER ◆UYleBl5vm. :2004/12/20(月) 19:48 ID:???
- 始まるのか!?
- 538 :名無しさんちゃうねん :2005/02/03(木) 18:44 ID:???
- バトルロイヤルまだ〜
- 539 :1945 ◆9BzY4nJx3c :2005/02/03(木) 21:19 ID:???
- 残虐なのがいやな人も多いだろうし、地味にsage進行で書こうと思うのだけど、
まずキャラのイメージのリクエストをしたいです・・・
興味のある人はキャラ名と以下の番号をかきこんで下さい。
1・・・必要以上に怯える。やられ役かヒロイン決定。
2・・・できるだけ原作どうりに。
3・・・必要に迫られれば殺すことも辞さない。
4・・・攻撃的で、やられる前にやるタイプ。
5・・・キレキャラ(>>508さんの榊や美浜みたいな感じ)
榊、大阪、水原、滝野、美浜、神楽の六人からおねがいします。
書き込みの例
540 :名無しさんちゃうねん :2005/02/03(木) 22:44 ID:???
滝野智 5 暴走女子高生の真髄を見せて欲しい。
- 540 :名無しさんちゃうねん :2005/02/04(金) 01:09 ID:???
- 春日歩 1 怯える大阪希望
- 541 :名無しさんちゃうねん :2005/02/04(金) 16:52 ID:???
- 全員 1
- 542 :名無しさんちゃうねん :2005/02/04(金) 17:05 ID:???
- 全員 2
- 543 :名無しさんちゃうねん :2005/02/04(金) 20:30 ID:???
- 榊3 榊さん
- 544 :名無しさんちゃうねん :2005/02/05(土) 12:43 ID:FlGGYRCI
- age
- 545 :名無しさんちゃうねん :2005/02/05(土) 13:01 ID:???
- 大阪は漂流(ryのように・・・
- 546 :名無しさんちゃうねん :2005/02/05(土) 21:49 ID:???
- なんでもいいから見せてー!
- 547 :1945 ◆9BzY4nJx3c :2005/02/10(木) 16:25 ID:???
- 長くなってきたのでSS発表板に書こうと思います。
・・・もう少ししてから。
- 548 :1945 ◆0j2TPwLzfQ :2005/02/14(月) 21:32 ID:???
- なんだか収拾がつかなくなってしまいました。
もうすでに、人に見せられる物ではなくなったので、
申し訳ありませんがここで断念することにします。
期待してくださった方、本当に申し訳ありませんでした。
- 549 :名無しさんちゃうねん :2005/02/17(木) 21:53 ID:???
- 残念!・・個人的にはメイン全員悲惨に殺されるのを期待してたんだが
所詮普通の女性レベルだから、都合よく生き残るとは思えないし
こういうのってメインキャラは性能的に優遇されるからなあ(某OOOOとかw)
そういう主役クラス修正のないリアルな殺されっぷりが見たかった
- 550 :ゲネラルプローベ ◆9BzY4nJx3c :2005/04/18(月) 23:10 ID:???
- 十月二十日放課後 第二会議室 二年の担任会議
「二の三だけの特別学習合宿、ですか?」
二年二組の担任、黒沢みなもは、校長の言葉に首を傾げた。
「あのクラスの平均点は、そんなに低くなかったかと思いますが」
「着眼点はそこではないのですよ、黒沢先生」
二年五組の担任で学年主任の石川が穏やかな口調で言った。
「確かに平均点は低くない。ですがあのクラスは学年トップの生徒と学年最下位の生徒がおり、
その差が非常に広がっているんです。これはなんとかしないといけません。
………聞いているのですか、谷崎先生」
そう言われて、三組の担任である谷崎ゆかりは、大きくあくびをしながら、
「はあい、聞いてますよ。うん、いいんじゃないですかぁ?」
「何故三組だけなのですか?私は反対ですな」
そう聞いたのは一組の担任、後藤だ。校長がそれに答える。
「それ以外のクラスに学習合宿が必要とは思わなかったからです。それにしても反対とは、なぜですかな?」
「クラスの成績を均一にしたいのならば、成績の悪い生徒に補習をあてるなり、
いくらでもやりようがあるはずです。なぜ、合宿などやるのです?」
「その方が、より効果があると考えているんですよ。ねえ、石川先生?」
「そのとおりですね」
石川はくすっと笑って校長に応えると、持っていたファイルからプリントを出して配り始めた。
「みなさん。とりあえず質問はあとにしてこのプリントを見て下さい。
合宿は、少し遠い場所で行おうと思っています」
なんだかおかしい。そう黒沢が違和感を感じるほど、校長と石川は強引だった。
まるで、その合宿がもう決定していて変えられないことのように。
「………こうきたか」
誰かのつぶやく声が聞こえた。
「え、どうしました、木村先生?」
四組の担任木村は、プリントをじっと見据えたまま、
「いえ、何でもありません」
そう言って黙り込んでしまった。
黒沢は少し気になって隣に座る木村のプリントを覗くと、手書きの小さな字で、
『今回は絵は無しだよ、木村君。by石川』
と書いてあるのが見えた。
- 551 :ゲネラルプローベ ◆9BzY4nJx3c :2005/04/18(月) 23:11 ID:???
- 十一月三十日 午前七時十分 通学路
呂比千尋はゆっくりと歩いていた。
歩きながら考えていることは、もちろん昨日のことだけだ。
左右の石壁の先の、実をやっと落として葉を散らし始めた木々たちが、時々風に揺られて気持ちよさそうに笑った。
つられたように千尋も微笑む。その様子がおかしかったのか小鳥が声をあげた。
秋の空気は軽すぎて、千尋は浮かんでしまいそうだった。
そんな風に思えるなんて、私はいつから詩人になったのかしら。
もちろんそれは昨日のあれのせいだ。
昨日の………。
「おーい。おはよーう」
同じクラスで同じ天文部の梨丘かおりが、回想にふけりかけた千尋を現実に引き戻すように、千尋の肩を叩いた。
「あ、かおりん。おはよ」
「どしたの?なんだかうれしそうじゃない」
かおりはいきなりそう聞いてきた。顔にでていたらしい。
「うん、判る?」
「そりゃわかるわよ、だって千尋ったらにやにやして歩いてたんだもの。
私が肩叩くまで気づかないしさ。………ねえねえ、何があったの?」
「うん、昨日の夜ね………」
そう言っただけで頬が緩んだ。
「あのね、観測の帰りにね………」
そこまで言うと、今度は口からため息がもれる。
「ああ、ああ。もう最高だわ」
勝手に昨日の晩の記憶が頭の中で再生されて、千尋は両手を胸の前で組んだ。
「ちょ、ちょっと。自分の世界に入ってないで、教えてよ」
「ええ、うん。あのね」
千尋は深呼吸した。頬が、だらしないほど緩んでいるのが自分でも判る。
空から降りてきた釣り針が引っかかったに違いない。
千尋は両手でほっぺたを押さえつけた。熱い。
「………かおりん、耳貸して」
「もー。もったいぶるんだから」
そう言って笑うかおりに、千尋はキスしてしまいそうなほど近づいて、そっと囁いた。
- 552 :ゲネラルプローベ ◆9BzY4nJx3c :2005/04/18(月) 23:13 ID:???
- 同日 午後四時 通学路
「と、いう訳で、私はめでたく期末テストを乗り切るのでした。おしまい」
滝野智は、得意げに話を締めると、勝ち誇ったような目で一緒に帰っている連中を見つめた。
「どう?この完璧な計画。こんなに簡単なこと思いつくなんて、やっぱ私ってー」
「あのなあ。そんなこと考えてる暇があるなら勉強しろよ」
水原暦は呆れて智から目を睨んだ。
「まったく、なにが大事な話があるー、だ。こんなことならさっさと帰っときゃ良かったよ」
「あー、でもそれ、一理あると思うで」
春日歩はいたく感心したように言った。
「確かに死んでまうんやったら、勉強なんかしても意味ないもんなあ。ともちゃん、なかなかええ考えや」
「でも、そんな確率はほとんどないですよ」
小柄な美浜ちよが、苦笑いしながら話に入った。
「確かにともちゃんの言うとおり、今年の九月からBR法が変更されて、高校生も対象になったんですけど、
実際に選らばれる確率なんて、交通事故に会う確率よりもずっと低いんです。
そんなことが気になって勉強できない、なんて言い出したら、あっという間に非国民扱いですよ。
ちょっと古い言い方ですけど」
「そのとおり。大体ともがそんなこと言っても、サボりたい口実にしか聞こえないな」
暦は智を横目でちらりと見てから、ちよに向かって言った。
「九月といえばさ、いろいろ法律ができたよね。あれっていまいち判りにくいんだけど、どういうことなの?」
「ええ、たしか海外旅行の規制に関する法律と、治安維持に関する法律ですよね。あれには反対意見も多かったみたいです。
でも海外旅行の規制って、今まで合法的にアメリカや中国に行けたことが異常だと考えればあって然るべきものだと思いますよ」
全然わかりませーん、といわんばかりに、智は両手を上げてみせた。
歩は判っているのかいないのか、にこにこしながらちよの話を聞いている。
「もう一つの治安維持法だって、前の戦争中に布かれたものと同じですし、今のインターネットなどにはびこる憂国思想が
この国に悪い影響を及ぼすと判断されたからこそ施行されたんです。なにごとも大日本帝国のため、ですよ」
「お国のため、か」
黙々と歩いていた榊季夏紗がそう呟いたのを、暦は聞いた。この大女は何を言いだすんだろう。
なんとも言えない不快感が体に忍び寄ってくるような気がした。
………。
沈黙が流れる。
「そ、それにしても冬休みの合宿楽しみですねえ!」
ちよが慌てたようにそういったが、誰も返事をしなかった。
- 553 :ゲネラルプローベ ◆9BzY4nJx3c :2005/04/18(月) 23:20 ID:???
- この約一ヶ月後、彼女らはBR法により殺しあうこととなる。
誰が生き残るのかは、たいした問題ではない。誰も生き残らないかもしれない。
問題はただ一つ。誰が金のエンジェルか?
詳しいことは、後にある木村先生の説明を待ってほしい。
二年三組 名簿(カッコ内は所属部、または所属同好会)
男子 女子
1 大泉 雄貴 (コンピュータ)1 内井 純子 (文芸)
2 大川 光人 (コンピュータ)2 神楽 倶香 (水泳)
3 大田 慎一 (コンピュータ)3 梶尾 琴乃 (吹奏楽)
4 大山 将明 (天文) 4 春日 歩
5 西湖 優久 (テニス) 5 黒野 菊江 (吹奏楽)
6 武野 宗俊 6 榊 季夏紗
7 中本 高次 (漫画研究) 7 坂元 美紀(テニス)
8 長谷川 貴行(天文) 8 滝野 智
9 原 光治 (漫画研究) 9 洞林 多美子(水泳)
10 東野 善次 10 野村 革子 (卓球)
11 森野 豊 (茶道) 11 藤田 きく子(吹奏楽)
12 森和 良介 12 三田 満里子(卓球)
13 後藤 健太 (天文) 13 水原 暦
14 美浜 ちよ
15 森村 広子 (吹奏楽)
16 矢鳴 たみ子(テニス)
17 梨丘 かおり(天文)
18 呂比 千尋(天文)
- 554 :1945 ◆9BzY4nJx3c :2005/04/18(月) 23:23 ID:???
- まとまったので、投下します。
一応物語はできていますが、もし反応があれば、それによって色々変更していこうと思います。
自己満足で書いてるものなので、投下が不規則になるとは思いますが、
読んでいただければ嬉しいです。
- 555 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/04/26(火) 19:06 ID:???
- >>554
∧ ∧ ┌─────────
( ´ー`) < 乙ダーヨ 期待シテルーヨ
\ < └───/|────
\.\______//
\ /
∪∪ ̄∪∪
(AAって禁止じゃないよね?)
- 556 :名無しさんちゃうねん :2005/07/11(月) 20:51 ID:???
- あげ
- 557 :名無しさんちゃうねん :2005/11/06(日) 21:53 ID:EKU5U5wg
- >>554
続きは、まだ時間がかかりそうですか?
- 558 :(・∀・)イイ! ◆EEE802ToMo :2007/02/17(土) 21:28 ID:???
- 修復てst
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