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スレッドが大きすぎます。残念ながらこれ以上は書き込めません。

【あずまんが】SS書きの控え室5

1 :◆.B5vIcoKkk :2004/07/29(木) 06:25 ID:???
 ストーリーの構成、キャラの造り方、言葉の使い方など、あずまんがのSSや
小ネタを作成する上で困ったことや、悩んでいること、工夫していること等を話し合う
スレです。
 また〜り楽しんでいただければ幸いです。
 ここで新作をUPすることも可です。

★主な注意事項
1. sage進行でお願いします。
2. 対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
3. 他人の作品を善意であっても批評しないでください。(自分の悪いところを
教えてくださいというのは可です。)
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します。

608 :りきまる :2005/01/30(日) 01:06 ID:???
新任教師

初めてこの高校にきたのは高校一年生の時だった。
父のコネで転入してきて不安でいっぱいだった私を、クラスメイトや
先生たちが暖かくむかえてくれたおかげで、幸せな高校生活を送ることができた。
今もあんなにいい青春を経験できたことは素晴らしいと思っている。
私だけがこんなにいい思いをしてもいいのだろうか、
もっと多くのひとに素晴らしい青春を与える手伝いをしたい。
大学に入ると、そんな考えが私の中に生まれた。
今思えばおこがましい考えだが、当時は真剣だった。
大学では手芸のサークルに入っていた。文化系だが、上下関係に厳しくて私の性に合った。


そのサークルの忘年会で、私は驚くべき人物に出会った。
私の高校三年間の担任であり、今は私が「先輩」と呼んでいる女性だ。
先輩も大学時代この手芸サークルに所属していて、OGとして忘年会に来ていたのだそうだ。
私はそこで自分の考えを先輩に告げた。
現職の教師である先輩になにか言ってほしかったからだろう。
先輩は私の話を聞いてくれた後、こういった。
「じゃあ、先生になれば?」
これは優柔不断な私が生涯の仕事を決めることへの決定打になった。
余談だがそれまで名前に「ちゃん」づけで呼んでいたのを、
「先輩」と呼ぶようになったのもこの時からだった。
もちろんサークル外ではそう呼ばなくてもよかったのだが、
すっかり馴染んでしまったのである。


大学に在学中、先輩はよく私の下宿に来てくれて、一緒にお酒を飲んだ。
私が高校生の時、今も現役だが、の体育の先生を連れてきてくれて、
酔っ払いながら教育者のありかたを議論したりもした。
この、私が高校時代からにゃも先生とよんでいる体育の先生と先輩は、
私と同じ、つまり現在の職場の高校出身だということもここで聞いた。
「じゃあ先輩の学歴って、私とほとんど同じですねえ」
私がそういうと、先輩はくすくす笑いながら同意してくれた。
ここで私は随分いろいろなことを学んだ。
よく覚えているのは、先輩が教えてくれた教師心得三箇条だろうか。

609 :りきまる :2005/01/30(日) 01:09 ID:???
大学卒業後、私はすぐに出身の高校に就職した。
これまた父のコネなのだが、あえて書かないことにする。
初めて教員になってまず思ったのは、高校生は大人だということだった。
私が十六のときはもっと子供だった。はっきり書くと、もっと純粋だった。
今の子供は、こう書くこと自体教師として失格なのだろうが、暗く、心を閉ざした
内向的な大人だった。
『心得その一、生徒に過剰な期待をよせない』


私は努力した。もともとおとなしい性格だったが、少し無理をして明るくふるまった。
それでも生徒たちはついてきてくれない。ついてきてくれない。
『心得その二、教師を演じてはならない』
そんなことできない。そう思っていたのを助けてくれたのは、実は父だった。
父は私の授業にいきなり乱入してきたのだ。
「せ、先生。アレって………」
生徒の一人に言われてドアを見たときの、背筋が固まったような感じは忘れられない。
「お、お父さん………」
私がそう言うと、一瞬静寂に包まれていたクラスがざわつき始めた。
「聞いた?」「うそ、まじ?」「あれが、か」「やっぱりねえ………」
などという声が聞こえ始め、私は頭が真っ白になった。
「出てって、お願い」
と、私は父に小声で言ったのに、父はつかつかと教壇にあがり、
「みんな好きなものはあるかー?私は女子高生がすきだー!!」
と叫んでさっさと出て行ってしまった。
クラスには再び静寂がもどったが、生徒たちは今まで見たこともないような
さわやかな顔をしていた。
そして、私もまた、自分の臆病さをつきつけられたように思った。
そう、臆病になってはいけないのだ。自分のままぶつかっていけばいいのだ。
『心得その二、教師を演じてはならない』

610 :りきまる :2005/01/30(日) 01:15 ID:???
結局子供はいつの時代も同じなのかもしれない、と思い始めたのは私が教師になってから
一年が過ぎたころだった。
二年目のクラスの最初の授業で、生徒の一人がこんなことを言い出したのだ。
「せんせーい、私たち、先生にニックネームをつけようと思いまーす」
「あら、なんで?」
私が聞くと、もう一人が答える。
「先生のお父さんの教頭先生と被るからです。なにか希望はありますか?」
「えっ、待って、ちょっと待ってね」
うーん、と私が考えていると、また別の生徒が言った。
「あっそうだ、聞きたいことあるんだけどいいですか?」
「いいわよ、なあに?」
「なんで木村先生は春日先生のこと先輩って呼ぶんですか?」


「ええっとなあ、きょおしのこころえそのサン!
 きょうしっちゅーんはなあ、そんなでっかいもんちゃうねん。
 そ、そのう、ひかえめにならななあ」
「そうね、私もそう思う。あなたが本当に先生になりたいんなら、謙虚な心を忘れないで
 ほしいわね」
「ゆかりちゃんのこどももうまれるしなあ」
「そ、それは関係ないんじゃないのかしら………」
「前言ってた先輩の高校時代の担任の先生ですか?
ご結婚なさってるんですよね。………先輩?」
「大阪さん、だいじょうぶ?飲みすぎじゃない?」
「………」
「先輩、すっかりできあがっちゃいましたね」
「てことは今日も私がこいつを運ぶわけね」
「にゃも先生………大丈夫ですか?」
「わっ」
「お、大阪さん、なによ」
「あんな、木村ちゃん、その、あだ名つけられるかのしれへんけど、
 きむりんってあだ名だけはやめときや」
「え、は、はあ」
「ちょっと、大阪さん!!起きてるんなら立ちなさい、帰るわよ」
「………」


「先生、せんせい!」
私は生徒に呼ばれて我に返った。
「先生、質問に答えてください」
「あ、ああ。うん、えっとね、きむりんってあだ名はやめてほしいわねえ」
「春日先生を先輩って呼ぶのはなんでなんですか?」
「ああ、それはね、」
私はふと上をむいた。もちろん一メートルほど上にある天井しか見えない。
そして、顔を下げ、ほほえんで見せた。
「まあ、内緒にしておくわ」


おしまい

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