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あずまんがSS書きの控え室8

1 :名無しさんちゃうねん :2005/09/13(火) 00:21 ID:???
 ストーリーの構成、キャラの造り方、言葉の使い方など、あずまんがのSSや
小ネタを作成する上で困ったことや、悩んでいること、工夫していること等を話し合う
スレです。
 また〜り楽しんでいただければ幸いです。
 ここで新作をUPすることも可です。

★主な注意事項
1. sage進行でお願いします。
2. 対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
3. 他人の作品を善意であっても批評しないでください。(自分の悪いところを
教えてくださいというのは可です。)
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します。

21 :レッツゴーちよちゃん 1 :2005/11/11(金) 00:54 ID:???
 火曜日の朝、ちよは交差点の前に立っていた。
 目の前の信号機は赤になったばかり。青になるにはもう少しかかるだろう。

「今日こそ横断歩道の白だけ踏んで渡れたらいいことがあります」
 赤く灯る歩行者信号機を見つめながら、ちよは心の中で呟いた。
 根拠なんてないけど、信じてみたい。昨日果たせなかった野望を今日こそ果たすべく、
誓いを新たにした。
 だが、信号が変わる前に確かめておくことがある。智がいるかどうかだ。昨日は横断し
ている途中で智が前に立ち塞がったために、白線だけで渡ることができなかった。もし、
今日も近くにいるようであれば、可能性は一気に低くなる。
 横断歩道の向こう側からは現れそうな気配はない。念のため左や右も確認したが、姿は
見えない。どうやら、今日は邪魔されることはなさそうだ。

「今日こそはうまく行きそうな気がします」
 かすかな安心感を得るのと同時に、信号が青に変わった。それを合図にちよは勢いよく、
右足を最初の白線へと踏み込ませた。
「よっ、よっ」
 思った以上に幅のある白線を一つ、また一つと渡り、半分以上を過ぎようとしたときだ
った。後ろから軽やかなステップで足音が近付いてきているのが聞こえてきた。
 
(まだ信号は変わったばかりだから、そんなに慌てなくても間に合うのに、せっかち人な
のかな)
 不意にそんなことを思っているうちに、足音がどんどん近付いてきた。スタスタと地面
を蹴る音がハッキリ聞こえてくる。
(あれ? 私の横を通り抜けるんじゃなくて、何か私に向かってきているような……)
 そう思ったときには、ちよの身体はバランスを崩していた。足音の主がちよの背中を思
い切り叩いたのだ。

「おはよー! ちよちゃん」
「あいたたた……。おはようございます」
 足音の正体は智……ではなく、神楽だった。だが、そんなことよりももっと重大なこと
にちよは気づいた。

22 :レッツゴーちよちゃん 2 :2005/11/11(金) 00:54 ID:???
「あっ……」
 神楽に背中を叩かれてバランスを崩したときに、踏みとどまろうとした右足が白線を越
えて、灰色のアスファルトの上にあったのだ。
「どうしたんだ? 何か元気がないみたいだけど」
「いえ、何でもないです……」
 しかし、言葉に力はなかった。こうして、ちよは今日も白線だけで横断歩道を渡ること
ができなかった。

 今日の運勢:元気のいい人に妨害される恐れがあります。特に体育会系の人には気をつ
けましょう。


 水曜日の朝、今日もちよは交差点の前に立っていた。
 反対側の歩行者信号機が点滅している。もうすぐ、目の前の信号は青になりそうだ。
(今日こそは、横断歩道の白だけ踏んで渡れたらいいことがあります。だから、今日こそ
は白だけを踏んで渡ります)
 心の中で強く決意すると、智の姿を確かめるために、信号の向こう側を確認し、それか
ら首を左右に振って辺りを確認した。どうやら姿は見当たらない。それと、神楽に関して
は今日は万全だ。なぜなら、心強い味方が隣にいるからだ。

「ちよちゃん、どうしたの……?」
 ちよの右隣で、すらっと背の高い女性が不思議そうな顔を浮かべて尋ねてきた。そうだ、
今日は榊と一緒なのだ。
「あっ、信号を渡る前に安全確認をしようと思いまして」
 榊になら本当のことを話してもいいとも思ったが、こういう願いは他の人に話すと叶わ
なくなるらしいので、口からでまかせを言うことにした。
(でも、ちょっとは安全確認をしているから、嘘じゃないですね。車じゃなくて智ちゃん
や神楽さんに対する安全確認ですけど)
「へぇ、そうなんだ……」
 感心するような口調で榊が呟いた。

23 :レッツゴーちよちゃん 3 :2005/11/11(金) 00:54 ID:???
(榊さんと交差点の手前で一緒になったのはラッキーです。これなら、神楽さんが現れた
としても、私よりも榊さんの方へ駆け寄るに違いないはずですから)
 今日こそはうまく行きそうな気がする、そう思うと、ちょっと嬉しくなった。だが、油
断は禁物だ。再度、智と神楽の姿を確認するために首を左右に振った。今度は後方も確認
した。どうやら、二人が現れる気配はなさそうだ。

「それじゃあ、私も安全確認しようかな……」
 榊が左右を確認している間に信号が青に変わった。
「おや……?」
 榊の呟きをよそに、ちよは勢いよく最初の白線を踏みしめた。次の白線も、その次の白
線も順調に踏み続け、半分ぐらいのところまでたどり着いた。
「私も榊さんみたいに背が高くなりたいんですよ、どうやったら背が伸びますか?一応、
毎日牛乳を飲んではいるんですよ」
 ちょっと余裕が出てきたことで、榊に質問をしたが、返事がない。
「ねぇ、榊さん……って、あれぇ!?」
 振り返ると、そこに榊の姿はない。

「榊さん、ど、どこ行っちゃったんですかぁ?」
 見失った榊の姿を探そうと、キョロキョロと辺りを見回す。すると、交差点から少し離
れた植え込みのところで、榊が猫をじっと見つめているのが見える。
「榊さん、こんな所にいたんですか! あっ……」
 ちよはこのとき、自分が大きなミスを犯したことに気が付いた。榊の姿を追い求めてい
る間に、左足が白線をはみ出し、灰色のアスファルトの上にあったのだ。
(うぅ、今日もダメでした……)
 今日も白線だけで横断歩道を渡ることができずじまいに終わる、ちよであった。

 今日の運勢:話の途中で突然いなくなってしまう友人に気をつけましょう。

24 :レッツゴーちよちゃん 4 :2005/11/11(金) 00:55 ID:???
 木曜日の朝、ちよは交差点の手前にある歩道を歩いていた。
(今日は日直の仕事があって、いつもよりも早めに出なくちゃいけないけど、その分、他
の人に会う心配はないかな。よし、今日こそは、絶対に横断歩道の白だけ踏んで渡れたら
いいことがあります)
 心の中で強く誓うと、問題の交差点にさしかかった。今日は信号がすでに青になってい
たので、辺りを確認する余裕がない。だが、この時間では知っている人に出会う心配はな
さそうだ。
 勢いよく、最初の一歩を踏み出した、そのときだった。突然、背後からクラクションの
けたたましい音が鳴り響いた。

「うわっ」
 その音があまりにも突然で、あまりにも大きかったため、思わずよろめきそうになった。
しかし、最初の一歩は辛うじて白線に踏みとどまっている。 
「あー、ビックリした。でも、まだ大丈夫ですね」
 気を取り直し、ちよは再び歩き出そうとした。

「ちょっと、クラクションを鳴らすことないじゃない!」
「そんなこと言ったって、一発で気付いてもらうにはこうするしかないじゃん!」
 後ろから女性の叫び声が聞こえてきた。どこかで聞いたことがある声だ。
(もしかして……)
 聞き覚えのある声の主を確認すべく、後ろを振り返ると、クラクションを鳴らした車の
助手席の窓がゆっくりと開いた。窓から顔を出した主は思った通りの人物だった。

「ちよちゃーん、おはよう!」
 一人の女性が窓から身を乗り出して手を振っている。しかも、大声で呼びかけているた
め、ちよはちょっと恥ずかしさを感じた。
「あっ、ゆかり先生、おはようございます……」
「ちょっとゆかり、聞いてるの……あっ、おはよう、ちよちゃん」
 更に運転席から、ゆかり先生をたしなめている黒沢先生の姿も見えた。黒沢先生が軽く
会釈したので、ちよも「おはようございます」と挨拶をした。
 その間にゆかり先生が車から降りてきたので、一旦歩道に戻ることにした。

25 :レッツゴーちよちゃん 5 :2005/11/11(金) 00:55 ID:???
「どうしたのよ、こんな早くに?」
「いえ、今日は日直の仕事で早くに出なくちゃいけないので」
「今日の日直はちよちゃんだったか。あっ、そうだ。一緒に乗ってかない? せっかく会
ったのも何かの縁だし」
「ちょっと、人の車に乗っておいて、何を勝手に決めてるのよ?」
 黒沢先生が二人のそばに車を横付けし、運転席から降りて、ゆかり先生を睨みつけた。

「行き先が一緒なんだから、ちよちゃんを乗せるぐらい問題ないじゃん。それに、夏休み
に別荘でお世話になったでしょ? そのお礼もしなくちゃ」
「まぁ、そりゃそうだけど……」
「だったら、堅いことは抜き。これで決まりね!」
「ったく、しょうがないわね」
「さっ、ちよちゃん、後ろに乗って」
「えっ、でも……」
 ゆかり先生の申し出は嬉しいが、今はやらなきゃいけないことがある。まだ横断歩道を
渡っている途中なのだ。せめてそれだけはクリアしておきたい。

「あの……」
「何を遠慮しているのよ。さっ、乗った乗った」
 しかし、事情を説明しようとする暇さえ与えられないうちに、ゆかり先生がちよの手を
引っ張り、車の後部座席に乗せた。傍から見れば誘拐と間違われてもおかしくないほどの
強引さだ。
 
「ほい、出発進行!」
「何であんたが仕切るのよ!」
 二人のやりとりをよそに、ちよは窓から一歩しか踏み出すことのできなかった交差点を
じっと見つめていた。
(あぁ、今日もダメでした……。一体いつになったら渡れるんだろう……?)
 次第に視界から遠ざかる交差点を見つめながら、人知れずため息をつく、ちよであった。

 今日の運勢:担任の気まぐれに注意しましょう

26 :レッツゴーちよちゃん 6 :2005/11/11(金) 00:55 ID:???
 金曜日、ちよは今日も交差点の前に立ち、目の前の赤いランプが照らされている歩行者
信号機をじっと見つめていた。
(今日こそは、本当に今日こそは、白だけ渡れたらいいことがあります。だから、白だけ
で渡ることができますように)
 祈るような気持ちで信号機を見つめる。本当に両手を組んで神に祈りを捧げたい気分だ。

「あれ……?」
 不意に視線が信号機からそれ、瞳が空を映し出した。青く澄み渡った空と、その間を漂
う白い雲が見える。
「秋は空がきれいですよねー」
「ほんまやなー」
 途中で一緒になった大阪もちよと同じように空を見上げて呟いた。
 照り付ける眩しさはないけど、太陽が穏やかな日差しで包み込んでくれている。それに、
どこへ行くのか分からず、あてもなくさまっている白い雲、全てを包み込むように広がっ
ている淡いブルーの空、これらのコントラストが一枚のきれいな絵を描いているようにも
見える。

(あぁ、本当にきれいな空です。こんな空を見られただけでも、今日はいいことがあった
のかもしれないな)
 大阪との間に言葉はなく、横断歩道の前でただ青空をぼんやりと見つめているだけだ。
しかし、それだけで不思議と幸せな気分になってくる。横断歩道を白だけで渡れたらいい
ことがあるなんて思いさえどこかへ消え失せそうだ。
 
 こうして、信号が青になってもちよと大阪はずっと青空を見上げたままだった。
「おは……?」
 交差点の反対側で智が呼びかけても、ちよは全く気づくことなく空を見上げたままだっ
た。当然、横断歩道の白のことなどすっかり脳裏から消えている。
 そして、今日も白線だけで渡ることはできなかったが、他にいいことがあったので気に
はしていないちよであった。

 今日の運勢:澄んだ景色の見惚れすぎに気をつけましょう。

END

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