世の中のすべての萌えるを。

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スレッドが大きすぎます。残念ながらこれ以上は書き込めません。

【あずまんが】SS書きの控え室2

1 :紅茶菜月 ◆cwYYpqtk :2003/05/14(水) 23:25 ID:???
ストーリーの構成、キャラの造り方、言葉の使い方など、あずまんがのSSや
小ネタを作成する上で困ったことや、悩んでいること、工夫していること等を話し合う
スレです。また〜り楽しんでいただければ幸いです。
ここで新作をUPすることも可です。

★主な注意事項
1. sage進行でお願いします。
2. 対象範囲は「あずまんが大王」及び、新連載予定の「よつばと」とします。
3. 他人の作品を善意であっても批評しないでください。(自分の悪いところを
教えてくださいというのは可です。)
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します。

★前スレ【あずまんが】SS書きの控え室
http://www.patipati.com/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=1041566182

2 :紅茶菜月 ◆cwYYpqtk :2003/05/14(水) 23:25 ID:???
★その他の注意事項
1. 上記の2.において他作品の批評は不可としましたが、このスレ内で新作をUP
した場合にのみ、常識的な範囲での作品単体に対する批評、感想はOKです。
但し、その場合でも、罵倒、中傷は絶対にしないでください。
2. 他のスレ、板、およびHPから、本スレに転載された作品についても批評しないで
ください。
3. 新作をUPする場合についてですが、エロ、非エロのどちらを書かれても構いません。
但し、板の性質上、過激なものは避けてください。
(ソフトなえっち程度ならOKです。)
4. AAについては文章スレッドであるので使用しないでください。

3 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/15(木) 01:16 ID:???
>>1新スレ設立お疲れ様です。
新作は近日中にUP予定です。

4 :ケンドロス :2003/05/15(木) 01:44 ID:???
>>1
新スレおめでとうございます。
近いうちにジャスティス9話をあげる予定です。

5 :名も(略 :2003/05/15(木) 11:10 ID:wvIRjoTA
>>1 新スレ乙です〜。

6 :かおりん主役SS「名称未設定」1/3 ◆yv8380ig :2003/05/15(木) 13:11 ID:wvIRjoTA
http://www.patipati.com/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=1041566182&st=420&to=423&nofirst=true

からの続き。

ACT4:「なんで…たった…これだけの事なのに迷っていたんだろう…。」

 真新しいスウェットに袖を通したかおりんは、階段を下りダイニングへ向かった。
思い出してみれば、ここ最近1日1食か2食ぐらいしか食べてないので、
エレルギー不足で活力が沸いてこなかった。状況を打破すべく、
何か食べ物を求めてやってきたダイニングは、既に修羅場状態だった朝の出勤準備を終え、
テレビから流れるワイドショーの音声が、お母さんの洗いものをする音とともに、
ゆっくりとした時の流れを演出していた。
おもむろに冷蔵庫を開けて、とりあえずは買い置きの、
冷やしてあったミネラルウォーターのボトルを取り出すかおりん。
潤いが、春先の乾燥した空気で荒れた喉を癒す。

 「朝,どうするの?」

 洗い物をしていたかおりんママがその手を休めず、ぶっきらぼうに訊ねてきた。

 「あ,お願い…。」

 家族と会話するのは何時以来だろう…。少なくともすぐには思い出せない。
そんな考えが,かおりんに自分の精神が少しづつ回復しているということを,
証明していた。
 キツネ色に焼きあがったベーコンと固めの黄身の目玉焼き,それにトースト。
急な朝ごはんだったので,比較的簡単なメニュー。
考えてみれば,朝時間が無いときはいつもこのメニューだった。
トーストに一番のお気に入りであるピーナッツバターを塗っていると,
かおりんママが一通の封筒を持ってきた。

 「これ,あなた宛ね。滝野さんから見たいだけど,料金着払いだったのよ。何か頼んだの?」

 「着払い」…そのキーワードにかおりんはハっとした。
かおりんは卒業式の日に,智に榊さんとのツーショットを撮ってもらった。
その時,ちゃんと送ってくれるようにキツく念を入れておいた。そのとき「着払い可!」とムキになって大声で,
榊さんの前で叫んでしまったのを思い出すと,今でも顔が赤くなる。
でも,そのおかげか忘れんぼうの智はちゃんと送ってくれた。
智に感謝するのは何時以来だろう…そんな気持ちで食事を終わらせ,
かおりんは封筒を持って急いで自分の部屋に戻った。

7 :かおりん主役SS「名称未設定」2/3 ◆yv8380ig :2003/05/15(木) 13:11 ID:wvIRjoTA
 勉強机の上に転がっていた赤色のハサミで,ゆっくりと,丁寧に封筒を開封する。
封筒の中に入れられてた写真…やっぱり,榊さんとのツーショット写真だった。
だけど,入っている写真の数は5枚…。次の写真はみんなの集合写真…。
卒業式の日にみんなでちよちゃん家で撮った集合写真なのだろう…。
どれも忘れられない大切な宝物…。そして3枚目は…
かおりんを一番気に入ってくれていた木村先生の写真だ。
今までの思い出深い写真から一変して,かおりんは拍子抜けした。
流石,智らしいといえば智らしい。4枚目も,5枚目も木村先生の写真だ。
だけど,何かおかしい。木村先生のネクタイが,
卒業式につけていたネクタイとは,別の柄だ…。

「なんで…木村のネクタイの色が違うんだろう…。
それに…さっきの集合写真,みんな卒業証書持っているはずなのに,
誰も持っていなかった…。なんでだろ…?」

 かおりんの脳裏に浮かんだ疑問。しかし今のかおりんには,
はっきり言ってどうでもいいことである。榊さんとのツーショットと,
みんなの集合写真を入れるフォトフレームを用意するため,
写真を封筒にしまった。

 フォトフレームと,そして木村先生の写真を入れるアルバムを用意し,
かおりんは部屋に戻ってきた。封筒から写真を取り出すと,裏向きになっていた。
写真を取り出すと,裏に何かメッセージが書いてある。
それを見た瞬間,全ての疑問を解決するラインが繋がり,一つの答えにたどり着く。
答えを知り,かおりんの涙腺は緩み,滝のような涙が一挙に溢れ出した。

 集合写真の裏には,大阪と智から,そして3枚目の木村先生からの,
直筆のメッセージが丁寧に描きこまれていた。
智は,私の不合格を知ってから,わざわざ学校まで行って,
木村先生の写真を撮ったのだろう。そしてそのあと,出来上がった写真を持って,
木村先生にメッセージを書いてもらって,郵送した…。

 溢れ出す涙をぬぐいながら,かおりんはメッセージの文面に目を通す。

8 :かおりん主役SS「名称未設定」2/3 ◆yv8380ig :2003/05/15(木) 13:12 ID:wvIRjoTA
「かおりん…受験,残念だったね…。でも大丈夫だよ,
もう一年,かおりんなら,きっとがんばれるよ!
私は大阪と一緒に志望校に受かったけど,
合格できたのは自分ひとりの力なんかじゃない,
ちよちゃんに,榊ちゃんに,よみに,
それに先生の協力があったからだと思う。
私も,かおりんの来年の合格に,
みんなと一緒に協力したい,だから,がんばれ! byおおさか&プリチーな智ちゃん」

「かおりんさん,受験勉強お疲れ様でした。
今回は結果は残念ながら出ませんでしたけど,
これからの一年間,もとよりこれからの人生,
悔いの無いように,がんばってください。
私は少なくとも来年1年間は,
あなたの母校で教鞭をふるうことになっていますので,
何か,力になれることがあれば,いつでも母校に帰ってきてください。
たとえあなたが卒業しても,
私の教え子であることには変わりませんから。 キムリンより」

 智らしい,おどけているけど元気が出る文面と書き方,
大阪らしい,精一杯のやさしさの詰った文面と言葉の選び方,
そして,今まで避けていたけど,本当に心配していてくれた木村先生…。

 なんで今まで,気が付かなかったのだろうか。
もう,受験に落ちたことは既に過去のことなのに,
しかも,みんなの期待を裏切ってしまった過ちでさえ,
もう過去の事なのに。そして,私が再び笑顔を取り戻すことを,
みんなが望んでいることを…。その思いはかおりんの胸いっぱいに広がった。

 どれだけ涙が出たのだろうか。かおりんに今まで記憶に無いほど,
それこそ豪雨の涙が出てきた。やがて豪雨の後に虹が出て晴れ渡るように,
かおりんの心からは迷いが消えゆく。そして,迷いは消えることは,
一つの「決意」を意味する。もう一年,榊さんを追うことを。

【ACT5へつづく…】

9 :名無しさんちゃうねん :2003/05/15(木) 13:33 ID:wvIRjoTA
スマソ,ACTの番号間違えてる…。(滝汗

ACT4:「3年間…か。長かったのかな…。」

 現実に引き戻されたかおりんは自らの目で、視界を確認した。
薄い闇と、窓から射す柔らかな陽光の、淡いコントラストで色づけられたのは自分の部屋の風景、
静寂の中で、静かに、無機質に、規則的に歯車の音を刻む時計。
それはかおりんに失った時間間隔を取り戻させた。

 かすかに残る,先ほど見た夢の記憶。その記憶を整理し,理解できる形で自分の中でまとめる。
何度も交錯した過去への記憶は自分の不幸に対する陶酔感と郷愁感。
そして「何か不幸を暗示する」映像は,自分の近い将来。
過去の幻想に縛られる自分を暗示するその映像は,
「恐怖心」と言うのであろうか,この先少なくとも一年間に対する不安でもある。

 今のかおりんには,3つの選択肢がある。
「次の一年間,浪人して榊さんの後を追う」こと,もしくは,
「榊さんを追うことを諦め,自分の実力に見合った大学へと進学する」こと。
そして,その2つの選択肢に入らない,第3の選択肢である「進学を諦める」こと。
いずれにしろ,どの選択肢もかおりんの人生を大きく左右することであることは言うまでも無い。
当然,かおりんは「榊さんの後を追う」事に心を決めている。しかし,
今のかおりんにはその選択肢を決断できるだけの自身も決意も無い。
正確に言えば,「不安」が彼女の決断を鈍らせていた。
決断するまで僅かではあるがまだ時間的余裕がある。
そう思ったかおりんは,自分の部屋を見回した。

 時刻は午前8時を大きく過ぎようとしている。
日の光は時計の秒針のめぐりとともに輝きを増し、
網膜に映る自分の部屋のコントラストを強め、明るさを増していった。
僅かな、朝独特の喧騒。遠くから聴こえる自動車のタイヤが地面をかける音、
電車の車輪がレールのつなぎ目をこする音は、僅かな残響と共鳴を含み、
大気のフィルターを通してより音が柔らかく、優しく聴こえた。

 そんな中、聞き覚えのある、細い、動物の鳴き声が聴こえた。
やがてその声の持ち主が、窓越しに現れた。ネコ…かおりんが家で飼ってる、
5匹のうちの1匹だ。かおりんの家ではネコは放し飼いにしているため、たまに出かけたり、
たまに帰ってきたりと、自由奔放に暮らし、言うならば「飼う」というよりも「同居」しているという雰囲気だ。
このネコが生まれた頃はちょうど、かおりんが高校に入学する頃と重なる。
3年間で、かわいかった子猫は既に一人前の大人のネコとなった。
その姿はかおりんに、3年という時間の短さを、何よりも明確に教えた。
 ネコは同居人の一人であるかおりんとは目をあわせようとせず、
またかおりんに対して興味を示そうともせず、何事も無かったのかのように立ち去った。

 「とりあえず…着替えよう…。」

 そう思いかおりんは、布団を跳ね除け起き上がった。
先ほどまで日の光を与えていたカーテンを閉め、
そっと、自分のパジャマのボタンに手をかけた。

このあと>>6 へと続きます。(汗

10 :ケンドロス :2003/05/16(金) 00:02 ID:???
>>6-9
お疲れサマです。何か本当に描写が細かいですね。(褒めてます)
大雑把な表現しか出来ない自分には羨ましい限りです。
木村やとも達が何だかかっこよく見えます。続きを期待します。

11 :ケンドロス :2003/05/20(火) 03:10 ID:???
ウルトラマンジャスティス 第9話 『ROCK FIRE』

デスゲイズの闘いの直後、メンバーは松岸により休暇を与えられた。
ここの所、激戦が続いたので体をゆっくり休めてほしいと松岸の部下への配慮だった。
その松岸はそれを伝えるとATDF本部へと出かけた。
やはり、今回の関屋との件とかで色々あるのだろう。

「みんな、ちゃんと楽器の練習してる?」
出し抜けに千尋が言った。

「は?」
全員がきょとんとした表情をする。

「は?じゃないよ。この前にバンド組むって言ったでしょ。」
「あれって冗談じゃなかったのか?」
「冗談な訳ないでしょ、よみ!」
「あ、佐倉隊員。もうあれ申し込んでおきましたから。」
一般隊員の相田隊員が千尋に伝える。

「あ、ご苦労様。」
「何に申し込んだんですか?」
「ちよちゃん、よくぞ聞いてくれました。私達は3週間後に開催される
バンドフェスィバル『ROCK THE FUTURE』に出場する事にしました。」
「何ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
千尋と歩以外の絶叫が基地中に響き渡る。

とりあえず冒頭の部分UP

12 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/20(火) 23:19 ID:???
>>11 おっ、いよいよ新作の登場ですか?
   よーし、漏れも頑張って新作を書くぞー!

13 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/21(水) 01:17 ID:???
「P.T.大阪」(スレが変わったのでイントロダクションから)

 みんなは忘れているかもしれないけど、私は榊ちゃんを狙ってるんや。
 榊ちゃんのように運動神経抜群でカッコええ女になりたいんや。だから、何か体育で誰
にも負けない競技を見つけたいと思ってるんよ。
 そこで、私は「榊ちゃんへの道」と題して、自分の得意な競技を探すことにしたんや。
 今はまだちよちゃんに100メートル走で負けてる私やけれども、「千里の道も一歩か
ら」って言うし、絶対あきらめへん。私にできることがきっとあるはずや。今日も頑張っ
て色々とチャレンジするで〜。

 「ちょーっと待ったー!!!」
 誰や?この声は智ちゃんや!
 「榊ちゃんを狙っているのは大阪だけじゃないぞ!私だって榊ちゃん、そして不二子ち
ゃんのようなデンジャラスビューティーな女になりたいんだー。大阪、お前には負けない
ぞ!私は広末やあゆよりも所得番付が上になる可能性を秘めた女なんだぞ〜!」
 ふぇ〜、智ちゃ〜ん、私が主役のSSに割り込むなんてひどいわ。
 「いや、お前はもう主役ではない。実際、前回のバッティングセンター編ではおいしい
ところは私の独り占めだし、ソフトボール編でも私が大活躍だもんねー」
 ソフトボールではサヨナラエラーしたくせに…。
 「何だと!あれはよみの根性曲がった性格がボールに乗り移ったから、イレギュラーバ
ウンドしただけだー!それより、お前は活躍してないだろう」
 それを言われると反論できへん…。

 「だから、ここは私とお前で協力して、主役を二人で半分こにしようじゃないか。だか
らタイトルも変更!『P.T.大阪and智』にしようじゃないか!」
 何でそんなお笑い芸人みたいなタイトルなんや…。やっぱりともちゃんのネーミングセ
ンスはあかんわ…。
 「なに?私がつけた名前に文句があんの?あんた何様?いいか、もうこれは決定事項な
んだ。逆らうと私が主役になるぞ!」
 ふぇ〜。そういうことで、タイトルが変更になってもうた。

 次回以降、「P.T.大阪and智」と言うことでよろしゅーたのみまんがなー。

14 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/21(水) 01:19 ID:???
「P.T.大阪and智」のイントロダクション

「宣誓!私たちは、スポーツマンシップに乗っ取り、打倒榊ちゃんを目指すべく、何か
体育で得意な種目を見つけるべく、正々堂々と闘うことを誓います!滝野智!」
 「私も『榊ちゃんへの道』を目指すべく正々堂々と闘うことを誓います!春日歩」
 「大阪、私たちだってやればできるはずだよな」
 「そうや、『千里の道も一歩から』やで」
 「よーし、私たちも大活躍して一大ムーブメントを起こすぞ!」
 「あぁ、やっぱり智ちゃんが入ると話が大げさになってきてもうた…。でも、私は私で
頑張るで〜」

(次回作は後日UP予定!)

15 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:28 ID:???
 「P.T.大阪and智−バレーボール編−」

(1/8)
 今日はいい天気やなぁ。絶好の体育日和や。
 「よっしゃ〜、今日はバレーボールだぜー!!」
 智ちゃんは相変わらず張り切っとるなぁ。私だって「榊ちゃんへの道」に向けて、静か
に闘志は燃やしてはおるんやけどな。
 で、チーム分けをした結果、今回は私と智ちゃんと神楽ちゃんによみちゃんを加えた「ボ
ンクラーズチーム」と榊ちゃん、ちよちゃん、かおりんちゃんの「エリートチーム」に分
かれてしまった。

 よし、今回は榊ちゃんと別のチームや。榊ちゃんにか…
 「榊ー!バレーボールは負けねーぜ!」
 神楽ちゃん、人がひそかに闘志を燃やしているときに叫ばんといてや〜。
 まぁええ、もう一度やり直しや。榊ちゃんに…。
 「よーし、賞金1億円のウインブルドンに向けて頑張るぞ!」
 智ちゃ〜ん、あんたもか。それから賞金1億円って何や?
 「お前はまだそんなことを言うか。大体ウインブルドンはテニスだろ?それから、9行
ぐらい上のボンクラーズチームって何だ!私をボンクラーズの一員にするな!」
 よみちゃんがなんか怒っとるな〜。どうして、人の考えていることがわかったんや?

16 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:28 ID:???
(2/8)
 ピー!
 にゃも先生の笛の合図で試合開始や。
 私の配置は左側の後衛で、左から順に智ちゃん、神楽ちゃん、よみちゃんが前衛や。こ
うしてみると、強力な布陣に見えそうやけど、相手のセンターは榊ちゃんや。ブロックさ
れんように頑張りや。

 かおりんちゃんのサーブや。私の方に向かっている。でも、何の変哲もないサーブや。
これくらいなら、楽に打ち返したる。
 「オーライ、オーライ」
 私は両手を組んでレシーブをしようとした。その時や。
 「オーライ、オーライ!」
 智ちゃんがいきなり私の視界にふさがってきた。そして、私がレシーブしようとした球をジャンピンクトスした。そして、私にジャンピングアタックをしてきた。

 私は智ちゃんのジャンピングアタックに跳ね飛ばされてしもうた。一方で、智ちゃんがトスした球はネットにぶつかってしまった。
 「智〜、ちゃんとやれよ」
 よみちゃんが隣で怒っている。当然、私もや。
 「智ちゃん、ひどいわ〜。今のは私の球やで」
 しかし、智ちゃんはそんなのお構いなしといった表情だ。
 「どんまい、どんまいー」
とだけ言い残して、自分のポジションに戻っていった。何か私だけやられ損や。

17 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:29 ID:???
(3/8)
 再びかおりんちゃんのサーブや。また、こっちの方に来とる。
 よし、今度こそ私が活躍したる。智ちゃんと違って、ちゃんとトスをするんや。
 球は空高く舞い上がっている。私はトスの構えを取った。その時や。
 「大阪、取るな!」
 よみちゃんがいきなり叫んだ。何やって〜。確かに、私は今の段階ではあまりバレーボ
ールはそんなに上手くない。せやからって取るなっていうのはひどいやないか〜。
 私はよみちゃんの言葉に逆らうようにトスの構えを続けた。ボールはゆっくりとこっち
に近付いている。

 私が取るんや、そう、私がとってアシストするんや。
 「大阪、ラインを越えるぞ!」
 今度は神楽ちゃんが叫んだ。ん?ラインって…。私はトスの構えのまま下を見た。
 その瞬間、球は私の手の上をすり抜けるように通り過ぎた。アウトや。
 何や、取るなっていうのは、私がボールに触るなってことやなくて、アウトになるから
取るなってことやったのか。よみちゃん、ごめん。よみちゃんのこと疑ってた。

18 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:29 ID:???
(4/8)
試合は今のところ4対3と「ボンクラーズ」は今のところ負けてるけど、まだ緊迫した
試合展開や。
 次は智ちゃんがサーブの番や。おや?智ちゃん、どうしたんや。やけに自信のありげな
顔をして。
 「フフフ…」
 「どうした、智。そんな変な顔をして」
 よみちゃん、神楽ちゃんをはじめみんなが智ちゃんに注目した。

 「遂に秘密のベールを脱ぐときが来たわ!必殺ミラクル智ちゃんサーブの出番よ!」
 智ちゃんはそう言って、左手にバレーボールを乗せたまま、右手の握り拳を宙に向けた。
そして、バレーボールを軽く放り上げると、右手の握り拳でボールを突き上げた。
 「とぉりやぁー!」
 叫び声とともに、智ちゃんが打ったサーブは空高く舞い上がった。

 みんながそのボールを見上げた。今日のような晴天の日やと、ちょっとまぶしくてボー
ルが見づらいな。
 空高く舞い上がったボールはやがてゆっくりと「エリートチーム」のコートに向かって
下降を始めた。ボールの奥に見える太陽のまぶしさでみんながボールを見失っているみた
いや。誰も触れることなくボールは地面に落ちてしまった。

 智ちゃん、あんたすごいサーブを持っとるんやなぁ。
 私は思わず智ちゃんの顔を見つめた。すごい必殺サーブや。
 「イエーイ!ミラクル智ちゃんサーブ炸裂だぜ!」
 智ちゃんはガッツポーズを作って喜んどる。
 「ともー、それってただの天井サーブじゃないのか?」
 よみちゃんが喜んでいる智ちゃんに向かって問いかけた。あっ、そうや。これは天井サ
ーブや。さすがよみちゃんは冷静やな〜。
 「違う!これはミラクル智ちゃんサーブなの!」
 智ちゃんは間髪いれずに否定した。でも、それは天井サーブやで。

19 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:30 ID:???
(5/8)
 このミラクル智ちゃんサーブという名前の天井サーブは、意外と効果があってか3点連
取したんや。智ちゃん、今回のMVP狙っとるな。
 「よーし、次行くぞ!ちょいやー!」
 智ちゃんは再びボールを突き上げ、空高く飛ばした。
 私はそのボールの行方を目で追ったんよ。

 あー、今回も空高くとんどるなぁ。あれ?何か黒くて丸い影がこっちに近付いとるなぁ。
何やろう?しかも、こっちに向かってるで。あー、段々形が大きくなってきた。
 次の瞬間や。私は自分の頭に衝撃が走るんを感じた。智ちゃんのサーブが私の頭に命中
したんよ。

 「ふぇ〜〜〜」
 恐るべしミラクル智ちゃんサーブ。味方一人を死に至らしめるとは…。無念。
 「大阪〜、すまん、すまん。よし、次行くぞ!」
 「お前のサーブはもう終わりだ!いい加減、ルールを覚えろ!」
 今にもサーブをしようとする智ちゃんに、よみちゃんが思い切り突っ込んでた。
 幸い、私も致命傷ではなかったので、何事もなく試合は進んでいった。

20 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:30 ID:???
(6/8)
 相手チームがサーブミスしたので、すぐにこっちのサーブの番になった。今度は私がサ
ーブを打つ番や。
 智ちゃんのようなミラクルサーブは打てへんけど、きっちり自分の役目を果たすで〜。
 「てやー」
 ボールはフラフラながら、一応は相手コートにすんなり入っていった。あー、よかった。

 その次の瞬間や…。私の右足に突然痛みが走った。同時にバシッという音も響いたんや。
 痛い〜。何や、何が起こったんや。
 私は思わず、その場に座り込み、右足のすねの辺りを押さえた。何か、少し赤くなっとる。
 あれ、目の前にボールがある。何でや…。私がサーブしたはずのボールがなぜここに?
 「大阪〜、自分のサーブが入ったからって浮かれすぎだぞ」
 隣で智ちゃんが半笑いで私のほうを見とる。

 「お前がサーブした後、すぐさま榊ちゃんがスパイクを打って、お前の足に当たったんだ」
 何や〜、私がサーブが入って浮かれている間にそんなに試合が進んどったなんて〜。し
かも、榊ちゃん、私を狙うとはひどいやないか。

 あっ、でも。私も榊ちゃんを狙っとるんや。狙い返されたのか?返り討ちやないか。
 むー、榊ちゃん。あんた私が「榊ちゃんの道」を狙っているのが気に入らんのか?いや、
逆や。榊ちゃんは私に試練を与えとるんやな。
 獅子はわが子を谷底に突き落とし、這い上がったものだけを育てるって聞いたことがあ
る。榊ちゃんも私にそう言う試練を与えてくれとるんやな。
 ほんなら、頑張って見せる。
 「♪苦しくったって〜 悲しくたって〜 コートの中では平気なの〜」ぐらいの気持ち
で頑張らなあかん。よーし、頑張るでー。

21 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:31 ID:???
(7/8)
 …って、そんなことを思っているうちにもう「エリートチーム」はマッチポイントまで
来てしもうた。
 しかも、榊ちゃんがアタッカーの位置におるし決定的なチャンス到来や。でも、「ボンク
ラーズチーム」も前衛によみちゃん、神楽ちゃんがおるから、まだなんとかなりそうや。
 後衛は私と智ちゃんに任せといてな〜。

 かおりんちゃんのサーブや。
 今度こそ私がちゃんと取る。来るもんなら来いぐらいの気分や。
 …って、智ちゃん。あんたまた私が取れそうな球を邪魔しよったなぁ。しかも、一回で
相手チームに返すだなんて、チャンスをみすみす相手にあげてどうするんや。
 ほら、セッターの人がうまくトスを上げよった。榊ちゃんがスパイクを打つで。

 「そうはいくか!」
 よみちゃんと神楽ちゃんがブロックをしようとジャンプした。しかし、榊ちゃんのジャ
ンプ力の方が一枚上や。榊ちゃんのスパイクは二人のブロックの上をすり抜けよった。そ
して、榊ちゃんのスパイクは智ちゃんの方へと向かっていった。

 「私が防ぐ!」
 智ちゃんはレシーブの構えをして、榊ちゃんのスパイクを待ち構えとる。
 「うぉりゃー!!!」
 智ちゃんのレシーブは、榊ちゃんのスパイクをとらえたように見えた。もしや、智ちゃ
んはこのまま榊ちゃんのスパイクを跳ね返すんちゃうか。
 ところがや。榊ちゃんのスパイクはそのまま智ちゃんのレシーブを跳ね返し、その反動
で智ちゃんの顔面へと向かっていった。
 「ぐはぁ!」
 榊ちゃんのスパイクの衝撃に押されて、智ちゃんは顔面にボールを食らって後ろへと倒
れてしまった。ボールはその横をコロコロと転がっていった。

22 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/22(木) 00:32 ID:???
(8/8)
「試合終了ー!」
 倒れている智ちゃんをよそに、勝負が決まってしまった。「エリートチーム」の勝ちや。
榊ちゃんのスパイクは強烈や。智ちゃんの顔には円形のボール跡が残っとるし。

 「智ちゃん、大丈夫かー」
 私は倒れている智ちゃんを起こした。
 「うぅ…。榊ちゃん、さすがは私がライバルと認めた女だ。だが、まだ勝ったわけじゃ
ないぞ」
 いや、あんたの完敗や。あんなスパイクは取れへん。私の場合、あのシチュエーション
なら骨折や。そして、あれは殺人スパイクや。殺人未遂で訴えた方がええんとちゃうか。
 「こうなったら、ミラクル智ちゃんサーブに続いて、スーパー智ちゃんスパイクをお
見舞いしてやる」
 智ちゃんはうめくように呟いた。でもな私たちは榊ちゃんに完敗したんや。もう無理や。
 うーん、バレーボールでも「榊ちゃんへの道」は無理やったか。何か別なものを探すと
するか。
 (別のスポーツ編に続く)

23 :DJ剣怒炉素 :2003/05/25(日) 23:33 ID:???
ジャスティス続き
「さ、三週間って無理に決まってるだろ!!何考えてんだよ!!」
暦が千尋に抗議の声をあげる。

「無理?何故そう思うの?バラエティ番組ではそれぐらいの期間でりっぱに
マスターしてる人達がいるじゃない。」
自信満々に言う千尋。

「TVと一緒にするなっての!!」
「とにかくあたしらはそんな事するつもりはねーんだ!!
やるならお前一人でやれよ。」
神楽がそれに続く。

「そうかしら?大阪さんやともはもうやる気十分だけど。」
「あたしはベーシストや〜。」
「おお!!あたしのドラムでみんなを釘付けにしてやるぜ!!」
いつの間にか歩はベース持って演奏しだし、智はスティック持って
そこらへんの壁を叩いてる。二人共すっかり乗り気だ。
似合わないサングラスまでしていた。

「そいつらがやる気でもあたしは絶対やらないからな!!」
「あらぁ、神楽さんひょっとして負けるのが怖いの?」
思い切り嫌な笑みを浮かべて千尋が言った。

「な!?どういう事だよ!?」
「だってそうでしょう。神楽さんはともや大阪さんに演奏で
勝てないからやらないって事でしょう?いつも榊さんに勝負を
挑むあなたがまさか逃げるなんてね〜」
「何だってぇぇぇ!!そこまで言われちゃ黙ってらんねぇ!!いいよ、
やってやるよバンドをさ。」
「よーし神楽よく言った。それでこそボンクラーズリーダーだ。」
「リ〜ダ〜。」
「リーダーじゃねぇ!!」
俄然盛り上がるボンクラーズ。

24 :ケンドロス :2003/05/25(日) 23:35 ID:???
「私はやらないぞ。」
「そう。残念ね。バンドって結構カロリー消費するから、ダイエットにいいと
思うんだけどなぁ。やせられるのに残念ね。」
「・・・・・・待て。気が変わった。一度くらいやってもいいぞ、バンド。」

以後こんな調子で千尋はメンバーを説得していった。

かおりんの場合
「かおりん、あなたにはサックスをお願いしたいんだけど・・・・」
「む、無理よ。私そういうの苦手だもの。」
「何言ってるの、サックスは一番ボーカルと絡めるのよ。一番多く榊さんの
そばにいられるよ。」
「是非ともやらせて下さい!!お願いします!!死ぬ気で演奏します!!
むしろ死にますから〜〜!!」

榊の場合
「じゃ、ボーカルお願いね。榊さん。」
「そんな事言われても困る。」
「このロックフェスティバルに参加すると、参加賞として必ず
ねここねこの人形がもらえるって言っても?」
「・・・・・・・・・・・やる。」

ちよの場合
「頑張ってね、キーボード。」
「はぁ。分かりました。」
皆が参加すると決めた以上、自分も参加するしかないだろう。
しかし、イマイチちよは乗り気じゃなかった。

25 :ケンドロス :2003/05/25(日) 23:40 ID:???
すると、そこに電話がかかってきた。相田隊員が出る。

「はい、こちらHOLY本部。少々お待ち下さい。美浜隊長、谷崎という方
からお電話が入ってます。」
「え?谷崎?」
相田隊員の口から出た名前にメンバーは顔を見合わせた。学生時代の担任の
名前も谷崎だったからだ。不審に思いながらもちよは受話器を取った。

「もしもし、美浜ですが・・・・」
「あ、ちよちゃん!!元気してた〜?あたしよ、あ・た・し。谷崎ゆかりよ〜」
「ゆ、ゆかり先生!?どうしてここの番号知ってるんですか!?」
「細かい事は気にしな〜い。それよりあんた達『ROCK THE FUTURE』に出るんだってね〜。
あのフェスティバルで優勝すると海外旅行がプレゼントされるのよね〜
つー訳で今年の夏はそれに決まりね。絶対優勝しろよ!!」
「・・・は、はぁ?」
「ゆかり、ちょっと貸しなさい!!」
横から別の女性の声が聞こえてきた。体育教師の黒沢みなもである。

「ごめんね、ちよちゃん。ゆかりがバカな事して。ちよちゃん達は
地球を守る為に戦ってるですってね。大変な事だけど、頑張ってね。
私達いつも応援してるからね。それとバンドの事、ゆかりが言った事は
気にしなくていいわよ。精一杯がんばりなさい。」
「あま〜い!!勝ってこそ出場する意味があるんだよ。ちよすけ〜絶対勝てよ!!
負けたらタダじゃおかね〜!!」
そこで電話は切れた。

「ちよちゃん?」
他のメンバーがちよを心配そうに声をかける。
振り返ったちよはガクガク震えていた。

「み、皆さん!!絶対優勝しますのだ!!」
「おお!!ちよちゃんも乗り気だ。そうこなくちゃな。」
「絶対ゆかり先生に何か言われたな。」

「そうと決まれば早速私の家に行きましょう。楽器とか揃えないといけないしね。」
「それはそうだけどどうして千尋の家なの?」
「言わなかったっけ?私の家、楽器屋だって?」
「ええーーーーーーーーーー!!」
またまた驚きの声が基地中に響き渡った。

「上條隊員、その先生ってそんなに怖いんですか?」
事情を知らない相田隊員がかおりんに尋ねた。

「ま、まあちよちゃんにとっては色々ね。」

26 :ケンドロス :2003/05/25(日) 23:41 ID:???
その頃、地球から遥か遠くにある惑星で異変が起きていた。

「いたか?」
「いや、こっちにはいない。」
その星の住人である『星人』達は何かを必死で探していた。

「まいったな、一体どこにいったんだ?」
「あ!!いたぞ!!あんな所に!!」
一人の『星人』が叫ぶ。『それ』はこの惑星を出て、宇宙空間に出ていた。

「どうやら、太陽系に向かってるようだな。」
「我々も追うぞ。すぐ出発だ!」
『星人』達もそれの後を追う為に、円盤に乗ってこの惑星を飛び立っていった。

27 :ケンドロス :2003/05/25(日) 23:49 ID:???
>>22
榊さんに顔面めがけてボールぶつけられたともにワラタ。大阪さんの足にまで
当てると何となく榊さんの悪意を感じまふ。(w

28 :名無しさんちゃうねん :2003/05/26(月) 00:51 ID:???
>>27
君は大阪を偏愛しているー(w

29 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/27(火) 23:47 ID:???
>>27 ケンドロス氏に一つ頼みがあります。
  今度UP予定のSSで神楽の名前の「彪乃」を拝借したのですがよろしいですか?

30 :ケンドロス :2003/05/28(水) 00:23 ID:???
>>29
いいですよー。どっかであった設定を勝手に使ってるだけですからー
別に俺だけじゃくてSS書きさんも使ってますし・・・
あと先に言っとくと榊さんの「弥生」も同じです。

こっちで勝手につけたかおりんと千尋の苗字(上條と佐倉)もかまわんです。

31 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/29(木) 00:11 ID:???
>>30 サンクスです。で、次作のSSは別のものができちゃったので、次回以降の
  SSで神楽を主役としたSSをUPしたいと思います。

32 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/29(木) 00:12 ID:???
「君がいない」(ちよちゃんが主役のSSです)

 外は薄曇りの天気だったが、それ以外は別の何の変化の無い朝だった。
 ちよはいつものように通学していたが、一つだけいつもと違うことがあった。
 今日は榊さんと一緒じゃなかったな…。
 普段、ちよは登校途中で榊と会うのだが、今日は榊と会うことなく学校に着いたのだった。

 「おはようございまーす」
 ちよは教室に入るなり、今教室にいるクラスメートに挨拶した。しかし、その中にも榊はいなかった。
 「あれ?榊さんはまだ来てないんですか?」
 ちよは、自分の席のすぐ近くにいた大阪に訪ねた。
 「うん、まだ来てないなぁ」
 いつもならもう榊は学校に来ている時間だ。たまに、登校途中にいなくなることがあ
ったが、それでもこの時間には来ていた。そして、榊が来ないまま、担任の谷崎ゆかり
が来て、朝のホームルームが始まった。

 「あーい、ホームルームを始めっぞ〜。あっ、そうそう。榊は今日風邪で休むってさ」
 「ええっ!榊さんお休みなんですか」
 谷崎の発言に一番先に反応したのはかおりんであった。その声があまりにも大きかっ
たため、クラスの全員が反応してしまった。
 「うん。今の時期、体調を崩しやすいからみんなも気をつけてね。」

 榊さん、休みなんだ…。
 ちよは普段榊が座っている席を見つめた。普段なら榊がそこに座って空を見上げてい
るのに、今日はその姿が無いことにどこか淋しさを感じた。


33 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/29(木) 00:13 ID:???
 「ふぇ〜、榊さんがいないなんて、今日ほど意味の無い日は無いわ〜」
 1時間目の休み時間、教室の片隅で、後ろの席で机の上に突っ伏して落ち込んでいるか
おりんを、千尋は頭をなでて慰めていた。

 それとは別に、ちよは神楽と話をしていた。
 「榊さんがいないと何か淋しいです。明日は来てくれるといいんですが」
 「そうだな。榊がいないと何か今日の体育は張り合いがないんだよな」
 神楽はライバル的存在である榊との勝負を楽しみにしていただけに、つまらなそうな
表情を浮かべていた。

 「何だよ神楽。榊ちゃんがいなくても私が相手になるぞ」
 突然、智が会話に割り込んできた。
 「智じゃ役不足だ。お前じゃ榊の穴は埋められない」
 神楽は冷たく言い放った。
 「おいおい、神楽〜。役不足ってのは、その人にとって役割が軽すぎるって意味だ。
使い方を間違えているぞ。やっぱり胸の大きさは同じでも、榊ちゃんと頭の中身は全然
違うなぁ」
 「うるせぇ。わざとだよ、ついだよ。それと胸の話はするな!」
 神楽は顔を少し赤らめて言った。
 この後、智と神楽の小競り合いが始まり、暦が慌てて止めに入るなど、いつものやり
とりが繰り広げられたが、ちよの心はスッキリとはしなかった。

 榊さんが休みというだけで、何でこんなに淋しいんだろう…。ちよはずっとその思いに駆られていた。
 「…ゃーん、ちよちゃーん」
 突然、ちよは自分が呼ばれていることに気がついた。目の前には谷崎がいた。
 「あっ、はい!」
 そうだ、今は3時間目の英語の授業中だったのだ。
 「ちよちゃん、今の話を聞いていた?」
 「あっ、いえ…」
 「珍しいわね、ちよちゃんがぼんやりするなんて。大阪なら分かるんだけど…って、
コラァ、大阪!人の仕事中に寝るな!」
 谷崎はそのまま大阪をたたき起こした。
 ちよはその光景をチラッと見た後、いつもと違って誰もいない榊の席を見つめた。
 そして、何だか自分でもよく分からないものの、とても淋しい気分になった。

34 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/29(木) 00:13 ID:???
 「あー、榊さんがいないなんて、草津に来たのに温泉に入らないのと同じだわ〜」
 昼休み、かおりんはまだ机に突っ伏して落ち込んでいた。
 「あんたは今日はずっとこういう状態なの?」
 千尋が半ば呆れた表情を浮かべながらも、かおりんを慰めていた。

 ちよも普段榊が座っている席を見ては、そこに座るべき人物がいない椅子を見て淋しげな表情を浮かべた。
 「ちよちゃん、何か元気がないなぁ。どうしたん?」
 大阪がちよに話しかけてきた。
 「いえ、何か榊さんがいないと淋しくて…」
 「そうか。まぁ、ちよちゃんにとって榊ちゃんは守り神みたいなものやからなぁ」

 「守り神ですか?」
 「そうや。ちよちゃんが今まで誘拐されないで済んだのも、近くに榊ちゃんがおった
からや」
 「それはちょっと、違うんじゃないですか?」
 ちよはダラ汗を浮かべた。ただ、大阪の言っていることも少しは合っていた。確かに、榊は自分を見守ってくれているように感じることが何度かあった。1年生の体育祭のときに、不安になっていた自分を励ましてくれたのも榊だった。自分の話を一番親身に聞いてくれたのも榊だった。気がつけば、いつもそばには榊がいた気がする。

 普段、後ろに榊がいることで自分が見守られていたのだ。きっとそれは、自分を守る大きな木のような存在だったんだ。でも、今日は榊さんがいなくてこんな空しさを感じてるのかもしれない…。
 今まで当たり前のように感じていて気がつかなかったが、改めてちよは榊が自分を見
守っていてくれたことを実感した。
 そうか…。榊さんはいつも私のそばにいてくれた。そして、私を陰で見守ってくれて
いたんだ…。榊さん、ありがとうございます。
 ちよは榊の席に向かって、心の中で礼を言った。

35 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/29(木) 00:14 ID:???
 放課後、ちよはコンビニに向かった。榊に今日の授業のノートをコピーして渡すため
である。
 英語、古文、数学、ノートの量は思ったより多かったが、何とか全部コピーできた。
 あっ、そうだ。お見舞い用に何か買ってった方がいいかな。
 ちよはコンビニの中を色々と見て回った。すると、榊にピッタリ合いそうなものを見つけた。
 「あっ、これなら榊さん喜ぶかも!」
 ちよはその品物を手に取り、レジへと持っていった。


 一方、榊は長い眠りから覚め、ゆっくりと寝床から体を起こした。
 空模様が少しずつ夕焼け色へと変わろうとしていた。
 「ん…、だいぶ体の具合も良くなってきたかな…」
 榊は背伸びをした。その時、ベッドの横になにやら大量のプリントが置かれているこ
とに気がついた。一番上には母親からのメモがあった。
 「ちよちゃんからノートのコピーを頂きました」
 そのメモにはそう書かれていた。

 「ちよちゃんからか…」
 榊はちよからもらったノートのコピーを眺めた。どの教科も丁寧に書かれていて、と
ても分かりやすかった。
 プリントの最後のページを見た後、榊はノートとは違う何かが入っていることに気付
いた。それはかわいい猫の写真だった。
 「かわいいなぁ…。あれ、裏に何か書いてある?何だろう。『早く元気になってください ちよ』。あっ、ちよちゃんからのメッセージだ」
 それは写真の裏側にちょこっと書かれていただけのメッセージだった。しかし、榊に
とってそれは猫の写真よりも嬉しいものだった。
 「ちよちゃん、ありがとう…」
 榊はしばらくその写真の裏にあるちよのメッセージを見つめ続けていた。

36 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/05/29(木) 00:15 ID:???
 次の日、ちよが登校していると後ろから「おはよう」という声が聞こえた。榊の声だ。
 「あっ、おはようございます!もう大丈夫なんですか?」
 「うん、もう大丈夫。それと、ありがとう…ノートと写真。とても嬉しかった…」
 榊は少し顔を赤らめた。
 「いえいえ、私の方こそいつもありがとうございます」
 「えっ…それはどういうことだ?」
 「あっ、何でもないですよ。それより今日は英語の小テストがあるみたいですよ」
 ちよは慌てて話をはぐらかした。でも、心の中では榊と今日会えたことに喜びを感じていた。そして、心の中では言葉にできないほど榊に感謝をしていた。
 榊さん、これからも一緒にいてくださいね…と。
 (終わり)

 (おまけ)
 「おはようございますー」
 「おはよう…」
 二人が教室に入った瞬間だった。突然、人影が二人の前に現れた。かおりんだ。
 「あっ、榊さんおはようございます!もうお体の方は大丈夫ですか?」
 「あぁ…。もう大丈夫」
 「良かったです!榊さんに一日会えないだけでもう…」
 かおりんは涙を流しながら、しゃべっていたため後半は何を言っているのか聞き取れ
なかった。

37 :ケンドロス :2003/05/29(木) 23:29 ID:???
千尋の言う通り、千尋の家は大きな楽器屋だった。いろいろな楽器がたくさん並んでいる。
一行はそれぞれ自分の担当する楽器を選ぶ。
レジにいる人間は恐らく千尋の祖父だろう。老人が座っていた。

「好きなの選んでね。」
「と言われましても。」
とりあえず、楽器を手に取りどれにするか悩む一同。そこへ誰かが入ってきた。

「ただいま〜」
「あ、お父さんお帰り〜」
千尋がその客に向かって声をかけた。

「おお千尋。ただいま。おや?お友達かい?」
千尋の父と思われる人物は金髪で革のコートとブーツを履いていた。一目でミュージシャンと分かる格好だ。

「ええ〜!!」
驚きの声をあげる暦。

「どうしたよみ?」
「この人って、今すごい売れてるバンド「HEAT WIND」のボーカルのKYOじゃないか!!」
「そうよ。お父さんの本名は佐倉恭介だもの。」
「おお、知ってる方がいるとは光栄ですな。」
「うわー、そんなにすごい人だったのか。」
今度は智や神楽が声をあげた。そしてレジの後ろにあるドアから今度は千尋の母と思われる人物が出てきた。

「おかえりなさ〜い。あら千尋ちゃん、お客さん?」
「うん。」
その姿を見て今度は榊が「あっ」と声をあげた。

「どないしたん?」
「あの人、ピアニストの赤碕愛ですよ〜」
ちよが歩に説明する。

「それは芸名なの。私の本名は佐倉律子よ。」
「何か、千尋が遠い世界の人間に思えてきたわ。」
とかおりん。

38 :ケンドロス :2003/05/29(木) 23:32 ID:???
そんなこんなでメンバーはそれぞれの楽器を選び練習する事となる。となりにスタジオがあるので練習するにはもってこいだった。
とその前にまず衣装について話し合う事になった。

「これなんてどう?」
といって千尋が着てきたのは革のジャンパーに革のズボン、そしてどくろの模様が入ったTジャツだった。
「やっぱりバンドするには格好から入らないとね。」
「い、いやあのさ千尋、格好から入るのは分かったよ。でもそのTシャツの
どくろのマークはどうかと思うぞ。目赤く光ってるし・・・」
後ずさりしながら神楽は指摘する。

「つーかそのどくろはバンド名の『Little Flower』には程遠いぞ。」とよみ。

「え〜どくろかっこええやん。」
「あたしもそう思うけどな〜」
「どくろはちょっと遠慮したいです。」
「ダメ!!」
「榊さんに同意!!ってきゃああああ!!」
突然かおりんが悲鳴をあげて榊にしがみついた。無理もない。いきなり智と歩の二人がどくろの仮面被って目の前に立っていたのだから。恐らくステージ衣装の一種だろう。

「あははははは、びっくりしてやんの〜!」
「成功や〜」
「まったく、何くだらない事やってんだよ、お前等。」
「だったら私を前に差し出して隠れないで下さい〜。よみさんひどい!」
その言葉どおり暦はちよを前に突き出して隠れていた。ちよは泣いていた。

「よみの言う通りだ!くだらねーんだよ!!」
「いや、お前榊ちゃんの後ろに隠れて震えながら言っても説得力ねーよ。」
「び、びっくりしたじゃないの!!もう」
しかし、言葉とは裏腹にかおりんの顔は嬉しそうだ。

「あ、あの。二人共そろそろ離れてくれないか?」
困惑しながら榊は言った。

「ははははは、千尋の友達は面白い子ばかりだな。」
「本当ね〜」
「はいはいお遊びはそれくらいにして、練習始めるよ〜時間ないんだからね。」

そんなこんなでようやく練習が始まった。衣装に関しては本番までのお楽しみ
といことになった。
譜面の読み方を教えてる時間はない、というかボンクラーズには
全く伝わらないと判断した千尋はこう言った。

「みんな、思いのままに弾けばいいのよ!!」
「おー!」
「んな無茶苦茶な・・・」

39 :ケンドロス :2003/05/29(木) 23:36 ID:???
最初の方こそみんな滅茶苦茶だったと後に暦は語る。
ちよちゃんは律子さんに付き添いでキーボードを習い、
榊はKYOに声の出し方をレッスンされていた。
それ以外のメンバーは私含め全部千尋が担当した。

「よみ〜私と勝負だ!!どっちがうまく弾けるか。」
神楽は榊がボーカルのレッスンを受けている影響か、勝負を同じ
ギターで挑んできた。
「あのなぁ、勝負って言ってもお前と私のパートは違うんだぞ。」
「いいねぇ。あたしも参加するよ。」
何を思ったかともが勝負に参加してきた。だから合同練習で勝負してどーすんだよ!?

「二人共何やってんの!?合わせなきゃダメじゃない!!」
案の定、千尋に怒鳴られる二人。別のところに視線を向けると大阪がベースを
弾いている。でも顔が真っ青だ。そして私にこう言ってきた。

「なぁよみちゃん。いつ演奏やめたらええん?もう疲れたんやけど・・・」
・・・・・・・そういえば、こいつ練習初めてから一回も休んでなかった。
練習熱心なのかと思ったが、単に終わるタイミングが分からず弾き続けてただけだった。
私はこいつからベースを取り上げて無理矢理休ませた。でないとこいつ倒れかねない。

と、思ったら横でバタッと音がしてかおりんが倒れていた。

「う・・・うまく吹けない・・・」
どうやらサックスを担当したのはいいが、うまく音が出ずに
吹き続けていたら呼吸困難に陥ってしまったらしい。
おいおいこんなんで本当に大丈夫か?
私は不安になってきた。

しかし、日を追うごとに皆、確実に上手くなっていった。
演奏も途切れる事が無くなった。
これならいけるかもしれないと私は思った。
詞を榊が書き、曲を千尋が担当した。
人間必死になればやれるもんだと私は思った。

そして、ついに本番の日が来た。

40 :ケンドロス :2003/05/29(木) 23:38 ID:???
とりあえず今回は練習編。次回で本番&怪獣出さないとな・・・・

41 :名無しさんちゃうねん :2003/05/30(金) 00:44 ID:???
なんやー?ジャスティスの続きやったんか?
タイトルぐらい入れんと、わけわからんでぇ〜!

42 :ケンドロス :2003/05/30(金) 00:45 ID:???
>>41
すまん。入れ忘れた。

43 :壱拾参−3 ◆C6EL9aoU :2003/05/31(土) 04:46 ID:???
歩と翔−夏の夕立(1章−1)
-------------------------------------------------------------
「もう!!信じられへんわっ!!」

 ウチはたまらず声を上げてしもた。

「ごめんなぁ翔・・・ホンマにゴメンなぁ・・・」

 お姉ちゃんの目が困惑の色を深めているのは解っていた。

「何かなぁ・・・この日、約束してたはずやってなぁ・・・気になって
しゃー無かったんやけどなぁ・・・」
「気になってしゃー無いんやったら、何でそこで深く考えようと
せんのや!?ホンマに信じられへんわ!!」

 でも頭では解っていても、見た目は何時もと何ら変わらずポーっと
した目を見てると、この人ホンマにハラの芯から反省してへんのや
ないかって気になって怒りが収まらない。

「もう!!お姉ちゃん、いっつも同じ事やってるやんか!!」

 関東に来てから初めての夏休み・・・ウチのクラブ活動やお姉ちゃんの
バイトの合間をぬって、久々に二人で服選びを兼ねて遊びに行かへんか
って約束をしていたのに・・・。

「いやなぁ・・・それが最初の日とかやったら解ったんやけどなぁ・・・」

 "ちよちゃん"ていう小学生やのに飛び級で高校生になった学校の
友達から別荘へ行かへんか言われてホイホイとOKしてもうた・・・
 その3日目がウチとの約束の日とダブってる事、忘れてたんやて。

44 :壱拾参−3 ◆C6EL9aoU :2003/05/31(土) 04:47 ID:???
歩と翔−夏の夕立(1章−2)
-------------------------------------------------------------
「どうせ"エエとこの娘の別荘"って下りに目が眩んだんやろ!!」
「え〜っ・・・何で そないな事になんのや〜!?」

 あかん・・・もう自分で自分の口が押さえられへん。
 お姉ちゃんの目が泳いでる・・・相当に困っとんのやろう。

「歩〜、翔〜、ヤメぇなぁ〜、エエ歳して大っきなカナ切り声
上げてぇ・・・おかあさん、もう近所に恥ずかしいわぁ・・・」

 台所からの余りにも暢気で無責任な おかぁさんの一言。

 −−−−−心の中でブチッと何かが切れる音がした。

「お姉ちゃん、そないしてボーっとして『やいやぁ』言うてたら
この先の人生、何でも許してもらえるって思もてるやろ!!」

 ・・・しもた。もう完全に口が滑ってもうた。

「・・・・・」

 お姉ちゃんの目が全くの無表情になる・・・アカン・・・。
 でも・・・その目はウチを更にヒートアップさせてまう。

「何や!!図星かいな!!」
「・・・翔。何でこないなことでアンタに人生まで説教されなあかんのや?」
「そない言うても事実やんか!!お姉ちゃんの人生観って・・・」
「あんな、ワタシはあやまっとんのやで!!」
「ほれ!!その居直る態度が気に食わへんのや!!」
「アンタどう謝っても許すつもり無いやんか!!そやろ!?」

 台所の暖簾から困惑した顔がヒョイと突き出る。

「アンタら大概にしいな〜!ツマラん事でキャンキャンと〜」

45 :壱拾参−3 ◆C6EL9aoU :2003/05/31(土) 04:48 ID:???
歩と翔−夏の夕立(1章−3)
-------------------------------------------------------------
 もう!!おかぁさん!!要らん時に出てくんな!!

「ツマラん事ちゃう!!お姉ちゃんがアホみたいに・・・」
「翔・・・もうエエわ・・・」

 急にお姉ちゃんが落ち着いたように言う。
 またあのポ〜〜〜っとした目

「何がエエんや!?」
「ワタシが話しても聞かんやろ・・・アンタと話す気せえへん」

 何で・・・何でこんな事になんのやろ・・・?

「判ったわ!!お姉ちゃんが話す気ないならウチも話さへん!!」

 踵を返してウチは自分の部屋に向かって居間を出ようとしたら・・・。

「ぁあ〜エエ風呂やった〜〜。ん?何怒ってんのや翔?」

 !!!!!!!!!!!

「んもぉ!!家ん中、物体ぶら下げて大行進すなぁて何度も言うたやろ!!
ウチら幾つになった思っとんのやっ!!おとーさん!!」
「あ〜スマンスマン・・・ついなぁ・・・」
「もうイヤやぁ〜〜〜〜〜っ!!」

 泣きそうになりながら居間を出てゆく後ろで話声が聞こえる。

「おとーさん、翔のは言い過ぎやけど少しは隠しなはれや」
「そない言うても おかぁさん 俺かて家の中くらいは楽したいがなぁ〜」
「そないコト言うてるとウチら将来、ナ〜ニ見ても平気で笑ろてるような
スレた娘になってまうでぇ〜。エエンか?おとーさん」
「歩も優し言い方してキツいなぁ〜、ホンマ何があったんや?」
「・・・なんでもない」

 ばたん・・・・・入口の襖を閉じると静かな世界が待ってる。
 机の上にあるロフトベッドに駆け上がると、ウチは布団に潜り
込んで天井を見つめる。
 何で・・・何でこんな事になったんやろ・・・?

46 :壱拾参−3 ◆C6EL9aoU :2003/05/31(土) 04:49 ID:???
 ・・・と言うわけで久々の復活です。(^^)

 前スレ540で折角ラフを描いて頂いたので何時までも「忙しい*2」
なんて言ってたら何時まで経っても書けないと思ったので、取り
敢えず今まで書いた所までUPしました。(^-^)

 名(略 さん、ラフありがとうございます。_(_ _)_
 プロットは練ってあるんで何とか書き上げます。

47 :紅茶菜月 ◆cwYYpqtk :2003/05/31(土) 23:32 ID:???
>>46
 お疲れ様です。
 姉妹ゲンカ編、とても楽しく?拝読させて頂きました。
 大阪弁がぽんぽん飛びかう光景は、なかなか凄いものがありますね。

 特に、おっとりとしている大阪の言動が、勝気な妹を余計に苛立たせる
シーンは、とても臨場感があってよかったと思います。
(久々に感情移入して、読んでしまいました。)

 続きをとても楽しみにしております。

48 :名無しさんちゃうねん :2003/06/01(日) 01:26 ID:???
>>46
堪能しますた。
大阪弁も上手い。
もしや、関西の人でつか?

49 :ケンドロス :2003/06/03(火) 02:30 ID:???
ジャスティス続き
年に一度開かれるロックフェスティバル『ROCK THE FUTURE』が
今まさに開催されようとしていた。

その頃のHOLY基地では・・・

「今頃皆さん、ロックフェスティバルに参加してる頃ですね。」
「懐かしいわ。私もそれに一度参加した事あるのよ。彼女達には是非優勝してもらいたいわね。」
相田京子隊員と井上舞女医が雑談をしていた。そこにレーダーが何かを捉えた音を発した。

「どうしたの?」
「何かが地球に向かって接近してきます!!生体反応あり。」
「彼女達、大丈夫かしら?」

再びこちらに戻ると会場は熱気に満ち溢れていた。
全国から自分の歌を聴いてもらおうと数え切れない人数が集まってるから
当然といえば当然である。

「おらあー!!お前等、気合十分かー!?」
司会進行と思われる頭がカラフルなモヒカンでサングラスかけた
男がマイクを持って大声で怒鳴った。それに歓声で答える。

「よーし、気合十分のようだな。とりあえず優勝目指して頑張りやがれーーー!!」
またまたあがる歓声。

「とうとう来たわね。」
「よしっ、やるぞ!!」
「海外旅行や〜」
「ちよちゃん、隊長として何か激励の言葉を送ってくれよ。」
ともがちよちゃんにそう言った。前にもそんなセリフを私、私は聞いたような気がした。
するとちよちゃんの顔に不安の表情が浮かんできた。

「え、えーと、頑張ってください。で、でも私のせいで負けたら・・・」
涙ぐむちよちゃん。

「大丈夫だって!別に負けたって私達気にしないから・・・」
暦が必死にフォローする。でも確かこの展開だと・・・

「あまーい!!タダで海外旅行が出来るのよ!!
ちよちゃん、そんな甘い考えでどうするの!?絶対に勝ちなさい!!」
やっぱり、ゆかり先生が現れた。でも、どうして?
ここは参加者以外は入れないはずなのに・・・
そう思ってると後ろから黒沢先生が現れた。

「ちょっとゆかり、だめじゃないの!!こんなとこにきちゃあ!
客席に戻るわよ!それと皆頑張ってね。」
黒沢先生はゆかり先生の襟をつかんで、そのまま客席の方に消えていった。

50 :ケンドロス :2003/06/03(火) 02:33 ID:???
「ど、どうしよう〜私のせいで負けたら〜。」
本格的に泣き出しそうなちよちゃん。しかし私は以前の様に慰める事が出来なかった。
何故なら私自身もまた不安と緊張で押し潰されそうになったからだ。
こんな大勢の人前で歌うなんて初めてだからだ。
ウルトラマンレイに変身して戦うのとはまた違った緊張感が私を支配していた。

そんな私の手を握り、激励の言葉をかけてくれた者がいた。

「榊さん、大丈夫です。私達に任せて下さい。」
かおりんだった。あまりにも意外な事だったので戸惑ったが、
それで気分が落ち着いたのも事実だ。

「ああ、任せる。」
私はかおりんに短く返事をした。それ以上の事はうまく言えない。
見ると千尋がちよちゃんを励ましていた。

「ちよちゃん、今までやってきた通りにすればいいからね。
失敗したって気にしなくていいよ。」
「はい!!」
ちよちゃんは元気よく返事をした。そして、私達の番が回ってきた。

「よーしみんないっくぞ〜!!」
「おう!!」
ともの声に全員で頷く。舞台の上に上がるとたくさんの観客がいた。
後で聞いた話だが、ゆかり先生や黒沢先生の他にも歩の妹翔(つばさ)や、
ともや暦の小学、中学の時の同級生平井百合子という人物も来ていたらしい。私もマヤーを連れてきていたが、今は黒沢先生に預かってもらっている。

「さあ〜いよいよ最後だ!!最後に歌うのはLittle Flowerのこいつらだ〜!!」
司会の男が勢いよく叫ぶ。湧き上がる歓声。でももう私に不安はない。
他のみんなも同じだ。後はもう一生懸命歌うだけだ。

「せーの!!」
とものドラムを叩く音から演奏が始まった。ちよちゃんは椅子に座って
キーボードを演奏している。身長の事を考慮した千尋が用意してくれたものだった。
続いて神楽、暦のギター、歩のベース、かおりんのサックス、
千尋のパーカッションの演奏へと続いていく。
みんな基本的に千尋のどくろのあれを取り除いた衣装だが、歩だけは
黒いドレス風の衣装だった。千尋が一人ぐらい違う格好していても
いいんじゃないかということでそうしたのだ。

51 :ケンドロス :2003/06/03(火) 02:37 ID:???
私はマイクに向かって出せる限りの声を出して歌った。途中、歩がコーラス
で一緒に歌ってくれるので心強かった。
間奏の部分になると神楽と暦がステージを縦横無尽に走り回った。
かおりんがサックスを吹きながら私の背中にくっついてきた。嫌な予感がしたが、
かおりんは他に特に何かする事もなく、自分の演奏している位置に戻っていった。
演奏中はあくまで演奏に徹するという事か。
千尋は余裕の表情でパーカッションをやっている。慣れている証拠だ。

また自分の歌う番がまわって必死に歌った。他の皆も夢中でそれぞれの楽器を演奏する。
私の中の気持ちが高ぶっていくのがわかる。今まで味わった事のない高揚感だった。
歌い終わった時には私達全員、全てをやりきった表情をしていた。
最初は3週間なんて出来ないと思ったけど、必死になれば何だって出来る事がわかった。

「最高の演奏だったぜ〜!!さあ、これから誰が優勝するか決めるから、
ちょっと待っててくれよ!!」
司会の男がそう言って引っ込む。

その時だった。上空から何かがこちらに向かって落ちてきた。
そして、それは会場の近くに落ちた。私達はそれの正体が何かすぐに分かった。
怪獣だ。
相手は四足で歩く怪獣だった。その姿はネズミを彷彿とさせる外見だった。
突然の怪獣の出現に会場はパニックになり、大勢の人が逃げ惑う。

「何だよ、こんなとこに怪獣出なくてもいいじゃねーか!!」
不満をぶちまける智。イベントがイベントなだけに武器は持っていないのだ。

「皆さん、とにかくお客さんの避難誘導をしましょう!!
武器の持っていない私達には出来るのはそれしかありません!!」
「了解!!」
ちよちゃんの指示に全員が従い、避難誘導につく。
ここらへんはさすがに手馴れており、パニックを起こしていた人々は
落ち着きを取り戻し、私達の指示に従い避難を始めた。

現れた怪獣は特に何かをする気配はない。ただ空を悲しそうに眺めているだけだ。
しかし、暴れださない保証はどこにもないのだ。

ある程度避難誘導が落ち着いた頃、私は歩の所に来て耳打ちした。

「歩、変身してあいつをなるべく会場から遠ざけるんだ!!」
「わかったで。」
私の指示に従い、歩は人気のないところに走り出す。
そして左右を見渡し誰もいない事を確認した。

「今や、ジャスティース!!」
ジャスティランサーを高く掲げ、歩はウルトラマンジャスティスに変身した。

52 :ケンドロス :2003/06/03(火) 02:39 ID:???
「キュルルゥ。」
悲しそうな泣き声をあげる鼠怪獣。

「でや!!」
ジャスティスは鼠怪獣の顔面に蹴りを入れる。後ろに鼠怪獣は倒れこむ。
ジャスティスは何とか怪獣を会場から引き離そうと怪獣にパンチの連打を
浴びさせ、再び後ろに倒させる。そのままジャスティスは怪獣を持ち上げ
ようとしたが、持ち上がらない。
怪獣の重さは尋常じゃなかった。そのまま地面に倒れるジャスティスと怪獣。

「ぜあっ!!」
覆いかぶさっている怪獣を何とか振りほどいたジャスティスだが、
怪獣はそれでも反撃してこない。ただ上空を見上げている。悲しそうに・・・

(もしかしたら帰りたいのかもしれない。でも何をしてあげれば・・・そうだ。)
その様子を眺めていた私は『子守唄』を歌う事にした。せめて、
この歌で悲しい心を沈めてくれる事を祈って・・・・
するとどうだろう。怪獣はすやすやと眠りはじめた。
自分の予想以上に効果があった。ジャスティスも攻撃をやめた。

「おーすげぇ!!榊ちゃん歌で怪獣を大人しくさせた!!」
「お前やっぱすげぇよ。何でそんな事できんだよ、榊?」
「榊さん、やっぱりすごい!!」
「榊さん、天使みたいです。」
仲間達の言葉が少し恥ずかしかった。特にかおりんとちよちゃんの言葉は・・・・

「あ、あれは何だ!?」
「円盤みたいね。」
暦と千尋が指差す方向にその飛行物体は現れた。
「地球人、ならびに赤い巨人よ。ミルビスを、その怪獣を
殺さないでくれないか。その怪獣は元来大人しい怪獣だ。
ミルビスは私達のペットだ。」
円盤から私達が持ってる通信機に通信が入った。

「あなた達は何者ですか?この地球に来た目的は何なんですか?」
ちよちゃんが通信機を通して円盤に向かって話しかける。

「我々は銀河系M35星雲のキャッツ星からやってきたキャッツ星人だ。
地球には我々の星から誤って出てしまったミルビスを連れ戻す為に
この地球までやってきた。」
「私は特別地球防衛組織『HOLY』の隊長美浜ちよです。
あなた達に敵意がないと言うのなら、その姿を見せて下さい。」
「それで信じてくれるのなら、いいだろう。」
円盤から一人の宇宙人が姿を現した。

53 :ケンドロス :2003/06/03(火) 03:04 ID:???
あ〜データ飛んだ!!ちきしょう!!

続き
「か、かわいい!!」
思わず私はそう叫んだ。キャッツ星人の姿は猫を直立歩行させたものだった。
しかも(ねここねこ似)なのだ。

「なるほど、ミルビスはこの地球の引力に引かれて落ちてきたのね。そして自分で
飛び上がれないから、空を見上げてた訳ね。」
「その通りだ。」
さすが千尋。だてにデータリンクを担当してはいない。

そこに私の脳に星人が直接語りかけてきた。

(青い巨人と共にある者よ。ミルビスを運ぶのを手伝って欲しい。ミルビスは
相当重い。赤い巨人だけでは無理だろう。頼む。)
(はい!!)
私はそう返事した後、人のいない所へ走った。

その間、星人はマヤーに興味を持っていた。

「おお!!我等と同種の者が地球にもいたとは!?しかし何故言葉を喋らん。」
「あのぅ、悪いけど地球の猫は喋りませんよ。」
星人の問い掛けに黒沢先生はそう答えた。

「っていうかさ、あんた達はどうして喋れる訳?」
「我々は元々いた人間によって進化した。しかし、その人間達は我々を進化
させた後、どこかへと行ってしまったのだ。」

この間に私はシャインリングでウルトラマンレイに変身した。

「レイ!!」

「あっ、ウルトラマンレイだ!」
「すげぇ、初めて見るよ!!俺」
二人のウルトラマンの出現に観客達は興奮の色を隠せなかった。

(弥生ちゃん。)
(ミルビスを一緒に宇宙に運ぶぞ)
(分かったで)
ジャスティスとレイはミルビスを担ぎ上げる。

「シュワッ!!」
そのまま宇宙へ飛んでいくジャスティスとレイ。

54 :ケンドロス :2003/06/03(火) 03:07 ID:???
「我々も失礼するとしよう。迷惑をかけて本当にすまなかった。」
「迷惑だなんて。私はあなた方のような宇宙人と知り合えてよかったです。」
「そう言ってくれると嬉しい。我々も地球人と会えて良かった。さらばだ。」
ちよの言葉に笑顔で答え、キャッツ星人は円盤に乗り込み地球を後にする。

「すっげぇイベントだぜ!!今回は忘れられない年になるぜー!何せ怪獣、
宇宙人、ウルトラマン達が同時にこの会場に集まったんだからな、そうだろお前等〜〜!!」
ハイテンションで叫ぶ司会の男に、観客もそれに答え場内は再び大熱狂となった。

宇宙に出たジャスティスとレイはそこでミルビスを離した。
あとはキャッツ星人が運んでいくだろう。

(ありがとう。本当に何から何まで感謝している。それと君の子守唄、最高だった)
最後にそういい残して、キャッツ星人とミルビスは戻っていった。
私達も地球に帰還した。最後の言葉が私にとって最大級に嬉しい言葉だったのは言うまでもない。

「優勝は満場一致で、LITTLE FLOWERだ〜〜〜!!子守唄で怪獣を寝かすなんて
他の誰にも出来ねぇし、何より演奏にも魂を感じたからな〜!!」
戻ってくると、私達は優勝した事になっている。正直、そこまでいくとは
思ってなかっただけに嬉しかった。

「つー訳で豪華な海外旅行をくれてやらぁ〜〜〜!!」
「やりましたね、皆さん。私達優勝したんですよ!!」
「ちよちゃん、だから言ったろ、あたし等なら優勝間違いないって!!」
「すげぇ、これはもう言葉じゃ言い表せねぇ!!とにかくすっげぇ!」
「優勝や〜」
「勝てたな、私達。」
「榊さん、やりましたね。榊さ〜ん。」
「あ、ああ。」
かおりんが私に嬉しそうに抱きついてくる。私はその勢いに押されてしまった。

「だから言ったでしょ、私の目に狂いはないって。」
自信満々に千尋は言った。

そこにゆかり先生や黒沢先生もやってきた。

「おめでとう。すごいじゃないあなた達!!」
黒沢先生がお祝いの言葉を投げ掛けてくれた。

「はん、勝って当然だっつーの!!それよりこれで今年の旅行する所は
決まったな。」
「え?」
その言葉を聞いてちよちゃんがガタガタ震えだした。あの悪夢を思い出したのだろう。
後ろでは暦と智の同級生だった平井百合子と歩の妹翔がそれぞれ祝いの言葉をかけていた。

「おめでとう。必ずやってくれると思っていてよ。それでこそわたくしが愛した方々ですもの。」
「わーくんな!!またほお擦りする気だな〜」
「私もそれは遠慮するぞ!」
「逃がさなくてよ。」
何故か追いかけっこになっていた。

「お姉ちゃんすごいで〜優勝やもんな〜。」
「そうやろ。あたしはすごいで〜青函トンネルくらい〜」

そして、私の肩にはマヤーが乗ってきた。それを私は優しく撫でた。
キャッツ星人も可愛かったけど、今の私はマヤーの方が大事だ。

こうして『ROCK THE FUTURE』は幕を閉じたのだった。

第9話 終わり   第10話に続く。

SPECIAL THANKS TO RnRNDさん

55 :ケンドロス :2003/06/03(火) 03:11 ID:???
次回予告
海外旅行で引き当てた島でリゾート気分を満喫する一行。
しかし、そこに新たな影が・・・
果たしてゆかり車の犠牲になるのは誰か?そして一行を待ち受ける物とは?

次回 ウルトラマンジャスティス 第10話 『天と地の怒り(仮)』

登場怪獣  津波怪獣 シーモンス
      竜巻怪獣 シーゴラス
      汚染怪獣 レイロンス   登場

56 :ケンドロス :2003/06/03(火) 03:13 ID:???
やっと終わった。けど今回正直・・・・

>>46
お疲れさまです。翔ちゃんがまた見れて嬉しいです。姉妹喧嘩してしまった
二人。その後どうなるか楽しみです。

57 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/04(水) 07:36 ID:???
「Zapping SS・結末の行方」

 このSSは同時進行で、智とよみの二人を別々の視点で描くザッピングSSです。

 「SS書きの控え室2」
http://www.patipati.com/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=1052922310&ls=50)ではよみの視点、

「SSを発表するスレッド」
http://www.patipati.com/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=1046110813&ls=50)では智の視点でお送りします。

58 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/04(水) 07:38 ID:???
「Zapping SS・結末の行方‐sight of Yomi‐」 第1章

 「あれ〜、よみちゃん。そんな一生懸命に、何の本を読んでどるん?」
 休み時間、大阪は何やら懸命に本を読んでいるよみのそばに近付いた。しかし、よみは大阪の呼びかけに気付かなかった。
 「よみちゃ〜ん、無視するとはひどいやないかー」
 それから一呼吸あって、よみはようやく自分に呼びかけた大阪の存在に気付いた。
 「ああ、ごめんごめん。実は、この前ちよちゃんから面白い推理小説を教えてもらって、
今それにハマっているんだ」
 よみはそういって、その本の表紙を大阪に見せた。表紙には『東万ヶ岳の殺人』という
タイトルが書かれている。

 「へぇ、推理小説か。よみちゃんは探偵やな」
 「いや、別に探偵ものじゃないんだけどな…」
 よみはそれだけ言うと、再び読んでいた推理小説に目をやった。
 「大体どの辺りまで読んでいるん?」
 「うーん、真ん中辺りかな。これから物語が佳境に入って来て面白いところなんだ。も
う、犯人が誰なのかドキドキものだよ」
 「おっ、よみー。お前、その推理小説を読んでいるのか?」
 突然、智がよみの元へやってきた。

 うわ、邪魔者が入ってきたな。こいつは読書をするときに一番そばにいてほしくない奴
なんだよな。あまりそばにいて欲しくないな。前にも、隣でわめかれて邪魔された覚えが
あるし…。
 今はお前に邪魔されたくないんだ。とにかく無視するしかない。
 「今、すごくいいところなんだ。悪いけど今はこの本を読ませてくれ」
 よみは智に視線を向けずに、それだけ言った。
 「別にいいけどよ、その小説私ももう読んだんだー」
 「なっ、なんだって!」
 その言葉はよみに頭を殴られたかのような激しい衝撃を与えた。
 何で、こいつがこの小説を読んでいるんだ?しかも、最後まで読んだって?
 よみは本に向けていた目を、ゆっくりと智に向けた。

59 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/04(水) 07:39 ID:???
 「だって、その小説、ちよちゃんに教えてもらったんだろ?私もちよちゃんに教えても
らって、その本読んだんだよ。いやー、面白かったなー」
 「おい!絶対に犯人が誰だか言うなよ!」
 やめてくれ。佳境に入ってこれからの展開が気になっている中で、ネタバレされては興
ざめだ。ここまで読んだ意味がなくなってしまう。いや、それどころかこの本の価値さえ
なくなってしまう。
 それはよみにとって何よりも望んでいることだった。だから、最悪の事態、智が犯人の
名前を口にすることだけは何としてでも避けたかった。
 しかし、智がそんな願いとすんなりと受け入れてくれる人間ではないことも、よみは十
分に理解していた。

 「うーん、どうしよっかなー。言うななんて言われると、余計に言いたくなちゃうんだ
よなー。犯人はー…」
 心配していることがすぐに起こってしまった。早く止めないと…。
 「ダブルチョーップ!!!」
 よみは咄嗟に智の頭部めがけて、渾身のチョップを繰り出した。
 「絶対に言うな!言ったらただじゃ済まさないぞ!」
 「痛たたた…。もう、ただじゃ済んでないだろう」
 智はチョップを受けた頭をなでながら言った。しかし、これぐらいの警告をしておかな
いと、本当に言いかねない。これは正当防衛だ。
 最悪の事態だけは絶対に防いでやる。
 よみはそう思いながら、ため息をついた。
(続く)

60 :名無しさんちゃうねん :2003/06/04(水) 17:28 ID:???
>>58-59
もう1つの智の視点バージョンも見させていただきました。
それぞれ違った角度から見られて楽しいです。自分も見習いたいです。

61 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/05(木) 00:04 ID:???
>>49-56 「Little Flower」かっこいいなぁ。
    榊さんの神秘の歌声を堪能してみたいものだ。

62 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/07(土) 00:51 ID:???
「Zapping SS・結末の行方‐sight of Yomi‐」 第2章

 次の休み時間から、よみは教室以外の場所で推理小説を読むことにした。
 図書室は昼休みしか使えないし、トイレの個室で読むしかないか…。
 よみは智に見つからないようにトイレに忍び込み、一番奥の個室に入った。
 「早いところ読んでしまわないとな。智に犯人の名前を言われる前に」
 よみはトイレの便座に座り、必死に推理小説の続きを読んだ。

 トイレの中は意外と読むのにはかどった。狭いところだと集中力が増すと聞いたことが
あるが、案外本当かもしれない。よみは心の中でそんなことを思った。
 それから少しして、トイレをノックする音が聞こえた。
 よみは本来のトイレの使い方をする人には申し訳ないと思いつつも、ノックし返して、
別の個室を使ってもらうように促した。
 しかし、個室の外のノック音は再びよみに向けられた。個室全部が塞がることなどない
はずのトイレだというのに、何故ノックしてくるんだ。
 まさか・・・。いや、そんなはずはない。仮にそうだとしても、ここはシラを切るしかない。
 よみはそう思い、再びノックし返した。その次の瞬間だった。

 「よみ〜、そんなところに隠れても無駄だ〜。出てこ〜い」
という、智の声が聞こえた。
 よみはその声を聞いた瞬間、その声が悪魔の囁きのように思えた。
 「なっ、何でここがわかったんだ?」
 よみは血の気が引く思いがした。ここなら大丈夫だと思ったのに、すぐに見つかってしまうだなんて…。

63 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/07(土) 00:52 ID:???
 「お前がトイレに逃げ込んで、本を読むなんてお見通しだ〜。お前は本当にワンパター
ンだなぁ。中学のときにも同じ事をしたのを忘れたのか?」
 個室のドアの外で智がそう言ったとき、よみは中学制の時にも同じ事をしたのを思い出
した。読書の邪魔をする智から逃げるためという理由も一緒だった。
 しまった、前にも同じことをしたのを忘れていた…。私としたことが…。
 「くっ…」
 よみは悔しさのあまり、唇を噛み締めた。
 しかし、ドアの外で智が悪魔のような宣告を繰り出し始めた。

 「出てこないのか〜。3秒以内に出ないと犯人の名前を言うぞ。さーん」
 ヤバイ…。トイレにいることがバレバレな上に、犯人の名前を言われたらたまったもんじゃない。
 「にー」
 そう言っているうちに、智はカウントダウンをしている。とにかくここから出ないと。

 「いー…」
 よみは思い切りドアを開けた。その瞬間、ゴンという音が響いた。
 ドアを開けた向こう側で智が頭を押さえてうずくまっている。
 「痛ってー…」
 どうやら、ドアの近くにいたために、よみがドアを開けたときに額をぶつけたらしい。
 「バカタレが!天罰だ!」
 よみはそう言って智から逃げるようにトイレから出て行った。
 うーん、トイレもダメか。とにかく、別のところを見つけて、智から逃げて続きを読め
るところを探さないとな…。
 よみはそう思いながら、また大きくため息をついた。
(続く)

64 :ケンドロス :2003/06/08(日) 21:17 ID:???
>>62-63
お疲れさま〜
よみの間抜けっぷりがいいですな。さて俺もジャスティス続編書こうっと。

65 :ケンドロス :2003/06/08(日) 21:20 ID:???
ウルトラマンジャスティス 第10話 「天と地の怒り」
津波怪獣シーモンス、竜巻怪獣シーゴラス、深海怪獣レイロンス 登場

前回のバンドコンテスト『ROCK THE FUTURE』で優勝したメンバーは海外にリゾートの旅に
出る事になった。で、ゆかりやみなもの話が出た時に井上舞女医から意外な事実が・・・

「へー谷崎先輩と黒沢先輩ってあなた達の担任だったのね。」
「え?井上さんお二人を知ってるんですか?」とちよ。

「ええ。あの人達は私の高校の時の先輩よ。でも話聞くと相変わらずみたいね、二人共。」
「はぁ。」
そんな意外な事実を聞かされた翌日、メンバーはまだちよの家に集合していた。

「久し振りですね〜こうして『HOLY』の隊員としてじゃなく、普通に旅行とか行くのって。」
「そうやな〜」
「今回は千尋が初参加ね。」
かおりんが千尋の方を見て言った。

「ああ、やっと呼ばれたわ。思えば高校の時、一度も呼ばれなかったから、ひょっとして
私ちよちゃんに嫌われてるのかな?と思ってたから。」
「わ、悪気はなかったんですじょ。」
千尋とちよが話しこんでいるいる間にかおりんは前回同様榊の所に移動していた。
その榊の手にはマヤーが気持ちよさそうに寝ていた。

「良かった。マヤーと一緒に行く事が出来て。」
榊も何処となく嬉しそうだ。

「ええー、しかし今回も一人増えた為、2台の車に分けなければなりません。」
みなもがそう言った瞬間、ちよの全身から血の気が引いた。

「そーゆう訳でよみ、神楽、千尋!!お前等あたしの車に乗りやがれ〜〜!!」
ゆかりが三人に向かって叫ぶ。

「ええ〜!!」
千尋以外の二人が驚きの声をあげる。それを聞いてほっと胸を撫で下ろす皆さん。

「ちょ、ちょっと待て納得いかねぇ!!榊、前みたいに乗ってくれよ!!」
「ダメ。」
神楽の申し出をあっさり断る榊は後ろを向いたままそう言った。

「とも〜お前平気なんだろ?変わってくれよ?」
「ん〜。あたし去年乗ったからいいや。」
ともとよみはいつもと立場が逆転していた。

「そんなに怖いものなの?」
「ジェットコースターの何倍もね。」
事情を知らない千尋はかおりんに問いただしていた。

66 :ケンドロス :2003/06/08(日) 21:23 ID:???
結局、今まで乗っていない面子がゆかり車に乗る事になり、残りの人間はみなも車に乗ることとなる。
ちなみにゆかり車は千尋が前、よみ・神楽が後部座席で、みなも車はともが前、後ろに榊、それにべったり
くっつくかおりん、ちよ、歩となっている。
そして空港目指して車は走り出した。さすがのちよもダイレクトで島に行ける飛行機は持っていなかった。

「そーれ行くぞ!!」
いきなりアクセル全開で道を疾走するゆかり車。

「わー!!」
暦と神楽は悲鳴をあげているが、千尋は笑っていた。

「一年前はあの車に乗ってたの私達なのよね。」
かおりんは前の車に乗っている三人を哀れむ目で見ていた。榊はその横で
マヤーとじゃれていた。
歩とちよは外の景色を眺めている。

で、空港に着いた時には既にぐったりしている神楽と暦の姿があった。
千尋はまったく平気だった。

「何でだろう?いつも乗ってる戦闘機の方がよっぽど安全に思えるのは?」
「よみもか。私もそう思ったよ。」
「二人共、だらしないな〜。あのくらいで音をあげるなんて。」
「千尋ちゃんは平気なん?」
「平気だけど・・・」
「な〜あれスピード出てていいじゃんか。」
「信号思い切り無視しといてどこがよ!?」
「二人共、普通じゃない。」
榊がボソッと呟いた。

そして空港から一気にそのリゾート島へと飛んだのだった。
そのリゾート島は東南アジアのある地域にある島で、地殻変動の影響で出来た島であった。
無人島という訳ではないが、ほとんど人は住んでいない。
宿泊客用のペンションに荷物を置いた後、一行は海に繰り出した。
ちなみに完全貸切になっている為、他の旅行者はいなかった。

「よーし、去年は受験のせいであんまり遊べなかったから、思い切り遊ぶぞーー!!」
「おお!!何てったって海外なんだからな〜!!遊ばなきゃ損だぜ!!」
我先にとばかりに智と神楽は海に飛び込んだ。

「あー待ってや。」
「待て、歩!」
浮き輪を持って海に入ろうとする歩を榊が制した。

「何や、弥生ちゃん?」
「ジャスティランサーはどうしたんだ?あれがないとジャスティスに変身出来ないんだろ?」
「ジャスティランサー?あれならバッグの中に入れといたで〜持ち歩けへんからな〜」
「でもそしたら、怪獣が出た時・・・・」
「大丈夫やて。心配しすぎや。」
そう言って歩は海に入っていった。榊の指にはレイに変身する「シャインリング」が
はめ込まれている。

「榊さ〜ん、何してるんですか?一緒に泳ぎましょう〜よ〜」
「榊さん、私もお供します!!」
ちよとかおりんに連れられ榊も海の中へ・・・マヤーは水が嫌なのか入ろうとしない。

「よみ、私と勝負しない?負けた方がジュースおごるの。」
「いいのか千尋。そんな事言って後で泣くのはお前だぞ。」
暦と千尋はジュースを賭けて、どちらが長く泳げるか競争するところだった。

「面白ぇ!!あたしもその勝負に混ぜろ――――!!」
そこにゆかりが乱入してきた。

「あんまりハメはずしすぎないでね〜〜〜!!」
みなもが砂浜から皆に向かって言った。その横にマヤーがくっついていた。
どうやら、バンドコンテストの時に預かってもらってたのをきっかけみなもの
事も気にいったらしい。

そんなこんなでちよ以外のメンバーにとって初めての海外旅行は充実したものだった。
しかし、このメンバーが揃って平穏無事に終わる訳がなかった。
こちらに来て一日経ち、夕焼けに異変が起こった。

67 :ケンドロス :2003/06/08(日) 21:25 ID:???
深海から巨大な海洋生物が現れた。否、それは怪獣と言っていいだろう。
それはこの島に向かって前進を始めた。

「うわぁ。海外に来てまで怪獣かよ。」
智は心底うんざりしたように言う。皆、沖に引き上げていたが
歩だけ逃げ遅れた。

「ちょっと待ってや〜みんな〜」
「大阪!!何やってんだ!?早く来い!!」
神楽が怒鳴る。

「大阪さん、急いでください〜!!
「大阪!!急がないと怪獣にやられるぞ!!」
ちよと暦もそれに続いた。

「なあ、にゃも。もしあいつが死んでももう生徒じゃないし、あたし等の
責任じゃないよね?」
「こんな時に何バカな事言ってんのよ!!」
「私が助けに行く!!」
榊が海に潜り込む。

「あ、榊さん!!」
怪獣は全体的にカエルのような顔、皮膚をしていた。二足歩行で両手は
ヒトデのようになっている。
ツラが何となくムカツクと智は思っていた。

「あ、防衛隊だ。」
千尋が指差すと確かに、この国の物と思われる戦闘機が3機現れ、怪獣に攻撃を開始した。
しかし、怪獣の触手や水しぶきに簡単に撃墜されてしまう。

「あーじれったいなぁ。あんなんじゃ無理だって!!」
神楽がいらだたしげに声をあげる。その間に、榊は歩の救出に成功していた。

「大阪さん、榊さん!大丈夫ですか!?」
「死ぬかと思たで。」
「ああ、無事だ。」
だが、そこにこの島からもう一体怪獣が姿を現した。
四足で角を生やした怪獣だ。

68 :ケンドロス :2003/06/08(日) 21:27 ID:???
「きゅあああああああ。」
泣き声からしてメスのようだ。その怪獣はちよ達には目もくれず、
もう一体の怪獣の方へと向かっていった。
千尋が二体の怪獣のデータを取っていた。
そこには一体は「レイロンス(RAYLONS)」、もう一体は「シーモンス(SEAMONS)」
と表記されていた。

「レイロンスは大体分かったけど、シーモンスはまだよく分からないわ。」
「シーモンスは私達の味方なのか?」
暦がシーモンスを見ながら言った。

シーモンスは海に入り、レイロンスと闘いを始めた。
まるで自分の縄張りを荒らす侵入者を追い返すかのように・・・・
シーモンスの突進攻撃にレイロンスはよろめく。レイロンスは負けじと
シーモンスを蹴飛ばす。

倒れるシーモンスだが、宙に浮かびながらレイロンスにのしかかる。
その体重を支えきれずレイロンスは倒れこんだ。
上に乗り攻撃しようとするシーモンスだが、レイロンスの手により弾かれる。レイロンスは後ろの尻尾でシーモンスを攻撃する。シーモンスも対抗して尻尾で攻撃しようとするが、いかんせんリーチに差がありすぎる。
頭のあたりを攻撃され、よろめき海上に倒れるシーモンス。

「あんた達助けなくていいの?あのままじゃシーモンスって奴やられちゃうよ。」
「そう言われても武器持ってねぇんだからしょうがねぇじゃん!」
ゆかりの言葉に智が反論する。
確かに海外のこんな島にまで怪獣が出現するなど誰も予想できなかった。
いくら『HOLY』といえど武器を持ち込めば、税関で止められてしまう。

「いいや、その必要はない。もうすぐシーゴラスが姿を現す。」
いつの間にかペンションの管理人がここに来ていた。

「シーゴラス?」
みなもが不思議そうにその言葉を呟く。

「きゅあああああああ。」
シーモンスが雄叫びをあげた。すると、シーモンスの角が光り、
空に暗雲が立ち込めた。

「ぶわああああああ。」
そして、海からもう一体の怪獣が姿を現した。二足怪獣でシーモンス同様角を生やしていた。
その声は低く、オスである事がはっきり分かった。
千尋がもう一度、持ってきたノートパソコンでデータを調べると「シーゴラス(SEAGORATH)」
と表記された。

「どうやら、あれがシーゴラスみたい。」
「そうだ。そしてあの二匹が怒る時、海と天と地が怒り、身の毛のよだつ
恐ろしい事が起きる。」
管理人は早くも震えていた。

69 :ケンドロス :2003/06/08(日) 21:30 ID:???
「海と天と地の怒り?」
ちよにはその言葉の意味することが分からなかった。

そのシーゴラスはレイロンスに攻撃されているシーモンスを助けに入り、レイロンスを投げ飛ばした。
そして、シーモンスを起き上がらせた。

シーゴラスの角もシーモンス同様、光り始めた。まるで二匹が共鳴しているかのように・・・・
空は雨雲となり、稲妻が発生する。雷が苦手なちよや榊は反射的に歩にしがみついた。

「空が光った。こわぁ。」
口ではそう言ってるが、歩は目の前の出来事からは目をそらさない。

身の毛のよだつ恐ろしい事はすぐに起こった。海は荒れ狂い、大きな波が
レイロンス目掛けて迫っている。津波である。それも半端ではない大きさ
の大津波だ。津波はあっという間にレイロンスを飲み込んだ。
海の怒りとは津波の事だったのである。

だが、それだけではない。今度は竜巻が発生したのである。
もちろん普通のとは比べ物にならない大竜巻である。
その竜巻にレイロンスが飲み込まれた時、レイロンスの体はバラバラに四散した。

天と地の怒りとは竜巻の事だったのだ。

「す、すげぇ・・・」
神楽がやっとそれだけ言葉を搾り出す。他のメンバーも圧倒されてしまい、
次の言葉が出ない。
いつの間にか雨雲も消え、海も静かになり、竜巻も消えた。
レイロンスの始末を終えたシーモンスとシーゴラスは今度はこちらに向きを変えた。


「お、おい!こっちに来るぞ。今の私達にあいつ等が倒せるのか?」
暦がやや震え気味に言った。無理もない。あれだけの出来事を見せ付けられたのだから・・・

「大丈夫だ。もう二匹は大人しくなる。」
管理人の言う通り、二匹は島に上陸しても特に何もせずにちよ達がいる所から
離れていった。
いつの間にか夜になっていた。

「管理人さん、教えてください。あの二匹は何者なんですか?」
雷が鳴らなくなった事で冷静さを取り戻したちよが尋ねる。

「シーモンスとシーゴラスは夫婦怪獣なんだ。この島にもう
ずっと住み続けている。普段は大人しいがこの島を侵略しよう
とするものに対しては容赦しない。さっき君達がレイロンスと
呼んでいた怪獣に闘いを挑んだのもそれが理由だ。」
「そうみたいだね。レイロンスは海洋実験の影響で出来た突然変異体。
そして海や島を汚す。」
千尋がレイロンスの詳細なデータを読み上げた。
いずれにしろ、こうして2日目の夜が過ぎてゆく。

70 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/08(日) 23:18 ID:???
>>65-69 乙!南の島いいなぁ。ってことで、続編です。

「Zapping SS・結末の行方‐sight of Yomi‐」 第3章

 4時間目の授業が終わった後、よみは昼食の弁当もそそくさに済ませると、智がまだち
よちゃんや大阪と一緒に弁当を食べているのを見計らって、教室を出た。
 「よみー、どこへ行くんだ?」
と、呼びかける智の声が教室を出るときに聞こえたが、よみは智の言葉を無視した。当然
である、智から逃げるために教室から出るのである。追いかける本人に言う必要などない。

 よみは廊下を歩きながら、智が追いかけてきていないのを確認して考え事を始めた。
 さて、どこで続きを読もうかな…。
 この時、よみの頭の中に3つの選択肢がよぎった。それは以下の3つであった。
 1.図書室で読む
 2.屋上で読む
 3.再度トイレで読む
 うーん、1は正攻法だろうけど、智にすぐにかぎつけられそうだな。3はさすがに智も
考えないだろうけど、本来の目的で来られて、バレる可能性もあるしな…。ここは2かな。
 よみはそう思い、屋上への階段を駆け上がった。

 屋上は人もまばらで、自分の読書スペースは十分確保できた。天気も青空が広がってお
り、全く問題なしだ。
 よみは植え込みのところに腰かけ、続きを読むことにした。
 ふぅ、これで静かに読書ができるな…。
 外は初夏の陽気と心地よい風が吹き付けていたため、読書をするには最適の環境だった。
そのせいか、読むペースもかなりはかどっていた。

71 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/08(日) 23:18 ID:???
 こうして、よみが本の世界に浸り始めていたその時だった。突然、自分を現実世界に戻
す悪魔のような声が聞こえた。
 「よみ〜、こんな所にいたのか〜」
 智の声だ。よみが顔を上げると、智が必要以上のアップで自分の顔を見つめている。
 「なっ、何でお前がここに!」
 よみは、驚きのあまり手にしていた本を落とした。しかし、よみはそのことさえ気付か
ぬまま、あんぐりと口を開けて智の顔を見つめていた。智は勝ち誇ったかのような笑みを
浮かべている。

 「だめですよ〜、よみさんの邪魔をしちゃー」
 「そうやでー、よみちゃんは探偵なんやから」
 智の後ろからちよちゃんと大阪も姿を現わした。しかし、智は二人の言葉を聞き流すような態度で、よみの目をじっと見ていた。

 「屋上で涼もうと思ってきたのに、まさかよみと会うとわな。やっぱり、私たちって運
命の赤い糸で結ばれているんだよ」
 「そんな訳ないだろ!」
 よみは思わず大声を出した。屋上にいる人が自分に視線を向けているのも気付かずに。
 どうせ、私を追いかけてきたんだろ。あぁ、これなら3でよかったな…。
 よみは本を床に落としたことに気付き、それを拾い上げた後、自分の選択ミスを後悔した。

 「あっ、でも屋上で涼もうって言うのは本当ですよ」
 ちよちゃんが智をフォローするように言った。ただ、よみにとっては智と出くわした段
階で、すでにここに来た理由などどうでもよかった。会いたくない人間と会ってしまった
以上は。大阪が更に話を続けた。
 「そうやで。私とちよちゃんが屋上へ行こうとしたら、ちょうど図書室から出てきた智
ちゃんと出くわしてな。一緒に屋上に行こうって呼びかけたんよ」
 大阪、何でお前はそういう場面では気が効くんだ…。
 よみは大阪に対して、少し腹立たしさを感じた。しかし、大阪本人はそんなことなど全
く気付いている様子はなかった。
 でも、1はやっぱり失敗だったか…。やっぱり3だったか。

72 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/08(日) 23:19 ID:???
 「トイレにも図書室にもいなかったから、もう諦めてたんだけどな。まさか、こんな所
にいるとはねぇ。よみくーん」
 「なっ…」
 よみは思わず、口からその言葉だけを漏らした。3もダメなのか!結局、どの選択肢を
選んでも、こうなったのかぁ?
 よみは空を見上げ、自分の選択肢ミス以前に、智から逃げられない運命みたいなものを
感じ、頭を抱えた。
 しかも、それはさっきともが言ったような運命の赤い糸というロマンティックなもので
はなく、囚人の足枷に使うような重苦しい色をした黒い鎖みたいに思えた。

 「じゃあ、ここでであった記念だ。よみが読んでいる本の犯人を教えてあげよう。」
 しかし、よみを落ち込む余裕すら、智は与えてくれなかった。満面の笑みでこっちを見ているその表情は、言いたくてたまらないといった感じだ。
 「だめですよー、そんなこと言っちゃー」
 ちよちゃんが智をたしなめたが、そんなことを聞き入れる智ではないことをよみは十分分かっていた。だったら、こうするしかない。
 「犯人は…」
 「アッパーカーッット!」
 よみはそう言って、智のあごめがけてアッパーを繰り出した。ゴスッと言う音とともに
智はその場に仰向けになって倒れた。

 「ひぇ〜」
 地面に横たわった智は目がうつろだった。
 「油断もすきもない奴め!いい加減にしろ!」
 よみはそう言って、智から逃げるように校舎から出て行った。

 屋上から3階への踊り場でよみはまだ怒り冷めやらぬ状態のまま、階段を降りていた。
 「ったく、智のやつめ。とことん私の邪魔をする気か!でも、屋上もダメなら、もう隠
れて読むところがないな。とにかく学校では何とか智から逃げ切って、今日中に読んでし
まおう。じゃないと、何されるか分かったもんじゃない」
 よみはそう呟きながら、教室へと戻っていった。
(続く)

73 :なも ◆K6TB303w :2003/06/11(水) 22:26 ID:j7srXhUM
ザッピングが大阪板や2chのあずまんが大王スレで流行っているようですけど,
同じシチュエーションを別のSS書きが書く…というのはどうでしょうかな?

プロットやあらすじだけだけ共通させて,
他の部分は書き手によって自由にしていい,
という具合に…。

74 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/11(水) 23:19 ID:???
>>73 それは面白そうだと思われ。検討する余地ありそうだね。

とりあえず、続編。
「Zapping SS・結末の行方‐sight of Yomi‐」 第4章

 放課後、よみはすぐさま学校を出た。ある決意を胸に秘めて。
 こうなったらともに邪魔されないところで読もう、と。
 うーん、だからと言って、家で読んでたら智が邪魔しに来るのは目に見えているしなぁ。
どこにしようかな。
 よみは帰り道をうろきょろしながら、落ち着いて本を読める場所を探した。すると、少
し歩いたところで、区立の図書館があるのを見つけた。
 おっ、ここなら大丈夫かもしれない。智も普段はこんなところには来ないだろうしな。
 「よし、ここで読むとするか」
 よみはそう呟いて、区立の図書館へと入っていった。

 よみは図書館に入ると、すぐさま閲覧室へと向かった。閲覧室の中は大学生風の人が勉
強していたり、年配の人が本を読んでいたが、それほど混んでいる様子はなく、よみが本
を読むスペースは十分に確保できた。
 また、静かな上に室内は空調が効いていて涼しかったので、読書をするには最適の環境
であった。
 よし、ここなら誰にもって智だけか、邪魔されずに読めるな。
 よみはさっそく奥の一角に座り、本を読み始めた。

 誰にも邪魔されずに読書に集中できる環境のおかげで、本を読むペースもぐんぐんと上
がっていった。更に、物語がクライマックスに近付いていることで本に対するハマり具合
もピークに達しており、よみは時間が経つのも忘れ、ずっと本の世界に引き込まれていた。

 こうして、よみは最後まで本を読むことができ、興奮が冷めやらない様子で、図書館を後にした。気持ちは読破した喜びで満ち溢れていた。
 「ふぅ、面白かった。あー、最後にあんな大どんでん返しがあったなんてなぁ。これは
最後まで犯人がわからなかったな。いやー、智に犯人を言われた日には、この話が台無し
になるところだったよ」
 よみは少し笑みを浮かべて歩いていた。
 ああ、本を読破した喜び、そして物語に感動したことで湧き上がる熱い気持ちってこん
な感じなのかなぁ。
 こうして、よみは軽い足取りでウキウキしながら、家路へと向かった。

75 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/11(水) 23:20 ID:???
 「ただいまー」
 よみが家の玄関のドアを開け、居間に入ると台所から母が現れた。
 「おかえり。暦、さっき滝野さんが来たわよ。何か宿題で分からないところがあるって」
 「智が?」
 ははーん、私がもう家に帰っているもんだと思って、押しかけたなぁ。残念だったな。
 よみは本を読破したときとは別の意味合いで少し嬉しく思い、ニヤっと笑みを浮かべた。
 「また後で来るって言ってたわよ」
 「ふーん、分かった」
 よみがそれだけ言うと、母は再び台所へ夕食の準備をするために戻っていった。よみも
自分の部屋に向かおうとした。その途中、よみはあることを思いついた。
 「ん?あいつはまだ、私が全部読み終えたことを知らないんだよな。よし、ちょっとか
らかってやるか」
 よみは今日智にされたことへの復讐ができると思い、不敵な笑みを浮かべた。
 ふふふ、待っていろ、智め。今日の分の仕返しをしてやる。
 よみは心の中でそう呟いた。
(続く)

76 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/13(金) 23:34 ID:???
「Zapping SS・結末の行方‐sight of Yomi‐」 最終章(前編)

智の視点は「SSを発表するスレッド」
http://www.patipati.com/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=1046110813&ls=50
で、お送りしています。

 夜になり、よみが自分の部屋で今日の宿題をしていると、突然窓をノックする音が聞こえた。
 智め、来やがったな。ふっ、今に見てろ。
 よみがそう思いながらカーテンを開けると、そこにはニヤニヤと笑顔を浮かべている智
の姿が見えた。よみは窓のロックを外すと、智はひょいと飛び上がり、窓からよみの部屋
へと入った。
 「よみー、宿題教えてくれー」
 智は一点の曇りもない笑顔で言った。

 ったく、教えてくれじゃなくて、見せてくれの間違いじゃないのか?それと、お前がこ
こへ来た目的は他にもあんだろ?まぁ、もう本は読み終えたから、今更犯人の名前を言わ
れても別に問題ないがな。むしろ、もう読み終えたことを知ったときの智のがっかりした
顔を見てみたいから、来てくれて嬉しいぐらいだけどな。
 よみはそんな内に秘めた目論見を智に悟られないように、なるべくよそよそしい態度で
接することにした。よみはそう思いながら、自分の勉強机に座った。

 「今、宿題解いているところだから、もう少し待っててくれ」
 「んじゃ、そうする。お前、あの雑誌の今週号買ったか?」
 「あぁ。その辺にあるだろう」
 よみがそう言うと、智はよみが勉強している机の後ろにあるベッドに横たわり、よみが
先日買って来たファッション雑誌を読み始めた。
 その間、よみは宿題を解きながら、自分の好きなラジオ番組を聴いていた。

77 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/13(金) 23:36 ID:???
 しばらくは二人の間に会話がなく、ラジオのDJの軽快なトークが部屋中に響いていた。
少しして、ラジオから最近のヒット曲がかかったとき、智が口を開いた。
 「なぁ、今日の放課後どこに行ってたんだ?すぐいなくなったろ」
 「ん?本屋に行ってた。欲しい参考書があってな」
 よみは勉強机に向かったまま、ぶっきらぼうに答えた。こうして、智の質問を邪魔くさ
く思わせるのがよみの狙いだった。
 自分がこういう態度を取れば取るほど、あいつは何かと話しかけてくるはずだ。そうす
ればこっちのものだ。よみは、智に気付かれないように小さく笑みを浮かべた。
 自分が泳がされているとも気付かずに、本当にバカな奴だと思いながら。

 「何だ、本屋だったのか?あー、それは盲点だったなぁ」
 智は心から悔しそうな声を出した。
 まぁ、本屋ってのも嘘だけどな。図書館なんていい場所をすぐに白状するのは、今後ま
た同じパターンがあったときに、使える逃げ場所がなくなるから言えないもんな。

 「ところで、話は変わるけどさ。あの本どこまで読んだ?」
 智がベッドから体を起こしたらしく、ギィとベッドがきしんだ音が聞こえた。
 「まだだ」
 よみは智の顔を振り返ることなく、それだけ言った。
 本当はもう読んだんだけどな。すぐに言ったら面白くないもんな。もう少し黙っていよう。
 「まだ読んでないのか」
 智の弾けるような声が聞こえた。いかにも嬉しそうな様子だ。
 ふっ、まだ私が読み終えてないことがそんなに嬉しいか。でも、お前のその嬉しそうな
気持ちもあとわずかで終わりだけどな。
 よみは自分の顔が智から見えないことをいい事に笑みを隠せなかった。本当は声を出し
て笑いたいくらいだが、そうするとすべてが台無しになるので何とか懸命にこらえていた。

78 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/13(金) 23:37 ID:???
 「そうか。じゃあ、宿題を教えてくれるお礼に犯人の名前を教えてあげよう」
 どういう理屈だ。とよみは突っ込みそうになったが、すんでのところでその言葉を飲み
込んだ。笑いをこらえている今の状況ではうまく突っ込める自信がないからだ。
 やっぱり、なるべく無関心を装っている方がいいかな。よみは必死に笑いをこらえなが
らそう決心した。

 「あれ?何だ、止めないのか。言ってもいいのかぁ?言っちゃうぞ?」
 智は早く言いたくてたまらないといった感じである。一応嫌がるフリをしなければな。
よみは自分の頬を軽く叩いて、顔を引き締めた。
 「犯人は…」
 「ちょっと待て!」
 よみがそう言って睨むように智を見て立ち上がった。その瞬間、智は黙り込んでしまっ
た。再び、DJの軽快なトークが部屋中に流れた。

 「それでは、ここでおハガキを一通。ラジオネームが『涙のダイ…」
 何、『涙のダイエット少女』なのか?何で、こんなときに私のハガキが…。
 智が薄ら笑みを浮かべてこっちを見ている。前にも智がここにいるときに自分のはがき
を読まれて、バカにされたのに、また同じことが?しかも、これから智にドッキリを仕掛
けようって時に…。
 よみはラジオの方を見たまま、内心焦りを感じていた。
(後編へ続く)

79 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/14(土) 00:16 ID:???
「Zapping SS・結末の行方‐sight of Yomi‐」 最終章(後編)

 DJは今ハガキを読まれることを望まない一リスナーの心境などお構い無しに、ハガキ
を読み続けた。
 「ラジオネーム『涙のダイレクトメール』さんですね。今晩は、いつも楽しく聞いてお
ります…」
 ラジオからはその後、DJがラジオネーム『涙のダイレクトメール』がハガキにつづっ
た小話を紹介されていた。

 ふぅ、私じゃなかった…。
 よみは妙な安堵感を覚えた。今はそれよりも大事なことがある。自分のハガキはまた今
度読まれればいい。それよりも、今は智へのドッキリだ。もう、もったいぶるのはやめよ
う。早いところ決着をつけてしまおう。
 ラジオが別の話題へと映る中、よみは自分にそう言い聞かせて、智の顔を見た。

 「よみ〜、残念だったなぁ。で、残念賞って事でさっき言いそびれた犯人の名前を教え
てあげよう」
 智はよみの顔を指差して宣言した。
 「バカ、やめろ」
 よみは表面上、嫌がる素振りを見せた。しかし、本心は早く言ってしまえという気持ち
で一杯だった。
 私はもう犯人を知っているんだ。今更そんなことを言ったって、お前が残念がるだけな
んだぞ。
 よみは表情からそう思っていることを悟られないように、少しうろたえる仕草を見せた。

 しかし、智はそんなことはお構い無しといった具合だった。ただ、それはよみの計算ど
おりだった。
 智とは長い付き合いだ。こいつの性格などお見通しだ。
 「犯人は…」
 智の口から遂に犯人の名前が出るときが来た。

80 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/14(土) 00:17 ID:???
 「犯人は…」
 遂に智の口から犯人の名前が出るときが来た…はずだった。
 「犯人は…」
 智は指を突き上げて、そう言ったまま黙り込んでしまった。
 よみはうろたえているフリをやめて、智の顔をまじまじと見た。まさか、こいつ…。

 「へへへ、犯人が誰だったか忘れちゃった」
 智はペロッと舌を出して、あっけらかんと言った。
 何だって、犯人の名前を忘れただ?じゃあ、今日私が散々逃げ回っていたのは一体なん
だったんだ?意味ねぇじゃん。
 よみはあまりのバカバカしさに呆れて言葉を失ってしまった。そして、その感情は次第
に怒りへと変わっていった。
 「あれぇ、誰だったっけ?よみ、知ってるか?」
 智は何食わぬ顔でよみに訪ねてきた。

 「ダブルチョーップ!!!」
 よみは智の頭めがけて渾身のチョップを繰り出した。今日一日振り回されたことへの怒
りを最大限に込めてだ。
 「痛ったー」
 智はチョップを受けた頭部を抑えている。
 「そんなこと私に聞くな!」
 よみは怒り冷めやらぬ様子で一喝した。しかし、その一方である考えが浮かんだ。
 ん?犯人の名前を忘れたって事は、逆に私が智に同じネタでおちょくることができるっ
てことだな。よーし、今日の仕返しはまだできるぞ。
 よみは智に向かって笑みを浮かべ、次の言葉を繰り出した。

81 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/14(土) 00:17 ID:???
 「犯人の名前を教えてやろうか?本当はもう全部読んだんだ」
 「本当か?」
 よみは無抵抗に感心している智を見て、思わず可笑しくなった。こいつ、私が嘘をつい
てたことに対して全く怒っていないのか?さっき私はまだ全部読んでないって言ったんだ
ぞ。それでいいのかよ。

 「泣いて頼むんだったら、教えてやってもいいぞ。今日の宿題と一緒にな」
 よみは智を見下すように言った。ついでに鼻であしらうように嘲笑した。
 「けっ、誰がそんなこと!」
 智はよみを睨むような表情を浮かべて言った。
 「じゃあ、どうやって犯人を思い出すんだ」
 よみは更に意地悪い表情を浮かべた。

 「それは…」
 智の声が途切れた。頭の中がパニクっている証拠だ。
 さーて、どうするのかお手並み拝見だ。よみは智ににじり寄った。その瞬間だった。
 「よーし、今日のところは見逃してやろう。じゃあな!」
 智はそう言うと、一目散に窓から飛び出し自分の家へと帰っていった。
 くっ、逃げられたか…。でも、智をおちょくることはできたし、まっいいか。
 よみは智が開けっ放しにした窓を閉めると、再び宿題を解き始めた。

 あいつは本当にどうしようもないな。何で犯人の名前を忘れるんだろうか…。まっ、そ
こがあいつらしいところだけどな。
 よみはもう終わり間近の宿題を解きながら、さっきの智の慌てて部屋を飛び出していく
さまを思い出し、一人ほくそえんだ。

82 :メジロマヤー ◆lcy0TYHE :2003/06/14(土) 00:18 ID:???
 翌日、よみは寝坊した智より少し早く学校に着いた。
 「よみさん、おはようごさいますー」
 よみが自分の席につくと、ちよちゃんが挨拶した。
 「あっ、ちよちゃん。おはよう、あの本全部読んだよ。すごく面白かった」
 「そうですか。智ちゃんに邪魔されずに全部読めたんですね」
 「ん、まあね」
 よみはそう言ってちよちゃんに微笑みかけた。そのとき、智が駆け込みながら教室に入
ってきた。

 「ふぅ、間に合ったー。よみ、置いてくなんてひどいじゃないか」
 智は教室に入るなり、自分の席よりも先によみの席へと駆け寄った。
 「寝坊する奴が悪い。それより、思い出したのか?」
 「うっ、それは…」
 智はうろたえた表情を見せた。どうやらまだ思い出せていないようだ。
 「だから、頼んだら教えてやるってのに、強情なんだからな、智は」
 「うるせー、誰がお前なんかの頼りになるか!」
 智が両腕を上下にグルグル振り回しながら反論した。
 まったく、宿題はいっつも私のを見るくせに、どうしてそれはダメなんだ?それよりも、
もう読んだんなら、もう一度読み返せばいいだろう。よみはそう思い、ともに尋ねた。

 「昨日あの本読み返したんだろ?何で読んで思い出さないんだ?」
 「あの本はもう読み終えたから、ブッ○・オフに売っちゃんたんだよ。だから、もう持
っていないんだ。だから確かめることができないんだ」
 「ったく、ちゃんと読まないから思い出せないんだよ」
 よみは智を諭すように言った。これは読みが智を見下しているサインでもある。

 「なんだよー、お前が早く私に犯人の名前を言わせないからいけないんだぞー」
 この言葉に、よみは思わずカチンと来た。
 何だよ、そんな小学生みないな屁理屈は。よみはそう思うと、思わず怒りがこみ上げてきた。
 「人のせいにするな!お前ももう一度ちゃんと読め!」
 よみがそう言うと、智と読みの二人の間で小競り合いが始まった。
 「あー、また二人のけんかが始まっちゃいました〜」
 「ほんとに、二人とも元気やなぁ」
 よみと智の小競り合いを見ながら、ちよちゃんと大阪はただ唖然としていた。
(完)

83 :ケンドロス :2003/06/16(月) 01:18 ID:???
>>82
お疲れ〜それじゃ、俺も続き載せます。

84 :ケンドロス :2003/06/16(月) 01:23 ID:???
3日目の朝になると、一同はすっかりシーモンス、シーゴラスと仲良くなっていた。
調査の結果、二体は夫婦怪獣である事が判明した。
最初はおっかなびっくり近づいていた一同も、マヤーがシーモンスの頭に
乗ったのをきっかけにじゃれていた。智などシーゴラスの頭に乗っていた。

「よみも来いよ〜眺めが最高だぞ〜」
「遠慮する。怪獣の頭に乗れるのはお前と神楽ぐらいだ!!」
「そういうなよよみ、本当にいい眺めなんだからさ〜」
神楽はマヤーと一緒にシーモンスの頭の上に乗っていた。

「いいなぁ〜」
羨ましそうにそれを眺める榊。

「乗ればええやん。」
と歩が言った時、上空から戦闘機が現れここに着陸した。
しかし、その内の一機はどちらかというと輸送機に近い形態だった。
上陸した輸送機から現れたのは相田京子隊員だった。
何を積み込んだのかと思えば、HOLYが使う武器だった。
輸送機の名前は『イエローシャーク』。武装もされているが、
主な任務は輸送である。

「遅くなってすいません美浜隊長。これが皆さんの武器です。」
「あ、ありがとうございます相田隊員。でもどうしてこれを?」
「万が一あの二匹が暴れだした時の為にと。それとレイロンス
のような怪獣が現れるかもしれませんし。」
「そうですか。」
「戦闘機の方は調整中の為、用意が出来ませんでした。その代わり
ATDF東南アジア支部の方々から支援が来てます。」
相田隊員の後ろからそれと思われる制服に身を包んだ一目で軍人と
分かる人間が数人現れた。

「あなたが日本のATDF防衛『HOLY』の隊長、ミス美浜ですね。ご活躍は耳にしています。」
金髪で榊よりも背が高い軍人の男がそう言ってちよに握手を求める。

「あ、どうも。あなたは?」
「自分はATDF東南アジア防衛『FANG』の隊長のリーバイン・ガーランドです。」
リーバインと名乗った男はちよに握手を求め、ちよはそれに習い握手する。

「それでは私はこれで失礼します。健闘を祈ります。美浜隊長。」
「いつもありがとうございます。相田隊員。」
『イエローシャーク』に乗って相田隊員は帰っていった。

「私達も有名になったものね〜」
「まあ、日本は他の国に比べて怪獣の出現頻度が高いからね。」
かおりんと千尋がそんな会話をしていた。

「それより、ミス美浜お聞きになりましたか?組織の一部で
シーモンスとシーゴラスを軍事兵器として使うと言ってるもの
がいるそうなんですが・・・」
「何ですって!?」
「お、面白い話か。あたしも混ぜろよ。」
智がシーゴラスの頭から降りて駆け寄ってきた。
同様に神楽もシーモンスの頭から降りる。
で、話を聞きたちまち険しい表情になる。

85 :ケンドロス :2003/06/16(月) 01:28 ID:???
ジャスティス続き
「私、何か思い出したくない奴の顔が浮かんだよ。」
暦の言葉に何か思い当たったらしく、全員の顔が険しくなった。

「あたし等の知らない所であんたらも苦労してんのね〜」
「でもこればかりは私達にはどうにも出来ないわね。」
同情のまなざしを向けるゆかりとみなも。

「ええ、今その事が問題になって会議してるんですが、揉めてるんですよ。
で、我々はあなた達の護衛も兼ねて二匹を捕獲する作戦を立てろと言われて
きたんですが正直気が進まないのです。」
リーバイン以外の隊員もそれに頷く。

ATDF本部・・・
リーバインの言う通り、揉めにモメていた。特にこの二人の激突は顕著だった。

「関屋参謀!!私は賛成出来ません!!怪獣を兵器として使うなど・・・」
「黙れ松岸!これは人類の為なのだ!!聞けばあの二匹攻撃を加えなけ
れば大人しいそうではないか。あれだけの力を持っているのだ。
我々が有効利用するというのに何を異論を唱える。」
「だからこそです。シーモンスとシーゴラスはレイロンスを一瞬で沈めました。
その強大な力は使い方を誤れば確実に破滅をもたらします!!」
「ウルトラマンなどといういつ現れるか分からない巨人を当てにするよりは確実
だと思うがね。飼いならせばそれこそウルトラマン以上の戦力になる!!」
「それこそ思い上がりです!!」
こんな調子で会議は荒れていた。

その様子を宇宙から眺めていたちよ父がいた。

「なるほど。この2匹の怪獣は使えるな。では早速私が地球の愚かな
人間に代わって利用しようではないか。破滅をもたらす兵器としてな。」
ちよ父の体から地球に向かって何かが発射された。

その光は地球にいたシーモンス、シーゴラスに浴びせられた。
するとどうだろう。今まで大人しかった二匹が凶暴化し、暴れ始めた。

「どないしたん?シーモンス、シーゴラス!!」
歩が二匹を呼ぶが、二匹は返事をせず周りの木々をなぎ倒しながらメンバーに迫る。

「仕方が無い、攻撃だ!!各自出撃!!」
「了解!!」
リーバインの指示の元、『FANG』の各隊員が戦闘機に乗り込む。

「私達も臨戦態勢に入ります!!」
「了解!!」
ちよの指示のもと、各自がそれぞれ散っていく。
歩と榊は海沿いに、智、神楽、暦はその逆側に、
ちよ、かおりん、千尋はゆかりとみなもをペンションの方向へ避難させる。

86 :ケンドロス :2003/06/16(月) 01:30 ID:???
「早く逃げてください、ゆかり先生!!黒沢先生!!」
「あーもうまた逃げんの!!」
「文句言わないの。」

「シーモンスとシーゴラスの角周辺に強烈な電磁波を感じる。恐らく・・・」
「それで操ってるって事?」
かおりんが千尋に尋ねる。

「攻撃!!」
リーバインの指示の元、『FANG』はシーモンス、シーゴラスに攻撃を仕掛ける。
地上のHOLYも榊と歩がシーゴラスに、智、神楽、暦がシーモンスに攻撃する。

「ぶおおおおお。」
「きゅああああああ。」
シーゴラスとシーモンスの角が光る。空に暗雲が立ち込め、強風が吹く。
今度はこちらに向けて大津波と大竜巻を発生させたのだ。

「わ〜〜〜。」
歩が吹き飛ばされ、海に落ちた。

「歩!!」
すかさず榊が助けようと荒れた海に飛び込む。

「大阪!!榊!!」
「私達も何かに捕まらないと吹き飛ばされるぞ!!」
「でもよ神楽、津波は避けようがないぞ!!」
さすがにメンバーにも余裕が無くなっている。もし津波と竜巻が
この島に上陸すれば、この島は未曾有の大災害に襲われるだろう。

「くっ、ここまでの力を持っているとは。うまくコントロール出来ない!!」
空のリーバインも強風のせいで戦闘機をうまく制御できなかった。

一方、海に潜り込んだ榊は信じられないものを見た。
何と歩が自力で泳いでいるのである。

(歩!!泳げないんじゃ・・・)
テレパシーを使って歩に彼女は話かけた。

(ジャスティスの力を借りて何とか泳いでるんや。)
(そうか。ところで歩、変身出来るか?)
(出来るで〜これ持ってきたからな〜)
歩は水着の胸元からジャスティランサーを取り出した。

(よし、変身するぞ。もうそれしかない)
(分かったで〜)
歩と榊はそれぞれウルトラマンジャスティスとウルトラマンレイに変身した。

87 :ケンドロス :2003/06/19(木) 00:00 ID:???
「ジャスティス、レイ」
ジャスティスとレイの出現にちよはホッと息をついた。

「あれがウルトラマンジャスティスとウルトラマンレイか。」
『FANG』隊長のリーバインが感嘆の声を上げる。

(レイ、私達二人でウルトラバリヤーを使うぞ。それ以外に
あの大津波と大竜巻を止める手段は無い。)
(分かったジャスティス。確かにそれ以外に方法はないな。)
ジャスティスとレイはお互いに会話をした後、二人でガッチリ肩を組んだ。

「でやっ!」
駆け声をあげた後二人は高速回転を始めた。二人の体からエネルギー波が
発生し、そのエネルギー波が津波と竜巻に当たった瞬間、津波と竜巻は完全
に消え、さらにジャスティスとレイの体から閃光が発せられ空を覆っていた
雨雲も完全に消滅した。
これがジャスティスとレイが二人同時に放つ合体技『ウルトラダブルスパーク』である。

しかし、その威力故二人の体力を大幅に消耗する危険な技でもある。

「す、すげぇ。」
智も神楽もそれだけ言うのが精一杯だった。

「すごい力を持っているんだな。ウルトラマンというのは・・・」
上空からリーバインが驚愕の声をあげた。

竜巻と津波を消された二匹は二人に襲い掛かってきた。ジャスティスは
シーゴラスを背負い投げて倒し、レイはシーモンスを巴投げで吹き飛ばした。

「はあっ!!」
「えいやぁ!!」
駈け声をあげジャスティスは攻撃してきたシーゴラスの腕を取り、そのまま地面に引き倒す。
レイは飛び上がってきたシーモンスの顔面にカウンターの飛び蹴りをくらわせ、仰向けに倒れさせた。
お互いの位置を入れ替え、今度はシャスティスがシーモンスに抱え込み投げをくらわせ、
レイがシーゴラスに手刀を浴びせた後、そのまま背負い投げる。
反撃しようと突進してきたシーモンスをジャスティスは正面から受け止め
殴り飛ばした。レイの方はシーゴラスを持ち上げ、そのまま地面に叩きつけた。

「ジャスティス、レイ!!角だ!!角を破壊すればそいつらは
竜巻や津波を起こせなくなる!!今までの攻撃パターンからそれは間違いない!!」
暦が二人に向かって叫ぶ。それに了解し、二人が光線を撃とうとした瞬間、

「撃っちゃダメ〜〜〜!!ジャスティス、レイ!!シーモンスとシーゴラスの
角を破壊しちゃだめ!!」
叫んだのは千尋だった。

「どういう事なの千尋!?角を破壊するなって?」
かおりんが千尋に詰め寄ってくる。

「シーモンスとシーゴラスの角には爆弾が仕掛けられてのよ!!」
「何ですって!?」
そばで聞いていたみなもが驚きの声をあげた。

88 :ケンドロス :2003/06/19(木) 00:03 ID:???
「多分、宇宙にいる『あいつ』の仕業だと思うけど、角を破壊するとそれに
連動してコントロール装置とを兼ねた爆弾が爆発する仕組みになってるの!!
その威力はこの辺り一帯の島が吹き飛ぶぐらいの威力を持ってる。」
千尋の説明に全員が凍りついた。

「何て恐ろしい物をつけるんだ。本当に地球人皆殺しが目的か。」
リーバインが歯噛みする。

動揺したのはジャスティスもレイも同じ事だった。そのスキをつかれ、ジャスティス
はシーゴラスの、レイはシーモンスの突進攻撃をくらい転倒する。
さらにジャスティスはシーモンスの角で空高く舞い上げられ、地面に叩きつけられる。
レイもシーゴラスのアッパーに空高く舞い上げられ、地面に叩きつけられた。
二匹は再び角を光らせ、そこから発生する雷撃エネルギーを二人に目掛けて放った。

「ぐおおおおおおお!!」
「うぐあああああああ!!」
強力な雷撃エネルギーを浴びせられ、苦しみの声をあげるジャスティスとレイ。

「どうすればいいんだ!?このままじゃジャスティスとレイがやられる!!」
暦は援護射撃をしたいのだが、下手に撃って角を破壊しては大惨事となるので
撃つに撃てなかった。

その様子はATDF本部にも伝わっていた。そして・・・・

「奴等は何をしているんだ!?さっさと角を破壊すれば済むというのに・・・」
「参謀!!それは本気で言ってるのですか!?佐倉隊員の言っていた事が
わからない訳ではないでしょう?」
「だからこそだ!!奴等をこのまま放置すればいずれ大きな脅威となる。
我々の兵器として使えないのなら排除が妥当だ。その為の犠牲なら止むをえまい。」
「あなたという人は・・・」
「関屋参謀!私の部下にも死ねと!?」
東南アジアの総司令が怒りを露に口を挟む。

「ここで議論していても始まりませんよ。」
その時、女性の声がした。それは『総監』の声だった。

「彼女達を信じましょう。大丈夫、きっとうまくやってくれるわ。
サンダース総司令の部下の皆さんも。」
その一言でそれまで緊迫していた空気が急に和やかになった。
関屋だけは納得いかない表情をしているが・・・

「あーもうお前ら〜少しは頭を使ったらどうなんだ〜!?」
ゆかりが全員に向かって怒鳴った。全員、そちらに注目する。

「角がダメならその傍にあるコントロール装置と爆弾外せばいいのよ〜!!」
その言葉にハッとなる一同。角に気を取られすぎ肝心な事を忘れていたのだ。
「確かにそうですが、それでも問題は残ってます!!あれは光線やレーザーで
破壊すると爆発する仕組みになってるんです!!かといってレイやジャスティス
がそれに触れればその衝撃で爆発します。」
「つまり、誰かが直接頭の上に乗って外すしかないって事?」
かおりんの問いに千尋はコクリと頷く。

「無理よ!!そんな危険な事・・・」
「無理じゃないぜ!!にゃもちゃん。」
「こーゆう時こそ私等の番だよな。」
名乗りでたのは智と神楽だった。

「大丈夫ですか?危険ですよ〜」
ちよが不安そうに声をあげる。

89 :ケンドロス :2003/06/19(木) 00:06 ID:???
「大丈夫だって、ようはベムスターの時と同じ感じでいいんだろ?」
「行くぞとも!私はシーモンスに乗るからお前はシーゴラスに乗れ!!」
「言われなくてもそうするよ!!」
智と神楽はそれぞれの怪獣のいる方向へ走り出した。

「リーバイン隊長!!今からともちゃんと神楽さんがシーモンスとシーゴラス
の爆弾を外しに行きます!!それまで注意をひきつけておいて下さい!!」
「了解した。聞いたとおりだ。まずはウルトラマン達を助けるぞ!!」
「ラジャ!!」
『FANG』の部隊はそれぞれ角を避け、攻撃を開始する。ちよ達『HOLY』もそれに続く。
シーゴラスは胸部に、シーモンスは口の辺りに攻撃を受け、攻撃を中断するハメになった。
雷撃から何とか逃れたジャスティスとレイだが、その瞬間カラータイマーが点滅を始めた。
もう時間がない!!

「ミス美浜!我々の戦闘機ではシーモンスは背が低くて攻撃しづらい。
そういう訳でシーゴラスは我々に任せてくれないか。」
「分かりました。よみさん、私達でシーモンスの注意をひきつけましょう!!」
「分かった!!」
このやり取りの間に智と神楽はシーゴラスとシーモンスの背後に回っていた。神楽の方には何とマヤーがついてきた。

「マヤー!!お前・・・お前も止めたいんだな。よし、ついてこい!!」
神楽はシーモンスの体に登り始め、マヤーもそれに続く。

「へへ、一度登っといて良かった!!」
智はシーゴラスの背中を登りながら軽口を叩いた。

『FANG』はシーゴラスの胸の部分を、『HOLY』はシーモンスの前足部分を攻撃する。

「ぎゅあああああああああああ」
「ぶおおおおおおおおおおおお」
攻撃を受けた二匹は攻撃を仕掛けた相手を撃墜もしくは屠るべく、
角を光らせ雷撃を発射した。リーバインの戦闘機郡は左右に転回する事でかわし、
暦も横に飛んでかわした。

「危ない、ちよちゃん!!」
隊長のちよはかおりん、千尋に抱きかかえられ雷撃から逃れた。

「あ、ありがとうございます。千尋さん、かおりん。」
(いかん、このままでは彼女達が危ない!!)
(危険だが我々があの角を抑えるしかない!行くぞレイ!!)
ジャスティスとレイは起き上がり、ジャスティスがシーゴラスの角をレイが
シーモンスの角を掴んだ。
その影響でジャスティスとレイは雷撃を至近距離からくらうはめになっていた。

「私達の為に・・・まだか、ともと神楽は!?早くしないとジャスティスとレイはもたないぞ!!」
焦る暦だが、その表情は笑みに変わった。智と神楽はシーモンス、シーゴラスの頭に到達したのである。

「ともちゃん、神楽さん。頑張って下さい!!」
「あなた達だけが頼りなのよ!」
「絶対成功させて!!」

「ちくしょう!暴れるなっての!!」
「マヤーお前の方は大丈夫か?」
こくりと頷くマヤー。さすがに暴れまわる二匹に二人は手を焼いていた。
しかし、どうにかコントロール装置が植えつけられてる場所まで辿り着いた。

90 :ケンドロス :2003/06/19(木) 00:08 ID:???
「神楽、せーので引き抜くぞ!」
「分かった!!せーの!!」
智と神楽は同時にありったけの力を振り絞り、コントロール装置を取り外した。
するとどうだろう。あれだけ暴れていたシーモンスとシーゴラスが大人しくなった。

「やった!!」
しかし、そこで気が抜けてしまったのか二人共シーモンスとシーゴラスから
落ちてしまった。マヤーも一緒に。
すんでの所でジャスティスとレイに助けられる。

「まったく、ヒヤヒヤさせる奴等だ。」
暦が引きつった笑みを浮かべた。

ジャスティスとレイは智と神楽とマヤーを地上に下ろした後、すぐに
コントロール装置を持ったまま宇宙へ飛び立つ。
そして宇宙のある空間で大爆発が起きるのであった。

「すごい、まさか怪獣の頭に乗って爆弾を取り除くなんて。
HOLYにはあんな隊員もいるのか!?」
リーバインはただただ圧倒されるばかりだった。

宇宙空間・・・ちよ父の体が七色に変色していた。

「またあいつ等か。ベムスターの時といい、今回といい少しおしおきが
必要なようだな。」
ちよ父は体から地球に向かってレーザーを発射した。

「すごいですのだともちゃん、神楽さん。」
「はっはっはっはっ、ようやく私のすごさが分かったかちよすけ!」
「死にそうになったけどな。」
その時、千尋は気付いた。上空から二本のレーザーが智と神楽を狙っている事に・・・

「危ない!逃げてとも!!神楽!!」
しかし、そのレーザーは高速でとてもよけられるものではない。
あわや直撃というところで横から別のレーザーが飛んできた。
それに当った為、レーザーは軌道が逸れあらぬ方向へ飛んでいった。
皆がその方向を見るとそこには肩を支えあいながら銃を発射した歩と榊がいた。

「間一髪だったな。」
「ホンマ、死ぬかと思たで。」
「大阪さん、榊さん!!やっぱり無事だったんですね〜」
「榊さんカッコイイ〜〜〜〜〜!!」
「大阪さんも無事でよかった。」
「ヒヤヒヤさせるのはともと神楽だけじゃないって事だな。」
その光景を見つめていたゆかりとみなもだが、ゆかりは何かに気付いたようだ。

91 :ケンドロス :2003/06/19(木) 00:10 ID:???
「ふ〜ん。大阪と榊、そういう事だったのね。」
「え?ちょっとどうゆう事?」
「教えな〜い。」
「何よそれ・・・それにしても今回はゆかりがいなきゃやばかったわね」
「まあね。」(得意気)
そんな事をしている間にシーモンスとシーゴラスは海に潜ったのか
いなくなっていた。

「ミス美浜、あなたが指揮する部隊は本当に素晴らしい部隊だ。
何故今まで勝ち残れたのか分かった気がする。」
「私もあなたがたに出会えてよかったと思ってます。リーバイン隊長。」
堅い握手を交わすちよとリーバイン。

「では我々はこれで失礼します。全員、撤退!!」
「了解!!」
リーバイン率いる『FANG』は基地へと帰還していった。

「で、どーすんのあんた達?あと一日だけど。」
「決まってるだろゆかりちゃん。遊びまくるさ〜」
「花火しよ〜〜〜〜〜〜」
「そうですね。もうそろそろ日も暮れますし・・・」
「歩。ちよちゃんにねずみ花火向けないようにな。」
釘を刺す榊の所にマヤーがくっついてきた。やはり主人が一番という事らしい。

「榊〜!!その前に私とどっちが長く泳げるか勝負しようぜ!!」
「がんばってください榊さ〜〜〜〜〜ん!!」
「神楽さん頑張って〜〜〜〜」
「お前等、あんまりハメはずしすぎるなよ。」
「皆元気ね〜戦いが終わったばかりなのに。」
みなもは溜め息をついた。そして一行は花火をしたり、
酔っ払ったみなもにエロエロ話聞かされたり、シーモンスやシーゴラスと
一緒に遊んだりと充実した休暇を過ごした。
そして、初の海外リゾート旅行を終えたのであった。

第10話 終  11話に続く

92 :名無しさんちゃうねん :2003/06/19(木) 22:47 ID:???
>ジャスティス

お疲れサントス
つづき楽しみにしてるよ!

93 :かおりん主役SS「名称未設定」1/5 ◆v4K6TB303w :2003/06/22(日) 03:23 ID:PgMAnzow
ACT6:「もう心配はいらないよ…大丈夫だから…ね!」

 「人ごみの中に入るのは何時以来だろう」、そう思いながら、
真っ黒なピーコートに身を包み、裾から赤いチェック柄のキルトをのぞかせ、
濃い、ワインレッドのマフラーを肩にかけたかおりんは颯爽と足早に街中を歩いて行く。
自分が抱いていた不安が消え去ったこと、新たに抱いた決意、
そして心配してくれたみんなに対する感謝。
それらを言葉という形で伝えたい、そんな思いで、彼女はまず千尋に電話をかけた。

 電話口からは、明らかに千尋が意表を突かれたことがまざまざと判った。
千尋から見て、あの日、かおりんがどれほど落ち込んでいたか、
それに対して、かおりんのほうから、電話をかけているという事実。
電話口だけでは伝えきれないので、実際に合う約束を取り付けた。

 思えばあの日以来のことかもしれない。今日は休日で、しかも春のような陽気、
ショッピングセンターに人が多いのは必然的なことだろう。1階のオープンブティックでは蒲色、鉄色、山吹色といった、
茶系の生地で編まれた冬物のジャケットが、名残惜しそうに身を寄せ合い特売コーナーに並び、
2階の家電製品売り場では新らしい生活を望む人の為に、必要になりそうな白物家電がセットになって売られている。
どこも、3月末らしい新しい生活の序章とも言うべき、明るく、淡い色のデコレーションに身を纏っている。
それを知ってか知らずか、行き交う人々の服も、水色、桃色、桜色と、春を予感させる色に染まっていた。
自分が打ちひしがれている間にも、暦の上では春は来ていた。
そんな思いを胸に、エスカレーターを上り、千尋が待っているオープンカフェへと向かっていく。

94 :かおりん主役SS「名称未設定」2/5 ◆v4K6TB303w :2003/06/22(日) 03:24 ID:PgMAnzow
 カフェでは真っ白なデニムジャケットに身を包んだ、ボーイッシュなショートカットの少女が、
かおりん今か今かと待ちわびていた。かおりんは一目で、それが誰か分かった。高校三年間、ずっと、
一番近くにいてくれた友達、千尋だ。だけど、私を待っているのは一人だけのはずなのに、
もう一人、真っ黒のクルーネックのセーターを着た、
琥珀色の髪の毛の大人っぽい女性が千尋と同じ席に座っていた。暦だ。

 「かおりん、ひさしぶり〜!」

 千尋よりも先に暦がかおりんに声をかけてきた。小走りに、2人が待つ席に急ぐかおりん。
まだ二人ともカフェに着いてそう時間は経っていないのだろう、千尋の好きな、シナモン入りのアイスミルクティには、
水滴は殆ど付いていないし、よみのルビーのように透き通った赤色を帯びたローズヒップハーブティも、
まだそれが淹れたてであることを証明するかのように、勢いを残して湯気が陽炎のごとく立ち上がっている。
かおりんは遊びに急ぐ子供のように、速いテンポで席に着く。

 「ご注文は?」
 「キャラメルマキアートで、ココアパウダーをちょっと多めに。」

 バリスターに慣れた口調でリズミカルにオーダーを出すかおりんは、待っていた二人の顔色をうかがう。
あの日以来合ってない千尋に、卒業式以来合ってないよみ、
多分二人ともとっても心配していてくれたのだろう、その顔色からは安堵の様子が見て取れる。

 おそらく二人は出来る限りかおりんの受験の話題に触れないようにするだろう、
だけどそれはあくまでも傷つくことを後回しにしているだけだし、かおりんの心の傷は既に癒えている。
どことなく二人に対して何らかの遠慮を感じたかおりんは、自ら口を開いた。

 「よみは、発表どうだった?」
 「あ…あぁ、もちろん、志望校に合格できたよ。その前に滑り止めをいくつか落として心配だったけど、
志望校に合格できたし、とりあえずは一安心で、今自動車学校に通ってるんだ。」

95 :かおりん主役SS「名称未設定」3/5 ◆v4K6TB303w :2003/06/22(日) 03:25 ID:PgMAnzow
 その後、よみは合格発表見に行ったときの様子をかおりんに伝えた。
智が自分が落ちることを前提に話を進めていたこと、あらゆる慰めの言葉を考えていたこと、
自分よりも先に合格発表見に行くそぶりを見せたこと、さらに「落ちた」とシャレにならない嘘をついていたこと、
あらゆる「いかにも智らしい」、一緒にいるときはただ大変だったけど、過ぎてしまうと楽しかったエピソードを、
よみは2人に披露した。

 飾り気の無い、笑顔での談笑。こんなに楽しいのに、何で自分は、
友達と会うのを恐れていたのだろうか。親友との会話は、そんな疑問や過去を、
簡単に過ぎ去ったものに変え、明日を迎える活力に変えていった。

 そしてかおりんは、おもむろにポシェットから封書を取り出しながらつぶやいた。

 「よみ、智に…ありがとう…って言っておいて…大阪にも…。」

 取り出した封書、智から着払いで送られてきた写真が入っていた封筒だ。
その中から出てきた1枚目の、木村先生の写真を見て、よみは青ざめた。

 「あいつら…最近何か含み笑いしていると思ったらこういうことだったのか…。」

96 :かおりん主役SS「名称未設定」4/5 ◆v4K6TB303w :2003/06/22(日) 03:26 ID:PgMAnzow
 あきれたよみが、両手で顔を覆いうつむいた。やっぱり、智のことが一番気になるからこそ、
智のしたことがまるで自分がしでかしたような気持ちになれるのだろう、
よみが謝りの言葉を口にするのをさえぎって、かおりんはよみに言った。

 「だけど、その裏を見てみて。」

 そういわれて写真を裏返すよみと、それを横から覗き込む千尋。
少し心配そうで曇っていた二人の顔は、千尋はまるで子供に微笑みかけるような優しい笑顔に、
よみは一本取られたかのように左手で顔を隠したが、その指の隙間から笑顔がのぞいていた。
 その二人の笑顔を見て、かおりんは続けた。

 「本当に辛かったんだ…。千尋も大阪もみんな、私を期待していてくれたのに、
結果的には、裏切っちゃう事になって、それで一人で落ち込んでいて…。
だけど、その写真とメッセージで気づいたんだ、
そんな事、とっくに過ぎた、昨日の事じゃないかっ…て。」

 「過ぎた、昨日の事」、この言葉こそ、千尋やよみ、そしてみんなが聞きたかった、かおりんの言葉だった。
心からを安堵を得た千尋は、唐突に口を開く。

 「よみ、そいえば榊さんの出発って…」
 「あぁ、そうだ、まだかおりんには伝えてなかったよね…。」
 「え…?」

97 :かおりん主役SS「名称未設定」5/5 ◆v4K6TB303w :2003/06/22(日) 03:26 ID:PgMAnzow
 突然のことに目を丸くし、呆気にとられたかおりんを見て、千尋は自分の顔を焦りの色に染めた。
その千尋をフォローするかのように、よみはかおりんにことの次第を説明する。

 「榊ちゃん、明後日にもうこっちを出発するんだって。もう住むアパートも決まって、
それにガイダンスとか、オリエンテーションとか、大学の予定がいっぱい詰っていて、
だからもうマヤーを連れて、引っ越しちゃうんだって…。」

 よみがかおりんに説明している間、千尋は少しだけばつが悪そうにしていた。
かおりんにとって、もっとも大切で憧れである榊さんの動向を、
一番最初に教えれる立場だったのに、今まで伝えれなかったのだ。
そんな千尋を視界に入れつつ、よみは続ける。

 「それで、明後日、上野駅でみんなで榊ちゃんを見送りに行こう、という事になったんだ。
かおりんは明後日、大丈夫?」

 ポシェットから、小さいねここねこのクロム・プレートのあしらわれた、
明るい黄色いカバーのかわいらしい手帳をかおりんは取り出し、
予定を確認する。来年度…というよりも直ぐにでも通う予備校の日程など、
既にかおりんの当分先の予定は埋まりつつあった。しかしながら、
明後日は、幸運にも、もしくはこの事を予想してか、予定は空いていた。

 頬にえくぼを作り、かおりんは応えた。

 「もちろん!私は榊さんを、快く送り出したい…。」

98 :名も無きSS書き ◆v4K6TB303w :2003/06/22(日) 03:47 ID:PgMAnzow
以上,ACT6です。前回のポストから1ヶ月以上たち,
「早く続き読ませろ(゚Д゚ )ゴルァ!!」という喜ばしいお叱りを受けて,
モチベーションを上げて急ピッチで,
センスとエモーションにまかせて書き上げたので,
所々見苦しい点もありますがご容赦ください。(・∀・;)

99 :紅茶菜月 ◆5xcwYYpqtk :2003/06/22(日) 08:38 ID:???
>>98
 お疲れ様です。
 千尋が登場してくれるのは、個人的にとても嬉しかったりしますが、
かおりんが立ち直っていく様子が、とても自然に描写されていたように
感じました。
 続きをとても楽しみにしております。

100 :名無しさんちゃうねん :2003/06/22(日) 09:12 ID:???
>>98
乙!前回より、すげー上手くなってる!ビクーリ
服や小物の細かい描写も、うまく文章の流れに溶け込んで、違和感がなくなってきた。
次回もがんがってください!

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