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[他作品]クロスオーバー・あずまんがSSスレッド-参[混合]

1 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2007/02/18(日) 20:33 ID:???
クロスオーバースレも3スレ目となりました。
ここはあずまんが×他作品のクロスオーバー作品用スレッドです。
あずまキャラを他の世界観に置き換えたり、また逆も然り。
そんな想像を作品にしてどんどん投下していって下さい。
また〜り楽しんでいただければ幸いです。

★主な注意事項
1.原作の対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
2.ここの作品はいわゆる「戦い系」の長編作品を多く含みます。
3. その場合、あずまんがキャラでの戦闘を描いている為、原作の雰囲気を変化させ、またキャラクターも
  精神的・身体的に強化されているものもあります。
4. あずまんがキャラと、SSの作者のオリジナル・創作キャラクターとの共演もあります。
5.他人の作品に対し罵倒、中傷は絶対にしないでください。
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します

147 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:22 ID:???
紗奈は一番この事を告げたい人達は生憎そばにいなかった。

「姉さんにはメールで伝えられるけど、おじさんには無理かなぁ」
それでも姉と慕っている彪乃からは激励の返事があって紗奈は幾分嬉しそうだった。
『なったからには気合入れてけよ紗奈』と。

「あらあら、それは大変ねぇ。頑張ってね」
「グッジョブ、マイドーター」
(いつもと同じで何か調子狂うなぁ。お母さんもお父さんも)
ほとんどいつもと変わらないリアクションをされ、澪は戸惑ったが、祝福されていると思うことにした。

「久しぶりだな、ちよちゃんに手紙出すの」
「海外だし、メールや国際電話だと高くなっちゃうし、中々繋がらないからね」
みるちーやゆかは家に帰ってこの事を手紙にしてかつての親友に送るのだった。

「かなめ姉さんは今どうしてるかな?」
結城あずさの姉、結城かなめはムーンキャッスルに所属しているらしいが、あずさには正確な部署までは分らない。
連絡を取ろうにも個人的な事で連絡を取り合う事は許可されていないので、かなめがどうしているかは全く分らないのだった。
しかし、気にしてもしょうがないとすぐに思いなおし、一日の疲れを取るために入浴した後に熟睡するのだった。
あれよこれよとしているうちに時計は0時を回ろうとしていた。

翌日、午前11時30分――
ヴァリシアは何かのコントロール装置に手を触れる。

「やるのね?」
「ああ、期は熟したからな」
ゼレルに問われ、ヴァリシアは力強く頷いた。

「行け、ベロクロン!今度はウルトラマンセイバーを抹殺するんだ!」
ヴァリシアが装置のボタンを押すと、空間に歪みが発生する。そしてベロクロンは
その空間へと飛び込んでいった。

東京近郊にて陽炎のような歪みが発生した後に、その空間を切り裂いて超獣ベロクロンが出現するのだった。

148 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/13(日) 00:24 ID:???
彼女達の近況を簡単にまとめてみました。
初期段階ではみなもやジャンボ、やんだなども出る予定でしたが、
収拾つかなくなりそうだったのでやめました。

149 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 21:53 ID:???
晴れ晴れとした空に出現したベロクロンに人々は恐怖する。
ベロクロンは出現するなり、火炎とミサイルによる攻撃で静岡に現れた時と同様に周囲をたちまち火の海にした。
轟々と燃え盛る街。
この事態を受けて、TEAM HOLYに出動要請がかかる。

「超獣出現!超獣出現!TEAM HOLYはただちに出動してください!」
警報サイレンの音がけたたましく鳴る。赤いランプが激しく明滅している。

「ポイントPXに現れた巨大生物は静岡で暴れた超獣と同種のものと確認。レジストコードはベロクロン!」
「ベロクロンは真っ直ぐこの基地のある場所を目指しているよ」
オペレーターであるみるちーとゆかが状況を報告する。

「分りました。みんな出撃しよう。フォーメーションはテロチルスの時と同じ奴でね。
みちるさん、ゆかさん、ここをお願いします」
「OK、任せといて」
恵那にここを頼まれた二人は指でOKのサインを出す。そして手元にあるパネルを叩き始めた。
画面上に様々な情報が表示される。その中には暴れるベロクロンの姿も映っている。

「まだ避難が終わってないみたいだぞ」
「突然の出現だったから、避難誘導が出来ていないのよ」
みうらは地上の様子を見て言った。それに対してあずさが答える。

「超獣をなるべく人のいない場所へと追い出しましょう。みんな山の方に誘導させるわよ」
「分ったぞ、恵那!」
恵那の指示によつばが一番最初に返事をする。後ろで紗奈も頷いている。

「よーし、紗奈あたし達から行こう」
「うん、よつばちゃん」
まずホワイトトルネードがベロクロンの目の前を横切る。
彼女たちの狙い通りベロクロンはホワイトトルネードを落とそうと炎を吐いてくる。

「澪、あずさ。分離して別々の場所から攻撃するぞ」
「OK、やってみるよ」
「分離」
みうら、澪、あずさはクリムゾンフレアを三機に分離させて散開して攻撃をする。

150 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 21:57 ID:???
自動照準機能があるため、狙いを外す事はない。
みうらは鼻を、澪は腕を、あずさは背中に向ってミサイルを発射するボタンを押す。
戦闘機の真下に搭載されているミサイルがベロクロンがミサイルを発射する部位を狙う。

グルルルルルル!
対するベロクロンも咆哮をあげつつ、口と指先、そして背中からミサイルを発射してそれらを相殺する。

「次は私の番ね、えい!」
その隙を逃さずにベロクロンの頭部に向って恵那の乗るブルーエクレールがレーザーを撃ち込む。
こちらも正確に当てる事に成功する。
ベロクロンが上を見上げると、そこにはホワイトトルネードが迫っていた。

「よつばちゃん、今だよ」
「いっくぞ〜。これでもくらえ!」

キシャァァァァァァ!!
ホワイトトルネードから発せられるレーザーがベロクロンの口の中にあるミサイル発射口に見事に命中する。
悲鳴らしき金きり声をあげるベロクロン。
ベロクロンはこの攻撃でダメージを負ったのか、動きを止めた。ベロクロンの目は白黒ならぬ赤黒に明滅している。

「やるじゃん、よつば」
「やったね、よつばちゃん」
「へへーん、どんなもんだい」
みうらと澪に褒められ、すっかりよつばは上機嫌である。

(あの人は今回はいないみたいね)
あずさはブラッド・クライアの姿を探したがどこにもその姿はなかった。

「これで決まりかな?」
「普通なら死んでいるよね?でも超獣だし」
紗奈の問いかけに恵那はそう答える。
しばらくするとベロクロンの口から大量の泡が吐き出され、そして空に散っていく。
ゴボゴボと不気味な音をたててさながらシャボン玉のごとく大気を舞うのだ。

151 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:00 ID:???
カッ!とその禍々しき真っ赤な瞳が光る。

「そんな!?生き返った?」
「生き返ったというより気絶していただけみたいだな」
「そんなとこだね」
ベロクロンの復活に澪は動揺するが、みうらやあずさは意外にも冷静だった。

「あの泡はベロクロンの体液だね。あの泡を変質させてミサイルに変えるの。
つまりベロクロンは体内でミサイルを作り出す事が出来るんだ」
ベロクロンのスキャニングデータの結果を伝えたのはみるちーの方だった。

「みんな、付近の住民の避難は完了したわ。あとはベロクロンを倒すだけよ」
ゆかは避難が終了した事を皆に伝える。

「よーし、一気に行くぞ〜」
「待ってよつばちゃん、うかつに近づいたら危ない」
よつばの乗るホワイトトルネードがベロクロンに接近する。
恵那は引き止めようとするが、遅かった。
ベロクロンの火炎が襲い掛かってきたのだ。この攻撃で機体後方が燃え上がる。

「うわ!」
「脱出しようよつばちゃん。このままじゃ危険だよ」
「仕方ない、脱出!」
紗奈に脱出を促され、よつばは脱出レバーを引いて脱出する。
機体上部が開かれ、よつばと紗奈が投げ出されパラシュートで降下する。

バァァァァァァン!!
機体はそのまま地面に衝突して爆発炎上した。

「この野郎!よつばと紗奈の仇はとってやるからな!澪、あずさ、行くぞ」
「OK」
クリムゾンフレアの三人は先程と同様、三方向に分かれてレーザーを撃つ。
しかし今度はベロクロンもその攻撃に対応してきた。
正面から攻撃したみうらには腕からのミサイルで、背後や側面から攻撃した
澪とあずさに対しては背中からのミサイルで反撃してきた。
今度は避ける事が出来ずに、三機とも被弾してしまう。

152 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:04 ID:???
「やられた。機体を不時着させるぞ。澪、あずさ、出来るか?」
「こんな市街地じゃ無理だよ」
「脱出するしかない。このままじゃ墜落する!」
結局、三人も脱出する事にした。尚、全員前回までと同じで機体はオートコントロールである。

「みんな!」
恵那はよつば達に気をとられた。だがそれによって隙が出来てしまった。

「危ない恵那ちゃん、前を見て!」
「そのままだとベロクロンの射程圏に入っちゃうわ」
みるちーとゆかの通信を聞いてハッとなる恵那。見ると眼前にベロクロンがいて
口を開けてミサイルを発射しようとしていた。

「くっ」
恵那のブルーエクレールは慌てて急上昇する。
しかし、一歩遅くベロクロンの口からのミサイルが機体下部を掠めた。
これにより機体はバランスを崩した。
もし、気づくのが遅れていたら直撃していた事だろう。

「しまった!」
しかし、それでも機体に影響を及ぼしたらしくどんどんと降下していく。

「脱出!」
やむをえず恵那は脱出する。しかし偶然からか、機体はベロクロンに向って落ちていく。
ベロクロンもそれに気づいたが、火炎やミサイルを使ったばかりなのですぐに迎撃体勢をとれなかった。
腕で振り払おうとしたが、間に合わずベロクロンの腹に命中した。

ドォォォォォォォン!!
流石に効いたらしく、わずかだが後方に下がる。

「紗奈、大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫だよ」
パラシュートで先に地面に着いたよつばは後から降りてきた紗奈に声をかけて無事である事を確認した。
すぐにその場から離れる二人。

153 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:06 ID:???
「いってぇ〜。おい、二人とも大丈夫か?」
「こっちは大丈夫よ」
「私も生きてます」
みうら、あずさ、澪も着地には成功しており、よつば達と合流する。
頭を打ったのか、みうらが頭をおさえていた。
彼女達がいる場所は十字路になっている交差点だった。周囲には信号機や民家などの低い建物がある。
最も民家はベロクロンの攻撃の影響で半数が壊れてしまっているが・・・・・・

「みんな、無事で何よりだわ」
最後に恵那がパラシュートで降下してきた。全員の無事を見て恵那は安堵する。

「地球人の力はこの程度か?ベロクロンの攻撃手段がミサイルと火炎だけだと思ったら大間違いだぞ。
しかし、地球人程度の戦力ならそれを披露するまでもないな」
「あくまでもウルトラマンセイバーに対して使うのね」
「そうだ。最初にも言っただろう。地球人の戦力など私達から見たら取るに足らない存在だ。
ベロクロンはウルトラマンセイバー抹殺の為に造ったと」
ゼレルとヴァリシアはスクリーンで様子を見ながら、地球人を見下す発言をする。

「さあベロクロン、邪魔な奴等は全て蹴散らせ」
ヴァリシアの命令を受けてか、それとも恵那によって受けたダメージの怒りからか、
ベロクロンはよつば達の方へ向って迫ってくる。

「固まってると狙い撃ちされるぞ。散らばるんだ!」
「紗奈、捕まって」
「ごめん、あずさちゃん」
「澪ちゃん、こっち!」
「はい!」
みうらの声を合図に散開する。紗奈はあずさに抱えられ、澪は恵那と一緒に逃げる。
紗奈とあずさは右側、澪と恵那は左側、そしてみうらは真っ直ぐ逃げる。

「だったらあたしはあいつを惹き付ける!」
ただ一人よつばだけはベロクロンの注意を惹き付けるべく、逆に奴のいる方へ向っていく。

「馬鹿!何してんだよ戻れよ、殺されるぞ!」
みうらは怒鳴りながら、よつばを追う為に来た道を引き返す。

154 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:09 ID:???
だが、それにより逆にベロクロンはみうらに向って火炎を吐こうとする。
「よつばちゃん、みうらちゃん!澪ちゃん、先に行ってて!」
「危ないよ、恵那ちゃん」
恵那も二人を追う。澪は動こうとしたが、体がいう事をきかずその場を動く事が出来なかった。

「こっちだベロクロン!あたしはここにいるぞ!」
よつばはレーザーガンでベロクロンの足元を攻撃する。
攻撃を受けたベロクロンはよつばの存在に気がつき、みうらからよつばにターゲットを変更する。
ボォォォォォッという音と共に火炎を吐いて焼き殺そうとする。

「あっつ!」
とっさに身をかがめたよつば。そのスレスレを火炎が放射された。
その熱気が伝わってきたのか、チリチリと髪が音をたてる。

「よつばが危ない!」
みうらや恵那は助けに行こうとするが、散発的に発射されるミサイルに阻まれてそれ以上近づく事が出来ない。
目の前のよつばに集中しているせいか、その狙いはでたらめである。
だが、そのせいで軌道が読めずかえって厄介な事になっている。

「このままここにいたら、私達も危ないわ!引き上げましょう」
「くそ、無事でいろよ、よつば」
やむを得ず二人はここから離れる事になった。一瞬、ミサイルの攻撃がやんだのを見計らって二人はこの場を離れる。
一方のよつばは火炎によって退路を阻まれていた。後方は炎の海となっている。
ついによつばは胸にしまってある星型のペンダント『スターフラッシャー』を取り出す。

「あたしに力を貸してくれ。セイバー!!」
スターフラッシャーを胸につけて、よつばはセイバーの名を叫ぶ。
よつばの周囲をまばゆい金色の光が包み込み、やがて一人の巨人へと変化させる。
銀を基調としており、上半身は赤と青、下半身は紫のカラーリングをしたウルトラ戦士
ウルトラマンセイバーである。
ウルトラマンセイバーは右手を高く掲げた状態で登場しする。

「ウルトラマンセイバー!」
モニターでその姿を見たみるちーとゆかが同時に口にした言葉である。

155 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/20(日) 22:11 ID:???
実はこれ、一度書き直しています。最初のはベロクロン相手にかなり善戦しており、
それはいくらなんでもないだろって事で変更しました。

156 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:43 ID:???
「やはり現れたなウルトラマンセイバー。さあベロクロン、奴を倒すんだ」
ヴァリシアの命令を受けてベロクロンは腕からミサイルをセイバーに向けて発射した。
しかし、セイバーはそれを避けようともせずに悠然と構えている。
ミサイルが胴体に当たるものの、彼は全く動じていない。

「ていっ!」
火炎を吐いてくるベロクロンに対し、その火炎の軌道スレスレの高さから跳ね上がり、
ドロップキックで蹴り飛ばすセイバー。
その蹴りにベロクロンは体を支えきれず、後ろへと倒れこんだ。
しかし、すぐに起き上がり今度は口からのミサイルで狙い撃ちにしてきた。
対してセイバーはそのミサイルを何と手足で弾いてしまった。
カキンカキンという金属らしき音をたててミサイルは掻き消えていく。

「ぬんっ!」
セイバーはその巨体で軽々と飛翔して、ベロクロンの背後へと回り込んだ。

「気をつけろセイバー!後ろからもミサイルが飛んでくるぞ」
とみうら。
その言葉どおり、ベロクロンは背を向けたまま豪雨のごとくミサイルをセイバーに向けて発射する。
彼はそのミサイルの軌道を全て見切り、大きく飛び越えた。
そして空中で体を捻った後に、ベロクロンの頭部を蹴り、仰向けに倒れさせた。

「はっ!」
セイバーが今度はベロクロンに接近する。
敵もセイバー目指して走り出すが、側転とバック転を交互に使いこなしやり過ごす。
これによりお互いの位置が入れ替わった。

ギシャアアアアアア!!

耳をつんざく程の唸り声をあげるベロクロン。周囲の空気が一気に張り詰めた物になる。
両手から何やら白い輪を作り出し、、それをセイバーに向って投げつける。
その白い輪はたちまちセイバーの体を締め付けてしまった。

「うっ!」
セイバーは苦悶の声をあげる。
ベロクロンは中指と人差し指と薬指の三本の指から白い光線を発射してカラータイマーの真下に当ててきた。

157 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:49 ID:???
「うおっ!」
白い輪に拘束されているセイバーは成す術もなくくらってしまう。
輪は消えたものの、セイバーはうつ伏せになって倒れこむ。

「セイバー、しっかり!」
声援を送る紗奈。その声が聞こえたのか、立ち上がるセイバー。

「確かにミサイルだけではないみたいね」
「そういう事だ」
この戦いを見ているゼレルとヴァリシアは味方が優勢であるにも関わらず淡々としていた。

咆哮をあげ、ベロクロンが頭から体当たりをしてきたのだ。
その攻撃に当たってしまったセイバーは、数メートル先まで転倒した。
さらに追い討ちをかけるべく灼熱の火炎を吐いてきた。
いくらセイバーといえどもその火炎をくらえばひとたまりもないだろう。

「はっ!」
セイバーは横転してその攻撃を回避する
ベロクロンは火炎を吐きつつ、徐々に距離を詰めてきた。
むせるような熱風が周囲に及ぶ。炎との距離も徐々に縮まっていく。
セイバーは何回か地面を転がった後に、体勢を立て直す。

だが、ここで予期せぬ攻撃が繰り出された。
ベロクロンは全ての器官からミサイルを発射してきたのだ。
しかも今度は狙いを絞っているせいか、確実にホーミングしてきている。
真上から流星雨のごとくセイバーに降り注ぎ、彼の周囲で次々に爆発!
さらに口のミサイルに被弾してしまい、うつ伏せに倒れこんだ。

「うおおおっ」
その猛攻の前についにセイバーのカラータイマーが青から赤に変わった。
エネルギーの消耗が激しい地球上では、ウルトラマンセイバーは長くは活動できない。
エネルギーが無くなると胸のカラータイマーが点滅を始める。
その輝きが消えた時、それがウルトラマンセイバーの最後の時なのだ!

「頑張ってセイバー!」
今度は澪が声援を送る。他のメンバーも固唾を飲んで見守っている。

158 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:58 ID:???
ベロクロンは再び全方位ミサイル発射体勢に入った。
勝ち誇ったかのような咆哮をあげる。

「しぇああああああ!」
セイバーのカラータイマーから赤色の光線が発射され、飛んでいく。
ベロクロンの口に見事に命中し、轟音をあげた。
タイマーショットと呼ばれる必殺技だ。

ギュオオオオオ!!
くらったベロクロンは悲鳴をあげながらよろめく。これによる影響か、ベロクロンはミサイルと火炎を吐けなくなった。
恐らく口にあるミサイル発射口と火炎を吐く器官を今の攻撃により破壊されたからであろう。

「チャンスだぞ、セイバー!」
「はっ!」
みうらの声に頷くセイバー。その後、右の拳で殴りかかる。
空気を切り裂くような一撃が相手の顔面に突きささり、体をぐらりと傾かせる。
よろけたベロクロンをセイバーは両腕で頭上に抱えあげる。
彼は何の苦もなく、軽々とこの物体を持ち上げてしまった。

「でやあああああ!」
力の限り放り投げるセイバー。ドスンと音をたててベロクロンは地面に叩きつけられた。
立ち上がった超獣はもはや虫の息であった。
咆哮を発するものの、その声には迫力も相手を畏怖させる力も感じられない。

「おおおおおお、はっ!」
ベロクロンとの距離をとったセイバーは腕を十字に組んで紫色の光線を放つ。
必殺技ライトニングストリームだ!
ベロクロンの頭部に命中し、爆発を起こした後に、奴は後ろにゆっくり崩れ落ちる。
直後に、ベロクロンは両腕を一度は上に上げるものの、そこまでが限界だった。
力尽きてその腕を地面に下ろし、目の赤い光も消えたのだった。
ほどなくしてその死骸は消滅していく。まるで一陣の砂のように儚く・・・・・・

「やったよ!みうらちゃん」
「セイバーが勝ったな!」
恵那とみうらがハイタッチをした。白い歯を見せて笑いあう二人。

159 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 23:09 ID:???
「シュワッ!」
セイバーは両手を挙げて空へと飛び去っていく。そしてその姿が消えた後によつばの姿になり地上へと舞い降りる。

「二人とも無事みたいでよかった」
「あずさちゃんに助けてもらったよ。ありがとうあずさちゃん」
「別に当たり前の事をしただけだよ」
澪はあずさと紗奈に合流する。互いに無事を喜び合う。
しかし、あずさだけは無表情のまま何かを探している。

(あの人はいないみたい)
あずさは周囲を見渡すが、ブラッド・クライアの姿を見つける事は出来なかった。
今回はこの近くにいないのだろう。

「どうしたの?あずさちゃん?」
「誰か探しているの?」
「いや、何でもない」
澪と紗奈にその様子を見られたからか、二人に聞かれるが、あずさははぐらかした。
あずさはブラッド・クライアを見かけた事をまだ誰にも話していない。
まだ正体もハッキリしていないという事と、あそこにいると思う反面、もしかしたら幻を見ているのではないかと
いう思いに囚われ、話すことが出来ずにいる。
そんなあずさの思いをよそに、二人は他の仲間達に声をかけた。

「よつばちゃんも無事を確認っと」
「セイバーに助けられたってとこかな」
モニターでよつばの無事を確認するみるちーとゆか。とても満足そうだ。
ベロクロンに関する情報を提示していた画面が閉じられていく。

「ベロクロンがやられたか。そうでなければ張り合いがないというものだ」
自分の手駒がやられたと言うのにヴァリシアはどことなく嬉しそうだった。

「嬉しそうね」
「まあな、単調な作業にならなくて済みそうだからな」
「私は逆ね。出来れば早く済ませてしまいたいもの、こんな事」
どことなく嬉しそうなヴァリシアとは対照的に、ゼレルは不機嫌そうだ。
何かを考えているのか、しばらく俯いていたが、おもむろに席を立つゼレル。

160 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 23:14 ID:???
「どこへ行くんだ?」
「地球よ。地球人やウルトラマンセイバーに挨拶をしにね」
彼女はそれを言い残して、ヴァリシアの返事を待たずに部屋を出た。
この部屋は円卓になっており、8人分の椅子があった。
ただでさえ広い部屋がヴァリシア一人となった事で、余計に広く感じられた。

(やれやれ、困ったお嬢さん方だ)
ヴァリシアは天を仰ぎ、苦笑いを浮かべる。
彼女の背後にある壁にはタペストリーがあり、鎧甲冑に身を包んだ騎士が描かれている。
やがてヴァリシアも何かを思いついたのか、外に出てこの部屋は誰もいなくなった。

地球では、変身を解いたよつばが、満足そうにスターフラッシャーを見つめていた。

「今日も勝てたなセイバー。この調子でどんどん行こう!」
上機嫌でセイバーに語りかけるよつば。

『・・・・・・』
しかし、セイバーからは何の返事も返ってこない。

「セイバー?」
『ん?ああ、そうだな。頑張ろう』
不安になり、よつばがもう一度呼びかけると今度はちゃんと答えた。
だが、彼女はセイバーの歯切れの悪い対応に不安を拭う事は出来なかった。

出来る事なら彼にその沈黙の意味を問いたい。
しかし、聞いた所で彼はこれ以上の事は答えないだろう。
敵の正体すらまだ教えてもらっていないのだ。

『心配しなくても敵の正体はもうじき明らかになる。私が教えるまでもなくな』
そんなよつばの心を読んだのか、セイバーの声が頭に響く。

「分かったよ、セイバー。今はあんたの事を信じるだけだ」
セイバーとの会話を終えたよつばは、こちらに向かって駆け寄ってくる仲間達に対して、
「おーい」と大きく手を振りながら応えたのだった。
第3話  終     第4話へ続く

161 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/02/10(日) 23:26 ID:???
次 回 予 告

テロチルスやベロクロンとの戦いで自信をつけていく彼女達。

だが、そんな彼女達の前にある敵が立ちふさがる。

「私の名前はゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード。
あなた達の敵よ」
「こいつがセイバーの言っていた敵?」

次 回 ウルトラマンセイバー
第4話 「接敵」
今、よつば達に試練が課せられる! 

162 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/02/10(日) 23:27 ID:???
3話終。色々と時間かかってしまった。

163 :名無しさんちゃうねん :2008/04/27(日) 17:16 ID:???
誰も見てないよ

164 :名無しさんちゃうねん :2008/04/27(日) 18:38 ID:???
>>163
うっさいハゲ

165 :名無しさんちゃうねん :2008/04/30(水) 02:00 ID:???
過疎なのは事実だわな

166 :名無しさんちゃうねん :2008/05/04(日) 01:59 ID:???
自然消滅ww

167 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 13:41 ID:???
おいおいこんなにageるなよ。

168 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 13:42 ID:???
なんだageと違ってこの方法じゃSageられないのか。
つまんね。

169 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 14:42 ID:???
昔は頼まんでも勝手にsageる奴がいたが、今はそいつもここを
引退したって事か。

170 :名無しさんちゃうねん :2008/05/13(火) 22:59 ID:???
こんな過疎っててもage厨を毛嫌いする奴がいたとはな・・・

171 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:19 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(6)


「ホラよ」

緩やかな線を描いて飛来するそれを、粗暴な声と共に神楽は受け取った。
水気を含んだ左手に伝わる暖かい温もりが冷えた体に伝わってゆく。

「あ、ありがとう」

寒気で震える唇から、なんとか感謝の言葉をひり出した。
そして次の瞬間、彼女の口内は熱い液体で満たされていた。
麻痺しかけた味覚の中でもはっきりと分かる、ほのかな甘味とどこか厳かな苦味。
それらが合わさる高貴な香りが、この飲料水の名称を雄弁に語っていた。

「焦って飲むこたぁねえ。 ゆっくり飲みな」

貪るようにコーヒーを啜る神楽を他所に、竜馬は制服のポケットを漁りはじめた。

「がフっ ん ぐっ… ごくッ」

120ml。
普段一気飲みで終わらせてしまうような量の液体が、やたらと多く感じる。
いつもなら、一気飲みとは言えゆっくりと飲んでいた筈だった。
友と共に、昼休みの時間間際に飲み干し、空になった紙パックを屑篭へ放り投げない日は無かっただろう。
時には、わざと遠くから投げ飛ばして「スローイン!」なんて言ってみたものだ。
またそれに反応した智が、暦がまだ飲んでいる途中のカップを剥ぎ取り、
周囲を水浸しにさせたのはそう昔の話ではない。

172 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:20 ID:???
「なぁ」

喉の奥へと流れ込む水の音の合間を縫って、弾ける様な声が飛び込んだ。

「お前、本気か」
「…え?」
「本気で、ゲッターに乗るのかって聞いてんだよ」

自分に背中を向けたまま、竜馬は言った。
重厚なその声は胃袋に注ぎ込まれる液体に、鉛の様な重量を加えた。


沈黙。


ぼんやりと、痴呆めいたように間の口に唇を重ねたまま神楽は黙っていた。
返答するために思考を巡らせることさえおぼつかない。
それでもなんとか、声を絞り出した。

「私は--------」

一呼吸を置いて、神楽は続けた。

「私は、乗る」

その声聞いた途端、竜馬の肩が僅かに揺れた。

173 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:21 ID:???
「ほ、ホラ! 私、水泳部だろ? 運動だって人よりできるし、その気になればケンカだって」

みしり、という。
拳が握られる音を、神楽は確認できただろうか。

「だからさ、私にならきっと」

竜馬を見上げた彼女の眼前に黒い影が横切った。



ゴシャッ


ドゴッ


ドグシャッ


突如耳に飛び込んだ、区切って三つの破砕音。
目には、ただ黒みを帯びた影が横切るのみ。
鼓膜が大きく経込むほどの轟音。
脳内で何度もリピートされるそれは、聞き覚えのある音だった。
あの日、学校で初めて会ったときに聞いた。



彼の拳が、何かを砕き、壊す音。

174 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:21 ID:???
同時に、電撃のような衝撃が神楽の全身に叩きつけられた。

神楽は、目を見開いたまま固まっていた。


竜馬の拳が、彼女の顔のすぐ隣の壁面に突き刺さっていた。
半分以上壁に埋没した拳を中心から、葉脈状のヒビが広がっている。
それと同様のものが、彼女の顔を囲むように、三つ。
それぞれ人の肩幅の倍近く広がったひびが、拳の破壊力を物語っている。

「見えたか?」

その問いに、神楽は一瞬送れて首をぶんぶんと左右に振った。

「闘ってるとな、こんなのが縦横無尽に飛び掛ってくんだ」

ぱらぱらと音を立てながら、神楽の顔のすぐ左壁面から拳が抜ける。
あれほどの破壊を行いながら拳は傷一つ付いていない。
生傷は無い。
そこには、度重なる鍛錬と、実戦による細かい古傷によって
厚みを増した金剛石のような拳があった。

「自慢じゃねぇが、こんなもんは本気じゃねぇ。
 女の顔に傷付ける趣味はねえからよ」

ごくり、と。
コーヒーと唾液が入り混じった液体を神楽は無理やり飲み込んだ。


「悪いことは言わねぇ。 お前にゃ無理だ」








to be continued

175 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/05/14(水) 01:23 ID:???
久々の投稿です。
最近時間に余裕が出来るようになったので、投稿することが出来ました。

176 :名無しさんちゃうねん :2008/05/15(木) 19:39 ID:???
割とよかったと思う

177 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/05/15(木) 22:38 ID:???
>>176
どうもです。
そう言っていただけるだけで、次への励みになります。

178 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:35 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(7)

「…は…?」

奥歯を揺らしながも、自分の意思を携えた声で神楽が呟いた。

「聞き取れなかったか? お前がゲッターに乗るのは無理だ」

神楽に与えた飲料とは違う銘柄のコーヒーを喉に注ぎながら、竜馬は行った。
そしてそのまま、神楽から数歩離れ彼女に対して背を向けた。
「なっ…」

思わず、身体の硬直も忘れて立ち上がる神楽。
握られていた缶コーヒーが、主の下を離れ、からりと身を床に預けた。

「な…なんでだよッ!?」

上擦った声で、竜馬の方に視線を向ける。
視線の先にいた竜馬も、神楽の眼光に気付いたか歩を進めかけた足を止め、振り返る。

向き直った彼は、神楽に向かって右の腕を突き出した。
そこには、中身を失った缶が握られていた。
一瞬呆気に取られた神楽だったが、彼女がそれが「缶」であることを認識したのは
数秒の後だった。
彼女への振り返り様、まだほのかに温かみが残るそれを、
彼は何のモーションも無く、まるで紙切れのように握り潰した。
それも親指、人差し指、そして小指の三本のみで。

179 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:36 ID:???
「お前がゲッターに乗れば、こうなるぜ」

僅かに残った液体が、ぴたりぴたりと滴り落ちる。
それがまるで、「お前の血だ」とでも言うかのように。

「…根拠は…なんだよ」

震える奥歯を噛み締め、問いた。

「お前の身体じゃ、ゲッターの衝撃に耐えられねぇ」

ぐしゃぐじゃになった空き缶を、虚空へと打ち捨てながらそう言った。

「あれはな、ちぃと力が強すぎるのさ」
「そんなの、訓練すれば!」

そう叫んだ神楽の額を、竜馬の左手が荒々しく掴み取った。
獲物を捕えた魔獣の様に。

「その訓練にもお前は耐えられねえ!!」

今まで、比較的物静かに話していた竜馬が声を荒げて叫んだ。

「ゲッターに乗ったんなら分かるだろ。 全身を砕かれたような痛みってヤツをよ」

その問いに、神楽は顎を僅かに引いた。

「訓練って、何のためにやるのか分かるよな?――――――死なねぇためにやるんだよ」

180 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:36 ID:???
ごくりと、硬い唾液を飲み込んだ。
唾液が喉を下る音を合図に、場に静寂が訪れた。
回廊に、古ぼけた電子時計の針を刻む音が響く。
普通に歩いている時でさえ気付かないその音は、やけに高く
そしてそれは無粋なまでに心と言う敷居を跨いで彼女の脳に響くのだった。

「なぁ、茜」

額に手をあてがったまま、竜馬が静かに口を開いた。


「お前、なんで戦うんだ」


疑問系ではなく、呟くように竜馬は言った。







to be continued

181 :第4話  「焦燥」ーアバン― :2008/06/30(月) 02:04 ID:???
ウルトラマンセイバー
第4話  「焦燥」

広々とした部屋にひとつの円卓がある。そこに四人の女性が座っていた。
彼女達はそれぞれ神妙な面持ちをしていた。

「今言ったようにこれから地球に向かうわよ」
「いよいよか。腕が鳴るな」
「楽しみね。新しい人間観察が出来るのね」
「そんな言い方は悪いよ」
ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード、ヴァリシア・ライガ・クラウゼク、
エメノザ・トラスティーン、ロナ・ヴァン・グレーティアだ。

「地球にはウルトラマンセイバー、ウルトラブレイズを援護する存在としてTEAM HOLY、TEAM FLAMEがいる。
私とエメノザはTEAM HOLY、ヴァリシアとロナはTEAM FLAMEを頼んだわよ」
「分かった」
「さっさと行きましょう。もう私さっきからウズウズしてるのよ」
「急いだ方がいいのは同意するわ。あまりもたつくと皇帝に何言われるか分からないし」
彼女達は部屋を出て、廊下を歩く。部下達が彼女達の存在に気づき敬礼する。
彼女達もそれに習い、敬礼をする。
そして、ゼレル達がたどり着いた先には格納庫があった。2機の小型艇らしき物体があり、ドーム状の物体である。
赤と青の2種類のカラーリングがあった。

「私とエメノザは赤い方で、ヴァリシアとロナは青い方ね」
「了解した。行くぞ、ロナ」
ゼレルとエメノザは赤い小型艇に乗り込み、ヴァリシアとロナは青い小型艇に乗り込む。

「発進!」
その声を合図に、二機の小型艇は高速で発進した。
小型艇にはパネルがあり、そのパネルを操作する事で動かすようだ。

「地球に着くまで少し間があるから少し寝かせてもらうわね」
「私も、少し眠るわ」
返事を待たずに眠るエメノザとロナ。
そんな二人にゼレルとヴァリシアは呆れるものの、結局は二人と同じようにするのだった。

182 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:07 ID:???
地球の日本では、そよ風が気持ちのいい季節だった。
気温もそれほど高くなく一番過ごしやすい時期であろう。空には太陽が燦々と照らされている。
そんな中をこの物語の主人公である小岩井よつばは歩いていた。
昔は四つに束ねていた緑色の髪も一本に纏めてポニーテールにしていた。
今は怪獣出現の報もなく、暇を持て余していると言ったところか。
かつて貨物操車場だったものを公園としたもので、中央には噴水が設けられており、
滑り台やブランコなどの遊具施設なども揃っている。子供達がそれを使って遊んでいた。
かつてはよつばもここでよく遊んでいたものだ。

(何年かして、路面電車がここに保存されるようになったんだよな)
展示されている黄色い路面電車を見て、よつばは感慨にふけっていた。
そんな時、よつばは思わぬ人物と再会する。

「あっ、京介じゃないか。京介〜」
目の前を歩いてくる男性に向って、よつばは手を振って呼びかけた。
その人物は短く切り揃えた髪の為か、精悍な印象を受けた。紺のジャケットに黒のジーンズという出で立ちだ。

「お、何だよつばちゃんか。珍しいな。ロングとはいえスカートを履いているなんて」
と、いきなり服装の事を指摘された。
言われた通り今よつばは、白のカーディガンに赤のロングスカートを履いているのだ。
普段はパンツスタイルが当たり前だから、何となくこの格好には馴染めないものがある。

「やっぱ変かな?」
「正直何とも言えないな。でも見慣れれば似合ってくると思うよ」
よつばの質問に京介は正直に答えた。下手に「ぴったりだよ」と言わない分、好感がもてる。
よつばにとっては、下手におだてられるよりそっちの方が気持ちいいのだ。

「久々にあった事だし、ゆっくり話すとしようか。これ食べるかい?」
京介は展示されている路面電車の中に入っていき、鯛焼きをよつばに差し出す。

「ありがとう、もらうよ」
断る理由もないので、よつばはそれをもらう事にした。近くの店で買ったのか焼きたてほかほかだった。

「確かよつばちゃんはTEAM HOLYに入ったんだよな。それでみちる先輩やゆか先輩も一緒だったと聞いてるけど」

183 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:10 ID:???
久々に会うなり、質問を投げかけてくる京介。

「そうだよ。恵那やみうら、それに澪やあずさに紗奈もいるぞ」
「で、うまくいっているのか?」
「うん、まあうまくいってると思うぞ。特に仲間割れとかもしてないし。
何だかんだでテロチルスやベロクロンといった敵を何とか倒してるし。セイバーともうまく連携とれてるし。
それよりこの鯛焼き、白あんがとてもうまいな」
質問に答えながら鯛焼きを頬張るよつば。本当においしいらしく、至福の表情を浮かべている。
これは中々の当たりだと思う。

「そうか、うまくいっているのか。こっちと大違いだな」
「うまくいってないのか?」
「隊員同士の対立なんか日常茶飯事だからな。しかも両方とも自分でこうと思った事は絶対に曲げないだけに尚更な。
工藤や七瀬さんなら長年の付き合いでどう考えているかも分かるけれど、他の隊員は分かってくるのにもう少しかかりそうだ。
ブレイズともいまいち噛み合ってないとこがあるし」
見てすぐに分かるくらい京介の顔は疲れた表情をしていた。
しかし、そんな顔をして鯛焼きを食べてもおいしくないだろうに・・・・・・。

(オーソドックスにこしあんか)
とどうでもいい所に注目してしまうよつばだった。

「けど、今の話を聞いていて一つ思った事があるな。抜群のチームワークを誇っているみたいだけど、
もしそのチームワークが崩されたらどうなるのかな?」
「え?」
京介が真顔で言い放った言葉によつばはドキッとなる。
全く考えていなかった訳ではないが、他人にその事を言われると不安になるものだ。
前回、セイバーとの歯切れの悪いやりとりをした事を思い出して、よつばの脳裏に一抹の不安がよぎった。

「いや、ごめん。不安にさせるような事言っちゃって。別にそんなつもりで
言ったんじゃないんだ。今の俺の言った事は忘れてくれ」
京介もよつばが不安げな顔をしているのに、ばつが悪くなったのか慌てて忘れるように促す。
よつばが気にしてないと言おうとしたその時、よつばの左腕につけている通信機に呼び出しのメロディが鳴った。
どうやら、何かが起こったらしい。TEAM HOLYのみに出動要請があったらしく、京介にはそれらしい音は鳴らない。

184 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:12 ID:???
「どうやらHOLYに出撃要請があったみたいだな」
「そうみたいだ。悪い、京介。そういう事だからあたしもう行くわ」
食べかけていた鯛焼きを急いで口の中に放り込むよつば。

「そんなに慌てて食ったら喉に詰まるぞ。ほら」
京介はそんなよつばに缶コーヒーを投げてきた。それをキャッチして、喉に流し込む。
冷たい液体が喉を潤す。

「サンキュー。」
「頑張ってきなよつばちゃん。もしかしたら俺も出動する事になるかもしれないけど、その時はその時だ。
あ、そうそううちの隊員に姫崎姫子って隊員がいるんだけど、もしかしたらよつばちゃんとは気が合うかもしれないな」
「ヒメコ?そいつあたしに似ているのか?」
「いやどっちかというと、対照的だな。でも何でかな?そう思えてならないんだ。
いや、忘れてくれ。俺の思い過ごしだろうし」
「まあ、とりあえず名前は覚えておくよ。じゃあな京介」
彼女は京介に手を振って全速力で駆けていく。

「やれやれ、相変わらずバイタリティ溢れてるな」
走り去っていったよつばを見て、京介は肩をすくめるのだった。
空を見上げると、雲が太陽を覆い隠してしまっていた。

「これは一雨きそうかもな」
京介はポツリと呟いた。

(姫崎姫子か。どんな奴なんだろ?もしかしてそいつがブレイズってのに変身する奴なのか?)
そして走りながらよつばは京介が発した最後の言葉が気にかかっていた。
よつばにしては的を得た推察である。

(ま、いいか。どうせそのうちわかることだし)
しかし、よつばはあまり深く物事を気にしない性格の為に、すぐにそれを頭の奥にしまいこんだ。
セイバーに聞こうとも一瞬思ったのだが、何でもかんでもセイバーに
聞くよりも自分で確かめた方がいいという思いもあったが・・・・・・

京介の予想通り、雨が降り出して来たが、よつばは雨が降る前に
何とか基地にたどり着く事に成功するのだった。

185 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/06/30(月) 02:13 ID:???
アバン終わり

186 :名無しさんちゃうねん :2008/07/01(火) 01:57 ID:???
下駄のだけ良い 

187 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:51 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(8)

頭部を掴む力は決して強くはない。
女性の力とて、抜け出すのは容易だろう。

だが、それができない。
幾つもの傷跡の走った五指に込められた鬼気が、彼女の行動を抑制している。
屠殺される家畜に感情があるならば、最期の瞬間には、そのような気配を野性の感とやらで悟るだろう。

しかし、これは違う。
勘も、野性も、その欠片も備えていない少女が触れられただけで感じる鬼気。
生物が持つ恐怖を限界まで引き上げる力を、この男は持っていた。

彼、―流竜馬は。

「なぁ お前が闘う理由って、なんだよ」

疑問形ではない。
どこか、呟くような声だった。

「…っ…ぐ……ぅ…」

答えようと、頭を可能な限り回転させたつもりだった。
だが、得られるのはノイズのような濁音のみ。
虚しく口腔から零れる声がそれを語っている。



その思考の中、神楽は思った。



なぜ、自分はここにいるのか。

188 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:52 ID:???

なぜ、あの時、『龍』と呼ばれた機体に乗ったのか。

今の自分が置かれている現状に対する、疑問が。

考えれば考えるほど、その溝は埋まらない。
考えれば、酷いものだ。
どうしようもなく滑稽で、病的な物語だ。
自分のこの現状に至るまでの、経路というものは。
言葉にせずとも、思考の波は巡り、押し寄せる。

そしてそこに、新たなノイズが割り込んだ。

連続する高い音の波。
頭上で煌く紅い点滅。

これらはあの時、この場所で体験したものだ。



敵の襲来を知らせる警戒警報。


「また出やがったか」

そこに、"トカゲどもよりしつけぇな"と竜馬は加えた。
途端、神楽の頭への力が、微弱なものから無へと変わり、鬼気も消え失せた。
最初からそんなものは無かったかのように、彼女の身体への拘束も消えた。

189 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:58 ID:???
神楽の頭から、竜馬は手を離し、彼女の顔を一瞥した。
警報と、紅い光の点滅に怯える彼女の顔がそこにあった。
すると竜馬は、息をすぅっと吸い込み天上へと吼えた。



『『『『うッせぇぞジジイ!! さっさと消しやがれ!!!』』』』



心の臓腑まで響く、獣の、魔獣のような咆哮だった。
それが聴こえたのか、警報の類の全てが止んだ。
回廊でエコーする先程の怒号が消えた時、竜馬は神楽に背を向けた。

「なが……竜馬!!」

歩き出した竜馬を、今度は名前で呼んだ。

「悪かったな」

振り返らず、彼はそう言った。

「え……」

へらへらとしたものではない。
重みのあるその言葉。
前代未聞以外の何物でもない。

「お前、喧嘩ってできるか?」
「す、少しなら……」

困惑する彼女に、唐突に疑問を投げかけた。
そういえばいつだったか、痴漢を退散させたことがある。
ターゲットは自分ではなく、榊への痴漢だった、が。
実際は争いと呼べる範疇の中の非常に小さいものだったが、少なくとも、神楽は
それを「喧嘩」だと思っていた。

190 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:59 ID:???


「そうか…ならいいや」

竜馬が一歩を踏み出そうとしたとき、その歩みを神楽が止めた。

「……いよな?」

「し、死なないよな…? 大丈夫、だよな…?」

問いに答えず、宙に膝半分ほどの高さで留めていた足を床へと降ろした。


その時だった。


神楽の肺が、破裂せんばかりに息を吸い込んだ。



『『『バカヤロー!!!!』』』




神楽の、咆哮が回廊に木霊した。

「流竜馬のバカヤロー!! 死ぬんじゃねーぞ! バカヤロー!!」

瞼から溢れる熱い液体と共に、神楽は叫んだ。 叫び続けた。
喉の痛みに声を止めた時、彼女は見た。

竜馬の振向きかけた横顔が、にやっと笑ったのが。
彼がよく見せる、大胆不敵なあの笑顔の片鱗が、霞みを孕んだ
眼越しにはっきりと見えた。

191 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:03 ID:???


「バーカ! 俺様が死ぬわきゃねーだろッ!!」


がばっと振り返り、ぐっと右腕を突き出しながら彼は叫んだ。
親指を突きたて、「グッド!」のサインを表しながら。

「ぐずっ……だよなっ!」

瞼にこびり付く涙をぬぐい、彼女もそれに習った。
不敵な笑みを保ったまま、彼は「ヘッ!」と一瞥し、踵を返して走り出した。

自らが討つべき敵、否、獲物へと。

竜馬の姿は視界からすぐに離れた。

彼の姿が消えると同時に、神楽も駆け出した。

2、3こ目のカーブを曲がり終えた後に広がるのは、外の景色。
施設の出入り口。
浅間山を一望できる場所だった。

外に出るのと同時に、上空から一陣の突風が吹き、彼女の身体を影が包んだ。


紅、白、黄の色が施された三機が、彼女の上空を飛び去っていった。


そして、彼女の目の前でそれは起った。
音速を遥かに越える速度で飛行する三機が白、黄の順で組み合ってゆく。

192 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:06 ID:???


閃光を纏って激突した白と黄の機体は激突した形状から人型の手足を構築させ
そのまま紅の機体と組み合った。
空中四散どころか爆散してもおかしくはない筈の衝撃の中、
紅の機体はその身を自ら引き裂き、それを己の兜とした。

紅の機体の双眸が眼光を放ち、背後の装甲から天駆ける翼を放った。


「チェエエエエンジッ!!!!! ゲッタァアアアアアア!!!!! ワンッ!!!!!!!!!」



右の拳を空へと突き出し、痛烈な喉の痛みさえも忘れ、神楽は叫んだ。

鋼の翼を与えられた、勇者の名を。

布状の翼がばさりと一閃し、雲を、烈風を切り裂いて、ゲッター1は瞬く間に
彼女の視界から消えた。



この空を、神楽茜は眺めていた。



ゲッターロボの飛び去って行った、この空を。
何時の間にか、雷煌く悪天候から、一点の曇りも無い、蒼天となったこの空を。















to be continued

193 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:17 ID:???
>>181-185
乙です。
ちょっと明日(正確には今日の午後)にでも感想を創作板で書かせて頂きます。

>>186
自分の文章を読んでいただき、誠にありがとうございます。
非常に遅くなりましたが山場を越えられましたので、今後もよろしくお願いします。

194 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:34 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(9)

太陽は、常に頭上にあるわけではない。
光は、やがて姿を隠し、闇が訪れる。
そして今は、それの挟間だった。

「相変わらず、ここは景色がいいな」

文字通りの崖っぷち。
眼下に広がる、緑の群れ。
光と闇の交差する、夕焼けの色を含んだそれらを見下ろしながら竜馬は言った。
首に巻かれた若葉のようなスカーフが、柔らかな線を描いてふわりと揺れた。
学生服ではない。
白色と青の混じった緑を基調とした搭乗用の戦闘スーツを、竜馬は纏っていた。
そのすぐ後ろには、神楽がいた。
服の手持ちが少ないのか、服装は変わらなかった。

彼等の立っている崖の中央には、一つの岩があった。
よく見れば、それは岩ではない。
縦長の長方形に削られた形状。
それを支える石の床。
明らかな意思の基で作られた、創造物の基盤の痕跡が確かにあった。

そして、縦に刻まれた刻まれた言葉。
神楽の視線が、その文字をゆっくりと追った。
日が暮れかけているのと、彼女自身の勉強不足。
それが祟ってか彼女の視線と思考は墓石に刻まれた最初の文字で止まっていた。

195 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:35 ID:???

「久しぶりだな、ムサシ」


墓石の前に立った竜馬が、墓石の傍らに置かれていた何かを手に取った。
今度は、神楽にはそれが何かがすぐに分かった。

「剣道の……防具?」

それは、左右から中央に向かっての大きな罅の入った、剣道の「胴」だった。
雨風に晒されながらも、本来、朱であったと思われる色を保っているそれは
彼女の知っている防具の類とはどこか異なるものであった。

墓石の前に屈み、竜馬は手で汚れを振り払った。
先程も降り続いていた雨もあり、至る所に泥が跳ねていた。

普段なら「ざけんな畜生!!」とでも叫びそうな気がするが、
竜馬の面持ちは非常に落ち着いた、慎重なものだった。
明日は拳大の雹でも降るのかと、神楽は思った。


墓石に置かれていたのは、防具だけではなかった。

手元の紐がほどけかけ、鞘に収まった日本刀。
そして、熱い窪みを持った双眸を持つ、黄色いヘルメット。

196 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:35 ID:???
剣道の防具、日本刀、ヘルメット。
これらを装着した姿のビジョンは、神楽の脳内には存在しなかった。
しかしこれが今も尚、持ち主の傍に寄り添っているのは、
これらの持ち主が誰であるかを、何よりも確かに、言葉無き静かな声で語っていた。

「巴武蔵(トモエムサシ)。 俺のダチだ」

「竜馬の友達…っていうことは……」

「ああ。 ベアー号……ゲッター3には、こいつが乗っていた」

一通り汚れを拭い、次に日本刀を手に取った。
ほどけかけた糸を指に器用に引っ掛け、一気に刃を抜いた。
錆びの走った刃の上を、首から解かれたスカーフが駆けた。

「あいつは元柔道部の部長でな、やたら頑丈なヤツだった」

竜馬の手から放たれた胴を見る限り、
持ち主の体格は縦よりも横に伸びていたであろうということが容易に分かった。
だが、胴に覆われたそれは贅肉ではなく、
脂肪の下に蓄えられた頑強な筋肉であったことだろう。

「ハラワタが飛び出してもゲッターの操縦桿を離さなかった大バカヤロウだ」

「…凄いな。 私なんて、あれだけで気を失っちゃったのに」

懐かしさを覚えているのか、竜馬は笑った。
驚嘆を交えながら、神楽も竜馬と共に笑った。

197 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:37 ID:???
「ああ、馬鹿だったさ」

声のトーンが、一気に変化した。
お茶らけたものから、鉄のような高度をもったそれへと変わる。



「ゲッターなんざと、心中しやがって」




ぎりりという、拳と牙とが軋む音を神楽は聞いた。
これを見な。
ぐいと突き出されたそれは、まだ手を付けていないヘルメット。
彼女の脳は、それを視覚から色を認知し、そして徐々に形状を視覚する。

それを確認した時、神楽の感情に戦慄が走った。

その、「ヘルメット」の表面には作りかけのホットケーキが放つぽつぽつとした
小さな気泡、それが表面に無数に広がり、厚みのガラスが張られていたであろう眼鏡は
半分近くがヘルメットの材質と融和していた。
頭が入るであろう部分も、出来損ないのクレープのような膜が張り、
頭頂部の当たる部分には黒々とした何かが、瘡蓋のようにこびり付いていた。

明らかな、異常である。
これを発生させた原因は何であろうか。

198 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:39 ID:???
その問いを、神楽は導き出した。
キーは、竜馬の言った「心中」の言葉。

「まさか…」


「…ああ。 あいつは。 ムサシは……」

ふぅ、という一瞬の間を挟み、竜馬は再び口を開いた。




『ゲッターと一緒に自爆したのさ』






神楽の背後から、ばさりという音が弾けた。
同時に、雑音のような叫びを孕んだそれに、彼女の全身は畏怖を覚えた。
それが、彼女の頭上を掠めて飛んだ。


幻影の様に僅かに見えたのは、鋭い嘴と闇に溶け込むような黒い羽を携えた黒い鳥―――烏だった。
滑稽に怯える彼女の眼前を、烏は飛び立っていった。

199 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:42 ID:???
はっと息を吐いた。
心臓が、バクバクと弾ける感覚を神楽は感じた。
水泳や運動での疲労とは、まるで違う疲弊だ。

神楽の呼吸が静まると同時に、竜馬は静かに口を開いた。


「あいつは……お前と同じだ」

神楽の体が、ぴくりと震えた。

「自分自身で、ゲッターに乗ることを選びやがった」

神楽はそう聴いた。
『死』という存在の影を、マグマのような、血の流れと共に感じながら。

彼等の背後。
崖っぷちに聳える巴武蔵の墓標の背後の空を、先程の烏が飛んでいた。
闇に染まった翼を、闇から逃がすように。
僅かに残った、光へと進んでいった。
















to be continued

200 :名無しさんちゃうねん :2008/07/15(火) 00:22 ID:???
スローながらも確実に進んでるな

201 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:40 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(10)

「もうイッペン聞く。 なんでお前はゲッターに乗った?」

殆ど光の失せた中、彼の瞳がぎらぎらとした輝きを放っていた。

「ハッキリ言ってみろ。 ゲッターに乗った理由ってヤツをよ」

飢えた野獣のそれが、そうであるように。



ヒュゥゥゥゥ



風が吹いた。

崖の斜面を緩やかに撫でたそれは、いくつかの枯葉と塵を巻き上げ、
出来損ないの口笛のような音を立てながら彼等の頭髪を揺らした。
自らの眼前でその揺れが収まった時、神楽は口を開いた。



「悔…しいから……だ」




二度の途切れの孕んだ声は思いの他澄んでいた。

202 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:41 ID:???
「何もしない自分が悔しかったんだ」

はっきりとした声で神楽は続けた。

「アンタ達が、あんなになってまで戦ってる時、私は震えてた。
 よく覚えてる。 膝を突いたときの床の冷たさ、
 乾いた涙で頬っぺたが釣りあがる痛さ。
 


『何やってるんだろう』―――そう思ったよ。 こんな時に、私は……って。 だから、声が出たんだ」

言葉の中に幾つかの沈黙を挟み、すっと息を吸った。
そして彼女は、こう言った。

「『乗る』………ってさ」

ざわり、と強かな風が吹いた。

「何もやらないより、何かをやった方がいい。乗ってどうなる、って考えは無かった。 
 ……いや、あそこから逃げたかったのかもしれない。
 でも、気付いたらあそこに居たんだ。
 ――――――――――――――――――――――――だから、私は…………」







「『ゲッターに乗る』」

203 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:43 ID:???
凛とした、紅みを孕んだ声だった。

話をしている間、竜馬は何も言わなかった。
ただ黙って、神楽の話を聴いていた。

遥か後方に聳える浅間山。
その淵を満たす光は、ほぼ消えかかっていた。


踏み抜くように竜馬は一歩前へ出た。
その歩が地に触れた途端、日は更に力を弱めた。
竜馬は更に歩を進める。
二歩、三歩と、踏み抜くように。

五歩目を終えたとき、日は完全に消え失せた。
同時に彼の歩も終わりを向かえた。
彼のすぐ前。
その20センチと少し下には、神楽の黒髪と彼女の瞳があった。
単純な構図は、数時間前に神楽の背後の壁面に拳を見舞った時によく似ている。

ただ、あの時とは確実に違うことがあった。

それは、神楽の『眼』だった。
薄い膜を張ったような、濁りのある、輝きという光を失っていた仄暗い瞳が、
紅色の暖かさを裏塗りされた、暖かな色の光が、彼女の瞳に宿っていた。

滲み出た涙によって、赤く腫れていると言われれば終わりかもしれない。
ただ、その神楽の瞳は陽光と言う名の光を失っても凛とした厳かな光を持っていた。

それを見抜けないほど、竜馬の眼は節穴では無い。

204 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:43 ID:???
「いい眼だな」

そう言うと、神楽の背後へ歩を進めた。
二歩ほど進んだ所で、神楽は背を向けたまま言った。

「…なぁ、竜馬…」
「何だ」

同じく、竜馬も振り返らず、歩を進めながら返した。

「私…訓練もする、水泳部の頃より、ずっと、ずっと…だから―――
 ――――私に、空手を教えてくれ」

竜馬は、そこで歩を止めた。
下り斜面に入りかけの、森の中で。

「私に…空手を教えてくれ。 ……頼む」

『強く、なりたいんだ』

と神楽は加えた。

「俺の空手は、我武者羅な喧嘩だ
 反吐吐いても、拳の皮が破れても文句は垂れねぇって言えるか」

ぐぅと、喉に物を詰まらせたような声を神楽が出した。
ハッと不敵に一笑したところ、彼のスカーフがぐいと引かれ、今度は逆に彼が
そのような声を発した。

205 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:44 ID:???
「練習で…吐いたことはある。 皮だって、何度も破けたよ」

スカーフを掴む手とは別の左手を彼の眼前でばっと広げた。
見れば成程、手首と手相の間の皮膚の色が異なっている。
いくつかの瘡蓋の痕跡と薄く透き通る血管が破れた皮膚の再生を示唆していた。
このように暗い中では常人ならば彼女の手のはっきりとした形さえも掴めないであろうが
竜馬の眼にはそれがはっきりと映っていた。

先程よりも輝きを増した神楽の瞳も、それと同様に。

その眼光を見て、竜馬は満足げな笑みを浮かべた。

「ハッ…急に強気になりやがったな。 ―――帰るぞ」

そう言うと、竜馬の右腕が神楽の作業服の襟首をぐいと掴んだ。
そしてそのまま地面から10センチ程持ち上げ歩き出した。

「お、おい! 離せよっ!」
「やかましい! 首引っ張られたまま歩けるか!」
「別にいいじゃないか! そっちの方がお前も楽だろ!?」
「うるせえ! 俺は犬じゃねぇ! 運んでやるからネコみてぇにしてやがれ!」

ぎゃあぎゃあと、喧しいことこの上ない声を上げながら、二人は崖を降りていった。

『巴武蔵』と記された墓石とその遺品たちが、彼等を見送っていった。

206 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:44 ID:???
暗い空間。
対処する人間のいない電子機器の発する僅かな光のみが、この空間で灯を放っていた。


いや、その他にも二つ、あった。
刃の様に研ぎ澄まされた目尻を持つ、鋭い線を描いた双眸。
それはまるで肉食鳥、猛禽類か。 或いは、『悪魔』か。

その瞳の持ち主が、星の光無き空を見上げた。


ここは野外ではなく屋内であった。

二つの鋭い眼光はまるで虚空を見るように上を向いていた。
だが、この瞳持ち主は、はっきりとその視線の先の物体が見えていた。

大まかな形状は勿論、細かな装甲の細部、カラーリングさえもくっきりと。
そして『彼』は、何処からか人差し指程度の大きさの筒を取り出し、左手を添えて口に加えた。
研ぎ澄まされた爪のような牙が筒に喰らい付き、もう一本の手が僅かな光によって鈍い光沢を放つ
発火器を打ち鳴らした。
ボゥ、という淡い炎が揺らめき一瞬僅かな範囲を照らした。
だらっとした長い前髪も、その例外ではない。

煙草と牙のすっと息を肺に押し込め今度はそれを一気に吐いた。
先端で盛る木漏れ火が紫煙を写し出し、彼は再び上方を見上げた。


「牝ガキの玩具にしては――――チトでかすぎるぜ」


蒼黒のスーツを纏った長身の男。
神隼人は、前髪の隙間に聳える巨体を見据え、呟いた。
















to be continued

207 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/07/19(土) 01:46 ID:???
>>201
展開のスローさはいつも反省してます。
その代わり、投稿速度を上げようと努力しております。。

208 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:26 ID:???
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この作品は暴力的・及びグロテスクな表現が含まれています!
閲覧は自己責任で!!!!!
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CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第13話 −骸−


「本日の天気は全国的に晴天、午後からは日差しが強くなる模様です。
 外出の際は日傘のご用意を。 それでは、全国の天気をお伝えします」

テレビのアナウンスが聴こえた。
歯を磨く小刻み良い音に紛れたそれは、窓から射す日光や
雀といった小鳥の鳴声と共に朝の訪れを表していた。
口内に注いだ水のカタマリを吐き出すと同時に、火花が弾けたような音が鳴った。

テレビに視線を固定したまま、細やかな手が音の根源に向かい、それから食み出した角片を取った。
焦げ付いたそれの上にバターを走らせ、寝惚けた顔の口元に運んだ。

ガリっという、口腔から鼓膜に浸透する歯切れ良い音を聞くのと同時に、彼女は気付いた。
画面の右上に映し出される、重なった二つの点で区切られた、「07:38」という数字に。

「(やばっ!)」

驚愕が閃光となって心を過ぎ、塞がれた口が声ならぬ音を上げた。
細やかな脚が乱舞のように駆け巡る。
アナウンサーが二箇所目の地区の予報を言い終える前に、どたばたという
激しい音と振動を携え、それの前を横切った。
その勢いは衰えを知らず、居間を抜け、玄関に辿り着くに至った。

しかし、玄関に付いた時には、このほんの僅かな疾走がこたえたのか、
肩で息をしながら小さめの靴をその反動で押し込んでいた。

体力は、大したことはないようだ。

209 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:27 ID:???
靴が完全に収まるのと同時に、ドアノブに手を触れた。
手首を捻る直前、彼女は息を吸い込み、そしてがばっと後を振り返り、叫んだ。

「いってきまーっす!!」

底抜けの明るさを持った、少女の声。
滝野智。
たこさんウインナーのようなくせっ毛と大きな瞳を携えた彼女の、
その特徴的な高い声は、遠く離れても楽々と聴こえるだろう。

しかし、返事は無かった。
声の反響が消えた奥で、付けっぱなしのテレビの音声だけが彼女の声に応えていた。

「…ちぇっ」

つまらなそうに呟き、ドアを開いた。
同時に、外気が室内に流れ込んだ。


「……最高気温は東京都で37度となるでしょう。日傘と、水分の補給をお忘れなく。
 二月三日、本日のお天気をお伝えしました」


最後のアナウンスが、閉じられた扉の奥で虚しい響きを上げた。

ここ最近の気候は、狂っていた。

210 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:28 ID:???
粘っこい湿気が季節外れ極まる、理不尽な温度と共に、彼女の身体を包む。
まるで巨大な何かに舐め回されているような、そんな気分だった。

「うっへ〜、あっぢぃ〜〜〜っ」

自称:暴走女子高生の彼女でも、流石にこの暑さは堪えるらしい。
涼しげな水色をした夏服の胸元をぱたぱたと前後させながら彼女は歩く。
右手は団扇を模したように頬の辺りを扇いでいた。
しかし悲しいかな、その行為は余計に体温を上昇させる原因となった。
当然といえば当然ながら、彼女の心に湧いたのは、憤慨では無かった。

「太陽のばかやろー!!」

くそ暑い陽光を注ぐ太陽に向かって、智は叫んだ。
この空の様に底抜けで、太陽のような明るさで放ったそれは、天に届いただろうか。
彼女のテンションの高さは、最早一種の武器である。
しかしながら、体力と言う残弾はある。
精一杯の声で放ったそれの反動は大きかった。


♥熱い溜息を落し、淡々と歩きに徹することにした。
仮にも自分は、遅刻寸前の身なのだ、と心の奥で念を押して。

ぽつぽつと歩いていると、様々な考えが湧いてくる。
友人との他愛ない会話。
思い出すのも嫌な、今後の定期試験の日程。
授業中の居眠りの中で見た、おぼろげな記憶となった夢の続きなど。

211 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:31 ID:???
思考を巡らせると、意識とはほぼ無関係に動かしていた足が何かに触れた。
考えを中断し足元を見ると、薄汚れたサッカーボールがあった。
空気の抜けかけたそれはまるで毬(まり)のような柔らかさで、
ぐにゃっとした曲線を描いて、彼女が蹴り飛ばすまでも無く傍を離れた。

「(…どこかの子供の、カナ?)」

そのまま立ち去ろうとした智は、足を止めた。
そして先程のサッカーボールの動きを目で追った。
それは相変わらずぐにゃぐにゃという情けない動きをしながら、
やがて電柱にもたれ掛かる様にして静止した。



彼女はもう一つ、ある固有の存在を頭に浮かべた。
亀の甲羅にサッカーボールの模様をはりつけたような、巨人の顔。

血の様な色を塗りたくられた装甲。
角張った頭部から左右に伸びた頭角。
炎の様に渦巻いた翼を纏い空を駆け、振り上げた戦斧の切っ先を仇敵へと見舞う。

鬼がいるとすれば、あれがまさにそうだろう。
しかも、ただの鬼ではない。
変幻自在の姿を携え、地獄から這い上がってきた鬼神。

それが、昆虫のような、醜悪な怪物どもと、互いを喰い合う殺戮を繰り広げる。
それこそまるで夢を見ているような様だった。
夢と言っても、とびっきりの悪夢を。

明日は授業中、一睡もしないと誓う。
だから、この悪夢から目を覚まして欲しい。

もしも願えるなら、そう願うだろう。


忘れることはできない、怖さを味わった。
同時にもう二つ、忘れられない存在がある。

212 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:32 ID:???
あの日から、自分の前から姿を消した二人の友人。
神楽茜、流竜馬の姿を、あの日から見ていない。

「……あいつら、どうしてるかなぁ」

一歩歩くたびに、二人がいた時の記憶が蘇る。
よく、バカな話をしていたのを覚えている。
神楽とは思い出すまでもなく、竜馬とも、ほぼ変わりない会話をしていた。
通常の会話ならともかく、あんな風に話をできた男子が、他にいただろうか。


「(あいつ、不思議な奴だったなぁ……)」


歩みを進めていたその時、ぞわり、という悪寒を彼女は感じた。
彼女の背中を指でなぞるように脳髄に響いたそれに、
大きな目は悪寒に歪み、その根源を目で追った。

悪寒は自分の左方向から右肩に抜けていくような感覚だった。
その方向に目をやると、そこには薄暗い闇を湛えた裏路地が、小さな口を開けていた。
恐る恐る、そちらに手を伸ばすと細い指の先端が冷気を感じた。

家と家の隙間を覆う、半ば雑草と化した木や葉っぱ、古びた物置や
食み出した屋根などによってできた天然の屋根が太陽光を遮り、
冷ややかな空間を作っていた。
悪寒の正体は、これである。

213 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:33 ID:???
ふぅ、と智は軽く息を吐いた。
彼女としては、霊的な何かでも期待していたのだろうか。

望むことならばこの冷ややかな空間に身を預けていたいものの、残念ながら
この裏路地は狭すぎる。
移動用として利用できるのは、猫ぐらいのものだろう。
そう思って立ち去ろうとした時足元で、「ぴちゃっ」、という音が弾けた。

「!?」

後ずさりした彼女の「足跡」の先端には、色が付いていた。

「な、何だよ、コレ!?」

地面に擦れて付いたその色は『紅』であり、その色の濃さは
飲料水のそれを遥かに越えていた。
恐る恐る、彼女は再び路地と向き合った。
そして身を屈め、先程の音の根源を見つめた。



見なきゃ良かった。

そう思ったのは、耳元で醜い羽音が響くのと同時だった。

214 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:35 ID:???
冷気に満ちた裏路地の入り口に置かれた、「カタマリ」。
色を想像をするまでもない。
カタマリを囲うように、薄べったく広がった液体の中にある
それは、全体の半ば程度の場所から分けられ、絶命している猫だった。

断面図から食み出した部分で、何かが動くのが見えた。
うじょうじょと動き回るそれは、このくそ暑さの中で成長した蛆だった。

「うわぁあっ!?!!」

醜悪な光景に、彼女の大きな眼の中で瞳孔が狭まった。
屈んだ体勢から背中向きに倒れるような形で、智は背面に下がった。

すると、その振動と共に、猫の骸がぞわっと揺れた。

その揺れの根源より、黒く醜いカタマリが、いくつもいくつも飛び出した。
醜い羽音を舞い上げたそれは、蛆の成長した姿である蝿の群れだった。
一つ一つでは小さい蝿が、まるで寄り添う魚の群れの様に智の眼前へと飛び出した。

「うわぁああああ!!??!!??」

半ば地面に置いていた鞄を右手で払った。
隊列を崩された蝿は散開し羽音を撒き散らしながら飛び回る。

「こ、こっち来るなぁっ!!」

手と鞄、両方を振り回し、蝿の群れを少しでも追い遣ろうとする智。
倒れこんでいた体勢を立て直し、智は目的地に向かってよたよたと立ち上がった。
そして、不気味さからくる悪寒を払うように、一心に駆けた。

215 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:37 ID:???
蝿の群れは、それを滑稽なものと嘲笑うかのように、自分達にとってこの上ない
馳走である猫の骸へと戻っていった。



蛆と蝿に身を啄ばまれる猫の骸。
その小さな眼窩から食み出し、蛆を纏わせた小さな眼球は、走り去る智の姿を僅かな光の中で写していた。
水でも、血液でもない、ぬるりとした溶液の残る光の奥。

腐った干しぶどうのように、濁った色でしぼんだそれに映る智の後姿は、
壊れた人形の様に、動きと姿を歪ませていた。

















to be continued

216 :下駄 :2008/08/01(金) 03:40 ID:???
>>210
で変なハートがありますが、「♥」を入力するとああなるようです。
あそこは「ハァ、と」と解釈していただければ幸いです。

217 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/08/13(水) 23:59 ID:???
>>216
乙です。智は災難ですなぁ

218 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:03 ID:???
基地に着いた時には他のメンバーは既に制服に着替えていた。

「何だ、もう来てるのか。で、一体何が起きたんだ?」
「映像を見てもらえば早いわね」
着いたよつばに映像を見るように促す恵那。
そこに映ったのは一隻の円盤であった。どうやらこの円盤が地球に侵入したらしい。

「ポイントを割り出した結果、この円盤が出たのは南会津みたいね」
みるちーが手元のスイッチで地図を映し出し、ポイントを割り出す。目印の場所は赤く点滅していた。

「この円盤を探し出せばいいのか?」
「問題はこの後なの」
よつばは今にも出撃しようとしたが、ゆかの言葉で向き直った。
そして直後に映った映像ではもう一体の円盤が現れたのだ。
その円盤は出現するなり、先に現れた円盤を、発せられた白いビームで打ち落としてしまった。
フラフラとゆっくりと落ちていく円盤。

「おいこれって仲間割れじゃないのか?」
「それか敵対していて、片方が追われてるってとこかな?」
みうらとあずさでそれぞれの見解が異なっていた。
打ち落とされた円盤はそのままフラフラと森の中へと墜落し、爆発炎上する。
そして打ち落とした円盤も森の中へと侵入する。
そこで映像は円盤を見失い、終了した。

「以上の通り、南会津に現れた侵入者の調査が私達の目的よ。そして可能なら、
追われている方の宇宙人を救出する事。これが私達に課せられた使命よ。さあTEAM HOLY出動するわよ」
「了解!」

「ブルーエクレール発進します!」
恵那専用機体『ブルーエクレール』が先陣を切る。

「ホワイトトルネード、出るぜ」
「あたしも一緒だから心配いらないな」
みうらはよつばと一緒にホワイトルネードに乗り込んだ。

219 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:05 ID:???
「クリムゾンフレア、結城あずさ出撃します!」
「同じく木村澪、出ます!」
「堀江沙奈、行きます!」
クリムゾンフレアにも前回と同じ顔ぶれが乗っていた。
3機の機体は瞬時にして、現場にたどり着いた。
そこには追われている宇宙人が乗っていた円盤が無残に大破していたのだった。

「あ、あれ見て!」
沙奈が指差した方向には、追っていた方の円盤が何かに向かって地上に攻撃を仕掛けているところだった。

「人だ!」
あずさが下を見ると、それが人間である事に気づいた。恐らく女性であろう。
その女性に円盤は執拗に攻撃を仕掛ける。女性の近くで何回も爆発が起き、女性は地面に倒れこんだ。

「みんな、あの人を助けるわよ!」
「はい!」
恵那の指令に全員素直に従った。円盤の背後からレーザー攻撃を見舞う。
するとその円盤に効いたらしく、やや高度が下がる。
円盤はこちらの存在に気づき、向きをこちらに変え、ミサイルを放ってくる。

「おっと危ない!」
ギリギリの所で回避するHOLY。

「沙奈、澪!分離して一気にかたをつけるわよ!」
「分かったよあずさちゃん!」
「こっちも了解」
あずさの指示で、クリムゾンフレアは三機に分離する。
あずさの乗る1号機は正面から、沙奈と澪の乗る2号機と3号機は左右からレーザーで攻撃する。
その攻撃が命中した円盤は高度を落とし森に突っ込みそうになる。
だが、地面スレスレで再び高度を保ちながら、浮上してきた。

「あたし達も続こうぜよつば!」
「おうよ!」
今度はホワイトトルネードに乗るみうらとよつばが浮上してきた円盤に攻撃を仕掛ける。

220 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:06 ID:???
正面から攻撃を受けた円盤はバランスを崩し、高度が不安定となった。

「逃がさないわよ!」
とどめに恵那の乗るブルーエクレールが真上から円盤にレーザーを叩き込んだ。
これによって円盤はついに墜落した。
しかし、その刹那中から人間らしきものが円盤から脱出し、地上に降り立つ。
円盤は墜落した後に、爆発大炎上し、跡形もなくなった。

「みんな、着陸して追われている方の宇宙人を助けるわよ」
「了解!」
恵那達は機体を降下させて、着陸させる。件の宇宙人は逃げようとせずに、ゆっくりとターゲットと思われる女性に近づいている。

「あたし達、地球人とそっくりだ」
着陸して現場に駆けつけたよつばが最初に放った言葉だった。
彼女の言うとおり両者共地球人とまったくと言っていいほど地球人と似たような外見をしていたのだ。
そしてどちらも女性、それも美人であり、巨乳であった。

「そこまでよ!無駄な抵抗はやめておとなしく投降しなさい」
恵那は相手の襲いかかろうとする宇宙人に警告を発する。

「ちっ!」
分が悪いと判断したのか、女はその場から脱兎のごとく走り出す。

「あの女!逃げやがった!」
「追うわよ!私とみうらちゃんとよつばちゃんで追うから、三人はこの人を保護して!」
「了解!」
「よーし、絶対とっ捕まえてやる!」
こうして襲撃者を追うグループと被害に遭った宇宙人を保護するグループとに分かれて行動を開始した。

「いたぞ、あそこだ!」
追跡を始めた三人はほどなくして逃げる女を見つける事に成功した。
南会津の自然に覆われた道を苦もなくその女は走り続ける。
一度だけ、女はこちらを振り向いた後に再び向き直って走る。
その時によつばはある違和感を感じた。

221 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:10 ID:???
(気のせいかな?あいつが今笑ったように見えた)
しかしそれはほんの一瞬だった為に見間違いだったかもしれない。
一方のあずさ達はもう一人の宇宙人を保護していた。

「大丈夫ですか?私達の言葉がわかりますか?」
「ええ、わかります」
声をかけたのは澪だった。
返ってきた言葉は我々が使う言葉と全く同じ言語であった。
そして追われていた割には妙に落ち着いている。

(怖くはなかったのかな?)
それを見ていて沙奈はそんな思いを抱く。
それともあの状態からもう一人の宇宙人を撃退できる秘策でもあったのだろうか?
見た感じそうは思えないが。

「助けてもらって本当にありがとうございます。あなた達には感謝しています」
「いえ、当然の事をしたまでです」
感謝の気持ちを込めてお辞儀する女性の異星人。それに対してあまり表情を変えずにあずさは答えた。

(それにしても綺麗だな)
心の中で澪はそう思った。スタイルも抜群で特にそのバストはあずさや沙奈も息を飲んだ。

(何食べたら、そんな体になれるんだろ?教えてほしいな)
沙奈も決してスタイルは悪くないのだが、目の前の女性に比べるとどうしても見劣りしてしまう。

「とにかく安全な場所に避難しましょう!」
「立てますか?」
「はい、大丈夫です」
澪と沙奈が彼女に手を貸して立ち上がらせた。

「ありがとうございます」
女性は二人に笑いかける。優しく笑いかけるその顔は聖母のようだ。

「でもどうしてあんな事になっていたのですか?」
「それは・・・・・・・」
「言いづらい事なのか?」
「いいえ、そうではありません」
澪に聞かれた時は一瞬言いよどんだ女性だが、あずさに聞かれた時はハッキリと答えた。

222 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:14 ID:???
「私は自分の星で仲間と共に平和に暮らしていました。
しかし、突然あの円盤が現れ、私達に攻撃を仕掛けてきたのです。
武器を持たない我々には抵抗する間もなく滅ぼされてしまったのです。
しかし、私だけは何とか宇宙船で脱出する事に成功したのです。
だけど、それで諦める相手ではなく、1体が私を追ってきたのです。
私は無我夢中で逃げ、そしてこの地球へとたどり着いたのです。後は皆さんの話していた通りです」
「そんな事が・・・・・・」
「許せない」
話を聞いて、怒りを募らせるあずさと澪。しかし、あずさだけは冷静な態度を崩さないでいた。

「お礼に何か恩返しさせて下さい。何でもいたします」
「先ほども申し上げました通り、私達は当然の事をしただけです。お礼を言われる程の事はしていません」
「いえ、それでは私の気がすみません。どうかお礼をさせてください。こんな事ぐらいしか出来ませんが」
彼女がそのセリフを喋り終えるか終えないかの時、鋭い何かが彼女達に向かって飛んできた。
危険を察したあずさは二人を抱えてそれを回避した。

「どうやらそこのお人よし二人と違って、あなたは私の正体に気づいていたようね」
女の顔が先程までとはうって変わって邪悪なものとなる。

「何をするの!?」
「一体、どういうつもりですか!?」
「やっぱりあなたもあの侵略者の仲間だったのね」
突然の奇襲に動揺を隠せない沙奈と澪だが、あずさだけは違った。

「私の名前はエメノザ・トラスティーン。結城あずささん、あなたのご指摘通り侵略者よ」
声のトーンが変わり、妖艶な笑みを浮かべる彼女は手に何かを持っていた。
光り輝く鞭、それがあずさ達を狙う。

その頃よつば達が追いかけていた女は彼女達によって森に追い詰められていた。
女の目の前には木々が立ちはだかり、残り三方向もよつば達が完全に包囲している。

「追い詰めたぞ!もうお前は逃げられないぞ」
「追い詰めた?違うわね、私があなた達をここへ誘い出したのよ」
「何だと!?お前は一体何者だ」
「ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード。あなた方にとっての侵略者よ」
「ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード・・・・・・」
恵那が相手の名前を反芻する。

「向こうも今頃エメノザと戦っている頃でしょうね、あなた達TEAM HOLYは
まんまと罠に落ちたのよ」

223 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/08/14(木) 00:15 ID:???
Aパート終わり

224 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:15 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第13話 −骸−(2)


「ぜぇ…ぜぇ…っ」

小さな身体が軋み、荒い息が弾けていく。
上下に揺れる半身と同調した疲弊感を保ったまま、彼女は後ろを振り返った。

かろうじて視界が届く先の角に、まだその場所は存在している。
猫の亡骸を食い荒らす蛆と、血肉を啜る蝿の群れ。
生理的な嫌悪感を満たすには、十二分すぎる代物だった。
しかも、それが自分の眼前に広がり、多少なりとも身体に触れたとなれば、
それは不快感極まるものだろう。

忌まわしき場所が歪んで見えるのは、異常なまでのくそ暑さと疲弊による
体力の消耗だけが原因ではないようだ。

「ついてないなぁ……もう」

流れる汗が衣類に沁み込むような感覚を覚えながら、呟いた。
朝から、本当についていない。
元気一杯の声に返事は無く、身体を包むは、唾液の様に粘りつく異常気候。

そう、ついていない。

本当に、ついていない。

225 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:16 ID:???
がが…ががが……



ざらついた音がした。
出来損ないのスピーカーが、大音量で弾けた様な。
何かが何かとすれ違い、互いを破壊する音が。
砕かれ、潰れる音がした。
砕かれた物が挙げた声ならざる悲鳴は、智の鼓膜をつんざいた。

その音に、彼女は反射的に振向いた。


彼女の真横に、壁が広がった。
陽光を越えた熱を携えた『壁』は、熱気と熱波を纏い、彼女二人文程度の距離を空け、
後方へと疾駆した。

否、『飛んで』いた。

わずかに半時計状を描いて回転しているのが分かった。
それは何故か。

何故なら、それは『揺れて』いたからである。
側面から噴き上げる炎が、半時計の動きに揺れ、轟々と盛っていた。


炎と破片を散らしながら飛ぶそれは、放逐された卵が、壁にぶつかるようにして
壁面にぶち当たった。

そしてその中から、黄身ではなく白身でもなく、炎と黒煙が噴き上げた。

226 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:16 ID:???
「っ〜〜〜!?」

声にならなかった。
だが頬を一縷の汗が伝うと同時に、彼女は動いた。
何故か、恐怖心が無かった。

歩きが走りと成る前に、彼女はそこへ辿り着いた。

「うわ………」

チリチリと滾る炎が、その赤い舌を広げていた。
その上で、屑紙のようにぐしゃぐしゃになった乗用車が、地面とほぼ直角を成して
壁に突き刺さっていた。
智は車に詳しくは無かったが、何の変哲も無い車であると知覚した。
ただ、それが燃え盛る炎の中にあることを、除けば。

呆然と眺める智の前に、何かがごろんと転がり寄った。
ぶすぶすという音を立てて爛れる、車輪だった。

それの確認と同時に、彼女は覚醒した。

「救急車…!」

たどたどしい手付きで、彼女はキーを連打した。
その表情は緊迫感に彩られ、普段のおちゃらけさは微塵としてない。
119番という短い入力が、途方も無く複雑な数式のように思えた。

1119、1911、191…。

出来損ないの番号が液晶の中に刻まれていく。
何度目かの失敗を終え、彼女は頬に電話を添えた。

その時だった。

227 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:17 ID:???
車の、扉が開いた。
壁面のその身を押し当てている左の扉が、不自然なほど、自然な様子で開口した。

ひびの入った壁面をぐっと押して開いたドアを人間の腕が掴んでいると知ったのは、
炎が大きく揺らめいた刹那だった。


ガシャッ

したたかな音を立て、可愛らしいマスコット人形を携えた携帯電話が
地面に堕ちた。

電話が二度地面にぶつかる前に、少女の腕が炎の先の腕を掴んだ。

「うぐぐ……あぁっ!!」

そして彼女は渾身の力でそれを引き寄せた。
ずるり、という滑らかな摩擦音が感触として脳に響き、彼女は背中に鈍痛が走るのを感じた。

「あぐっ!」

倒れた時の反動で、僅かに首が上を向いた。
自分の、いつも心より成長を願っている二つの小丘の隙間から、うつ伏せに倒れている
人の姿が見えた。

暑さからか、袖を肘上まで捲り上げ安そうなズボンを履いたその姿は、
自分達が通学途中でもよく目にするサラリーマンと変わらなかった。

強いて言えば、袖を捲くった腕からは筋肉ではない余分な肉が食み出し、
脂肪の乗った両の腕にはバーコードさながらの体毛が生えていた。
顔は分からないものの、手を掴んだ際の脂ぎった感触からすると、
決して若くは無いだろう。

228 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:17 ID:???
起き上がろうとしたとき、智の頭に鈍痛が走った。
咄嗟の行動のため、受身の類が取れなかった。

中年男性を引き寄せた時の反動が、彼女の自重と相まって
地面に彼女を叩き伏せたのだ。

「痛たたた……ついてないな、もう」

鈍い痛みの残る根源をさすりながら、智は上体を起こした。
涙で霞む視界の奥に、ぱちぱちと弾ける炎が見えた。

「……あれ?」

視界が完全に回復する前に、彼女は気付いた。

男性が、消えている。

最後に男性の姿を見たのは、今彼女がこの情報を知覚してから20秒と無い。

また、この先の通路は、眼前で燃え盛る車と崩れた壁面によって塞がれている。
仮に移動するとすれば……。

229 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:23 ID:???



ぶじゅ、ぐしゅ、ぐじゅ。




その音は、彼女の背後から、たこさんウインナー状の髪型越しに響いた。

ぐじゅ、ぶしゅ、じゅ。

その音に、智は生理的な嫌悪感を覚えた。
粘性を持った液体が噴出すような、或いはそれを掻き混ぜるような、
粘っこくて、陰湿な音。


そして彼女は、地面に身を委ねたまま、静かに背後に首を向けた。


人がいた。
その人は、立っていた。
陽光を背に、自分を見下ろしていた。


それは、「そいつ」は。

ヒトの、人間の男性の顔と。
ぶちゃっと潰れた、腐った果実のような口を持っていた。



その「口」が、腐肉に群れる蛆虫のように、ぐちゃぐちゃと蠢き、
耳まで一気にがばっと裂けた。






to be continued

230 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:31 ID:???
「覚悟はいいかしら?TEAM HOLYの皆さん」
ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルードと名乗った女の右手に
赤い棒状の武器が出現し、握られている。

「行くぞぉ!あたしは誰にも負けない!」
しかしよつばはそれに臆することなく一番に突っ込む。
手に持ったハンドガンでゼレルに狙いを定める。

「甘いわ!」
ゼレルはよつばが撃つよりも先にその武器でよつばの顔面を殴った。
その棒が彼女の鼻にクリーンヒットする。

「うっ!」
顔面を殴られたよつばは大きく吹き飛んで倒れこんだ。殴られた際の衝撃で鼻から出血もしていた。

「よつばちゃん!」
「この野郎!!よくもよつばを!」
よつばがやられたのを見て、恵那とみうらがハンドガンを取り出して同時発射する。

「甘いわね」
しかし、ゼレルは顔色一つ変えずに優雅な身のこなしで銃弾をかわしてしまった。
「やっ!」と気合の声を発すると彼女は、その棒をブーメランのように投げてきた。

「あっ!」
「っつ!!」
それは正確に銃を持つ彼女達の手に当たった。その痛みの為に彼女達は銃を落としてしまう。
そして、ゼレルの投げた棒は正確に彼女の手元に返ってきた。
一寸の狂いもない。鮮やかな棒さばきだ。

「どうしたのかしら?まさかこれで終わりとは言わないでしょうね」
ゼレルは挑発の言葉を投げかけてきた。

「当たり前だ。こんなんで終わるあたしじゃねーよ!」
よつばが立ち上がって、今度は動きながら銃を撃つ。
しかし、ゼレルはその動きを見切って、一瞬にしてよつばの懐に入り込んだ。

231 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:33 ID:???
「なっ!」
「威勢がいいのは結構だけど、それだけで勝てるほど甘くないわよ。私はね」
ゼレルは表情を変えずに、棒による突きを連続で放ってきた。
その突きをよつばは回避する事が出来ずに全段くらってしまった。

「がふっ」
再び大きく吹き飛ばされてしまったよつば。今度は後方にあった池に落ちてしまう。

「よつば!」
「よつばちゃん!!」

「向こうも始めたみたいね。さあこちらも始めましょうか」
エメノザが振るう鞭があずさ達に差し向けられる。三人は最初の一撃は何とか回避する事に成功した。

「遅いわね、それで回避したつもり?」
しかし、エメノザはすぐさま第二撃を振るってきた。

「危ない澪ちゃん!」
その鞭は澪に対してふるわれたものだったが、沙奈が咄嗟にかばうことで澪は事なきをえた。
しかしそれと引き換えにに沙奈がまともに攻撃を受ける事となってしまう。

「きゃああああ!!」
攻撃を受けた沙奈の体から、ビリビリと電流が流れだした。
その一撃によって沙奈は悲鳴をあげて気絶してしまうのだった。

「あら?これで気絶しちゃうなんて地球人にはこのサンダーウィップはきつかったかしら?」
気絶した沙奈を見て嘲り笑うエメノザ。

「許さない!よくも沙奈を!」
それを見たあずさが、銃を構える。だが、撃つより先にサンダーウィップがあずさの体を捕らえた。
この武器に拘束され、身動きがとれなくなったあずさ。

「サンダーウィップの味をその体でもって味わってみなさい」
そこから電流が流し込まれる。

232 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:36 ID:???
「あああああああ!!」
大きな苦悶の声をあげて、あずさは崩れ落ちる。

「さて、残るはあなただけね。じっくりといたぶってあげるわ」
「あ……」
澪は逃げようとするが、すくみ上がってしまい動けなかった。
声を絞り出すのがやっとだった。
そんな澪を見て、エメノザはとても口元を不気味に歪める。とても残忍な笑みだ。
エメノザのサンダーウィップが澪に振り下ろされる。

「きゃあああああ!!」
為す術もなく、澪はその一撃をくらい悲鳴をあげる。

「安心しなさい。他の二人と違ってあなたへの一撃は出力を弱めにしてあるから。
あなたのその怯えた表情たまらないわ。私にもっとその顔を見せて」
恍惚とした表情を浮かべながらエメノザはサンダーウィップで澪の体を叩いた。

(こ、この人普通じゃない)
鞭で打たれながら痛みと共に狂気じみた目で攻撃してくるエメノザに澪はかつてない恐怖を感じた。
痛い、怖い、逃げたしたい!
彼女の頭の中はエメノザに対する恐怖で支配されていた。
彼女は恐怖のあまり涙すら流していた。
そしてエメノザはそんな澪を見てさらに興奮して鞭をふるってくるのだった。
一方のみうらと恵那もゼレルに応戦するが、
再び撃った銃弾はゼレルが棒を高速回転させる事でそれらを叩き落としてしまう。
そして再びその昆を再び二人に伸ばしてくる。
みうらは後ろに下がって、恵那は上に飛び上がってそれを回避する事にした。

(大丈夫、もう一歩下がればこの棒のリーチをギリギリ外れる)
そう判断したみうらだったが、ゼレルの昆は思わぬ形で二人に襲いかかってきた。
何と三本に分割されて襲いかかってきたのだ。

「な!?う!!」
思わぬ攻撃にみうらは回避しきれずにそのまま胴にクリチィカルヒットさせる羽目に。
ずしりと重い衝撃がみうらの体に伝わり、倒れこむ。

「三節昆!?」

233 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:44 ID:???
「その通り。そして飛んだのは失敗だったわね。隙だらけよ」
ゼレルは上空に飛んだ恵那に対して三節昆を伸ばしてきた。

「ぐっ!」
とっさに体を捻って胸への一撃は避けたものの、それでも背中に三節昆の一撃をくらってしまった。
くぐもった声をあげて倒れこむ恵那。

「みうらちゃん!恵那ちゃん!」
「こっちもまずいみたい。澪ちゃんが。沙奈ちゃんとあずさちゃんも」
HOLY基地のモニターにはそれぞれの戦いが映されており、劣勢である事は誰の目にも明らかであった。
いてもたってもいられなくなり、みるちーは飛び出そうとする。

「待ってみるちー!どこへ行くつもり!?」
すかさずゆかが制止する。

「決まってるじゃん!みんなを助けにいくんだよ!」
「待って!何の対策もしないで飛び出すなんて危険よ!」
「でもこのまま黙って見過ごす事なんて出来ない!」
しかし、みるちーはゆかの制止を振り切り飛び出してしまう。

「ちょっとみるちー!もう!」
みるちーが飛び出した後、しばらくその場でどうするか悩んでいたゆかだったが、
モニターで苦しむ仲間達を見て放っておけなかったのか基地を後にする。

「あなた達にいいのを見せてあげる。こんな事も出来るのよ」
ゼレルは淡々と説明すると、何かを胸元から取り出して、三節昆につける。
すると三節昆が真っ赤な炎に包まれ燃えだした。どうやら先ほど出したものは発火装置らしい。

「何だか、昔智とやった格闘ゲームにあんたみたいなのが出てきたのを思い出したよ」
こんな状況だというのに、みうらは智と遊んでいた時の事を思い出した。
あの時の智は無邪気にはしゃいでいたっけ。

「そう。それは光栄ね。でもこれはゲームではなく現実よ。いくわよ、ファイヤーエレメンタル!」

234 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 03:17 ID:???
ゼレルの棒から火炎がみうらと恵那目がけて放たれる。みうらは恵那を抱えつつ、かろうじてかわした。
外れた火炎は後ろの木々に当たり激しく燃え盛った。
数秒としないうちに燃え尽き、黒焦げになった樹木が無残に姿を曝している。

「恵那、大丈夫か!?」
「う、うん!何とか」
「もう限界かしら?意外と手ごたえがないのね」
ゼレルの瞳には明らかに失望の色が混じっていた。
その時、後ろから銃弾が飛んできてゼレルの脇をかすめた。

「う、動かないで!動いたら撃つ!助けにきたよ恵那ちゃん、みうらちゃん!」
振り返るとそこには銃を構えたみるちーがいた。しかし、その手に持つ銃は震えている。
無理もない。これが彼女にとって初めての実戦になるのだから。緊張するなと言う方が無理だ。

「援軍到着らしいけれど、どうやらこの三人以上に期待できそうもないわね。
冷静さを失って私に勝てるほど甘くはないわよ」
「みるちー、駄目だ、逃げるんだ!」
「みるちーさん!」
「無駄よ、あなたは私から逃げられない。いえあなた達ね」
ゼレルは飛び上がった後に、勢いよく棒を地面に叩きつける。
すると、そこから衝撃波が発生して、三人に襲いかかった。

「デストロイストームって名前よ」
「うわあああ!」
「きゃああああ!」
その衝撃波に巻き込まれ、三人は大きく吹き飛ばされた。
よつばのように池に落ちる事はなかったが、恵那とみうらは木々にぶつかり、
みるちーも地面にうつ伏せに倒れていた。

「えい!」
「え?くっ!?」
一方でエメノザの方でもゆかが助けに入っていた。
エメノザに対して、ゆかは横から体当たりしてエメノザを倒れさせた。
エメノザの体重がそれほどないからであろう。
予期せぬ攻撃だったことも大きい。

これによって澪がサンダーウィップの猛威から解放されたものの、彼女はぐったりしていた。

「澪ちゃん、しっかりして!澪ちゃん!」
体を揺すってみると反応があったのでまだ生きている事は間違いない。
安堵するゆか。
だが、目の前にはエメノザが悠然と立ちはだかる。

「私の楽しみを邪魔するなんていけない子。次はあなたに私の相手をしてもらうわよ」

235 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 03:21 ID:???
新しい玩具を見つけたと言わんばかりに目を輝かせるエメノザ。
サンダーウィップがゆかを狙う!
ゆかはそれに合わせてサンダーウィップを持っている右手を狙って発砲する。
持っている武器を撃ち落として敵を無力化させようというのだ。
先程の体当たりで倒れる事からも、相手は格闘戦を得意としていないだろう。
武器さえ奪ってしまえば、勝ち目はある。ゆかはそう踏んだのだ。

しかし、無情にも銃はエメノザの手をかすりこそしたものの、
武器を落とすまでには至らず、ゆかはサンダーウィップの手痛い反撃を受けてしまう。

「うあっ!そんな」
体中に電撃が走り、ゆかは地面に倒れこんだ。

「残念だったわね、着眼点は良かったのだけれど、いきなり実戦で当てようだなんてムシが良すぎね。
さあ、あなたはどんな悲鳴を聞かせてくれるのかしら?さっきの子みたいに
怯えて涙を流してくれると最高だわ」
エメノザは不敵に笑って再び、鞭を振るおうとする。その目にゆかも恐怖を覚えた。
完全に気圧されてしまい、動けなくなっていた。

「そうはさせない!」
「ゆかちゃんから離れて!」
そこに気絶から立ち直ったあずさと沙奈がゆかを庇うようにエメノザの前に立つ。

「あら?ようやくお目覚め?でも悪いけどあなた達にはもう一度眠ってもらうわ」
しかし、エメノザはそんな二人を嘲笑った。
そしてサンダーウィップを薙ぎ払うように振ってきた。
三人とも素早く繰り出される攻撃に反応出来ず、電撃の餌食となる。

「きゃあ!」
「くっ」
ゆかと沙奈が悲鳴をあげて倒れこんだ。胸のあたりにバチバチと電撃による痛みが走る。
が、あずさだけは何とかその場に踏みとどまった。

「よく耐えたわね。でもそれに何度耐えられるかしらね?」
(人を人とも思ってない。最低な奴だ)
ゆかや澪と違い、あずさはエメノザに対しては嫌悪感で一杯になった。

236 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 03:24 ID:???
『よつば、よつば』
誰かがよつばを呼ぶ。その声でよつばは目覚め、慌てて地上に上がりでる。

「セイバー。あたしは気絶していたのか?」
『そうだ、そして今、君の仲間達は危機に瀕している』
「何だって!?」
セイバーの言葉を聞き、よつばは周囲を見渡す。
するとゼレルによって恵那、みうら、みるちーが、
エメノザによって澪、沙奈、ゆか、あずさが追い詰められていた。

「みんな!」
よつばは慌てて駆けつけようとするが、セイバーはそれを制止する。

『今の君ではこの状況を覆すのは難しい』
「だったらあんたの力を貸してくれ!」
よつばはそう言って変身アイテムスターフラッシャーを胸から取り出す。
セイバーは返事こそしなかったものの、そのスターフラッシャーが光り輝く事でその答えは十分だろう。
今回よつばはセイバーの名前を叫ばずに変身することになる。

まばゆい光がよつばを包み込み、その姿をウルトラマンセイバーへと変える。
相手が人間大の為か、セイバーも巨大化せずに等身大の姿だ。

「はっ!」
変身したセイバーはまず、ゼレルに対して光線技を出して牽制する。
セイバーショットと呼ばれる楔型の光弾だ。

「ウルトラマンセイバー!まさかあたなが現れるとはね」
ゼレルはセイバー出現に驚くも、すぐに表情を戻す。

「セイバー、来てくれたんだ」
恵那達はセイバーの姿を見て安堵する。

「だっ!」
今度はエメノザの方に先程と同様の光線を放ち、彼女のサンダーウィップを落とさせる。

「あら、あなたの方から出向いてくれるなんて好都合だわウルトラマンセイバー」
エメノザはゼレルと対照的に全く動揺しなかった。

Cパートへ続く

237 ::第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:03 ID:???
「なかなか面白い事をしているな。俺も混ぜてもらおうか」
突然、どこからともなく低い声が響く。

「誰だ!?」
全員が声のした方向を向くと、高い木の枝の上に一人の男が立っていた。

「貴様は!?ブラッド・クライア!?」
ゼレルとエメノザは驚愕すると同時に敵意の眼差しを向ける。

(あの人は確か……)
気絶から立ち直ったあずさはかつてテロチルスとの戦いの時にいた人物である事に気づいた。
ブラッド・クライアと呼ばれた男は明らかにこちらを挑発するように、見ている。

「また会ったなゼレル、エメノザ。そして初めまして地球人並びにウルトラマンセイバー。
この俺もまた地球を狙う侵略者だ」
「わざわざこんなところに来るなんてよほど私達に殺されたいようね」
「殺す?この俺を?おいおい冗談はやめてくれ」
エメノザの発言にも眉ひとつ動かさずに、手をこちらにかざすと、光弾が発射された。
それはセイバーとゼレル達がいる手前に着弾し、爆発する。
もう一発発射され、それらは恵那とみうらの手前で爆発した。

「きゃあ!」
「大丈夫か恵那!?」
「う、うん大丈夫」
恵那もみうらも怪我らしい怪我は負っていない。どうやら威嚇射撃だったらしい。

「貴様!」
「まあそういきりたつな。今回はお前たちと一戦交えるつもりはない。
あくまで地球人達に挨拶に来ただけだ。この俺という存在を知らしめる為にな。
この後はTEAM FLAMEにも宣戦布告をしにいくところだ。
この地球いや全宇宙はこのブラッド・クライアさまのものだという事を理解するがいい。
地球人類はもちろん、お前達も隙あらば抹殺してやろう」

言いたい事を言って彼はこの場からテレポートしていった。
直後に一体の円盤がここに姿を現した。
一角獣を思わせるデザインをしたその円盤はモノケロスと呼ばれていた。
先端は一角獣の角を思わせる程、鋭く尖っている。

238 ::第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:07 ID:???
「そいつは置土産だ。モノケロス、存分に相手をしてやれ」
ブラッド・クライアの声が最後に響き、円盤はミサイルを無差別に発射する。
それはゼレル達をも巻き込んだ。

「だっ!」
とっさにセイバーは全員を守るためにバリヤーを展開する。
恵那達の周囲に円形状のバリヤーが出現し、彼女達を守るように包み込む。

「あ、危なかった。ありがとうセイバー」
助けてもらったお礼を言う恵那。

「くっ、本当に見境ないわね。とにかくここは退くわよエメノザ!」
「分かってるわよ。でもこいつを呼んでからよ。来なさいデシモニア!」
エメノザが何か機械を取り出して、ボタンを押すと、もう一機の円盤が姿を現した。
臓器がむき出しなったオブジェに見えるそれはぐんぐんと高度を下げる。
頭頂部が刃物のように尖っており、全身が悪意の塊だった。

「うわ、何だあれ気持ち悪い」
デシモニアの造形に吐き気を催すみうら。それ程までにこの円盤のデザインは醜悪だった。
恵那も言葉こそ発しないものの不快感に顔を歪めていた。

「標的はウルトラマンセイバー、並びに地球人達よ。
余裕があればあのモノケロスも相手してあげなさい。じゃあね皆さん。せいぜい楽しんでってね」
「ワカリマシタエメノザサマ」
エメノザとゼレルもまたデシモニアとは別に飛来した宇宙船へと吸い上げられていった。
聞くものに強烈な不快感を与える高音でデシモニアは返事をする。

そして、デシモニアとモノケロスが光線の撃ち合いを始めた。お互いに敵と認識したのだろう。
さらにはそれとは別にセイバー達に照準をロックしていた。

「だあっ!」
このままの状態で戦うのは不利と判断したのか、セイバーは腕をクロスさせた後に巨大化する。
モノケロスもデシモニアもそれを見てまずはセイバーを倒すべきと判断したのか、
左右から挟み撃ちしてきた。
セイバーに狙いを定めたモノケロスからミサイルが発射される。
さらにデシモニアからはその体を構成しているオブジェの小型版とも
言えるものが大量に発射された。

239 ::第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:10 ID:???
「危ないセイバー!」
みるちーが声をあげる。しかし、セイバーは発射された砲撃を回避する。
小型デシモニアの攻撃もセイバーは手と足を使い、次々と叩き落としていった。
しかし、頭頂部から発せられるビームに被弾してしまう。

「ぐおっ!」
カラータイマーのすぐ近くに当たりよろめくセイバー。
さらに後ろからモノケロスが角にあたる先端をセイバーの背中目がけてぶつけてきた。

「うっ」
うつ伏せに倒れこむセイバー。デシモニアは自分の分身とも言える小型の塊を発射する。
だが、それはセイバーにではなく恵那達に向けられたものだった。
大量の小型デシモニアが彼女達を狙っている。

「こっちに来るよ!」
青ざめた顔でゆかは皆に警告する。そしてモノケロスはセイバーに向かって
砲弾の雨を浴びせた。その場で膝をつくセイバー。

「澪、沙奈!しっかりして!!」
見るとあずさが二人に向かって必死に呼びかけている。
沙奈はまだ気絶しており、澪は先ほどのショックから立ち直れていないのか
震えながら頭を振っている。

「怖い、怖いよ」
とつぶやいていた。小型デシモニアはデシモニアと同じように光弾を発射してきた。
彼女達の周辺で次々と起こる。被弾こそしていないものの、このままではやられるのも時間の問題だ。

「何とか反撃しないと!」
「でも数が多すぎて、とてもじゃないけど落としきれない」
「二人を守りながらだととても厳しいわ」
恵那が反撃を試みようと提案するも、みうらの言うとおり敵は数にものを言わせて攻めてくる為に、
銃を撃つ暇すら与えてもらえない。さらにあずさは沙奈と澪の二人を守りながら行動している為、より一層厳しい。
小型デシモニアは勢いを緩める事なく、光弾を連射してくるのだった。

「一体一体は弱いけど、数が多すぎてキリがない!」とみうら。

240 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:13 ID:???
「はぁっ!」
その時、モノケロスによって劣勢に立たされていたセイバーが、前転しつつも攻
撃を回避しながらこちらへやってきた。
そして、体勢を整えると同時に、手からセイバーショットと
呼ばれる楔型の光弾を発射して、小型デシモニアを次々と落としていった。
発射された光弾もすべてセイバーの手刀で叩き落されていった。

「セイバー、助かったわ」
恵那を含めてHOLYのメンバーは安心からかその場に膝をつく。

「であっ!」
セイバーはデシモニアとモノケロスに向き直るとファイティングポーズをとった。
モノケロスは先ほどセイバーにダメージを与えた先端部分で攻撃を仕掛けてきた。
だが、セイバーは今度はどっしりと腰を落とし、その一撃を両手で受け止めた。
モノケロスはなおも勢いを止めずにセイバーを吹き飛ばそうとするが、セイバーも両足を使ってグッとこらえる。
そこにデシモニアがセイバーに追い打ちをかけようと近づいてきた。

「だああああ!!」
セイバーはそれを見て、力一杯モノケロスをデシモニアの方に投げ飛ばした。
ガシャアアアアンという轟音と共に二つの飛行物体はぶつかった。
とりわけモノケロスの方がダメージが大きかったのか、どんどんと降下していく。
しかし、それでも砲撃による攻撃の手を緩めようとしない。

「いりゃあああ!」
そんなモノケロスに腕を十字に組んで放つ紫色の必殺光線ライトニングストリームだ!
それは見事に命中し、モノケロスの船体をぶち抜いた。
そしてその船体は地上に墜落して爆発する前に空中で木端微塵となるのだった。

「やった!後はデシモニアだけだ!」
みうらがガッツポーズをとる。みるちーとゆかも微笑んだ。
セイバーは続けてデシモニアにもライトニングストリームを放つが、
デシモニアは自分の体の周囲に装甲板を発生させて光線を防いでしまった。

「バリヤーですって!?」
「セイバー、負けるな!」
敵がバリヤーを使ってきた事に驚くするゆかと、セイバーにエールを送る
ゆかと対照的な反応だった。

241 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:17 ID:???
バリヤーを出現させて光線を防いだデシモニアはその場で回転しつつ、
光弾をセイバーに向かって集中攻撃してきた。

「はっ!」
しかし、セイバーも両腕を大きく広げる事でバリアーを発生させて、
デシモニアによる攻撃を防いだ。恵那達を助けたバリヤーを今度は自分自身に
張ったのだ。紫色のバリヤーがセイバーの周囲に発生する。
この事によりデシモニアは形勢不利と方向転換して逃げ出そうとする。

「おおおおおお、ゼアッ!!」
セイバーはそれを見て、手から赤い光の刃『グランセイバー』を出現させる。
そして、そのまま大きく飛び上がりデシモニアに切りつける。
グランセイバーの威力は凄まじく、デシモニアが発したバリヤーさえ無力化してしまった。
これによりデシモニアは真っ二つに切断されたのちに、地上に落下して爆発するのだった。
こうして敵の侵攻を何とか食い止める事に成功したのだった。

「……」
勝利を納める事に成功したセイバーだが、どこか割り切れないものがあった。
いつもならすぐに飛び去るのだが、今回は何を思ってかその場に留まっていた。
やがて胸のカラータイマーが青から赤に点滅を始めると、その場でその姿を消す。
そしてよつばの姿に戻るが、よつばの表情もどこか冴えない。

(勝てなかった。セイバーがいなければみんなやられていた)
それでも無事を知らせる為にみんなの前に明るく振舞って姿を現す。

「よつばちゃん!良かった、無事だったんだね!」
「まったく心配させんなよ!」
みうらと恵那がよつばの頭を軽く叩きながら無事を喜び合う。そこにみるちーとゆかも加わる。

「こっちも何とか無事。でも沙奈はまだ気絶したままだし、澪もショックの為か気を失っているわ」
二人を抱えたまま、あずさは暗い顔で伝えた。

「無理もないか。あんなに酷い目にあわされたんだから」
「というか、完敗だったね私達。あの宇宙人達に手も足も出なかった」
恵那の言葉に誰もが憂鬱な気分になる。
みうらは八つ当たりなのか、近くの石を思い切り蹴飛ばしていた。

242 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:18 ID:???
(抜群のチームワークを誇っているようだけど、もしそのチームワークを
崩されたらどうなるかな?)
出撃前に京介から投げかけられた言葉がよつばの心に重くのしかかる。
よつば自身が漠然と感じていた不安が現実のものとなったのだ。
戦力を分断されてしまったが為に、思うように戦う事が出来ずに結果、
完敗を喫する事となってしまったのだ。

「でも大丈夫だよ、私達にはウルトラマンセイバーがいるもの」
「そうね。セイバーの存在は私達にとって非常に心強い存在だもの」
「今回だって危ないところをセイバーに助けてもらったもんな」
みうらやみるちー、ゆかはセイバーの事を口にして、明るく振舞った。
その一言に光を見出したのか、沈みがちだった皆の表情が明るくなる。

「彼さえいてくれればどんな侵略者が来たってこの地球は安全ね」
「まさに彼は地球にとっての守り神だね」
あずさも澪と沙奈の二人を抱えながら笑いかける。恵那もそれに同調する。
しかしどことなく無理してそう振舞っているようにも見える。

「あ、沙奈ちゃんは私が持つわ」
「助かる」
恵那はあずさから沙奈を引き取り、背中に背負った。
沙奈の体重はそれほど重くなかった為か、恵那でもそれで歩く事が出来た。
ほどなくして澪と沙奈は眼を覚ました。

「歩けるか?澪」
「うん、ごめん」
「沙奈ちゃんは?」
「大丈夫だよ、この通り」
目覚めた二人はそれぞれ、地面に降りて自分の足で歩きだす。
しかし、幾分元気を取り戻した沙奈と異なり、澪の足取りは重い。
それはよつばも同じだった。

(セイバー、あたしはどうすればいい?あの宇宙人達に勝つにはあんたに
変身するしかないのか?答えてくれセイバー)
だが、セイバーはよつばの問いかけに何も答えてはくれなかった。
今のよつばの心を象徴するかのように、陽が落ち夜へと変化していった。
第4話  終    第5話へ続く

243 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:40 ID:???
次 回 予 告
ケムジラと呼ばれる怪獣が何者かの手により復活した!
そしてそれに呼応するかのように、かつてウルトラ四大戦士
(ジャスティス、レイ、コスモス、シェイド)を
倒した火山怪鳥バードンが驚異の復活を遂げる。
とある事により、さらなるパワーアップして……

「行け、お前の目的はウルトラマンセイバー抹殺だ!」
「怖い、怖いよ!」
エメノザによって植えつけられた恐怖心から逃げ出してしまう澪。

次 回 ウルトラマンセイバー
第5話 「バードン復活!セイバー大ピンチ」
「セイバーが燃やされてる!?」

244 :ケンドロス ◆iz2iCuGRGQ :2009/03/03(火) 23:40 ID:???
色々あってこんな遅くなってしまいました。本当にすいませんでした。

245 :27下駄 ◆FoWMLIHGkc :2009/05/24(日) 04:32 ID:???
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1243105736/
遅くなりました。
見やすくするために連載場所を移転しました。
続きはこちらからとなります。

246 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2009/11/15(日) 22:18 ID:???
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1257867148/l50
現在はこちらに移転して書いています。

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