世の中のすべての萌えるを。

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[他作品]クロスオーバー・あずまんがSSスレッド-参[混合]

1 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2007/02/18(日) 20:33 ID:???
クロスオーバースレも3スレ目となりました。
ここはあずまんが×他作品のクロスオーバー作品用スレッドです。
あずまキャラを他の世界観に置き換えたり、また逆も然り。
そんな想像を作品にしてどんどん投下していって下さい。
また〜り楽しんでいただければ幸いです。

★主な注意事項
1.原作の対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
2.ここの作品はいわゆる「戦い系」の長編作品を多く含みます。
3. その場合、あずまんがキャラでの戦闘を描いている為、原作の雰囲気を変化させ、またキャラクターも
  精神的・身体的に強化されているものもあります。
4. あずまんがキャラと、SSの作者のオリジナル・創作キャラクターとの共演もあります。
5.他人の作品に対し罵倒、中傷は絶対にしないでください。
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します

2 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2007/02/18(日) 20:35 ID:???
★このスレッドでの注意事項
1. 作品の展開・都合により「『あずまんが大王』『よつばと!』のキャラが死亡する」、
 「『あずまんが大王』『よつばと!』キャラの身体・精神が傷つく」
 等の(精神面を含む)暴力的な表現、またグロテスクな描写が出る場合があります。閲覧は自己責任でお願いします。

その様な描写を含む場合、作者は、自身で文章中の暴力・グロ表現の程度を考えた上で、
予め注意書きのテンプレートである

===========================
この作品はグロテスクな表現が含まれています!
閲覧は自己責任で!!!!!
===========================

を投稿する文の一番上に記載する事をお勧めします。
また、単純に殺人・猟奇・グロのみを扱ったSSの投稿は
『グロまんが大王』
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081698529/1
でお願いします。

2. クロスオーバーなので他の作品との絡みがあります。
   その系統が苦手な方には、申し訳ありませんがあまりお勧め出来ません。

3.エロ、非エロのどちらを書かれても構いません。
  但し、板の性質上、過激なものは避けてください。
  (ソフトなえっち程度ならOKです。)

4.常にsage進行でお願いします。強制下げになっていますが、万一スレが上がってしまった場合は、
  感想などでスレに書き込む際、メール欄に「supersage」と入力してください。

5. 大型AAについては文章スレッドであるので使用しないでください。

6. スレの趣旨に関係のない書き込みはしないでください 。

7.作者さん達はどんなに遅くてもいいので自分で創作した物語を完結させるように頑張ってください。

8.合作・リクエスト等の打ち合わせや、長くなりそうな議論・雑談等は『あずまんがラウンジ』の「SS書きの編集会議室」
  にて行ってください。

9.他のスレ、板、およびHPから、このスレに転載された作品は批評しないでください。

3 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2007/02/18(日) 20:37 ID:???
主な関連スレッド・及びサイトへのリンク

前スレ
【他作品】クロスオーバー・あずまんがSSスレッド-2-【コラボ】
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1137063697/
【他作品】クロスオーバー・あずまんがSSスレッド【コラボ】
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1125758648/
SS書きの編集会議室 4
ttp://so.la/test/read.cgi/azuentrance/1131446577/
【あずまんが】SS書きの控え室7
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1115481963/l50
あずまんがSSを発表するスレッド パート4!!
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1115996693/l50
SS書きの控え室@大阪板 SSまとめ
ttp://azu.qp.land.to/
修正した作品のまとめサイト転載用うpロダ

4 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2007/02/18(日) 20:37 ID:???
遅くなりましたが次スレです。
只今沈下作業中です。

5 :名無しさんちゃうねん :2007/02/18(日) 22:16 ID:???
>>1
乙です。

6 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/02/22(木) 23:22 ID:???
>>1
乙かれさまです。

7 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:43 ID:???
ウルトラマンジャスティス
第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」
最強生命体ゼルエム  破滅怪獣バラッシュ 登場

前回までのあらすじ
宇宙空間に漂うちよ父は最強の存在でもある宇宙恐竜ゼットンを送り込んだ。
これに対し、平井百合子、春日翔、榊弥生、春日歩は疲弊しきった体に鞭打ちながらも、
ウルトラマンシェイド、ウルトラマンコスモス、ウルトラマンレイ、ウルトラマンジャスティスへと変身する。
ゼットンの圧倒的な力に追い詰められつつも、HOLYの協力もあって彼らはゼットンを倒す事に成功する。
だが、その過程で彼女達は自分達の正体を知られてしまう。
そしてゼットンを倒されたちよ父はついに……

「どうやらこの俺自ら出向かねばならないようだな、地球へと!」
地球にかつてない危機が訪れる。

『歩、いよいよだ。最後の戦いの時が近づいてきている』
「あれが来るって事やな」
『そうだ。そしてその戦いが終わった時、私と君の別れの時だ』
深層世界にてジャスティスと歩は向かい合っていた。今回ジャスティスはジュリの姿を
とらずにそのままの姿でいる。

「やっぱり帰ってしまうのん?ずっと一緒にはいられないん?」
『以前にも言った通り私はいつまでもこの星にはとどまる事は出来ない。
限界が近づいているとな』
「さみしゅうなるな〜」
『正直どこまでもつか分からない。もしかしたら死ぬかもしれない。
しかし私は最後の炎が消えるその瞬間まで戦う!』
「ジャスティス、弱気になったらあかん!ポジティブシンキンやで」
『そうだな』
ジャスティスが笑ったように歩には見えた。そしてジャスティスが姿を消していく。

『ゼットンという最強の存在を失った今、次は恐らく奴自身が来るだろう』
「あの人形の事?」
『そしてその戦いが私達にとっての最後の戦いとなる』
「最後の戦い・・・・・」
こちらでも深層世界にて榊とレイが会話をしている。

8 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:46 ID:???
『ジャスティスと歩は以前からそうだったが、私と弥生もゼットンとの戦いでのダメージが
尾を引いていて、残ったパワーはほとんどない』
「レイ・・・・・・」
榊は歩と違い、目に見えて弱っている事はなかった。

『ジャスティスはこの戦いが終わったら恐らくまたどこか別の星を守る任務をつくだろうな』
「レイはどうする?」
『分からないな。その時になってみないと』
「・・・・・・・」
答えるレイにどことなく不安を感じた榊だった。

『弥生!私は君の大切なみんなを守りたいという思いから生み出された。
弥生が守りたいと思うものを私は守りたい。そして弥生の事も私は守りたい!その気持ちに嘘偽りはない!』
「私も同じ気持ちだ。そしてレイ、あなたの事も」
レイからの気持ちを聞かされた榊もまたハッキリと気持ちを口にする。
二人は改めて互いの絆を確かめ合う。そしてレイは姿を消す。
榊が目を開けるとそこには歩やちよを初めとするメンバーの顔がそこにあった。

「おはよう弥生ちゃん。あたしよりお寝坊さんやな〜」
「何言ってんのよ!あんただってついさっき起きたばっかじゃない!」
のんびりとした口調で話かかけてくる歩とそれに突っかかるかおりんの姿があった。

「まあまあかおりん、そんな事で怒ってもしょうがないよ」
「よぉ榊。思ったよりも元気そうだな」
千尋がかおりんをなだめ、神楽が気さくに話しかけてくる。

「さっきまでゆかりちゃんとにゃもちゃんが見舞いに来てたんだけどよ。ゆかりちゃんってば
すげーんだぜ!大阪や榊ちゃん、翔に百合子の正体を一発で当てちゃうんだから!」
智はやや興奮気味に話す。それだけゆかりが正体を知っていた事に衝撃を受けたのだろう。

「二人とももう大丈夫なのか?」
「うん」
「心配かけてごめんな〜」
暦に尋ねられ、二人はちゃんと立ち上がってそれに答える。

「翔や百合子はどうしたんだ?」
「まだ眠っています。さっき静さんや咲月さんや七瀬さん、
美空さんや瑠菜さんがお見舞いに来てましたよ」
暦に聞かれてちよはそれぞれの友人が来ていた事を伝える。

9 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:48 ID:???
「二人も大変やったんやな」
「ゆりゆりは私達を守ったりしながら、一人で戦ったりもしてたから」
歩と榊はこれまで共に戦ってきた二人に思いを馳せる。

「百合子は百合子で大変だったみたいだな。セラフィムだっけ?そういう奴と戦ってたんだろ?
あと前に私達の前にいた霧生仁とかっても戦ってたらしいし。大変だよな」
神楽はその辺の事を妹分である堀江紗奈から聞いている。

「私達が平和だと思っていたところで必死で戦っていたって事だよね?」
「まあ、そこらへんは持ちつ持たれつってとこじゃないの?私達が大変な時は
割と平和なキャンバスライフを向こうは送っていた事もあるんだし」
とかおりんと千尋の会話である。

「大変といえばムーンキャッスルのみんなは今どうしてるんでしょうね?」
「宇宙から来る侵略者相手に戦ってるんでしょうやっぱり。で、千尋の方はどうなの?」
「どうって何がよ」
かおりんの質問を聞いてちよと歩以外は興味津々というよりニヤニヤした顔になる。
しかし、当の千尋は困惑の表情を浮かべるだけである。

月面基地ムーンキャッスル―――
ここでジェロス襲来から再び異変が検知された。

「先輩!例のポイントからまた何かが来ます!」
「奴の送り込んだ敵か!?」
「いえ、違います!これは!?奴そのものです!!あの宇宙生命体です!」
「何だと!?」
和田明菜と松田千秋の報告を聞いた長谷川一志は狼狽する。
それはそうだろう。まさか、敵の大将が自ら向かってくるとは思っていなかったからだ。

「それならそれでぶっ叩く絶好の機会だ!ここで仕留められれば戦いを
終わらせる事も可能だ」
「そうか、そうだね。先輩あったまいい」
結城かなめに褒められ満更でもなさそうな橘瞬。

「よし、そういう事なら任せろ。フレアレインXXで一気にカタをつけてやる!今度は外さないぜ!」
長谷川が命令を出して、フレアレインXXの発射を指揮する。長谷川はバーミンガムに搭乗している。
ゆっきーはモンブランへと、和田はネレイドへと乗り込んでいる。

「今回は俺も出る!」
橘もバーミンガムへと乗り込んだ。そうこうしている間にちよ父と思われる赤い何かが接近してくる。
ゼットンの時以上に早いスピードだ。

10 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:51 ID:???
「これで終わりにしてやる!フレアレインXX発射!!」
長谷川が向かってくるちよ父に向かってフレアレインXXを発射する。
しかし、ちよ父は避けるどころか真っ直ぐ向かってくる。
そしてあろう事かそれを全身から光を発してかき消してしまった。

「今のは何だ?攻撃のつもりなのかな?」
「そ、そんな!直撃した筈なのに!!」
長谷川は激しく動揺する。それはこの艦に乗る全員が同じ気持ちだろう。

「何をしている!?攻撃の手を休めるな!!」
「了解!砲撃用意!」
「了解です!!発射!!」
橘の一喝により、浮き足立っていた隊員達は立ち直り、ゆっきーのモンブランや、
和田のネレイドが砲撃を開始する。松田は衛星レーザーを用いての攻撃だ。
それらはピンポイントでちよ父に命中し、大爆発を起こす。
だが、それでもちよ父に傷ひとつ負わす事が出来ずに、侵攻を許してしまう。

「行かせるか!!」
トーチカや砲台を撃つように橘は指示し、それらで対抗するがちよ父の勢いは止まらない。
ちよ父は彼らのすぐそばを猛スピードで通過していった。
それだけで各艦に物凄い衝撃が走った。

「きゃあああああ!」
「うわああああああ!!」
船内で悲鳴があがる。

「みんな大丈夫か!?」
「な、何とか生きているわ!」
「それにしても何て奴だ!フレアレインXXが効かないばかりか、通り過ぎるだけで
こっちがダメージ被るなんて反則だって!」
橘の呼びかけに和田と長谷川が答える。長谷川の顔には憔悴の色が伺える。
施設の何件かが吹き飛ばされている。

「あいつは今どこへ向かったの?」
「敵は地球へ向かって真っ直ぐ進路をとっています」
ゆっきーの質問によつばとに登場したプールの監視員の女性の姿をしたAIが答える。

「ヤバいです!無傷の戦艦はひとつもありません」
「分かってるわよコロム!私はこの事を地球に伝えるわね!」
松田はコロムと話した後に、地球へと連絡を取る。

11 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:53 ID:???
ATDF基地にもその緊急通信は入った。
ちょうどそこに松岸翔一郎も入ってきた。

「一体どうしたんだ?」
「あ、総司令!今、ムーンキャッスルの松田さんから連絡があって、
こちらに例の生命体が向かってると報告を受けました!」
入ってきた松岸にちよは状況を説明する。

「ムーンキャッスルの状況はどうなっている?」
「今のところ全員無事のようです」
報告をするかおりんも幾分ホッとした顔をしている。

「で、そいつは今どこにいるんだ?」
「それが・・・・・・」
神楽に聞かれた千尋は言いよどんだ。

「どうしたんだよ?」
「ここに真っ直ぐ向かってきてるよ!」
「何だって!?」
千尋の発言に智も暦も目を丸くする。

「ゼットンの時と同じって訳か」
榊は静かに呟いて、上空を見上げる。そしてその直後にオレンジ色の球体がこの基地
目掛けて飛来する。しかしゼットンの時と違い、球体のまま基地に侵入する。
建物をすり抜ける形となって・・・・・・・

「すり抜けよったで!」
歩は驚きの声をあげる。

「奴は今どこにいるんだ!?」
松岸がそう叫んだ後に、突如オレンジ色の球体が彼女達の目の前に姿を現した。

「外からじゃなく中から直接ここに来るなんて!」
今までにない侵入方法をされ、ちよも驚く。
そしてそれはみるみるうちに形を変え実体化する。それは確かにちよ父だった。

12 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:55 ID:???
「ハローエブリニャン。アイアム ファインサンキュー」
いきなり英語でちよ父は挨拶をしてきた。

「は?」
歩と榊以外の全員が目が点になる。

「夢の中に出てきたのと一緒や」
歩だけは夢の中でそれを見た事あるからか冷静だった。榊も油断なく身構えている。

「ごきげんようHOLYの諸君。相変わらず無駄な努力をしているようだな」
今度は日本語で挨拶する。ちよ父の声に僅かだが、怒気を帯びている。

「この、ふざけんな!!」
神楽はレーザーガンを取り出し、撃とうとする。

「せっかちだな、君は」
ちよ父の色が黄金色に輝くと何かが発せられたのか、神楽は後ろに吹き飛んだ。

「うわあ!!」
「神楽!!」
「神楽さん!!」
智とちよが駆け寄る。

「神楽・・・・・・許さない!」
今度は榊がレイの力を借りてウルトラ念力をかけてちよ父の動きを封じようとする。
あたり一面が青くなった。一瞬ちよ父がその呪縛に囚われたかに見えたが・・・・・・・

「こんなもので私の動きを封じようなどとは笑わせる。はっ!!」
しかし、ちよ父は簡単に打ち破ってしまう。

「うっ!!」
衝撃波が榊に襲い掛かり、彼女を吹き飛ばした。

「榊さん!!」
かおりんが榊に駆け寄る。

「大丈夫」
「あたしも平気さ!」
榊、神楽共に大した事ないようで、暦やちよ、かおりんに支えられて立ち上がった。

13 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/24(土) 23:56 ID:???
「次はお前だウルトラマンジャスティス!」
ちよ父の目が光り、光線が発せられる。

「危ねぇ大阪!!」
とっさに智と千尋が歩を庇って光線を避ける。

「あ、あんがとうともちゃん、千尋ちゃん」
「今まで何度も助けられてきたんだから、これぐらいはね」
礼を言う歩に千尋は笑って答える。

「さて、君達への挨拶がわりはこれぐらいにしておこう」
と言うとちよ父は松岸を真っ直ぐに見据える。

「久しぶりだな我が半身よ」
ちよ父の口から衝撃的な言葉が発せられる。

「え!?」
これには誰もが驚いた。全員の視線が松岸に集中する。

「やはり、知っているのか。私の中に『彼』がいる事を」
松岸は口を開いてちよ父にそう言った。

「当たり前だ。気づかないとでも思ったか?とはいえ気づいたのはつい最近だがな」
「どういう事ですか総司令?」
「君達には話していなかったが、かつてグラムドによって襲われた私はとある生命体と
一体化する事で生き延びる事が出来たんだ。そして目の前にいる奴は彼の半身だ」
ちよに事情を問われ松岸が答える。

「そこから先は私が話そう」
急に松岸の声が別人のものとなり、目も赤く光りだした。

「かつて私達はひとつの生命体だった。ゼルエムという史上最悪の悪魔として全宇宙を
絶望と恐怖に陥れていた」
「グラムドみたいに?」
「あんな奴ごときと一緒にしないでくれたまえ!」
千尋の問いかけに気分を害したのか、ちよ父の口調は荒い。

「しかし私達は現れた伝説の巨人によって倒され、精神を分離されて封印された。
それがこのぬいぐるみだったという訳だ」
松岸に乗り移っているものがちよ父を指差す。

14 :名無しさんちゃうねん :2007/02/24(土) 23:59 ID:???
「しかし、その封印も長い年月を経て解け俺はこうやって
復活する事が出来た。こう見えても私は紳士でね。あまり自分の手を
汚すのは好きではないのだよ、それで怪獣達を送り込んでいたという訳だ」
「いや、それはないない」
榊とちよ除くHOLYメンバーが手を左右に振って否定する。

「そう言う訳でここに来た目的はもうお分かりだろう。私の目的は
貴様と一体化し再びゼルエムとして復活する事だ」
「そうはさせるものか!貴様の思い通りに行くと思ったら大間違いだ!」
松岸は銃を取り出してちよ父めがけて撃つ!だが、銃弾はあらぬ方向へと跳ね返ってしまう。

「大丈夫、跳ね返した!」
「私が思った事と同じ!」
ちよ父の行動を見て、榊は思わず叫んだ。

「今度はこちらから行こう、入れ物に用はない!」
「ぐおおおおおおお!!」
ちよ父の両目が光ると松岸が頭を抱えて苦しみだす。
その場に膝をついて夢中で頭を振る。

「松岸総司令!しっかりして下さい!」
「く、来るな!!」
近づこうとしたちよを松岸は手を振って拒絶する。
そしてその状態がしばらく続いた後に変化が起こる。
何と松岸の体から青い体の生命体が姿を現したのだ。ちよ父のオレンジに
対しこちらは青である。

「お父さんが二人!?」
榊と歩が同時に発した言葉だった。ちよ父の事を「お父さん」と呼ぶのは
彼の夢を見た二人しかいない。
そして青いちよ父はオレンジ色のちよ父に吸い込まれていく。そして二人のちよ父はひとつとなる。
直後に赤くなったり白くなったりと明滅を繰り返している。

「ふはははは、再びひとつとなったぞ!ゼルエムとして復活の時だ!!
この世界をトマトのように赤く染めてくれるわ!!」
ちよ父と思われた生命体は高い笑い声をあげて光の粒子となって消える。
だが、その刹那邪悪な何かが全員の目に映った。
残ったのは抜け殻となったオレンジ色のちよ父の人形だった。

15 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/25(日) 00:02 ID:???
「行っちまったな」
みなしばらく呆然としていたが、智がやっと一言それだけ搾り出した。

「総司令の中にお父さんがいたなんて驚きや〜」
「でも考えてみればそれらしい発言を何回かしていた」
歩は驚いているが、榊に思い当たる節は何度かあった。
しかしそれはありえない事なので、頭から除外していたのだ。

「総司令しっかりして下さい!!」
ちよは倒れた松岸を揺すってみるが、起き上がる気配はない。

「もしかしてあの生命体がいなくなったから死んじゃったんじゃ・・・・・・・」
「縁起でもない事言うなよ」
千尋の推測に暦は首を横に振って否定する。
しかしそれを確認するよりも、警報を知らせるアラームが鳴った。

「今モニターに映像を出すね」
かおりんが素早く席に座り、モニターのスイッチを入れる。
するとそこには怪獣らしき姿が映っていた。

「この基地より少し離れたポイントXL地点に、怪獣出現!!」
映像に映っている怪獣は魚と鳥を組み合わせたような醜悪な外見をしていた。
魚人を思わせる顔に、鳥のような羽が生えている。
目は青く光り輝いている。口からリング状の光線を発射してビル街を破壊する。

「あいつがそのゼルエムって奴か!?」
「今、データに出してみる!」
暦に聞かれた千尋は急いでデータリンクを出す。

「怪獣のデータが出たよ。どうやらゼルエムとは違うみたい。名前はバラッシュ!
ただあのゼルエムが送り込んだ怪獣には間違いないよ!」
パソコンの画面上にはバラッシュと確かに表示されていた。
バラッシュは両翼を使って大きく羽ばたくと、強風を発生させ周囲にあるものを全て
吹き飛ばしていた。その中で何人かが巻き添えになり、その風によって吹き飛ばされる。

16 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/25(日) 00:04 ID:???
「ちよすけ!早く出撃しようぜ!!」
「でも総司令が・・・・・・」
「総司令は私達がメディカルルームに運びます!」
そこに一般隊員が姿を現し、松岸を担ぐ。

「あなた達は一刻も早く出撃してください!」
「だから負けないで下さい!」
一般隊員達は松岸をメディカルルームへと運んでいく。

「あなた達は今自分がなるべき事をしなさい」
そこに総監である木村琴音が入ってきて、穏やかかつそれでいてはっきりとした
意思を感じさせる口調で彼女達のすべき事を伝える。

「総監!分かりました。総司令もきっと同じことを言うと思いますし」
その言葉にちよは自分を奮い立たせる。

「すまねぇ、恩にきるぜ!」
神楽は彼女等に例を言うと、走り出す。その後に智が続く。
そして、暦、榊、かおりん、千尋、歩、ちよと続く。
自分の今すべき事をする為に・・・・・・

「みんな、頑張って・・・・・・」
彼女達が去った後、琴音は祈るように両手を合わせた。

17 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/02/25(日) 00:04 ID:???
前半終わりです。

18 :レウルーラ ◆iCj5r1a15w :2007/02/25(日) 01:30 ID:???
>>1 >>7-17
お疲れ様です。

19 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/27(火) 23:45 ID:???
「ブルードラゴン出撃します!!」
「ホワイトウイング、TAKE OFF!!」
「レッドファルコン、発進するぜ!!」
「シルバースコーピオン、発進するよ」
「ブラックイーグルで出る」
ちよはブルードラゴン、暦はホワイトウイング、歩、神楽、智はレッドファルコン、
かおりんと千尋はシルバースコーピオン、そして榊はブラックイーグルに乗り込む。
それぞれの愛用の乗り物に乗って出撃する。
現場のすぐ近くでバラッシュは暴れている為にすぐにたどり着けた。

「攻撃を開始します!私が先行して仕掛けますからその後に続いてください」
「分かったよ、ちよちゃん」
ちよはその言葉通りに、まず正面からバラッシュに攻撃を仕掛ける。
レーザーがバラッシュの皮膚に当たり、バラッシュは怯む。そこを逃さず暦の乗る
ホワイトウイングが頭部に向かってミサイルを撃ち込む。
くらったバラッシュは二機を睨み、撃ち落そうと水流波を口から噴射してくる。
彼女達はそれを機体を低く飛ばす事で回避する。

「今度は私達の番だね!」
「榊さん、見ていてください!」
シルバースコーピオンに乗る千尋とかおりんが上に気をとられている隙に
シルバースコーピオンに取り付けられた砲台を使って、膝を攻撃する。この攻撃にバラッシュは横倒しになる。

「それじゃあ私も」
静かに呟きながら榊はブラックイーグルでバラッシュに接近して見事背中に攻撃を命中させる。
バラッシュの注意は今度は地上に向けられた。

「よーし、次はあたし等ボンクラーズだ!神楽、大阪、分離するぞ!!」
「りょーかいやで〜」
「よっしゃあ!行くぜ!!ってボンクラーズって。まあいいけどな」
智の指示でレッドファルコンは三機に分離する。
智は正面から、歩は右側面から、神楽は左側面からデルタ状に攻撃をする。三人が最も得意とする
陣形だ。歩と神楽のビーム攻撃はバラッシュの両翼を、智は口付近に命中させる。

「よっしゃあ命中!!」
智と神楽は同時にガッツポーズをする。これに怒ったバラッシュが風を発生させるが、
三機とも素早く動いて影響下から離脱する。

20 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/27(火) 23:46 ID:???
ブラックイーグルに乗る榊に向かってリング状の光線を吐き出すバラッシュだが、
榊は巧みな運転技術でこれらを見事にかわしていく。
榊はある程度進んだ後に、急に動きを止めた。

「ちよちゃん、みんな行ってくるで」
機体をオートコントロールに切り替えて歩は皆にそう告げる。
そして胸元からジャストランサーを取り出す。

「私も歩と一緒に行ってくる」
榊もシャインリングを装着する。

「おう行って来い榊!」
「榊さんならきっと勝ちます!絶対です!」
神楽とかおりんは榊に向かってエールを送る。
神楽は力強く笑みを浮かべ、かおりんも微笑んで告げる。

「あんな奴ひとひねりにしてこい大阪!」
「私達がついてるから安心しろ!」
「きっちりフォローしてみせるわ!!」
智、暦、千尋は歩に激励の言葉を送る。三人とも歩に笑いかける。

「大阪さんも榊さんも頑張ってください!!」
ちよも大きくはっきりと聞こえる声で二人に言った。
二人とも大きく頷いた。

「ジャスティース!!」
「レイ!!」
歩はジャストランサーを胸のあたりにかざし、榊はシャインリングをクロスさせる。
そして地上に赤い巨人ウルトラマンジャスティスと青い巨人ウルトラマンレイが姿を現す。

「あ、ウルトラマンジャスティスだ!!」
「ウルトラマンレイもいるぞ!!」
今まで逃げ惑っていた民衆は二人の出現を見て歓喜の声をあげる。

「ジョアッ!!」
「エイヤッ!!」
ジャスティスとレイはバラッシュに向かって走っていき、両脇から掴みかかる。
そして同時に蹴りを見舞い、バラッシュをよろめかせ投げ飛ばす。
バラッシュは風を発生させるが、レイはそれよりも素早いスピードで接近し、
上空から飛び掛り、もつれ合う。馬乗りになり殴りかかるレイだが、バラッシュは
それを振りほどいて逃げる。

21 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/27(火) 23:49 ID:???
「ヘアッ!!」
バラッシュは空中に飛び上がり空から奇襲をかける。
レイとジャスティスはこれをまともに受け、吹き飛ばされる。

「せいっ!!」
尚も空中飛行を続けるバラッシュをジャスティスは空中に飛び上がって追いかける。
そして空中で交差した後、ジャスティスはバラッシュを蹴り飛ばす。地上へと落下していくバラッシュ。
かなりの高さから落下したにも関わらずバラッシュはまだ起き上がる。
そして次の瞬間驚くべき行動に出る。何と二つに分離したのだ。

「おいおい、分裂なんてありかよ」
と智は悪態をついた。ただこのバラッシュ、微妙な差異があり、最初に出現した方にはなかった尻尾がついていた。
バラッシュは最初に来た方が水流波を、もう一方は火炎を吐いてきた。

「のわああああ!!」
ジャスティスは火炎を、レイは水流波はまともにくらって吹き飛んだ。
さらに二人と挟み込んで両側から強風を発生させる。
この風の影響をまともに受け、ジャスティスとレイは動きを封じられてしまった。
そこからジャスティスの方のバラッシュは尻尾で、レイの方は体当たりで吹き飛ばした。

「ぐふっ」
うつぶせに倒れる二人。

「ジャスティス、レイ!!皆さん、大阪さんと榊さんを援護しましょう!!」
「了解!!」
「神楽、機体をまたひとつにするんだ!」
「分かったよ!私達は榊をフォローする!」
「私も!」
神楽と智はレッドファルコンを合体させ、ひとつにする。

「よみさん、ジャックナイフフライト行きましょう!!」
「分かった、ちよちゃん!」
ちよと暦はジャスティスこと歩の援護に回る。

「分かったよ、怪獣の弱点が!水流波を吐く方も、火炎を吐く方も
その溜めの時間に最大の隙が生じるの!そこが最大のチャンスだよ!!」
千尋がデータリンクを終えたのを報告する。

22 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/27(火) 23:51 ID:???
「この榊さんを離せ!!」
かおりんはレイを掴んでいるバラッシュに向かって砲撃する。
これによりバラッシュは前のめりに倒れこんだ。

「ジャックナイフフライトだ!!」
ちよは敵の喉元ギリギリまで接近して、急上昇する。
そして注意がそちらに逸れた一瞬の隙をついて暦が喉にレーザーを撃ち込む。
ダメージを負ったバラッシュもジャスティスから離れた。
ジャスティスとレイは同時に側転しての蹴りで二体を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた二体は水流波と火炎を吐く体勢に入る。

「今だ!トリプルサンダー!!!」
「行くよ!グランドスクリュー!!」
智と神楽はレッドファルコンが合体している状態から使えるビーム砲トリプルサンダーを発射する。
対して千尋は、ゼットン戦でも使ったグランドスクリューを放つ。
水流波を放とうとしたバラッシュは口にまともにくらい、苦しみながら地面をのた打ち回る。
グランドスクリューをまともにくらったバラッシュは竜巻に巻き込まれ、天高く舞い上がる。
そして勢いよく地面に叩きつけられる。

「やっぱりこれ、凄い強力だなぁ」
と千尋は自分の作った武器に感嘆するのだった。
いずれも立ち上がったものの、もはやフラフラだった。

「今です、ジャスティス、レイ!!」
二体にミサイルで攻撃しながらちよは二人に呼びかける。
そして二人は頷く。

「はああああああ!!」
ジャスティスはクラッシャーモードへとチェンジする。
そしてバラッシュを掴んで投げ飛ばす。

「スロゥッ!!」
レイも高速移動で近づいてバラッシュを殴り飛ばした。
仰向けに倒れるバラッシュ。

「はあああああっ、でやっ!」
「おおおおおお、えいやあああああ!!」
ジャスティスは弓を引く動作の後に光の矢を発する「パトレックショット」を、
レイは空中高く飛び上がって急降下蹴りを繰り出す「キャノンストライク」をバラッシュにくらわせる。
二体はそれをくらった後に、後ろ向きに倒れてそして大爆発を起こす。

23 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/27(火) 23:54 ID:???
「やったあ!!」
ちよはメンバーの中で誰よりも高い声で喜ぶ。

「この調子であのゼルエムって奴も倒しちゃおうぜ」
「いけるぜ!」
智と神楽も最高に気分がハイになっている。

「それはどうかな?」
突如その声がしたかと思うと、バラッシュが爆発した場所からちよ父が現れた。
黄金色に輝いている。

「ついにラスボスの登場かよ」
「つまりあいつを倒せば終わりって事ね!」
暦の言葉に千尋はそう答える。

「ここまでやった君達に敬意を表して私も真の姿でお相手しよう」
ちよ父いやゼルエムがそう言った後に、ちよ父の体が爆発したかのように
砕け散る。そこから現れたのはまさに悪魔と呼ぶにふさわしい外見の者だった。

「あいつがゼルエム・・・・・・・」
「RPGのラスボスがそのまま目の前に現れた感じがするな」
ゼルエムは額にも赤い目があり、3つの目を有している。
悪魔のような羽根を持ち、足の爪先は尖っている。
体の色はグレーを基調としており、所々燃えるようなマグマな色をしている。

「さて、始めようか」
ゼルエムは手から衝撃波であるダークスマッシュを発射する。レイはそれをとっさに防ごうと
イージスウォールを展開するが、簡単に破られ、遥か後方へと吹き飛ばされる。

「うわあああああ!!」
「レイ!!」
「余所見をしている暇はないぞ!」
ゼルエムがジャスティスに向かって手をかざすと、ジャスティスは何かに捕まったかのように動きがとれなくなった。

「どうしたんだジャスティスは!?」
「多分、念力の一種みたいな奴に捕まっているんだと思う」
状況が掴めない暦に千尋が説明する。ゼルエムが腕を動かすと、ジャスティスの体が空高く浮かび上がる。
そしてゼルエムが腕を振り下ろすと、ジャスティスも地面に叩きつけられる。

24 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/27(火) 23:58 ID:???
「ごほあっ!!」
ジャスティスが苦悶の声をあげる。

「へあっ!!」
「えいやっ!!」
起き上がったジャスティスとレイはゼルエムに向かっていき、パンチやキックを浴びせる。
だがゼルエムは全く応えておらず、逆に二人の腕や足を持って軽々と投げ飛ばしてしまう。

「これはどうかな?」
ゼルエムの第3の目とも言える赤い目から光線を発射する。二人はとっさにそれをかわすが、
彼等のいた場所が一直線に焼かれていた。
そしてもう一度放たれた攻撃がカラータイマーを直撃する。

「うわあああああ!!」
ウルトラマンと同化している中の歩と榊が悲鳴をあげる。カラータイマーに直撃された場合、
彼女達にも多少なりとも影響を及ぼすようだ。
ジャスティスとレイのカラータイマーが点滅を始める。

「大阪さん、榊さん!!」
これを見てちよは真っ先に攻撃を始める。

「やらせるか!!」
「神楽、あたし達も行くぞ!!」
「おう!!」
「榊さん!!」
「この!!」
暦、神楽、智、かおりん、千尋もちよの後に続いて攻撃する。
トリプルサンダーやグランドスクリューを交えて攻撃する。

「こざかしい!!!」
ゼルエムがなぎ払うように手を動かすと、巨大なエネルギー波が発生して、それらの攻撃を
全てかき消した。その上で、レッドファルコン、ホワイトウイングがそのエネルギー波の攻撃を
受けて撃墜される。デビルスラッシュという技らしい。
そしてシルバースコーピオンの二人もその影響で車体から投げ出される。

「きゃああああああ!!」
「ち、畜生!!」
「みんな!!」
ちよは何とか助かったからか、そのままレーザーで攻撃をする。しかし、ゼルエルはそれを
片手でシールドを発生させ防ぎ、逆に衝撃波でブルードラゴンを撃墜する。

25 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/28(水) 00:00 ID:???
「きゃっ!!」
ちよのブルードラゴンもそのまま降下していく。
それを見てジャスティスとレイは立ち上がる。

「はああああああ、でゅわああああああああ!!」
ジャスティスは両腕を前に突き出して放つダグリューム光線、レイは腕をL字型に組んで
発射するレイバーストショットを発射する。ネオウルトラダブルフラッシャーである。
それはゼルエムに命中して、大爆発を起こす。

「やったのか・・・・・・・」
期待を込めて神楽は言う。だが、その考えも空しく爆炎の中からは何事も
なかったかのようにゼルエムが出現する。

「今、何かしたかな?」
二人の光線を受けても全く動じずにゼルエムは不気味に笑った。

「そ、そんな!!」
信じられない出来事に千尋は言葉を失う。

「ふん!!」
「うおおおおおおおお!!」
再び念力でジャスティスとレイは空高く持ち上げられそして地面に叩きつけられる。
さらに追い討ちをかけてくるゼルエム。
目から発した光線デモンズアイが命中して吹き飛ばされるジャスティスとレイ。

「榊さん、大阪さん!!」
ちよはそれを見てレーザーワイヤーを発射する。ゼルエムの動きを封じる。

「ミスティックスマッシャーだ!!」
間髪入れずに暦はミスティックスマッシャーを発射する。

「あたし達も続くぞ!!」
「おうよ!」
智はレイフォース、神楽はレイストームを投げつける。
それらはゼルエムの顔面に次々と命中して爆発する。

「大丈夫、かおりん!?」
「ええ、何とかね」
かおりんは千尋に手を貸してもらう形で、起き上がった。
シルバースコーピオンは今の攻撃で完全に大破していた。

26 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/28(水) 00:04 ID:???
しかしゼルエムは、その攻撃を受けてもまだ平然としていた。

「邪魔だ!!!」
ゼルエムが目からの光線デモンズアイを発射する。彼女達の目の前で
爆発が起こった。その衝撃で彼女達は吹き飛ばされた。

「先に死にたいのならいつでも殺してやるぞ!!」
彼女達の目の前には巨大な穴が出来ていた。

「ち、畜生なんて奴だ!」
神楽が歯噛みする。
その頃、月面基地ムーンキャッスルでもこの状況がモニターされていた。

「何てことだ!このままじゃやばいぜ!!」
「私達は見ている事しか出来ないの!?」
長谷川もゆっきーに焦りの色が見える。

「先輩、様々なポイントから何かが接近してきます!」
「敵か!?」
松田のもたらした情報に橘はやや動揺しながらたずねた。

「わかりません!ただ地球を目指している事は確かです!!」
レーダーで捕らえたそれぞれの反応が何れも強力な反応を示していた。

「もし、これが敵の侵略部隊だったら私達はもうお手上げね」
和田は冷や汗をかいていた。

「ふん!!」
デビルスラッシュが再びレイとジャスティスのカラータイマーに命中する。

「あああああああああ!!
中の二人が悲鳴をあげ、意識を失う。ジャスティスとレイのカラータイマーの
点滅も早くなっていく。

『弥生!!』
『大丈夫だレイ、歩と弥生もまだ生きている。だがこのまま攻撃を
くらい続けたらいずれ・・・・・・・』
『そんな事はさせはしない!』
『もちろん私も同意見だ!!だがいつまでも庇いきれないぞ!』
ジャスティスとレイはよろよろと起き上がる。

27 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/28(水) 00:06 ID:???
「誰か止めて!このままじゃ榊さんと大阪さんが死んじゃう!!」
ちよが泣きながら叫んだ。

「ふははははは、どうだ!この俺の力は!素晴らしいだろう。さらにはこんな事も
可能だ!バラッシュ!!」
ゼルエムの3つの目が光ると何とバラッシュが出現した。それも一体や二体ではない。
ざっと見積もっても数十体はいる。

「行け!世界を終焉の闇で覆い尽くすのだ!!」
バラッシュは命令通りに行動を開始し、世界中へと散らばっていった。

「総監!世界各地でバラッシュが出現して猛威を振るっていると連絡が入っています!!」
かおりんや千尋の変わりに入ったオペレーターが世界各地の情報を知らせる。
東南アジア、アメリカ、中国、オーストラリア、南極といったこれまでに登場したATDFチームと
バラッシュとは早くも交戦状態となった。しかしバラッシュは傍若無人に暴れ周り破壊を繰り返す。
バラッシュは地球だけでは留まらず宇宙にまで飛び上がっていくものもいた。

「ヘアッ!!」
「えいっ!!」
ジャスティスとレイは起き上がりゼルエムの体を掴んで両方から蹴りを入れる。
そして大きく投げ飛ばす。

「はあああああ、だあっ!!」
「いりゃああああ!!」
ジャスティスはパトレックショット、レイは右腕から赤い光球ブリッツボールを発射する。

「ぬるいわ!!」
しかしゼルエムはそれを軽々と弾いてしまう。

「そんなものがこの俺に通じると思ったか!お返しだ!」
今度は衝撃波イーヴィルフォースを連続発射し、それを連続で当てられる。

「ぐおおおおおお!!」
二人は一回転しながら倒れこむハメになった。

「歩さん、弥生さん・・・・・・」
「お姉ちゃん、弥生お姉ちゃん・・・・・・」
メディカルルームの翔と百合子は状況が分かるのか、二人の名前を呟いた。

28 :第76話 「史上最大の危機!絶望をもたらす者」 :2007/02/28(水) 00:07 ID:???
『み、美浜ちよ』
ジャスティスとレイがちよに呼びかける。

「ジャスティスとレイが私に話しかけているのですか?」
意外な展開にちよは驚きの声をあげる。

ついに姿を現した最強の敵ゼルエムの出現によってウルトラマンジャスティスと
ウルトラマンレイは絶体絶命のピンチに追い詰められた。果たして歩と榊の運命は!?
さらに宇宙から迫り来る物の正体は何か!?この地球はどうなってしまうのか!?

第76話   終           第77話へ続く

29 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/02/28(水) 00:48 ID:???
次 回 予 告

ゼルエルの復活そして圧倒的な強さの前に絶望の淵に
追い込まれる人々。

「これが最後の戦いになる、いえしてみせるわ」
「もうこれで終わらせるんや」

「待て!その体で行ったら今度こそ命を落とすぞ!!」
「今動かないでいつ動くんだ!彼女を守るためならこの命惜しくはない!!」
しかし、まだ諦めず最後まで立ち上がる者達もいた。そして・・・・・・

「こんな事ってありえるのか?」
「これが彼女達が今までしてきた事への結果か・・・・・・」

次 回 ウルトラマンジャスティス
第77話 「いくつもの絆 切れない絆」
「この地球をお前に渡すわけにはいかない!」

30 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/02/28(水) 01:28 ID:???
76話終わりです。
次回は今回よりは長めになる予定です。

31 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:17 ID:???
ウルトラマンジャスティス
第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」
最強生命体ゼルエム 破滅怪獣バラッシュ他 登場

前回までのあらすじ
ちよ父ことゼルエムはついに地球へと侵入する。
その際にムーンキャッスルが迎撃にあたるもののフレアレインXXすら弾かれてしまう。
そしてHOLY基地に現れたゼルエムは松岸と同化していたちよ父と再合体をし、
完全なる姿で復活を遂げ、配下の怪獣であるバラッシュを送り込んできた。
ちよ達はこれを迎撃すべく出撃する。そして歩と榊も残り少ないエネルギーを振り絞り、
ジャスティスとレイに変身、これを撃破する。
だが、そこにゼルエムが現れその圧倒的な力の前にジャスティスとレイは窮地に立たされる。
そしてゼルエムはバラッシュを世界各地へと送り込んだのである。

『み、美浜ちよ』
ジャスティスとレイがちよに呼びかけている。

「ジャスティスとレイが私に呼びかけているのですか?」
意外な展開にちよは驚きの声をあげる。

『そうだ。君に弥生と歩を託す』
『このままでは彼女達は死んでしまうからな』
「え?」
『彼女達を頼んだぞ』
ジャスティスとレイがカラータイマーから何かが放射される。
直後にちよの目の前に榊と歩が横たわっていた。

「榊さん!大阪さん!!」
『彼女達を連れて逃げるんだ!』
彼等はそう言うとゼルエムに向かって振り返る。

「これで終わりにしてやろう」
ゼルエムがイーヴィルフォースを発射してジャスティスとレイのカラータイマーに直撃させる。

「うおおおおおお!!」
ジャスティスとレイは凄まじい勢いで吹き飛ばされ、いくつものビルを巻き添えにして吹き飛ばされた。
そしてついに恐れていた事態が起こったのだ。
ウルトラマンのカラータイマーの点滅が止まってしまったのだ。そして目の光も消えてしまった。
ゆっくりと倒れこむジャスティスとレイ。

32 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:19 ID:???
「ジャスティスとレイが・・・・・・・」
ちよは呆然とその光景を見ていた。
そして二人のウルトラマンはスーっとその姿を消してしまった。

「ジャスティスとレイが死んだ・・・・・・・」
その様子を見ていた人々のうちの誰かが一言呟いた。

「ジャスティス、レイ――――!!」
智はあらん限りの声で叫んだ。しかしその声に答えるものはいなかった。

「そ、そんなジャスティスとレイがやられちまうなんて」
神楽はがっくりと崩れ落ちた。

「違う。こんなの何かの間違いだわ。あっていい事じゃない」
「かおりん・・・・・・」
かおりんも必死に頭を振る。千尋はかおりんの肩に手をかけ首を横に振る。

「みんなしっかりしろ!!とにかく一旦体勢を立て直そう!榊と大阪だって
まだ目覚めていないんだからそれしかない!」
そんな中、暦は皆を叱咤激励する。

「ふん、貴様等を逃がすと思うか?一人残らず殺してくれる!
その後で残る二人のウルトラマン、コスモスとシェイドも始末してくれる!
これで私に逆らう者は誰もいなくなる!」
ゼルエムはこちらに向き直り、デモンズアイを発射しようとする。

「みんな逃げろ〜〜〜〜!!」
智はあらん限りの声を出して叫ぶ。

「無駄だ!塵となれぃ!!」
デモンズアイがちよ達に向かって発射された。暦とちよは目を閉じた。
しかしその時、横からビームが発射されデモンズアイを相殺した。

「何者だ!?」
「誰かが私達を助けてくれたんですか・・・・・・」
彼女達が頭上を見上げるとそこに一機の戦闘機が飛んでいた。
それは旧世代機のものであるゼクセクスだった。

33 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:20 ID:???
「あの機体・・・・・・まさか中に乗っているのは松岸総司令!!」
神楽の思っていた通り中に乗っていたのは松岸翔一郎だった。

「総司令!」
「ここは私が時間を稼ぐ!君達は早く逃げるんだ!!」
「でも・・・・・・・」
「急げ!そう長くはもたないぞ!!」
確かに松岸の声はどこかつらそうだった。

「ふん、奴の『入れ物』の方か。今更貴様ごときが何をしようと無駄なあがきだ!」
「それはどうかな!行くぞ!!」
松岸は無数のミサイルを発射して攻撃する。ゼルエムは全てをはじいた。

「さあ、行きましょう!総司令が食い止めてくれている間に!!」
「分かった!!」
ちよ達はその場から離れる。

(・・・・・・・・)
関屋参謀はその様子を黙ってモニターで見ていた。

「歩さん、弥生さん!!」
「お姉ちゃん、弥生お姉ちゃん!!」
その頃、メディカルルームで眠りについていた平井百合子と春日翔が目を覚まして起き上がる。

「あ、目を覚ましたわ」
そう言ったのは風香だった。
百合子と翔は顔を見合わせるとすぐに動き出そうとする。

「先輩達、まだ動いちゃ駄目ですって!」
「怪我も治りきっていないのに!」
「今行ったら死んじまうぞ!!」
青森七瀬、日吉美空、風森瑠菜はそんな二人を止めようとする。

「そこをどいて!今行かなければならないのよ!」
「お姉ちゃん達が危ないねん!!」

「はっ!」
別の場所では一人の男が急に飛び起きた。そこは誰かの部屋だった。

34 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:23 ID:???
「僕は一体今までどうしていたんだ?」
「おっ、やっと目を覚ましたか。お前ずっとうなされていたんだぜ」
すると部屋にもう一人の男が入ってきた。

「そうか、僕はずっと今まで・・・・・・」
男はそれに気づいてうなだれる。

「くらえ!ガトリングブラスト!!」
松岸のゼクセクスから大量のミサイルが発射される。しかしゼルエムには通じない。

「そんなものでこの俺が倒せるとでも思っているのか!?笑わせる!!」
ゼルエムは高笑いをあげる。

そして地上を逃げるちよ達のもとに二台の車が到着する。
車に乗っている主を見てちよ達は驚いた。

「ゆかり先生!にゃも先生!どうしてここに!?」
「いいから早く乗りなさい!急いでこの場から離脱するよ!!」
「さあ、あなた達も早く!!」
「はい!」
ちよ、歩、かおりん、榊はみなもの車に、智、千尋、暦、神楽はゆかりの車に乗り込んだ。

「ってゆかりちゃんの車だとかえって危ねーんじゃないか」
「よみ、今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!一刻を争う事態なんだから!」
「そうか、そうだな」
神楽に諭され、渋々ながら暦もこれに乗り込む。

「バカめ!逃がす物か!!」
ゼルエムがイーヴィルフォースを車に向かって発射してきた。

「しまった!間に合わない!!」
松岸の迎撃も間に合わなかった。しかし、その時何かが割って入ってきた。
そして光線の直撃を受ける。やがてそれは半透明ながらもひとつの形を成す。
それは分離されて抜け殻となったはずのちよ父だった。

「ふん!まだ完全に消滅していなかったのか。しぶとい奴だ」
「やらせはせん!この子達だけはやらせはせんぞ!!あの子達は私にとって娘同然の存在、
それを守るのは父親として当然の事だ!」
「お父さん!!」
思わずそう叫んだのは誰あろうちよであった。

35 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:25 ID:???
「ふふふふ、最後の最後でそう呼んでもらえて嬉しいぞ」
「黙れくたばりぞこないが!!これで終わりだ!!」
ゼルエムは出力をアップする。それによりちよ父の体が耐え切れなくなり、
ついに消滅していく。

「どうか生き延びてくれ。それが私の最後の願いだ」
「おとうさ―ん!!」
ちよが再び叫び声をあげる。榊はその光景に思わず目をそむけた。

「今のうちに発進するよにゃも!!」
「分かってるわ!あんた達、今回は運転が荒っぽくなるけど我慢してね!」
ゆかりとみなもは車を急発進させる。

(君にも色々迷惑をかけたな、すまなかった。さらばだ)
消え去る刹那、松岸にちよ父はメッセージを送っていた。

(そんな事はない。私は君のおかげでこうして生きている事が出来たのだから。
そして君と同じで私はあの子達を守る!!)
松岸は再び攻撃を開始する。

「いい加減に消えろ!!」
ゼルエムのデモンズアイがついに松岸の機体を捕らえる。
ゼクセクスはどんどん高度を下げていく。

「ぐっ、こんな所でやられる訳には・・・・・・・」
しかし、松岸のその思いも空しく、機体は地面にぶつかり爆発した。

「ふん、手間をとらせおって。まあよい、ここから先は俺が出るまでもない。ガルーゼ行くがいい!」
ゼルエムの呼びかけに応じてガルーゼを閉じ込めている無数のクリスタルが召喚される。
そして世界中に向かってクリスタルは飛んでいく。さらにそのうちのいくつかはこの場で実体化する。

「ガルーゼよ。この世界を徹底的に破壊するのだ!遠慮はいらぬ。特にHOLYの奴等は一人も逃がすな。
いいな。フハハハハ」
ゼルエムはガルーゼに命令を下すとその姿を消した。ガルーゼは命令に従いバラッシュと暴れ始める。

「総司令までやられちまった・・・・・・」
「これから一体どうすればいいんだ」
松岸が撃墜されたのを見て、暦や神楽に絶望的な感情がよぎる。

「とにかく一旦基地に行ってみよう。ゆりゆりや翔ちゃん達の事も気にかかるし」
榊の提案に誰も反対しなかった。

36 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:26 ID:???
「二人とも、その体で戦えば今度こそ助からないかもしれないわよ!
それだけあなた達の特に百合子さんの体はもうボロボロなのよ!」
ドクターである井上舞は飛び出そうとする二人に対して警告をする。

「でもそうしないとお姉ちゃん達やみんなを助けられへん!」
「このままじっとしているくらいなら、私が今出来る事をするわ!」
翔や百合子の決意は固かった。

「そうね、確かにここでじっとしているよりはマシよね」
そこにTEAM FLAMEの隊員服に身を包んだ相田京子が入ってきた。

「京子」
「キョロ」
「ジャスティスとレイが負けて、HOLYも一時退却を余儀なくされた。そして奴は次に
コスモスとシェイドを狙っている。一部の市民や上層部にはコスモスやシェイドを
引き渡して自分達だけ助かろうと考えている人もいるわ」
「な!?」
この話を聞いて静や咲月、そして通信でそれを聞いていた歩達も驚愕する。
しかし、百合子は別段驚いた表情はしなかった。

「やっぱりそういう人間が出てきてもおかしくないわね」
「百合子先輩も翔ちゃんもまさか自分が犠牲になって私達を助けようと・・・・・・」
「安心なさい風香、それはないわ。私も翔さんも死ぬつもりはない。ちゃんと生きて帰るつもりよ」
「あたしもや、みんなのところに帰ってくるで」
風香の言葉に百合子と翔は笑って否定する。

「わたくしは百合子さんや翔さんを信じますわ」
「あたしもだ。これまでだってゆりゆりはどんな困難も乗り越えてきた。今度だって絶対帰ってくるさ」
「ゆりゆり先輩はいつだってちゃんと約束を守ってくれました!」
静や咲月、七瀬といった面々が百合子と握手をする。

「私は先に行ってるわよ、百合子、翔ちゃん」
相田京子は一足先にこの場を離れた。
「絶対に帰ってこいよ」
「百合子さんは無敵だ!絶対に負けるもんか」
「待ってるからね」
「頑張ってね、ゆりゆり」
彼女の大学の友人である新城和人、上野成一、東山亜紀、佐藤沙織もまた彼女に激励の言葉を送る。
唯一赤羽広哉だけは何も言わずに黙って見送った。

37 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:28 ID:???
「翔ちゃん、必ず帰ってきてね」
「帰ってこなかったら承知しねーぞ!」
「美空ちゃん、瑠菜ちゃん!行ってくるで!」
翔は美空と瑠菜と抱き合った後、向き直る。

「分かったわ、私からはもう何も言わないわ。思う存分戦ってきなさい」
最後には舞も彼女達を送り出す事にするのだった。

「行きましょう翔さん」
「うん、百合子お姉ちゃん」
力強く一歩を踏み出す二人。そして二人が外に出た時、
そこにはちよ達がちょうどここにたどり着いた時だった。

「お姉ちゃん、弥生お姉ちゃん。行ってくるで!」
「翔・・・・・・・頑張ってきいや!」
「翔ちゃん」
翔は意識を取り戻した歩と榊の二人に笑いかける。
二人とも一瞬迷ったものの、すぐに笑みを向けて応える。

「最後になるかもしれないからこれだけはやらせて」
百合子は智と暦の二人に抱きついてほお擦りする。
かつて二人に一方的に友達宣言をして行った事を今またしたのである。
しかし今度は二人とも逃げようとしなかった。

「あなた達に会えてよかった。あなた達がどう思っていようと私にとって最高の友達よ!」
「なーに言ってんだよ、お前らしくもない。それに最高の友達ならキョロ達だってそうだろ」
「いつもの百合子で行ってこいよ。自信に満ち溢れてみんなを引っ張るいつもの百合子にさ」
「そうね、それもそうよね」
暦や智の言葉を受け、どことなく迷いがあった百合子の顔から迷いが消えた。
さらに百合子の携帯に誰かからメールが入った。

「最後の最後まで自分自身を貫き通せ。お前が信じた道を。
ゆりちゃん、翔ちゃん頑張って。遠くにいてもあなた達の事を応援しているわよ」
それは百合子の両親からだった。翔にもメールが送られている。
それを見た百合子や翔は心が高ぶるのを感じた。

「行きましょう翔さん、これが私達にとって最後の戦いよ」
「うん、分かってるて百合子お姉ちゃん!」
そして二人は一歩踏み出してそれぞれの変身アイテムであるコスモストーンとデスブリンガーを
取り出して装着する。

38 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:30 ID:???
「コスモ―――――ス!!」
「シェイド―――――!!」
二人はあらん限りの声を発してウルトラマンコスモスとウルトラマンシェイドへと変身する。
目の前にはバラッシュとガルーゼが1体ずつ迫っていた。

「でやっ!」
「しぇあっ!!」
コスモスとシェイドは出現するなり、二体を蹴り飛ばした。

『シェイド、行こう!この戦いを終わらせる為に!!』
『ああコスモス!勝って終わらせるぞ!!』
コスモスとシェイドは互いに会話をしあった後にそれぞれ戦いだす。
コスモスがバラッシュ、シェイドがガルーゼを相手にする事になる。

「頑張って翔さん、百合子ちゃん!!」
ちよは二人の巨人に向かって変身している人間の名前を呼んで応援をする。

「あたしの中からジャスティスがいなくなってもーた」
「私の中にもレイが感じられない」
歩と榊は自分たちの中にジャスティスとレイがいない事を感じ取った。

「榊、大阪、それはな」
神楽はその事態を説明する事になる。

「はっ!!」
コスモスはルナモードからエクリプスモードへとチェンジして戦いを挑む。
シェイドもコスモスもちよ達を巻き込まないようにバラッシュとガルーゼを
ジャアイントスイングで遠くに投げ飛ばす。

「であっ!!」
ガルーゼの爪がシェイドに迫る。だが、シェイドはその攻撃を
逆に受け止めそのまま腕を捻ってから投げ飛ばした。

「えいやっ!!」
コスモスは正拳突きの連打でバラッシュに反撃の間を与えなかった。バラッシュは水流波を吐いてくるが、
コスモスはサンライトバリアと呼ばれるシールドでそれを防御する。
しかし、その後の空中からの奇襲でコスモスは吹き飛ばされた。
シェイドもまた口からのミサイル攻撃により地面に倒れてしまう。
追い討ちをかけようと二体が迫る。だが、その時何者かが攻撃してそれを阻んだ。

39 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:32 ID:???
「私達TEAM FLAMEがいる事を忘れてもらっては困るわね!!」
「キョロちゃん!」
それを見て千尋が声をあげる。

「でもあの子達がウルトラマンだなんてこの目で見て初めて実感が湧くものね」
とみなもは戦いの様子を見ながら言った。

「行くわよみんな!いい?」
「了解です隊長!!」
「俺たちはいつでも準備OKだぜ!」
「ここまで来たら一蓮托生って奴ですよ!」
「あんた達、くっちゃべってないでとっとと行くわよ!」
「HOLYだけじゃないぞ!俺達だってこの地球を守っているんだ!」
「行きましょう!!」
相田京子のスペリオルドラゴンと上野英次と松戸幸成が乗るイエローシャークEX1がガルーゼを、
結崎美里と川瀬絵里の乗るEX2と金沢尚登、浅倉哲哉の乗る地上メカヒートスティンガーは
バラッシュをそれぞれレーザーによる波状攻撃でよろめかす。

「だああっ!!」
「せいいいいっ!!」
起き上がったコスモスとシェイドはそれぞれの相手を担ぎ上げて地面に叩きつける。
シェイドは空中高く舞い上がり、そこから叩き落すという荒々しい戦闘スタイルを用いて。
二匹の怪獣がフラフラになったところを見てコスモスとシェイドは光線の発射体勢に入る。

「はあああっ、ぜあっ!!」
「おおおおお、でやあああ!!」
コスモスは両手を大きく広げて光球を投げつけるルージュシューターを、シェイドは腕を前方に出して
エネルギーを丸めたカラミティストリームを発射する。二体の怪獣はこれをくらって粉々になる。

「やった!」
かおりんは快哉の声をあげる。

「ふふふふふ、現れたなウルトラマンコスモス、ウルトラマンシェイド!」
不気味な声と閃光を発しながら、ゼルエムが姿を現した。

「わざわざ死にに来るとはな。こちらの手間が省けるというものだ」
『お前を倒してこの世界に平和を取り戻す!』
『勝つのは私達だ!!』
「ふん、寝言は寝てから言うんだな」

40 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:35 ID:???
「ゼルエム!!攻撃を開始するわよ!くっ!」
京子達も攻撃態勢に入る。だが、そこをバラッシュが襲い掛かってくる。
地上の金沢と浅倉にはガルーゼが襲い掛かってくる。

「貴様らごときこの俺が戦うまでもない!」
ゼルエムがコスモスとシェイドに向き直り、不適な笑みを浮かべる。

「てあっ!」
「ヘアッ!!」
コスモスとシェイドはゼルエムに向き直り、殴りかかろうとする。

「甘いわ!!」
ゼルエムはジャスティスやレイにも使った念力を使った。
それによってコスモスとシェイドは宙に浮かび上がり地面に叩きつけられる。

「うわあああ!」
「ぐおおおお!!」
苦悶の声をあげるコスモスとシェイド。その後反撃しようとしたところにゼルエムが
なぎ払うような動作をするとデビルスラッシュという衝撃波が発生し、二人を吹き飛ばした。

「翔!百合子ちゃん!!」
歩は感情を高ぶらせて叫んだ。
その頃、綾瀬家にもバラッシュやガルーゼが迫っていた。

「早く逃げるんだ!みんな車に乗れ!!」
「なんなんだよ!これ!怪獣の群れじゃないか!!」
「私、なんだか怖い!」
ジャンボの用意した車で恵那やみうらは乗り込む。すっかり二人とも怯えてしまっている。

「まるでこの世の終わりみたいだ」
「馬鹿な事言わないでよ」
淡々と喋る虎子に対してあさぎは怒鳴った。

「しっかり捕まってろよよつば!」
「へーきだとーちゃん!よつばはつよいこだからまけない!!」
こんな事態になってもよつばはまだ持ち前の明るさを保っていた。

「うわあ、空からも地上からも怪獣だよ」
やんだもこの光景に唖然としている。

41 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:36 ID:???
「先輩達こっちだ!!」
「待って京介君、私もう走れないって!」
「みるちー頑張って!!」
京介やみるちー、ゆかもこの中を逃げ惑っていた。その後ろで怪獣に捕まったのか人の悲鳴が聞こえる。

「うへぇ、ああはなりたくねーな」
耳を塞ぎながら工藤は彼等の後に続く。

「紗奈ちゃん、こっち!あずさちゃんも!」
木村澪と結城あずさ、そして堀江紗奈も逃げ惑っていた。しかし、その中であずさだけは上空を見上げていたのだった。

「どうしたのあずさちゃん?」
「何かが来る。地球からも宇宙からも」
心配そうに尋ねる紗奈にあずさは上空を見上げたまま答える。
あずさには普通の人間には感じる事の出来ないものを感じ取る事が出来るのだ。

宇宙にもバラッシュやガルーゼの大群が押し寄せている。ネレイドやモンブランもあっという間に
沈められてしまった。現在はバーミンガムに長谷川、和田、松田がそれぞれ乗り込んでいた。

「畜生!このままじゃやられるのも時間の問題だぜ!!」
「冗談じゃないわよ!せっかく基地の再建が済んだってのに、また破壊されるなんて!」
「でも、私達だけじゃどうにもならない」
「先輩・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
長谷川や和田は歯噛みし、ゆっきーや松田には絶望が心を覆っていた。
打つ手が無くなったのか、橘も無言だった。
さらなる敵の攻撃の激化が予想されたその時、無数の青い光が半数の怪獣軍団を一気に消滅させていった。
さらにその青い光は地球に向かって真っ直ぐ進んでいった。

「先輩!今のってもしかして一気に大量発生した反応のものじゃ・・・・・・」
「私達を助けてくれたのかしら?」
「まさか・・・・・・まさかあいつ等が・・・・・・・だとしたら!」
橘には心当たりがあるらしい。
ゆっきーの言うとおりこれこそがゼルエム出現と前後して発生した反応の源であった。

「僕の事をかくまってくれたのか」
「私はそこまでの事は知らなかったわ。でも大山君が怪我してるのを見て放っておけなかったし、
それに後藤君に頼まれもしたしね」
三つ編みの女性が大山将之に対して説明する。彼女の名前は下館瑞希(しもだてみずき)と呼ばれ、
愛称みっちゃんである。ゆっきーや和田の親友の一人である。

42 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/11(日) 23:39 ID:???
「それにしてもびっくりだなぁ。大山君がジェネシスだったなんて」
「春日さんや榊さんにも。まさかジャスティスやレイが彼女達だったなんて思わなかった」
そこにもう二人の女性が部屋に入ってきた。セミロングの髪をした女性と黒髪のロングヘアーの女性がいた。
片方はゆっきーを彷彿とさせる外見の左山(さやま)みずほ、もう一人が門間右京(かどまうきょう)という。
どちらもみっちゃんと同じで以前ムーンキャッスルのメンバーが地球に遊びに来た時に、登場している。

「何でその事を!」
「いやいずれバレるんだったら話しておいた方がいいと思ってな」
ばつが悪そうな顔で後藤隆が出てきた。

「それに彼女達がいなかったら俺達は今もこうしていられなかったろうしな」
後藤や大山はジェネシス事件の後に姿をくらませていた。
しばらくは山中や人目の付かない場所に身を潜めていたが、やがて限界が来て倒れてしまう。
しかし、そこにハイキングか何かで通りかかったみっちゃん達に発見され、現在に至る訳だった。
彼女は特に理由も聞かずにこうして彼等の世話をしてくれたのだった。

「ありがとう」
「いいっていいって。困った時はお互いさまでしょ」
みっちゃんの言葉を聞いて笑顔になる大山だが、すぐ表情を引き締め外に出る。
そこではコスモスとシェイドがゼルエムによって苦戦している場面だった。

「確かシェイドが私達と遊園地で一緒になった和田さんそっくりの百合子さんで、
コスモスが春日さんの妹の翔ちゃんだったよね」
「和田さんは大丈夫かなぁ」
みずほの言葉を聞いてそこに和田がいる訳でもないのに上空を見上げて和田の心配をする門間だった。

43 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/03/11(日) 23:40 ID:???
前半終わりです。
後半に突入します。

44 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/03/12(月) 00:47 ID:???
また直すの忘れてたorz
将明でした。

45 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:08 ID:???
「せいっ!」
「いりゃああ!!」
コスモスのコズミューム光線、シェイドのフォビトンレイジが同時に発射される。
それらは途中でひとつの光線となりゼルエムに命中する。いわばコスモスとシェイドの
ウルトラダブルフラッシャーといったところだった。
しかしゼルエムはそれが命中して体に火花を散らせても平気な顔をしていた。

「ふっふっふっ、そんなものか貴様達の力は?痛くも痒くもないぞ!」
ゼルエムは嘲笑した後に、目にも止まらぬスピードでコスモスとシェイドの目の前に現れ、彼等を
両手で突き飛ばした。遥か後方に倒れこむ二人。
危機を知らせるカラータイマーが青から赤に変わり点滅を始める。

(大丈夫、翔さん?)
(あたしは平気や。それよりも百合子お姉ちゃんの方こそ大丈夫なん?)
中の百合子も翔も相当につらそうだった。

「僕に変身する力が残っていたら・・・・・・・」
その様子を見ながら大山は悔しそうに拳を握る。

「あ、まだ動いちゃ駄目よ」
動こうとする大山をみっちゃんは支える。

「よせよ、お前はまだ意識を取り戻したばかりでまともに動く事だって出来ないだろ。
そんな状態で無理をすれば今度こそ助からないぞ!」
後藤も今にも飛び出しそうな大山を制する。

「だけど、このままここでじっとしていても何も変わらない!僕は彼女を守りたいんだ!
その為の力が欲しい!僕は死んだって構わない!彼女を守る事が出来るんならそれでも!!」
「おい、お前!待てよ!!」
その思いに答えたのか、大山の体が金色に包まれた。
それはほんの一瞬の事だった。

「え?何、今の光?」
「もしかして今のが・・・・・・」
そのまぶしさに目を伏せていた瑞穂と門間は状況が飲み込めずきょとんとしている。

46 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」[ :2007/03/19(月) 00:09 ID:???
(ジェネシス、もう一度僕に力を貸してくれるのか?)
心の中でそう呟くと、大山の目の前にジェネシスが一瞬現れ、そして頷く。

「彼女達を助けに行ってくる。うおおおおおおおお!!」
大山があらん限りの声で叫ぶと、金色の光が発生してそこに光の巨人が姿を現す。

「あれがウルトラマンジェネシス」
現れた巨人を見てみっちゃんは呟いた。

「大山君、ガンバ!!」
「みんなを守ってあげて」
瑞穂と門間の二人はジェネシスに向かってエールを送る。ジェネシスは二人に頷く。

「シュワッ!」
ジェネシスは決戦場へと飛んでいく。

「こうしちゃいられねえ!!」
「どこ行くの後藤君?」
「決まってんだろ!」
そう瑞穂に答えると後藤はみっちゃんの家から駆け足で出て行った。
ジェネシスの行く手には数匹のバラッシュが立ちはだかった。

「邪魔だ!!」
ジェネシスは切断技ジェネシスカッターや腕にある武器アームドジェネシスでまとめて切り裂いた。

「あれはガルーゼ!こっちに来る!」
ちよ達の元にガルーゼが現れ迫り来る。

「このっ!」
智や神楽は光線銃で対抗するものの、ガルーゼは何ともないらしくゆっくり近づいてくる。
そしてちよに狙いを定めた。

「畜生!何が何でも私達を始末する気かよ!!」
「ちよちゃん、逃げろ!!」
ちよは逃げようとするが、間に合わない!!
 
「だあっ!!」
その時彼女達の目の前にジェネシスが現れた。ジェネシスは地上に降り立ち、
ビームランプからの光線サンダースパークでガルーゼを消し飛ばす。

47 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:11 ID:???
「ジェネシス・・・・・・・大山君!!」
「大山君生きていたんや」
ちよと歩は感激の声をあげる。ジェネシスは一度振り返った後、また飛び上がっていく。

「なーんだジェネシスの正体って大山だったんだ」
どうやらゆかりもジェネシスの正体までは知らなかったようだ。

「あんたってこんな時でも本当に動じないわよね」
みなもはこの腐れ縁の同僚を見て、自分もこの状況で落ち着いているのに気づいた。

「ふはははは、貴様達もこれまでだな」
その頃シェイドとコスモスはゼルエムによって追い詰められ地に伏していた。

「てやああああああ!!」
今まさにとどめを刺そうとしたゼルエムをジェネシスは蹴り飛ばした。

「貴様はジェネシス!ふん、まだ貴様のような出来損ないが生きていたとはな」
「大丈夫か?二人とも」
大山の声で二人に語りかけるジェネシス。

「まだまだ戦えるわ!どうやら今回あなたは味方になってくれるようね」
「あたしもまだ平気や〜」
中の百合子も翔も疲弊しているが、気合を振り絞る。それに答えるようにコスモスとシェイドも
立ち上がった。

「お前を倒す!そして平和を取り戻す!!」
「ふん、ほざけ!一人増えたとこで同じ事、貴様等まとめて地獄に送ってくれる!」
「行くぞ!!」
ジェネシスはゼルエムに戦いを挑む。ゼルエムはイーヴィルフォースを発してくるが、
ジェネシスはそれを跳躍してかわして、ゼルエムを投げ飛ばした。

「一気に決めてやる!!デストロイスタッド!!」
ジェネシスは腕をL字型にして放つ必殺技デストロイスタッドを放った。

「ぐ。ぐぬううううううう!!」
ゼルエムがそれに直撃して爆発した。

「やったの!?」
千尋は淡い期待を抱くものの・・・・・・・

48 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:13 ID:???
「ふふふふふ、やはり出来損ないは出来損ないでしかないな。ふん!!」
何事もなかったかのようにゼルエムが現れる。またも念動力を発するゼルエム。

「その手は食うか!」
ジェネシスは上に飛び上がってかわす。

「甘い!!」
ゼルエムの全身がまばゆいばかりに輝く。すると全身から光線が発せられジェネシスを捕らえた。

「ぐおおおおおお!!」
ジェネシスはそれをまともに受けて地面に落下する。
そしてジェネシスを蹴飛ばす。完全に回復していない為か早くもカラータイマーが点滅を始めた。

「そのザマで俺に勝てるはずがないだろう」
「彼を援護しましょう!!」
「分かったで!」
シェイドとコスモスは立ち上がって左右から攻撃を仕掛ける。

「無駄だ!」
ゼルエムの目が光り、コスモスとシェイドを吹き飛ばす。

「このままじゃみんなやられてしまう!」
「どうしたらいいの?」
「あたしはもう変身でけへん」
「私ももう変身する事は出来ない」
「今度ばかりはもう駄目かもしれない」
この事態によりメンバーの心は打ちひしがれていた。
神楽ですら弱気になっていた。

「・・・・・・・・・」
ちよも目の前の光景に目を背けてしまう。

「打つ手なしか・・・・・・・」
暦も諦め気味になっている。ゆかりやみなもが何かを言おうとしたその時、智がみなの前に立つ。

「とも?」
「ともちゃん?」
今までにない真剣な表情の智に釘付けになる7人。

49 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:14 ID:???
「チョーップ!!」
と言って一人一人の頭にチョップをする智。

「いって〜!!」
「何しやがるんだとも!!」
「痛いですよ〜ともちゃん」
「よーし、そんだけ元気なら大丈夫だな」
皆が一様に智を非難するが、智はその反応を見て満足そうに笑った。

「まったくみんな揃いも揃ってらしくもない事すんなよな!今更諦めたってしょうがねーだろ!
最後の最後まであたし等らしく行こうぜ!」
「智・・・・・・・」
智のどこまでもポジティブな考えに、沈んでいたメンバーの顔に生気が戻りつつあった。

「そうだよな、まだ終わってないんだよな!」
「だったら私達は今できる事をするだけだよ!」
神楽はレイフォースを、千尋はパソコンで再びデータを検索し始める。

「ちぇ、せっかくあたしがこの場面でかっこよくハッパかけてやろうと思ったのにともに先を越されちゃったよ」
「それだけ私達が思っている以上に成長しているって事よね」
拗ねるように言ったゆかりに対してみなもは笑いかける。

「これだからバカは困る!それなら今すぐ殺してやろう!!」
ゼルエムが何か指示を出すと、バラッシュが彼女達めがけて飛んできた。

「危ねぇ!!」
基地の外でその様子を見ていた咲月が叫んだ。だが、その時!!
上空から青い光のひとつが飛んできてバラッシュに体当たりしたかと思うと、
それはバラッシュを消し飛ばした。

「一体何が?」
ちよ達は目の前で繰り広げられた光景に驚く。やがてその青い光がひとつの形を成す。
それはとある異星人の姿をしていた。

「まさかマッド星人!」
「よぉお前等また会ったな。ある奴から地球のひいては俺の嫁の危機だと聞いてな。
こうして参上したって訳だ」
と、マッド星人は暦の方を見ながら笑いかける。

50 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:16 ID:???
「だ、誰が嫁だ!?」
「よかったなよみ〜結婚相手がいて〜」
「ふざけんな!あんたも冗談はやめろよな!」
「俺が戦士として認めたんだから、嫁としての素質も十分って事さ!」
「何だ、その理屈」
暦はこの宇宙人と語っていてどっと疲れを感じた。

「それとお前等がジャスティスとレイだったんだな。意外ちゃ意外だったぜ」
「私達の事」
「気づいてるん?」
「まあちょっと前にな。おっとこんな事してる場合じゃねーや。こいつ等を片付けるとするか。
ああ、それとここにやってきたのは俺だけじゃないぜ!」
マッド星人はそれを伝えると、近づいてくるガルーゼと組み合った。

「消えちまいな!!マッドインフェルノ!!」
マッド星人の全身から炎から沸きあがり、それを放出する。ガルーゼは瞬く間に炎に包まれ、
一瞬のうちに消し炭と化した。そしてどこかへ向かって飛んでいく。
マッド星人の言葉を裏付けるように今度は天空よりフェニックスを思わせる外見をした怪獣が二体
現れ、ガルーゼやバラッシュと戦いを始める。大きいほうはバラッシュと空中戦を展開し、小さい方は
ガルーゼと地上戦にもつれこむ。

「あれはバレンシア!よみさんが育てた怪獣ですよ!」
「まさか、アレックス!アレックスなのか?」
信じられないといった表情で暦は目の前の光景を見る。
そして地上のバレンシアがガルーゼを吹き飛ばした後に、こちらに向かって鳴いたのだった。
そのバレンシアは暦の姿を見るなり喜びの声を出す。間違いなくあの時のアレックスだった。

「きっとお母さんであるよみさんを守りに来たんですよ!」
「また会えましたわね暦さん」
あの時、話を聞いていた静も直感でそれが暦の言うバレンシアである事が分かり、そう告げる。

「まさか、またこうして会えるなんて夢にも思わなかった」
暦は感動のあまりか、涙を流していた。それほどまでにうれしい事なのだろう。

(最後まで諦めないで下さい!かつて私達があなたや咲月さんから教えられた言葉です)
「え?その声。まさか!」
神楽の頭の中に誰かが語りかけてきた。その声に神楽は懐かしい気持ちになった。
それは咲月にも聞こえてきた。

51 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:20 ID:???
「もしかしてあん時の!」
そして地底から一人の女性が現れた。

「ルミア!ルミア・モービス!」
神楽はその女性の名前を呼ぶ。

「お久しぶりです彪乃さん。そして咲月さんに他の地上の方々も」
「地上に出れるようになったのか?それとモービスに変わる新しい都市は出来たのか?」
「ええ、試行錯誤の末、何とかこうして地上に出れるようになりました。といってもまだ私一人だけですが。
でも離れていてもあなた達の勝利を皆信じています!
もちろんですよ、あの時以上に素晴らしいものになっています」
ルミアは神楽に聞かれた事ににこやかに笑って答える。

「今度は私達があなた達を守る番です!」
彼女が何かを呟くと神楽達の周囲にシールドが張り巡らされ、バラッシュやガルーゼの侵攻を阻んだ。

「すげえルミア!」
「やるじゃん。さっすが女王様ってか」
神楽と咲月が感嘆の声をあげる。

「歩さん、あの時の約束通りあなたを助けにきました」
「ジュリスちゃんやないか!ホンマに久しぶりやで〜」
歩の目の前に現れたのはかつて歩が助けたアクア星の住人ジュリスだった。
ジュリスは歩に微笑みかけた後、怪獣に向き直り、空を飛んでいたバラッシュを
泡状の球体を発生させてその中に閉じ込めてしまった。

「アクアバブルって言うんですよこれ」
歩に笑いかけた後、球体が爆発する。これによってバラッシュは地上にまっさかさまに落ちていった。
近くにいた仲間も巻き添えで下に落ちていった。

「すごいな〜ジュリスちゃん。あ、女王様達ってどうなん?」
「みんなとても元気ですよ、ほら」
と、そこに立体映像が発せられる。

「わらわ達は元気でやっておるぞ!歩達よ、おぬし達も最後まで頑張るのじゃ!」
女王であるリナールは一言アドバイスを送った後に姿を消した。

「ね?」
「リナール様もみんな元気そうでよかったで〜」
と胸をなでおろす歩。

52 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:22 ID:???
その後ろで千尋とかおりんが何やらパソコンを打ち込みながら何かしていた。

「何をしているんだ千尋、かおりん?」
「こんな時こそ、何かいい作戦を練らなきゃと思って」
「私達オペレーターだからね。でも今回は私達だけじゃ足りないかも」
神楽の質問にかおりんと千尋はそう答えた。

「くそ〜あさぎさん達とはぐれちまった!無事だといいんだが!」
「駄目、もう追いつかれる!!」
みうらがジャンボにしがみつく。恵那も目を閉じた。
ジャンボと小岩井の乗る車にはもうすぐそこまでガルーゼが迫っていた。

「よつば、車から降りるんだ!!」
「やだ!とーちゃんといっしょにいるんだ!」
小岩井はよつばに降りるように言うが、よつばは頑として拒んだ。
車を踏み潰そうと足をガルーゼがあげたその時、ガルーゼの足元が崩れ、
ガルーゼは何かに引きずられた。
そして地中からもぐらの怪獣が出てきた。

「モーグだ!!」
「あの時、私達と一緒に遊んだあのモーグが・・・・・・」
「私達を助けに来てくれたんだ!」
モーグはガルーゼの足を掴んだまま、ガルーゼを地面に叩きつける。
そしてモーグはみうら、恵那、よつばの姿を見つけて笑ったような顔をする。
モーグは起き上がったガルーゼに突進攻撃をくらわせて吹き飛ばした。

「あれおまえの友達か?」
「そうだぞとーちゃん。モーグはよつば達の友達だ!」
「凄いの友達にもったもんだなおまえ等」
「俺も今回はやんだの意見に同意」

あさぎや虎子の運転する車にはバラッシュがしつこく付きまとう。
何とか逃げ切っているものの、いつ捕まってもおかしくない!

「もっとスピード出ないの虎子!」
「これで精一杯だって!!」
が、その時空中から何かが降り注ぎバラッシュを地面に叩きつけた。

53 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:24 ID:???
「大丈夫か、あさぎ!」
そこにいたのは真っ赤な髪をした宇宙人だった。モタビア人という。

「ザナック!!まさかまた会えるなんて!ミルファはどうしたの?」
「別の場所にいるぞ。彼女も私と同じように戦っている!」

「はっ!!」
その言葉どおり青い髪のモタビア人ミルファはみるちーやゆか等に迫った怪獣を
目を青く光らせて放つ衝撃波で倒していた。

「助かったみたいだな、俺ら。あの人が助けてくれたのか」
「こういう事になってるとは思わなかったよ」
京介はホッと一息つく。

「ありがとうございます。助かりました」
「ありがとう!あの、お名前は?」
みるちーとゆかはミルファにお礼を言う。

「ミルファだ。べ、別にお礼を言われる程の事じゃないわよ!嬉しくなんかないんだからな!」
「おお、宇宙人にもツンデレはいるのか!何か感動」
顔を赤らめて否定するミルファに、工藤は変なとこで感動を抱いていた。

そして紗奈、澪、あずさのいる場所にも一匹の怪獣が現れ、ガルーゼとバラッシュを
始末する。そこに現れた怪獣は鳥と人間を組み合わせたような姿だった。
この怪獣の名前をザビロンという。

「おじさん!!」
紗奈はザビロンを見て嬉しそうに叫んだ。

「紗奈、久しぶりだな。そこの二人は友達か?良かった、私がいなくなってもうまくやっているようだな」
「うん。友達もそして大切なお姉ちゃんも出来たよ!」
紗奈は目を輝かせながらザビロンに思いを伝える。

「紗奈ちゃん良かったね!始めまして紗奈ちゃんの友達の木村澪です!」
「この怪獣、いえこの人が紗奈ちゃんを育てたっていう・・・・・・あ、私は結城あずさです」
澪はザビロンを見ても表情を変えずに、笑いかける。あずさは無表情のままだった。
これ以外にもアメリカにはリドリアスが出現してガルーゼに戦いを挑む。

「あんたもあの子達と関わりがあるんだね、あたしには分かるよ」
リドリアスを見て、メルビィ・クリスティは呟いた。リドリアスはバラッシュを上回るスピードで翻弄する。

54 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:33 ID:???
さらに東南アジアではシーモンス、シーゴラスが目覚め津波と竜巻を駆使して
バラッシュの水流波をものともせずに撃破する。そして異世界からもあの四人が来ていた。

「よく分からないが、弥生達がいる世界に来てしまったようだな」
「うん、この近くにみんなの存在を感じる」
「しかし、怪獣ってのがうじゃうじゃいるなぁ」
「全部蹴散らしていきましょう!」
リーンバイス四人組であるハリアー・アグレスト、アーシャ・クレイドル、
リックス・イクスミッド・ガルオス、レジィナ・ルム・カーシスは近くで襲われている人を助け出した。

「た、助かったわ」
襲われていたのはゆかりとみなもの同級生の城山栄子だったりする。

オーストラリアでは何の因果かあのリアード夫妻が現れ、夫婦揃っての強力攻撃で怪獣軍団を
撃破し、中国ではマッド星人と新たに現れたジェロスがデスゲイズ軍団を撃破する。

「よぉ、あんたもあの連中に影響を受けたクチかい?」
「勘違いするな。俺は目障りなゼルエムを消す為にここに来ただけだ。降りる場所を少し間違えたけどな」
「へいへい」

「お姉さん達の怪我をあたしが治してあげる」
「ありがとうリルちゃん」
レクシオンのリルも地球に来て歩達の怪我を治していく。

「私達は襲われている人達を助けましょう」
「地球人に助けられた俺達が今度は助けるのか、悪くないな」
「それが今俺達に出来る彼等への最大限の礼さ」
カノン、シェスター、カスケードもそれぞれの場所へと展開する。
カスケードは口から吐くファイヤーボール、シェスターは尻尾からの電撃ライトニングテイルで、
カノンは爪から発する針ニードルクローでデスゲイズを倒す。
敵側はデスゲイズまでも繰り出してきているのだった。

地球だけに留まらず、宇宙でも同じようにムーンキャッスルを援護するものがいた。
ミステラー星人カルナ、バルックそしてアテリア星人アヌビスだった。
カルナとアヌビスはバラッシュを手に持った光の剣で切断する。バルックは必殺メテオスマッシャーで
数多くの敵を一掃する。

「あんた達が何でまた俺達の加勢に?」
橘が不思議そうに聞く。

55 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:39 ID:???
「君達もあの子達の仲間なのだろう。だったら助けるのは当然の事さ」
「それにあなた達の活躍も最近よく耳にするわよ。凄いんですってね」
カルナやアヌビスは橘に握手を求める。橘もそれに応える。
しかしバルックだけは別の事だけを考えている。

(美浜ちよ。よもや諦めてはおるまいな。俺に諦めるなと言って生き方を変えさせたお前が
諦めるなど絶対に許さん!!)

「ねえ、聞いて長谷川君!大山君と後藤君生きてたって!今みっちゃんからあたしにメールは入ったよ!
それも大山君は今ジェネシスとして戦っているんだって!」
「何だって本当か!?」
「本当だよ。後藤君も戦線復帰してゼルエムって敵と戦ってるって!」
ゆっきーのもたらした情報に憔悴していた長谷川はみるみる生気を取り戻していく。
そばで聞いていた和田や松田も微笑する。

「ちくしょう、あいつら心配させやがって!生きてるんなら生きてるって連絡しろよな!」
「こんなところで絶望している場合じゃないわよ、みんな気合を入れなさい!!」
「はい!!和田司令長官!!」
ビシィと指をさして全員に通達する和田明菜。これが隊員達の士気を高める。

「愛しの千尋ちゃんの為にもここで倒れる訳には行かなくなったわね」
「おうよ、たりめーだ!これで一気に粉砕してやる!フレアレインXX!!」
松田の言葉に今度は照れたりせずに長谷川は力強く答える。
バーミンガムから発するフレアレインXXで大半を消し飛ばした。

「モンブランMarkUのビームで一気に片付けちゃえ!」
「分かりました。ターゲットロックオン。敵一団を掃討します!」
プールの監視員のお姉さん風のが狙いを定める。沈んだ一号機に変わり新たなゆっきーの
戦艦がモンブランMarkUだった。そのビームで敵を一掃する。

「そっちの方は任せたぞ」
「了解、任された」
「元隊長や副隊長も戦っているんだ。俺達だって負けてられないぜ!」
橘の指示に従ったのはこのムーンキャッスルに転属となった
元GENESISの葛城一哉と貴水大介だった。
彼等はムーンキャッスルの中では珍しく戦闘機に乗って出撃している。
そしてそれがもう一組。

56 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:40 ID:???
「私達にとってはやっぱりこっちの方が扱いやすいわ!」
「向こうへ行ってしまったV7の分まで頑張らないとな」
元宇宙ステーションX7に所属していた浅野望と木根信也だった。彼等V7もまた
敵の襲撃に合い全滅してしまったのだ。彼等はその生き残りである。
彼等は以前智達がムーンキャッスルと共同戦線を張った時同様、いやそれ以上の操縦テクニックで敵を撃破する。

「あ、かおりや千尋からだ。なんだろ?」
ムーンキャッスルに転属となったイリーナ・ジュレスが地球からの通信を傍受する。

これに対して各防衛チームも黙っているはずがなく必死の防戦を試みる。
まずは東南アジアエリアを担当するTEAM FANGである。

「シーモンスとシーゴラスに続くんだ!我々も行くぞ!!」
FANG隊長リーバイン・ガーランドが激を飛ばす。

「了解ですぜ!隊長!」
「いつでも準備OKだぜ!」
「カリス、遅れるんじゃないわよ!」
「誰に言ってんだよ!」
隊員であるライザー・ギャラック、ステビア・エアーズ、フィン・ノーティラス、カリス・ディルフォート、
それに呼応する。ライザーとリーバインはメタルブラックα、βに乗っている。

「通信が。HOLYのチヒロからだわ」
オペレーターのメロディ・ミストは千尋からの通信を傍受する。

「私は君達を信じるだけだ」
とベイル・サンダース総司令。

「行って来い!行って我々の強さを思い知らせてやるのだ!」
「もちろんです長官!」
TEAM BLADE長官であるゼイヴィア・グラムナードに隊長のヴィアス・スレンガーが敬礼する。

「行くわよ!あなた達ちゃんとついてきなさいよ!」
「誰に対して言ってるのかな?
「俺らを甘くみんなって!」
「こういう状況でこそ燃えてくるね!!」
セレスティア・ヴァレンタインはナイトストライカーという戦闘機で(ヴィアスはグラディウス)、
マイケル・レイノルズ、ウェッジ・クラフト、ビックス・マイヤーは地上からの出撃となる。

「これは、カオリからの通信だわ!」
リスティナ・ハーディンへはかおりんが通信を送っていた。

57 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:43 ID:???
「我々も遅れるな!!」
TEAM PROMINENCEバーナード・リンクス長官も隊に出撃命令を下している。

「奴等をこれ以上前進させるな!!」
「はい!」
「まとめて相手してやる!!」
「メイファ、調子の方はどう?」
「絶好調ってとこね」
ペルセウスには隊長であるアルヴィス・グローリーが、アルビレオにはシェン・メイファ、ローズ・リムステルが、
地上マシンであるプロキオンでスレイド・モルガノ、ゼレオン・シンドーが出撃する。
このエリアの敵はガルーゼUだった。

「ん?おお撫子ガールからじゃないか!ひっさしぶりだぜい!」
フェリオス・ワードナーは千尋やかおりんからの通信に狂喜乱舞する。
こんな事態でも何かを食べており、今回は何故か濡れ煎餅を食べていた。

「彼等に遅れをとるな!!中華の底力を見せてやるのだ!朱雀、出撃する!」
SPEAR隊長道・龍(タオ・ロン)は気合の声を発する。

「李神狼(リー・シェンラン)、玄武出るぜ!!兄貴、行くぞ!」
「李王(リー・ウォン)、白虎行くッス!!おうよシェンラン!」
「あの暦って子が残した先行者のデータは無駄じゃなかったわね。
燕沙凛(フェイ・シャーリン)、青龍行くわよ!!」
彼等が乗る機体はいずれも暦が乗った先行者をベースにしており、もちろん中華キャノンも出る。

「これは・・・・・・TEAM HOLYからだ!」
残ったオペレーターの古美鈴(クー・メイリン)は直接HOLYメンバーに会った事はなかった。
それは神狼や王も同じだが・・・・・・

「私達は絶対に諦めないわよ!!フレイムブラスター!」
相田京子のスペリオルドラゴンからフレイムブラスターがゼルエムに命中する。
しかしゼルエムは鬱陶しそうに振り払う。

「そんなに死にたければ貴様から先に殺してくれる!!」
ゼルエムは京子に向かってデモンズアイを発射しようとする。しかし、そこをミサイルで攻撃して
動作を中断させた者がいた。その機体は後藤が愛用したメタルブラックに他ならなかった。

58 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:44 ID:???
「あなたは元TEAM GENESISの後藤副隊長!」
「大山と一緒に舞い戻ってきたぜ!京子隊長、俺も参戦するぞ!仲間を援護する為に!!」
「ええ大歓迎だわ!」
「またうっとおしいのが増えたか。目障りだ消えろ!」
「消えるのはお前だ!ストライクバニッシャー!!」
後藤の放ったストライクバニッシャーがゼルエムに直撃する。しかし、ゼルエムは倒れない。

「今まで私達と戦ったり出会ったりした人達が地球の危機に来てくれた」
「こういうのを奇跡って言うんだろうか?」
ちよや暦はその様子をじっと見ていた。

「それは違うわよ」とみなも。

「これは今まであなた達が行ってきた事に対する結果よ。つまりあなた達のこれまで
してきた事は決して無駄ではなかったのよ」
「そうそう、もっと胸はんなさい」
みなもは至極真剣に言うが、ゆかりは砕けた調子で言う。

「そうそう、にゃもちゃんいい事言う〜。まあほとんどあたしのお陰だけどね〜」
「コラ!お前は本当にこんな時でも調子いいよな〜」
相変わらずの幼馴染みの態度に暦はため息をつく。

「でも、その方がともちゃんらしいです!」
「ともちゃんはみんなのドリームメーカーやしな〜」
「それを言うならムードメーカーだろ!」
珍しく神楽が歩に突っ込む。そんな時智に電話がかかってきた。

「こんな時に。誰からだ?」
「は〜い、智久しぶり。シルビィだよ」
それはチャイルドバルタンであるシルビィだった。

「もしかしてお前がメールでみんなに知らせてくれたのか?」
「そうだよ。レクシオン、デゾリス、アクアはあたし達とも交流があったから
すぐに連絡とれたし、他のみんなも絵里や智達からメールで知っているから
声をかけるのはそんなに難しくなかった。あとはバレンシアやマッド星人みたいにあたしが
声をかけなくても自発的に駆けつけたのもいるしね」
「そうだったんや〜」
「それに今回地球に来ていないみんなからも応援メッセージを貰ってるから、送るね」
シルビィは一旦電話を切る。すると智に電話がかかり映像が切り替わった。

59 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:46 ID:???
そこには榊が大好きなキャッツ星人やミルビス、デゾリスの住人が移っていた。
どうやらシルビィが彼等に与えたものらしい。まずキャッツ星人が移る。

「久しぶりだな。あのバンドコンテスト以来か。今時分が出来る事を最大限にするんだ。
そうすればきっと道は開ける」
「は、はい!」
ねここねこ似のキャッツ星人に、榊はすっかり感極まっていた。後ろではミルビスも
「そうだ」と言わんばかりに鳴く。

「俺達は地球に行けないけど、あんた達なら絶対にゼルエムに勝つって信じてるぞ!」
「最後まで諦めないあなた達ならきっと大丈夫よ!」
「そういう事じゃな」
デゾリスの少年フラッシュや女性であるキャスティ、そして長老のゲインとどれも見覚えが
ある者達だった。

「任せとけって」
答えたのは神楽だった。

「みんな、ファイトだよ!」
最後にシルビィがもう一度電話をして、エールを送った後に電話を切った。

「しかし、まさか宇宙から応援メッセージもらえるとは思わなかったなぁ〜」
「あら、宇宙だけじゃないわよ。この基地のネットにだってあなた達への書き込みが来ているわよ」
と言ったのは井上舞。彼女が教えた所にアクセスすると、確かにその書き込みがあった。

「姉ちゃん達、頑張れ!」
それはベムスターとの戦いの時の市民や、かつてHOLYを批判した住民達からのものであった。

「やっぱり嬉しいですよね、こうして応援してもらえるのは」
「そうだな」
書き込みを見ながらちよと暦は笑いあう。

「我々も忘れてもらっては困るな。特にホットでクールな私を!」
急に別の通信が割り込んできてキョンシー映画に出てきそうな眼鏡かけたおっさんが写った。

「あなたは南極のTEAM SNOW隊長ニード・ロウさん!」
「僕達もここに配属になったんだ」
「榊隊員、今度僕とお互いの猫をお見合いさせない」
元GENESISの小室久志と宇都宮博之の姿もあった。
さらには美男子風の男性と妖精のような外見をした少女がいた。どう見ても後者は人間ではない。

60 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:49 ID:???
「だって?どうする榊?」
「いや、いいけど・・・・・・」
「重度の猫マニアはどいてろ!始めまして尚貴・S・ラプターだ。この隊の随一にして
唯一無二のイケメンとは俺の事。俺のような・・・・・・・」
「ナオキ邪魔!あたしヴィディア。よろしくね」
互いに押し合いへし合いながら自己紹介するSNOWの面々。
後ろを見ると敵が迫っていて、隊長のニードがいきなりやられているが、誰も気にしていない。
ちなみにヴィディアは、人造生命体である。小さな外見に似合わず怪力である。

「まったく何やってるのよ!今は戦闘中でしょ!あ、私はレクリサンダ・フランジュ副隊長です。
レンって呼んでね」
さり気なく副隊長である事をアピールするレン。褐色の肌に美しい顔立ちだが、目に傷跡がある。

「私はマーガレット・メル・ラシェラ総司令です」
「ミィナ・ダニンガンだよぉ」
「アリサ・ダンニガンだ!おめーらちょっと有名だからって調子のんなよ!」
赤毛のアンを彷彿させる容姿のマーガレット・メル・ラシェラは整備士でもある。
セミロングでオールバックの外見がアリサ・ダニンガンである。もう一人ミィナ・ダニンガン。
二人は従姉妹である。ミィナはショートヘアーとなっている。
いきなり喧嘩を吹っかけてくるアリサ。彼女達は基地内にいるらしい。

「うわっあいつ等榊ちゃんや神楽より胸でけーな!」
「ホンマや、おっぱい大きいわ〜」
「わ、私だって大きくなったらきっと」
「上には上がいるって事か」
智、歩、ちよはその大きさに驚いている。暦が静かにつぶやく。
ちなみにマーガレット、アリサ、レン、ミィナの順らしい。

「凄いけど、別に羨ましくはないな」
「うん」
素っ気無い反応な神楽と榊。

「それよりいいんですか?あなた達の隊長後ろでやられてますよ」
「ああ、気にしないで。うちの隊長基本的に『ヘタレ』だから」
「は、はあ」
レンの物凄い淡白な言い方にHOLYでよかったと思うちよだった。

61 :第77話 「最終章―いくつもの絆 消せない絆―」 :2007/03/19(月) 00:56 ID:???
「あんた達気をつけなよ〜そんだけ大きいとたれた時悲惨よ〜」
「ゆ、ゆかり!いくらなんでもそれは失礼よ!」
ゆかりがとてつもない失言をしてみなもがそれを咎める。

「何だと〜それはどういう意味だ〜!うっ、ゴホゴホ!!」
怒り出したと思ったらいきなり吐血するアリサ。相当の高血圧らしい。
隣でミィナがオロオロしている。

「だ、大丈夫か?何か出血してるぞ!」
「ああ、大丈夫大丈夫。これいつもの事だから」
トダバタしたまま通信は一方的に切れたのだった。

「何だったんだ今のは?」
暦含めてその場にいた全員がポカーンとなる。

「弥生さ〜ん」
そんな時、誰かが榊に向かって呼びかけた。
彼女の腕には榊になついているイリオモテヤマネコのマヤーがいた。
榊と一緒に住んでいる大学の親友である久世怜香だった。

「怜香さん!それにマヤーも!どうしてここに?外は怪獣達がいて危ないのに」
「この子がどうしても行くんだって暴れて聞かないから、仕方ないから
連れてきたのよ!一人で行かせるのも危険だしね。それは私も同じだったけど、
途中にミルファとかいう人に助けてもらってここまで来たの」
「ミルファ・・・・・・怜香さんもマヤーも無事でよかった」
榊はミルファの事を思い出し、怜香を助けた事にちょっぴり嬉しくなった。
マヤーは榊の顔を見ると一直線に榊の胸に飛び込んできた。
榊はマヤーをいとおしく抱きしめると智の肩に手を置いた。

「智、あの時学園祭の準備でやった人形の遊びでの言葉を言う時だよ」
「え?ああ、あれ言うのか?でも今の状況にピッタリだもんな。てか榊ちゃんよく覚えてたな」
「何でかな?ふと思い出した」
「そうなんだ。けどそういうのは嫌いじゃないから、行ってくる」
智は榊に促され、一歩前に出る。

「ゼルエム!お前にこの地球を渡す訳には行かない!」
ゼルエムを指差し、智はかつて学園祭での言葉をこの状況で発した。
第77話 終            第78話(最終回)へと続く

62 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/03/19(月) 01:09 ID:???
かつて戦った敵や助けた仲間、そして交流を深めた者達の助けを
借りながらも彼女達は立ち上がる。

「雑魚がいくら集まろうと結果は同じだ!まとめて蹴散らしてくれる!!」
咆哮をあげるゼルエム。

「これが私達にとっての最後の戦いです!」
「皆さん、決して諦めないで下さい!最後まで希望を捨てないで下さい」

「君の思ったとおりに行動すればいい」
総監の夫も再び現れる。

『今までありがとう歩』
「ジャスティス・・・・・・」

次 回 ウルトラマンジャスティス
第78話(最終回) 「そして未来へと・・・・・・」
次回、ついに完結!

63 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/03/19(月) 01:13 ID:???
最終回間近という事で、今まで関わった人達を出してみましたが、
何とも物凄い数になってました。
入りきらないものとかも出てきました(春日姉妹の両親とか)
それらは次回の最終回で入れる予定です。

64 :レウルーラ ◆iCj5r1a15w :2007/03/19(月) 20:02 ID:???
>>19-63
お疲れ様です。いやー、長かったジャスティスもついに次回で完結ですな。
どのような結末を迎えるのか楽しみにしております。

>>60-61
御願いを聞き届けていただき感謝いたしますが
アリサは女言葉で喋るんですよ……
それとニード・楼隊長の苗字の「楼(ロウ)」ぐらい漢字で書きましょうよ……

それと
>「あんた達気をつけなよ〜そんだけ大きいとたれた時悲惨よ〜」
「あんた達気をつけなよ〜。そんだけ大きいとたれた時悲惨よ〜」
とかって句読点を付けたほうがよろしいかと

65 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:22 ID:???
ウルトラマンジャスティス
第78話(最終回) 「そして未来へと・・・・・・・」
完全生命体 ゼルエム 登場

前回までのあらすじ
最強の生命体ゼルエムの出現によってウルトラマンジャスティスとウルトラマンレイは絶体絶命の危機へと
追い込まれ、歩と榊に分離。そして消滅してしまう。
ちよ達を逃がそうとちよ父の人形が意思を持って動き出し彼女達を庇ったり、
松岸が出撃したりしたが彼等もまたゼルエムの犠牲となってしまう。
世界各地にバラッシュ、ガルーゼ、デスゲイズといった敵がバラまかれ世界は闇に包まれる。
春日翔と平井百合子、そして大山将明はコスモス、シェイド、ジェネシスに変身し、
死を覚悟でゼルエムに戦いを挑むが、大苦戦を強いられる。
さらには宇宙にもバラッシュの大群がバラまかれ、ムーンキャッスルの命運もまた風前の灯となった。
しかし、そこにマッド星人やバレンシア(アレックス)、ザビロンを始めとするかつてHOLYと戦った者、
あるいは絆を築いた者達が、地球の危機に駆けつけたのだった。
そして彼等と連携しての反撃が開始されたのだった。

「ゼルエム!お前にこの地球を渡す訳にはいかない!」
智はかつて学園祭での言葉をこの状況で発した。

「ほざけ!下等生物が!今にその口を聞けなくしてくれる!!」
ゼルエムはそれに怒ったのか、荒い口調で返した。
ゼルエムは飛び道具を放つが、ルミアのバリアーによって遮られる。

「どこへ行くの?あなた達」
舞は外に出ようとしている咲月達に声をかける。

「この近くに避難施設があるだろ?そこに行って逃げ遅れてる奴等を連れてくるぜ」
「わたくし達も少しはお役に立ちたいですわ」
「それにこういった状況はもう慣れっこですから」
咲月、静、七瀬が笑いながら答えた。

「お姉ちゃんや恵那達、無事だといいけど」
「心配いらないだろ。虎子も一緒だし、それにあさぎを気に入ってる宇宙人が助けてるっていうから」
心配する風香に広哉はそう答え、咲月達の後をついていく。

「全く困った子達ね。なら私も本来の職務をまっとうするだけね」
と言って舞はメディカルルームへと戻った。

66 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:26 ID:???
「やっぱあんた強いな。エアルと同化していた時よりも強いんじゃないのか?」
「その話はするな。吐き気がする」
マッド星人に過去の話をされジェロスは不機嫌そうに答える。ジェロスは手に持った大鎌と雷撃で、
マッド星人は曲刀などを使って怪獣軍団を殲滅する。それにTEAM SPEARが続く形となる。
バラッシュやデスゲイズ軍団は彼等の奮闘により数を急激に減らしていた。
他のエリアも怪獣や宇宙人と防衛チームの連携によって確実に撃破していく。

「ふん、まあいい。ならばこうするまでだ!」
ゼルエムが左腕をあげると、各地にいたバラッシュやガルーゼ、デスゲイズが集結していく。
そして、各エリアに一体ずつゼルエムによく似た個体の生命体が現れた。

「そいつ等は我が分身ゼルエム量産タイプだ。ゼルエムオメガとでも呼ぼうか。
私に比べれば戦闘力が劣るものの、それでも貴様達なら十分に相手できる」
それらはゼルエムに比べるとやや小さかった。色もグリーンがメインとなっている。

「ジャスティスとレイを復活させる?」
「そんな事が出来るのカオリ?」
「それは本当かい撫子ガール?」
メロディ、リスティナ、フェリオスはかおりんや千尋からの提案を聞いて驚く。

「うん、まだジャスティスとレイの光エネルギーは私達ATDFそれぞれの基地から発して
結集した光エネルギー、シャイニングバーストを放出させて、それを大阪さんや榊さんの持つ
ジャストランサーやシャインリングに集束されれば復活は出来るよ」
「太陽エネルギーみたいなものって訳ね。でもそんなうまくいくかな?」
「もちろんただ放出しただけじゃ駄目だけどね。途中でそれぞれの戦闘機に中継させて一箇所つまりは
ここに効率よくシャイニングバーストを集める必要があるけどね。機体には集束ポイントに正確に誘導する装置と
そのエネルギーを増幅させる装置もつけるけどね」
古美鈴(クー・メイリン)の質問にかおりんは答える。

「そして、それには今、戦闘をしていないメンバーが不可欠だね」
「そこであたし達の出番って訳だ」
智は自信満々とばかりに胸を叩く。

「月面からのエネルギーはどうするのかしら?」
「それは私がやるさ。私はグリーンキャリバーのメインパイロットだしな」
イリーナからの通信に暦が答える。

「榊さんと大阪さんはここにはいなくてはいけないですからね。私はじゃあアメリカに飛びます」
「だったら私はオーストラリアだ」
「あたしはじゃあ中国かな。でもそうすると一つ足りないぞ」
「東南アジアには私が行く事にするわ。コンピューター関連なら千尋の方が強いしね」
と名乗り出たのはかおりん。

67 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:28 ID:???
「決まりだね。榊さんと大阪さんはそこから少し離れた場所に移動して。そこが集束ポイントになるから」
「了解や〜」
「分かった」
千尋に言われた通りに、榊と歩は指定されたポイントへと移動する。

「何だよ、どうせならあたしが操縦してもよかったのに」
「車であれなのに、戦闘機なんて余計任せられないわよ」
ゆかりは冗談めかして言うが、みなもはそれに対して首を横に振る。

「TEAM SNOWには要請しないの?」
「連絡してみたけど、ちょっと無理みたい」
かおりんはTEAM SNOWの事も聞いてみたが、千尋は首を横に振った。

「では行きましょう。私はアメリカ、よみさんが宇宙、ともちゃんは中国、神楽さんはオーストラリア、
そしてかおりんは東南アジアに向ってください。そして各国のオペレーターと連絡を取り合い、
シャイニングバーストを中継して大阪さんと榊さんに集めます!それじゃあ皆さん行きますよ!
『オペレーションジャスティス』開始です!」
「ラジャー!」
こうしてオペレーションジャスティスが発動する。

「何が来ようと倒すだけだぜ!ソリッドクラッシュ!」
マッド星人は先制攻撃に必殺技のひとつであるソリッドクラッシュを放った。

「ふん!」
しかし飛んでくる球体をゼルエムオメガは片手で難なく弾いてしまう。

「うりゃあああああ!!」
しかしマッド星人もそれは予想していたらしく、その隙をついて殴りかかる。
だが、ゼルエムオメガは彼の攻撃が届くより先に殴り飛ばしていた。

「がはっ!」
「そんなパンチでは俺は殺せない」
嘲笑うゼルエムオメガ。本物に比べると喋り方はどこか機械的である。

「量産型ごときがこの俺に勝とうとするなど笑わせる!!」
大鎌でバラッシュを切り裂いたジェロスは今またそれでゼルエムオメガに斬りかかる。
だがゼルエムオメガはその太刀筋を見切ったのか、受け止めた。

68 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:30 ID:???
「何!?がはっ!」
「遅いな」
そして本物と同じように目からの光線デモンズアイを発射してくる。胸に受けジェロスはうつぶせに倒れこんだ。
そしてSPEARの機体に向って殴ったり、蹴り飛ばしたりした。

「きゃあああ!」
「みんな大丈夫か!?」
「な、何とか平気です!」
「いてててて」
隊長である道・龍(タオ・ロン)は他のメンバーに声をかける。一応全員無事なようだが、機体にはダメージを負っていた。

東南アジアではゼルエムオメガはシーモンス・シーゴラスの津波と竜巻の二段攻撃の前にも全く動じず、
逆に連続発射される衝撃波イーヴィルフォースでこの夫婦怪獣にダメージを与える。
さらに援護に入ったTEAM FANGの攻撃に対しても全く寄せ付けない!

「あのシーモンスとシーゴラスの津波、竜巻攻撃が破られるなんて!」
「そんなものでこの俺を倒せるとでも思ったか?笑わせる。ふん!」
ゼルエムオメガは黒い球体であるダークスマッシュで、メタルブラックα、βにダメージを与えて撃墜する。

「脱出するぞ!ライザー!」
「畜生!今までとは比べものにならない敵だ!」
さらに地上のステビア、フィン、カリスにまでその弾は発射され、彼等の前で爆発が起きる。

アメリカでもゼルエムオメガの出現で、戦況は不利となっていた。
リドリアスやTEAM BLADEは地を這うエネルギー波『デビルスラッシュ』で次々になぎ払われていった。

「大丈夫か、セレスティア!」
「申し訳ありません!不時着します!!」
「さっきまでの勢いはどうしたのかな?ふふふふふ」
ヴィアスは何とか回避するものの、セレスティアの方は不時着を余儀なくされる。
マイケル、ウェッジ、ビックスは既に倒れている。

「あの子達も頑張っているんだ!あたしだって諦めないわ!」
メルビィはその様子を避難施設の中にあるTVで見ていた。

オーストラリアでもリアード夫妻がゼルエムの圧倒的な力の前に成す術もなかった。
TEAM PROMINENCEでもゼレオンとスレイドの乗るプロキオンが爆破された。

69 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:33 ID:???
「ゼレオン!スレイド!!」
「何とか平気です!」
「ちょっと怪我しちまったみたいですけどねぇ」
アルヴィス・グローリーの呼びかけに二人はそう答える。

「やはり貴様達はそれが限界のようだな」
ゼルエムオメガが嘲笑する。

そして宇宙のムーンキャッスルもゼルエムオメガの出現によって再び劣勢を強いられる。
カルナ、アヌビスが吹き飛ばされ、バルックが飛び掛るが触れる事すら出来ない。

「おのれ!!」
「ミステラー星の戦闘隊のエースとまで呼ばれた男も、そしてATDFで最も強いとされる
ムーンキャッスルも私にかかれば赤子と変わらん!」
バルックを蹴飛ばした後、ゼルエムオメガはデモンズアイで艦隊を次々に破壊される。
橘のいる施設や、バーミンガムも被害を被った。

「うぐっ!だ、大丈夫か松田!」
「へ、平気よ、これくらないなんて事ない!」
長谷川は松田を助け起こす。

「無駄な抵抗はやめろ。おとなしく俺に殺されるのを待つがいい」
「冗談言うな!これからだってのによ!」
「誰もあなたなどには屈しません!!」
橘、和田がビシィとゼルエムオメガを指差しながら言った。

「あんな思いはもうさせない!」
今までに見せた事のない凛々しい顔をゆっきーは見せる。

そして南極のTEAM SNOWもゼルエムオメガの登場で戦況不利となる。
レクリサンダの乗る人型機体が煙を噴出し、中のレクリサンダも苦しそうに息をしている。

「レン!あまり無理をしないで!」
「分かってるわアリサ!」
アリサはレクリサンダの体を気遣う。

「何度再編成しようとまた潰すだけの事だ!」
ゼルエムオメガがゆっくり迫る。

70 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:35 ID:???
場面は日本へと戻り、ゼルエムはちよ達が動き出したのを見逃さなかった。

「何をするつもりか知らんが、目障りだ!消えるがいい!」
ゼルエムの第3の目が真っ赤に光ると、ルミアの貼ったシールドが破られる。

「きゃあ!」
「うあっ!!」
ルミアは吹き飛ばされ、さらにジュリスも吹き飛ばされたルミアにぶつかりその下敷きとなって倒れる。

「させないわ!!」
京子の乗るスペリオルドラゴンがミサイルを網の目のように発射する。しかし、ゼルエムはそれを難なくかわしてしまった。
コスモス、シェイド、ジェネシスも地面に倒れたままだ。
そしてゼルエムは光線を発射しようとする。しかし、そこをバレンシア親子が決死の覚悟で、体当たりしてくる。
ゼルエムは地面に倒される。

「バレンシア!アレックス!!」
暦が叫んだ。

「怪獣如きが!この俺に戦いを挑もうなどとは身の程知らずが!」
ゼルエムは超能力を使って、バレンシア親子を同時に持ち上げ、地面に叩きつける。
その後ろから今度はモーグが突進してくる。

「雑魚が!!」
デモンズアイでモーグは近づく事すら出来ずに、仰向けに倒れた。

「モーグ!!」
「がんばれ、モーグ!!」
よつば達はモーグに必死の声援を送る。今度はザビロン、ザナック、ミルファが彼等の前に立ちはだかる。

「ここから先へは行かせない!!」
基地への道を阻むかのように彼等は立ちふさがる。

「次から次へと鬱陶しい!!」
ゼルエムは一瞬で間合いを詰め、三人をまとめて吹き飛ばした。

「急ぎましょう!彼等が食い止めてくれている今がチャンスです!!」
「分かってるよ!あたしは準備OKだ!」
「こっちもOKだぜ!」
「いつでも発進可能だ!」
「ごめん、遅くなって!いいよ、ちよちゃん!!」

71 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:37 ID:???
「それじゃあ、発進します!!」
ちよはブルードラゴン、智と神楽はレッドファルコン(EX1、EX2。EX3は自動操縦による攻撃)、
かおりんはホワイトウイング、暦はグリーンキャリバーによってそれぞれのポイントに向って出撃する。

「あんた達〜絶対成功させさいよ〜、でないと罰金ね!」
「あんたって。でもみんな頑張って!」
ゆかりとみなもはそれを見送っていった。

「何をするつもりか、知らんが消してくれる!」
「そいつは俺達を倒してから言うんだな!」
「私達もいるわよ!」
今度はハリアー達リーンバイスの人間達と、カノンを初めとするレクシオンの人間が集結した。
ファイヤーボールなどで攻撃を仕掛けるが、その効果はなきに等しかった。

「お前たちがいくら束になろうと俺の敵ではないわ!!」
ゼルエムの体が黄金色に輝くと、彼等はまとめて吹き飛ばされ、さらには近くにいた
TEAM FLAMEの戦闘機などもその影響で一時的に操縦不能になった。

「お父さんとお母さんも早く!」
「やれやれ、どこにいたって危険な事に変わりないのに」
「そうよ、どうせだったら家でゆっくりしていたかったな」
風香に連れられた綾瀬家の両親は緊迫感のない声でそう言った。ここは避難施設の一種で
よつば達もそこに合流していた。

「無理だよ、勝てっこねーよ!」
「いくら彼女たちの事を助けにきた宇宙人や怪獣がいても次元そのものが違うんだ」
城山栄子ややんだは諦め気味でそれは他の市民にも言える事だった。
重い空気が場を支配している。

「これも運命なのかもしれんな」
と老婆が呟く。

「馬鹿野郎!もう諦めちまうのかよ!最後の最後まで諦めるんじゃねーよ!」
「よつばはあきらめない!ちよややよいたちはぜったいかつ!」
咲月が怒鳴り、よつばもそれに続く。

「皆さん、どうか希望を捨てないでください」
突如モニターが切り替わり、そこにとある人物の姿が映し出された。
それはATDF総監である木村琴音であった。

72 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:39 ID:???
「おかあさん!」
思わず澪は母の事を呼んでいた。

「皆さん始めまして。私はATDF総監である木村琴音です」
映し出された琴音にみな一斉に注目する。

「今、私達の地球は最大の危機に直面しています。滅亡の危機に
晒されていると言ってもいいでしょう。でも、だからこそ諦めないで下さい。
今、世界中のATDFは滅びをもたらす者と必死に戦っています!これまで
絆を深めてきた怪獣や宇宙人と一緒に。例え戦う事が出来なくても私達の
事を信じて彼等を応援してあげてください。それこそがその思いこそが私達にとって何かを
守る事において最大の原動力そして絆となりますから」
一気に言い終えると、モニターの映像が切れた。

「けっ、応援や想いで勝てるだけなら苦労しねーんだよ!」
「全くだ」
避難した市民の中には悪態をつく者がいた。しかし・・・・・・

「俺は信じるぜ!だってあの人達は今までだって俺達を救ってくれたんだ!」
「そうだよ、私達が信じないでどうするのよ!」
かつてHOLYやFLAMEによって救われた市民達はそれに反対する。

「あたしはおかあさんのいう事を信じる!」
「私だってお姉ちゃんを信じる!」
澪の言葉を聞いて、あずさは珍しく感情を表に出した。

「私もその人達を信じてもいいんだよね?」
「もちろんだよ、しまうー!」
しまうーとは風香の高校時代の同級生であった。

「畜生、もう一度あたしと兄貴が変身できたならな」
「さっちゃん、今はそれを言ってもしょうがない。今はみんなを信じようじゃないか」
咲月は悔しそうに壁を殴る。そんな咲月を見て広哉はたしなめる。

「相変わらず妹には甘いね」
「広哉さんは昔からそういうとこ変わってないしね」
虎子は無表情のまま、あさぎは少し笑いながら感想を述べる。

73 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:42 ID:???
「これで良かったのかしら?」
「素晴らしかったよ、マイワイフ」
琴音が一息つくと背後にはいつからいたのか、彼女の夫がいた。
HOLYメンバーや翔の高校の教師である木村先生でもある。

「あなた・・・・・・」
「君の思ったとおりに行動すればいい。私の教え子達と同じようにね」
「ありがとう」
琴音は疲れているのか、彼にもたれかかった。木村もそれを拒む事はなかった。

「今はゆっくり休みなさい。無理は体に毒だから」
普段は見せないような一面を彼は琴音と二人きりの時は見せるという。
琴音は天使のような微笑みをする。

そしてHOLYメンバーは目的地へと到着する。
後はシャイニングバーストを発射するだけである。

「準備OKみたいだね。じゃあ、みんなで一斉にシャイニングバーストを発射するよ!
せーの、シャイニングバースト発射!!」
「了解!シャニングバースト発射!!」
千尋の合図で各基地からシャニングバーストが発射される。千尋の発したシャイニングバーストは
歩と榊の頭上に発射され、集束するのを待つかのようにその場に漂う。

「まずは私からですね!」
ブルードラゴンに乗っているちよがアメリカ基地から発せられたシャニングバーストを機体に
当てて、集束ポイントへと誘導する。
これの為に機体の真下には誘導用そしてシャイニングバーストを増幅させる装置が取り付けられている。

「うっ!これは結構きますね!」
ちよは機体に受ける衝撃に少し驚いていた。一瞬ガクッとなるが、何とか機体を安定させる。

「大丈夫?美浜隊長」
「ええ、大丈夫です。リスティナ隊員」
BLADEのリスティナ・ハーディンに心配されるが、ちよはそう答える。

「次はあたしだな」
中国に着いた智はレッドファルコン1号機にて、待機する。

74 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:46 ID:???
「本当に大丈夫なの?」
「心配性だなぁ。メイは。大丈夫、あたしにまっかせろっての!」
「分かった。行くよ!」
幾分不安そうにしていた古美鈴(クー・メイリン)もその言葉を聞いて、
シャイニングバーストを発射する。そしてEX1がそれを日本へと向わせる。

「ヒュー、撫子ガールにこうしてまた共同作戦とれるなんて、嬉しいねぇ」
「相変わらずだな、その軽いノリ。とにかく頼むぜ!」
「OKOK、撫子ガールの頼みとあらばおやすい御用さ。シャイニングバースト発射!」
TEAM PROMINENCE隊員のフェリオス・ワードナーのノリに、少し呆れ気味の神楽だが、フェリオスは
作戦を決行する際にはこれまでに見せた事のないシリアスな顔をしていた。
レッドファルコン2号機でシャイニングバーストを日本へと誘導する。

「はぁい元気してた?暦。私は今こうしてムーンキャッスルの一員になってるわよ」
「あんたといいともといい、緊張感ってものを感じさせないな。ま、その方がらしいというか」
「なるようにしかならないからね。じゃあ行くわよ」
「ああ、頼んだ!」
月面のイリーナ・ジュレスが発したシャイニングバーストを暦が乗るグリーンキャリバーで中継する。

「お久しぶりね、カオリ。デゾリス事件の時以来かしら」
「そうね、確かにそれくらいだわ」
TEAM FANGのメロディ・ミストとかおりんは再会の挨拶を軽く済ませる。

「チヒロが言っていたのはこの事だったのね。お願いするわね、カオリ」
「ええ、任せてメロディ。こういうのあんまりやらないからちょっと緊張するけどね」
かおりんの乗るホワイトウイングに、シャイニングバーストが照射されて、これも集束ポイントへと
向っていく。

「見て弥生ちゃん。光が集まってくるで」
「ああ、みんなが作ってくれた光だ」
歩と榊は上空に溜まっていく光を見ながら言った。そしてジャストランサーとシャインリングを
見ると確かに輝きを放ち始めている。
集束ポイントに放たれたシャニングバーストは一箇所に集められる。

「行くよ大阪さん、榊さん!しっかり受け止めてね!!」
「分かった千尋」
「OKや、千尋ちゃん!」
千尋の指示を聞いて榊と歩は変身アイテムを上空に掲げる。
集められたエネルギーが歩と榊に向かって降り注いでいく。

75 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:48 ID:???
「そこで何をしている!!かあああああ!!」
ゼルエムがそれに気づき、衝撃波であるダークスマッシュをHOLY基地に向かって
放ってきた。上半分の部分をかすめていった。

「きゃああああ!!」
千尋のいた近くで建物の天井が崩れ落ちてきた。その天井にこそ当たらなかったものの、
振動により千尋は床に倒れこんだ。

「この基地もいよいよ危ないわね!」
メディカルルームにいた井上舞も、今までにない程厳しい表情になっている。
木村夫妻はその場から動こうとせずに成り行きを見守っていた。

「千尋!」
「千尋ちゃん!!」
「だ、大丈夫!まだMAXにまで行ってないからそこにいて!!」
千尋は起き上がり再びシャイニングウィザードを放出する。

一方、各国のゼルエムオメガもそれに気づき、基地に向かってデビルスラッシュや
イーヴィルフォースで攻撃してくる。それぞれの基地の周囲やすぐ近くで爆発が起き、発射が中断される。

「く・・・・・・」
「大丈夫ですか、リスティナさん!」
「大丈夫よ!それより作業を続けるわよ!!」
アメリカではちよに心配されるが、リスティナも同じように立ち上がって、エネルギー照射を始める。

オーストラリアでは基地の外壁が大破し、むき出しとなっていた。しかし、中にいるフェリオスは頭から
血を流しながらも、立ち上がった。

「血が出てるぞ!すぐに止血しないと!」
「こんな傷すぐ治るさ!それよりも今は作戦を続ける事が重要だ!!」
「分かったよ!あんたのこと少し見直したよ!」
「撫子ガールに褒められたよ。最高の起爆剤だぜ!!」
フェリオスの決意を見て、神楽も頷いてそのまま作業を続ける事にした。
中国でも美鈴(メイリン)のいたすぐ隣が爆撃され、その爆風に彼女は吹き飛ばされる。

「智!しっかり届いてるよね?」
「もちろんだって!任せとけって!絶対届けるからな」
古美鈴(クー・メイリン)は体を震わせながらも、必死で作戦を実行しようとする。智もその思いに
答えるべく作業は中断しなかった。

76 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:50 ID:???
東南アジアではメロディが衝撃でバランスを崩してしまい、転倒する。
その為にシャイニングバースト放出が一時中断された。

「メロディ!」
「諦めるもんですか!カオリ、受け取って!!」
「ええ、もちろんよ!!」
かおりんがメロディに声をかける。それにメロディは力強く答える。
宇宙ではイリーナの乗る艦にビームが当たり、大きくバランスを崩した。

「きゃっ!!」
イリーナは慌てて、そばの柱を掴んだ。

「暦!そっちにしっかりエネルギーは届いてる!?」
「心配するな!しっかり届いてるぞ!!それよりそっちこそ大丈夫なのか!?」
「心配しなくてもこのエネルギーは絶対に送り届けるから安心して!!」

「まだ粘るか。ならば今度はその中継している機体を落としてくれる!!そして
そこの二人もなぁ!!」
ゼルエムは榊と歩の二人に狙いを定める。榊も歩もそして他のメンバーも今の状態では動けない。

「であっ!」
「しぇあ!!」
それを聞いたコスモスとシェイドが起き上がり、ゼルエムを両方から押さえつける。

「邪魔だ!!」
ゼルエムが衝撃波らしきものを発すると二人とも吹き飛ばされた。

「今度は僕の番だ!!」
「ふん!」
ジェネシスは飛び蹴りを仕掛けるが、当たる前に超能力で弾き飛ばされた。

「ぐっ!!」
「邪魔をするな。奴等の始末が済んだら貴様達もすぐに殺してやろう」
「松戸、結崎、川瀬!!ショックウェイブオブブラックで奴の動きを封じるんだ!!」
「了解!!ショックウェイブオブブラック発射!!」
上野、松戸、美里、絵里の乗るイエローシャークEX1、EX2から真空波であるショックウェイブオブブラックが発射される。
これは敵の動きを封じる為に使われるものである。それはゼルエムに命中する。

「金沢!ツインブレードアークインパルスだ!!」
「分かってる!これで決めてやる!!」

77 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:52 ID:???
ヒートスティンガーから降りた金沢がフレイムデリンジャーと呼ばれる専用の武器で、
刃状のビームを発射する。浅倉は引き続いてヒートスティンガーからのレーザーを発射する。

「フレイムブラスター!!」
「ストライクバニッシャー!!」
京子のスペリオルドラゴンからの炎のエフェクトのレーザーであるフレイムブラスターと、
後藤のメタルブラックから発せられるストライクバニッシャーが立て続けに命中する。
四連続攻撃は流石に効いたのか、多少だがゼルエムはよろめいた。

「無駄だという事がまだ理解できるか!愚か者め!!」
ゼルエムの目からデモンズアイが発射され、EX1、2に命中する。

「脱出しましょう!!」
「分かったわ!」
「くっ、駄目だ!機体のコントロールが出来ない!」
「やむをえん!不時着する!!」
EX2に乗っていた絵里と美里は脱出し、EX1に乗っていた上野と松戸は不時着を余儀なくされた。

「危ねぇ!!」
金沢は浅倉をとっさに突き飛ばしてヒートスティンガーから下ろす。直後にヒートスティンガーは
爆発を起こした。しかし、その影響で金沢も爆風で吹き飛ばされた。

「金沢!金沢しっかりしろ!!」
浅倉は自身もフラフラになりながら金沢に歩み寄る。
彼等TEAM FLAMEの頑張りを見たのか、怪獣達は立ち上がり、モーグとバレンシア親子は互いに共同戦線を張り始める。
またジュリスやルミアも立ち上がる。リーンバイスの四人や、レクシオンの四人、
そしてザビロン、ザナック、ミルファもそれに続いた。そしてそれは日本だけではなかった。

「頑張りなさいちよ!そしてTEAM BLADEのみんなも!!」
メルビィは精一杯の声援を送る。彼女は危険を顧みず彼等に声援を送りにきたのだった。

「メルさん!はい!!」
ちよはメルビィの声援を聞いて、力が湧いてくるのを感じた。

「我々はここで屈する訳にはいかない!行くぞみんな!!」
「了解です!あなた達もしっかりついてきなさい!!」
「おうよ!!」
「こんなのどうって事ねーよ!!」
「倒してやるよ!!あいつを」

78 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:54 ID:???
ヴィアスとセレスティアの激によって、倒れていたウェッジ、ビックス、マイケルも起き上がって
ゼルエムオメガに総攻撃をかける。そこにリドリアスも光弾を吐きながら戦列に加わっていく。
ヴィアスがグラディウスから攻撃する以外は全員地上からの攻撃だ。するとどうだろう?
今まで押していたゼルエムオメガが押され始め、ついには撃破されていった。

「よし!」
その様子を見ていたゼイヴィア長官もガッツポーズをする。

「これはなるべくなら使いたくはなかったが仕方がない!行くぞ!!」
TEAM PROMINENCE長官でもあるバーナード・リンクスは何と母艦である『シューティングスター』に
乗って特攻を仕掛ける。この巨大サイズの戦艦の突然の出現、そして特攻は流石のゼルエムオメガも
読めずに直撃する。バーナードは衝突寸前で脱出するものの、シューティングスターは大爆発を起こした。

「ぐぬぅ!」
「長官の行動を無にするな!総攻撃開始だ!!」
「了解!行くよ、メイファ!」
「ええ、行きましょうローズ!!」
ヴィアスはアルビレオ、メイファとローズはペルセウスで攻撃する。
さらにリアード親子が息のあったコンビプレイでゼルエムオメガに着実にダメージを与える。

「スレイド、とどめを刺すぞ!」
「任せろって!!」
最後にスレイドとゼレオンのとどめの一撃により、ゼルエムオメガは消滅する。
そして東南アジアのTEAM FANGもまたシーモンス・シーゴラスが起き上がり、竜巻津波攻撃するのを見て、攻撃を決意する。

「シーモンスとシーゴラスの攻撃と同時に攻撃するんだ!」
ベイル・サンダースが命令する。

「了解!みんな、行くぞ!!」
「合体攻撃って奴か!やってやるぜ!!」
「ステビア、フィン外したら承知しないぜ!」
「誰にもの言ってるんだよ!」
リーバイン、ライザー、フィン、カリス、ステビアは地上から総攻撃する。
シーモンスとシーゴラスの攻撃と複合させる。その複合攻撃を受けて、ゼルエムオメガは
完全に消え去った。

「スパイラルハリケーンといったところかしらね」とフィン・ノーティラス。
中国SPEARではまずジェロスが智に向かってきた攻撃を大鎌で弾き飛ばした。

79 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/03(火) 23:58 ID:???
「ありがとう、お礼は言っておかないとな」
「ふん!こうなったら必殺の一撃で決めてやる!グランドウェーブ!!」
「お、そうこなくちゃな。それじゃあ俺も必殺技で決めるとしますか!マッドインフェルノ!!」
ジェロスは地面に大鎌を撃ちつけ白い波動エネルギーをゼルエムオメガめがけて発射する。
対してマッド星人は全身から炎を発する必殺技マッドインフェルノを放った。

「我々も負けてられんな!行くぞ、パワーアップした中華キャノンを見せてやる!雷衝波!!」
道龍(タオ・ロン)の乗る朱雀の股間からあの「中華キャノン」が発射された。
三発同時に強烈な攻撃をくらったからかゼルエムオメガの動きが停止する。

「幻影無段脚!!」
「猛虎滅砕爪!!」
「これで終わりよ、龍牙氷翔!!」
神狼と王の乗る白虎と玄武のコンビネーションでダメージを与えた後、沙凛の乗る青龍は形を龍形態へと
変化し、口から冷凍光線を吐いてゼルエムオメガを凍らせた。ゼルエムオメガはその直後の追撃で
完全に砕かれた。
宇宙でもまだ彼等は奮戦していた。だが、押され気味である。

「無駄だ!この俺に勝てはせん!」
「それはどうかな?」
「最後までやってみなきゃ分からないわ!!」
「油断大敵だ!くらえ!メテオスマッシャー!!」
カルナ、アヌビス、バルックの三方向から飛び道具を発射する。

「望!俺達も続くぞ!」
「もうそうしてるわよ!!」
木根と望もギリギリまで接近してありったけのミサイルを叩き込んだ。それらをくらって尚生きているゼルエムオメガ。
しかし、この攻撃の間にムーンキャッスルの面々は一斉攻撃の準備を終えていた。

「かなめちん!外すなよ!」
「分かってますよ先輩!!」
「俺達ももう一度フレアレインXX撃つぞ!松田、眠そうな目をしているけどちゃんと起きてるか!?」
「起きてるわよ!どうせ私は垂れ目よ!フレアレインXX発射準備出来たわ!」
「砕け散りなさい!!!」
和田が気合の声を発する。そしてゆっきー達はコロニーレーザー、そしてネレイドからはフレアレンXXが発射された。

「ぐ、ぐぬうううううう!な、何故この俺がこの程度の連中にぃぃぃぃ!!」
その一撃を受け、ゼルエムオメガは消滅する。

80 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/03(火) 23:59 ID:???
流石にこれ以上長く出来ないので、ここで一旦区切りました。
後半へと続きます。

81 :レウルーラ ◆iCj5r1a15w :2007/04/04(水) 00:06 ID:???
>>65-80
リアルタイムで読ませていただきました。
お疲れ様です。

>そしてゆっきー達はコロニーレーザー
何時の間にそんなものを……
>そしてネレイドからはフレアレンXXが発射された。
フレアレインXXは、総旗艦バーミンガムの専売特許だったハズでは?

82 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/04(水) 00:14 ID:???
>>81
修正し忘れです。毎度すいません。

83 :名無しさんちゃうねん :2007/04/04(水) 00:15 ID:???
ケンドロスさん乙。
次でラスト、楽しみにしてますよ。

>>79
ネレイドっていうユグドラシルは前話の
>>41で撃沈されたんじゃ?

84 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/04(水) 01:03 ID:???
>>83
あ、バーミンガムに訂正します。

85 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:23 ID:???
「気をしっかり持て!!こんな所でやられたりしたら笑いものだぞ!!」
TEAM SNOW隊長のニード・楼(ロウ)が激を飛ばす。彼は戦闘機ガナバに乗って
ゼルエムオメガに攻撃を仕掛ける。

「あんたのかっこいいとこ初めて見たよ。けど同意だ!俺だってこんな所で立ち止まるつもりはねぇ!!」
尚貴・S・ラプターはバイク型戦車ダリムゾンに乗って砲撃する。グレネード弾が発射され腹部に直撃する。
さらに、尚貴は戦車から降りて自らヒートサーベルで切りかかった。
ゼルエムオメガに傷をつける事に成功する。

「この、カスが!!」
「休ませるつもりはない!ウツ、僕達も続こう!」
「そうだな、行くぞ!!」
宇都宮博之、小室久志の二人は乗り物にのらず、地上からの銃『スノーシューター』で
尚貴がダメージを与えた箇所にクリーンヒットさせるのだった。

「ヴィディアちゃん!あなたにシャイニングバーストとその転送ルートを送るからしっかり届けてね!」
マーガレット・メル・ラシェラは人造生命体であるヴィディアにシャイニングバーストの転送を命令した。
どうやら千尋やかおりんの通信はちゃんとこちらにも受信できていたようだ。

「分かったよ、マーガレット!」
ヴィディアはそれに従い、空高く浮き上がる。そしてシャイニングバーストのエネルギーをその体に受け、
さらにそれを増幅させた後に、集束ポイントに向けて放つ。人造生命体ならではの手法である。
ちなみに彼女は妖精を彷彿とさせるくらい小さい。

「ミィナ、私達も続くわよ!」
「うん、アリサ!アイスブレイズ!!」
ミィナとアリサはTEAM SNOW基地に設置されている砲台アイスブレイズを発射する。
アイスブレイズをくらったゼルエムはみるみるうちに凍っていく。

「とどめはあなたに譲るわレン!」
「頑張ってレン!」
「ええ、行くわよ!ブリザードクロス!!」
彼女が乗るのはTEAM SPEARが乗る人型戦闘ロボットタイプ「アーグ」だった。
紫と白のカラーリングのその機体の後ろには二台の砲台がついている。
アーグはそこから氷のビームを発射する。

「こ、この俺がぁぁぁぁぁ!!」
ゼルエムオメガはそれに直撃してついに爆破された。

86 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:25 ID:???
「あとはゼルエムだけね」
レンはそう呟いた。

「頼んだわよヴィディア!」
「届け、あたしのエネルギー!!」
ヴィディアはシャイニングバーストを日本へと送り続けた。

その頃、日本ではジェロスとマッド星人も戦列に加わり、決死の抵抗を続けていた。
そして集束ポイントのエネルギーはかなりの量に達しようとしている。

「TEAM SNOWからもシャイニングバーストが届いている。ちゃんと伝わっていたんだ。
榊さん、大阪さんもうすぐだよ!」
南極方面からシャイニングバーストが放出されたのを見て千尋は感動すら覚えた。
集束ポイントには久世怜香とそれに抱かれたマヤーが榊に会いに来ていた。

「榊さん、それに他のみんなも頑張って!この子と一緒に応援しているから!」
怜香の言葉に同意するかのように、マヤーは手を差し伸べてきた。そのマヤーの手を
ギュッと握る。

「ありがとう」
榊もその手を握り返す。そして彼女達は巻き込まれないようにこの場を離れた。

「もうすぐエネルギーがたまるんやな、今度は勝てるんやろか?」
「今度は負けない。この光のエネルギーにはみんなの思いがこもっているから」
まだ不安そうな歩に榊は力強く答える。

「頑張ってかおり。そして榊さんや他のみんなも」
「私も応援しているよ、だから諦めないで!」
かおりの母親や、以前レギュラン星人事件に巻き込まれた歩に似た女性、神戸みどりも応援している。

「弥生ちゃん」
「お〜い、歩ぅ」
その時、誰かが歩を呼ぶ声がした。振り返ってみて歩は驚いた。

「お父さん、お母さん!どうしてここに?」
思わぬ来訪者である。

87 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:26 ID:???
「お前に一言エールを送ろ思てな。頑張ってき。ゼルエムだかなんだかよーわからんけど、
ぶちのめしてくるんや。弥生さんや翔、ゆりちゃん、それに他の人達と一緒にな」
歩の父親である春日浩一は歩の肩をがっしり掴んできてそう告げた。

「歩ちゃん、ジャスティスさんとうまくやるんやで。弥生さんの方はレイさんやったっけ?
しっかりやりぃな」
母親である春日遥の発言には歩だけでなく、榊までもビックリさせられた。

「何でその事知ってるん?」
「何でやろな。何かそんな感じがしたんよ」
尋ねる歩に遥はニッコリ笑って答える。横の浩一もショックを受けた様子が見られないので
気づいているのだろう。

「いやぁ、自慢の娘がウルトラマンやなんて最初は度肝抜かれたけどな。でもこれはこれで
ありやないかと思えたんやね。俺らにとっちゃ歩や翔が何であろうが関係あらへん。
歩は歩、翔は翔ってこっちゃ」
「もちろん、弥生さんやゆりちゃんかてそうやで。どんなんなっても弥生さんは弥生さん、
ゆりちゃんはゆりちゃんやで」
「お父さん、お母さん・・・・・・・」
歩の中で何かがこみあげてくる。

「じゃあもう俺らは行くで」
「しっかりな、歩ちゃん、弥生さん」
そうして彼等はここを後にする。しばらく二人はそれを見送っていた。

「弥生ちゃん、あたし、何かやる気出てきたで」
榊に振り返った歩の表情にもう迷いはなかった。

「良かった。ん?メールが来てる」
榊が歩に微笑みかけようとした時、榊の携帯に誰かからメールが来た。
榊はそのメールを見る。そしてそのメールを見た後、微笑みながら携帯をしまった。

「誰からなん?」
「私の母親からだった。私を応援してくれるメッセージが書いてあった。
さっきの歩じゃないけど、私ももっと頑張れる気がした」
「そうなんや。よかったなぁ」
歩はその話を聞いて微笑み返す。

「気持ちは分かるよ大阪さん、榊さん。私もそうだもん!」
千尋もまた両親や祖父から応援メールを頂いたのだった。

88 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:34 ID:???
「やった!ついにフルパワーになった!」
千尋が喜びの声をあげる。各地で放射されていたシャイニングバーストはついにジャスティスとレイを
出現させるまでに至ったのである。

「行くよ、榊さん、大阪さん!!しっかり受け取ってね!!」
最後に千尋がそう言うと、集束ポイントに集まったシャイニングバーストは一気に榊と歩に向かって
降り注ぐ。いや、正確には彼女達が持つ〈ジャストランサー〉、〈シャインリング〉に向って光が吸い寄せられていっていく。

「あたしの中にたくさんの光が流れ込んでくる」
「私の中にもだ」
そして二人は何か懐かしい感覚に覆われた。

『感謝する、歩とその仲間達に』
『私もこの通りだ。今度こそ終わらせよう、弥生』
そうそれは紛れもないジャスティスとレイの声だった。

「あたしの中にジャスティスを感じる!」
「私もだ。今、私の中にレイを感じる!」
二人は互いに見つめあいながら、変身アイテムを高く掲げる。

「ジャスティ―――――ス!!」
「レイ――――――――!!」
二人とも今までで一番勢いよく叫んだ。そして二人は光に包まれる。
そして、ゼルエムと他のウルトラ戦士達の間に二人のウルトラマン、ジャスティスとレイが姿を現した。

「ジャスティス!」
「レイ!!」
誰もがその名を叫んだ。

「どうやらうまくいったみたいね、私も行こう」
千尋は作戦室を後にする。

「ほう、どうやって回復したかは知らないが大したものだ。だが、いくら復活しようとも
結果は同じだ。再び消し去ってやるまでだ」
ゼルエムは二人の出現にもまったく動じなかった。足元ではジェロスとマッド星人が倒れている。
またジュリスを初めとする戦士達も膝をついていた。

89 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:37 ID:???
しかし、ジャスティスとレイはそれに構わず他の三人に向き直り、手から黄金の粒子を
発する。ジャスティスはコスモスとシェイドに、レイはジェネシスにそれぞれ分け与える。
するとどうだろう。三人のカラータイマーの点滅が止まり、赤から青に戻った。
「ジャスティスアビリティ」「レイリムーバー」である。

『エネルギーが戻った!』
『これでまた戦える』
コスモスとシェイドが喋る。

「お姉ちゃん!!」
「弥生さん!!」
「どうやら復活できたようだな。こうして一緒に戦える時が来るなんて思わなかったよ」
今度は変身している翔、百合子、大山が語りかける。

「何人増えようと同じ事だ!まとめて屠ってくれる!!」
「ジョアッ!!」
ゼルエムは目からの光線デモンズアイを発射する。ジャスティスはこれを飛んで回避して、
ダグリューム光線を放つ。今回のジャスティスは最初からクラッシャーモードでの登場だ。
それがゼルエムの首に命中する。

「こざかしい!」
「エイヤッ!!」
ゼルエムは連続して放つ衝撃波イーヴィルフォースを放ってきた。
だがレイは、これを複数の刃を発射するブレードストームで衝撃波を
ことごとく切り裂き、最後には腹部にその刃を命中させる。

「ぐっ!」
「てやぁ!!」
今度は念動力を使って、浮かび上がらせようさせるが、コスモスは精神を集中させてそれを無効化させる。
そして右手から放つコズミューム光線を放つ。それがゼルエムの背中に命中する。

「ならば、これはどうだ!!」
今度は地を這うエネルギー波であるデビルスラッシュが迫る。

「おおおおお、でやああああああ!!」
シェイドはカラータイマーから高出力のエネルギーを発射して(フォトンスクリューブレイカー)、
デビルスラッシュを無効化し、さらにはゼルエムにダメージを与えた。

「攻撃させるつもりはない!ジェネシスブレード!!」
ジェネシスは黒い光の剣を、ゼルエムの第三の眼に向って投げ、突き刺す。

90 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:39 ID:???
「ぐおおおおお、よ、よくもやってくれたな!」
今までの余裕が嘘のように苦しみだすゼルエム。さらにそこに合流してきたTEAM HOLYからの
追撃も浴びせられる。

「強いぞ、今度のジャスティスとレイ!」
「頑張れレイ!!!」
「いけー!!」
シェルターの中にいる人達はウルトラ戦士達の奮戦ぶりを見て希望を取り戻す。
その中にはかつて榊が出会ったレイを応援した少年の姿もあった。よつばは一番前でそれを食い入るように見ている。

「千尋、あなたが戦闘機に乗って戦闘に参加するなんて珍しいじゃない!」
「最後だからね。基地の中でじっとしているよりはみんなと一緒に飛んでいたいからね」
かおりんの質問に千尋は笑って答える。彼女が乗っているのはレッドファルコン3号機だ。

「さすがは俺が見込んだ嫁だぜ」
「だから、お前の嫁になった覚えはないっての!」
「とかなんとか言ってまんざらでもねーんじゃねーの?」
「それは言えてる。ともに同意。それよりもトライアングルフォーメーションやるけど、
千尋ついてこれるか?」
「任せといて!」
マッド星人の軽口に反応して突っ込む暦に対して智と神楽は冷やかす。が、神楽はすぐに真顔に戻り、
千尋にトライアングルフォーメーションが出来るかどうか尋ねる。それに対して千尋は自信を持って答える。

「行くぜ、トライアングルフォーメーション!!」
レッドファルコンの搭乗者である三人が三方向から同時に仕掛ける攻撃だ。
千尋は初めてこの連携を使ったにも関わらず息ピッタリだった。ゼルエムの眉間にレーザーが命中する。

「私達も行きますよ、よみさん!!」
「そうだな、これでもくらえ!」
暦とちよは低く飛んで足元を攻撃する。さらに京子と後藤も加わり、ゼルエムの心臓部分にミサイルを叩き込む。

「俺達もお前らに遅れてられないぜ!」
「まだまだ私たちだっていけるわよ!」
「よし一気に決めよう!合体光線だ!!」
大山がジェネシスの中から他の四人に指示を出す。

「だああああああ!!」
それに従い、ジャスティスはパトレックショット、レイはレイバーストショット、コスモスはルージュシューター、
シェイドはフォビトンレイジ、ジェネシスはヴォイドシェノサイドを同時に放つ。

91 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」[ :2007/04/27(金) 01:43 ID:???
「ぐぬうううううううう!!」
ゼルエムに命中して、ゼルエムはゆっくりと後ろに倒れた。

「やったよ、恵那!!」
「うん、勝ったんだね!」
恵那とみうらはそれを見て抱き合って喜びを表現する。他の市民達もそれを見て狂喜乱舞する。

「どうしたの?あずさちゃん?」
「まだ・・・・・・終わってない」
表情を崩さないあずさを心配して澪が声をかけるとそんな返事が返ってきた。

「終わっていない?」
隣にいた紗奈が怪訝な表情で聞き返す。
マッド星人やリーンバイスの人間達は協力しあって何とか起き上がっている。
TEAM FLAMEの面々も同様だ。

「どうしたのゆかり?いつもなら一番に喜びそうなのに」
「納得いかないのよ。何かあっさりしすぎていて」
ゆかりもまた、あずさと同じような思いだった。そしてその不安は的中する事となった。
ゼルエムはゆっくり起き上がった。

「やってくれたな。ここまで追い詰められるとは正直思わなかったぞ。ならば、俺も最後の手段に
出るとしよう。ぬうううううん!!」
ゼルエムの二つの目が真っ赤に光る。潰された第3の目が消滅する。さらにその後、
足が後ろにも生え四本足となる。さらには無数の触手らしき物体が生える。
さらに大きさも各ウルトラマンや巨大宇宙人を遥かに凌駕している。

「そんな、あいつまだ奥の手を隠していたのかよ!」
後藤もこれには愕然となる。

「この姿になったからにはもはや貴様達に未来はない!ふん!」
ゼルエムが腕を一振りするだけで、マッド星人やジェロス、ザビロンなどウルトラマン以外の
者達は全て吹き飛ばされた。

「な、何て威力だ!ただでさえ強いのにますます強くなっている!」
ジェロスの中に絶望的な何かが漂った。

92 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:46 ID:???
「いくらお前が何になろうと僕達は負けはしない!てやぁ!」
ジェネシスが飛び上がり、ゼルエム最終形態の頭上に蹴りを入れようとする。
だが、ゼルエム最終形態はこれを軽く爪で叩きつける。地面に落下したジェネシスを
ゼルエムは容赦なくジェネシスを踏みつけた。

「ぐっ!」
「ジェネシス!!」
これを見たコスモスとシェイドが助けに入ろうとゼルエムの足を持ち上げ、ジェネシスを救い出す。
しかし、完全に持ち上げる事は出来ず、ゼルエムに大きく振りほどかれてしまった。

「かああああああ!!」
ゼルエムは以前までの形態にはなかった「冷たく輝く息」で攻撃してきた。その攻撃をくらった
コスモスとシェイドは仰向けに倒れこんだ。

「だあっ!」
「えいやぁ!!」
ジャスティスとレイが同時に高速回転してゼルエムに体当たりする。
しかし、ゼルエムの体にそれは効果を及ぼさず、それどころか触手によって二人とも
捕らわれてしまう。敵は捕らえた二人を掴んだまま真下へ叩きつけた。

「この野郎!!ストライクバニッシャー!!」
「フレイムブラスター!!」
援護すべく、後藤と京子が同時に攻撃する。

「ふん!」
しかし、それはゼルエムが発した灼熱の火炎によりかき消され、さらには機体にもダメージを与えた。
見る見るうちに炎に包まれていく機体。

「脱出!!」
やむを得ず二人は、機体から脱出する。直後に機体は大爆発を起こす。

「おおおおお、であっ!!」
ジャスティスとレイは全身から発するエネルギー〔ボディスパーク>で掴まれている
触手を焼ききった。

「凍てつく波動をくらうがいい!」
ゼルエムの全身がフラッシュすると、強烈な波動が発せられ、ウルトラ戦士の体にあちこち爆発が起こる。

93 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:48 ID:???
「のわああああああ!!」
五人のウルトラマンはそれぞれ建物に突っ込んだり、近くの海面に叩きつけられたり、あるいは地面に倒れこんだりした。
ゼルエムは近くにいたジャスティスを踏み潰そうとするが、ジャスティスはすんでのところで
転がって回避する。その直後に地面は大きくめり込んだのだった。

「この!!いい加減にしろ!!」
神楽、智、千尋はトライアングルフォーメーションを使ってゼルエムを、暦、ちよもそれに続く形で集中砲火する。
しかし、ゼルエムは動く事すらせず、その体で軽く弾いてしまった。

「貴様等にはこのミサイルの雨をプレゼントしよう」
ゼルエムの手の甲から何と無数のミサイルが発射された。まさにミサイルの雨である。
とてもかわしきる事など不可能で、全員被弾してしまった。コクピットを直撃しなかったのが
不幸中の幸いといったところか。

「コントロール不能!!不時着します!!」
「ここまで来たってのに!!」
しかし全機体がコントロール不能となり、ほとんど墜落に近い不時着となった。

「どんな位置からでも俺は即座に攻撃できる」
ゼルエムは宣言すると、各エリアに向ってビームは発射した。それは各地にゼルエムオメガを
派遣したエリアにまで届いた。
世界各地に広がるATDFの者達の戦闘機や、そのエリアにいる怪獣達に攻撃が当たる。
それは宇宙にいるムーンキャッスル艦隊や、ミステラー星人カルナ、バルック、アテリア星人アヌビスも
例外ではなかった。

「フレアレインXXに損傷!発射口が破壊されて、発射できません!」
「なんて事だ!畜生!これであいつ等を援護する事が出来なくなったじゃないか!」
部下の報告を叩いて、長谷川は壁を左拳で殴った。

「これで分かっただろう。何をしようと無駄だという事が!」
「ぜあっ!!」
しかし、それを聞かされてもなおジャスティス達は立ち上がり、先程使った合体光線を
使った。それはゼルエムの首の下に命中するが、少し後ずさりしたに過ぎなかった。

「合体光線も効かないのか!?」
「無駄な事を。貴様達にこの私を倒す事など出来しない!」
ゼルエムは「終末の雷塵」と呼ばれる雷を発生させ、5人に命中させる。

94 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:50 ID:???
「ぐわああああああ!!」
5人のウルトラマンの体に強烈な雷撃が走り、ビリビリとスパークしたまま、うつ伏せに倒れる。

「今度こそ復活できないように消してやろう」
ゼルエムが5人にゆっくりと迫る。その時だった。
一筋の光が放たれたかと思うと、巨大なビーム砲がゼルエムに命中した。
横殴りにくらったからか、ゼルエムのボディが歪む。

「何だ?一体何をした?」
ゼルエムがビーム砲が来た方向を見ると、そこには宇宙に上がるための巨大戦艦エクセリオンがあった。

「あれは!?エクセリオン!!」
「でも一体、誰が?」
「私だよ」
暦と京子が訝しがっていると、通信機から男の声がした。
その男こそ、これまでHOLYやFLAMEと対立してきた関屋参謀であった。
そしてこの事から先程発射されたビーム砲はエクセリオンの主力兵器である「ゼロドライブイリュージョン」と
見て間違いないだろう。
もっとも超獣や怪獣を一撃で粉砕するこのビーム砲で倒せないという事は、
それだけゼルエムの最終形態は桁違いという事だが・・・・・・

「関屋参謀!どうしてあなたが?」
「どうしてだと?おかしな事を聞く物だな、美浜隊長よ。人間である私が故郷である地球を守る為に、
そしてその地球を守る同志であるウルトラマンに手を貸す事に何の疑問があるというのだね?」
「それはそうですけど・・・・・・・」
しかし、これまでのウルトラマンに頼り切った発言が多かった事から、参謀自らがこのような行動に
出るとは誰も思わなかったのだろう。

「私とて、この地球の平和を願っているのは同じだ」
「関屋参謀、あなたはもしかして・・・・・・」
その様子を見ていた琴音は主人の元から離れ、関屋に声をかける。

「ゼロドライブイリュージョン、もう一度くらえ!!」
密かにエクセリオンを改造していたのか、本来なら再チャージに時間のかかる
ゼロドライブイリュージョンを間髪おかずに関屋は発射した。

「ふん、そんなものが二度も通用するとでも思っているのか!」
ゼルエムの手から「凍てつく波動」が発射され、ゼロドライブイリュージョンがかき消された。
しかし、関屋はそれに動揺する事もなく、エクセリオンをゼルエムに向って突き進ませる。

95 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:53 ID:???
「総監、お別れです。これが私なりの地球を守る方法だ!!」
そしてHOLYやFLAMEの諸君、今まですまなかった。元GENESISだった諸君、
後は頼んだぞ!」
「関屋参謀、待つんだ!!」
何かを決意した顔で彼等にメッセージを伝えると、彼は通信を切った。後藤は制止の声を
かけるが、もはやその声に反応する事はなかった。

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
関屋参謀の乗せたエクセリオンは、ゼルエムに体当たりした。
ゼルエムも流石にこれだけデカい規模のものをとっさに避ける事は出来ず、直撃した。
直後に大爆発を起こし、関屋はその爆発の炎の中に消えた。

「関屋参謀―――――――!!」
ジェネシスの中の大山と後藤があらん限りの声で叫ぶ。

「愚か者めが、この俺がそんな事で倒せるとでも思ったか。無駄死だったようだな」
しかしゼルエムはそれでもまだ生きていた。だが流石にダメージを負ったようで、ややフラついている。

「そんな、関屋参謀、命まで賭けたのに・・・・・・・」
ちよはその場に崩れ落ちそうになるが、それを智と神楽の二人が支える。
他のみなにも絶望が走る。

「諦めるな!!」
その時、誰かが声をあげる。何とそこにいたのは松岸だった。全身ボロボロになりつつも、
彼の瞳にはまだ生きていた。

「これが最後の戦いなんだ!勝って平和を取り戻すんだ!!それが、それが総司令としての
私からの最後の命令だ!そうですね、総監?」
といって自らも銃を構えてゼルエムを撃つ。琴音は一度主人に振り返るが、主人は頷くだけであった。
しかし、それで十分なのか琴音は振り返り、そして発言する。

「その通りです。みんな、必ず勝って!!」
「隊長、行きましょう!!」
「勝って終わらせるんです!!」
上野や松戸を初めとするFLEMEメンバーが京子の指示を待つ。

「分かってるわ、行きましょう!!」
「了解!!」
そしてTEAM FLAMEは動き出す。

96 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/27(金) 01:54 ID:???
「私達も行きましょう!」
「おう!!」
HOLYメンバーもそれに続く。そしてそれに呼応するかのように
他のメンバーも立ち上がり、抵抗を試みる。

「あがくな屑共!屑は屑らしくこの俺に消去されていろ!!」
ゼルエムもまた怒号をあげる。

「このままでは駄目だ。合体してあいつを倒そう」
「合体?」
「そんな事出来るのん?」
大山の提案に、榊と春日姉妹は驚く。特に春日姉妹はハモっていた。
しかし、百合子だけは驚かなかった。

「過去のアーカイブを調べたら、コスモスとジャスティスは以前、ギガエンドラの戦いで合体して
ウルトラマンレジェンドという戦士になった事があるのよ」
『そういうことだ。だから合体が不可能という事はない』
『しかし、今度はレイとシェイドがいる。またレジェンドになるとは限らない。私も知らない
新たな戦士になるかもしれない』
『それでもやるしかない』
『私もそれに賛成だ』
会話の中にジャスティス、レイ、コスモス、シェイドの意識が流れ込んでくる。
コスモスも意見を述べたものの、合体する事にしては反対しなかった。

「決まりだな。僕達のエネルギーをジャスティスに集めるんだ」
大山の提案に頷く。

「春日さん、頼んだよ」
「歩さん、あなたにすべてを託すわ」
「お姉ちゃん、がんばろな」
大山、百合子、翔が歩の体に重なり合うように、歩の中へと入っていく。ジャスティスも同じように
ジェネシス、シェイド、コスモスをその体内に取り込んでいく。最後に榊が残った。

「歩、また後で会おう」
「うん、弥生ちゃん」
互いに笑いあった後、榊は歩の中へと入っていく。そしてレイもまたジャスティスの中へと入る。

「何をしているが知らんが、これで終わりだ!」
ゼルエムの手から凍てつく波動が発射される。それらが命中したのか、ジャスティスの姿が消えた。

「まさか、やられちまったのか?」
「いや・・・・・・違う」
やんだと同じような思いを周囲の市民も抱いていた。しかし、あずさは首を横に振った。
そしてジャスティスがいた場所から金色の光を発しながら、新たなウルトラマンが姿を現した。

97 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/27(金) 01:55 ID:???
Bパートを使い切っても終わらなかったので、今回はCパートまで使います。
今日はここまでです。

98 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:04 ID:???
「あれは・・・・・・ジャスティス?」
「違うわ!あれは5人のウルトラマンが合体した姿よ」
「ウルトラマンジェレイドってとこかな?」
ちよの言葉にかおりんと千尋はそれぞれの見解を口にする。確かに顔はジャスティスであるものの、
体の模様やカラーリングはそれぞれのウルトラマンをミックスしたように見える。

「まさか、こんなの見れるなんて思わなかった!」
「すげえ!最後の最後でこんなすげー奇跡が見れるなんて!」
智と神楽も興奮している。

「私はきっとこの光景を忘れないだろうな」
暦も静かにしかしハッキリと口にする。

「いくら姿を変えようと無駄だ!最強である私に勝てはせん!!」
ゼルエムから終末の雷塵を放ってきた。しかし、ジェレイドは腕を十字に
組んで発射するジェレイドカノンで打ち消し、さらにはゼルエムにそのまま命中させる。

「ぐおおおおおおお!!」
今までほとんどダメージを受けなかったゼルエムが悲鳴をあげる。
触手などが次々に崩れ落ちていく。

「こ、このいい気になるなよ!!凍てつく波動と輝く冷たい息をくらえ!!」
ゼルエムはこの二つの攻撃を同時にするが、ジェレイドはそれらを
両腕で無効化した。そして上空へと飛び上がる。

「叩き落してくれる!!」
ゼルエムはミサイルや触手をあらん限りに放つが、ジェレイドはそれらを全て回避する。
そして一旦上空で立ち止まる。

「ジェレイドクロススラッシュ!!」
ジェレイドの体が黄金色に輝き、ゼルエムに向って突き進んでいく。
その目にも止まらぬ速さで、ゼルエムの全ての攻撃を回避し、ついには
ゼルエムの体を貫通した。

「ご・・・・・・あ・・・・・・・・」
貫通されたゼルエムの体は徐々に崩れていく。

「ごふっ、この俺が・・・・・・やられるとはな・・・・・・・見事と言うしかないな・・・・・・
認めようではないか・・・・・・この俺の敗北をな、ぐおおおおお!!」
そしてゼルエムはついに消滅する。

99 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:05 ID:???
「やったのか・・・・・・」
「ああ、どうやらそうみたいだぜ」
「やっと終わったんだな」
智、神楽、暦は戦いが終わった事を確認しあう。

「私達、勝ったんですね!」
「やったね、かおりん!」
「うん、千尋!!」
互いにハイタッチするかおりんと千尋。

「やった―――!!」
よつばが大きな声で叫んだのをきっかけに、その様子を見ていた人々の狂喜乱舞する。
そしてジェレイドは分離して5人のウルトラマンに戻った。

「空が晴れていくわ」
「平和が戻った事だね」
木村夫妻は光を取り戻した世界を見て、笑いあった。

「どうやらあいつ等やったみたいだな」
「ヒヤヒヤさせてくれるよね、まったく」
「そんな風には見えなかったよ、ゆっきー」
月にいるムーンキャッスルの面々も戦いが終わったのを見届けていた。

「やったわね」
「ああ」
和田と長谷川が互いに頷き合う。

「戦いは終わった。さっさと引き上げるとするか」
「彼女達に会わなくていいのか?」
「そんな必要はない。またそんな義理もない」
「私はメールくらいしておくわ」
バルック、カルナ、アヌビスは月面から引き上げる事になった。
そしてカルナからのメッセージがちよのメモリーディスプレイに入っていた。

「やっぱり、来ていたんですね。ありがとう、バルックさん、アヌビスさん、カルナさん」
そのメールを見て、ちよは顔を綻ばせた。

100 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:06 ID:???
「モーグ、いっちゃうのか」
「よつばちゃん、モーグとはいつでも会えるわよ」
「またな、モーグ」
名残惜しそうにしているよつばを恵那は諭した。そうして、みうらと一緒に帰っていく
モーグに手を振っていた。

「お別れだ、紗奈。私はまた宇宙の旅に出る。しっかりな」
「せっかくまた会えたのに。さびしいな」
去ろうとするザビロンを見て、紗奈はうつむく。
そして、顔をあげる。その時、紗奈は涙を流しつつも笑顔で手を振る。

「また私に会いに来てね、約束だよおじさん!」
「ああ。そうさせてもらうよ。私にとって大事な娘だからね」
ザビロンは、背中を向けて紗奈の前から去っていった。

「頑張ったね、紗奈ちゃん」
「私もそう思う。強くなったよ、紗奈」
澪とあずさが紗奈に歩み寄る。あずさは珍しく笑顔だった。

(やったね、お姉ちゃん)
心の中で姉のかなめに呼びかけていた。

「さらばだ、あさぎ」
「うん、またね」
ザナックとあさぎはあっさりと言っていいくらいの別れの挨拶を済ます。

「シンプルだこと。まあらしいけどね」
と興味なさげにタバコを吸う虎子。

「あ、待ってよザナック。じゃあ、あたしもう行くから」
ミルファがそう言ったのは京介達4人だった。ザナックの後を追うように
去っていった。

「ミルファさーん。今度来る時はあなたの猫耳も作っておくからー」
「何と言うか、お前は怖い物知らずだな」
「でも、似合いそうな気はするよね」
「うん、かわいいかも」
(駄目だ、この三人俺には荷が重い)
あくまでマイペースな工藤、みるちー、ゆかの前に京介はどっと疲れを覚えた。

101 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:10 ID:???
「奴は倒した。これで俺もこの地球にいる理由はなくなった。さらばだ」
ジェロスはHOLYやFLAMEのメンバーに一言そう告げて去っていった。

「私もそろそろ帰ります。地底の仲間達が待っていますから。いつか機会があったら
私達の元に来てくださいね。特に彪乃さんと咲月さんは大歓迎です」
「ああ、是非ともそうさせてもらうよ」
「またな」
ルミアは神楽と咲月に別れの挨拶をする。神楽と咲月はそれに答える。
そしてルミアは姿を消した。

「私も自分の星へと帰ります。さようなら皆さん、そしてさようなら歩さん」
「またな〜ジュリスちゃん」
ジャスティスの中から歩がジュリスに手を振っている。ジュリスもまた球体となって
宇宙へと去っていった。

「もう一度会えて嬉しかったよ、アレックス」
アレックスがゆっくりと顔を近づけてくる。暦はアレックスの頬を優しくなでる。
そしてアレックスは母親のバレンシアと一緒にまた宇宙へと旅立つのであった。

「俺達も行こう」
「地球という星に降りてみたが、悪くはないな」
「そうね、また来てみたいわ」
「お姉さん達またね!」
レクシオン人のカノン、シェスター、カスケード、リルも別れの挨拶もそこそこに
自分の母星へと帰っていたのだった。

「元気でな〜」
智は去ってゆく彼等に手を振る。

「オレ達も帰る事になりそうだな」
「みたいね、段々と体が薄れていってるみたいだし」
「ちぇっ、もう少しゆっくりしていきたかったんだがな」
「バイバイみんな。もしこっちに来る事があったらボク達とまた冒険しようね」
リーンバイスからやってきたハリアー、アーシャ、リックス、レジィナの四人も別れの挨拶を
終えた後に、この世界から姿を消した。

「メルビィさんがこの場にいたら大喜びしたんだろうな」
かおりんは消えていった4人の方角を見ながらそんな事を思い浮かべていた。
そして各地でもシーモンスやシーゴラス、リアード夫妻、リドリアスといった面々がそれぞれの住処へと
戻っていった。かおりんの言葉どおりメルビィは、仲間達と勝利の喜びにひたっていた。

102 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:11 ID:???
「さあて俺も行くとするかね。あ、そうそう、地球の男に飽きたらいつでも俺が嫁にしてやるぜ。じゃあな」
最後の一言は暦に向けてのものだった。そしてマッド星人も地球を去る。

「うわぁ、宇宙人からプロポーズされるなんて、よみいいなぁ」
「よくねーよ!あさぎさんやザナックみたいならまだしも、あいつにそんな事されてもうれしくないっての!」
「とかなんとか言って満更でもないんじゃないの」
「千尋、殴るぞ」
千尋に冷やかされ、顔を紅潮させて怒る暦。

「あんたねぇ、贅沢言ってんじゃないよ。異星人との恋愛なんてそうそうできるもんじゃないわよ」
「言ってる事には同意するけど、顔がニヤけてるわよ」
ゆかりは明らかにこの状況を楽しんでおり、それをみてみなもはやれやれとため息をついた。

そしてジャスティス、レイ、コスモス、シェイド、ジェネシスからそれぞれ
歩、榊、翔、百合子、大山の五人が分離する。

(僕はまだ生きている。それに何故だろう?今までのダメージがすっかり消え去ったようだ)
大山は自分が置かれている状況に戸惑っていた。

「まさか、ジェネシス、君が!?」
しかし、ジェネシスはその返事に答える事はなくそのままスーっと消えていった。
その時、大山はジェネシスの声を聞いた気がした。ジェネシスは大山が人工的に作り出した
ウルトラマン。意思など持つはずがなかった。それでも大山はこう言わずにいられなかった。
「ありがとう」と。

「よぉ、お互い生き延びたな、親友」
「そうだな」
歩み寄ってきた後藤に、大山は笑って応える。

「ありがとうシェイド。感謝しているわ」
『礼を言うのは私の方だ。君がいなければ私という存在はなかったのだから』
「これから、どうするの?」
『宇宙の旅に出ようと思う。宇宙にはまだまだ私の知らない事があるだろうからな』
「レクシオンに初めて行った時もそんな事を言っていたわね。さようならシェイド。あなたの事忘れないわ」
『私もだ。お別れだ、百合子』
百合子とシェイドが別れの言葉をかわす。

「やっぱ行っちゃうのん?」
『ああ、いつまでもこの星には留まる事は出来ない』
「あたしはムサシさんと比べたら駄目駄目やったかもしれへんけどな〜」

103 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:13 ID:???
『そんな事はない。私は翔の純粋な心がムサシと同じように好きだ。
いつまでもその純粋な心を忘れないでほしい。それが私からの願いだ』
「うん、約束するで。バイバイやで、大好きなコスモス」
『さらばだ、翔、シュワッ!』
『だあっっ!!』
翔と別れの挨拶を済ませた後に、コスモスとシェイドは地球から飛び去っていく。
そしてそこに翔の友達や、百合子の仲間達が駆け寄ってくる。

『弥生、お別れの時だ』
「うん。寂しいけど、仕方がない」
榊はレイとの会話で涙くんでいた。そしてマヤーがやってきて榊はそれを抱き上げる。

「これからどうするの?」
『私もまたシェイドと同じように色々な星を巡ってみようかと思う。そしてその後、
コスモスやジャスティスのように宇宙を守る戦士になるつもりだ』
「そうか。レイは目標を見つけたんだね。頑張ってレイ。私からはそれしか言えないけど」
『私にとってはその言葉だけで十分だ。私を生み出してくれたのが弥生でよかった』
「こちらこそ、レイに出会えてよかった」
『さようならだ、弥生。えいやっ!』
「さようなら、レイ!」
飛び去っていくレイに榊は手を振っていく。

「今までありがとう歩」
「ジャスティス・・・・・・・」
ジャスティスと歩は向かい合う。しばらくの間沈黙が続く。

『とうとうこの日が来たな。別れの時が来たのだ』
「どうしても行ってしまうのん?あたしとずっと一緒にいる事は出来ないん?あたしは
あんたと別れるの嫌や!」
歩にしては珍しく感情を爆発させる。

「歩さん」
「お姉ちゃん」
「歩・・・・・・」
百合子、翔、榊が呟く。

『君の気持ちは嬉しい、しかし、それは出来ない。この地球を守る任務が終わったら、
私は少しの休息の後、また別の惑星を守る任務につく。それが私のすべき事だから』
「・・・・・・・・」
それを聞いて歩は俯いてしまう。

104 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:17 ID:???
「やっぱり寂しいもんやな。分かってはいたけど、でも涙が出てくるんや」
歩が再び顔をあげると、その顔には大粒の涙がこぼれていた。

「あたしはあんたと一緒やったから、ジャスティスがいてくれたからどんな困難も
乗り越えてこれたんや。あたし一人やったら無理やった」
『そんな事はない。君は君で必死に困難を乗り越えてきた。時には私の想像の及ばぬ方法を用いたりしてだ。
それに君はもう立派に成長した。私がいなくても君は一人で歩き出せる。
私がいなくても素晴らしい仲間がいるから』
ジャスティスはジュリの姿を映し出し、歩に伝える。そしてちよ達を指差す。

「なぁ、ジャスティス。また会えるんよな?きっと会えるんよな?」
しかし、ジャスティスはその質問には答えず、上に顔を向ける。ジュリの姿も消える。
そして彼女達の変身アイテムも役目を終えたとばかりに消滅した。

「ジュワッ!!」
そしてジャスティスはこの地球を去っていった。夕焼けに染まる空へと・・・・・・・

「ジャスティス――――!!」
歩はあらんかぎりの声で叫ぶ。そしてその場に崩れ落ちて泣く。
ちよが声をかけようとして、榊はそれを遮って歩の元へと近づいて肩を置く。

「歩、これで最後って訳じゃない。私達がこうしてまた再会したように。きっとまた会える時が来る」
「そうですよ、大阪さん」
ちよも歩の涙を拭う。

「弥生ちゃん、ちよちゃん!」
歩は二人に抱きかかり、その腕の中で泣いたのだった。

「百合子さん、やりましたわね」
「やったなゆりゆり!」
「これで平和が戻ったんですね、ゆりゆり先輩!」
「百合子先輩、無事で何よりです!」
「始めまして百合子先輩。私、風香の友達の島袋と言います。喜びの創作ダンスを
躍らせていただきます」
「あ、ありがとう」
静、咲月、風香、七瀬が百合子にそれぞれ労いの言葉をかける。
しまうーのいきなりの創作ダンスに流石の百合子もポカーンとなる。

105 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:19 ID:???
「百合子、おかえり」
「ただいま京子」
京子と百合子はお互いにガッツポーズをとる。

「お疲れ様、ふたりとも」
舞は二人に笑いながらその言葉をかける。

「ゆりちゃん、お疲れさま」
百合子の母親も自宅で百合子に労いの言葉をかける。

「翔ちゃん、良かったよ!無事で!」
「全く、見ているこっちはハラハラしたぜ!」
「美空ちゃん、瑠菜ちゃん、あたしはこの通りピンピンしとるで」
翔は美空、瑠菜と喜びを分かち合う。その後で両親に気づき、ピースサインを送る。
両親もそれに気づいて手を振る。

「やったね、弥生さん!」
「ありがとう怜香さん」
怜香と榊はハイタッチする。

「凄いわね、あなた達の教え子達は。それにこんな事態でも全く取り乱さないあなた達も」
「おぉー栄子じゃん。なぁーに世の中なるようにしかならないって事ね」
「栄子お久しぶり。今度、舞ちゃんも誘ってまた食事に行きましょう」
栄子とゆかりとみなも、かつての同級生達はまた再会の喜びをかみしめていた。

「終わったのね」
「ああ、終わったんだ。もうHOLYも必要ない。彼女達にはまた穏やかな日常が待っている」
「そうね、この日を持ってHOLYもFLAMEも解散ね」
琴音と木村がそんな会話をかわす。

「諸君、ご苦労だった。総監からの意思、そして私からの意思を伝える。本日をもって現HOLYと
FLAMEは解散する。新たな一歩を踏み出してほしい。もちろん私もそうするつもりだ」
松岸の言葉に隊員達はそれぞれ思い思いの表情をする。

「我々の活動もようやく終わりを迎える事が出来たか」
「死んでいった仲間達も浮かばれるかな」
「私達はHOLYに比べると短い期間だったけど、解散となるとやっぱりほんの少し悲しいな」
上野、松戸、絵里が語り合う。

106 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:21 ID:???
「しばらくは体休めよう。俺は釣りでもするわ」
「じゃあ俺はSNOWの連中と音楽セッションでもするかな?」
「あ、じゃあそれにあたしも参加する」
金沢と浅倉、美里はこれからの事を話し合っていた。

「明日からあたし達も普通の一日に戻るんだな」
「そうだな。明日からまたみんな、離れ離れになるんだな」
「そんなに気にする程の事でもないだろう。また会おうと思えば会えるんだし」
智と神楽はこの一年近くに渡って怒った出来事を振り返る。暦がそんな二人に
笑いながら話しかける。

「この制服とも今日かぎりでお別れになるのね」
「やっぱり一年以上、この服を着ていたから、急に着なくなるのはさびしいものがあるね」
かおりんと千尋は制服の袖をいじりながら、思いを語る。

「私もですよ、やっぱり愛着湧きますよね」
「こういう事習慣になっていたから」
マヤーを肩にのせつつ、榊とちよも制服に対する愛着を語る。

「普段着にすればええんちゃう?」
「いや、それはちょっと・・・・・・」
歩の提案に、全員首を横に振った。そうして彼女達にとって忘れられない一日が過ぎていく。

「やったね、ちよ」
「メルさん!ありがとうございます!」
メルビィからの電話にちよは若干はしゃぎながら答えた。

「あんた達〜記念写真とったげるからそこ並びなさい」
「マジで!じゃああたし真ん中ね!」
「バカ!私だって!」
「お前らそんな事で争うなって」
「私は榊さんの隣!これだけは譲れないわ!」
「私はどこだっていいや」
智と神楽は位置を巡って争うが、それを暦が諌める。
必死なかおりんに対し、千尋はあまりこだわりを見せないなど見事に対照的だった。
ちなみにまたもかおりんは榊と腕を組んでいた。しかし、榊は別に気にした様子もなかった。
結局、真ん中はちよで、前列にちよ、歩、智、神楽が、後列に暦、榊、かおりん、千尋が
並ぶ事になった。

「よーし、じゃあ行くぞ。ハイ、チーズ!」
カメラのシャッターを押すゆかり。
そして彼女達はカメラに向ってスマイルする。それは今までで一番の、そして最高の笑顔だった。
その後、ゆかりやみなも達も交えた全員集合のスナップも撮影する。
そうして時が過ぎ、季節は春を迎えていた。

107 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:24 ID:???
エピローグ
「大阪、早くしろって!置いてくぞ!」
「待ってや、ともちゃん。早いて」
歩と智がどこかに向かって走っている。そうして向った先にあるのはマジカルランドと呼ばれる
テーマパークだった。

「遅いぞお前ら」
既にそこには神楽と暦、榊とかおりん、ちよの姿があった。

「しょうがねーだろ。大阪の奴、寝坊するから慌ててきたんだよ!」
「大阪らしいといえばらしいが、ちよちゃんはあんまりこっちにいられないんだから、気をつけろよな」
「いいですよ、よみさん。私は気にしていませんし」
「あとは千尋だけね」
「ごめーん、みんな待った〜」
かおりんが名前を言うと同時に、千尋がやってきた。

「大丈夫、みんなそんなに差はないから」
と榊は千尋に優しく笑いかける。ペットの持ち込みは禁止な為、マヤーは怜香に預けて
きているのだった。

「私達にとってはこれで2回目のマジカルランド全員集合だけど、かおりんや千尋に
とっては初めての事なんだよな」
神楽はそう言うと、千尋の方を見て、ニヤリと笑う。

「ところで千尋、長谷川とはうまくいってるの?」
「あーそれ私も知りたい」
「ちょ、ちょっと神楽さんもよみも何言い出すのよ!」
顔を真っ赤にして首を振る千尋。

「最近の変化で一番大きいのはそれですよね。あとは私達全員無事
大学3年生になれたって事くらいで」
ちよまでニッコリ笑って千尋に話かける。

「千尋ちゃん、ええなぁ」
「この中で千尋が一番先に結婚するかもな」
「とうとう長谷川君、告ったもんね」
その時の様子を説明すると、「そろそろハッキリさせなさい!」と和田に焚きつけられる形で
長谷川は千尋に告白したのだった。

「お、俺と付き合ってくれ!千尋ちゃん!!」
このセリフを言うまでかなりじれったくイライラしたとはゆっきーの談。

「こんな私でよければ」
と千尋もOKを出し、現在に至るのである。賭け事でもしていたのか、何故か
松田が異様に喜んでいたという。

108 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:28 ID:???
「おめでとう、お二人さん!」
「これで晴れて公認のカップルだね!」
「おめでとう。あーあと俺、かなめちんと結婚すっかもしんないわ。じゃあ」
長谷川と千尋のカップルが成立して沸きあがる中、橘が衝撃的な発言をする。
みんなが「え?」となり、振り返るとゆっきーは「ポッ」となっていた。
そして踵を返す橘の後ろをゆっきーが寄り添うように歩いていく。

「そんな事を言うなら、ちよちゃんこそ大山君とどうなの!?」
「わ、私は何もありませんのだ!ただ文通しているだけですじょ!」
(何故に文通?メールじゃないの?)
ちよの言葉に全員が同じツッコミをする。

「さあ、そんな事よりさっさと遊びにいこうぜ!」
「ああ、思いっきり遊ぶぞ〜」
「あのレールチェイスの奴やってみないか?」
「ああ、それ前にゆりゆりがやってた奴だよね?」
「あと和田さんも」
智、神楽、千尋、かおりん、暦は善は急げとばかりに歩き出す。

「私達も行きましょう」
「うん」
ちよと榊もそれに続いて歩き出す。歩はしばらくその場に留まっていた。

「どうしたんですか大阪さん、早く行きましょう」
「ちょっと考えとったんや、ジャスティスやレイ、それにコスモスやシェイドは今、
元気でやっとるんかなーって」
歩の発言に二人は顔を見合わせる。しかし、二人はニッコリと笑いかける。

「大丈夫、みんな元気に宇宙を飛び回っている」
「そうですよ、心配いりませんって」
「そっか、そうやな」
歩もそれを聞いて安心したように笑う。

「おーい、何してんだ。置いてくぞ〜」
遠くから彼女達を呼ぶ声がする。

「さあ、行きましょう大阪さん」
「行こう、歩」
ちよと榊に手を繋いで歩は歩き出す。

「なあ、ちよちゃん、弥生ちゃん。みんな一緒ってええもんやな」
「はい」
「うん」
歩の言葉に二人は満面の笑みで答える。
この物語はここで終わりを迎える。しかし、彼女達の日常はまだまだ続く。
平凡だけどかけがえのない日常。そして未来へと・・・・・・・・    第78話 終    
ウルトラマンジャスティス   完

109 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/28(土) 23:33 ID:???
ついに終わりました。この物語が始まってから4年ちょっとたってますが、
正直ここまで続くとは思いませんでした。
(それこそムーンキャッスルなんて影も形もなかった)
最終回は特に長いですけど、これでもかなり削った方だったりします。
今までこの長い話を読んでもらえた事に感謝です。
どうもありがとうございました。

110 :レウルーラ ◆iCj5r1a15w :2007/04/28(土) 23:37 ID:???
>>85-109
えーと、ここは敢えて一言……
4年にも及ぶ長期連載の完結、本当にお疲れ様でした!!

111 :名無しさんちゃうねん :2007/05/09(水) 19:34 ID:???
またひとつ作品が終わっていく。
いまやこのスレで連載が継続されているのは下駄さんのだけか・・・・・・

112 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始− :2007/11/18(日) 00:44 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−



青い空が、どこまでも続いている。
そして天より降り注ぐ太陽光を遮る物も何も無い。
時折穏やかな風が吹き、それが少女の栗色の髪の毛を靡かせた。

「あいつら、今頃どうしてるかなぁ…」


青々と茂る草むらに寝転びながら、神楽はそう呟いた。
施設の一角の傾斜に面したこの場所を神楽は気に入っていた。
自然に囲まれたこの場所から香る匂い、そして寝転べば自然と
視界に入る緑の木々と太陽の光が、たまらなく好きだった。
工場で働く労働者のような服が自分の体の下に生えている「いのち」に触れるなんとも言えない
その感触の中。
このままこの自然と自分も一つになりたい。
そんな考えに心の中で「感傷のしすぎかな」というノイズが入り、思わず苦笑した。

その時、一陣の突風が吹いた。
穏やかに揺れていた草木がバサっと嘶き、荒れる波間の様にうねりを描く。

「ウッ…!」

突然の風に、神楽は目を塞いで上体を起こし、身を守るような姿勢をとった。
そして恐る恐る目を開けると、自分の周囲の太陽光を遮り、影を落としながら
飛び去っていく三つの機影があった。
紅、白、黄の三つの機体は編隊を組みながら飛行し、
その機影の正体がゲットマシンであると神楽が感知するが早いか、
基地である浅間山の上空を越え、彼女の視界から消え去ってしまった。

113 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始− :2007/11/18(日) 00:49 ID:???
機影が去り、風も吹き止んだ。
周囲の環境は、心地よかった先程の状態に戻った筈なのに
神楽はもう一度寝転ぼうとは思わなかった。

「……ハァ……」

ゲットマシンの去っていった方角に向けていた視線を変え、
おもむろに彼女は立ち上がった。
彼女の眼下には、生い茂る緑を侵食するかのように広がる、荒れ果てた荒野があった。
神楽が今立っている場所から10歩も歩けば、お気に入りのこの場所も荒野の仲間入り。
かさかさの落ち葉の上に橙色の絵の具をぶちまけたような
大地の表面は裂け、幾つもの戦いの傷跡を刻んでいた。
地上の至る所には黒々とした金属片のような、またどこか有機的にも見える物体が散乱している

その中の一つ。
槍か、刃のような巨大な破片が空に向かって虚しい直立をしていた。

覚えている。

あの極限状態の中、悲鳴と絶望の中で見た映像にも関わらず、ハッキリと覚えている。

黒い巨体を無惨に切り裂く、戦斧を携えた真紅の鬼―ゲッター1のあの姿。
無数の光を掻い潜って現れる白銀の騎士―ゲッター2。

旋風と共に爆砕される昆虫の群れ。
灼熱の閃光に撃ち砕かれる犠牲者の哀れな断末魔。



あの操縦室で味わった、地獄のような苦しみを。









TO BE CONTINUED

114 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:01 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(2)



白金の装甲を貫く触手の一撃。
あの日、流竜馬と初めて会った時のあの光景に酷似した映像が
巨大なスクリーンに映し出され、視覚を直撃する。
デジャヴーにも近い光景だが、以前と今では何もかもが違って見えた。

以前、戦闘を目の当たりにした際の感情は
カタルシスという開放感。
平凡で、安らかに流れていく時間の中で垣間見た
巨大な力と力の激突。
危機的な状況の中でそれを味わえた理由は、危機感の少なさ。
確かに何人かの人間が死亡したが、その大体は集団の中の一部が襲われたのではなく。

集団からはぐれた、つまりま見えない場所での殺戮により生徒達が「生」と「死」を
理解しなかった、というのが大きい。

その上遺体と残骸、そして死骸は秘密裏に処理を行われたために
彼等の殆どは犠牲者がどんな有様だったのかも知らなかった。

それ故にあの非日常的な活劇を、【楽しむ】という感情を交えた中で
味わうことができた。



今は違う。

115 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:02 ID:???
今は違う。

この閉鎖された空間の中で嫌と云うほどの恐怖と絶望を味わっている。
圧倒的な戦力差。
それに抗う人型が織り成す残虐な舞台劇。
巻き上がる悲鳴、
そして何より、常に心臓を握られているかのような、
自分達に迫る『死』の姿。
戦闘の影響の地割れ。
その振動が死神の足音の様に心の臓へと迫り来る。

カタルシスは訪れず、訪れるのは不の感情。
恐怖、絶望、呪い、精神ののたうち。
産まれてこの方、こんな場面や状況を味わってなどはこなかった。



ただ二名。
あの日、校舎内で流竜馬と行動を共にしていた滝野智と神楽茜を除いては。




「――るよ」

ザワついていた室内が、一気に静まり返る。
声が収束した場所の中心いたのは、神楽。
神楽茜がいた。

116 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:03 ID:???
「え……ちょっと……何いtt」
衰弱した智を抱えながら、暦が言いかけたその時。







「乗るって云ってるんだよッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」








俯いた神楽の唇が振るえ、喉の奥から擦り切ったような声を吐き出した。
その声、いや怒号は、鳴り響く地響きや大型モニターから溢れる破壊音さえをも一瞬かき消した。
少女の両足の膝に力が篭る。
そして俯いていた顔がむっくりと起き上がり、赤く血走ったその眼光を老人へと向ける。
全力疾走した時とは違う感触のする荒い息を吐きながら、神楽は口の中に鉄の味が滲むのを感じた。
自分でも知らないうちに唇の端を八重歯が噛み潰していた。
神楽の口の裾から赤い血が溢れ出す。

117 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:04 ID:???
「―――そうか」

老人はそう一言言うと、老人は目の前のコンピュータのボタンを2、3度押した。
すると、薄暗い部屋の一角の闇が開き、其処から光が溢れた。
部屋の中を漂う埃が、ダイヤモンド・ダストのような輝きを放ち生徒達の眼を貫く。

「行け」

神楽の方を振り返り、早乙女が光の方向を指し示す。



「その先に、お前の龍が待っている」












TO BE CONTINUED

118 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:10 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(3)


「ぅ…」

数週間前のヴィジョンが頭を過ぎった刹那、神楽は顔をしかめた。

胸の辺りが、苦しい。

記憶の中、操縦席の中で味わったあの感覚。
振動という振動が自分の皮膚から、はらわたへと駆け巡る圧迫感。
それが、記憶を遡るというそれだけの行動で鮮明に蘇る。

鈍痛にも鋭痛にも似たその痛みは身体の奥底から、
あるいは素肌の表面から内部へと伝わるようにも広がり、神楽の身体を蝕む。
更に強く、更に広い範囲へと痛みはその歩を進める。

「ちくしょう…なんで、なんでまた……」

歯を喰いしばりながら神楽は呟いた。
初め、擦るように胸に置いておいた右掌は何時の間にか彼女の乳房を握り潰すよう覆いかぶさり、
ぎりぎりと指の切っ先を肉に喰い込ませていた。
四肢の力が抜けていく。
直立していた体も徐々にくの字に曲がってゆき、
最後は左手を地面へと押し付け、地面に跪くこととなった。

「がは…ぁ…は…ハ……」

神楽の呼吸が急激に荒くなる。
突発的な過呼吸の為に空気は殆ど肺へは行かずに、神楽の口腔内を出入りするだけとなり、
吐く息には唾液と共に鉄の味が混じり、不快感を増大させる。
喉からもじわじわと熱い空気が込み上げてくる。


ゲロを吐く一歩手前の状態が、今か。

119 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:11 ID:???
ポツっ



「ひっ!?」

消化しかけの朝食が濃厚な酸の味とともに喉を駆け上がってきたその時。
小さな水の破裂と共に、嬌声にも似た声を神楽は挙げた。
首筋をなぞり、背筋へと沁み込む一滴のしずく。
それが雨だと気付いたのは、吐きかけの嘔吐物がちょうど胃袋へと逆戻りしたところだった。

くいと首をもたげ、神楽は空を見上げた。



ザァァアーーーーーーーーーーーーーーッ



「ぉわッ!」

目が景色を認識した瞬間に塞がれる、口と目。
彼女の顔目掛け無数の水の弾丸が降り立った。
それらは、まってましたとばかりに彼女の顔面を打ち付ける。

しかし、水泳をやっていた手前、水に対しては慣れている。
すぐにまた目を開け、目の前の光景をぼぅっと眺めた。
思えば、こういう風に雨が降るのをゆっくりと見上げるのは初めてのことかもしれない。
傘もなく、遮蔽物もなく、また陰に逃げ込むわけでもなく、
水に濡れるというリスクを冒さずに雨というものを眺めるのは。

清涼感があった先程とは違う、石灰をぶちまけたような灰色の空。
ダークな印象を受けるその空に、知らず知らずのうちに神楽は自分の姿を投影しているように見えた。


灰色の雲は、まるで自分の心の暗闇。
陰鬱と言う感情が押し出た精神状態、そのものである、と。
身体を駆け巡った幻痛、吐き気。
それらは全t

120 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:12 ID:???
バチッ!


「くぅ…痛っつう……」

突如、虚空を裂いて破裂音が木霊した。
神楽が、自分自身の顔を両掌で押し潰していた。
頬と密着した両掌は衝撃を加えられた頬がじんじんと腫れていく
熱の篭った感覚を本体へと伝えていく。

自らが思い描いた不の思考の全てを、神楽はその一撃で断ち切った。
あまりに強く叩いてしまったためか、思考と共に意識まで一瞬吹っ飛んでしまったほどだった。

神楽はここで、別の思考を持った。

神楽にぶち当たっていく雨は冷たく、それらが神楽の体温を貪るように奪っていく。
しかしまた、頬の下ではじわぁっと血液が流れていくのが分かる。
それは生きているという事。

今までの幻痛も、あの日味わった恐慌も。
あの地獄ですら今こうして思い出すことが出来る。
これが、今生きているという事。

それを思えるだけで、心がすぅっと軽くなった。
力の入らなかった四肢にも、力が入る。
精神にも肉体にも、僅かばかりの余裕と言うものができてきた。

人間の身体とは思いの他勝手なもので、一つの欲求が満たされると、
又次の欲求を満たしたくなる。
神楽の身体が求めたのは、「食」と「暖」だった。

121 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:12 ID:???
冷えかけた身体が、それらを求め疼いているのが分かる。
雨が降る中、胃液の溜まるその場所からぐぅうっと絞るような音が鳴った。
反射的にその場所に向けて目を向け、周囲をぐるりと見渡した。
恥ずかしさから、神楽の頬は朱に染まっていたもののこんな時に外に出る物好きは
彼女だけのようで、周囲には誰もいなかった。

思わず、ほっと溜息。
そうすると、安堵感の為か更に腹の虫が要求をしてくる。

「ああ! もう、うるせぇなぁ! お前は後だ、後!」

ぽんっと腹筋のあたりを軽く叩きながら、神楽は笑った。

「今は―――」

そして、そのつま先を自分の目線の反対方向へとぐるりと回した。

「フロに入るのが先っ!」

つま先が地面に触れた瞬間、それがスタートの合図となった。
神楽の身体が、それらに向けて一直線に走り出した。



自分の心にへばりつく、トラウマの渦を拭い去るように。

122 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:13 ID:???
雨は、益々強くなっていった。
また雨を運ぶ風も、強く、激しく。
その姿を嵐という名の暴風雨へと変えていった。












to be continued

123 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:13 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(4)


仄暗い雲が、山脈のような形を築いて幾つも空に浮かんでいる。
見るものを憂鬱な気分にさせるこの薄汚い雲の色の中。

その中で、事は起きていた。



「ゲッタァァアアアアーーーーーーーーッビィイイイイイイイイイム!!!!!!!!!!!!」




天を裂く怒号と共に螺旋状の赤い光の束が奔り、空(くう)を切り裂く。
糸の様な細さの中に太陽熱にさえ匹敵する超高熱を携えたエネルギーが、
その軸線上にあるものを消していく。

熱線が触れた部分の雲は消し飛び、一瞬で数千億、
何兆もの水滴が形無き蒸気と化して虚無へと還っていった。

アリの巣のように穴だらけになった雲の奥。
熱線の輝きに照らされて、巨大な物体がぼやっとした影を蠢かせた。
その蠢きを、熱線を放った張本人の眼に入ると同時に、熱線は雲の中へ飲み込まれるように
螺旋状を描いたままに次々と突き刺さっていった。

124 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:14 ID:???
そして次の瞬間、赤い光は自分を包み込んだ雲を、逆に喰らっていた。
雲の中で赤い光が炸裂し、その爆発は雲に穴を開けただけでは飽き足らず、
雲そのものを内部から貪欲に食い荒らし、その形を無へと化させた。

その直後、鼓膜を引き裂くような不快感極まる絶叫が大空に響き渡った。
時折雲と雲の間を駆け巡る雷鳴さえもかき消す金属音のような叫びは、赤い光の爆発地点からのものだった。

僅かな雲の破片が漂う中、爆発地点を睨む、二つの眼光が煌いた。
爆発地点の間逆の方位。
光が放たれたその先に佇むは、真紅の機械巨人【ゲッター1】。
高度数千メートルの荒れ狂う気流の中、空中戦を主眼に置いたこの機体は
自分を取り巻く自然環境など何処吹く風と。
マント状の翼、ゲッターウイングを靡かせながら宙に浮かんでいた。

飛行機、飛行船、ミサイル、果ては翼竜に至るまで、
世界中の物体という物体が飛行という行為を行うに当たって絶対的に不可欠な
推力という概念を持たずに悠然と大空に佇むその姿には、孤高の風格があった。

この翼はいくつかの物事を具現化したものでもあった。
襲い来る脅威に対し、無力な人間が【ゲッターロボ】という人類の切札としてのみに与えた唯一の翼であること。
そしてこの機械巨人を駆る人間が、この強大極まる力を用いることを許されている証だった。


ギャッァァアアアアアグゥウアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


突如、ゲッター1の上空から不快な叫びが降り注ぐ。
機体が首をぐるっと擡げ、その方向へと眼光を移した。

125 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:14 ID:???


「ゲッタァァァアアアアトマホオオオオオック!!!!!!」


それを確認すると同時に、ウイングの根元の右肩部から迫り出した突起から
一本の棒切れのようなものが飛び出した。
鉄(くろがね)の色をしたそれは空気に触れた途端、内部へ押し込められていた刃と凶悪な牙の群れを
内部より吐き出し、その姿を戦斧へと変えた。
小振りな戦斧が、ゲッター1の右手に吸い付くように握られる。


ガキィッ


次の瞬間、高い周波を放ちながら、二つの刃は激突した。
一つはゲッター1が装備する鉄の戦斧、【ゲッタートマホーク】。

もう一つは、昆虫の手足を模した奇怪な形をした、鎌のような刃。
対峙する二つのシルエットの対比は、【人型】と【異形】。
本来、人間が片手一つで払い除ける雑多で矮小なはずの蝿の姿をそのままに、質量を肥大させていた。
その大きさは、これまた不快感を前面に押した出した薄汚い羽を広げていることも相まって、
全長38mものゲッター1を凌駕していた。

不潔感を煽る丸い腹部の形状を残したまま、か細い手足の先端は巨大な刃状になり、
また、腐った果実や動物の死体を啜(すす)る吸盤状の口は、
肉食動物のような凶暴さに満ち溢れた牙を何本も携えた口腔へと変化していた。

126 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:15 ID:???
「旧約聖書に蝿の化け物がいたが―――こいつが、まさにそれか」

異形の姿を前に、搭乗員は物静かに言った。
しかし、その声は嫌悪感と侮蔑感に満ち溢れている。
当の本人も不快さを露にし、言葉を吐き捨てると同時に赤い舌を打ち鳴らした。

「遊んでないで片付けろ、竜馬」

言い終わるか終わらないか。
その刹那に、再び戦斧は放たれた。

「うるせぇ!!」

怒声が轟き、真紅の装甲で覆われた左腕の五指が噛み付くようにそれを握り取る。
そしてそれを、一本目のトマホークを受け止めている刃の斜め上、
ボツボツとした無数の複眼で膨らんだ蝿の左眼球へ突き込んだ。
「つぷっ」という、眼球の膜が引き裂け、
その内部にたっぷりと詰まっている紫色の液体が抉れた肉にぐちゃぐちゃと混じり合う。

ぎゃあっと濁した悲鳴を上げた蝿は、反射的に刃をトマホークから遠ざけた。
しかし、それが敗北への引き金となった。

刃からの剣圧が消え、自由となったトマホークを遮る物はもう何も無い。

「もらったァ!!」

ゲッターウイングが靡き、ゲッター1が蝿の懐へと肉薄する。

127 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:15 ID:???
「うぉおおおおおらぁああああああああーーーーーーーーっ!!!!」

右の刃が剥き出しになった蝿のぶくぶくと太った腹部を切り裂いた。
苔の様にびっしりと生えた毛が、トマホークの一閃でぼわっと溢れ、
腹部に詰まった消化器官もろ共空中にその身を投げ出した。

ゴブッ

という水溶液の溢れ返る嫌な音を立て、
紫色の体液が、腹部の断面図から、そしてびっしりと牙の生えた
蝿の口腔から溢れ出す。

だが、容赦などは無い。
右の刃が蝿から離れるのと同時に、今度は左のトマホークを同じ場所に叩きつけた。
叩きつけた、というのは、今度の攻撃は刃では無くトゲ付きの鉄槌だったからである。

牙のようなトゲが傷口を一気に拡大させ内臓のいくつかを喰いちぎった。
泡立っていた液体がシャボン玉のように宙に舞っていく。

斬撃と打撃の二重奏が奏でられていた時間は、秒数に換算して僅かコンマ7秒。
それも、ゲッター1が蝿の懐に飛び込んだ時から数えての数字で。

つまり、竜馬が挙げた咆哮が鳴り止む前にこれらの事は起っていた。
巨人を自らの手足のように扱うその技量と、これを繰り出す非現実的な戦闘能力。
神速の絶技、と言わずして何と言おう。

128 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:16 ID:???
ギャガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


液体と肉片のミックス・ジュースを嘔吐しながら、
蝿が咆哮を上げた。
反撃の狼煙とでも言うべき叫びと共に、
刃状の手足全ての切っ先を自らの腹部へと振り下ろした。
即ち、全ての刃はゲッター1へと向かっていった。

ゲッターロボの装甲は、総じて脆弱な面がある。
拳や腕部は攻撃・防御に転じるために強化されているものの、
その他の部分は内部の機器と密接な距離を保っている。
唯一の例外としては、腹部にある動力炉心周辺が重厚な装甲によって封印されているのみである。

機体とパイロットを守る防壁であるはずの装甲が、何故薄いのか。
その理由は、単純明快。


攻撃を受ける可能性が、極めて低いから。

その、一言に尽きる。

六本の刃がゲッター1へと触れる瞬間、ゲッター1の全身が炎を噴いた。
被弾によるダメージのためではなく、機体自らが炎を纏っている。
炎の様に赤いゲッターウイングは、主であるゲッター1の頭部を構成する戦闘機、
【イーグル号】へと還っていった。

129 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:16 ID:???

側面に銀色の光沢を放つ刃を携えた腕は、白を基調としたゲッター1の胴体、
【ジャガー号】内部へスライド状に折り畳まれていく。

紅いラインの走る脚部は、黄の色をした他機と比べずんぐりとした、
言うなれば爆撃機のような姿をした【ベアー号】へとその身を戻す。
驚くべきことは、今まで脚部だったものが機体の長さの半分程度の
筒状の物体に収納され、しかもそれが戦闘機の姿に戻った際には
左右一対の双発エンジンへと変化したことだった。

それらが、一斉に火を噴き、それぞれの機体の名前を冠した獣の如く
勢いで疾走する。

人型という形態を取っ払った今、通常の戦闘機等とは比べようにもならない
機動力を駆使し、蝿の射程距離から一気にその身を遠ざける。
先程、とはいってもほんの1秒足らず前の時間に、ゲッター1へと振り下ろした刃は
ゲッター1はおろか、それが分離したゲットマシンへ全く傷を与えられる事が
出来ずに虚しく虚空を裂いた。
それどころか、勢い余って自らの身体にその切っ先を埋めてしまう程だった。

蝿が足掻き、もがく姿を嘲笑うかのように三機のゲットマシンは蝿と真逆の方向へと進路を取っていた。
雲を突き破った先には、悪天候という自然環境に翻弄される海面が広がっていた。
その景色がパイロット達、流竜馬、神隼人の眼光へと入った途端、
三つの機体はお互いを喰い合わせ、その姿を一つの人型へと昇華させていく。

130 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:18 ID:???

「チェェェエエエンジゲッタァァアアアアアアアツゥッ!!!!!!!!!!」

低く、どこか狂気染みた叫びが、天を衝いた。
白金の装甲の背面のバーニアが火を噴き、【ゲッター2】が空を翔る。


「ドリルアァァアアアアアアアアアアアアアム!!!!!!!!!!!」」

ゲッター2の左腕に携えたドリルが、優美とも取れるゲッター2の外見とは
全く異質の物であるかのように豪快な回転音を上げる。

地上戦用機である手前、
空での機動力でこそゲッター1に劣るものの、直線的な飛行、移動ならば本機に並ぶものは無い。
追い着けるのは、この地球と言う星で考えても光学兵器ぐらいだろう。
しかしそれすらも、超絶的な機体スペックと操縦能力を携えた神隼人の前には直撃させることは
おろか、被弾させられるのかも怪しい。

蝿は、自分の身体に突き刺さった手足を自分の肉ごと抉り抜き、体勢を立て直していた。
翼長70mはあろうかという巨大な翼が、実際の蝿さながらの羽ばたきで空を飛行する。
ピザとでも呼ばれそうな体型の割にそのスピードは速い。
二重、三重と回を重ねる羽の振動が物理的な法則を無視したスピードを叩き出していた。

口からは体液、腹部からは臓物を撒き散らしながら、蝿はゲッター2へと向かっていく。
ゲッター2もまた、我が飢えを満たさんとばかりに牙を剥くドリルの切っ先を
標的へと合わせ、蝿へ突撃する。


「うぅぅうううォおおおおおおおおおお―――――――――――――ッ!!!」

ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!

二つの狂気の叫びが、天空を貫いた。

131 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:18 ID:???



叫びが木霊し終えた後に残るのは、高い周波を撒き散らしながら
掘削する銀色のドリルの咆哮だった。

主の元を離れても尚、獲物の味と手ごたえの感触を謳歌するように
蝿の身体に食い込むドリルの銀光が、雲の間から射した太陽光によって映えた。
当の蝿は、叫び一つも揚げずにドリルの体内侵食を許していた。

というのも、ドリルの突き刺さっていた場所が蝿の頭部の
口腔内で、上げたくても上げられない、といった方が正しいようだ。
ドリルの掘削力は凄まじく、その回転により蝿の姿が全体的に歪んでいく。

その破壊は、頭部と上半身だけでは飽き足らず、ゲッター1の猛撃によって
破砕された下半身にまで広がっていった。
全身がビシビシと悲鳴を上げ、蝿の身体は崩壊の寸前を迎えていた。

そこに、鈍い光沢を放つ槌が下された。
蝿の腹部がべっこりと経込み、その身体がくの字以上に捻じ曲がった。

「この間のお返しだ、蟲ケラが」

ついで、と言わんばかりに二度、三度と、ヒールのような形状をした
紅い脚による蹴撃を加える。
その度に、蝿の体はボロボロと土くれの様に削れて果てる。

だがその度に、刃状の手足は反射なのか意図的なのか、びくびくと動き
その攻撃者へ向かって刃を翳す。

132 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:19 ID:???


しかし哀しいかな、その最期の抵抗さえゲッターロボの持つ
驚異的な分散能力を前には糸くず程度の損傷を与えることもなく無惨に舞うのみで終わった。

分散した三機は蝿の遥か上空へ駆け上がると、その身を一つへと重ねる。

先にベアー号と組み合ったジャガー号からは紅の腕部が迫り出し、
下半身を形成するベアー号の巨大双発エンジンはゲッター1の脚部へと変化する。
そして、最後の仕上げ。
イーグル号の先端から中腹にかけてがガバっと展開し、それが鬼兜のような
形状へと変化すし、既に合体を終え、巨大な十字架と化している二機へその身を叩き衝けた。

亀の甲羅かサッカーボールのような緑色のフィルターが施された頭部に、
二つのひし形の眼光が宿る。
そして背面からは、この世界の、大空の覇者であることの証であるゲッターウイングがその姿を広げた。

眼下では、潰れた左目ではなく、健在な右目でこちらを睨む蝿の姿があった。
引き裂けた腹から滴る物はもう何も無く、臓物も何もかもを撒き散らし尽くしながら、
蝿はゲッター1へと向かっていく。

「往生際が悪いぜぇ!! 蟲ケラぁ!!!」

ゲッター1の顔のフィルタが濃緑色を孕み、背面のゲッターウイングが、腹部が。
そして、機体全体が多大なエネルギーによって靡き、振動する。
ゲッター1の腹部のへその辺りが開き、そこに紅いエネルギーが収束する。

戦闘が始まった当初の、あのようなか細い物ではない。
大量の超エネルギー、【ゲッター線】の力を最大限に引き出した紅の剣が
そこには既に出来上がっていた。

133 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:20 ID:???


蝿は既に眼前に迫っていた。
そして、この時を待っていたとばかりに、流竜馬は叫んだ。
全てを砕く真紅の剣の名を。











    「ゲッタアアアアアアアアアアアアアアアアアビィイイイイイイイイイイイイイイイム!!!!!!!!!!!!」

134 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:21 ID:???











巨大な炸裂が発生し、空が一面を朱に染めた。
多大な振動が空を揺らし、その衝撃は僅かながら地上にまで到達した。


炸裂が発生した場所から、最低でも1キロ四方の雲と言う雲は姿を消し、風も止んでいた。
雲と言う遮蔽物が失せ、太陽光がその光によって宙域を照らし出す。

その中を、三機の戦闘機が悠々と飛行していた。
我が物顔で宙域の飛行を謳歌するその姿が、戦闘の勝利を、何よりも雄弁に語っていた。









to be continued

135 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:47 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(5)


グジュ、グシャ、グシュ

水苔を潰すような、内面からじゅわっと湧き上がる水音を立てながら、
神楽は廊下を歩いていた。

大雨に晒した身体は栗色の髪の一本、果ては下着にまで水の浸入を許していた。
衣類に含まれた大量の水による鉛のような重量感を神楽は感じた。

ふと、自分の視界に意識を置いてみた。
特にこれと言って変わったことはないものの、飾り気の無い風景だった。
今まで自分の通っていた学校と言う建物には、至る所に他愛の無い標語や
美術部か何かが描いたなんだかよく分からないポスターが点々と貼られていたものだ。

それが今はどうだろう。
天井に設置された照明が光を照らし、フローリングを施された薄灰色の床がその光に弱弱しく反射する。
殺風景、といえばそれまでだが逆を返せば人類の切札である巨大人型兵器ゲッターロボの
拠点であるこの場所、早乙女研究所の廊下に何を飾ろうというのか。

『火の元注意』
-重火器が大量に設置されていることは、早乙女から聞いていた。
カムフラージュされているものの、火の元などは家具同然にそこらに置いてある。

『手を洗おー』
-聞けば以前、研究所全体で大規模な食中毒になったらしい。
それ以来恐らく徹底しているだろう。

強いて言えば、『打倒!!独サイ者』『ハチュウ人類の首は刎ねてから潰せ』
『鬼には炒り豆よりも散弾銃』といった
血の匂いの香る物騒かつ非現実極まりないなものだったらよく似合うかもしれないが。
そんな考えに、神楽は思いを馳せていた。

136 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:48 ID:???
「(完全懲悪…かんぜん…かんぜん…凶あ)」

『く』と繋げるつもりだったはずのその思考はそこで途切れた。

ドンッ

「っ!?」

突如、額に衝撃が走りその反動が彼女を跳ね飛ばした。
どすん!という鈍い音を立て、神楽の臀部に緩い鈍痛が走った。

「てて……!?」

痛みの広がる箇所に右手を添えたその折に、神楽の両目が眼前の二足を捉えた。
二足を包む御世辞にも綺麗とはいえない年季の入ったスニーカー。
本来結ばれているはずの紐は、面倒なのか地面に垂れていた。
同時に神楽はその主の顔がある場所へと目を移したが、
途端、神楽の視界を五本の指が遮った。

それは神楽の後襟首を掴むと、
まるで仔ネコでも扱うように神楽の体をひょいっと拾い上げた。

一気に引き上げられた神楽の視線に、二つの光が飛び込んだ。

その瞬間、神楽の感覚は停止した。

そこにあったのは、ぎらぎらとした光を陽炎の様に滾らせた二つの眼光。
ブラックホールのような、底の見えない輝く闇から出でる精神を貫く鋭い輝き。
野性味と言うだけでは到底に満ち足りない未知を孕んだ、何か。

恐怖なのか、それとも別の感情なのか。
分類の出来ないその何かに、神楽の精神と肉体は膠着を余儀なくされていた。

しかしこの状態が、永遠に続くことは無かった。

137 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:51 ID:???


『よォ』

解いたのは眼光の主の一言だった。
その声を聞いた途端、指先がびくっと震え、金縛りが一気に吹き飛んだ。
膠着の解けた神楽は、肺に溜まった二酸化炭素を「ぜはっ」と吐き出し、叫んだ。

「な、流っ!」

彼女は苗字で彼を呼んだ。

「なにやってやがんだ、こんな場所でよ」
「な、なにって……なんだよその格好!?」


片手一本で猫の様に持ち上げられた神楽が見た竜馬は、
学校での格好そのままに学生服を羽織っていた。

かなり乱雑に扱っているのか至る所が破れ、ささくれ立っていた。
それは最早、学生服と呼べる代物とは程遠く、まるで獣の毛皮のように変化していた。
(これも学校での彼の格好と同じだった)

荒波か、炎のように波打った太い眉毛。
耳を掠め、頬下にまで山脈の様に脈々と連ねるもみ上げ。
精悍、というには表現出来る言葉が余りにも足りなすぎるものを滾らせた顔。
ずらっと開いた前ボタンから覗く、鍛え上げられた腹筋の上に
白いサラシを巻いたその姿は、まるで応援団長か、番長か。

果ては命を惜しまぬ傭兵かなにかのようにも見えた。

138 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:54 ID:???
明らかに、普通とは異なる異様と呼べる風体だったがこの男にはそれがよく似合っていた。
それはこの男自体が人間じみていないことと、どんな服や容姿でも
強引に自分に融合させ、調和させかねない圧倒的な力強さと強引さが
彼の肉体と精神から溢れ出していることに他ならない。

寧ろ、きちんとお行儀良く制服を着込んでいた方がどれだけ不気味なことか。
生まれながらに、彼は杓子定規と言うものに囚われてはいないのだから。


「ああ、こいつか」

困惑する神楽をよそに、この男はいかにもあっけらかんとした表情だった。

「中々気に入ったんでな、普段着にしてやってんだ。 どうだ、似合うか?」

この上なく答え辛い質問に、神楽は濡れた頭部に頭痛が響くのを感じた。







to be continued

139 :第3話 「受け継がれた絆」 :2008/01/09(水) 01:53 ID:???
ウルトラマンセイバー
第3話 「受け継がれた絆」
ミサイル超獣ベロクロン 登場

静岡県静岡市――
ここにいきなり巨大な怪獣が出現した。
珊瑚礁をベースに作られたと思われる外見をしている。
全身は緑色で、鼻先の角と足にある棘は藍色になっており、体には真っ赤な突起物がある。
目は赤一色となっており、それがより一層禍々しさを強調している。
珊瑚と宇宙怪獣の合体生物である『超獣』である。名はベロクロンという。
ベロクロンは出現するなり、口から火炎を吐いて市街の破壊をはじめる。
近くにあった建物も力任せに腕を振り回して破壊する。
周囲はたちまち火の海に包まれた。

この事態を受けて地球防衛軍のものと思われる戦闘機部隊がATDF部隊より先駆ける形で出撃する。

「我々はこれよりあのモンスターへの攻撃を開始する。全機、俺に続け」
隊長格の男の出した命令により、編隊飛行をする戦闘機部隊。隊長機が前に出て
ベロクロンの鼻を狙って弾丸を撃ち込む。続く機体もそれにならって同じ箇所を攻撃する。
その攻撃は見事に鼻に当たり、他の攻撃も頭部に命中する。
ベロクロンは反撃の火炎を吐く。編隊飛行していた最後部の2機に当たり、
2機はエンジン部をやられそのまま墜落していった。
さらにベロクロンは指先からミサイルを発射してきた。

「ミサイル!?」
隊長も全く想定していなかった攻撃に驚きを隠せなかった。
ベロクロンは手からだけでなく、体にある突起物からもミサイルを発射してきた。
これにより何機もの戦闘機が撃墜され、市街地に墜落するという事態に陥っている。

「隊長、自分が背後に回りこんで奴にミサイルを叩き込んでやります!」
「待て、よすんだ」
隊長の制止を振り切り、隊員のうちの一人がベロクロンの背後に回りこんで攻撃を仕掛けようとする。
だが、ベロクロンは背中にある突起物からもミサイルは放ってきた。
それはその機体に真っ直ぐ飛んできた。

140 :第3話 「受け継がれた絆」 :2008/01/09(水) 01:57 ID:???
「な、何で後ろからも!?うわああああああああああ!!」
機体に直撃し、その隊員は脱出する間もなく空中分解した機体と共にこの世を去る。
だが、ベロクロンはその攻撃をストップさせた。

「どうやら、ミサイルが尽きたようだな。今が敵を倒すチャンスだ。全機俺に続け!」
好機とばかりに隊長はベロクロンに接近して、ミサイルを叩き込もうとする。
隊長に続けとばかりに後続機も編隊を組みなおす。
例え火炎を吐かれても、かわしきる自信が隊長にはあった。だからあえて正面から攻撃を仕掛けようとしたのだ。
だが、ベロクロンが繰り出した攻撃は意外にもミサイルだった。
ベロクロンは口の中にもミサイルを含んでいたのだ。
火炎よりも素早く連続発射されるミサイルにより、たちまち戦闘機は撃墜された。

「火が・・・・・・ああああああ!!」
隊長機は火が一瞬にして燃え広がり、脱出する事すら敵わずに落下して爆発する事となった。
他の機体も空中爆発するか、墜落するかのどちらかであった。これにより戦闘機部隊は全滅してしまった。

「ベロクロン、もういい。一旦引き上げるんだ」
ベロクロンの脳内に命令する声があった。それは女性のものであった。
ベロクロンはその命令に従い陽炎のようにゆらゆら揺らめいたかと思うと、その場から姿を消した。
周囲には墜落した機体の残骸や、崩れ落ちた建物が残るのみであった。

「流石は超獣といったところね」
場面は変わり、宇宙船内部にある会議室にて一人の女性が声をかけてきた。
地球人と敵対する組織EOFのメンバーで、その中の四天王であるゼレル・レザルード、
そしてベロクロンを操っていたのがヴァリシア・クラウゼクである。

「ゼレルか。起動テストとしては申しぶない成果だな。ところでエメノザとロナの姿が見えないが・・・・・・」
いつもは席に座っているはずの二人がいない事に気づいて「おや?」とヴァリシアは思ったのだった。
正反対の考えを持つ二人な為、意見の衝突が繰り返されるのが日常茶飯事となっている。

「エメノザは手下にする宇宙人のスカウトに行ってるんじゃないかしら?ロナはブレイズに送り込むロボットを製作中よ」
「そうか。その方がうるさくなくて助かるがな」

141 :第3話 「受け継がれた絆」―アバン― :2008/01/09(水) 01:59 ID:???
「それが二人の耳に入ったら、怒られるわね」
「違いないな」
普段からあまり笑わないヴァリシアにしては珍しく、ゼレルとの他愛のない会話で少し笑った。
しかし、すぐにその表情は引き締められる。

「少し休ませてもらうぞ」
「ええ」
ヴァリシアはゼレルに告げると、作戦室から出て行った。

その頃、地球のATDF基地では・・・・・・
順序が逆になってしまったものの、入隊テストを終えたHOLYの面々が戻ってきたのだった。
皆、疲れきった顔をしている。

「あ〜疲れた」
「覚悟はしていたけど、想像以上だね」
みうらと恵那は汗びっしょりになっており、肩で息をしている。

「何とかギリギリ合格できたわね」
「ここでいきなり落ちてたりしたら、ちよちゃんに笑われちゃうからね」
みるちーとゆかもぐったりしている。机に突っ伏す形で話している。

「みんなだらしないぞ。しっかりしろ!」
「このぐらいでバテてたら、この先もたないよ」
逆によつばとあずさの二人はほとんど息切れしておらず、余裕さえ見える。

「二人とも何でそんなに元気なの?前のお姉さん達もこんな感じだったのかな?」
澪は頭に氷を当てていた。まるで風邪をひいたかのようだ。

「紗奈は彪乃からそういう話は聞いてないのか?」
「姉さんからは特にそういう話は聞いてない。聞かなかったし」
紗奈も疲れてはいるのだろうが、澪達よりは涼しい顔をしている。

「みんな、お疲れ様。順序が逆になっちゃったけど、やっぱりこれはしておかないと
他の隊員にとっても不公平だし、不満もでちゃうからね。とりあえずみんな、
HOLYに入隊できるだけの資質は持っていて安心したよ。で、次にやってもらう事なんだけど・・・・・・」
今回も音声のみで総司令と思わしき女性の声がスピーカーから聞こえてきた。

142 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/09(水) 02:14 ID:???
ウルトラマンセイバー1,2話はこちらでUPされています。

ウルトラマンセイバー1話
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/232-239(Aパート)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/241-252(Bパート)

ウルトラマンセイバー2話
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/256-258(アバン)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/272-278(Aパート)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/272-278(Bパート)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/309-317(Cパート)

従来のAパート、Bパートでは長いという意見があった為、
セイバー2話からUPする形式が変わりました。

143 :名無しさんちゃうねん :2008/01/09(水) 02:17 ID:???
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/300-305

訂正します。2話のBパートは上記のものです。

144 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:14 ID:???
新たな総司令から言い渡されたのは、HOLYに入隊した事をちゃんと家族に伝える事だった。
前回のテロチルスとの戦いの直後に入隊テストをしたものだから、全員その事を報告していなかったのだ。
テストを終えて基地に戻った時にはもう夜になっていた。現在夜9時。
当然、よつば達は家族にそれを報告する為に帰宅するのだった。

「おいおいお前がHOLY?その組織大丈夫か?」
「でもないんじゃない?前にはあたしの教え子達がなって地球を救ったんだから」
よつばが家に戻るとちょうど両親も帰宅しており、少し遅めの夜食をとることになった。
父親である小岩井修輔は驚いていたが、母親であるゆかりはさほど気にした様子もない。
母親の旧姓は谷崎。結婚して姓が変わったのである。
当然、よつばとは血が繋がっていない。

(結婚式の時は、二人ともガチガチに緊張してて思わず笑っちゃったっけ)
じゃがいもを口の中に運びながら、よつばはその事を思い出して笑いそうになった。

「まあなったからには頑張れよな。俺も適当に応援するから」
「適当は良くない!全力で応援しろ」
「分かった。よし、よつばを応援するダンスを披露してやるぞ!ヒョー」
食事中だというのに、小岩井はいきなり椅子から立ち上がり、太極拳を連想させる奇妙な舞をし始めた。

「こうか?とーちゃん」
「違う、もっと腕を水平にだ!!」
「お前ら、食事中に踊るんじゃねぇ!!」
ゆかりが椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がり、二人の頭を引っぱたいた。

「す、すいませんでした」
二人して頭を下げた後に、食事を再開する。よつばは緑茶を口に含む。

「あ、そうそうよつば。あの新しく現れたウルトラマンセイバーだっけ?
あれってもしかしてよつばの変身だったりする?」
「ぶっ!!」
いきなり核心をついた質問をされた為、よつばは飲んでいた緑茶を盛大に小岩井の顔面に飛ばしてしまった。

145 :第3話 「受け継がれた絆」―アバン― :2008/01/13(日) 00:16 ID:???
「よつば、行儀悪いぞ」
傍にあったあった布巾で顔を拭きながら、小岩井はよつばに注意した。

「ごめん、とーちゃん。だってゆかりが突拍子もない事を言うからさ」
「悪かったわよ。確かに突拍子もないわね。けどさ前のジャスティスは大阪が、
レイは榊が、コスモスは神戸、シェイドはあの凸女だったから、
今回も隊員の中の誰かなんじゃないかと思ったって訳よ」
ゆかりの鋭い指摘によつばは内心ヒヤヒヤしている。
しかしゆかりは、それ以上の追求はせずに食器を台所へと運んでゆく。

(ゆかりは相変わらず鋭いな)
前のウルトラマン達の正体もかなり早い段階で知っていたので、ゆかりの洞察力は並ではない事が伺える。
つまりいつよつばがセイバーだと知られてもおかしくないのだ。
その後、疲れをとろうとよつばは入浴し、そして寝室へと向った。そしてゴロリとベッドに転がり込んだ。
トレードマークであるヘアースタイルは今は無造作に伸びている。

「なあ、セイバー」
よつばは天井を見上げて、セイバーに呼びかける。

『何だ?』
その呼びかけに反応してセイバーが答える。彼女の枕元にセイバーが姿を現した。
最もこれは立体映像の一種で実際にセイバーがそこにいる訳ではない。

「セイバーはどうして地球を守ってくれるんだ?」
しばらくの沈黙が訪れる。

『私はかつて地球を守ったジャスティスやコスモスからこの星の事を聞かされていた。
素晴らしき人類がいる星だと。レイやシェイドも同様だった。彼等にそこまで言わせる程のこの地球に大変興味を持った。
一度は行ってみたいと思っていた。それが思わぬ形で実現する事となった』
「それで、どうだったんだ?」
セイバーはこの地球への思いを語り始める。

『彼等のいう事は間違ってはいなかった。君や君の素晴らしい仲間達を知る事が出来たのだから。
私は君達に出会う事が出来て良かったと思っている』
セイバーの思いによつばは胸にじーんとくるものを感じた。

146 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:19 ID:???
「ありがとうセイバー。そこまで思ってくれるなんてうれしいよ。あたしも一緒に
なったのがあんたで良かったと思っている。これからも頑張ろう」
『ああ』
それを最後にセイバーへの交信が終わった。よつばもまた就寝するのだった。

その頃、お隣の綾瀬家では……
恵那のHOLY隊長就任記念パーティーが行われていた。大きめなデコレーションケーキまで用意されていた。

「恵那、HOLY隊長就任おめでとう」
父親が恵那に向ってお祝いの言葉を投げかける。家族全員揃って乾杯をする。

「お、お父さん。恥ずかしいからこんな事しなくてもいいのに」
「なぁに遠慮してんのよ。おめでたい事なんだからさ」
恥ずかしがる恵那に対して、母親は頭を撫で、大きく切ったものを恵那に与える。

「しかし、恵那が隊長とはねぇ。あっ、風香それちょうだい」
「意外だよねぇ、お姉ちゃん。まあメンバー見る感じでは適任かもね。ってちょっとお姉ちゃん、その苺とらないでよ!
それ私が狙ってた奴なんだから!」
「馬鹿ね、こういうのは早い者勝ちに決まってるじゃない」
あさぎと風香がそれぞれ感想を洩らす。あさぎが風香から苺を取ろうとして咎められる。
こういった所は全く変わっていない。

「全くあんた達はいつまでたっても成長しないんだから」
「そういえばあさぎお姉ちゃんはあの人とは会ってるの?」
「ん?ああたまにね。そんなしょっちゅうは会えないけどね」
「私もお姉ちゃんも仕事忙しいからね。こうして家族揃うのが珍しいくらいだし」
「だからこういう風に恵那の事を祝うのは貴重だな。精一杯祝おうじゃないか」
「照れくさいなぁ。でもみんなありがとう」
この日、綾瀬家は盛大に盛りがったのだった。

早坂みうらもまた家族にその事を報告し、そしてある人物にメールするのだった。
送信してまもなくすぐに返信されてきた。『滝野智』と表示されていた。

「智らしいな。『あたしには勝てないだろうけど、みうらが副隊長ならうまくやってけるだろ』なんて」
そのメールを見て、みうらは口を大きく開けて笑うのだった。

147 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:22 ID:???
紗奈は一番この事を告げたい人達は生憎そばにいなかった。

「姉さんにはメールで伝えられるけど、おじさんには無理かなぁ」
それでも姉と慕っている彪乃からは激励の返事があって紗奈は幾分嬉しそうだった。
『なったからには気合入れてけよ紗奈』と。

「あらあら、それは大変ねぇ。頑張ってね」
「グッジョブ、マイドーター」
(いつもと同じで何か調子狂うなぁ。お母さんもお父さんも)
ほとんどいつもと変わらないリアクションをされ、澪は戸惑ったが、祝福されていると思うことにした。

「久しぶりだな、ちよちゃんに手紙出すの」
「海外だし、メールや国際電話だと高くなっちゃうし、中々繋がらないからね」
みるちーやゆかは家に帰ってこの事を手紙にしてかつての親友に送るのだった。

「かなめ姉さんは今どうしてるかな?」
結城あずさの姉、結城かなめはムーンキャッスルに所属しているらしいが、あずさには正確な部署までは分らない。
連絡を取ろうにも個人的な事で連絡を取り合う事は許可されていないので、かなめがどうしているかは全く分らないのだった。
しかし、気にしてもしょうがないとすぐに思いなおし、一日の疲れを取るために入浴した後に熟睡するのだった。
あれよこれよとしているうちに時計は0時を回ろうとしていた。

翌日、午前11時30分――
ヴァリシアは何かのコントロール装置に手を触れる。

「やるのね?」
「ああ、期は熟したからな」
ゼレルに問われ、ヴァリシアは力強く頷いた。

「行け、ベロクロン!今度はウルトラマンセイバーを抹殺するんだ!」
ヴァリシアが装置のボタンを押すと、空間に歪みが発生する。そしてベロクロンは
その空間へと飛び込んでいった。

東京近郊にて陽炎のような歪みが発生した後に、その空間を切り裂いて超獣ベロクロンが出現するのだった。

148 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/13(日) 00:24 ID:???
彼女達の近況を簡単にまとめてみました。
初期段階ではみなもやジャンボ、やんだなども出る予定でしたが、
収拾つかなくなりそうだったのでやめました。

149 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 21:53 ID:???
晴れ晴れとした空に出現したベロクロンに人々は恐怖する。
ベロクロンは出現するなり、火炎とミサイルによる攻撃で静岡に現れた時と同様に周囲をたちまち火の海にした。
轟々と燃え盛る街。
この事態を受けて、TEAM HOLYに出動要請がかかる。

「超獣出現!超獣出現!TEAM HOLYはただちに出動してください!」
警報サイレンの音がけたたましく鳴る。赤いランプが激しく明滅している。

「ポイントPXに現れた巨大生物は静岡で暴れた超獣と同種のものと確認。レジストコードはベロクロン!」
「ベロクロンは真っ直ぐこの基地のある場所を目指しているよ」
オペレーターであるみるちーとゆかが状況を報告する。

「分りました。みんな出撃しよう。フォーメーションはテロチルスの時と同じ奴でね。
みちるさん、ゆかさん、ここをお願いします」
「OK、任せといて」
恵那にここを頼まれた二人は指でOKのサインを出す。そして手元にあるパネルを叩き始めた。
画面上に様々な情報が表示される。その中には暴れるベロクロンの姿も映っている。

「まだ避難が終わってないみたいだぞ」
「突然の出現だったから、避難誘導が出来ていないのよ」
みうらは地上の様子を見て言った。それに対してあずさが答える。

「超獣をなるべく人のいない場所へと追い出しましょう。みんな山の方に誘導させるわよ」
「分ったぞ、恵那!」
恵那の指示によつばが一番最初に返事をする。後ろで紗奈も頷いている。

「よーし、紗奈あたし達から行こう」
「うん、よつばちゃん」
まずホワイトトルネードがベロクロンの目の前を横切る。
彼女たちの狙い通りベロクロンはホワイトトルネードを落とそうと炎を吐いてくる。

「澪、あずさ。分離して別々の場所から攻撃するぞ」
「OK、やってみるよ」
「分離」
みうら、澪、あずさはクリムゾンフレアを三機に分離させて散開して攻撃をする。

150 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 21:57 ID:???
自動照準機能があるため、狙いを外す事はない。
みうらは鼻を、澪は腕を、あずさは背中に向ってミサイルを発射するボタンを押す。
戦闘機の真下に搭載されているミサイルがベロクロンがミサイルを発射する部位を狙う。

グルルルルルル!
対するベロクロンも咆哮をあげつつ、口と指先、そして背中からミサイルを発射してそれらを相殺する。

「次は私の番ね、えい!」
その隙を逃さずにベロクロンの頭部に向って恵那の乗るブルーエクレールがレーザーを撃ち込む。
こちらも正確に当てる事に成功する。
ベロクロンが上を見上げると、そこにはホワイトトルネードが迫っていた。

「よつばちゃん、今だよ」
「いっくぞ〜。これでもくらえ!」

キシャァァァァァァ!!
ホワイトトルネードから発せられるレーザーがベロクロンの口の中にあるミサイル発射口に見事に命中する。
悲鳴らしき金きり声をあげるベロクロン。
ベロクロンはこの攻撃でダメージを負ったのか、動きを止めた。ベロクロンの目は白黒ならぬ赤黒に明滅している。

「やるじゃん、よつば」
「やったね、よつばちゃん」
「へへーん、どんなもんだい」
みうらと澪に褒められ、すっかりよつばは上機嫌である。

(あの人は今回はいないみたいね)
あずさはブラッド・クライアの姿を探したがどこにもその姿はなかった。

「これで決まりかな?」
「普通なら死んでいるよね?でも超獣だし」
紗奈の問いかけに恵那はそう答える。
しばらくするとベロクロンの口から大量の泡が吐き出され、そして空に散っていく。
ゴボゴボと不気味な音をたててさながらシャボン玉のごとく大気を舞うのだ。

151 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:00 ID:???
カッ!とその禍々しき真っ赤な瞳が光る。

「そんな!?生き返った?」
「生き返ったというより気絶していただけみたいだな」
「そんなとこだね」
ベロクロンの復活に澪は動揺するが、みうらやあずさは意外にも冷静だった。

「あの泡はベロクロンの体液だね。あの泡を変質させてミサイルに変えるの。
つまりベロクロンは体内でミサイルを作り出す事が出来るんだ」
ベロクロンのスキャニングデータの結果を伝えたのはみるちーの方だった。

「みんな、付近の住民の避難は完了したわ。あとはベロクロンを倒すだけよ」
ゆかは避難が終了した事を皆に伝える。

「よーし、一気に行くぞ〜」
「待ってよつばちゃん、うかつに近づいたら危ない」
よつばの乗るホワイトトルネードがベロクロンに接近する。
恵那は引き止めようとするが、遅かった。
ベロクロンの火炎が襲い掛かってきたのだ。この攻撃で機体後方が燃え上がる。

「うわ!」
「脱出しようよつばちゃん。このままじゃ危険だよ」
「仕方ない、脱出!」
紗奈に脱出を促され、よつばは脱出レバーを引いて脱出する。
機体上部が開かれ、よつばと紗奈が投げ出されパラシュートで降下する。

バァァァァァァン!!
機体はそのまま地面に衝突して爆発炎上した。

「この野郎!よつばと紗奈の仇はとってやるからな!澪、あずさ、行くぞ」
「OK」
クリムゾンフレアの三人は先程と同様、三方向に分かれてレーザーを撃つ。
しかし今度はベロクロンもその攻撃に対応してきた。
正面から攻撃したみうらには腕からのミサイルで、背後や側面から攻撃した
澪とあずさに対しては背中からのミサイルで反撃してきた。
今度は避ける事が出来ずに、三機とも被弾してしまう。

152 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:04 ID:???
「やられた。機体を不時着させるぞ。澪、あずさ、出来るか?」
「こんな市街地じゃ無理だよ」
「脱出するしかない。このままじゃ墜落する!」
結局、三人も脱出する事にした。尚、全員前回までと同じで機体はオートコントロールである。

「みんな!」
恵那はよつば達に気をとられた。だがそれによって隙が出来てしまった。

「危ない恵那ちゃん、前を見て!」
「そのままだとベロクロンの射程圏に入っちゃうわ」
みるちーとゆかの通信を聞いてハッとなる恵那。見ると眼前にベロクロンがいて
口を開けてミサイルを発射しようとしていた。

「くっ」
恵那のブルーエクレールは慌てて急上昇する。
しかし、一歩遅くベロクロンの口からのミサイルが機体下部を掠めた。
これにより機体はバランスを崩した。
もし、気づくのが遅れていたら直撃していた事だろう。

「しまった!」
しかし、それでも機体に影響を及ぼしたらしくどんどんと降下していく。

「脱出!」
やむをえず恵那は脱出する。しかし偶然からか、機体はベロクロンに向って落ちていく。
ベロクロンもそれに気づいたが、火炎やミサイルを使ったばかりなのですぐに迎撃体勢をとれなかった。
腕で振り払おうとしたが、間に合わずベロクロンの腹に命中した。

ドォォォォォォォン!!
流石に効いたらしく、わずかだが後方に下がる。

「紗奈、大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫だよ」
パラシュートで先に地面に着いたよつばは後から降りてきた紗奈に声をかけて無事である事を確認した。
すぐにその場から離れる二人。

153 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:06 ID:???
「いってぇ〜。おい、二人とも大丈夫か?」
「こっちは大丈夫よ」
「私も生きてます」
みうら、あずさ、澪も着地には成功しており、よつば達と合流する。
頭を打ったのか、みうらが頭をおさえていた。
彼女達がいる場所は十字路になっている交差点だった。周囲には信号機や民家などの低い建物がある。
最も民家はベロクロンの攻撃の影響で半数が壊れてしまっているが・・・・・・

「みんな、無事で何よりだわ」
最後に恵那がパラシュートで降下してきた。全員の無事を見て恵那は安堵する。

「地球人の力はこの程度か?ベロクロンの攻撃手段がミサイルと火炎だけだと思ったら大間違いだぞ。
しかし、地球人程度の戦力ならそれを披露するまでもないな」
「あくまでもウルトラマンセイバーに対して使うのね」
「そうだ。最初にも言っただろう。地球人の戦力など私達から見たら取るに足らない存在だ。
ベロクロンはウルトラマンセイバー抹殺の為に造ったと」
ゼレルとヴァリシアはスクリーンで様子を見ながら、地球人を見下す発言をする。

「さあベロクロン、邪魔な奴等は全て蹴散らせ」
ヴァリシアの命令を受けてか、それとも恵那によって受けたダメージの怒りからか、
ベロクロンはよつば達の方へ向って迫ってくる。

「固まってると狙い撃ちされるぞ。散らばるんだ!」
「紗奈、捕まって」
「ごめん、あずさちゃん」
「澪ちゃん、こっち!」
「はい!」
みうらの声を合図に散開する。紗奈はあずさに抱えられ、澪は恵那と一緒に逃げる。
紗奈とあずさは右側、澪と恵那は左側、そしてみうらは真っ直ぐ逃げる。

「だったらあたしはあいつを惹き付ける!」
ただ一人よつばだけはベロクロンの注意を惹き付けるべく、逆に奴のいる方へ向っていく。

「馬鹿!何してんだよ戻れよ、殺されるぞ!」
みうらは怒鳴りながら、よつばを追う為に来た道を引き返す。

154 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:09 ID:???
だが、それにより逆にベロクロンはみうらに向って火炎を吐こうとする。
「よつばちゃん、みうらちゃん!澪ちゃん、先に行ってて!」
「危ないよ、恵那ちゃん」
恵那も二人を追う。澪は動こうとしたが、体がいう事をきかずその場を動く事が出来なかった。

「こっちだベロクロン!あたしはここにいるぞ!」
よつばはレーザーガンでベロクロンの足元を攻撃する。
攻撃を受けたベロクロンはよつばの存在に気がつき、みうらからよつばにターゲットを変更する。
ボォォォォォッという音と共に火炎を吐いて焼き殺そうとする。

「あっつ!」
とっさに身をかがめたよつば。そのスレスレを火炎が放射された。
その熱気が伝わってきたのか、チリチリと髪が音をたてる。

「よつばが危ない!」
みうらや恵那は助けに行こうとするが、散発的に発射されるミサイルに阻まれてそれ以上近づく事が出来ない。
目の前のよつばに集中しているせいか、その狙いはでたらめである。
だが、そのせいで軌道が読めずかえって厄介な事になっている。

「このままここにいたら、私達も危ないわ!引き上げましょう」
「くそ、無事でいろよ、よつば」
やむを得ず二人はここから離れる事になった。一瞬、ミサイルの攻撃がやんだのを見計らって二人はこの場を離れる。
一方のよつばは火炎によって退路を阻まれていた。後方は炎の海となっている。
ついによつばは胸にしまってある星型のペンダント『スターフラッシャー』を取り出す。

「あたしに力を貸してくれ。セイバー!!」
スターフラッシャーを胸につけて、よつばはセイバーの名を叫ぶ。
よつばの周囲をまばゆい金色の光が包み込み、やがて一人の巨人へと変化させる。
銀を基調としており、上半身は赤と青、下半身は紫のカラーリングをしたウルトラ戦士
ウルトラマンセイバーである。
ウルトラマンセイバーは右手を高く掲げた状態で登場しする。

「ウルトラマンセイバー!」
モニターでその姿を見たみるちーとゆかが同時に口にした言葉である。

155 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/20(日) 22:11 ID:???
実はこれ、一度書き直しています。最初のはベロクロン相手にかなり善戦しており、
それはいくらなんでもないだろって事で変更しました。

156 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:43 ID:???
「やはり現れたなウルトラマンセイバー。さあベロクロン、奴を倒すんだ」
ヴァリシアの命令を受けてベロクロンは腕からミサイルをセイバーに向けて発射した。
しかし、セイバーはそれを避けようともせずに悠然と構えている。
ミサイルが胴体に当たるものの、彼は全く動じていない。

「ていっ!」
火炎を吐いてくるベロクロンに対し、その火炎の軌道スレスレの高さから跳ね上がり、
ドロップキックで蹴り飛ばすセイバー。
その蹴りにベロクロンは体を支えきれず、後ろへと倒れこんだ。
しかし、すぐに起き上がり今度は口からのミサイルで狙い撃ちにしてきた。
対してセイバーはそのミサイルを何と手足で弾いてしまった。
カキンカキンという金属らしき音をたててミサイルは掻き消えていく。

「ぬんっ!」
セイバーはその巨体で軽々と飛翔して、ベロクロンの背後へと回り込んだ。

「気をつけろセイバー!後ろからもミサイルが飛んでくるぞ」
とみうら。
その言葉どおり、ベロクロンは背を向けたまま豪雨のごとくミサイルをセイバーに向けて発射する。
彼はそのミサイルの軌道を全て見切り、大きく飛び越えた。
そして空中で体を捻った後に、ベロクロンの頭部を蹴り、仰向けに倒れさせた。

「はっ!」
セイバーが今度はベロクロンに接近する。
敵もセイバー目指して走り出すが、側転とバック転を交互に使いこなしやり過ごす。
これによりお互いの位置が入れ替わった。

ギシャアアアアアア!!

耳をつんざく程の唸り声をあげるベロクロン。周囲の空気が一気に張り詰めた物になる。
両手から何やら白い輪を作り出し、、それをセイバーに向って投げつける。
その白い輪はたちまちセイバーの体を締め付けてしまった。

「うっ!」
セイバーは苦悶の声をあげる。
ベロクロンは中指と人差し指と薬指の三本の指から白い光線を発射してカラータイマーの真下に当ててきた。

157 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:49 ID:???
「うおっ!」
白い輪に拘束されているセイバーは成す術もなくくらってしまう。
輪は消えたものの、セイバーはうつ伏せになって倒れこむ。

「セイバー、しっかり!」
声援を送る紗奈。その声が聞こえたのか、立ち上がるセイバー。

「確かにミサイルだけではないみたいね」
「そういう事だ」
この戦いを見ているゼレルとヴァリシアは味方が優勢であるにも関わらず淡々としていた。

咆哮をあげ、ベロクロンが頭から体当たりをしてきたのだ。
その攻撃に当たってしまったセイバーは、数メートル先まで転倒した。
さらに追い討ちをかけるべく灼熱の火炎を吐いてきた。
いくらセイバーといえどもその火炎をくらえばひとたまりもないだろう。

「はっ!」
セイバーは横転してその攻撃を回避する
ベロクロンは火炎を吐きつつ、徐々に距離を詰めてきた。
むせるような熱風が周囲に及ぶ。炎との距離も徐々に縮まっていく。
セイバーは何回か地面を転がった後に、体勢を立て直す。

だが、ここで予期せぬ攻撃が繰り出された。
ベロクロンは全ての器官からミサイルを発射してきたのだ。
しかも今度は狙いを絞っているせいか、確実にホーミングしてきている。
真上から流星雨のごとくセイバーに降り注ぎ、彼の周囲で次々に爆発!
さらに口のミサイルに被弾してしまい、うつ伏せに倒れこんだ。

「うおおおっ」
その猛攻の前についにセイバーのカラータイマーが青から赤に変わった。
エネルギーの消耗が激しい地球上では、ウルトラマンセイバーは長くは活動できない。
エネルギーが無くなると胸のカラータイマーが点滅を始める。
その輝きが消えた時、それがウルトラマンセイバーの最後の時なのだ!

「頑張ってセイバー!」
今度は澪が声援を送る。他のメンバーも固唾を飲んで見守っている。

158 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:58 ID:???
ベロクロンは再び全方位ミサイル発射体勢に入った。
勝ち誇ったかのような咆哮をあげる。

「しぇああああああ!」
セイバーのカラータイマーから赤色の光線が発射され、飛んでいく。
ベロクロンの口に見事に命中し、轟音をあげた。
タイマーショットと呼ばれる必殺技だ。

ギュオオオオオ!!
くらったベロクロンは悲鳴をあげながらよろめく。これによる影響か、ベロクロンはミサイルと火炎を吐けなくなった。
恐らく口にあるミサイル発射口と火炎を吐く器官を今の攻撃により破壊されたからであろう。

「チャンスだぞ、セイバー!」
「はっ!」
みうらの声に頷くセイバー。その後、右の拳で殴りかかる。
空気を切り裂くような一撃が相手の顔面に突きささり、体をぐらりと傾かせる。
よろけたベロクロンをセイバーは両腕で頭上に抱えあげる。
彼は何の苦もなく、軽々とこの物体を持ち上げてしまった。

「でやあああああ!」
力の限り放り投げるセイバー。ドスンと音をたててベロクロンは地面に叩きつけられた。
立ち上がった超獣はもはや虫の息であった。
咆哮を発するものの、その声には迫力も相手を畏怖させる力も感じられない。

「おおおおおお、はっ!」
ベロクロンとの距離をとったセイバーは腕を十字に組んで紫色の光線を放つ。
必殺技ライトニングストリームだ!
ベロクロンの頭部に命中し、爆発を起こした後に、奴は後ろにゆっくり崩れ落ちる。
直後に、ベロクロンは両腕を一度は上に上げるものの、そこまでが限界だった。
力尽きてその腕を地面に下ろし、目の赤い光も消えたのだった。
ほどなくしてその死骸は消滅していく。まるで一陣の砂のように儚く・・・・・・

「やったよ!みうらちゃん」
「セイバーが勝ったな!」
恵那とみうらがハイタッチをした。白い歯を見せて笑いあう二人。

159 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 23:09 ID:???
「シュワッ!」
セイバーは両手を挙げて空へと飛び去っていく。そしてその姿が消えた後によつばの姿になり地上へと舞い降りる。

「二人とも無事みたいでよかった」
「あずさちゃんに助けてもらったよ。ありがとうあずさちゃん」
「別に当たり前の事をしただけだよ」
澪はあずさと紗奈に合流する。互いに無事を喜び合う。
しかし、あずさだけは無表情のまま何かを探している。

(あの人はいないみたい)
あずさは周囲を見渡すが、ブラッド・クライアの姿を見つける事は出来なかった。
今回はこの近くにいないのだろう。

「どうしたの?あずさちゃん?」
「誰か探しているの?」
「いや、何でもない」
澪と紗奈にその様子を見られたからか、二人に聞かれるが、あずさははぐらかした。
あずさはブラッド・クライアを見かけた事をまだ誰にも話していない。
まだ正体もハッキリしていないという事と、あそこにいると思う反面、もしかしたら幻を見ているのではないかと
いう思いに囚われ、話すことが出来ずにいる。
そんなあずさの思いをよそに、二人は他の仲間達に声をかけた。

「よつばちゃんも無事を確認っと」
「セイバーに助けられたってとこかな」
モニターでよつばの無事を確認するみるちーとゆか。とても満足そうだ。
ベロクロンに関する情報を提示していた画面が閉じられていく。

「ベロクロンがやられたか。そうでなければ張り合いがないというものだ」
自分の手駒がやられたと言うのにヴァリシアはどことなく嬉しそうだった。

「嬉しそうね」
「まあな、単調な作業にならなくて済みそうだからな」
「私は逆ね。出来れば早く済ませてしまいたいもの、こんな事」
どことなく嬉しそうなヴァリシアとは対照的に、ゼレルは不機嫌そうだ。
何かを考えているのか、しばらく俯いていたが、おもむろに席を立つゼレル。

160 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 23:14 ID:???
「どこへ行くんだ?」
「地球よ。地球人やウルトラマンセイバーに挨拶をしにね」
彼女はそれを言い残して、ヴァリシアの返事を待たずに部屋を出た。
この部屋は円卓になっており、8人分の椅子があった。
ただでさえ広い部屋がヴァリシア一人となった事で、余計に広く感じられた。

(やれやれ、困ったお嬢さん方だ)
ヴァリシアは天を仰ぎ、苦笑いを浮かべる。
彼女の背後にある壁にはタペストリーがあり、鎧甲冑に身を包んだ騎士が描かれている。
やがてヴァリシアも何かを思いついたのか、外に出てこの部屋は誰もいなくなった。

地球では、変身を解いたよつばが、満足そうにスターフラッシャーを見つめていた。

「今日も勝てたなセイバー。この調子でどんどん行こう!」
上機嫌でセイバーに語りかけるよつば。

『・・・・・・』
しかし、セイバーからは何の返事も返ってこない。

「セイバー?」
『ん?ああ、そうだな。頑張ろう』
不安になり、よつばがもう一度呼びかけると今度はちゃんと答えた。
だが、彼女はセイバーの歯切れの悪い対応に不安を拭う事は出来なかった。

出来る事なら彼にその沈黙の意味を問いたい。
しかし、聞いた所で彼はこれ以上の事は答えないだろう。
敵の正体すらまだ教えてもらっていないのだ。

『心配しなくても敵の正体はもうじき明らかになる。私が教えるまでもなくな』
そんなよつばの心を読んだのか、セイバーの声が頭に響く。

「分かったよ、セイバー。今はあんたの事を信じるだけだ」
セイバーとの会話を終えたよつばは、こちらに向かって駆け寄ってくる仲間達に対して、
「おーい」と大きく手を振りながら応えたのだった。
第3話  終     第4話へ続く

161 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/02/10(日) 23:26 ID:???
次 回 予 告

テロチルスやベロクロンとの戦いで自信をつけていく彼女達。

だが、そんな彼女達の前にある敵が立ちふさがる。

「私の名前はゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード。
あなた達の敵よ」
「こいつがセイバーの言っていた敵?」

次 回 ウルトラマンセイバー
第4話 「接敵」
今、よつば達に試練が課せられる! 

162 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/02/10(日) 23:27 ID:???
3話終。色々と時間かかってしまった。

163 :名無しさんちゃうねん :2008/04/27(日) 17:16 ID:???
誰も見てないよ

164 :名無しさんちゃうねん :2008/04/27(日) 18:38 ID:???
>>163
うっさいハゲ

165 :名無しさんちゃうねん :2008/04/30(水) 02:00 ID:???
過疎なのは事実だわな

166 :名無しさんちゃうねん :2008/05/04(日) 01:59 ID:???
自然消滅ww

167 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 13:41 ID:???
おいおいこんなにageるなよ。

168 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 13:42 ID:???
なんだageと違ってこの方法じゃSageられないのか。
つまんね。

169 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 14:42 ID:???
昔は頼まんでも勝手にsageる奴がいたが、今はそいつもここを
引退したって事か。

170 :名無しさんちゃうねん :2008/05/13(火) 22:59 ID:???
こんな過疎っててもage厨を毛嫌いする奴がいたとはな・・・

171 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:19 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(6)


「ホラよ」

緩やかな線を描いて飛来するそれを、粗暴な声と共に神楽は受け取った。
水気を含んだ左手に伝わる暖かい温もりが冷えた体に伝わってゆく。

「あ、ありがとう」

寒気で震える唇から、なんとか感謝の言葉をひり出した。
そして次の瞬間、彼女の口内は熱い液体で満たされていた。
麻痺しかけた味覚の中でもはっきりと分かる、ほのかな甘味とどこか厳かな苦味。
それらが合わさる高貴な香りが、この飲料水の名称を雄弁に語っていた。

「焦って飲むこたぁねえ。 ゆっくり飲みな」

貪るようにコーヒーを啜る神楽を他所に、竜馬は制服のポケットを漁りはじめた。

「がフっ ん ぐっ… ごくッ」

120ml。
普段一気飲みで終わらせてしまうような量の液体が、やたらと多く感じる。
いつもなら、一気飲みとは言えゆっくりと飲んでいた筈だった。
友と共に、昼休みの時間間際に飲み干し、空になった紙パックを屑篭へ放り投げない日は無かっただろう。
時には、わざと遠くから投げ飛ばして「スローイン!」なんて言ってみたものだ。
またそれに反応した智が、暦がまだ飲んでいる途中のカップを剥ぎ取り、
周囲を水浸しにさせたのはそう昔の話ではない。

172 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:20 ID:???
「なぁ」

喉の奥へと流れ込む水の音の合間を縫って、弾ける様な声が飛び込んだ。

「お前、本気か」
「…え?」
「本気で、ゲッターに乗るのかって聞いてんだよ」

自分に背中を向けたまま、竜馬は言った。
重厚なその声は胃袋に注ぎ込まれる液体に、鉛の様な重量を加えた。


沈黙。


ぼんやりと、痴呆めいたように間の口に唇を重ねたまま神楽は黙っていた。
返答するために思考を巡らせることさえおぼつかない。
それでもなんとか、声を絞り出した。

「私は--------」

一呼吸を置いて、神楽は続けた。

「私は、乗る」

その声聞いた途端、竜馬の肩が僅かに揺れた。

173 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:21 ID:???
「ほ、ホラ! 私、水泳部だろ? 運動だって人よりできるし、その気になればケンカだって」

みしり、という。
拳が握られる音を、神楽は確認できただろうか。

「だからさ、私にならきっと」

竜馬を見上げた彼女の眼前に黒い影が横切った。



ゴシャッ


ドゴッ


ドグシャッ


突如耳に飛び込んだ、区切って三つの破砕音。
目には、ただ黒みを帯びた影が横切るのみ。
鼓膜が大きく経込むほどの轟音。
脳内で何度もリピートされるそれは、聞き覚えのある音だった。
あの日、学校で初めて会ったときに聞いた。



彼の拳が、何かを砕き、壊す音。

174 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:21 ID:???
同時に、電撃のような衝撃が神楽の全身に叩きつけられた。

神楽は、目を見開いたまま固まっていた。


竜馬の拳が、彼女の顔のすぐ隣の壁面に突き刺さっていた。
半分以上壁に埋没した拳を中心から、葉脈状のヒビが広がっている。
それと同様のものが、彼女の顔を囲むように、三つ。
それぞれ人の肩幅の倍近く広がったひびが、拳の破壊力を物語っている。

「見えたか?」

その問いに、神楽は一瞬送れて首をぶんぶんと左右に振った。

「闘ってるとな、こんなのが縦横無尽に飛び掛ってくんだ」

ぱらぱらと音を立てながら、神楽の顔のすぐ左壁面から拳が抜ける。
あれほどの破壊を行いながら拳は傷一つ付いていない。
生傷は無い。
そこには、度重なる鍛錬と、実戦による細かい古傷によって
厚みを増した金剛石のような拳があった。

「自慢じゃねぇが、こんなもんは本気じゃねぇ。
 女の顔に傷付ける趣味はねえからよ」

ごくり、と。
コーヒーと唾液が入り混じった液体を神楽は無理やり飲み込んだ。


「悪いことは言わねぇ。 お前にゃ無理だ」








to be continued

175 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/05/14(水) 01:23 ID:???
久々の投稿です。
最近時間に余裕が出来るようになったので、投稿することが出来ました。

176 :名無しさんちゃうねん :2008/05/15(木) 19:39 ID:???
割とよかったと思う

177 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/05/15(木) 22:38 ID:???
>>176
どうもです。
そう言っていただけるだけで、次への励みになります。

178 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:35 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(7)

「…は…?」

奥歯を揺らしながも、自分の意思を携えた声で神楽が呟いた。

「聞き取れなかったか? お前がゲッターに乗るのは無理だ」

神楽に与えた飲料とは違う銘柄のコーヒーを喉に注ぎながら、竜馬は行った。
そしてそのまま、神楽から数歩離れ彼女に対して背を向けた。
「なっ…」

思わず、身体の硬直も忘れて立ち上がる神楽。
握られていた缶コーヒーが、主の下を離れ、からりと身を床に預けた。

「な…なんでだよッ!?」

上擦った声で、竜馬の方に視線を向ける。
視線の先にいた竜馬も、神楽の眼光に気付いたか歩を進めかけた足を止め、振り返る。

向き直った彼は、神楽に向かって右の腕を突き出した。
そこには、中身を失った缶が握られていた。
一瞬呆気に取られた神楽だったが、彼女がそれが「缶」であることを認識したのは
数秒の後だった。
彼女への振り返り様、まだほのかに温かみが残るそれを、
彼は何のモーションも無く、まるで紙切れのように握り潰した。
それも親指、人差し指、そして小指の三本のみで。

179 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:36 ID:???
「お前がゲッターに乗れば、こうなるぜ」

僅かに残った液体が、ぴたりぴたりと滴り落ちる。
それがまるで、「お前の血だ」とでも言うかのように。

「…根拠は…なんだよ」

震える奥歯を噛み締め、問いた。

「お前の身体じゃ、ゲッターの衝撃に耐えられねぇ」

ぐしゃぐじゃになった空き缶を、虚空へと打ち捨てながらそう言った。

「あれはな、ちぃと力が強すぎるのさ」
「そんなの、訓練すれば!」

そう叫んだ神楽の額を、竜馬の左手が荒々しく掴み取った。
獲物を捕えた魔獣の様に。

「その訓練にもお前は耐えられねえ!!」

今まで、比較的物静かに話していた竜馬が声を荒げて叫んだ。

「ゲッターに乗ったんなら分かるだろ。 全身を砕かれたような痛みってヤツをよ」

その問いに、神楽は顎を僅かに引いた。

「訓練って、何のためにやるのか分かるよな?――――――死なねぇためにやるんだよ」

180 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:36 ID:???
ごくりと、硬い唾液を飲み込んだ。
唾液が喉を下る音を合図に、場に静寂が訪れた。
回廊に、古ぼけた電子時計の針を刻む音が響く。
普通に歩いている時でさえ気付かないその音は、やけに高く
そしてそれは無粋なまでに心と言う敷居を跨いで彼女の脳に響くのだった。

「なぁ、茜」

額に手をあてがったまま、竜馬が静かに口を開いた。


「お前、なんで戦うんだ」


疑問系ではなく、呟くように竜馬は言った。







to be continued

181 :第4話  「焦燥」ーアバン― :2008/06/30(月) 02:04 ID:???
ウルトラマンセイバー
第4話  「焦燥」

広々とした部屋にひとつの円卓がある。そこに四人の女性が座っていた。
彼女達はそれぞれ神妙な面持ちをしていた。

「今言ったようにこれから地球に向かうわよ」
「いよいよか。腕が鳴るな」
「楽しみね。新しい人間観察が出来るのね」
「そんな言い方は悪いよ」
ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード、ヴァリシア・ライガ・クラウゼク、
エメノザ・トラスティーン、ロナ・ヴァン・グレーティアだ。

「地球にはウルトラマンセイバー、ウルトラブレイズを援護する存在としてTEAM HOLY、TEAM FLAMEがいる。
私とエメノザはTEAM HOLY、ヴァリシアとロナはTEAM FLAMEを頼んだわよ」
「分かった」
「さっさと行きましょう。もう私さっきからウズウズしてるのよ」
「急いだ方がいいのは同意するわ。あまりもたつくと皇帝に何言われるか分からないし」
彼女達は部屋を出て、廊下を歩く。部下達が彼女達の存在に気づき敬礼する。
彼女達もそれに習い、敬礼をする。
そして、ゼレル達がたどり着いた先には格納庫があった。2機の小型艇らしき物体があり、ドーム状の物体である。
赤と青の2種類のカラーリングがあった。

「私とエメノザは赤い方で、ヴァリシアとロナは青い方ね」
「了解した。行くぞ、ロナ」
ゼレルとエメノザは赤い小型艇に乗り込み、ヴァリシアとロナは青い小型艇に乗り込む。

「発進!」
その声を合図に、二機の小型艇は高速で発進した。
小型艇にはパネルがあり、そのパネルを操作する事で動かすようだ。

「地球に着くまで少し間があるから少し寝かせてもらうわね」
「私も、少し眠るわ」
返事を待たずに眠るエメノザとロナ。
そんな二人にゼレルとヴァリシアは呆れるものの、結局は二人と同じようにするのだった。

182 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:07 ID:???
地球の日本では、そよ風が気持ちのいい季節だった。
気温もそれほど高くなく一番過ごしやすい時期であろう。空には太陽が燦々と照らされている。
そんな中をこの物語の主人公である小岩井よつばは歩いていた。
昔は四つに束ねていた緑色の髪も一本に纏めてポニーテールにしていた。
今は怪獣出現の報もなく、暇を持て余していると言ったところか。
かつて貨物操車場だったものを公園としたもので、中央には噴水が設けられており、
滑り台やブランコなどの遊具施設なども揃っている。子供達がそれを使って遊んでいた。
かつてはよつばもここでよく遊んでいたものだ。

(何年かして、路面電車がここに保存されるようになったんだよな)
展示されている黄色い路面電車を見て、よつばは感慨にふけっていた。
そんな時、よつばは思わぬ人物と再会する。

「あっ、京介じゃないか。京介〜」
目の前を歩いてくる男性に向って、よつばは手を振って呼びかけた。
その人物は短く切り揃えた髪の為か、精悍な印象を受けた。紺のジャケットに黒のジーンズという出で立ちだ。

「お、何だよつばちゃんか。珍しいな。ロングとはいえスカートを履いているなんて」
と、いきなり服装の事を指摘された。
言われた通り今よつばは、白のカーディガンに赤のロングスカートを履いているのだ。
普段はパンツスタイルが当たり前だから、何となくこの格好には馴染めないものがある。

「やっぱ変かな?」
「正直何とも言えないな。でも見慣れれば似合ってくると思うよ」
よつばの質問に京介は正直に答えた。下手に「ぴったりだよ」と言わない分、好感がもてる。
よつばにとっては、下手におだてられるよりそっちの方が気持ちいいのだ。

「久々にあった事だし、ゆっくり話すとしようか。これ食べるかい?」
京介は展示されている路面電車の中に入っていき、鯛焼きをよつばに差し出す。

「ありがとう、もらうよ」
断る理由もないので、よつばはそれをもらう事にした。近くの店で買ったのか焼きたてほかほかだった。

「確かよつばちゃんはTEAM HOLYに入ったんだよな。それでみちる先輩やゆか先輩も一緒だったと聞いてるけど」

183 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:10 ID:???
久々に会うなり、質問を投げかけてくる京介。

「そうだよ。恵那やみうら、それに澪やあずさに紗奈もいるぞ」
「で、うまくいっているのか?」
「うん、まあうまくいってると思うぞ。特に仲間割れとかもしてないし。
何だかんだでテロチルスやベロクロンといった敵を何とか倒してるし。セイバーともうまく連携とれてるし。
それよりこの鯛焼き、白あんがとてもうまいな」
質問に答えながら鯛焼きを頬張るよつば。本当においしいらしく、至福の表情を浮かべている。
これは中々の当たりだと思う。

「そうか、うまくいっているのか。こっちと大違いだな」
「うまくいってないのか?」
「隊員同士の対立なんか日常茶飯事だからな。しかも両方とも自分でこうと思った事は絶対に曲げないだけに尚更な。
工藤や七瀬さんなら長年の付き合いでどう考えているかも分かるけれど、他の隊員は分かってくるのにもう少しかかりそうだ。
ブレイズともいまいち噛み合ってないとこがあるし」
見てすぐに分かるくらい京介の顔は疲れた表情をしていた。
しかし、そんな顔をして鯛焼きを食べてもおいしくないだろうに・・・・・・。

(オーソドックスにこしあんか)
とどうでもいい所に注目してしまうよつばだった。

「けど、今の話を聞いていて一つ思った事があるな。抜群のチームワークを誇っているみたいだけど、
もしそのチームワークが崩されたらどうなるのかな?」
「え?」
京介が真顔で言い放った言葉によつばはドキッとなる。
全く考えていなかった訳ではないが、他人にその事を言われると不安になるものだ。
前回、セイバーとの歯切れの悪いやりとりをした事を思い出して、よつばの脳裏に一抹の不安がよぎった。

「いや、ごめん。不安にさせるような事言っちゃって。別にそんなつもりで
言ったんじゃないんだ。今の俺の言った事は忘れてくれ」
京介もよつばが不安げな顔をしているのに、ばつが悪くなったのか慌てて忘れるように促す。
よつばが気にしてないと言おうとしたその時、よつばの左腕につけている通信機に呼び出しのメロディが鳴った。
どうやら、何かが起こったらしい。TEAM HOLYのみに出動要請があったらしく、京介にはそれらしい音は鳴らない。

184 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:12 ID:???
「どうやらHOLYに出撃要請があったみたいだな」
「そうみたいだ。悪い、京介。そういう事だからあたしもう行くわ」
食べかけていた鯛焼きを急いで口の中に放り込むよつば。

「そんなに慌てて食ったら喉に詰まるぞ。ほら」
京介はそんなよつばに缶コーヒーを投げてきた。それをキャッチして、喉に流し込む。
冷たい液体が喉を潤す。

「サンキュー。」
「頑張ってきなよつばちゃん。もしかしたら俺も出動する事になるかもしれないけど、その時はその時だ。
あ、そうそううちの隊員に姫崎姫子って隊員がいるんだけど、もしかしたらよつばちゃんとは気が合うかもしれないな」
「ヒメコ?そいつあたしに似ているのか?」
「いやどっちかというと、対照的だな。でも何でかな?そう思えてならないんだ。
いや、忘れてくれ。俺の思い過ごしだろうし」
「まあ、とりあえず名前は覚えておくよ。じゃあな京介」
彼女は京介に手を振って全速力で駆けていく。

「やれやれ、相変わらずバイタリティ溢れてるな」
走り去っていったよつばを見て、京介は肩をすくめるのだった。
空を見上げると、雲が太陽を覆い隠してしまっていた。

「これは一雨きそうかもな」
京介はポツリと呟いた。

(姫崎姫子か。どんな奴なんだろ?もしかしてそいつがブレイズってのに変身する奴なのか?)
そして走りながらよつばは京介が発した最後の言葉が気にかかっていた。
よつばにしては的を得た推察である。

(ま、いいか。どうせそのうちわかることだし)
しかし、よつばはあまり深く物事を気にしない性格の為に、すぐにそれを頭の奥にしまいこんだ。
セイバーに聞こうとも一瞬思ったのだが、何でもかんでもセイバーに
聞くよりも自分で確かめた方がいいという思いもあったが・・・・・・

京介の予想通り、雨が降り出して来たが、よつばは雨が降る前に
何とか基地にたどり着く事に成功するのだった。

185 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/06/30(月) 02:13 ID:???
アバン終わり

186 :名無しさんちゃうねん :2008/07/01(火) 01:57 ID:???
下駄のだけ良い 

187 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:51 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(8)

頭部を掴む力は決して強くはない。
女性の力とて、抜け出すのは容易だろう。

だが、それができない。
幾つもの傷跡の走った五指に込められた鬼気が、彼女の行動を抑制している。
屠殺される家畜に感情があるならば、最期の瞬間には、そのような気配を野性の感とやらで悟るだろう。

しかし、これは違う。
勘も、野性も、その欠片も備えていない少女が触れられただけで感じる鬼気。
生物が持つ恐怖を限界まで引き上げる力を、この男は持っていた。

彼、―流竜馬は。

「なぁ お前が闘う理由って、なんだよ」

疑問形ではない。
どこか、呟くような声だった。

「…っ…ぐ……ぅ…」

答えようと、頭を可能な限り回転させたつもりだった。
だが、得られるのはノイズのような濁音のみ。
虚しく口腔から零れる声がそれを語っている。



その思考の中、神楽は思った。



なぜ、自分はここにいるのか。

188 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:52 ID:???

なぜ、あの時、『龍』と呼ばれた機体に乗ったのか。

今の自分が置かれている現状に対する、疑問が。

考えれば考えるほど、その溝は埋まらない。
考えれば、酷いものだ。
どうしようもなく滑稽で、病的な物語だ。
自分のこの現状に至るまでの、経路というものは。
言葉にせずとも、思考の波は巡り、押し寄せる。

そしてそこに、新たなノイズが割り込んだ。

連続する高い音の波。
頭上で煌く紅い点滅。

これらはあの時、この場所で体験したものだ。



敵の襲来を知らせる警戒警報。


「また出やがったか」

そこに、"トカゲどもよりしつけぇな"と竜馬は加えた。
途端、神楽の頭への力が、微弱なものから無へと変わり、鬼気も消え失せた。
最初からそんなものは無かったかのように、彼女の身体への拘束も消えた。

189 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:58 ID:???
神楽の頭から、竜馬は手を離し、彼女の顔を一瞥した。
警報と、紅い光の点滅に怯える彼女の顔がそこにあった。
すると竜馬は、息をすぅっと吸い込み天上へと吼えた。



『『『『うッせぇぞジジイ!! さっさと消しやがれ!!!』』』』



心の臓腑まで響く、獣の、魔獣のような咆哮だった。
それが聴こえたのか、警報の類の全てが止んだ。
回廊でエコーする先程の怒号が消えた時、竜馬は神楽に背を向けた。

「なが……竜馬!!」

歩き出した竜馬を、今度は名前で呼んだ。

「悪かったな」

振り返らず、彼はそう言った。

「え……」

へらへらとしたものではない。
重みのあるその言葉。
前代未聞以外の何物でもない。

「お前、喧嘩ってできるか?」
「す、少しなら……」

困惑する彼女に、唐突に疑問を投げかけた。
そういえばいつだったか、痴漢を退散させたことがある。
ターゲットは自分ではなく、榊への痴漢だった、が。
実際は争いと呼べる範疇の中の非常に小さいものだったが、少なくとも、神楽は
それを「喧嘩」だと思っていた。

190 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:59 ID:???


「そうか…ならいいや」

竜馬が一歩を踏み出そうとしたとき、その歩みを神楽が止めた。

「……いよな?」

「し、死なないよな…? 大丈夫、だよな…?」

問いに答えず、宙に膝半分ほどの高さで留めていた足を床へと降ろした。


その時だった。


神楽の肺が、破裂せんばかりに息を吸い込んだ。



『『『バカヤロー!!!!』』』




神楽の、咆哮が回廊に木霊した。

「流竜馬のバカヤロー!! 死ぬんじゃねーぞ! バカヤロー!!」

瞼から溢れる熱い液体と共に、神楽は叫んだ。 叫び続けた。
喉の痛みに声を止めた時、彼女は見た。

竜馬の振向きかけた横顔が、にやっと笑ったのが。
彼がよく見せる、大胆不敵なあの笑顔の片鱗が、霞みを孕んだ
眼越しにはっきりと見えた。

191 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:03 ID:???


「バーカ! 俺様が死ぬわきゃねーだろッ!!」


がばっと振り返り、ぐっと右腕を突き出しながら彼は叫んだ。
親指を突きたて、「グッド!」のサインを表しながら。

「ぐずっ……だよなっ!」

瞼にこびり付く涙をぬぐい、彼女もそれに習った。
不敵な笑みを保ったまま、彼は「ヘッ!」と一瞥し、踵を返して走り出した。

自らが討つべき敵、否、獲物へと。

竜馬の姿は視界からすぐに離れた。

彼の姿が消えると同時に、神楽も駆け出した。

2、3こ目のカーブを曲がり終えた後に広がるのは、外の景色。
施設の出入り口。
浅間山を一望できる場所だった。

外に出るのと同時に、上空から一陣の突風が吹き、彼女の身体を影が包んだ。


紅、白、黄の色が施された三機が、彼女の上空を飛び去っていった。


そして、彼女の目の前でそれは起った。
音速を遥かに越える速度で飛行する三機が白、黄の順で組み合ってゆく。

192 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:06 ID:???


閃光を纏って激突した白と黄の機体は激突した形状から人型の手足を構築させ
そのまま紅の機体と組み合った。
空中四散どころか爆散してもおかしくはない筈の衝撃の中、
紅の機体はその身を自ら引き裂き、それを己の兜とした。

紅の機体の双眸が眼光を放ち、背後の装甲から天駆ける翼を放った。


「チェエエエエンジッ!!!!! ゲッタァアアアアアア!!!!! ワンッ!!!!!!!!!」



右の拳を空へと突き出し、痛烈な喉の痛みさえも忘れ、神楽は叫んだ。

鋼の翼を与えられた、勇者の名を。

布状の翼がばさりと一閃し、雲を、烈風を切り裂いて、ゲッター1は瞬く間に
彼女の視界から消えた。



この空を、神楽茜は眺めていた。



ゲッターロボの飛び去って行った、この空を。
何時の間にか、雷煌く悪天候から、一点の曇りも無い、蒼天となったこの空を。















to be continued

193 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:17 ID:???
>>181-185
乙です。
ちょっと明日(正確には今日の午後)にでも感想を創作板で書かせて頂きます。

>>186
自分の文章を読んでいただき、誠にありがとうございます。
非常に遅くなりましたが山場を越えられましたので、今後もよろしくお願いします。

194 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:34 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(9)

太陽は、常に頭上にあるわけではない。
光は、やがて姿を隠し、闇が訪れる。
そして今は、それの挟間だった。

「相変わらず、ここは景色がいいな」

文字通りの崖っぷち。
眼下に広がる、緑の群れ。
光と闇の交差する、夕焼けの色を含んだそれらを見下ろしながら竜馬は言った。
首に巻かれた若葉のようなスカーフが、柔らかな線を描いてふわりと揺れた。
学生服ではない。
白色と青の混じった緑を基調とした搭乗用の戦闘スーツを、竜馬は纏っていた。
そのすぐ後ろには、神楽がいた。
服の手持ちが少ないのか、服装は変わらなかった。

彼等の立っている崖の中央には、一つの岩があった。
よく見れば、それは岩ではない。
縦長の長方形に削られた形状。
それを支える石の床。
明らかな意思の基で作られた、創造物の基盤の痕跡が確かにあった。

そして、縦に刻まれた刻まれた言葉。
神楽の視線が、その文字をゆっくりと追った。
日が暮れかけているのと、彼女自身の勉強不足。
それが祟ってか彼女の視線と思考は墓石に刻まれた最初の文字で止まっていた。

195 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:35 ID:???

「久しぶりだな、ムサシ」


墓石の前に立った竜馬が、墓石の傍らに置かれていた何かを手に取った。
今度は、神楽にはそれが何かがすぐに分かった。

「剣道の……防具?」

それは、左右から中央に向かっての大きな罅の入った、剣道の「胴」だった。
雨風に晒されながらも、本来、朱であったと思われる色を保っているそれは
彼女の知っている防具の類とはどこか異なるものであった。

墓石の前に屈み、竜馬は手で汚れを振り払った。
先程も降り続いていた雨もあり、至る所に泥が跳ねていた。

普段なら「ざけんな畜生!!」とでも叫びそうな気がするが、
竜馬の面持ちは非常に落ち着いた、慎重なものだった。
明日は拳大の雹でも降るのかと、神楽は思った。


墓石に置かれていたのは、防具だけではなかった。

手元の紐がほどけかけ、鞘に収まった日本刀。
そして、熱い窪みを持った双眸を持つ、黄色いヘルメット。

196 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:35 ID:???
剣道の防具、日本刀、ヘルメット。
これらを装着した姿のビジョンは、神楽の脳内には存在しなかった。
しかしこれが今も尚、持ち主の傍に寄り添っているのは、
これらの持ち主が誰であるかを、何よりも確かに、言葉無き静かな声で語っていた。

「巴武蔵(トモエムサシ)。 俺のダチだ」

「竜馬の友達…っていうことは……」

「ああ。 ベアー号……ゲッター3には、こいつが乗っていた」

一通り汚れを拭い、次に日本刀を手に取った。
ほどけかけた糸を指に器用に引っ掛け、一気に刃を抜いた。
錆びの走った刃の上を、首から解かれたスカーフが駆けた。

「あいつは元柔道部の部長でな、やたら頑丈なヤツだった」

竜馬の手から放たれた胴を見る限り、
持ち主の体格は縦よりも横に伸びていたであろうということが容易に分かった。
だが、胴に覆われたそれは贅肉ではなく、
脂肪の下に蓄えられた頑強な筋肉であったことだろう。

「ハラワタが飛び出してもゲッターの操縦桿を離さなかった大バカヤロウだ」

「…凄いな。 私なんて、あれだけで気を失っちゃったのに」

懐かしさを覚えているのか、竜馬は笑った。
驚嘆を交えながら、神楽も竜馬と共に笑った。

197 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:37 ID:???
「ああ、馬鹿だったさ」

声のトーンが、一気に変化した。
お茶らけたものから、鉄のような高度をもったそれへと変わる。



「ゲッターなんざと、心中しやがって」




ぎりりという、拳と牙とが軋む音を神楽は聞いた。
これを見な。
ぐいと突き出されたそれは、まだ手を付けていないヘルメット。
彼女の脳は、それを視覚から色を認知し、そして徐々に形状を視覚する。

それを確認した時、神楽の感情に戦慄が走った。

その、「ヘルメット」の表面には作りかけのホットケーキが放つぽつぽつとした
小さな気泡、それが表面に無数に広がり、厚みのガラスが張られていたであろう眼鏡は
半分近くがヘルメットの材質と融和していた。
頭が入るであろう部分も、出来損ないのクレープのような膜が張り、
頭頂部の当たる部分には黒々とした何かが、瘡蓋のようにこびり付いていた。

明らかな、異常である。
これを発生させた原因は何であろうか。

198 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:39 ID:???
その問いを、神楽は導き出した。
キーは、竜馬の言った「心中」の言葉。

「まさか…」


「…ああ。 あいつは。 ムサシは……」

ふぅ、という一瞬の間を挟み、竜馬は再び口を開いた。




『ゲッターと一緒に自爆したのさ』






神楽の背後から、ばさりという音が弾けた。
同時に、雑音のような叫びを孕んだそれに、彼女の全身は畏怖を覚えた。
それが、彼女の頭上を掠めて飛んだ。


幻影の様に僅かに見えたのは、鋭い嘴と闇に溶け込むような黒い羽を携えた黒い鳥―――烏だった。
滑稽に怯える彼女の眼前を、烏は飛び立っていった。

199 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:42 ID:???
はっと息を吐いた。
心臓が、バクバクと弾ける感覚を神楽は感じた。
水泳や運動での疲労とは、まるで違う疲弊だ。

神楽の呼吸が静まると同時に、竜馬は静かに口を開いた。


「あいつは……お前と同じだ」

神楽の体が、ぴくりと震えた。

「自分自身で、ゲッターに乗ることを選びやがった」

神楽はそう聴いた。
『死』という存在の影を、マグマのような、血の流れと共に感じながら。

彼等の背後。
崖っぷちに聳える巴武蔵の墓標の背後の空を、先程の烏が飛んでいた。
闇に染まった翼を、闇から逃がすように。
僅かに残った、光へと進んでいった。
















to be continued

200 :名無しさんちゃうねん :2008/07/15(火) 00:22 ID:???
スローながらも確実に進んでるな

201 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:40 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(10)

「もうイッペン聞く。 なんでお前はゲッターに乗った?」

殆ど光の失せた中、彼の瞳がぎらぎらとした輝きを放っていた。

「ハッキリ言ってみろ。 ゲッターに乗った理由ってヤツをよ」

飢えた野獣のそれが、そうであるように。



ヒュゥゥゥゥ



風が吹いた。

崖の斜面を緩やかに撫でたそれは、いくつかの枯葉と塵を巻き上げ、
出来損ないの口笛のような音を立てながら彼等の頭髪を揺らした。
自らの眼前でその揺れが収まった時、神楽は口を開いた。



「悔…しいから……だ」




二度の途切れの孕んだ声は思いの他澄んでいた。

202 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:41 ID:???
「何もしない自分が悔しかったんだ」

はっきりとした声で神楽は続けた。

「アンタ達が、あんなになってまで戦ってる時、私は震えてた。
 よく覚えてる。 膝を突いたときの床の冷たさ、
 乾いた涙で頬っぺたが釣りあがる痛さ。
 


『何やってるんだろう』―――そう思ったよ。 こんな時に、私は……って。 だから、声が出たんだ」

言葉の中に幾つかの沈黙を挟み、すっと息を吸った。
そして彼女は、こう言った。

「『乗る』………ってさ」

ざわり、と強かな風が吹いた。

「何もやらないより、何かをやった方がいい。乗ってどうなる、って考えは無かった。 
 ……いや、あそこから逃げたかったのかもしれない。
 でも、気付いたらあそこに居たんだ。
 ――――――――――――――――――――――――だから、私は…………」







「『ゲッターに乗る』」

203 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:43 ID:???
凛とした、紅みを孕んだ声だった。

話をしている間、竜馬は何も言わなかった。
ただ黙って、神楽の話を聴いていた。

遥か後方に聳える浅間山。
その淵を満たす光は、ほぼ消えかかっていた。


踏み抜くように竜馬は一歩前へ出た。
その歩が地に触れた途端、日は更に力を弱めた。
竜馬は更に歩を進める。
二歩、三歩と、踏み抜くように。

五歩目を終えたとき、日は完全に消え失せた。
同時に彼の歩も終わりを向かえた。
彼のすぐ前。
その20センチと少し下には、神楽の黒髪と彼女の瞳があった。
単純な構図は、数時間前に神楽の背後の壁面に拳を見舞った時によく似ている。

ただ、あの時とは確実に違うことがあった。

それは、神楽の『眼』だった。
薄い膜を張ったような、濁りのある、輝きという光を失っていた仄暗い瞳が、
紅色の暖かさを裏塗りされた、暖かな色の光が、彼女の瞳に宿っていた。

滲み出た涙によって、赤く腫れていると言われれば終わりかもしれない。
ただ、その神楽の瞳は陽光と言う名の光を失っても凛とした厳かな光を持っていた。

それを見抜けないほど、竜馬の眼は節穴では無い。

204 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:43 ID:???
「いい眼だな」

そう言うと、神楽の背後へ歩を進めた。
二歩ほど進んだ所で、神楽は背を向けたまま言った。

「…なぁ、竜馬…」
「何だ」

同じく、竜馬も振り返らず、歩を進めながら返した。

「私…訓練もする、水泳部の頃より、ずっと、ずっと…だから―――
 ――――私に、空手を教えてくれ」

竜馬は、そこで歩を止めた。
下り斜面に入りかけの、森の中で。

「私に…空手を教えてくれ。 ……頼む」

『強く、なりたいんだ』

と神楽は加えた。

「俺の空手は、我武者羅な喧嘩だ
 反吐吐いても、拳の皮が破れても文句は垂れねぇって言えるか」

ぐぅと、喉に物を詰まらせたような声を神楽が出した。
ハッと不敵に一笑したところ、彼のスカーフがぐいと引かれ、今度は逆に彼が
そのような声を発した。

205 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:44 ID:???
「練習で…吐いたことはある。 皮だって、何度も破けたよ」

スカーフを掴む手とは別の左手を彼の眼前でばっと広げた。
見れば成程、手首と手相の間の皮膚の色が異なっている。
いくつかの瘡蓋の痕跡と薄く透き通る血管が破れた皮膚の再生を示唆していた。
このように暗い中では常人ならば彼女の手のはっきりとした形さえも掴めないであろうが
竜馬の眼にはそれがはっきりと映っていた。

先程よりも輝きを増した神楽の瞳も、それと同様に。

その眼光を見て、竜馬は満足げな笑みを浮かべた。

「ハッ…急に強気になりやがったな。 ―――帰るぞ」

そう言うと、竜馬の右腕が神楽の作業服の襟首をぐいと掴んだ。
そしてそのまま地面から10センチ程持ち上げ歩き出した。

「お、おい! 離せよっ!」
「やかましい! 首引っ張られたまま歩けるか!」
「別にいいじゃないか! そっちの方がお前も楽だろ!?」
「うるせえ! 俺は犬じゃねぇ! 運んでやるからネコみてぇにしてやがれ!」

ぎゃあぎゃあと、喧しいことこの上ない声を上げながら、二人は崖を降りていった。

『巴武蔵』と記された墓石とその遺品たちが、彼等を見送っていった。

206 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(10) :2008/07/19(土) 01:44 ID:???
暗い空間。
対処する人間のいない電子機器の発する僅かな光のみが、この空間で灯を放っていた。


いや、その他にも二つ、あった。
刃の様に研ぎ澄まされた目尻を持つ、鋭い線を描いた双眸。
それはまるで肉食鳥、猛禽類か。 或いは、『悪魔』か。

その瞳の持ち主が、星の光無き空を見上げた。


ここは野外ではなく屋内であった。

二つの鋭い眼光はまるで虚空を見るように上を向いていた。
だが、この瞳持ち主は、はっきりとその視線の先の物体が見えていた。

大まかな形状は勿論、細かな装甲の細部、カラーリングさえもくっきりと。
そして『彼』は、何処からか人差し指程度の大きさの筒を取り出し、左手を添えて口に加えた。
研ぎ澄まされた爪のような牙が筒に喰らい付き、もう一本の手が僅かな光によって鈍い光沢を放つ
発火器を打ち鳴らした。
ボゥ、という淡い炎が揺らめき一瞬僅かな範囲を照らした。
だらっとした長い前髪も、その例外ではない。

煙草と牙のすっと息を肺に押し込め今度はそれを一気に吐いた。
先端で盛る木漏れ火が紫煙を写し出し、彼は再び上方を見上げた。


「牝ガキの玩具にしては――――チトでかすぎるぜ」


蒼黒のスーツを纏った長身の男。
神隼人は、前髪の隙間に聳える巨体を見据え、呟いた。
















to be continued

207 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/07/19(土) 01:46 ID:???
>>201
展開のスローさはいつも反省してます。
その代わり、投稿速度を上げようと努力しております。。

208 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:26 ID:???
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この作品は暴力的・及びグロテスクな表現が含まれています!
閲覧は自己責任で!!!!!
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CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第13話 −骸−


「本日の天気は全国的に晴天、午後からは日差しが強くなる模様です。
 外出の際は日傘のご用意を。 それでは、全国の天気をお伝えします」

テレビのアナウンスが聴こえた。
歯を磨く小刻み良い音に紛れたそれは、窓から射す日光や
雀といった小鳥の鳴声と共に朝の訪れを表していた。
口内に注いだ水のカタマリを吐き出すと同時に、火花が弾けたような音が鳴った。

テレビに視線を固定したまま、細やかな手が音の根源に向かい、それから食み出した角片を取った。
焦げ付いたそれの上にバターを走らせ、寝惚けた顔の口元に運んだ。

ガリっという、口腔から鼓膜に浸透する歯切れ良い音を聞くのと同時に、彼女は気付いた。
画面の右上に映し出される、重なった二つの点で区切られた、「07:38」という数字に。

「(やばっ!)」

驚愕が閃光となって心を過ぎ、塞がれた口が声ならぬ音を上げた。
細やかな脚が乱舞のように駆け巡る。
アナウンサーが二箇所目の地区の予報を言い終える前に、どたばたという
激しい音と振動を携え、それの前を横切った。
その勢いは衰えを知らず、居間を抜け、玄関に辿り着くに至った。

しかし、玄関に付いた時には、このほんの僅かな疾走がこたえたのか、
肩で息をしながら小さめの靴をその反動で押し込んでいた。

体力は、大したことはないようだ。

209 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:27 ID:???
靴が完全に収まるのと同時に、ドアノブに手を触れた。
手首を捻る直前、彼女は息を吸い込み、そしてがばっと後を振り返り、叫んだ。

「いってきまーっす!!」

底抜けの明るさを持った、少女の声。
滝野智。
たこさんウインナーのようなくせっ毛と大きな瞳を携えた彼女の、
その特徴的な高い声は、遠く離れても楽々と聴こえるだろう。

しかし、返事は無かった。
声の反響が消えた奥で、付けっぱなしのテレビの音声だけが彼女の声に応えていた。

「…ちぇっ」

つまらなそうに呟き、ドアを開いた。
同時に、外気が室内に流れ込んだ。


「……最高気温は東京都で37度となるでしょう。日傘と、水分の補給をお忘れなく。
 二月三日、本日のお天気をお伝えしました」


最後のアナウンスが、閉じられた扉の奥で虚しい響きを上げた。

ここ最近の気候は、狂っていた。

210 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:28 ID:???
粘っこい湿気が季節外れ極まる、理不尽な温度と共に、彼女の身体を包む。
まるで巨大な何かに舐め回されているような、そんな気分だった。

「うっへ〜、あっぢぃ〜〜〜っ」

自称:暴走女子高生の彼女でも、流石にこの暑さは堪えるらしい。
涼しげな水色をした夏服の胸元をぱたぱたと前後させながら彼女は歩く。
右手は団扇を模したように頬の辺りを扇いでいた。
しかし悲しいかな、その行為は余計に体温を上昇させる原因となった。
当然といえば当然ながら、彼女の心に湧いたのは、憤慨では無かった。

「太陽のばかやろー!!」

くそ暑い陽光を注ぐ太陽に向かって、智は叫んだ。
この空の様に底抜けで、太陽のような明るさで放ったそれは、天に届いただろうか。
彼女のテンションの高さは、最早一種の武器である。
しかしながら、体力と言う残弾はある。
精一杯の声で放ったそれの反動は大きかった。


♥熱い溜息を落し、淡々と歩きに徹することにした。
仮にも自分は、遅刻寸前の身なのだ、と心の奥で念を押して。

ぽつぽつと歩いていると、様々な考えが湧いてくる。
友人との他愛ない会話。
思い出すのも嫌な、今後の定期試験の日程。
授業中の居眠りの中で見た、おぼろげな記憶となった夢の続きなど。

211 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:31 ID:???
思考を巡らせると、意識とはほぼ無関係に動かしていた足が何かに触れた。
考えを中断し足元を見ると、薄汚れたサッカーボールがあった。
空気の抜けかけたそれはまるで毬(まり)のような柔らかさで、
ぐにゃっとした曲線を描いて、彼女が蹴り飛ばすまでも無く傍を離れた。

「(…どこかの子供の、カナ?)」

そのまま立ち去ろうとした智は、足を止めた。
そして先程のサッカーボールの動きを目で追った。
それは相変わらずぐにゃぐにゃという情けない動きをしながら、
やがて電柱にもたれ掛かる様にして静止した。



彼女はもう一つ、ある固有の存在を頭に浮かべた。
亀の甲羅にサッカーボールの模様をはりつけたような、巨人の顔。

血の様な色を塗りたくられた装甲。
角張った頭部から左右に伸びた頭角。
炎の様に渦巻いた翼を纏い空を駆け、振り上げた戦斧の切っ先を仇敵へと見舞う。

鬼がいるとすれば、あれがまさにそうだろう。
しかも、ただの鬼ではない。
変幻自在の姿を携え、地獄から這い上がってきた鬼神。

それが、昆虫のような、醜悪な怪物どもと、互いを喰い合う殺戮を繰り広げる。
それこそまるで夢を見ているような様だった。
夢と言っても、とびっきりの悪夢を。

明日は授業中、一睡もしないと誓う。
だから、この悪夢から目を覚まして欲しい。

もしも願えるなら、そう願うだろう。


忘れることはできない、怖さを味わった。
同時にもう二つ、忘れられない存在がある。

212 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:32 ID:???
あの日から、自分の前から姿を消した二人の友人。
神楽茜、流竜馬の姿を、あの日から見ていない。

「……あいつら、どうしてるかなぁ」

一歩歩くたびに、二人がいた時の記憶が蘇る。
よく、バカな話をしていたのを覚えている。
神楽とは思い出すまでもなく、竜馬とも、ほぼ変わりない会話をしていた。
通常の会話ならともかく、あんな風に話をできた男子が、他にいただろうか。


「(あいつ、不思議な奴だったなぁ……)」


歩みを進めていたその時、ぞわり、という悪寒を彼女は感じた。
彼女の背中を指でなぞるように脳髄に響いたそれに、
大きな目は悪寒に歪み、その根源を目で追った。

悪寒は自分の左方向から右肩に抜けていくような感覚だった。
その方向に目をやると、そこには薄暗い闇を湛えた裏路地が、小さな口を開けていた。
恐る恐る、そちらに手を伸ばすと細い指の先端が冷気を感じた。

家と家の隙間を覆う、半ば雑草と化した木や葉っぱ、古びた物置や
食み出した屋根などによってできた天然の屋根が太陽光を遮り、
冷ややかな空間を作っていた。
悪寒の正体は、これである。

213 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:33 ID:???
ふぅ、と智は軽く息を吐いた。
彼女としては、霊的な何かでも期待していたのだろうか。

望むことならばこの冷ややかな空間に身を預けていたいものの、残念ながら
この裏路地は狭すぎる。
移動用として利用できるのは、猫ぐらいのものだろう。
そう思って立ち去ろうとした時足元で、「ぴちゃっ」、という音が弾けた。

「!?」

後ずさりした彼女の「足跡」の先端には、色が付いていた。

「な、何だよ、コレ!?」

地面に擦れて付いたその色は『紅』であり、その色の濃さは
飲料水のそれを遥かに越えていた。
恐る恐る、彼女は再び路地と向き合った。
そして身を屈め、先程の音の根源を見つめた。



見なきゃ良かった。

そう思ったのは、耳元で醜い羽音が響くのと同時だった。

214 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:35 ID:???
冷気に満ちた裏路地の入り口に置かれた、「カタマリ」。
色を想像をするまでもない。
カタマリを囲うように、薄べったく広がった液体の中にある
それは、全体の半ば程度の場所から分けられ、絶命している猫だった。

断面図から食み出した部分で、何かが動くのが見えた。
うじょうじょと動き回るそれは、このくそ暑さの中で成長した蛆だった。

「うわぁあっ!?!!」

醜悪な光景に、彼女の大きな眼の中で瞳孔が狭まった。
屈んだ体勢から背中向きに倒れるような形で、智は背面に下がった。

すると、その振動と共に、猫の骸がぞわっと揺れた。

その揺れの根源より、黒く醜いカタマリが、いくつもいくつも飛び出した。
醜い羽音を舞い上げたそれは、蛆の成長した姿である蝿の群れだった。
一つ一つでは小さい蝿が、まるで寄り添う魚の群れの様に智の眼前へと飛び出した。

「うわぁああああ!!??!!??」

半ば地面に置いていた鞄を右手で払った。
隊列を崩された蝿は散開し羽音を撒き散らしながら飛び回る。

「こ、こっち来るなぁっ!!」

手と鞄、両方を振り回し、蝿の群れを少しでも追い遣ろうとする智。
倒れこんでいた体勢を立て直し、智は目的地に向かってよたよたと立ち上がった。
そして、不気味さからくる悪寒を払うように、一心に駆けた。

215 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第13話 −骸−(1)   :2008/08/01(金) 03:37 ID:???
蝿の群れは、それを滑稽なものと嘲笑うかのように、自分達にとってこの上ない
馳走である猫の骸へと戻っていった。



蛆と蝿に身を啄ばまれる猫の骸。
その小さな眼窩から食み出し、蛆を纏わせた小さな眼球は、走り去る智の姿を僅かな光の中で写していた。
水でも、血液でもない、ぬるりとした溶液の残る光の奥。

腐った干しぶどうのように、濁った色でしぼんだそれに映る智の後姿は、
壊れた人形の様に、動きと姿を歪ませていた。

















to be continued

216 :下駄 :2008/08/01(金) 03:40 ID:???
>>210
で変なハートがありますが、「♥」を入力するとああなるようです。
あそこは「ハァ、と」と解釈していただければ幸いです。

217 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/08/13(水) 23:59 ID:???
>>216
乙です。智は災難ですなぁ

218 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:03 ID:???
基地に着いた時には他のメンバーは既に制服に着替えていた。

「何だ、もう来てるのか。で、一体何が起きたんだ?」
「映像を見てもらえば早いわね」
着いたよつばに映像を見るように促す恵那。
そこに映ったのは一隻の円盤であった。どうやらこの円盤が地球に侵入したらしい。

「ポイントを割り出した結果、この円盤が出たのは南会津みたいね」
みるちーが手元のスイッチで地図を映し出し、ポイントを割り出す。目印の場所は赤く点滅していた。

「この円盤を探し出せばいいのか?」
「問題はこの後なの」
よつばは今にも出撃しようとしたが、ゆかの言葉で向き直った。
そして直後に映った映像ではもう一体の円盤が現れたのだ。
その円盤は出現するなり、先に現れた円盤を、発せられた白いビームで打ち落としてしまった。
フラフラとゆっくりと落ちていく円盤。

「おいこれって仲間割れじゃないのか?」
「それか敵対していて、片方が追われてるってとこかな?」
みうらとあずさでそれぞれの見解が異なっていた。
打ち落とされた円盤はそのままフラフラと森の中へと墜落し、爆発炎上する。
そして打ち落とした円盤も森の中へと侵入する。
そこで映像は円盤を見失い、終了した。

「以上の通り、南会津に現れた侵入者の調査が私達の目的よ。そして可能なら、
追われている方の宇宙人を救出する事。これが私達に課せられた使命よ。さあTEAM HOLY出動するわよ」
「了解!」

「ブルーエクレール発進します!」
恵那専用機体『ブルーエクレール』が先陣を切る。

「ホワイトトルネード、出るぜ」
「あたしも一緒だから心配いらないな」
みうらはよつばと一緒にホワイトルネードに乗り込んだ。

219 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:05 ID:???
「クリムゾンフレア、結城あずさ出撃します!」
「同じく木村澪、出ます!」
「堀江沙奈、行きます!」
クリムゾンフレアにも前回と同じ顔ぶれが乗っていた。
3機の機体は瞬時にして、現場にたどり着いた。
そこには追われている宇宙人が乗っていた円盤が無残に大破していたのだった。

「あ、あれ見て!」
沙奈が指差した方向には、追っていた方の円盤が何かに向かって地上に攻撃を仕掛けているところだった。

「人だ!」
あずさが下を見ると、それが人間である事に気づいた。恐らく女性であろう。
その女性に円盤は執拗に攻撃を仕掛ける。女性の近くで何回も爆発が起き、女性は地面に倒れこんだ。

「みんな、あの人を助けるわよ!」
「はい!」
恵那の指令に全員素直に従った。円盤の背後からレーザー攻撃を見舞う。
するとその円盤に効いたらしく、やや高度が下がる。
円盤はこちらの存在に気づき、向きをこちらに変え、ミサイルを放ってくる。

「おっと危ない!」
ギリギリの所で回避するHOLY。

「沙奈、澪!分離して一気にかたをつけるわよ!」
「分かったよあずさちゃん!」
「こっちも了解」
あずさの指示で、クリムゾンフレアは三機に分離する。
あずさの乗る1号機は正面から、沙奈と澪の乗る2号機と3号機は左右からレーザーで攻撃する。
その攻撃が命中した円盤は高度を落とし森に突っ込みそうになる。
だが、地面スレスレで再び高度を保ちながら、浮上してきた。

「あたし達も続こうぜよつば!」
「おうよ!」
今度はホワイトトルネードに乗るみうらとよつばが浮上してきた円盤に攻撃を仕掛ける。

220 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:06 ID:???
正面から攻撃を受けた円盤はバランスを崩し、高度が不安定となった。

「逃がさないわよ!」
とどめに恵那の乗るブルーエクレールが真上から円盤にレーザーを叩き込んだ。
これによって円盤はついに墜落した。
しかし、その刹那中から人間らしきものが円盤から脱出し、地上に降り立つ。
円盤は墜落した後に、爆発大炎上し、跡形もなくなった。

「みんな、着陸して追われている方の宇宙人を助けるわよ」
「了解!」
恵那達は機体を降下させて、着陸させる。件の宇宙人は逃げようとせずに、ゆっくりとターゲットと思われる女性に近づいている。

「あたし達、地球人とそっくりだ」
着陸して現場に駆けつけたよつばが最初に放った言葉だった。
彼女の言うとおり両者共地球人とまったくと言っていいほど地球人と似たような外見をしていたのだ。
そしてどちらも女性、それも美人であり、巨乳であった。

「そこまでよ!無駄な抵抗はやめておとなしく投降しなさい」
恵那は相手の襲いかかろうとする宇宙人に警告を発する。

「ちっ!」
分が悪いと判断したのか、女はその場から脱兎のごとく走り出す。

「あの女!逃げやがった!」
「追うわよ!私とみうらちゃんとよつばちゃんで追うから、三人はこの人を保護して!」
「了解!」
「よーし、絶対とっ捕まえてやる!」
こうして襲撃者を追うグループと被害に遭った宇宙人を保護するグループとに分かれて行動を開始した。

「いたぞ、あそこだ!」
追跡を始めた三人はほどなくして逃げる女を見つける事に成功した。
南会津の自然に覆われた道を苦もなくその女は走り続ける。
一度だけ、女はこちらを振り向いた後に再び向き直って走る。
その時によつばはある違和感を感じた。

221 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:10 ID:???
(気のせいかな?あいつが今笑ったように見えた)
しかしそれはほんの一瞬だった為に見間違いだったかもしれない。
一方のあずさ達はもう一人の宇宙人を保護していた。

「大丈夫ですか?私達の言葉がわかりますか?」
「ええ、わかります」
声をかけたのは澪だった。
返ってきた言葉は我々が使う言葉と全く同じ言語であった。
そして追われていた割には妙に落ち着いている。

(怖くはなかったのかな?)
それを見ていて沙奈はそんな思いを抱く。
それともあの状態からもう一人の宇宙人を撃退できる秘策でもあったのだろうか?
見た感じそうは思えないが。

「助けてもらって本当にありがとうございます。あなた達には感謝しています」
「いえ、当然の事をしたまでです」
感謝の気持ちを込めてお辞儀する女性の異星人。それに対してあまり表情を変えずにあずさは答えた。

(それにしても綺麗だな)
心の中で澪はそう思った。スタイルも抜群で特にそのバストはあずさや沙奈も息を飲んだ。

(何食べたら、そんな体になれるんだろ?教えてほしいな)
沙奈も決してスタイルは悪くないのだが、目の前の女性に比べるとどうしても見劣りしてしまう。

「とにかく安全な場所に避難しましょう!」
「立てますか?」
「はい、大丈夫です」
澪と沙奈が彼女に手を貸して立ち上がらせた。

「ありがとうございます」
女性は二人に笑いかける。優しく笑いかけるその顔は聖母のようだ。

「でもどうしてあんな事になっていたのですか?」
「それは・・・・・・・」
「言いづらい事なのか?」
「いいえ、そうではありません」
澪に聞かれた時は一瞬言いよどんだ女性だが、あずさに聞かれた時はハッキリと答えた。

222 :第4話 「焦燥」 ―Aパート― :2008/08/14(木) 00:14 ID:???
「私は自分の星で仲間と共に平和に暮らしていました。
しかし、突然あの円盤が現れ、私達に攻撃を仕掛けてきたのです。
武器を持たない我々には抵抗する間もなく滅ぼされてしまったのです。
しかし、私だけは何とか宇宙船で脱出する事に成功したのです。
だけど、それで諦める相手ではなく、1体が私を追ってきたのです。
私は無我夢中で逃げ、そしてこの地球へとたどり着いたのです。後は皆さんの話していた通りです」
「そんな事が・・・・・・」
「許せない」
話を聞いて、怒りを募らせるあずさと澪。しかし、あずさだけは冷静な態度を崩さないでいた。

「お礼に何か恩返しさせて下さい。何でもいたします」
「先ほども申し上げました通り、私達は当然の事をしただけです。お礼を言われる程の事はしていません」
「いえ、それでは私の気がすみません。どうかお礼をさせてください。こんな事ぐらいしか出来ませんが」
彼女がそのセリフを喋り終えるか終えないかの時、鋭い何かが彼女達に向かって飛んできた。
危険を察したあずさは二人を抱えてそれを回避した。

「どうやらそこのお人よし二人と違って、あなたは私の正体に気づいていたようね」
女の顔が先程までとはうって変わって邪悪なものとなる。

「何をするの!?」
「一体、どういうつもりですか!?」
「やっぱりあなたもあの侵略者の仲間だったのね」
突然の奇襲に動揺を隠せない沙奈と澪だが、あずさだけは違った。

「私の名前はエメノザ・トラスティーン。結城あずささん、あなたのご指摘通り侵略者よ」
声のトーンが変わり、妖艶な笑みを浮かべる彼女は手に何かを持っていた。
光り輝く鞭、それがあずさ達を狙う。

その頃よつば達が追いかけていた女は彼女達によって森に追い詰められていた。
女の目の前には木々が立ちはだかり、残り三方向もよつば達が完全に包囲している。

「追い詰めたぞ!もうお前は逃げられないぞ」
「追い詰めた?違うわね、私があなた達をここへ誘い出したのよ」
「何だと!?お前は一体何者だ」
「ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード。あなた方にとっての侵略者よ」
「ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード・・・・・・」
恵那が相手の名前を反芻する。

「向こうも今頃エメノザと戦っている頃でしょうね、あなた達TEAM HOLYは
まんまと罠に落ちたのよ」

223 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/08/14(木) 00:15 ID:???
Aパート終わり

224 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:15 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第13話 −骸−(2)


「ぜぇ…ぜぇ…っ」

小さな身体が軋み、荒い息が弾けていく。
上下に揺れる半身と同調した疲弊感を保ったまま、彼女は後ろを振り返った。

かろうじて視界が届く先の角に、まだその場所は存在している。
猫の亡骸を食い荒らす蛆と、血肉を啜る蝿の群れ。
生理的な嫌悪感を満たすには、十二分すぎる代物だった。
しかも、それが自分の眼前に広がり、多少なりとも身体に触れたとなれば、
それは不快感極まるものだろう。

忌まわしき場所が歪んで見えるのは、異常なまでのくそ暑さと疲弊による
体力の消耗だけが原因ではないようだ。

「ついてないなぁ……もう」

流れる汗が衣類に沁み込むような感覚を覚えながら、呟いた。
朝から、本当についていない。
元気一杯の声に返事は無く、身体を包むは、唾液の様に粘りつく異常気候。

そう、ついていない。

本当に、ついていない。

225 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:16 ID:???
がが…ががが……



ざらついた音がした。
出来損ないのスピーカーが、大音量で弾けた様な。
何かが何かとすれ違い、互いを破壊する音が。
砕かれ、潰れる音がした。
砕かれた物が挙げた声ならざる悲鳴は、智の鼓膜をつんざいた。

その音に、彼女は反射的に振向いた。


彼女の真横に、壁が広がった。
陽光を越えた熱を携えた『壁』は、熱気と熱波を纏い、彼女二人文程度の距離を空け、
後方へと疾駆した。

否、『飛んで』いた。

わずかに半時計状を描いて回転しているのが分かった。
それは何故か。

何故なら、それは『揺れて』いたからである。
側面から噴き上げる炎が、半時計の動きに揺れ、轟々と盛っていた。


炎と破片を散らしながら飛ぶそれは、放逐された卵が、壁にぶつかるようにして
壁面にぶち当たった。

そしてその中から、黄身ではなく白身でもなく、炎と黒煙が噴き上げた。

226 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:16 ID:???
「っ〜〜〜!?」

声にならなかった。
だが頬を一縷の汗が伝うと同時に、彼女は動いた。
何故か、恐怖心が無かった。

歩きが走りと成る前に、彼女はそこへ辿り着いた。

「うわ………」

チリチリと滾る炎が、その赤い舌を広げていた。
その上で、屑紙のようにぐしゃぐしゃになった乗用車が、地面とほぼ直角を成して
壁に突き刺さっていた。
智は車に詳しくは無かったが、何の変哲も無い車であると知覚した。
ただ、それが燃え盛る炎の中にあることを、除けば。

呆然と眺める智の前に、何かがごろんと転がり寄った。
ぶすぶすという音を立てて爛れる、車輪だった。

それの確認と同時に、彼女は覚醒した。

「救急車…!」

たどたどしい手付きで、彼女はキーを連打した。
その表情は緊迫感に彩られ、普段のおちゃらけさは微塵としてない。
119番という短い入力が、途方も無く複雑な数式のように思えた。

1119、1911、191…。

出来損ないの番号が液晶の中に刻まれていく。
何度目かの失敗を終え、彼女は頬に電話を添えた。

その時だった。

227 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:17 ID:???
車の、扉が開いた。
壁面のその身を押し当てている左の扉が、不自然なほど、自然な様子で開口した。

ひびの入った壁面をぐっと押して開いたドアを人間の腕が掴んでいると知ったのは、
炎が大きく揺らめいた刹那だった。


ガシャッ

したたかな音を立て、可愛らしいマスコット人形を携えた携帯電話が
地面に堕ちた。

電話が二度地面にぶつかる前に、少女の腕が炎の先の腕を掴んだ。

「うぐぐ……あぁっ!!」

そして彼女は渾身の力でそれを引き寄せた。
ずるり、という滑らかな摩擦音が感触として脳に響き、彼女は背中に鈍痛が走るのを感じた。

「あぐっ!」

倒れた時の反動で、僅かに首が上を向いた。
自分の、いつも心より成長を願っている二つの小丘の隙間から、うつ伏せに倒れている
人の姿が見えた。

暑さからか、袖を肘上まで捲り上げ安そうなズボンを履いたその姿は、
自分達が通学途中でもよく目にするサラリーマンと変わらなかった。

強いて言えば、袖を捲くった腕からは筋肉ではない余分な肉が食み出し、
脂肪の乗った両の腕にはバーコードさながらの体毛が生えていた。
顔は分からないものの、手を掴んだ際の脂ぎった感触からすると、
決して若くは無いだろう。

228 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:17 ID:???
起き上がろうとしたとき、智の頭に鈍痛が走った。
咄嗟の行動のため、受身の類が取れなかった。

中年男性を引き寄せた時の反動が、彼女の自重と相まって
地面に彼女を叩き伏せたのだ。

「痛たたた……ついてないな、もう」

鈍い痛みの残る根源をさすりながら、智は上体を起こした。
涙で霞む視界の奥に、ぱちぱちと弾ける炎が見えた。

「……あれ?」

視界が完全に回復する前に、彼女は気付いた。

男性が、消えている。

最後に男性の姿を見たのは、今彼女がこの情報を知覚してから20秒と無い。

また、この先の通路は、眼前で燃え盛る車と崩れた壁面によって塞がれている。
仮に移動するとすれば……。

229 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第13話 −骸−(2) :2008/09/26(金) 23:23 ID:???



ぶじゅ、ぐしゅ、ぐじゅ。




その音は、彼女の背後から、たこさんウインナー状の髪型越しに響いた。

ぐじゅ、ぶしゅ、じゅ。

その音に、智は生理的な嫌悪感を覚えた。
粘性を持った液体が噴出すような、或いはそれを掻き混ぜるような、
粘っこくて、陰湿な音。


そして彼女は、地面に身を委ねたまま、静かに背後に首を向けた。


人がいた。
その人は、立っていた。
陽光を背に、自分を見下ろしていた。


それは、「そいつ」は。

ヒトの、人間の男性の顔と。
ぶちゃっと潰れた、腐った果実のような口を持っていた。



その「口」が、腐肉に群れる蛆虫のように、ぐちゃぐちゃと蠢き、
耳まで一気にがばっと裂けた。






to be continued

230 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:31 ID:???
「覚悟はいいかしら?TEAM HOLYの皆さん」
ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルードと名乗った女の右手に
赤い棒状の武器が出現し、握られている。

「行くぞぉ!あたしは誰にも負けない!」
しかしよつばはそれに臆することなく一番に突っ込む。
手に持ったハンドガンでゼレルに狙いを定める。

「甘いわ!」
ゼレルはよつばが撃つよりも先にその武器でよつばの顔面を殴った。
その棒が彼女の鼻にクリーンヒットする。

「うっ!」
顔面を殴られたよつばは大きく吹き飛んで倒れこんだ。殴られた際の衝撃で鼻から出血もしていた。

「よつばちゃん!」
「この野郎!!よくもよつばを!」
よつばがやられたのを見て、恵那とみうらがハンドガンを取り出して同時発射する。

「甘いわね」
しかし、ゼレルは顔色一つ変えずに優雅な身のこなしで銃弾をかわしてしまった。
「やっ!」と気合の声を発すると彼女は、その棒をブーメランのように投げてきた。

「あっ!」
「っつ!!」
それは正確に銃を持つ彼女達の手に当たった。その痛みの為に彼女達は銃を落としてしまう。
そして、ゼレルの投げた棒は正確に彼女の手元に返ってきた。
一寸の狂いもない。鮮やかな棒さばきだ。

「どうしたのかしら?まさかこれで終わりとは言わないでしょうね」
ゼレルは挑発の言葉を投げかけてきた。

「当たり前だ。こんなんで終わるあたしじゃねーよ!」
よつばが立ち上がって、今度は動きながら銃を撃つ。
しかし、ゼレルはその動きを見切って、一瞬にしてよつばの懐に入り込んだ。

231 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:33 ID:???
「なっ!」
「威勢がいいのは結構だけど、それだけで勝てるほど甘くないわよ。私はね」
ゼレルは表情を変えずに、棒による突きを連続で放ってきた。
その突きをよつばは回避する事が出来ずに全段くらってしまった。

「がふっ」
再び大きく吹き飛ばされてしまったよつば。今度は後方にあった池に落ちてしまう。

「よつば!」
「よつばちゃん!!」

「向こうも始めたみたいね。さあこちらも始めましょうか」
エメノザが振るう鞭があずさ達に差し向けられる。三人は最初の一撃は何とか回避する事に成功した。

「遅いわね、それで回避したつもり?」
しかし、エメノザはすぐさま第二撃を振るってきた。

「危ない澪ちゃん!」
その鞭は澪に対してふるわれたものだったが、沙奈が咄嗟にかばうことで澪は事なきをえた。
しかしそれと引き換えにに沙奈がまともに攻撃を受ける事となってしまう。

「きゃああああ!!」
攻撃を受けた沙奈の体から、ビリビリと電流が流れだした。
その一撃によって沙奈は悲鳴をあげて気絶してしまうのだった。

「あら?これで気絶しちゃうなんて地球人にはこのサンダーウィップはきつかったかしら?」
気絶した沙奈を見て嘲り笑うエメノザ。

「許さない!よくも沙奈を!」
それを見たあずさが、銃を構える。だが、撃つより先にサンダーウィップがあずさの体を捕らえた。
この武器に拘束され、身動きがとれなくなったあずさ。

「サンダーウィップの味をその体でもって味わってみなさい」
そこから電流が流し込まれる。

232 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:36 ID:???
「あああああああ!!」
大きな苦悶の声をあげて、あずさは崩れ落ちる。

「さて、残るはあなただけね。じっくりといたぶってあげるわ」
「あ……」
澪は逃げようとするが、すくみ上がってしまい動けなかった。
声を絞り出すのがやっとだった。
そんな澪を見て、エメノザはとても口元を不気味に歪める。とても残忍な笑みだ。
エメノザのサンダーウィップが澪に振り下ろされる。

「きゃあああああ!!」
為す術もなく、澪はその一撃をくらい悲鳴をあげる。

「安心しなさい。他の二人と違ってあなたへの一撃は出力を弱めにしてあるから。
あなたのその怯えた表情たまらないわ。私にもっとその顔を見せて」
恍惚とした表情を浮かべながらエメノザはサンダーウィップで澪の体を叩いた。

(こ、この人普通じゃない)
鞭で打たれながら痛みと共に狂気じみた目で攻撃してくるエメノザに澪はかつてない恐怖を感じた。
痛い、怖い、逃げたしたい!
彼女の頭の中はエメノザに対する恐怖で支配されていた。
彼女は恐怖のあまり涙すら流していた。
そしてエメノザはそんな澪を見てさらに興奮して鞭をふるってくるのだった。
一方のみうらと恵那もゼレルに応戦するが、
再び撃った銃弾はゼレルが棒を高速回転させる事でそれらを叩き落としてしまう。
そして再びその昆を再び二人に伸ばしてくる。
みうらは後ろに下がって、恵那は上に飛び上がってそれを回避する事にした。

(大丈夫、もう一歩下がればこの棒のリーチをギリギリ外れる)
そう判断したみうらだったが、ゼレルの昆は思わぬ形で二人に襲いかかってきた。
何と三本に分割されて襲いかかってきたのだ。

「な!?う!!」
思わぬ攻撃にみうらは回避しきれずにそのまま胴にクリチィカルヒットさせる羽目に。
ずしりと重い衝撃がみうらの体に伝わり、倒れこむ。

「三節昆!?」

233 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 02:44 ID:???
「その通り。そして飛んだのは失敗だったわね。隙だらけよ」
ゼレルは上空に飛んだ恵那に対して三節昆を伸ばしてきた。

「ぐっ!」
とっさに体を捻って胸への一撃は避けたものの、それでも背中に三節昆の一撃をくらってしまった。
くぐもった声をあげて倒れこむ恵那。

「みうらちゃん!恵那ちゃん!」
「こっちもまずいみたい。澪ちゃんが。沙奈ちゃんとあずさちゃんも」
HOLY基地のモニターにはそれぞれの戦いが映されており、劣勢である事は誰の目にも明らかであった。
いてもたってもいられなくなり、みるちーは飛び出そうとする。

「待ってみるちー!どこへ行くつもり!?」
すかさずゆかが制止する。

「決まってるじゃん!みんなを助けにいくんだよ!」
「待って!何の対策もしないで飛び出すなんて危険よ!」
「でもこのまま黙って見過ごす事なんて出来ない!」
しかし、みるちーはゆかの制止を振り切り飛び出してしまう。

「ちょっとみるちー!もう!」
みるちーが飛び出した後、しばらくその場でどうするか悩んでいたゆかだったが、
モニターで苦しむ仲間達を見て放っておけなかったのか基地を後にする。

「あなた達にいいのを見せてあげる。こんな事も出来るのよ」
ゼレルは淡々と説明すると、何かを胸元から取り出して、三節昆につける。
すると三節昆が真っ赤な炎に包まれ燃えだした。どうやら先ほど出したものは発火装置らしい。

「何だか、昔智とやった格闘ゲームにあんたみたいなのが出てきたのを思い出したよ」
こんな状況だというのに、みうらは智と遊んでいた時の事を思い出した。
あの時の智は無邪気にはしゃいでいたっけ。

「そう。それは光栄ね。でもこれはゲームではなく現実よ。いくわよ、ファイヤーエレメンタル!」

234 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 03:17 ID:???
ゼレルの棒から火炎がみうらと恵那目がけて放たれる。みうらは恵那を抱えつつ、かろうじてかわした。
外れた火炎は後ろの木々に当たり激しく燃え盛った。
数秒としないうちに燃え尽き、黒焦げになった樹木が無残に姿を曝している。

「恵那、大丈夫か!?」
「う、うん!何とか」
「もう限界かしら?意外と手ごたえがないのね」
ゼレルの瞳には明らかに失望の色が混じっていた。
その時、後ろから銃弾が飛んできてゼレルの脇をかすめた。

「う、動かないで!動いたら撃つ!助けにきたよ恵那ちゃん、みうらちゃん!」
振り返るとそこには銃を構えたみるちーがいた。しかし、その手に持つ銃は震えている。
無理もない。これが彼女にとって初めての実戦になるのだから。緊張するなと言う方が無理だ。

「援軍到着らしいけれど、どうやらこの三人以上に期待できそうもないわね。
冷静さを失って私に勝てるほど甘くはないわよ」
「みるちー、駄目だ、逃げるんだ!」
「みるちーさん!」
「無駄よ、あなたは私から逃げられない。いえあなた達ね」
ゼレルは飛び上がった後に、勢いよく棒を地面に叩きつける。
すると、そこから衝撃波が発生して、三人に襲いかかった。

「デストロイストームって名前よ」
「うわあああ!」
「きゃああああ!」
その衝撃波に巻き込まれ、三人は大きく吹き飛ばされた。
よつばのように池に落ちる事はなかったが、恵那とみうらは木々にぶつかり、
みるちーも地面にうつ伏せに倒れていた。

「えい!」
「え?くっ!?」
一方でエメノザの方でもゆかが助けに入っていた。
エメノザに対して、ゆかは横から体当たりしてエメノザを倒れさせた。
エメノザの体重がそれほどないからであろう。
予期せぬ攻撃だったことも大きい。

これによって澪がサンダーウィップの猛威から解放されたものの、彼女はぐったりしていた。

「澪ちゃん、しっかりして!澪ちゃん!」
体を揺すってみると反応があったのでまだ生きている事は間違いない。
安堵するゆか。
だが、目の前にはエメノザが悠然と立ちはだかる。

「私の楽しみを邪魔するなんていけない子。次はあなたに私の相手をしてもらうわよ」

235 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 03:21 ID:???
新しい玩具を見つけたと言わんばかりに目を輝かせるエメノザ。
サンダーウィップがゆかを狙う!
ゆかはそれに合わせてサンダーウィップを持っている右手を狙って発砲する。
持っている武器を撃ち落として敵を無力化させようというのだ。
先程の体当たりで倒れる事からも、相手は格闘戦を得意としていないだろう。
武器さえ奪ってしまえば、勝ち目はある。ゆかはそう踏んだのだ。

しかし、無情にも銃はエメノザの手をかすりこそしたものの、
武器を落とすまでには至らず、ゆかはサンダーウィップの手痛い反撃を受けてしまう。

「うあっ!そんな」
体中に電撃が走り、ゆかは地面に倒れこんだ。

「残念だったわね、着眼点は良かったのだけれど、いきなり実戦で当てようだなんてムシが良すぎね。
さあ、あなたはどんな悲鳴を聞かせてくれるのかしら?さっきの子みたいに
怯えて涙を流してくれると最高だわ」
エメノザは不敵に笑って再び、鞭を振るおうとする。その目にゆかも恐怖を覚えた。
完全に気圧されてしまい、動けなくなっていた。

「そうはさせない!」
「ゆかちゃんから離れて!」
そこに気絶から立ち直ったあずさと沙奈がゆかを庇うようにエメノザの前に立つ。

「あら?ようやくお目覚め?でも悪いけどあなた達にはもう一度眠ってもらうわ」
しかし、エメノザはそんな二人を嘲笑った。
そしてサンダーウィップを薙ぎ払うように振ってきた。
三人とも素早く繰り出される攻撃に反応出来ず、電撃の餌食となる。

「きゃあ!」
「くっ」
ゆかと沙奈が悲鳴をあげて倒れこんだ。胸のあたりにバチバチと電撃による痛みが走る。
が、あずさだけは何とかその場に踏みとどまった。

「よく耐えたわね。でもそれに何度耐えられるかしらね?」
(人を人とも思ってない。最低な奴だ)
ゆかや澪と違い、あずさはエメノザに対しては嫌悪感で一杯になった。

236 :第4話  「焦燥」ーBパート― :2008/12/22(月) 03:24 ID:???
『よつば、よつば』
誰かがよつばを呼ぶ。その声でよつばは目覚め、慌てて地上に上がりでる。

「セイバー。あたしは気絶していたのか?」
『そうだ、そして今、君の仲間達は危機に瀕している』
「何だって!?」
セイバーの言葉を聞き、よつばは周囲を見渡す。
するとゼレルによって恵那、みうら、みるちーが、
エメノザによって澪、沙奈、ゆか、あずさが追い詰められていた。

「みんな!」
よつばは慌てて駆けつけようとするが、セイバーはそれを制止する。

『今の君ではこの状況を覆すのは難しい』
「だったらあんたの力を貸してくれ!」
よつばはそう言って変身アイテムスターフラッシャーを胸から取り出す。
セイバーは返事こそしなかったものの、そのスターフラッシャーが光り輝く事でその答えは十分だろう。
今回よつばはセイバーの名前を叫ばずに変身することになる。

まばゆい光がよつばを包み込み、その姿をウルトラマンセイバーへと変える。
相手が人間大の為か、セイバーも巨大化せずに等身大の姿だ。

「はっ!」
変身したセイバーはまず、ゼレルに対して光線技を出して牽制する。
セイバーショットと呼ばれる楔型の光弾だ。

「ウルトラマンセイバー!まさかあたなが現れるとはね」
ゼレルはセイバー出現に驚くも、すぐに表情を戻す。

「セイバー、来てくれたんだ」
恵那達はセイバーの姿を見て安堵する。

「だっ!」
今度はエメノザの方に先程と同様の光線を放ち、彼女のサンダーウィップを落とさせる。

「あら、あなたの方から出向いてくれるなんて好都合だわウルトラマンセイバー」
エメノザはゼレルと対照的に全く動揺しなかった。

Cパートへ続く

237 ::第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:03 ID:???
「なかなか面白い事をしているな。俺も混ぜてもらおうか」
突然、どこからともなく低い声が響く。

「誰だ!?」
全員が声のした方向を向くと、高い木の枝の上に一人の男が立っていた。

「貴様は!?ブラッド・クライア!?」
ゼレルとエメノザは驚愕すると同時に敵意の眼差しを向ける。

(あの人は確か……)
気絶から立ち直ったあずさはかつてテロチルスとの戦いの時にいた人物である事に気づいた。
ブラッド・クライアと呼ばれた男は明らかにこちらを挑発するように、見ている。

「また会ったなゼレル、エメノザ。そして初めまして地球人並びにウルトラマンセイバー。
この俺もまた地球を狙う侵略者だ」
「わざわざこんなところに来るなんてよほど私達に殺されたいようね」
「殺す?この俺を?おいおい冗談はやめてくれ」
エメノザの発言にも眉ひとつ動かさずに、手をこちらにかざすと、光弾が発射された。
それはセイバーとゼレル達がいる手前に着弾し、爆発する。
もう一発発射され、それらは恵那とみうらの手前で爆発した。

「きゃあ!」
「大丈夫か恵那!?」
「う、うん大丈夫」
恵那もみうらも怪我らしい怪我は負っていない。どうやら威嚇射撃だったらしい。

「貴様!」
「まあそういきりたつな。今回はお前たちと一戦交えるつもりはない。
あくまで地球人達に挨拶に来ただけだ。この俺という存在を知らしめる為にな。
この後はTEAM FLAMEにも宣戦布告をしにいくところだ。
この地球いや全宇宙はこのブラッド・クライアさまのものだという事を理解するがいい。
地球人類はもちろん、お前達も隙あらば抹殺してやろう」

言いたい事を言って彼はこの場からテレポートしていった。
直後に一体の円盤がここに姿を現した。
一角獣を思わせるデザインをしたその円盤はモノケロスと呼ばれていた。
先端は一角獣の角を思わせる程、鋭く尖っている。

238 ::第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:07 ID:???
「そいつは置土産だ。モノケロス、存分に相手をしてやれ」
ブラッド・クライアの声が最後に響き、円盤はミサイルを無差別に発射する。
それはゼレル達をも巻き込んだ。

「だっ!」
とっさにセイバーは全員を守るためにバリヤーを展開する。
恵那達の周囲に円形状のバリヤーが出現し、彼女達を守るように包み込む。

「あ、危なかった。ありがとうセイバー」
助けてもらったお礼を言う恵那。

「くっ、本当に見境ないわね。とにかくここは退くわよエメノザ!」
「分かってるわよ。でもこいつを呼んでからよ。来なさいデシモニア!」
エメノザが何か機械を取り出して、ボタンを押すと、もう一機の円盤が姿を現した。
臓器がむき出しなったオブジェに見えるそれはぐんぐんと高度を下げる。
頭頂部が刃物のように尖っており、全身が悪意の塊だった。

「うわ、何だあれ気持ち悪い」
デシモニアの造形に吐き気を催すみうら。それ程までにこの円盤のデザインは醜悪だった。
恵那も言葉こそ発しないものの不快感に顔を歪めていた。

「標的はウルトラマンセイバー、並びに地球人達よ。
余裕があればあのモノケロスも相手してあげなさい。じゃあね皆さん。せいぜい楽しんでってね」
「ワカリマシタエメノザサマ」
エメノザとゼレルもまたデシモニアとは別に飛来した宇宙船へと吸い上げられていった。
聞くものに強烈な不快感を与える高音でデシモニアは返事をする。

そして、デシモニアとモノケロスが光線の撃ち合いを始めた。お互いに敵と認識したのだろう。
さらにはそれとは別にセイバー達に照準をロックしていた。

「だあっ!」
このままの状態で戦うのは不利と判断したのか、セイバーは腕をクロスさせた後に巨大化する。
モノケロスもデシモニアもそれを見てまずはセイバーを倒すべきと判断したのか、
左右から挟み撃ちしてきた。
セイバーに狙いを定めたモノケロスからミサイルが発射される。
さらにデシモニアからはその体を構成しているオブジェの小型版とも
言えるものが大量に発射された。

239 ::第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:10 ID:???
「危ないセイバー!」
みるちーが声をあげる。しかし、セイバーは発射された砲撃を回避する。
小型デシモニアの攻撃もセイバーは手と足を使い、次々と叩き落としていった。
しかし、頭頂部から発せられるビームに被弾してしまう。

「ぐおっ!」
カラータイマーのすぐ近くに当たりよろめくセイバー。
さらに後ろからモノケロスが角にあたる先端をセイバーの背中目がけてぶつけてきた。

「うっ」
うつ伏せに倒れこむセイバー。デシモニアは自分の分身とも言える小型の塊を発射する。
だが、それはセイバーにではなく恵那達に向けられたものだった。
大量の小型デシモニアが彼女達を狙っている。

「こっちに来るよ!」
青ざめた顔でゆかは皆に警告する。そしてモノケロスはセイバーに向かって
砲弾の雨を浴びせた。その場で膝をつくセイバー。

「澪、沙奈!しっかりして!!」
見るとあずさが二人に向かって必死に呼びかけている。
沙奈はまだ気絶しており、澪は先ほどのショックから立ち直れていないのか
震えながら頭を振っている。

「怖い、怖いよ」
とつぶやいていた。小型デシモニアはデシモニアと同じように光弾を発射してきた。
彼女達の周辺で次々と起こる。被弾こそしていないものの、このままではやられるのも時間の問題だ。

「何とか反撃しないと!」
「でも数が多すぎて、とてもじゃないけど落としきれない」
「二人を守りながらだととても厳しいわ」
恵那が反撃を試みようと提案するも、みうらの言うとおり敵は数にものを言わせて攻めてくる為に、
銃を撃つ暇すら与えてもらえない。さらにあずさは沙奈と澪の二人を守りながら行動している為、より一層厳しい。
小型デシモニアは勢いを緩める事なく、光弾を連射してくるのだった。

「一体一体は弱いけど、数が多すぎてキリがない!」とみうら。

240 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:13 ID:???
「はぁっ!」
その時、モノケロスによって劣勢に立たされていたセイバーが、前転しつつも攻
撃を回避しながらこちらへやってきた。
そして、体勢を整えると同時に、手からセイバーショットと
呼ばれる楔型の光弾を発射して、小型デシモニアを次々と落としていった。
発射された光弾もすべてセイバーの手刀で叩き落されていった。

「セイバー、助かったわ」
恵那を含めてHOLYのメンバーは安心からかその場に膝をつく。

「であっ!」
セイバーはデシモニアとモノケロスに向き直るとファイティングポーズをとった。
モノケロスは先ほどセイバーにダメージを与えた先端部分で攻撃を仕掛けてきた。
だが、セイバーは今度はどっしりと腰を落とし、その一撃を両手で受け止めた。
モノケロスはなおも勢いを止めずにセイバーを吹き飛ばそうとするが、セイバーも両足を使ってグッとこらえる。
そこにデシモニアがセイバーに追い打ちをかけようと近づいてきた。

「だああああ!!」
セイバーはそれを見て、力一杯モノケロスをデシモニアの方に投げ飛ばした。
ガシャアアアアンという轟音と共に二つの飛行物体はぶつかった。
とりわけモノケロスの方がダメージが大きかったのか、どんどんと降下していく。
しかし、それでも砲撃による攻撃の手を緩めようとしない。

「いりゃあああ!」
そんなモノケロスに腕を十字に組んで放つ紫色の必殺光線ライトニングストリームだ!
それは見事に命中し、モノケロスの船体をぶち抜いた。
そしてその船体は地上に墜落して爆発する前に空中で木端微塵となるのだった。

「やった!後はデシモニアだけだ!」
みうらがガッツポーズをとる。みるちーとゆかも微笑んだ。
セイバーは続けてデシモニアにもライトニングストリームを放つが、
デシモニアは自分の体の周囲に装甲板を発生させて光線を防いでしまった。

「バリヤーですって!?」
「セイバー、負けるな!」
敵がバリヤーを使ってきた事に驚くするゆかと、セイバーにエールを送る
ゆかと対照的な反応だった。

241 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:17 ID:???
バリヤーを出現させて光線を防いだデシモニアはその場で回転しつつ、
光弾をセイバーに向かって集中攻撃してきた。

「はっ!」
しかし、セイバーも両腕を大きく広げる事でバリアーを発生させて、
デシモニアによる攻撃を防いだ。恵那達を助けたバリヤーを今度は自分自身に
張ったのだ。紫色のバリヤーがセイバーの周囲に発生する。
この事によりデシモニアは形勢不利と方向転換して逃げ出そうとする。

「おおおおおお、ゼアッ!!」
セイバーはそれを見て、手から赤い光の刃『グランセイバー』を出現させる。
そして、そのまま大きく飛び上がりデシモニアに切りつける。
グランセイバーの威力は凄まじく、デシモニアが発したバリヤーさえ無力化してしまった。
これによりデシモニアは真っ二つに切断されたのちに、地上に落下して爆発するのだった。
こうして敵の侵攻を何とか食い止める事に成功したのだった。

「……」
勝利を納める事に成功したセイバーだが、どこか割り切れないものがあった。
いつもならすぐに飛び去るのだが、今回は何を思ってかその場に留まっていた。
やがて胸のカラータイマーが青から赤に点滅を始めると、その場でその姿を消す。
そしてよつばの姿に戻るが、よつばの表情もどこか冴えない。

(勝てなかった。セイバーがいなければみんなやられていた)
それでも無事を知らせる為にみんなの前に明るく振舞って姿を現す。

「よつばちゃん!良かった、無事だったんだね!」
「まったく心配させんなよ!」
みうらと恵那がよつばの頭を軽く叩きながら無事を喜び合う。そこにみるちーとゆかも加わる。

「こっちも何とか無事。でも沙奈はまだ気絶したままだし、澪もショックの為か気を失っているわ」
二人を抱えたまま、あずさは暗い顔で伝えた。

「無理もないか。あんなに酷い目にあわされたんだから」
「というか、完敗だったね私達。あの宇宙人達に手も足も出なかった」
恵那の言葉に誰もが憂鬱な気分になる。
みうらは八つ当たりなのか、近くの石を思い切り蹴飛ばしていた。

242 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:18 ID:???
(抜群のチームワークを誇っているようだけど、もしそのチームワークを
崩されたらどうなるかな?)
出撃前に京介から投げかけられた言葉がよつばの心に重くのしかかる。
よつば自身が漠然と感じていた不安が現実のものとなったのだ。
戦力を分断されてしまったが為に、思うように戦う事が出来ずに結果、
完敗を喫する事となってしまったのだ。

「でも大丈夫だよ、私達にはウルトラマンセイバーがいるもの」
「そうね。セイバーの存在は私達にとって非常に心強い存在だもの」
「今回だって危ないところをセイバーに助けてもらったもんな」
みうらやみるちー、ゆかはセイバーの事を口にして、明るく振舞った。
その一言に光を見出したのか、沈みがちだった皆の表情が明るくなる。

「彼さえいてくれればどんな侵略者が来たってこの地球は安全ね」
「まさに彼は地球にとっての守り神だね」
あずさも澪と沙奈の二人を抱えながら笑いかける。恵那もそれに同調する。
しかしどことなく無理してそう振舞っているようにも見える。

「あ、沙奈ちゃんは私が持つわ」
「助かる」
恵那はあずさから沙奈を引き取り、背中に背負った。
沙奈の体重はそれほど重くなかった為か、恵那でもそれで歩く事が出来た。
ほどなくして澪と沙奈は眼を覚ました。

「歩けるか?澪」
「うん、ごめん」
「沙奈ちゃんは?」
「大丈夫だよ、この通り」
目覚めた二人はそれぞれ、地面に降りて自分の足で歩きだす。
しかし、幾分元気を取り戻した沙奈と異なり、澪の足取りは重い。
それはよつばも同じだった。

(セイバー、あたしはどうすればいい?あの宇宙人達に勝つにはあんたに
変身するしかないのか?答えてくれセイバー)
だが、セイバーはよつばの問いかけに何も答えてはくれなかった。
今のよつばの心を象徴するかのように、陽が落ち夜へと変化していった。
第4話  終    第5話へ続く

243 :第4話  「焦燥」ーCパート― :2009/03/03(火) 23:40 ID:???
次 回 予 告
ケムジラと呼ばれる怪獣が何者かの手により復活した!
そしてそれに呼応するかのように、かつてウルトラ四大戦士
(ジャスティス、レイ、コスモス、シェイド)を
倒した火山怪鳥バードンが驚異の復活を遂げる。
とある事により、さらなるパワーアップして……

「行け、お前の目的はウルトラマンセイバー抹殺だ!」
「怖い、怖いよ!」
エメノザによって植えつけられた恐怖心から逃げ出してしまう澪。

次 回 ウルトラマンセイバー
第5話 「バードン復活!セイバー大ピンチ」
「セイバーが燃やされてる!?」

244 :ケンドロス ◆iz2iCuGRGQ :2009/03/03(火) 23:40 ID:???
色々あってこんな遅くなってしまいました。本当にすいませんでした。

245 :27下駄 ◆FoWMLIHGkc :2009/05/24(日) 04:32 ID:???
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1243105736/
遅くなりました。
見やすくするために連載場所を移転しました。
続きはこちらからとなります。

246 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2009/11/15(日) 22:18 ID:???
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1257867148/l50
現在はこちらに移転して書いています。

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