世の中のすべての萌えるを。

■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 最新50 スレ内検索



スレッドが大きすぎます。残念ながらこれ以上は書き込めません。

あずまんがSSを発表するスレッド パート3

1 :名無しさんちゃうねん :2004/04/12(月) 01:21 ID:???
あずまんが大王のSSを投稿するスレッドです。
みなさんドシドシ投稿してください。

前スレッド
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/oosaka/1070830253/


[注意]暴力・猟奇など読み手を選ぶ内容のSSは別スレッドに投下お願いします。

501 :名無しさんちゃうねん :2004/09/01(水) 22:24 ID:???
或る昼休み。

机に向かって何かを書いている智。
それに付き合うでもなく、頬杖をついてその様子を見ている暦。

「はーいできたー。発表しマース。」
「・・・何だ突然。」
向き直って『発表』を始める智。
暦は一応返事だけ返す。というか無視したってコイツは勝手に喋る。

「えー、まずあたしが8でしょ。んであんたが2。榊ちゃんが7で神楽が4。
 ちよちゃんが1。かおりんが0。千尋が5。大阪が3か6。ホントは一人足りないけどしょーがないね。」
「は・・・? 何の話?」
いきなり数字を割り振られても訳が解らない。ゼロから始まる? 何が?

「ほら、こないだ話してたじゃん。今年の文化祭はみんなでバンドやろうって。」
「あぁ・・・まぁ、そんな話はしてたけど・・・ブラスバンドとかの事だったのか? 八人も居るなんて。」
「うんにゃ。フツーの『バンド』だよ。ロキンローの。」
「・・・?」
益々訳の解らないといった表情で智を見る暦。

「よろしい。各パートを教えて進ぜよう、水原君。
 まず、かおりんがDJね。ちよちゃんはドラム・・・はムリだからドラムマシン。よみはベース。
 大阪がパーカッション。神楽と榊ちゃんがギター。千尋がサンプルとシステム。ほんであたしがボーカルと。」
有るパート全てを寄せ集めた様な大所帯の編成だ。
「・・・そんなんで何する気だ?」
至極真っ当な暦の問いに、智は一枚のCDを取り出して見せる。
「コレ、やろうと思うのよ。」

ジャケットに写る、変なマスクを被った九人の集団。

「slipknot・・・?」













参考・某スレとか。

502 :名無しさんちゃうねん :2004/09/02(木) 20:40 ID:mQiu5C02
おつあげ

503 :名無しさんちゃうねん :2004/09/03(金) 18:26 ID:.nluzmNg
>>501乙。コアだなw

急に人いなくなったなぁ。
みんな会議室行ってんのか?

504 :名無しさんちゃうねん :2004/09/03(金) 19:14 ID:???
きっとみんな夏休みの宿題残務処理〜。

505 :名無しさんちゃうねん :2004/09/03(金) 19:22 ID:???
職業自由人なので宿題なんかありません。

てか>>501SIC氏?でしょ?
謎いっことけた。

506 :抱きしめたい(1/10) :2004/09/03(金) 20:39 ID:???
 榊さんの答えは、「NO」だった。
「ごめん…なさい……気持ちはうれしいんだけど、私には応えられそうに無い……」
 予想はしていた。おそらく、彼女はそんな答えを返すと思っていた。そもそも、それ
をはっきりさせようとしての告白だったのだ。でも、心の底で、かすかな期待を抱いて
いたのも事実だった。
 私は、慌てて言う。
「そう……だよね、やっぱり。あ、ごめんね榊さん。忙しいのに、急に呼び出して変な
こと言って……」
「いや……」
 彼女は、それだけ言うと、言葉を途切れさせた。
 思い切って連れ出した喫茶店の片隅。2人掛けのテーブル。私の目の前で、テーブル
に視線を落とし黙り込む榊さん。
 注文したコーヒーは、彼女も私も口をつけないまま、次第に冷めていった。
「……」
「……」
 何か言わなくては。
 心は焦るのだが、言葉が浮かんで来ない。
 予想していたこととは言え、現実を突きつけられるのはショックだった。勇気を振り
絞っての告白。それが、見事なまでの玉砕に終わった。
 私はこんなに好きなのに……
 だけど、これが現実なんだ。これが現実……必死になって自分に言い聞かせる。しか
し、私は無意識のうちに、目の前の現実から気持ちを引き離し、過去の思い出に逃避し
ていた……

507 :抱きしめたい(2/10) :2004/09/03(金) 20:40 ID:???
 榊さんと初めてて会ったのは、たしか桜の咲く季節だった。大学の講義はまだ始まっ
ておらず、私は特に予定もなく暇をもてあましていた。
 近所のコンビにに買い物にでも行こうと部屋を出た時。扉の前で彼女と出くわした。
 Tシャツにジーンズ姿の、背の高い女性。何よりも目立つ、腰まで伸びた長い髪。そ
して胸に抱いた、茶色の虎縞の猫。それが、私が最初に目にした姿である。
「あ……」
 お互い、相手が現れることを予想しておらず、とっさのことに反応ができない。マヌ
ケなことに2人して数秒間、無言で見詰め合っていた。

 先に我に帰ったのは榊さんだった。
「あ、あの……初めまして。今度、隣に引っ越してきた榊です……」
「ヤマモトです……」
 それだけ言うのがやっとだった。
 俗に言う、一目惚れという奴なんだろう。
 健康的で引き締まった身体つき。人に媚びて軽薄に走ったところのない、凛々しい顔
立ち。厳しそうに見えて、その中に優しさをたたえた瞳。可愛い、という表現は違う。
むしろ美しい……
 そして私の頭の中では、ひとつのことしか考えられなくなっていた。
 (抱きしめたいっ!)
 もちろん、いきなりそんなことができないことは理性でわかっている……

508 :抱きしめたい(3/10) :2004/09/03(金) 20:40 ID:???
 私が不埒な衝動と戦いながら凍り付いている間に、榊さんは話を続けた。
「すみません……こんなところで…後で、挨拶しようと思っていたんですが……」
「あ、あー、いやー、これから、お隣さんですか。お隣って言ったら、すぐ近くじゃな
いですか」
 混乱して、後から思うと訳の分からないことを言っていた。
「ところで、その猫ちゃんはお宅の?」
 私は、彼女が抱いた猫に顔を近づけて尋ねる。
「はい……マヤー、って言います」
「よろしく、マヤー」
 そう言いつつ、マヤーをなでようと手を近づけた時。

 べりっ

 一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「こらっ、マヤー! 人を引っ掻いちゃダメだって……大丈夫ですか!?」
「……え?」
「あ、あの……ちょっと待っててください……」
 榊さんは慌てて、マヤーを連れて隣の彼女の部屋に飛び込んだ。
「……痛……」
 ようやく、自分の手から血が流れていることに気がつく。どうやらマヤーに引っ掻か
れたらしい。
 私が傷口を押さえることも忘れて呆然としていると、すぐに榊さんが飛び出してきた。
「薬、つけますから……」
「え?」
「血、そんなに出てるし……」
「え? え?」
 震え気味の顔からも、蒼白な顔面からも、榊さんが動揺しているのがわかる。彼女は
いきなり私の手を取って引っ張る。いまだに事態が把握できていなかった私は、彼女の
言うがままに、榊さんの部屋に引っ張られて言った。

509 :抱きしめたい(4/10) :2004/09/03(金) 20:40 ID:???
 引かれるままに榊さんの部屋にあがりこみ、私は手当てを受けた。
「あの……本当に、すみませんでした!」
 手当てが終わると、榊さんは必死に、もう土下座でもしようという勢いで頭を下げる。
「え、いや……いいって。いきなり、なでようとしたこっちも悪いし」
「でも、うちのマヤーが怪我なんかさせてしまって……」
「大丈夫、大丈夫! 平気だから。マヤーもちょっとびっくりしただけで、敵意が無い
ことはわかってる」
 彼女を落ち着かせようと、マヤーの方を見る。
 部屋の隅。ケージに放り込まれたマヤーが、じっと私の方を睨んでいた。

『フーーーーッ!!』

 私が近寄ろうとすると、全身の毛を逆立ててうなり声を上げる。
「……」
 さすがに、敵意が無いというのは無理がある。
「ま、まあ、とにかく、心配しないで!」
 実際、血が出て大げさに見えるだけで、怪我といってもたいしたことはなかったので
ある。
 動揺して頭を下げまくる彼女を落ち着かせるべく、私はなんとか違う話題に持ってい
った。

 彼女は、私の大学の一年後輩だった。
 この4月に入学し、大学に通うために……そして、愛猫のマヤーと一緒に暮らすため
に、ペットOKのこの部屋に引っ越してきたのだった。実家の母親がアレルギーで猫が
飼えないため、マヤーはそれまで友達の家に預けていたのだという(なんで、そもそも
家で飼えないのにマヤーを飼い始めたのか? という疑問には答えてはくれなかった。
まあ、人それぞれ、あまり言いたくない事情はあるのだろう)。
 そして、引越しの後片付けもひと段落したので、預けていたマヤーを今日引き取って
きていた。ちょっと外を歩いてみようかと思って部屋を出た時に、私に出くわしたらし
い。
「まあ、何はともあれ、お隣同士仲良くやろう。よろしく、榊さん」
「よろしくお願いします……」
「よろしく、マヤー」

『フーーーーッ!!』

 相変わらず、マヤーはケージの中から私を威嚇していた。

510 :抱きしめたい(5/10) :2004/09/03(金) 20:41 ID:???
 あまり良い出会いではなかったかもしれない。
 しかし、それがきっかけで、私と榊さんはよく話すようになったのは事実である。
 大学のキャンパスや行き返りの途上はもちろんのこと。よく、私の方から「手料理が
余った」「実家から食料を送ってきた」「醤油が足りないので貸して」などといった口
実を作っては、彼女の部屋にお邪魔した。
 榊さんの方も、大学のことなどを私に相談してくれた……あいにく、私はあまり成績
が良い方ではなかったので、勉強に関しては教えられることは少なかったけれど。過去
問・過去レポがモノを言うような科目でも、彼女は生真面目に自力で対処していったの
で、先輩風を吹かそうという私の目論見は空振りに終わった。それでも、事務関係の話
や選択科目の教官の情報、サークルの評判、お勧めのお店の場所などといった方面では
役に立てたので、なんとか面目は保てたはずだ。
 そういった話をしつつ、いつもそのうちどうでもいい雑談で盛り上がった。元々、榊
さんはあまり雄弁なほうではないので、喋るのはもっぱら私だったけれど。

 ただ、彼女の部屋を尋ねて行くたびに、マヤーから敵意をぶつけられるのは困りもの
だった。
 どういうわけか、完全に嫌われてしまったらしい。何度会っても何ヶ月たっても、全
く私に慣れようとしない。優しくなでようとしても、マヤーは私が近づくと冷静さを失
い、爪を立てて飛び掛ってくる。そのたび、いつも榊さんは慌ててマヤーをケージに入
れたり別の部屋に追い込んだりしていた。

511 :抱きしめたい(6/10) :2004/09/03(金) 20:41 ID:???
 そのままでも、充分に楽しかった。ただ姿を見ているだけでも、近くで過ごしている
だけでも心がやすらいだ。
 でも、それは自分への言い訳だったのかもしれない。口実を作って榊さんの部屋にお
邪魔するたびに、いつも心の中では、絶えずひとつの欲求がうずまいていた。
 (抱きしめたい!)
 自分の意志を彼女に伝えるのは、簡単なことだ。ひとこと言えばすむ。しかし、それ
をせずにズルズルと同じような状態を続けていたのは、やはり現実を見つめるのが怖か
ったからだ。もちろん、何もしなければ何も進展しないのはわかっている。しかし、一
度、口に出してから断られてしまうと、すべてが終わってしまうような気がした。

 一度ならず、欲求に負けそうになったこともある。
 そんな私の気持ちを敏感に察するのか。マヤーはそのたび、私に向かって威嚇する声
を上げる。私はいつも、それを見て思いとどまっていた。

 出会いから半年。
 いつものように「ついうっかり作りすぎた料理」(嘘だ。口実を作るのために、わざ
と多めに作った)のおすそわけと言って彼女の部屋にあがりこみ、ついでに持って行っ
た缶ビールを2人で飲みながら、またどうでもいいような話に興じていた。
 ふと、会話が途切れた時。榊さんが言った。
「自分は……運がいいと思う……」
「え? 何いきなり」
「私、口下手だし……昔から、人づきあいって苦手だった……」

512 :抱きしめたい(7/10) :2004/09/03(金) 20:42 ID:???
 アルコールの力もあったのかもしれない。普段、あまり喋らない彼女にしては珍しく、
語り続けた。
 高校に入っても、友達ができるか不安だった。でも、3年間を通じて、親しい友達も
できた。こんな自分に素晴らしい仲間ができ、そしてマヤーにも出会えたのは、ものす
ごく運がいいと思う。すべてに感謝したい、と。
「それに……大学入ったら、ヤマモトさんにも知り合えたし……」
「え? どういうこと?」
「隣がヤマモトさんみたいな、親切で頼りになる人でよかった……」
 その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが変わった。
 明らかに、私は下心を持って榊さんに近づいている。現に、彼女の話を聞いていた間
も、頭の中で「抱きしめたい!」という欲求が、ずっと渦巻いていた。そんな自分を、
何も疑わずに信じている榊さん……
 自分が、とんでもない極悪人に思えてきた。
 彼女の信頼を裏切っている。そんな自分が、たまらなく恥ずかしくなった。
 さっきまでは楽しいひとときだったのに、彼女と顔を合わせているのが、たちまち辛
くなってきた。
「ごめん……ちょっと用事を思い出した」
 私は、それだけ言って立ち上がった。
「え? ヤマモトさん?」
「今日も長々とお邪魔してごめん」
 その場にいるのがいたたまれない。あとは逃げるようにして、隣の自分の部屋に駆け
込んだ。

513 :抱きしめたい(8/10) :2004/09/03(金) 20:42 ID:???
 ひとりになると、涙がこぼれてきた。
「私は卑怯者だ……」
 口ではそう言って見ても、頭の中で渦巻く欲求は、前にも増して一層激しくなった。
 (抱きしめたい!)(抱きしめたい!)(抱きしめたい!)(抱きしめたい!)(抱
きしめたい!)……

 思い切って告白しよう。
 一度はそう決意するものの、心の片隅で「幸い、彼女は自分に好意を持ってるみたい
だし」などと考えている自分に気づく。
 そんな計算ずくで榊さんを動かそうとしている自分を見て、また自己嫌悪に落ちてゆ
く。
 だったら止めよう。
 そう思っても、自己嫌悪している自分を見て、「悩んでいる自分に酔っている自分」
を感じて、また一層深い自己嫌悪に陥る。果てしの無い自己嫌悪の無限スパイラル……

 一晩さんざん悩んだ末、私は結論を出した。

 やっぱり、すべてを告白しよう。

 榊さんが私を信頼してくれているのなら、隠し事を続けるのはフェアじゃない。
 私の気持ちを言おう。
 抱いている下心も、正直に伝えよう。
 それで彼女が私を軽蔑するのなら、それは仕方が無い。
 それに、いつまでもこんなこと続けていてもしょうがない。

 彼女の部屋では、また「抱きしめたい!」という思いが強くなる。
 話すなら、別の場所の方がいい。
 そう思った私は、次の日キャンパスで彼女を見つけると、なかば強引に近くの喫茶店
に連れ出した。
 そして、自分の気持ちを正直に、すべて告白した……

514 :抱きしめたい(9/10) :2004/09/03(金) 20:43 ID:???
「あの……ヤマモトさん?」
 榊さんの声で、私の意識は過去の思い出から現実に引き戻された。
 ふと気がつくと、彼女はコーヒーをすっかり飲み終えていた。居心地が悪そうに私を
見ている。
「ごめん。ちょっとボーッとしてた……
 でも、ハッキリ言ってくれてありがとう。ここのお代は、迷惑料にこっちがおごるか
ら」
「いや、そんな……」
「いいから。遠慮しないで」
 無理に笑顔を作って伝票を取り、私もコーヒーをすすった。
 すっかり冷めて、苦いばっかりだ。
「本当にごめんなさいね、榊さん。私のこと、変な女だと思ったでしょ」
「決して、そんな……」
「迷惑だったら、もう二度とあなたには近づかないわ」
「そ、そんなことありません……」
 榊さんは、慌てて言葉を継ぐ。
「ヤマモトさんには親切にしてもらって……私にとってお姉さんみたいな人で……」
 その信頼が、私には痛かった。

 私は告白を続けた。
「私って……昔からこうなのよ。男とかには全然興味なくって。だからこの歳になって
も、まっとうな恋愛とかもしたことなくて……こんな女、やっぱり変態なのかな……」
 榊さんが必死にフォローする。
「それは……人それぞれだし……」
「はあ。なんであんなに一人で悶々としてたんだろ。カミングアウトしたら、なんかス
ッキリしちゃった」
「……」
「……」
 しばし気まずい沈黙が続いた後。
 ふと榊さんが思いついたように言った。
「あの……写真……で、どうですか?」
「?」
「その…希望は叶えてあげられないけど……写真を撮って渡すだけなら……ヤマモトさ
んは、それをいつでも見ることができれば……」
 一も二も無く、私は彼女の申し出に飛びついた。

515 :抱きしめたい(10/10) :2004/09/03(金) 20:43 ID:???
 数日後。
 彼女は、約束どおり写真を撮って私にプレゼントしてくれた。
 私は自分の部屋に帰ると、早速その写真の束を広げた。
「ああ……素敵よ、マヤー……」
 私には凶暴なマヤーも、榊さん一人が相手だと大人しいようだ。
 静かに眠るマヤー。食事をするマヤー。おもちゃと遊ぶマヤー。エトセトラ、エトセ
トラ……とにかく、マヤーの様々な姿が写っている。私は時が立つのも忘れて、恍惚と
して写真に見入った。

(健康的で引き締まった身体つき。人に媚びて軽薄に走ったところのない、凛々しい顔
立ち。厳しそうに見えて、その中に優しさをたたえた瞳。可愛い、という表現は違う。
むしろ美しい……)

 半年前に初めて会ってから、ずっと変わらない素敵なマヤーの姿。
 (抱きしめたい……マヤー!!)
 その気持ちは、いまだに変わらない。
 なぜか私は毛嫌いされて抱きしめることはできなかった。飼い主の榊さんに頼んでも、
こればっかりはどうにもならなかった。でも、彼女が撮ってくれたこの写真を見ている
だけでも、前よりは幸せな気分に浸ることができた。

 せっかくペットOKの部屋に住んでいるんだから、私も猫を飼おうとは思っていた。
でも、こんな素敵な猫……榊さんちのマヤー……を目にしてしまった今では、他のどん
な猫も霞んで見える。
 今は、この素敵な猫のそばにいるだけで、私は幸せだった。たとえマヤー自身には嫌
われていても。

 人間の男なんかより猫が好きだなんて、私はやっぱり変な女なのかもしれない。



516 :ちょっとお邪魔します :2004/09/03(金) 21:22 ID:eWzy8New
拍手です、これは面白かったw
最初のうちは私も僭越ながら榊さんモノを書く事を夢見るものなので
大変参考になるな〜とか思っていたんですけど、瞬く間にいろんな意味で変化していく
自分の視点がなんとも愉快で、気に入ってしまいました
勉強になりましたw

517 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/09/03(金) 22:47 ID:???
>>506-515
乙です。
ばっちし騙されました(w
ヤマモトのマヤーに対する感情がとてもよく表現されていると思います。
ストーリ、表現技法もすばらしいと思います。

ちょっと言うとすれば、できるだけ「。」や「、」で改行した方が読みやすくなるでしょう。
あと、「ーーーーー」と伸ばし棒が続くときは「―――――」にした方がいいと思います。

518 :名無しさんちゃうねん :2004/09/04(土) 02:41 ID:???
なんかえらく出世したね

519 :名無しさんちゃうねん :2004/09/04(土) 04:25 ID:???
うまい。完全に騙されました。
オチの見事さももちろんながら、ヤマモトさんの心理描写も巧みで、
読んでて引き込まれます。最高です。

520 :名無しさんちゃうねん :2004/09/04(土) 16:19 ID:???
わー!騙されたー!ちくしょー!w

榊さんに一目ぼれした真面目で純情な男性、ヤマモトさんの失恋物語…
っと思いきや、実はヤマモトさん女性で、しかもお目当てはマヤーでしたかw
最後の最後で二重のどんでん返しを入れる手法がお見事です

521 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2004/09/04(土) 23:07 ID:???
これいいなぁ。俺もてっきり榊さんの純愛物語かと思ったけど、見事に
騙されました。ヤマモトさんの目当てがマヤーとは全然気づきませんでした。
二転三転するストーリーにひかれました。

522 :506-515 :2004/09/04(土) 23:51 ID:???
>>516 >>517 >>519 >>520 >>521
 ありがとうございます。
 励みになります。

>>518
 ???
 誤爆?

>>517
> ちょっと言うとすれば、できるだけ「。」や「、」で改行した方が読みやすくなるでしょう。
> あと、「ーーーーー」と伸ばし棒が続くときは「―――――」にした方がいいと思います。
 ご指摘ありがとうございます。
 以後、気をつけます。

 テキストエディタで書いて整形して、同じ桁で改行するようにしたつもりだったんですけど。
 表示が等幅フォントでないと、単なる不自然な改行にしかならんのですね。

523 :メジロマヤー ◆xSrSaKAKI6 :2004/09/05(日) 02:01 ID:???
ストーリーの内容も面白いし、展開運びもうまいし、ただ素直に上手いという言葉しか思いつきません。
これほどの作品が書けるなんてすごいです。

524 :名無しさんちゃうねん :2004/09/05(日) 09:00 ID:???
>>522
(´−`).。o0(アンカーは三つ以上のときは>>519 >>520 >>521ってやるよりも
                    >>519-521ってやったほうがいいと思う)

525 :名無しさんちゃうねん :2004/09/05(日) 23:41 ID:???
>>506-515
よくできた叙述トリック、ってこういうのを言うんでしょうね。
一度某所でやってみようとしたのですが、結局ものになってなかったなぁ…、
と遠い目をしてみたり。

526 :506-515 :2004/09/06(月) 22:02 ID:???
>>523 >>525
ありがとうございます。
照れます。

>>524
次から、そうします。


ついでに、あとから自分で気づいた点。
>>507
> たしか桜の咲く季節だった。
 4月の上旬と、はっきりわかっている。「たしか」という言葉は不適切。

>>508
>  震え気味の顔からも、蒼白な顔面からも
 「顔」と「顔面」は同じ。並べるのは変。

>>511
> 缶ビールを2人で飲みながら
 現役合格で大学1年ならば、未成年。
 何の説明もなく酒を飲ませたのは、うっかりミス。

反省。

527 :春日歩の非日常(1/1) :2004/09/08(水) 21:54 ID:???
 春日さんの答えは、「NO」だった。
「ごめんなぁ。気持ちはうれしいんやけど、私には応えられへんわ」
 予想はしていた。おそらく、彼女はそんな答えを返すと思っていた。そもそも、それ
をはっきりさせようとしての告白だったのだ。でも、心の底で、かすかな期待を抱いて
いたのも事実だった。
 しかし、私の恋はこれで終わった。



 その日の春日家にて。
「ただいま〜」
「あー、あゆむ、お帰り〜。晩御飯できとるよ〜」
 帰宅した大阪を、妙に上機嫌の母親が迎えた。
「なんや、お母ちゃん。機嫌ええな。なんかええことでもあったん?」
「うん。今日、パート先で、バイトの学生から、愛を告白されてん」
「ええっ!?」
「もちろん、私はお父ちゃん一筋やから、断ったけどな」



528 :名無しさんちゃうねん :2004/09/09(木) 07:44 ID:EMjBXOEM
>>527
ムッチャワロタ

529 :名無しさんちゃうねん :2004/09/11(土) 21:03 ID:???
>>527
まただまされたw

530 :時雨 :2004/09/19(日) 19:28 ID:elOToywA
大阪ファザコン!

531 :名無しさんちゃうねん :2004/09/19(日) 23:01 ID:s4VBFsak
>530 大阪の母親の話ですよ

532 :時雨 :2004/09/20(月) 16:30 ID:7IYUzruo
本当だ。文章よく読まないとな〜。

533 :R&G :2004/09/22(水) 23:46 ID:???
>>527
えすえすって
おんもしれ―――――!!!

534 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2004/09/29(水) 03:16 ID:303muQps
33 えすえす

「あんなあ暦ちゃん、SSってなんやー?」
 いきなり大阪が聞いてきて驚いた。
「なんだ大阪」
「インターネット見てたらやあ、小説ってジャンルのSSがあんねん」
「いや、それをいうならSSってジャンルの小説だろ」
「そうなんかー? 小説さんなんかー」
「SSは小説とは違う」
「えー、なんでー? どっちも文やでー」
「じゃあおまえは日記も小説って言うのか?」
「日記は日記やん。暦ちゃんおかしいで」
「たとえ話しとるだけじゃー!」
「怖いー」
 脊髄反応で馬鹿言ってるし。
「……それでSSがどうしたって?」
「うん、私な、SS書こ思てんねん」
「文才のかけらもないくせになんでまたそんなことを。なにかアニメとか漫画とか見てたっけ大阪?」
「んーん、見てへんでお金かかるし」
「じゃあSSなんて書けるわけないだろ」
「どないしてー?」
「SSってのはな、既成の主に商業作品を土台にしたショートストーリーのことだ! 漫画を読まないおまえがどうやったらSSを書けるってんだ? ええ?」
「そんな深い意味があったんかー!」
「知らなかったんかい!」
「うん」
「じゃあなんの略だと思ってたんだ?」
「サムライセブン」
「どマニアックじゃー!」
 ばちーん。
「暦ちゃん痛い、なんでハリセンなんか持ってるん?」
「気にするな」

535 :名無しさんちゃうねん :2004/09/29(水) 15:18 ID:???
>>534
ハァハァ

536 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/03(日) 22:23 ID:???
久しぶりのSSです。
【桜】

537 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/03(日) 22:24 ID:???
桜散る公園。
フォーマルすぎて居心地の悪かったホテルのバーを飛び出し、飲みなれない赤ワインに火照った身体を、
私は高校時代からの腐れ縁と一緒に池にかかる小さな橋で冷やしていた。
「あー、にゃもはあれかー?そんなに男をゲットしたかったかー?」
「し、したかったら悪いか!」
「あー、さいですか……そりゃーどうも申し訳なかったぞぉー!」
長い付き合いだからわかっているけれど、どうしてコイツはこうなんだろう。
顔もスタイルも悪くない。
料理だってそこそこ出来る。
優しいし、口惜しいけれど私よりずっと生徒に人気がある。(しかも男にも女にもだ!)
別にもてないわけじゃないんだよ。
ただ、好みのタイプがまずいんだ。

538 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/03(日) 22:24 ID:???
私達が初めて出合ったのは高校の時だ。
にゃもは風紀委員。私は遅刻常習犯。
私があまりに遅刻するものだから、責任感で凝り固まった彼女はおせっかいにも毎日私を呼びに来て
くれていたっけ。
そんなある日、ふと気づいた。
だから、ちょっとからかってやったんだ。
「あんたさ、電車乗るといつもあの男のこと見てるよな」
そしたらもう笑っちゃったね。あの取り乱しよう、今思い出しても噴出しそうになる。
トマトみたいに顔真っ赤にして、むきになって否定。
その態度が思いっきり肯定してるっつーの。
あまりにあからさまでおちょくる気もなくなった私は、この腐れ縁の恋を応援してみることにしたんだ。
男の名前はちょっと調べたらすぐにわかった。
桜井京介。
奴がそれとは私は全然知らなかったけど、中学の先輩で、かなりの有名人だった。
私が中一のとき彼は中三だったから、一応同時期に在学してたこともあるわけだ。
確かに私もうわさぐらいは聞いていたよ。
はっきり言ってつまんない男。顔はいいしバスケット部のキャプテンだけあって運動神経もそこそこあるが、
なにぶんバカ。
ミーハーな同級生はきゃーきゃー言ってたけど私にとってはアウトオブ眼中だった。

539 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/03(日) 22:25 ID:???
そんな奴だったから、にゃもとはお似合いかもなーと思って、紹介してやったんだ。
私もその頃は高校一年生。お世辞にも男を見る目があったとはいえなかったからなー。
桜井は高校生になっても近隣の女子学生の憧れの的だった。
だから女には不自由していなかった。
ぶっちゃけ、食い散らかしていたんだ。
そこに純情まっしぐらで、尽くすタイプのにゃも。
初めはね、良かったんだ。
エロの香りのぷんぷんする取り巻きの中に現れた清純派。
はにかんで頬を桜色に染める初々しさが、奴には新鮮だったみたいで。
月曜は必ずのろけ話を聞かされてた。
だけど、そういう男に手作りのお弁当や手編みのマフラーは重過ぎる。
だんだん疎まれて、邪険にされて。
思い余ってストーカーじみたことやってますます疎まれて。
終いにはあのクソ男、せっかくのにゃもの弁当をこれ見よがしにごみ箱に捨てたり、目の前で他の女と
いちゃいちゃしたりしやがった。
さめざめと泣くにゃもを私は思いっきり笑い飛ばしてやったよ。
男を見る目がなさ過ぎるんだよ、バーカってな。

540 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/03(日) 22:26 ID:???
これだけならちょっと遅めの麻疹で済んだんだけど、にゃもはそれからもずっと桜井の影を追いつづけた。
大学の時の武田も、つい2年前まで付き合ってた春木も同じタイプ。
遊び人に良妻賢母はにあわねーんだって言っても聞きゃしない。
だから、今日もおちゃらけて場をぶっ壊したんだ。
あいつらも桜井と同じ匂いがしたから。
男関係の恨みつらみなんて、そう何度も聞きたくないからな。
「えーい、もう一杯飲むわよー!」
「それについてはさんせー!」
私とにゃもは近くのコンビニにカップ酒を買いに行く。
どんなに高級なワインも、桜には似合わない。
にゃもも、桜井モドキには似合わない。
(Fin)

541 :名無しさんちゃうねん :2004/10/03(日) 22:56 ID:???
↑ グッジョブです。でも、もう少しエピソード膨らまして長い話にしたほうが良かったかも。
 これで終わらすには、なんかもったいない。

542 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/05(火) 00:32 ID:???
ふとした思いつきの小ネタ。
【性教育・後日談】

543 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/10/05(火) 00:42 ID:???
ちよ「ごめんなさい、榊さん。悪いこと言っちゃって」
榊 「あ、ああ……いいんだ。別に気にしてない」
        :
大阪「ちよちゃん、機嫌直ったなー」
よみ「これはやっぱり」
智 「エロエロ?」
よみ「だろうな……」
大阪「名前にエロが入っているもんなー」
よみ「は?」
大阪「千尋ちゃんの尋ってヨエロ寸って書くやんかー」
智 「ああ、なるほど」
よみ「それ関係ない」

544 :小麦 ◆KOMUGI :2004/10/05(火) 00:50 ID:???
>>543
中学校の時、「尋ねる」という漢字をそうやって覚えたのを思い出しました。

545 :名無しさんちゃうねん :2004/10/09(土) 02:01 ID:???
遅れてはまったあずまんが。
今のスレのSSは読んだ。
過去ログや保管庫も探せる限りで読んだ。
一体私はどうすればいいのでしょうか…。

546 :名無しさんちゃうねん :2004/10/09(土) 06:28 ID:???
>>545
書け

547 :名無しさんちゃうねん :2004/10/09(土) 11:03 ID:???
>>545
Please write.

548 :名無しさんちゃうねん :2004/10/09(土) 17:09 ID:???
らいと らいたー らいてすと

549 :空耳=ケーキの法則 :2004/10/09(土) 22:06 ID:???
>>545
私も同じ。あとは2chエロパロスレ保管庫の閲覧注意だけ。
何か書こうかな?

550 :空耳=ケーキの法則 :2004/10/09(土) 22:13 ID:???
ついでに、今日単行本の1〜3買った。4はなかった。
アニメも沖縄行ったあたりからしか見てない。卒業式は見逃した。
アニメで何の気なしに見てただけ。大阪板のSSがおもしろくて、はまった。
こんな私、どうです?

551 :名無しさんちゃうねん :2004/10/09(土) 23:59 ID:???
>>550
だから書けばよろしいがな!

552 :名無しさんちゃうねん :2004/10/10(日) 06:00 ID:???
 気に入った話に、感想レスつけたりするのもいいんじゃない? 古い話でも、同スレで話題出したって、よっぽど勘に触る批評じゃない限り荒れたりはしないと思う
 あずラウンジの編集会議室2に書き込んでもいいしね
 他にもSSが隠れているネタスレがあったりするから、一見興味のなさそうなスレを覗いてみるのもいい
 保管庫にない話って、一杯あるよ
 

553 :名無しさんちゃうねん :2004/10/10(日) 13:00 ID:???
>>550
単行本は古本屋で買った第二巻しかなくて、アニメは全然見てないけど、
素知らぬ顔でSSを書いてた人がここにいたり。
(今は全巻あるけど、アニメは未だあんまり…)

554 :名無しさんちゃうねん :2004/10/10(日) 22:32 ID:???

個人サイトも今はもうあんまりないみたいだし…。
(ここで諸先輩方に質問。お勧めの個人サイトにあるSSってどんなのがありますか? ってここで聞いていいのかな?)
やっぱり書くしかないのかなぁ…。

555 :名無しさんちゃうねん :2004/10/11(月) 10:17 ID:???
個人サイトならどっかに智×大阪のがあった気がするなあ
けど、ネタでも妄想でもいいから書いてみたらどうかなあ

556 :名無しさんちゃうねん :2004/10/11(月) 21:31 ID:???
>>553
実はここにも一人。
初めは大阪だけ知っていて、ここに来てあずまんがの存在を知り、本を購入して
すぐに執筆。書き始めた当時はアニメの存在すら知らなかったり。

557 :名無しさんちゃうねん :2004/10/13(水) 00:01 ID:???
まあ、いきなり書くってのも難しいかもしれないけど。
>>552が言ってるみたいに、面白いと思った話の感想を言うのはいいと思うよ。
作者の人が、また書く気になる活力になるかもしれないし。

558 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/10/16(土) 21:20 ID:???
>>553
オレノコトカ('A`)
ぶっちゃけ、一作目は立ち読みで10分ほど読んで、帰って書いて翌日行ったらもう買われてました(w

えと、今SS書いてるので、こっちに落とそうと思います。
最初に書いた奴(最初のスレ484らへんから)のリメイク版でつ。

559 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/03(水) 22:24 ID:115f9zEA
さて久々に投下だす

560 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/03(水) 22:25 ID:115f9zEA
外は大分暗くなってきて、一番星が輝いてる。
私は景色を見ながらぼうっとしてた。
手は、大阪の手を握ってた。
大阪の鼓動を感じる。
大阪の手は温かくて、どこか懐かしい感じがして……
布団の中の大阪は静かに眠ってる。そっと、頭を撫でた。
「ん?とも……ちゃん?」
あ、起こしちゃったみたい。
「ごめん。まだ大丈夫だろ。もう少し休んでろ」
そう言って目を手で覆ってやった。
そうすると、大阪はまたゆっくり寝ちゃった。
――長いよなぁ。もっと時間があると思ってたのに……
あっという間だった。あれを知った時から。大阪の死がわかった時から……

「ちぃ〜〜っす!!元気しとるかね!」
私は勢い良く扉を開けた。
「ったく、無駄に元気だな。少しはその元気がほしいよ」
よみが椅子に座りながら言ってきた。
「まぁまぁ、ダイエット失敗したからってクヨクヨするなよ」
「失敗はしてない!」
「じゃぁ、何キロやせたの?」
「うっ……」
「やっぱり。よみにダイエットなんて無理だよ〜〜〜ん」
よみがダイエットをして成功したためしがないことを私は知ってる。
だから、こうやってからかうことができちゃうのだ。
「ところでさぁ。このごろ、大阪の様子、変じゃないか?」
私は本題に入って、一番聞きたいことを尋ねる。

561 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/03(水) 22:25 ID:115f9zEA
「は!?どこが?」
「どこがって言われると…… でもなんか」
「二人とも元気やなぁ」
おっとりとした口調―――大阪が話に入ってきた。
噂をすれば何とやらだ。
「ん。何か用?」
「えと、え〜〜っと何やったっけ…… あかん。忘れてもた」
「…………」
私もよみも、かける言葉が無い。
言いたいことを忘れるって…… さすがは天然ボケ大王だな。
「で、二人は何の話しとったん〜〜?」
「ああ。このごろのお前の様子が少し変じゃないかって言うんだ。こいつ」
そう言ってよみは私を指差す。
「私、どこが変なん?」
「んと、何か雰囲気的に…… 元気が無いと言うか何と言うか……」
「ほんなことないで〜〜 元気満々や〜〜」
大阪が笑いながら答える。そういってマッチョのポーズをする。
「力瘤でないのにそんなポーズしてどうするんだ?」
そーそー 私も出ないけどさぁ…… やるならよみとか…… ってだめだな。
「やらせるなら神楽だな。私や大阪は出来ないし、よみはそれ以前に脂肪100パーセ……」
って私が言った時に、ガツンと一発、
「ダブルチョ――――ップ!!」
頭がクラクラする。本当のこと言っただけなのに〜〜〜!
「痛ぁ〜〜 理科とかで習ったけど、エネルギーは重さが重くなるほど強いのに、よみなんかのくらったら……」
「もう一発やってやるか」
よみが私をにらみ返す。こ、怖ぁ〜〜〜
「二人とも本当、元気やなぁ……」
私は気づかなかった。
大阪が、何かもの悲しげな目で私を見つめていたのに……

562 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/03(水) 22:26 ID:115f9zEA
その日の帰り道。めずらしく私と大阪は二人っきりで帰ってた。
ちょうど学校の校門を出たときだっけ。大阪が、
「あ、ちょいと忘れ物してもうた。取ってくる!」
って言って、めずらしく駆け足で学校の中に走ってったんだ。
ま、あいつの忘れ物なんていつものことだし、めずらしくも何ともないけど……
何か胸騒ぎがする。言いにくいけど…… 本能ってやつかな?
とにかく、私は本能のままに大阪を追いかけた。
校舎の中は薄暗くて、オバケや幽霊が出てきそう。
そんな廊下の中を駆け足で進んで、教室の前についた。扉を開けたが……大阪はいない。
ふと、「コホッ、コホッ」って、誰かが咳き込む声。
ちょうど廊下を曲がった辺りから聞こえてて。その側には洗面所があるんだ。咳はそこから聞こえてた。
風邪でも引いてるのかなって、軽い気持ち廊下の角を曲がったんだ。。
そしたらさぁ、その咳き込んでるやつが大阪でさぁー
「大阪、どうした?風邪……」
って覗き込んだら、
「何だよ!お前…… 血だらけじゃないか!!」
大阪の口から血がドボタボタッて。本当、驚いたよ。
――そうだ。救急車!
そう思って携帯電話取り出して……
「救急車!救急車って、何番だっけ!?110は警察だし…… 大阪、お前わかるか?」
私が大阪に聞いたらさ、あいつわたしの手を握って、
「電話せんといて。もう、わかっとるさかい……」
「は!?何言ってるんだよ!このままじゃもっと大変なことに――― もしかしたら死ぬかもしれないんだぞ!!」

563 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/03(水) 22:26 ID:115f9zEA
そしたら、あいつ何か可笑しそうに笑ってさ、
「死ぬかもやない…… もう……死ぬ運命なんや」
って言ってきた。もちろん、信じられなかったよ。
「うそだろ!?大阪。冗談にも行っていい冗談と悪い冗談があるぞ!」
そこで、いつもみたいに「じょうだんやで〜〜〜」とか「あれ?私何か言うた?」とか言ってほしかった。けど……
「冗談やないんよ。この前、お医者さんに見てもらってな…… お願いしてん。親にも言わんといてって。
 大体、わかっとったから…… お医者さんから直接聞いた」
「…………」
「「もって半年でしょう」て言われたのが夏休みの終わりやから―――
 卒業するころ、あと一ヶ月や。私がいなくなるのは。
 秘密にしとってんけど、智ちゃんはわかってたんか。ありがとな。そこまで気にしとってくれてて、嬉しいで……
 智ちゃん、泣いとるん?」
大阪に言われて気づいた。私、泣いていた。大阪の血の上に私の涙が落ちて、すこしもやになってた。
言われて余計に涙が溢れてきて…… もう視界のほとんどがぼやけてる。
「あっ、当たり前だろ!お前は、ヒグッ、悲しくないのかよ!」
急に泣き声になった。声を出すのがやっとだった。
私につられたんだと思う。大阪も泣き出した。いつの間にか、私は大阪を抱きしめてたんだ。
「私だって死にとうないけど、ウゥ…… けど、ッッ!だからッ、このことは誰にも言わんといて」
その言葉に、当然私は驚いた。だって、だってだって
「何言ってるんだよ!ちよちゃんとか、神楽とか…… あいつらに何も言わずに死ぬって言うのかよっ!」
「ともちゃんはッ……皆が悲しむのを見たい?見とうないやろ。だからや。ングッ、皆に笑っててほしいんや」
大阪の体は温かかった。トクン、トクンて大阪の鼓動が聞こえる。
なぁ、本当に死んじゃうのか?死ななきゃいけないのかよっ!
「大阪。なら、ッ、約束してくれ。最後まで諦めないで、ウゥッ、笑っていてくれるって」
「うん、ヒグッ、約束するで」
「嘘付けっ。泣いてるだろうが」
私は無理に笑顔を作った。多分、どう見ても笑ってるようには見えなかったと思うけど。
「そ、そう言うともちゃんこそっ……」
大阪を抱きしめる力が自然に強くなった。大阪も、たぶん精一杯の力で抱きしめてくれた。
「約束やで。どんな悲しい時も、笑っとってや……」
「ああ、っっ、大阪もな」
右肩に熱い雫を感じながら、私も泣いた。これ以上泣かないように。それと、願いをかけながら。

――神様。本当に一生の願いってのがあるなら…… 大阪を助けてあげてください。かわりに私が死んでもいいですから……

564 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/03(水) 22:29 ID:115f9zEA
初めて、生意気にもリメイクをしてみようと思ってやっちゃいました。

どうも、泣く智ってのがうまく想像できません……(笑

ま、見直してみても、一年前(これを書いたのはちょうど一年前です)とくらべてみて、
かなり良くなったと思います。

無論、続きがリメイク出来次第投下しますので、読んでいただければ幸いです。

565 :空耳=ケーキの法則 :2004/11/03(水) 23:32 ID:???
キタ――――
このSS、けっこう好きだったんです。リメイク、たのしみです。
コピーを保存してあるんで、また読み比べようと思います。
とりあえずGJ!です。

566 :名無しさんちゃうねん :2004/11/05(金) 09:14 ID:???
ここのSSひととおり読んだ。
このスレの>>110-112が、俺的ベストでした。面白い。サイコー
作者さん激しくGJ

567 :名無しさんちゃうねん :2004/11/08(月) 20:47 ID:???
>>559
一年前に比べるとやっぱり筆力上がったよね

568 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/11/12(金) 21:55 ID:lsSTnPfo
さて、続きの投下じゃい!

569 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/11/12(金) 21:56 ID:lsSTnPfo
それから一ヶ月。私達は、よみの受験した大学を出発して、マジカルランドにいた。
ま、なんやかんややって、なんとかよみも合格できたし、すっごく気分がいい!
「戻ってきたぜ!マジカルランド!!」
手を大きく振り上げた。空も青いし、空気も気持ちいい!
神楽も、
「ここがマジカルランドかぁ。一回来てみたかったんだ」
よみも、
「前は風邪引いちゃったからな。今日は二時間待ちでもジェットコースターに乗るぞ」
ちよちゃんも、
「楽しみですね―――!!」
榊ちゃんも、
「そうだな」
そんで、大阪も……
「ほんま、いい天気になったなぁ。きっとめっちゃ楽しい日になるで」
私も今日だけ大阪の病気のこと、忘れることにした。
楽しい日は楽しまなきゃいけないし、大阪にも「悲しまんといて」ていわれてるしな。
「じゃぁさ。まず何から乗る?」
「あー、私ジェットコースター乗りたい!」
「あ、あれはいいですよね。今日は結構空いてますよ」
「よーし!!まずはジェットコースターからだぁ!」
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
ジェットコースター。もうスリル満点!
よみったら、あんなに楽しみにしてたけどすっごく怖がっちゃって。あの顔、もうサイコー!
お化け屋敷は神楽がものすごくビビッちゃって。私に抱きついてきて。
ガタガタ震えちゃってさ。神楽ってば、意外に気が弱いんだよなー
で、そうしているうちに私と大阪だけ……
「なぁ、これって……」
「迷子…… やな」
二人で顔を見合わせた。携帯を見たけどバッテリー切れだし、わざわざ放送かけるのも……
「ともちゃん。観覧車乗らへん。?二人っきりになれるの、これが最後かもゴホッ!!コホッ!」
「大阪……」
口から少し血がこぼれてる。やっぱり、無理してるんだ……
「だから、なぁ」
「そうだな。じゃぁ観覧車だ!」
私は血をハンカチでふき取ってやって、無理に元気を出した。

570 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/11/12(金) 21:56 ID:lsSTnPfo
今日はすいてたから、十分ほど待つだけで観覧車に乗れた。
ゆっくりと動く窓の外からは、夕日が差し込んでて
「きれいだな……」
「そうやろ。前来た時に見つけたんよ。で、決心しとったんや」
大阪がこっちを向いた。何でかわかんないけど、ドキッてなった。
何でだろう。大阪を見つめてると、ドキドキして、体も熱くなってきて……
もしかして、もしかして私、大阪のこと……
って、おい!大阪は女だ。こんなこと考えてどうするんだよ!
で、それは置いといて……
「決心?何を?」
「そうや。次、ここに来る時は……」
夕日のせいかもしれないけど、大阪、少し顔が赤くなってる。
それから大阪が一回つばを飲み込んだ。私もつられてつばを飲んじゃった。
「す、好きな人と一緒に来ようって!」
前に割り箸のことで怒った時くらいの大きな声で、大阪は言った。
ま、待って。もしかして大阪も……
「そ、それって」
「こっちに転校してきた頃からや。ともちゃんに大阪ってあだ名つけられたくらい。
 ともちゃんを見たら、何か胸が切のうなるんや。だから、死ぬ前に一回だけ言いたかったんや」
そんで、大阪がギュッ!て私に抱きついてきた。胸の高鳴りが一気に速くなる。
ど、どうすればいいの?こんな時。どうすれば……
「ともちゃん、いや、智。愛しとる、私の気持ち、受け取ってくれへんか?
 嘘でもええ。嘘でもええから「好き」って言ってや」
私も大阪も、これでもかって言うほど赤くなってた。
私は少しどぎまぎして、大阪を力いっぱい抱きしめた。
もう、押さえられない!誰にどう思われたっていい。もう全部大阪に言う!
「嘘なんかじゃねーよ!私だってお前のこと好きだっ!
 お願いだから、死なないでよっ。代わりに…… 代わりに私が死んでもいいからっ!!」
途端に、大阪の顔が曇った。何でだよ?何でそんな顔すんだよ?
「ともちゃん、いや智は、私が死んで喜ぶ?」
「ばっ!バカ!嬉しいわけないだろっ!!」
それから少し微笑んで、
「同じや。私だって智の死ぬところ見たくない」
「歩っ……」
私も《歩》って呼んだ。大阪も私のことを《智》って言ってくれてるし、大阪ってあだ名つけたの、今じゃ悪かったって思ってるから。
そうだよな。私と大阪が逆転してたら、きっと同じこと言ったと思う。
「智。私が同じ大学受けたんはな……」
「わかってるよ。皆を悲しませたくないからだろ」
「それもあるねんけどな。できるだば、もっと智と一緒にいたかったからや。
 例えばや。こんな……」
歩が目を瞑って顔を近づけてきた。私も目を閉じて、そのまま―――

571 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/11/12(金) 21:57 ID:lsSTnPfo
初めての口づけはマシュマロみたいに柔らかくて、とろけるチョコレートみたいに甘かった。
そんで、少し、血の……《死》の味がした。
言葉は要らなかった。もう何もかも分かり合えてたから。
歩がどれだけ私を愛してくれてたか。どれだけ切ない思いをしてたか。
残された時間は、もうほとんど無いってことも……
閉じていた瞳を開けてみると、歩の顔が視界一杯に広がっていた。
それから少したってから、大阪が瞳を開けた。
くりくりってした目が、私を見つめてる。かわいいな。
嬉しそうだけど、何か寂しそう。
一瞬の永遠ってやつ?霧みたいに、頭の中一杯に広がってく。
このまま、このまま時間が止まればいいのにな……

永遠の時間が、ぼんやり消えてった。
「これで、もう心残り……ない」
歩が私の耳元で囁いた。
「何言ってんだよ」
「わかるやろ、っっ!ゴホッ、カハァッ!!もう、私は今日までしか……」
わかってるよ!認めたくねーよ!けど……
「っっ――――!!」
「歩っ!」
また歩の口から血がこぼれる。
「ちょいと、休ませて……」
歩が言った後だった。大阪の体がガクンって崩れて―――

572 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/11/12(金) 21:57 ID:lsSTnPfo
それからは少し大変だった。
観覧車を降りて、歩を私の家に運んだ。
救急車は呼ばなかった。だって、だってもうわかってたから……
ちょうど留守だったから、私のベッドに歩を寝かせて、布団をかけてやって、水と洗面器と濡れタオルを用意した。
それから―――
プルルルルルル……カチャ
「はい、神楽」
神楽の携帯に電話をかけた。
「神楽、私」
「ともっ!どこ行ってたんだよ?心配したんだぞ。大阪と一緒だろ。今すぐ正面入り口の……」
「神楽。これから言うこと、落ち着いて聞いて――― もらえないと思うけど、とにかく聞いてくれ」
とにかく手短に話した。
今私の家にいるってこと。歩が大変だってこと。そんで、もうだめだってこと……
「嘘だろ……なぁっ!」
「…………」
何も言えなかった。これ以上、何も言いたくないし。
「嘘だって言えよ!!ちょっとタチの悪い冗談だってよぉ!」
神楽は信じたく、ううん。信じられないんだよな。
そうだよな、いきなりこんなこと言われたんだから。
私だってそうだよ。でも……
「嘘じゃねぇよ!現実を見ろ!このボンクラバカッ!!」
「バッ、バカだとぉっ!?」
「ああバカだ!こう話してるうちにも死んじまうかもしれないんだぞ!
 わかったら早くこっちに来い!大阪に最期の言葉かけてやれよ!!」
また泣きそうになって上を向いた。歩との約束を破りたくなかったから。
「なぁ、頼むよ。あいつはみんなの悲しむ姿見たくないって言ってるけどよぉ。っっ!
 最期ぐらい、ヒグッ!見取ってやってよ……」
でも、声は泣声になってた。
「………… わかった。今から皆を連れてく。待っててくれ。それまで大阪を―――」
「ああ。絶対死なせねー」
私は電話を切って、大阪のいる部屋に駆け込んだ。
歩がこの世にいれる時間は少ないから。多分、明日には―――
だから、皆が来るまで死なせたくなかった。
そうやって、歩の手を握りながら待ってて―――

573 :空耳=ケーキの法則 ◆88wwe/zzZ6 :2004/11/12(金) 23:53 ID:???
あれ?読み比べたら…時間軸ずれてますね。一年前のと。
別作品?パラレルストーリー?
ちょっと読みにくい文&ちょっとおかしかったとこが
各段に向上した程度のものを想像してました。すいません。
期待度が確実に上昇してます。
あれにどうやって持っていく?もしくは違うストーリーに?
迎撃戦闘機トリアーエズ期待してます。GJ!!!!!!!

574 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/13(土) 15:00 ID:NbSYsT66
>>573
ええ。
今回は大体の流れだけを同じにして、場所や時間軸は違うようにします。

575 :空耳=ケーキの法則 ◆88wwe/zzZ6 :2004/11/13(土) 15:30 ID:???
そうですか。大分楽しみです。がんばってください。
やはりドダイがしっかりしてると上に何を載せても安定してますね。
昨日今日にSS書き出した身として見習わせてもらいます。EJ!!

576 :名無しさんちゃうねん :2004/11/14(日) 15:05 ID:???
SSおもしろい。
EJ!って何?

577 :名無しさんちゃうねん :2004/11/16(火) 00:09 ID:???
EJ=えぇジョブ

578 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/11/16(火) 08:11 ID:???
久しぶりに新作。
【月】

579 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/11/16(火) 08:12 ID:???
火花が少しずつ色を変えながら、絶え間なく海に降ってゆく。
初めての家族とじゃない旅行の最後は、砂浜での花火大会。
でも、もうすぐそれも終わる。
「きれいやなー」
トイレに立ったちよちゃんの代わりに、春日さんが隣に座った。
「ああ」
私は何も考えず頷いた。
「花火なんて久しぶりにやった」
お母さんの線香花火の火を借りようとして、うっかり玉を奪っちゃったりしたのは、
どれほど昔のことだろう。
棒の先にぶら下げてする花火を手にもってやろうとして、隣の家のおじさんに
ちょっぴり怒られた事もあったっけ。
ああ、そういえば……
「ちゃうねん」
突然の否定に、私は少し戸惑いながら春日さんの方を見る。
彼女の顔は、花火に向いていなかった。
もっと上の方。
その視線の先には。
「まんまるやー」
月。
「昼の海もええけど、夜もええなあ」
そうか。
花火にばかり気を取られていたけれど。
ネオンサインはどころか街灯にすらほとんど照らされることのない夜空は、
花火にも負けないほど綺麗だ。
春日さんは、月を見上げたまま、昼と同じように独り言のように呟いた。
「そういえばなー、月餅ってあるやんかー。あれ、昔はうさぎさんが月でついとるお餅
かと思っていたんやー」
うさぎさん。
ぺったんぺったん。
きっと鉢巻をして、リズム良く。
つき終わったら小さく丸めて、柔らかいうちに食べるんだ。
耳をぴるぴるさせながら、美味しそうに……
「榊さんってやー」
我にかえると、私の目の前には春日さんのにこにこ顔があった。
「いつもはかっこいいけど時々かわいいなー」
え?
それは、私にはもっとも縁の無い言葉。
「かわいい?」
だから、自分が今聞いたことが信じられなくて、疑問形になった。
でも、間違いじゃなかった。
「せや。お昼にも、イルカの話をしたらそんな顔してたやん。ゆかり先生が子猫を連れてきた時も
そうやったなー。そういえばマグネに来た時も同じ顔してたような気ぃする」
顔がかっと熱くなるのを感じて、無意識に顔をそむける。
そんな私の心の中を知ってか知らずか、春日さんはまた視線を空に戻した。
「なんかな、月ってこうして手を伸ばすとすぐに届きそうな感じせぇへん?」
ぱん。
彼女が伸ばした手のはるか先で、最後の花火が上がった。
(Fin)

580 :ム@PC300PL :2004/11/16(火) 19:44 ID:???
>>579
乙です。

相変わらずの美しい文章で溜息が出ます。
目を瞑れば、浜辺での花火遊びというあの原作場面だけでなく、
波の音や、火薬の匂いまで伝わってくるようです。
良い物を読ませて頂きました。

>「榊さんってやー」
>我にかえると、私の目の前には春日さんのにこにこ顔があった。
>「いつもはかっこいいけど時々かわいいなー」
>え?

このやりとりが気に入りました。

581 :名無しさんちゃうねん :2004/11/16(火) 23:18 ID:???
蛍石さんG・J!!

ところで、久しぶりに大阪板に来てみたんですが、蛍石さんの「野望」
はもう達成されたんでしょうか?

582 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/11/17(水) 01:11 ID:???
まだです。
このごろ千尋ちよとかゆかりにゃもとか寄り道ばかりしてまして。

野望達成率80%
「ともにあゆむ」―あゆとも
「おとうとのこと」―よみあゆ
「指」―よみとも
「器用じゃないから」―さかぐら
「同級生に憧れて」―ともかぐ
「白詰草の友達」―さかちよ
「かっこええ女」―あゆちよ
「バースデープレゼント」―ともちよ
「堤防にて」―よみかぐ
「切ない思い」―よみさか
「ママ」―ちよかぐ
「月」―さかあゆ

残り3組
よみちよ、ともさか、あゆかぐ

583 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/23(火) 01:27 ID:fmbJoixU
「……も?智?」
そこで、私は歩に起こされた。
――今までのは…… 夢?
でも、それは違うってすぐにわかった。
今いるのが私の部屋だったし、歩のことが手にとるようにわかったから。夢だったらよかったんだけどなぁ……
「なぁ歩」
話を切り出したのは私からだった。私は歩の手を掴んで
「お前、本当に死ぬのが怖くないのかよ。死ぬまで無理すんなよ。
 二人っきりだから、最期に素直になってよ。大阪ぁ……」
って言ったら、
「智……」
とたんに、歩の目からぶわって涙が溢れて
「うわぁぁぁぁ――――っ!!」
私にギュウッて抱きついてきたんだ。
「私な、本当はもっと生きたいねん!
 皆とも楽しいことしたいし、智ともこれから―――
 けど、私一人のためだけに皆悲しませるわけにいかへんやろ?」
それから、いつものゆっくりした口調になって。
「なぁ、智ぉ。聞いていい?私って一年生のころにくらべてしっかりしてきた?」
思い出した。ちよちゃんの家で「私はだいぶんしっかりしてきた」って言ってたのを。
「歩。お前はもうしっかり者だ」
「ほんま?」
「ああ、本当だ。でも、全部はしっかりしてないのが大阪らしいよ」
「もうっ」
二人でクスクスって笑いあう。つかの間の安らぎだった。
「でも、もう無理やもんな。私はもう生きれへん。だからっ、だからだから……
 智、約束してくれへんか!?私の分も生きて、幸せになってくれるって!」
「ああ、約束するさ!だけど、出来るだけお前と一緒で幸せに生きたい。だから……」
「うん。一秒でも多くがんばる。ありがとう、ともちゃゴホッ!カハァッ!!」
大阪の口から鮮血があふれる。何回か吐血を繰り返して、大阪は、また布団の中に倒れた。
「あかん。眠くなってきた。少し寝かせてや……」
目がゆっくり閉じていく。でも、死ぬわけじゃない。
わかったもん。まだ歩は死なない。何でかわからないけど―――
いろんなことを思いながら、私は歩の血と私達の涙を拭っていた……

584 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/23(火) 01:28 ID:fmbJoixU
ドタドタドタバァン!
階段を上る音が終わった直後、扉が勢いよく開けられる音。こんだけ慌てて来るやつっていえば……
「ともっ!大阪は!?」
やっぱり神楽だ。たぶん、目の前に映った光景―――血のたまった洗面器と目を閉じて横たわる歩を見れば、考えることは一つだよな。
「大阪……嘘…だろ?」
「大丈夫。今は寝てるだけ。けど、たぶん今日が……」
それ以上は言いたくない、いや、言えねーよ。
皆だって、この後の言葉が何か普通のものだったら、どんなに嬉しいだろうって思う。
神楽が私の首に掴みかかってきた。
「何でわかるんだよ!ああっ!?大阪が今日で死ぬなんて何でわかるんだよっ!?」
神楽の目にたまっていた涙が空中に舞って、キラキラッて輝きながら床に落ちる。
場違いだけど、きれいだなって、それを目で追ってた。
「わかるんだよ!だって、大阪は私の、私の……」
もう私だってどうすればいいかわかんなくて、頭が爆発しそうなんだよっ!
「神楽。落ち着こう。ともだって、ウウッ、悲しいんだから……」
榊さんが神楽を抱きしめてる。なんか、榊さんに泣きつく姿が、歩と重なる。
「とも。もう何も言うな。だてにお前の友達やってきたわけじゃない。言いたいことぐらいわかるさ」
こいつ、私たちのこと見透かしてる。さ、さっきのこととかも予想済み?何か恥ずかしいな。
「だから、最期まで見届けてやれよ」
よみが私の頭を撫でてくれた。変だよな。一番慰めてもらわなきゃいけないのは歩なのに……

585 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/23(火) 01:31 ID:fmbJoixU
「んん…… 智、みんなぁ……」
歩が目を覚ました。そんで何回か咳き込んで、また血を吐いた。
「大阪…… バカ!!何で黙ってたんだっ!何で、ッッ……」
神楽が歩に話し……いや、怒鳴ってるな。でも、顔はもう涙でグショグショだ。
「神楽ちゃん……泣いとるん?」
歩の指が、弱々しく神楽の涙を拭う。
「そ、そうだよっ!」
「何で泣いとるんや?玉ねぎでも切っとったんか?」
こんな時もボケやがった。
「っっ!お前ってやつは……」
神楽が、少しだけだけど、笑った
「泣かんくてもええやろ?人間いつか死ぬんやさかい」
「バカヤロウ。人が死んで悲しくならないやつがいるかよ、っっ!」
「もう少しやってんけどなぁ……」
歩がため息をついた。
「もう少しで大学行けて、みんなと別れるまで体がもっとれば……
 みんなを泣かせんとすんだんになぁ……」
「何言ってるんだよ。ともが悲しむだろうが」
「大丈夫や。智は……」
みんなが、私と歩が、いつもと違う呼び名で呼び合ってることに驚いてる。
よみ以外は、ね。
眼鏡の奥で悲しんでるけど、「やっぱりな」って言ってるみたい。
「歩っ……」
「智、私のこと《大阪》って呼んでくれへんか。智が私にくれた、一番のプレゼントやから……」
《一番のプレゼント》。大阪、そこまで喜んでくれてたの……?
大阪の腕が背中に回ってくる。
「じゃぁ、私のことも「ともちゃん」って呼んで。お前に呼び捨ては似合わねぇよ」
私も大阪の後ろに手を回した。大阪の体が私の体に触れる。
「うん、せやな。 ともちゃん……」
やっぱり、こう呼ばれた方が落ち着くな。
二人で思いっきり抱きしめあった。

586 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/23(火) 01:35 ID:fmbJoixU
「智、大阪……」
もう、ここまでくれば、みんな、私たちの関係がわかったよな。
「大阪(おお゙ざが)ざん」
ちよすけが、ボロボロ泣きながら私の横から顔を出した。
そっか。まだ、お葬式とかやったことないよな。
「ちよちゃん……」
「大阪さん、死、死な゙ないでぐださい!まだまだ楽しい゙ことはこっ、これからでずよっ」
「ちよちゃん」
私には、ちよすけの頭を撫でてやることしか出来ない。
ちよすけ、一番大阪と仲良かったからなぁ。
「私だって別れとうないけどな…… せやな。ちよちゃん天才やから、大人になったら、死なない薬って作ってほしいなぁ。
 ほら。皆悲しんどるやろ。もう、こんなの嫌やさかい……」
「はい゙っ。作りますよ゙。でも、ここで完成してて、大阪さんを助げら゙れたら……  うわあああぁぁぁぁぁ――――!」
ちよちゃん、泣き出しちゃった。当たり前だよな。
私だって泣きじゃくりたい。今まで泣かなかっただけえらいよな。
「ちよちゃん。泣かんといて…… なぁ、ちょっとわがまま言ってもええ?」
「ええ。いい゙ですよっ」
「私が死んだら…… ちよちゃんの別荘の近くに埋めてくれへん?あそ…こやっ……たら、毎年……皆に…会えそうやし……」
こんな無茶なお願い―――そうだ、あとでゆかりちゃんに頼もう。
もう卒業したけど、一番仲いい大人だし、法律違反くらいしてくれそうだし……
「え゙え゙っ!やりますよっ!!」
「ごめん……な……」
大阪が、ちよちゃんの頭に手をかけようとしてる。けど、震えて、上手く乗せられないみたい。
私は、大阪の手を取って、乗せてやった。弱々しくだけど、ちよちゃんの頭をおさげの上から撫でてやってる。
「やっぱ、天才には寿命もかなわへんのかなぁ」
「大阪ぁっ」
大阪に思いっきり抱きついて、私は話を切り出した。
ここで言いそびれたらもう言えないってわかってたから。
大阪も、最後の力で私の背中に手を回してきた。
声も弱々しくて、体もガタガタ震えてる……
「これで、お別れ……やな。お迎えが来て…もうたみたいや……」
「そっ、そんなお迎えだったら、私が追い払ってやるよ!」
また、大阪が血を吐いた。腕に力が入る。

587 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/23(火) 01:35 ID:fmbJoixU
「せやから…… 最期に…言いたい…んや。前に、「いつも笑ってて」て言ってたやろ。
 あれ、撤回や。泣きたい時…ゴホッ……やったら……いつでも泣いて…ガハッ、カハァッ………くれへんか」
「大阪……」
「私、素直なともちゃんが一番…… 一番好きやからっ!」
「私もだよっ!いつも笑ってて、とぼけてて、ちょっとぬけてる大阪も好きだけど、
 自分に嘘ついてるお前なんか嫌だ。私の前だけでいいから、素直になって」
「ともちゃん…… ありがとう」
大阪の頬に水滴が落ちて、口から溢れる血と混ざって、下に落ちていく。
きっと―――ううん。きっとじゃなくて、私、泣いてるんだろうな。
ちよちゃんも、よみも、榊も、神楽も、そして、私と大阪も…… みんな泣いてる。
辺りはもう真っ暗。流れ星が一つ、流れた。
お願い?そんなことは考えもしなかった。もしかなうなら……
「ともちゃんやちよちゃん。神楽ちゃんによみちゃんに榊ちゃんたちが、いつまでも幸せでいられますように……」
大阪のかすれた声が聞こえた。まったく、こいつはどこまで……
「もう……だめみたいや」
「…………」
「ありが…と。先に……待っとるで」
大阪の手が私の体を離れた。けど、何とか服を掴んで、私から離れまいと必死になってる。
今の大阪が、喋ることや考えることも大変だってわかった。
けど、私に出来ることは、ただ、見守ることしか出来ないんだ……
「ともちゃん。みんなも、元気でな……」
「ああ、お前もな。しばらくかかると思うけど、私があっちに行くまで、お前も……」
「待っとる…から。だから、ともちゃんも…… みんな…も私の分……幸せに…生きてや。
 あかん…… 眠く…なってきた」
もう、だめなんだよな。
体が痙攣してる。けど、それも弱々しくなって、鼓動もゆっくりになって、目の輝きも……
全身で、大阪の死を感じる。大阪の中にある命の炎が消えていく……
「ともちゃんと、神楽ちゃん…も、向こうに……来たら、また…ボンクラーズやろ……うなぁ……」
「ったく、こういうときにまでお前は……」
二人で、泣きながらだけど笑った。二人で見せ合う最期の微笑み。
何でだろう。大阪、怖さとか悲しみとかがまったく感じゃないか?
本当。こいつらしいっていうか何ていうか……
「じゃぁなぁ…… み…んな………」
大阪のまぶたが、閉じ始めた。  
鼓動も遅くなってってる。もう、大阪は……
「ああ、じゃぁな。また、向こうで、な」
「せ…やな……」
最期に少し可笑しそうに笑った。
「いつまでも……待っとる…から……」
それが、最期の会話だった。
トクン……   トクン………     ト………ク……………
大阪の腕が、私の背中から落ちた。
痙攣も、鼓動も、目の輝きも…… 《動き》が全部なくなった。
ただ、動かなくなった大阪が目の前にいるだけで……
大阪は、今、逝っちゃたんだ。

588 :(。-∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2004/11/23(火) 01:37 ID:fmbJoixU
さて、続きを投下。

次回はその後、とその後のその後(なんじゃそりゃ)です。

589 :名無しさんちゃうねん :2004/11/23(火) 09:21 ID:???
頑張るなぁ… 頑張ってね

590 :名無しさんちゃうねん :2004/11/23(火) 13:02 ID:???
よくかくなあ。

591 :名無しさんちゃうねん :2004/11/24(水) 18:40 ID:???
gannbare

592 :名無しさんちゃうねん :2004/11/24(水) 22:58 ID:jN4tZYNE
>>47
を見つけてしまった。

(一部除き)まだぁ〜〜?

593 :名無しさんちゃうねん :2004/11/25(木) 17:21 ID:???
蛍石氏の新作、楽しみに待っております。

ゆかりとお話氏の続き、心からお待ちしております。忙しいのかな?

名有り氏は頑張ってますね。期待しております。

パスコ改め小麦氏は・・・、まぁどうでもいいや。

狂戦士大王はアク禁かな・・・?

594 :名無しさんちゃうねん :2004/11/25(木) 19:50 ID:???
あのなぁ… そういうレスされて嬉しいような人たちだと思ってんの?
もーどーいうつもりでそーゆーことゆーかなー
まつたりいきましようや

595 :名無しさんちゃうねん :2004/11/29(月) 21:59 ID:???
>>593
蛍石さん、今ラブラブ中らしいぞ!

596 :名無しさんちゃうねん :2004/12/01(水) 22:47 ID:???
>>595

ナンダッテー(AA略

597 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2004/12/02(木) 09:06 ID:???
ここにまで情報流れてますか……
あっちこっちにノロケまくったから仕方ないと言えば仕方ないんだけど

598 :名無しさんちゃうねん :2004/12/02(木) 14:24 ID:???
蛍石 おのろけ おのろけ 赤い頬

599 :名無しさんちゃうねん :2004/12/02(木) 15:03 ID:???
頬染めて

  おのろけ おのろけ

    蛍石

600 :名無しさんちゃうねん :2004/12/02(木) 15:04 ID:???
ラブラブの次は


   エロエロ

503 KB  
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver2.0 beta3 (03/08/25)