世の中のすべての萌えるを。

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[他作品]クロスオーバー・あずまんがSSスレッド-参[混合]

1 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2007/02/18(日) 20:33 ID:???
クロスオーバースレも3スレ目となりました。
ここはあずまんが×他作品のクロスオーバー作品用スレッドです。
あずまキャラを他の世界観に置き換えたり、また逆も然り。
そんな想像を作品にしてどんどん投下していって下さい。
また〜り楽しんでいただければ幸いです。

★主な注意事項
1.原作の対象範囲は「あずまんが大王」及び、連載中の「よつばと」とします。
2.ここの作品はいわゆる「戦い系」の長編作品を多く含みます。
3. その場合、あずまんがキャラでの戦闘を描いている為、原作の雰囲気を変化させ、またキャラクターも
  精神的・身体的に強化されているものもあります。
4. あずまんがキャラと、SSの作者のオリジナル・創作キャラクターとの共演もあります。
5.他人の作品に対し罵倒、中傷は絶対にしないでください。
※その他の注意事項は、>>2以降で記載します

97 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/27(金) 01:55 ID:???
Bパートを使い切っても終わらなかったので、今回はCパートまで使います。
今日はここまでです。

98 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:04 ID:???
「あれは・・・・・・ジャスティス?」
「違うわ!あれは5人のウルトラマンが合体した姿よ」
「ウルトラマンジェレイドってとこかな?」
ちよの言葉にかおりんと千尋はそれぞれの見解を口にする。確かに顔はジャスティスであるものの、
体の模様やカラーリングはそれぞれのウルトラマンをミックスしたように見える。

「まさか、こんなの見れるなんて思わなかった!」
「すげえ!最後の最後でこんなすげー奇跡が見れるなんて!」
智と神楽も興奮している。

「私はきっとこの光景を忘れないだろうな」
暦も静かにしかしハッキリと口にする。

「いくら姿を変えようと無駄だ!最強である私に勝てはせん!!」
ゼルエムから終末の雷塵を放ってきた。しかし、ジェレイドは腕を十字に
組んで発射するジェレイドカノンで打ち消し、さらにはゼルエムにそのまま命中させる。

「ぐおおおおおおお!!」
今までほとんどダメージを受けなかったゼルエムが悲鳴をあげる。
触手などが次々に崩れ落ちていく。

「こ、このいい気になるなよ!!凍てつく波動と輝く冷たい息をくらえ!!」
ゼルエムはこの二つの攻撃を同時にするが、ジェレイドはそれらを
両腕で無効化した。そして上空へと飛び上がる。

「叩き落してくれる!!」
ゼルエムはミサイルや触手をあらん限りに放つが、ジェレイドはそれらを全て回避する。
そして一旦上空で立ち止まる。

「ジェレイドクロススラッシュ!!」
ジェレイドの体が黄金色に輝き、ゼルエムに向って突き進んでいく。
その目にも止まらぬ速さで、ゼルエムの全ての攻撃を回避し、ついには
ゼルエムの体を貫通した。

「ご・・・・・・あ・・・・・・・・」
貫通されたゼルエムの体は徐々に崩れていく。

「ごふっ、この俺が・・・・・・やられるとはな・・・・・・・見事と言うしかないな・・・・・・
認めようではないか・・・・・・この俺の敗北をな、ぐおおおおお!!」
そしてゼルエムはついに消滅する。

99 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:05 ID:???
「やったのか・・・・・・」
「ああ、どうやらそうみたいだぜ」
「やっと終わったんだな」
智、神楽、暦は戦いが終わった事を確認しあう。

「私達、勝ったんですね!」
「やったね、かおりん!」
「うん、千尋!!」
互いにハイタッチするかおりんと千尋。

「やった―――!!」
よつばが大きな声で叫んだのをきっかけに、その様子を見ていた人々の狂喜乱舞する。
そしてジェレイドは分離して5人のウルトラマンに戻った。

「空が晴れていくわ」
「平和が戻った事だね」
木村夫妻は光を取り戻した世界を見て、笑いあった。

「どうやらあいつ等やったみたいだな」
「ヒヤヒヤさせてくれるよね、まったく」
「そんな風には見えなかったよ、ゆっきー」
月にいるムーンキャッスルの面々も戦いが終わったのを見届けていた。

「やったわね」
「ああ」
和田と長谷川が互いに頷き合う。

「戦いは終わった。さっさと引き上げるとするか」
「彼女達に会わなくていいのか?」
「そんな必要はない。またそんな義理もない」
「私はメールくらいしておくわ」
バルック、カルナ、アヌビスは月面から引き上げる事になった。
そしてカルナからのメッセージがちよのメモリーディスプレイに入っていた。

「やっぱり、来ていたんですね。ありがとう、バルックさん、アヌビスさん、カルナさん」
そのメールを見て、ちよは顔を綻ばせた。

100 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:06 ID:???
「モーグ、いっちゃうのか」
「よつばちゃん、モーグとはいつでも会えるわよ」
「またな、モーグ」
名残惜しそうにしているよつばを恵那は諭した。そうして、みうらと一緒に帰っていく
モーグに手を振っていた。

「お別れだ、紗奈。私はまた宇宙の旅に出る。しっかりな」
「せっかくまた会えたのに。さびしいな」
去ろうとするザビロンを見て、紗奈はうつむく。
そして、顔をあげる。その時、紗奈は涙を流しつつも笑顔で手を振る。

「また私に会いに来てね、約束だよおじさん!」
「ああ。そうさせてもらうよ。私にとって大事な娘だからね」
ザビロンは、背中を向けて紗奈の前から去っていった。

「頑張ったね、紗奈ちゃん」
「私もそう思う。強くなったよ、紗奈」
澪とあずさが紗奈に歩み寄る。あずさは珍しく笑顔だった。

(やったね、お姉ちゃん)
心の中で姉のかなめに呼びかけていた。

「さらばだ、あさぎ」
「うん、またね」
ザナックとあさぎはあっさりと言っていいくらいの別れの挨拶を済ます。

「シンプルだこと。まあらしいけどね」
と興味なさげにタバコを吸う虎子。

「あ、待ってよザナック。じゃあ、あたしもう行くから」
ミルファがそう言ったのは京介達4人だった。ザナックの後を追うように
去っていった。

「ミルファさーん。今度来る時はあなたの猫耳も作っておくからー」
「何と言うか、お前は怖い物知らずだな」
「でも、似合いそうな気はするよね」
「うん、かわいいかも」
(駄目だ、この三人俺には荷が重い)
あくまでマイペースな工藤、みるちー、ゆかの前に京介はどっと疲れを覚えた。

101 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:10 ID:???
「奴は倒した。これで俺もこの地球にいる理由はなくなった。さらばだ」
ジェロスはHOLYやFLAMEのメンバーに一言そう告げて去っていった。

「私もそろそろ帰ります。地底の仲間達が待っていますから。いつか機会があったら
私達の元に来てくださいね。特に彪乃さんと咲月さんは大歓迎です」
「ああ、是非ともそうさせてもらうよ」
「またな」
ルミアは神楽と咲月に別れの挨拶をする。神楽と咲月はそれに答える。
そしてルミアは姿を消した。

「私も自分の星へと帰ります。さようなら皆さん、そしてさようなら歩さん」
「またな〜ジュリスちゃん」
ジャスティスの中から歩がジュリスに手を振っている。ジュリスもまた球体となって
宇宙へと去っていった。

「もう一度会えて嬉しかったよ、アレックス」
アレックスがゆっくりと顔を近づけてくる。暦はアレックスの頬を優しくなでる。
そしてアレックスは母親のバレンシアと一緒にまた宇宙へと旅立つのであった。

「俺達も行こう」
「地球という星に降りてみたが、悪くはないな」
「そうね、また来てみたいわ」
「お姉さん達またね!」
レクシオン人のカノン、シェスター、カスケード、リルも別れの挨拶もそこそこに
自分の母星へと帰っていたのだった。

「元気でな〜」
智は去ってゆく彼等に手を振る。

「オレ達も帰る事になりそうだな」
「みたいね、段々と体が薄れていってるみたいだし」
「ちぇっ、もう少しゆっくりしていきたかったんだがな」
「バイバイみんな。もしこっちに来る事があったらボク達とまた冒険しようね」
リーンバイスからやってきたハリアー、アーシャ、リックス、レジィナの四人も別れの挨拶を
終えた後に、この世界から姿を消した。

「メルビィさんがこの場にいたら大喜びしたんだろうな」
かおりんは消えていった4人の方角を見ながらそんな事を思い浮かべていた。
そして各地でもシーモンスやシーゴラス、リアード夫妻、リドリアスといった面々がそれぞれの住処へと
戻っていった。かおりんの言葉どおりメルビィは、仲間達と勝利の喜びにひたっていた。

102 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:11 ID:???
「さあて俺も行くとするかね。あ、そうそう、地球の男に飽きたらいつでも俺が嫁にしてやるぜ。じゃあな」
最後の一言は暦に向けてのものだった。そしてマッド星人も地球を去る。

「うわぁ、宇宙人からプロポーズされるなんて、よみいいなぁ」
「よくねーよ!あさぎさんやザナックみたいならまだしも、あいつにそんな事されてもうれしくないっての!」
「とかなんとか言って満更でもないんじゃないの」
「千尋、殴るぞ」
千尋に冷やかされ、顔を紅潮させて怒る暦。

「あんたねぇ、贅沢言ってんじゃないよ。異星人との恋愛なんてそうそうできるもんじゃないわよ」
「言ってる事には同意するけど、顔がニヤけてるわよ」
ゆかりは明らかにこの状況を楽しんでおり、それをみてみなもはやれやれとため息をついた。

そしてジャスティス、レイ、コスモス、シェイド、ジェネシスからそれぞれ
歩、榊、翔、百合子、大山の五人が分離する。

(僕はまだ生きている。それに何故だろう?今までのダメージがすっかり消え去ったようだ)
大山は自分が置かれている状況に戸惑っていた。

「まさか、ジェネシス、君が!?」
しかし、ジェネシスはその返事に答える事はなくそのままスーっと消えていった。
その時、大山はジェネシスの声を聞いた気がした。ジェネシスは大山が人工的に作り出した
ウルトラマン。意思など持つはずがなかった。それでも大山はこう言わずにいられなかった。
「ありがとう」と。

「よぉ、お互い生き延びたな、親友」
「そうだな」
歩み寄ってきた後藤に、大山は笑って応える。

「ありがとうシェイド。感謝しているわ」
『礼を言うのは私の方だ。君がいなければ私という存在はなかったのだから』
「これから、どうするの?」
『宇宙の旅に出ようと思う。宇宙にはまだまだ私の知らない事があるだろうからな』
「レクシオンに初めて行った時もそんな事を言っていたわね。さようならシェイド。あなたの事忘れないわ」
『私もだ。お別れだ、百合子』
百合子とシェイドが別れの言葉をかわす。

「やっぱ行っちゃうのん?」
『ああ、いつまでもこの星には留まる事は出来ない』
「あたしはムサシさんと比べたら駄目駄目やったかもしれへんけどな〜」

103 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:13 ID:???
『そんな事はない。私は翔の純粋な心がムサシと同じように好きだ。
いつまでもその純粋な心を忘れないでほしい。それが私からの願いだ』
「うん、約束するで。バイバイやで、大好きなコスモス」
『さらばだ、翔、シュワッ!』
『だあっっ!!』
翔と別れの挨拶を済ませた後に、コスモスとシェイドは地球から飛び去っていく。
そしてそこに翔の友達や、百合子の仲間達が駆け寄ってくる。

『弥生、お別れの時だ』
「うん。寂しいけど、仕方がない」
榊はレイとの会話で涙くんでいた。そしてマヤーがやってきて榊はそれを抱き上げる。

「これからどうするの?」
『私もまたシェイドと同じように色々な星を巡ってみようかと思う。そしてその後、
コスモスやジャスティスのように宇宙を守る戦士になるつもりだ』
「そうか。レイは目標を見つけたんだね。頑張ってレイ。私からはそれしか言えないけど」
『私にとってはその言葉だけで十分だ。私を生み出してくれたのが弥生でよかった』
「こちらこそ、レイに出会えてよかった」
『さようならだ、弥生。えいやっ!』
「さようなら、レイ!」
飛び去っていくレイに榊は手を振っていく。

「今までありがとう歩」
「ジャスティス・・・・・・・」
ジャスティスと歩は向かい合う。しばらくの間沈黙が続く。

『とうとうこの日が来たな。別れの時が来たのだ』
「どうしても行ってしまうのん?あたしとずっと一緒にいる事は出来ないん?あたしは
あんたと別れるの嫌や!」
歩にしては珍しく感情を爆発させる。

「歩さん」
「お姉ちゃん」
「歩・・・・・・」
百合子、翔、榊が呟く。

『君の気持ちは嬉しい、しかし、それは出来ない。この地球を守る任務が終わったら、
私は少しの休息の後、また別の惑星を守る任務につく。それが私のすべき事だから』
「・・・・・・・・」
それを聞いて歩は俯いてしまう。

104 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:17 ID:???
「やっぱり寂しいもんやな。分かってはいたけど、でも涙が出てくるんや」
歩が再び顔をあげると、その顔には大粒の涙がこぼれていた。

「あたしはあんたと一緒やったから、ジャスティスがいてくれたからどんな困難も
乗り越えてこれたんや。あたし一人やったら無理やった」
『そんな事はない。君は君で必死に困難を乗り越えてきた。時には私の想像の及ばぬ方法を用いたりしてだ。
それに君はもう立派に成長した。私がいなくても君は一人で歩き出せる。
私がいなくても素晴らしい仲間がいるから』
ジャスティスはジュリの姿を映し出し、歩に伝える。そしてちよ達を指差す。

「なぁ、ジャスティス。また会えるんよな?きっと会えるんよな?」
しかし、ジャスティスはその質問には答えず、上に顔を向ける。ジュリの姿も消える。
そして彼女達の変身アイテムも役目を終えたとばかりに消滅した。

「ジュワッ!!」
そしてジャスティスはこの地球を去っていった。夕焼けに染まる空へと・・・・・・・

「ジャスティス――――!!」
歩はあらんかぎりの声で叫ぶ。そしてその場に崩れ落ちて泣く。
ちよが声をかけようとして、榊はそれを遮って歩の元へと近づいて肩を置く。

「歩、これで最後って訳じゃない。私達がこうしてまた再会したように。きっとまた会える時が来る」
「そうですよ、大阪さん」
ちよも歩の涙を拭う。

「弥生ちゃん、ちよちゃん!」
歩は二人に抱きかかり、その腕の中で泣いたのだった。

「百合子さん、やりましたわね」
「やったなゆりゆり!」
「これで平和が戻ったんですね、ゆりゆり先輩!」
「百合子先輩、無事で何よりです!」
「始めまして百合子先輩。私、風香の友達の島袋と言います。喜びの創作ダンスを
躍らせていただきます」
「あ、ありがとう」
静、咲月、風香、七瀬が百合子にそれぞれ労いの言葉をかける。
しまうーのいきなりの創作ダンスに流石の百合子もポカーンとなる。

105 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:19 ID:???
「百合子、おかえり」
「ただいま京子」
京子と百合子はお互いにガッツポーズをとる。

「お疲れ様、ふたりとも」
舞は二人に笑いながらその言葉をかける。

「ゆりちゃん、お疲れさま」
百合子の母親も自宅で百合子に労いの言葉をかける。

「翔ちゃん、良かったよ!無事で!」
「全く、見ているこっちはハラハラしたぜ!」
「美空ちゃん、瑠菜ちゃん、あたしはこの通りピンピンしとるで」
翔は美空、瑠菜と喜びを分かち合う。その後で両親に気づき、ピースサインを送る。
両親もそれに気づいて手を振る。

「やったね、弥生さん!」
「ありがとう怜香さん」
怜香と榊はハイタッチする。

「凄いわね、あなた達の教え子達は。それにこんな事態でも全く取り乱さないあなた達も」
「おぉー栄子じゃん。なぁーに世の中なるようにしかならないって事ね」
「栄子お久しぶり。今度、舞ちゃんも誘ってまた食事に行きましょう」
栄子とゆかりとみなも、かつての同級生達はまた再会の喜びをかみしめていた。

「終わったのね」
「ああ、終わったんだ。もうHOLYも必要ない。彼女達にはまた穏やかな日常が待っている」
「そうね、この日を持ってHOLYもFLAMEも解散ね」
琴音と木村がそんな会話をかわす。

「諸君、ご苦労だった。総監からの意思、そして私からの意思を伝える。本日をもって現HOLYと
FLAMEは解散する。新たな一歩を踏み出してほしい。もちろん私もそうするつもりだ」
松岸の言葉に隊員達はそれぞれ思い思いの表情をする。

「我々の活動もようやく終わりを迎える事が出来たか」
「死んでいった仲間達も浮かばれるかな」
「私達はHOLYに比べると短い期間だったけど、解散となるとやっぱりほんの少し悲しいな」
上野、松戸、絵里が語り合う。

106 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:21 ID:???
「しばらくは体休めよう。俺は釣りでもするわ」
「じゃあ俺はSNOWの連中と音楽セッションでもするかな?」
「あ、じゃあそれにあたしも参加する」
金沢と浅倉、美里はこれからの事を話し合っていた。

「明日からあたし達も普通の一日に戻るんだな」
「そうだな。明日からまたみんな、離れ離れになるんだな」
「そんなに気にする程の事でもないだろう。また会おうと思えば会えるんだし」
智と神楽はこの一年近くに渡って怒った出来事を振り返る。暦がそんな二人に
笑いながら話しかける。

「この制服とも今日かぎりでお別れになるのね」
「やっぱり一年以上、この服を着ていたから、急に着なくなるのはさびしいものがあるね」
かおりんと千尋は制服の袖をいじりながら、思いを語る。

「私もですよ、やっぱり愛着湧きますよね」
「こういう事習慣になっていたから」
マヤーを肩にのせつつ、榊とちよも制服に対する愛着を語る。

「普段着にすればええんちゃう?」
「いや、それはちょっと・・・・・・」
歩の提案に、全員首を横に振った。そうして彼女達にとって忘れられない一日が過ぎていく。

「やったね、ちよ」
「メルさん!ありがとうございます!」
メルビィからの電話にちよは若干はしゃぎながら答えた。

「あんた達〜記念写真とったげるからそこ並びなさい」
「マジで!じゃああたし真ん中ね!」
「バカ!私だって!」
「お前らそんな事で争うなって」
「私は榊さんの隣!これだけは譲れないわ!」
「私はどこだっていいや」
智と神楽は位置を巡って争うが、それを暦が諌める。
必死なかおりんに対し、千尋はあまりこだわりを見せないなど見事に対照的だった。
ちなみにまたもかおりんは榊と腕を組んでいた。しかし、榊は別に気にした様子もなかった。
結局、真ん中はちよで、前列にちよ、歩、智、神楽が、後列に暦、榊、かおりん、千尋が
並ぶ事になった。

「よーし、じゃあ行くぞ。ハイ、チーズ!」
カメラのシャッターを押すゆかり。
そして彼女達はカメラに向ってスマイルする。それは今までで一番の、そして最高の笑顔だった。
その後、ゆかりやみなも達も交えた全員集合のスナップも撮影する。
そうして時が過ぎ、季節は春を迎えていた。

107 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:24 ID:???
エピローグ
「大阪、早くしろって!置いてくぞ!」
「待ってや、ともちゃん。早いて」
歩と智がどこかに向かって走っている。そうして向った先にあるのはマジカルランドと呼ばれる
テーマパークだった。

「遅いぞお前ら」
既にそこには神楽と暦、榊とかおりん、ちよの姿があった。

「しょうがねーだろ。大阪の奴、寝坊するから慌ててきたんだよ!」
「大阪らしいといえばらしいが、ちよちゃんはあんまりこっちにいられないんだから、気をつけろよな」
「いいですよ、よみさん。私は気にしていませんし」
「あとは千尋だけね」
「ごめーん、みんな待った〜」
かおりんが名前を言うと同時に、千尋がやってきた。

「大丈夫、みんなそんなに差はないから」
と榊は千尋に優しく笑いかける。ペットの持ち込みは禁止な為、マヤーは怜香に預けて
きているのだった。

「私達にとってはこれで2回目のマジカルランド全員集合だけど、かおりんや千尋に
とっては初めての事なんだよな」
神楽はそう言うと、千尋の方を見て、ニヤリと笑う。

「ところで千尋、長谷川とはうまくいってるの?」
「あーそれ私も知りたい」
「ちょ、ちょっと神楽さんもよみも何言い出すのよ!」
顔を真っ赤にして首を振る千尋。

「最近の変化で一番大きいのはそれですよね。あとは私達全員無事
大学3年生になれたって事くらいで」
ちよまでニッコリ笑って千尋に話かける。

「千尋ちゃん、ええなぁ」
「この中で千尋が一番先に結婚するかもな」
「とうとう長谷川君、告ったもんね」
その時の様子を説明すると、「そろそろハッキリさせなさい!」と和田に焚きつけられる形で
長谷川は千尋に告白したのだった。

「お、俺と付き合ってくれ!千尋ちゃん!!」
このセリフを言うまでかなりじれったくイライラしたとはゆっきーの談。

「こんな私でよければ」
と千尋もOKを出し、現在に至るのである。賭け事でもしていたのか、何故か
松田が異様に喜んでいたという。

108 :第78話(最終回) 「光り輝く勝利の為に そして未来へと・・・・・・・」 :2007/04/28(土) 23:28 ID:???
「おめでとう、お二人さん!」
「これで晴れて公認のカップルだね!」
「おめでとう。あーあと俺、かなめちんと結婚すっかもしんないわ。じゃあ」
長谷川と千尋のカップルが成立して沸きあがる中、橘が衝撃的な発言をする。
みんなが「え?」となり、振り返るとゆっきーは「ポッ」となっていた。
そして踵を返す橘の後ろをゆっきーが寄り添うように歩いていく。

「そんな事を言うなら、ちよちゃんこそ大山君とどうなの!?」
「わ、私は何もありませんのだ!ただ文通しているだけですじょ!」
(何故に文通?メールじゃないの?)
ちよの言葉に全員が同じツッコミをする。

「さあ、そんな事よりさっさと遊びにいこうぜ!」
「ああ、思いっきり遊ぶぞ〜」
「あのレールチェイスの奴やってみないか?」
「ああ、それ前にゆりゆりがやってた奴だよね?」
「あと和田さんも」
智、神楽、千尋、かおりん、暦は善は急げとばかりに歩き出す。

「私達も行きましょう」
「うん」
ちよと榊もそれに続いて歩き出す。歩はしばらくその場に留まっていた。

「どうしたんですか大阪さん、早く行きましょう」
「ちょっと考えとったんや、ジャスティスやレイ、それにコスモスやシェイドは今、
元気でやっとるんかなーって」
歩の発言に二人は顔を見合わせる。しかし、二人はニッコリと笑いかける。

「大丈夫、みんな元気に宇宙を飛び回っている」
「そうですよ、心配いりませんって」
「そっか、そうやな」
歩もそれを聞いて安心したように笑う。

「おーい、何してんだ。置いてくぞ〜」
遠くから彼女達を呼ぶ声がする。

「さあ、行きましょう大阪さん」
「行こう、歩」
ちよと榊に手を繋いで歩は歩き出す。

「なあ、ちよちゃん、弥生ちゃん。みんな一緒ってええもんやな」
「はい」
「うん」
歩の言葉に二人は満面の笑みで答える。
この物語はここで終わりを迎える。しかし、彼女達の日常はまだまだ続く。
平凡だけどかけがえのない日常。そして未来へと・・・・・・・・    第78話 終    
ウルトラマンジャスティス   完

109 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2007/04/28(土) 23:33 ID:???
ついに終わりました。この物語が始まってから4年ちょっとたってますが、
正直ここまで続くとは思いませんでした。
(それこそムーンキャッスルなんて影も形もなかった)
最終回は特に長いですけど、これでもかなり削った方だったりします。
今までこの長い話を読んでもらえた事に感謝です。
どうもありがとうございました。

110 :レウルーラ ◆iCj5r1a15w :2007/04/28(土) 23:37 ID:???
>>85-109
えーと、ここは敢えて一言……
4年にも及ぶ長期連載の完結、本当にお疲れ様でした!!

111 :名無しさんちゃうねん :2007/05/09(水) 19:34 ID:???
またひとつ作品が終わっていく。
いまやこのスレで連載が継続されているのは下駄さんのだけか・・・・・・

112 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始− :2007/11/18(日) 00:44 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−



青い空が、どこまでも続いている。
そして天より降り注ぐ太陽光を遮る物も何も無い。
時折穏やかな風が吹き、それが少女の栗色の髪の毛を靡かせた。

「あいつら、今頃どうしてるかなぁ…」


青々と茂る草むらに寝転びながら、神楽はそう呟いた。
施設の一角の傾斜に面したこの場所を神楽は気に入っていた。
自然に囲まれたこの場所から香る匂い、そして寝転べば自然と
視界に入る緑の木々と太陽の光が、たまらなく好きだった。
工場で働く労働者のような服が自分の体の下に生えている「いのち」に触れるなんとも言えない
その感触の中。
このままこの自然と自分も一つになりたい。
そんな考えに心の中で「感傷のしすぎかな」というノイズが入り、思わず苦笑した。

その時、一陣の突風が吹いた。
穏やかに揺れていた草木がバサっと嘶き、荒れる波間の様にうねりを描く。

「ウッ…!」

突然の風に、神楽は目を塞いで上体を起こし、身を守るような姿勢をとった。
そして恐る恐る目を開けると、自分の周囲の太陽光を遮り、影を落としながら
飛び去っていく三つの機影があった。
紅、白、黄の三つの機体は編隊を組みながら飛行し、
その機影の正体がゲットマシンであると神楽が感知するが早いか、
基地である浅間山の上空を越え、彼女の視界から消え去ってしまった。

113 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始− :2007/11/18(日) 00:49 ID:???
機影が去り、風も吹き止んだ。
周囲の環境は、心地よかった先程の状態に戻った筈なのに
神楽はもう一度寝転ぼうとは思わなかった。

「……ハァ……」

ゲットマシンの去っていった方角に向けていた視線を変え、
おもむろに彼女は立ち上がった。
彼女の眼下には、生い茂る緑を侵食するかのように広がる、荒れ果てた荒野があった。
神楽が今立っている場所から10歩も歩けば、お気に入りのこの場所も荒野の仲間入り。
かさかさの落ち葉の上に橙色の絵の具をぶちまけたような
大地の表面は裂け、幾つもの戦いの傷跡を刻んでいた。
地上の至る所には黒々とした金属片のような、またどこか有機的にも見える物体が散乱している

その中の一つ。
槍か、刃のような巨大な破片が空に向かって虚しい直立をしていた。

覚えている。

あの極限状態の中、悲鳴と絶望の中で見た映像にも関わらず、ハッキリと覚えている。

黒い巨体を無惨に切り裂く、戦斧を携えた真紅の鬼―ゲッター1のあの姿。
無数の光を掻い潜って現れる白銀の騎士―ゲッター2。

旋風と共に爆砕される昆虫の群れ。
灼熱の閃光に撃ち砕かれる犠牲者の哀れな断末魔。



あの操縦室で味わった、地獄のような苦しみを。









TO BE CONTINUED

114 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:01 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(2)



白金の装甲を貫く触手の一撃。
あの日、流竜馬と初めて会った時のあの光景に酷似した映像が
巨大なスクリーンに映し出され、視覚を直撃する。
デジャヴーにも近い光景だが、以前と今では何もかもが違って見えた。

以前、戦闘を目の当たりにした際の感情は
カタルシスという開放感。
平凡で、安らかに流れていく時間の中で垣間見た
巨大な力と力の激突。
危機的な状況の中でそれを味わえた理由は、危機感の少なさ。
確かに何人かの人間が死亡したが、その大体は集団の中の一部が襲われたのではなく。

集団からはぐれた、つまりま見えない場所での殺戮により生徒達が「生」と「死」を
理解しなかった、というのが大きい。

その上遺体と残骸、そして死骸は秘密裏に処理を行われたために
彼等の殆どは犠牲者がどんな有様だったのかも知らなかった。

それ故にあの非日常的な活劇を、【楽しむ】という感情を交えた中で
味わうことができた。



今は違う。

115 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:02 ID:???
今は違う。

この閉鎖された空間の中で嫌と云うほどの恐怖と絶望を味わっている。
圧倒的な戦力差。
それに抗う人型が織り成す残虐な舞台劇。
巻き上がる悲鳴、
そして何より、常に心臓を握られているかのような、
自分達に迫る『死』の姿。
戦闘の影響の地割れ。
その振動が死神の足音の様に心の臓へと迫り来る。

カタルシスは訪れず、訪れるのは不の感情。
恐怖、絶望、呪い、精神ののたうち。
産まれてこの方、こんな場面や状況を味わってなどはこなかった。



ただ二名。
あの日、校舎内で流竜馬と行動を共にしていた滝野智と神楽茜を除いては。




「――るよ」

ザワついていた室内が、一気に静まり返る。
声が収束した場所の中心いたのは、神楽。
神楽茜がいた。

116 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:03 ID:???
「え……ちょっと……何いtt」
衰弱した智を抱えながら、暦が言いかけたその時。







「乗るって云ってるんだよッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」








俯いた神楽の唇が振るえ、喉の奥から擦り切ったような声を吐き出した。
その声、いや怒号は、鳴り響く地響きや大型モニターから溢れる破壊音さえをも一瞬かき消した。
少女の両足の膝に力が篭る。
そして俯いていた顔がむっくりと起き上がり、赤く血走ったその眼光を老人へと向ける。
全力疾走した時とは違う感触のする荒い息を吐きながら、神楽は口の中に鉄の味が滲むのを感じた。
自分でも知らないうちに唇の端を八重歯が噛み潰していた。
神楽の口の裾から赤い血が溢れ出す。

117 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(2)− :2007/11/22(木) 23:04 ID:???
「―――そうか」

老人はそう一言言うと、老人は目の前のコンピュータのボタンを2、3度押した。
すると、薄暗い部屋の一角の闇が開き、其処から光が溢れた。
部屋の中を漂う埃が、ダイヤモンド・ダストのような輝きを放ち生徒達の眼を貫く。

「行け」

神楽の方を振り返り、早乙女が光の方向を指し示す。



「その先に、お前の龍が待っている」












TO BE CONTINUED

118 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:10 ID:???
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第12話 −始−(3)


「ぅ…」

数週間前のヴィジョンが頭を過ぎった刹那、神楽は顔をしかめた。

胸の辺りが、苦しい。

記憶の中、操縦席の中で味わったあの感覚。
振動という振動が自分の皮膚から、はらわたへと駆け巡る圧迫感。
それが、記憶を遡るというそれだけの行動で鮮明に蘇る。

鈍痛にも鋭痛にも似たその痛みは身体の奥底から、
あるいは素肌の表面から内部へと伝わるようにも広がり、神楽の身体を蝕む。
更に強く、更に広い範囲へと痛みはその歩を進める。

「ちくしょう…なんで、なんでまた……」

歯を喰いしばりながら神楽は呟いた。
初め、擦るように胸に置いておいた右掌は何時の間にか彼女の乳房を握り潰すよう覆いかぶさり、
ぎりぎりと指の切っ先を肉に喰い込ませていた。
四肢の力が抜けていく。
直立していた体も徐々にくの字に曲がってゆき、
最後は左手を地面へと押し付け、地面に跪くこととなった。

「がは…ぁ…は…ハ……」

神楽の呼吸が急激に荒くなる。
突発的な過呼吸の為に空気は殆ど肺へは行かずに、神楽の口腔内を出入りするだけとなり、
吐く息には唾液と共に鉄の味が混じり、不快感を増大させる。
喉からもじわじわと熱い空気が込み上げてくる。


ゲロを吐く一歩手前の状態が、今か。

119 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:11 ID:???
ポツっ



「ひっ!?」

消化しかけの朝食が濃厚な酸の味とともに喉を駆け上がってきたその時。
小さな水の破裂と共に、嬌声にも似た声を神楽は挙げた。
首筋をなぞり、背筋へと沁み込む一滴のしずく。
それが雨だと気付いたのは、吐きかけの嘔吐物がちょうど胃袋へと逆戻りしたところだった。

くいと首をもたげ、神楽は空を見上げた。



ザァァアーーーーーーーーーーーーーーッ



「ぉわッ!」

目が景色を認識した瞬間に塞がれる、口と目。
彼女の顔目掛け無数の水の弾丸が降り立った。
それらは、まってましたとばかりに彼女の顔面を打ち付ける。

しかし、水泳をやっていた手前、水に対しては慣れている。
すぐにまた目を開け、目の前の光景をぼぅっと眺めた。
思えば、こういう風に雨が降るのをゆっくりと見上げるのは初めてのことかもしれない。
傘もなく、遮蔽物もなく、また陰に逃げ込むわけでもなく、
水に濡れるというリスクを冒さずに雨というものを眺めるのは。

清涼感があった先程とは違う、石灰をぶちまけたような灰色の空。
ダークな印象を受けるその空に、知らず知らずのうちに神楽は自分の姿を投影しているように見えた。


灰色の雲は、まるで自分の心の暗闇。
陰鬱と言う感情が押し出た精神状態、そのものである、と。
身体を駆け巡った幻痛、吐き気。
それらは全t

120 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:12 ID:???
バチッ!


「くぅ…痛っつう……」

突如、虚空を裂いて破裂音が木霊した。
神楽が、自分自身の顔を両掌で押し潰していた。
頬と密着した両掌は衝撃を加えられた頬がじんじんと腫れていく
熱の篭った感覚を本体へと伝えていく。

自らが思い描いた不の思考の全てを、神楽はその一撃で断ち切った。
あまりに強く叩いてしまったためか、思考と共に意識まで一瞬吹っ飛んでしまったほどだった。

神楽はここで、別の思考を持った。

神楽にぶち当たっていく雨は冷たく、それらが神楽の体温を貪るように奪っていく。
しかしまた、頬の下ではじわぁっと血液が流れていくのが分かる。
それは生きているという事。

今までの幻痛も、あの日味わった恐慌も。
あの地獄ですら今こうして思い出すことが出来る。
これが、今生きているという事。

それを思えるだけで、心がすぅっと軽くなった。
力の入らなかった四肢にも、力が入る。
精神にも肉体にも、僅かばかりの余裕と言うものができてきた。

人間の身体とは思いの他勝手なもので、一つの欲求が満たされると、
又次の欲求を満たしたくなる。
神楽の身体が求めたのは、「食」と「暖」だった。

121 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:12 ID:???
冷えかけた身体が、それらを求め疼いているのが分かる。
雨が降る中、胃液の溜まるその場所からぐぅうっと絞るような音が鳴った。
反射的にその場所に向けて目を向け、周囲をぐるりと見渡した。
恥ずかしさから、神楽の頬は朱に染まっていたもののこんな時に外に出る物好きは
彼女だけのようで、周囲には誰もいなかった。

思わず、ほっと溜息。
そうすると、安堵感の為か更に腹の虫が要求をしてくる。

「ああ! もう、うるせぇなぁ! お前は後だ、後!」

ぽんっと腹筋のあたりを軽く叩きながら、神楽は笑った。

「今は―――」

そして、そのつま先を自分の目線の反対方向へとぐるりと回した。

「フロに入るのが先っ!」

つま先が地面に触れた瞬間、それがスタートの合図となった。
神楽の身体が、それらに向けて一直線に走り出した。



自分の心にへばりつく、トラウマの渦を拭い去るように。

122 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(3)− :2007/12/01(土) 03:13 ID:???
雨は、益々強くなっていった。
また雨を運ぶ風も、強く、激しく。
その姿を嵐という名の暴風雨へと変えていった。












to be continued

123 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:13 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(4)


仄暗い雲が、山脈のような形を築いて幾つも空に浮かんでいる。
見るものを憂鬱な気分にさせるこの薄汚い雲の色の中。

その中で、事は起きていた。



「ゲッタァァアアアアーーーーーーーーッビィイイイイイイイイイム!!!!!!!!!!!!」




天を裂く怒号と共に螺旋状の赤い光の束が奔り、空(くう)を切り裂く。
糸の様な細さの中に太陽熱にさえ匹敵する超高熱を携えたエネルギーが、
その軸線上にあるものを消していく。

熱線が触れた部分の雲は消し飛び、一瞬で数千億、
何兆もの水滴が形無き蒸気と化して虚無へと還っていった。

アリの巣のように穴だらけになった雲の奥。
熱線の輝きに照らされて、巨大な物体がぼやっとした影を蠢かせた。
その蠢きを、熱線を放った張本人の眼に入ると同時に、熱線は雲の中へ飲み込まれるように
螺旋状を描いたままに次々と突き刺さっていった。

124 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:14 ID:???
そして次の瞬間、赤い光は自分を包み込んだ雲を、逆に喰らっていた。
雲の中で赤い光が炸裂し、その爆発は雲に穴を開けただけでは飽き足らず、
雲そのものを内部から貪欲に食い荒らし、その形を無へと化させた。

その直後、鼓膜を引き裂くような不快感極まる絶叫が大空に響き渡った。
時折雲と雲の間を駆け巡る雷鳴さえもかき消す金属音のような叫びは、赤い光の爆発地点からのものだった。

僅かな雲の破片が漂う中、爆発地点を睨む、二つの眼光が煌いた。
爆発地点の間逆の方位。
光が放たれたその先に佇むは、真紅の機械巨人【ゲッター1】。
高度数千メートルの荒れ狂う気流の中、空中戦を主眼に置いたこの機体は
自分を取り巻く自然環境など何処吹く風と。
マント状の翼、ゲッターウイングを靡かせながら宙に浮かんでいた。

飛行機、飛行船、ミサイル、果ては翼竜に至るまで、
世界中の物体という物体が飛行という行為を行うに当たって絶対的に不可欠な
推力という概念を持たずに悠然と大空に佇むその姿には、孤高の風格があった。

この翼はいくつかの物事を具現化したものでもあった。
襲い来る脅威に対し、無力な人間が【ゲッターロボ】という人類の切札としてのみに与えた唯一の翼であること。
そしてこの機械巨人を駆る人間が、この強大極まる力を用いることを許されている証だった。


ギャッァァアアアアアグゥウアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


突如、ゲッター1の上空から不快な叫びが降り注ぐ。
機体が首をぐるっと擡げ、その方向へと眼光を移した。

125 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:14 ID:???


「ゲッタァァァアアアアトマホオオオオオック!!!!!!」


それを確認すると同時に、ウイングの根元の右肩部から迫り出した突起から
一本の棒切れのようなものが飛び出した。
鉄(くろがね)の色をしたそれは空気に触れた途端、内部へ押し込められていた刃と凶悪な牙の群れを
内部より吐き出し、その姿を戦斧へと変えた。
小振りな戦斧が、ゲッター1の右手に吸い付くように握られる。


ガキィッ


次の瞬間、高い周波を放ちながら、二つの刃は激突した。
一つはゲッター1が装備する鉄の戦斧、【ゲッタートマホーク】。

もう一つは、昆虫の手足を模した奇怪な形をした、鎌のような刃。
対峙する二つのシルエットの対比は、【人型】と【異形】。
本来、人間が片手一つで払い除ける雑多で矮小なはずの蝿の姿をそのままに、質量を肥大させていた。
その大きさは、これまた不快感を前面に押した出した薄汚い羽を広げていることも相まって、
全長38mものゲッター1を凌駕していた。

不潔感を煽る丸い腹部の形状を残したまま、か細い手足の先端は巨大な刃状になり、
また、腐った果実や動物の死体を啜(すす)る吸盤状の口は、
肉食動物のような凶暴さに満ち溢れた牙を何本も携えた口腔へと変化していた。

126 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:15 ID:???
「旧約聖書に蝿の化け物がいたが―――こいつが、まさにそれか」

異形の姿を前に、搭乗員は物静かに言った。
しかし、その声は嫌悪感と侮蔑感に満ち溢れている。
当の本人も不快さを露にし、言葉を吐き捨てると同時に赤い舌を打ち鳴らした。

「遊んでないで片付けろ、竜馬」

言い終わるか終わらないか。
その刹那に、再び戦斧は放たれた。

「うるせぇ!!」

怒声が轟き、真紅の装甲で覆われた左腕の五指が噛み付くようにそれを握り取る。
そしてそれを、一本目のトマホークを受け止めている刃の斜め上、
ボツボツとした無数の複眼で膨らんだ蝿の左眼球へ突き込んだ。
「つぷっ」という、眼球の膜が引き裂け、
その内部にたっぷりと詰まっている紫色の液体が抉れた肉にぐちゃぐちゃと混じり合う。

ぎゃあっと濁した悲鳴を上げた蝿は、反射的に刃をトマホークから遠ざけた。
しかし、それが敗北への引き金となった。

刃からの剣圧が消え、自由となったトマホークを遮る物はもう何も無い。

「もらったァ!!」

ゲッターウイングが靡き、ゲッター1が蝿の懐へと肉薄する。

127 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:15 ID:???
「うぉおおおおおらぁああああああああーーーーーーーーっ!!!!」

右の刃が剥き出しになった蝿のぶくぶくと太った腹部を切り裂いた。
苔の様にびっしりと生えた毛が、トマホークの一閃でぼわっと溢れ、
腹部に詰まった消化器官もろ共空中にその身を投げ出した。

ゴブッ

という水溶液の溢れ返る嫌な音を立て、
紫色の体液が、腹部の断面図から、そしてびっしりと牙の生えた
蝿の口腔から溢れ出す。

だが、容赦などは無い。
右の刃が蝿から離れるのと同時に、今度は左のトマホークを同じ場所に叩きつけた。
叩きつけた、というのは、今度の攻撃は刃では無くトゲ付きの鉄槌だったからである。

牙のようなトゲが傷口を一気に拡大させ内臓のいくつかを喰いちぎった。
泡立っていた液体がシャボン玉のように宙に舞っていく。

斬撃と打撃の二重奏が奏でられていた時間は、秒数に換算して僅かコンマ7秒。
それも、ゲッター1が蝿の懐に飛び込んだ時から数えての数字で。

つまり、竜馬が挙げた咆哮が鳴り止む前にこれらの事は起っていた。
巨人を自らの手足のように扱うその技量と、これを繰り出す非現実的な戦闘能力。
神速の絶技、と言わずして何と言おう。

128 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:16 ID:???
ギャガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


液体と肉片のミックス・ジュースを嘔吐しながら、
蝿が咆哮を上げた。
反撃の狼煙とでも言うべき叫びと共に、
刃状の手足全ての切っ先を自らの腹部へと振り下ろした。
即ち、全ての刃はゲッター1へと向かっていった。

ゲッターロボの装甲は、総じて脆弱な面がある。
拳や腕部は攻撃・防御に転じるために強化されているものの、
その他の部分は内部の機器と密接な距離を保っている。
唯一の例外としては、腹部にある動力炉心周辺が重厚な装甲によって封印されているのみである。

機体とパイロットを守る防壁であるはずの装甲が、何故薄いのか。
その理由は、単純明快。


攻撃を受ける可能性が、極めて低いから。

その、一言に尽きる。

六本の刃がゲッター1へと触れる瞬間、ゲッター1の全身が炎を噴いた。
被弾によるダメージのためではなく、機体自らが炎を纏っている。
炎の様に赤いゲッターウイングは、主であるゲッター1の頭部を構成する戦闘機、
【イーグル号】へと還っていった。

129 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:16 ID:???

側面に銀色の光沢を放つ刃を携えた腕は、白を基調としたゲッター1の胴体、
【ジャガー号】内部へスライド状に折り畳まれていく。

紅いラインの走る脚部は、黄の色をした他機と比べずんぐりとした、
言うなれば爆撃機のような姿をした【ベアー号】へとその身を戻す。
驚くべきことは、今まで脚部だったものが機体の長さの半分程度の
筒状の物体に収納され、しかもそれが戦闘機の姿に戻った際には
左右一対の双発エンジンへと変化したことだった。

それらが、一斉に火を噴き、それぞれの機体の名前を冠した獣の如く
勢いで疾走する。

人型という形態を取っ払った今、通常の戦闘機等とは比べようにもならない
機動力を駆使し、蝿の射程距離から一気にその身を遠ざける。
先程、とはいってもほんの1秒足らず前の時間に、ゲッター1へと振り下ろした刃は
ゲッター1はおろか、それが分離したゲットマシンへ全く傷を与えられる事が
出来ずに虚しく虚空を裂いた。
それどころか、勢い余って自らの身体にその切っ先を埋めてしまう程だった。

蝿が足掻き、もがく姿を嘲笑うかのように三機のゲットマシンは蝿と真逆の方向へと進路を取っていた。
雲を突き破った先には、悪天候という自然環境に翻弄される海面が広がっていた。
その景色がパイロット達、流竜馬、神隼人の眼光へと入った途端、
三つの機体はお互いを喰い合わせ、その姿を一つの人型へと昇華させていく。

130 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:18 ID:???

「チェェェエエエンジゲッタァァアアアアアアアツゥッ!!!!!!!!!!」

低く、どこか狂気染みた叫びが、天を衝いた。
白金の装甲の背面のバーニアが火を噴き、【ゲッター2】が空を翔る。


「ドリルアァァアアアアアアアアアアアアアム!!!!!!!!!!!」」

ゲッター2の左腕に携えたドリルが、優美とも取れるゲッター2の外見とは
全く異質の物であるかのように豪快な回転音を上げる。

地上戦用機である手前、
空での機動力でこそゲッター1に劣るものの、直線的な飛行、移動ならば本機に並ぶものは無い。
追い着けるのは、この地球と言う星で考えても光学兵器ぐらいだろう。
しかしそれすらも、超絶的な機体スペックと操縦能力を携えた神隼人の前には直撃させることは
おろか、被弾させられるのかも怪しい。

蝿は、自分の身体に突き刺さった手足を自分の肉ごと抉り抜き、体勢を立て直していた。
翼長70mはあろうかという巨大な翼が、実際の蝿さながらの羽ばたきで空を飛行する。
ピザとでも呼ばれそうな体型の割にそのスピードは速い。
二重、三重と回を重ねる羽の振動が物理的な法則を無視したスピードを叩き出していた。

口からは体液、腹部からは臓物を撒き散らしながら、蝿はゲッター2へと向かっていく。
ゲッター2もまた、我が飢えを満たさんとばかりに牙を剥くドリルの切っ先を
標的へと合わせ、蝿へ突撃する。


「うぅぅうううォおおおおおおおおおお―――――――――――――ッ!!!」

ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!

二つの狂気の叫びが、天空を貫いた。

131 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:18 ID:???



叫びが木霊し終えた後に残るのは、高い周波を撒き散らしながら
掘削する銀色のドリルの咆哮だった。

主の元を離れても尚、獲物の味と手ごたえの感触を謳歌するように
蝿の身体に食い込むドリルの銀光が、雲の間から射した太陽光によって映えた。
当の蝿は、叫び一つも揚げずにドリルの体内侵食を許していた。

というのも、ドリルの突き刺さっていた場所が蝿の頭部の
口腔内で、上げたくても上げられない、といった方が正しいようだ。
ドリルの掘削力は凄まじく、その回転により蝿の姿が全体的に歪んでいく。

その破壊は、頭部と上半身だけでは飽き足らず、ゲッター1の猛撃によって
破砕された下半身にまで広がっていった。
全身がビシビシと悲鳴を上げ、蝿の身体は崩壊の寸前を迎えていた。

そこに、鈍い光沢を放つ槌が下された。
蝿の腹部がべっこりと経込み、その身体がくの字以上に捻じ曲がった。

「この間のお返しだ、蟲ケラが」

ついで、と言わんばかりに二度、三度と、ヒールのような形状をした
紅い脚による蹴撃を加える。
その度に、蝿の体はボロボロと土くれの様に削れて果てる。

だがその度に、刃状の手足は反射なのか意図的なのか、びくびくと動き
その攻撃者へ向かって刃を翳す。

132 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:19 ID:???


しかし哀しいかな、その最期の抵抗さえゲッターロボの持つ
驚異的な分散能力を前には糸くず程度の損傷を与えることもなく無惨に舞うのみで終わった。

分散した三機は蝿の遥か上空へ駆け上がると、その身を一つへと重ねる。

先にベアー号と組み合ったジャガー号からは紅の腕部が迫り出し、
下半身を形成するベアー号の巨大双発エンジンはゲッター1の脚部へと変化する。
そして、最後の仕上げ。
イーグル号の先端から中腹にかけてがガバっと展開し、それが鬼兜のような
形状へと変化すし、既に合体を終え、巨大な十字架と化している二機へその身を叩き衝けた。

亀の甲羅かサッカーボールのような緑色のフィルターが施された頭部に、
二つのひし形の眼光が宿る。
そして背面からは、この世界の、大空の覇者であることの証であるゲッターウイングがその姿を広げた。

眼下では、潰れた左目ではなく、健在な右目でこちらを睨む蝿の姿があった。
引き裂けた腹から滴る物はもう何も無く、臓物も何もかもを撒き散らし尽くしながら、
蝿はゲッター1へと向かっていく。

「往生際が悪いぜぇ!! 蟲ケラぁ!!!」

ゲッター1の顔のフィルタが濃緑色を孕み、背面のゲッターウイングが、腹部が。
そして、機体全体が多大なエネルギーによって靡き、振動する。
ゲッター1の腹部のへその辺りが開き、そこに紅いエネルギーが収束する。

戦闘が始まった当初の、あのようなか細い物ではない。
大量の超エネルギー、【ゲッター線】の力を最大限に引き出した紅の剣が
そこには既に出来上がっていた。

133 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:20 ID:???


蝿は既に眼前に迫っていた。
そして、この時を待っていたとばかりに、流竜馬は叫んだ。
全てを砕く真紅の剣の名を。











    「ゲッタアアアアアアアアアアアアアアアアアビィイイイイイイイイイイイイイイイム!!!!!!!!!!!!」

134 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(4)− :2007/12/07(金) 01:21 ID:???











巨大な炸裂が発生し、空が一面を朱に染めた。
多大な振動が空を揺らし、その衝撃は僅かながら地上にまで到達した。


炸裂が発生した場所から、最低でも1キロ四方の雲と言う雲は姿を消し、風も止んでいた。
雲と言う遮蔽物が失せ、太陽光がその光によって宙域を照らし出す。

その中を、三機の戦闘機が悠々と飛行していた。
我が物顔で宙域の飛行を謳歌するその姿が、戦闘の勝利を、何よりも雄弁に語っていた。









to be continued

135 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:47 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(5)


グジュ、グシャ、グシュ

水苔を潰すような、内面からじゅわっと湧き上がる水音を立てながら、
神楽は廊下を歩いていた。

大雨に晒した身体は栗色の髪の一本、果ては下着にまで水の浸入を許していた。
衣類に含まれた大量の水による鉛のような重量感を神楽は感じた。

ふと、自分の視界に意識を置いてみた。
特にこれと言って変わったことはないものの、飾り気の無い風景だった。
今まで自分の通っていた学校と言う建物には、至る所に他愛の無い標語や
美術部か何かが描いたなんだかよく分からないポスターが点々と貼られていたものだ。

それが今はどうだろう。
天井に設置された照明が光を照らし、フローリングを施された薄灰色の床がその光に弱弱しく反射する。
殺風景、といえばそれまでだが逆を返せば人類の切札である巨大人型兵器ゲッターロボの
拠点であるこの場所、早乙女研究所の廊下に何を飾ろうというのか。

『火の元注意』
-重火器が大量に設置されていることは、早乙女から聞いていた。
カムフラージュされているものの、火の元などは家具同然にそこらに置いてある。

『手を洗おー』
-聞けば以前、研究所全体で大規模な食中毒になったらしい。
それ以来恐らく徹底しているだろう。

強いて言えば、『打倒!!独サイ者』『ハチュウ人類の首は刎ねてから潰せ』
『鬼には炒り豆よりも散弾銃』といった
血の匂いの香る物騒かつ非現実極まりないなものだったらよく似合うかもしれないが。
そんな考えに、神楽は思いを馳せていた。

136 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:48 ID:???
「(完全懲悪…かんぜん…かんぜん…凶あ)」

『く』と繋げるつもりだったはずのその思考はそこで途切れた。

ドンッ

「っ!?」

突如、額に衝撃が走りその反動が彼女を跳ね飛ばした。
どすん!という鈍い音を立て、神楽の臀部に緩い鈍痛が走った。

「てて……!?」

痛みの広がる箇所に右手を添えたその折に、神楽の両目が眼前の二足を捉えた。
二足を包む御世辞にも綺麗とはいえない年季の入ったスニーカー。
本来結ばれているはずの紐は、面倒なのか地面に垂れていた。
同時に神楽はその主の顔がある場所へと目を移したが、
途端、神楽の視界を五本の指が遮った。

それは神楽の後襟首を掴むと、
まるで仔ネコでも扱うように神楽の体をひょいっと拾い上げた。

一気に引き上げられた神楽の視線に、二つの光が飛び込んだ。

その瞬間、神楽の感覚は停止した。

そこにあったのは、ぎらぎらとした光を陽炎の様に滾らせた二つの眼光。
ブラックホールのような、底の見えない輝く闇から出でる精神を貫く鋭い輝き。
野性味と言うだけでは到底に満ち足りない未知を孕んだ、何か。

恐怖なのか、それとも別の感情なのか。
分類の出来ないその何かに、神楽の精神と肉体は膠着を余儀なくされていた。

しかしこの状態が、永遠に続くことは無かった。

137 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:51 ID:???


『よォ』

解いたのは眼光の主の一言だった。
その声を聞いた途端、指先がびくっと震え、金縛りが一気に吹き飛んだ。
膠着の解けた神楽は、肺に溜まった二酸化炭素を「ぜはっ」と吐き出し、叫んだ。

「な、流っ!」

彼女は苗字で彼を呼んだ。

「なにやってやがんだ、こんな場所でよ」
「な、なにって……なんだよその格好!?」


片手一本で猫の様に持ち上げられた神楽が見た竜馬は、
学校での格好そのままに学生服を羽織っていた。

かなり乱雑に扱っているのか至る所が破れ、ささくれ立っていた。
それは最早、学生服と呼べる代物とは程遠く、まるで獣の毛皮のように変化していた。
(これも学校での彼の格好と同じだった)

荒波か、炎のように波打った太い眉毛。
耳を掠め、頬下にまで山脈の様に脈々と連ねるもみ上げ。
精悍、というには表現出来る言葉が余りにも足りなすぎるものを滾らせた顔。
ずらっと開いた前ボタンから覗く、鍛え上げられた腹筋の上に
白いサラシを巻いたその姿は、まるで応援団長か、番長か。

果ては命を惜しまぬ傭兵かなにかのようにも見えた。

138 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY  第12話 −始(5)− :2007/12/18(火) 20:54 ID:???
明らかに、普通とは異なる異様と呼べる風体だったがこの男にはそれがよく似合っていた。
それはこの男自体が人間じみていないことと、どんな服や容姿でも
強引に自分に融合させ、調和させかねない圧倒的な力強さと強引さが
彼の肉体と精神から溢れ出していることに他ならない。

寧ろ、きちんとお行儀良く制服を着込んでいた方がどれだけ不気味なことか。
生まれながらに、彼は杓子定規と言うものに囚われてはいないのだから。


「ああ、こいつか」

困惑する神楽をよそに、この男はいかにもあっけらかんとした表情だった。

「中々気に入ったんでな、普段着にしてやってんだ。 どうだ、似合うか?」

この上なく答え辛い質問に、神楽は濡れた頭部に頭痛が響くのを感じた。







to be continued

139 :第3話 「受け継がれた絆」 :2008/01/09(水) 01:53 ID:???
ウルトラマンセイバー
第3話 「受け継がれた絆」
ミサイル超獣ベロクロン 登場

静岡県静岡市――
ここにいきなり巨大な怪獣が出現した。
珊瑚礁をベースに作られたと思われる外見をしている。
全身は緑色で、鼻先の角と足にある棘は藍色になっており、体には真っ赤な突起物がある。
目は赤一色となっており、それがより一層禍々しさを強調している。
珊瑚と宇宙怪獣の合体生物である『超獣』である。名はベロクロンという。
ベロクロンは出現するなり、口から火炎を吐いて市街の破壊をはじめる。
近くにあった建物も力任せに腕を振り回して破壊する。
周囲はたちまち火の海に包まれた。

この事態を受けて地球防衛軍のものと思われる戦闘機部隊がATDF部隊より先駆ける形で出撃する。

「我々はこれよりあのモンスターへの攻撃を開始する。全機、俺に続け」
隊長格の男の出した命令により、編隊飛行をする戦闘機部隊。隊長機が前に出て
ベロクロンの鼻を狙って弾丸を撃ち込む。続く機体もそれにならって同じ箇所を攻撃する。
その攻撃は見事に鼻に当たり、他の攻撃も頭部に命中する。
ベロクロンは反撃の火炎を吐く。編隊飛行していた最後部の2機に当たり、
2機はエンジン部をやられそのまま墜落していった。
さらにベロクロンは指先からミサイルを発射してきた。

「ミサイル!?」
隊長も全く想定していなかった攻撃に驚きを隠せなかった。
ベロクロンは手からだけでなく、体にある突起物からもミサイルを発射してきた。
これにより何機もの戦闘機が撃墜され、市街地に墜落するという事態に陥っている。

「隊長、自分が背後に回りこんで奴にミサイルを叩き込んでやります!」
「待て、よすんだ」
隊長の制止を振り切り、隊員のうちの一人がベロクロンの背後に回りこんで攻撃を仕掛けようとする。
だが、ベロクロンは背中にある突起物からもミサイルは放ってきた。
それはその機体に真っ直ぐ飛んできた。

140 :第3話 「受け継がれた絆」 :2008/01/09(水) 01:57 ID:???
「な、何で後ろからも!?うわああああああああああ!!」
機体に直撃し、その隊員は脱出する間もなく空中分解した機体と共にこの世を去る。
だが、ベロクロンはその攻撃をストップさせた。

「どうやら、ミサイルが尽きたようだな。今が敵を倒すチャンスだ。全機俺に続け!」
好機とばかりに隊長はベロクロンに接近して、ミサイルを叩き込もうとする。
隊長に続けとばかりに後続機も編隊を組みなおす。
例え火炎を吐かれても、かわしきる自信が隊長にはあった。だからあえて正面から攻撃を仕掛けようとしたのだ。
だが、ベロクロンが繰り出した攻撃は意外にもミサイルだった。
ベロクロンは口の中にもミサイルを含んでいたのだ。
火炎よりも素早く連続発射されるミサイルにより、たちまち戦闘機は撃墜された。

「火が・・・・・・ああああああ!!」
隊長機は火が一瞬にして燃え広がり、脱出する事すら敵わずに落下して爆発する事となった。
他の機体も空中爆発するか、墜落するかのどちらかであった。これにより戦闘機部隊は全滅してしまった。

「ベロクロン、もういい。一旦引き上げるんだ」
ベロクロンの脳内に命令する声があった。それは女性のものであった。
ベロクロンはその命令に従い陽炎のようにゆらゆら揺らめいたかと思うと、その場から姿を消した。
周囲には墜落した機体の残骸や、崩れ落ちた建物が残るのみであった。

「流石は超獣といったところね」
場面は変わり、宇宙船内部にある会議室にて一人の女性が声をかけてきた。
地球人と敵対する組織EOFのメンバーで、その中の四天王であるゼレル・レザルード、
そしてベロクロンを操っていたのがヴァリシア・クラウゼクである。

「ゼレルか。起動テストとしては申しぶない成果だな。ところでエメノザとロナの姿が見えないが・・・・・・」
いつもは席に座っているはずの二人がいない事に気づいて「おや?」とヴァリシアは思ったのだった。
正反対の考えを持つ二人な為、意見の衝突が繰り返されるのが日常茶飯事となっている。

「エメノザは手下にする宇宙人のスカウトに行ってるんじゃないかしら?ロナはブレイズに送り込むロボットを製作中よ」
「そうか。その方がうるさくなくて助かるがな」

141 :第3話 「受け継がれた絆」―アバン― :2008/01/09(水) 01:59 ID:???
「それが二人の耳に入ったら、怒られるわね」
「違いないな」
普段からあまり笑わないヴァリシアにしては珍しく、ゼレルとの他愛のない会話で少し笑った。
しかし、すぐにその表情は引き締められる。

「少し休ませてもらうぞ」
「ええ」
ヴァリシアはゼレルに告げると、作戦室から出て行った。

その頃、地球のATDF基地では・・・・・・
順序が逆になってしまったものの、入隊テストを終えたHOLYの面々が戻ってきたのだった。
皆、疲れきった顔をしている。

「あ〜疲れた」
「覚悟はしていたけど、想像以上だね」
みうらと恵那は汗びっしょりになっており、肩で息をしている。

「何とかギリギリ合格できたわね」
「ここでいきなり落ちてたりしたら、ちよちゃんに笑われちゃうからね」
みるちーとゆかもぐったりしている。机に突っ伏す形で話している。

「みんなだらしないぞ。しっかりしろ!」
「このぐらいでバテてたら、この先もたないよ」
逆によつばとあずさの二人はほとんど息切れしておらず、余裕さえ見える。

「二人とも何でそんなに元気なの?前のお姉さん達もこんな感じだったのかな?」
澪は頭に氷を当てていた。まるで風邪をひいたかのようだ。

「紗奈は彪乃からそういう話は聞いてないのか?」
「姉さんからは特にそういう話は聞いてない。聞かなかったし」
紗奈も疲れてはいるのだろうが、澪達よりは涼しい顔をしている。

「みんな、お疲れ様。順序が逆になっちゃったけど、やっぱりこれはしておかないと
他の隊員にとっても不公平だし、不満もでちゃうからね。とりあえずみんな、
HOLYに入隊できるだけの資質は持っていて安心したよ。で、次にやってもらう事なんだけど・・・・・・」
今回も音声のみで総司令と思わしき女性の声がスピーカーから聞こえてきた。

142 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/09(水) 02:14 ID:???
ウルトラマンセイバー1,2話はこちらでUPされています。

ウルトラマンセイバー1話
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/232-239(Aパート)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/241-252(Bパート)

ウルトラマンセイバー2話
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/256-258(アバン)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/272-278(Aパート)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/272-278(Bパート)
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/309-317(Cパート)

従来のAパート、Bパートでは長いという意見があった為、
セイバー2話からUPする形式が変わりました。

143 :名無しさんちゃうねん :2008/01/09(水) 02:17 ID:???
ttp://so.la/test/read.cgi/create/1090586807/300-305

訂正します。2話のBパートは上記のものです。

144 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:14 ID:???
新たな総司令から言い渡されたのは、HOLYに入隊した事をちゃんと家族に伝える事だった。
前回のテロチルスとの戦いの直後に入隊テストをしたものだから、全員その事を報告していなかったのだ。
テストを終えて基地に戻った時にはもう夜になっていた。現在夜9時。
当然、よつば達は家族にそれを報告する為に帰宅するのだった。

「おいおいお前がHOLY?その組織大丈夫か?」
「でもないんじゃない?前にはあたしの教え子達がなって地球を救ったんだから」
よつばが家に戻るとちょうど両親も帰宅しており、少し遅めの夜食をとることになった。
父親である小岩井修輔は驚いていたが、母親であるゆかりはさほど気にした様子もない。
母親の旧姓は谷崎。結婚して姓が変わったのである。
当然、よつばとは血が繋がっていない。

(結婚式の時は、二人ともガチガチに緊張してて思わず笑っちゃったっけ)
じゃがいもを口の中に運びながら、よつばはその事を思い出して笑いそうになった。

「まあなったからには頑張れよな。俺も適当に応援するから」
「適当は良くない!全力で応援しろ」
「分かった。よし、よつばを応援するダンスを披露してやるぞ!ヒョー」
食事中だというのに、小岩井はいきなり椅子から立ち上がり、太極拳を連想させる奇妙な舞をし始めた。

「こうか?とーちゃん」
「違う、もっと腕を水平にだ!!」
「お前ら、食事中に踊るんじゃねぇ!!」
ゆかりが椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がり、二人の頭を引っぱたいた。

「す、すいませんでした」
二人して頭を下げた後に、食事を再開する。よつばは緑茶を口に含む。

「あ、そうそうよつば。あの新しく現れたウルトラマンセイバーだっけ?
あれってもしかしてよつばの変身だったりする?」
「ぶっ!!」
いきなり核心をついた質問をされた為、よつばは飲んでいた緑茶を盛大に小岩井の顔面に飛ばしてしまった。

145 :第3話 「受け継がれた絆」―アバン― :2008/01/13(日) 00:16 ID:???
「よつば、行儀悪いぞ」
傍にあったあった布巾で顔を拭きながら、小岩井はよつばに注意した。

「ごめん、とーちゃん。だってゆかりが突拍子もない事を言うからさ」
「悪かったわよ。確かに突拍子もないわね。けどさ前のジャスティスは大阪が、
レイは榊が、コスモスは神戸、シェイドはあの凸女だったから、
今回も隊員の中の誰かなんじゃないかと思ったって訳よ」
ゆかりの鋭い指摘によつばは内心ヒヤヒヤしている。
しかしゆかりは、それ以上の追求はせずに食器を台所へと運んでゆく。

(ゆかりは相変わらず鋭いな)
前のウルトラマン達の正体もかなり早い段階で知っていたので、ゆかりの洞察力は並ではない事が伺える。
つまりいつよつばがセイバーだと知られてもおかしくないのだ。
その後、疲れをとろうとよつばは入浴し、そして寝室へと向った。そしてゴロリとベッドに転がり込んだ。
トレードマークであるヘアースタイルは今は無造作に伸びている。

「なあ、セイバー」
よつばは天井を見上げて、セイバーに呼びかける。

『何だ?』
その呼びかけに反応してセイバーが答える。彼女の枕元にセイバーが姿を現した。
最もこれは立体映像の一種で実際にセイバーがそこにいる訳ではない。

「セイバーはどうして地球を守ってくれるんだ?」
しばらくの沈黙が訪れる。

『私はかつて地球を守ったジャスティスやコスモスからこの星の事を聞かされていた。
素晴らしき人類がいる星だと。レイやシェイドも同様だった。彼等にそこまで言わせる程のこの地球に大変興味を持った。
一度は行ってみたいと思っていた。それが思わぬ形で実現する事となった』
「それで、どうだったんだ?」
セイバーはこの地球への思いを語り始める。

『彼等のいう事は間違ってはいなかった。君や君の素晴らしい仲間達を知る事が出来たのだから。
私は君達に出会う事が出来て良かったと思っている』
セイバーの思いによつばは胸にじーんとくるものを感じた。

146 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:19 ID:???
「ありがとうセイバー。そこまで思ってくれるなんてうれしいよ。あたしも一緒に
なったのがあんたで良かったと思っている。これからも頑張ろう」
『ああ』
それを最後にセイバーへの交信が終わった。よつばもまた就寝するのだった。

その頃、お隣の綾瀬家では……
恵那のHOLY隊長就任記念パーティーが行われていた。大きめなデコレーションケーキまで用意されていた。

「恵那、HOLY隊長就任おめでとう」
父親が恵那に向ってお祝いの言葉を投げかける。家族全員揃って乾杯をする。

「お、お父さん。恥ずかしいからこんな事しなくてもいいのに」
「なぁに遠慮してんのよ。おめでたい事なんだからさ」
恥ずかしがる恵那に対して、母親は頭を撫で、大きく切ったものを恵那に与える。

「しかし、恵那が隊長とはねぇ。あっ、風香それちょうだい」
「意外だよねぇ、お姉ちゃん。まあメンバー見る感じでは適任かもね。ってちょっとお姉ちゃん、その苺とらないでよ!
それ私が狙ってた奴なんだから!」
「馬鹿ね、こういうのは早い者勝ちに決まってるじゃない」
あさぎと風香がそれぞれ感想を洩らす。あさぎが風香から苺を取ろうとして咎められる。
こういった所は全く変わっていない。

「全くあんた達はいつまでたっても成長しないんだから」
「そういえばあさぎお姉ちゃんはあの人とは会ってるの?」
「ん?ああたまにね。そんなしょっちゅうは会えないけどね」
「私もお姉ちゃんも仕事忙しいからね。こうして家族揃うのが珍しいくらいだし」
「だからこういう風に恵那の事を祝うのは貴重だな。精一杯祝おうじゃないか」
「照れくさいなぁ。でもみんなありがとう」
この日、綾瀬家は盛大に盛りがったのだった。

早坂みうらもまた家族にその事を報告し、そしてある人物にメールするのだった。
送信してまもなくすぐに返信されてきた。『滝野智』と表示されていた。

「智らしいな。『あたしには勝てないだろうけど、みうらが副隊長ならうまくやってけるだろ』なんて」
そのメールを見て、みうらは口を大きく開けて笑うのだった。

147 :第3話 「受け継がれた絆」―Aパート― :2008/01/13(日) 00:22 ID:???
紗奈は一番この事を告げたい人達は生憎そばにいなかった。

「姉さんにはメールで伝えられるけど、おじさんには無理かなぁ」
それでも姉と慕っている彪乃からは激励の返事があって紗奈は幾分嬉しそうだった。
『なったからには気合入れてけよ紗奈』と。

「あらあら、それは大変ねぇ。頑張ってね」
「グッジョブ、マイドーター」
(いつもと同じで何か調子狂うなぁ。お母さんもお父さんも)
ほとんどいつもと変わらないリアクションをされ、澪は戸惑ったが、祝福されていると思うことにした。

「久しぶりだな、ちよちゃんに手紙出すの」
「海外だし、メールや国際電話だと高くなっちゃうし、中々繋がらないからね」
みるちーやゆかは家に帰ってこの事を手紙にしてかつての親友に送るのだった。

「かなめ姉さんは今どうしてるかな?」
結城あずさの姉、結城かなめはムーンキャッスルに所属しているらしいが、あずさには正確な部署までは分らない。
連絡を取ろうにも個人的な事で連絡を取り合う事は許可されていないので、かなめがどうしているかは全く分らないのだった。
しかし、気にしてもしょうがないとすぐに思いなおし、一日の疲れを取るために入浴した後に熟睡するのだった。
あれよこれよとしているうちに時計は0時を回ろうとしていた。

翌日、午前11時30分――
ヴァリシアは何かのコントロール装置に手を触れる。

「やるのね?」
「ああ、期は熟したからな」
ゼレルに問われ、ヴァリシアは力強く頷いた。

「行け、ベロクロン!今度はウルトラマンセイバーを抹殺するんだ!」
ヴァリシアが装置のボタンを押すと、空間に歪みが発生する。そしてベロクロンは
その空間へと飛び込んでいった。

東京近郊にて陽炎のような歪みが発生した後に、その空間を切り裂いて超獣ベロクロンが出現するのだった。

148 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/13(日) 00:24 ID:???
彼女達の近況を簡単にまとめてみました。
初期段階ではみなもやジャンボ、やんだなども出る予定でしたが、
収拾つかなくなりそうだったのでやめました。

149 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 21:53 ID:???
晴れ晴れとした空に出現したベロクロンに人々は恐怖する。
ベロクロンは出現するなり、火炎とミサイルによる攻撃で静岡に現れた時と同様に周囲をたちまち火の海にした。
轟々と燃え盛る街。
この事態を受けて、TEAM HOLYに出動要請がかかる。

「超獣出現!超獣出現!TEAM HOLYはただちに出動してください!」
警報サイレンの音がけたたましく鳴る。赤いランプが激しく明滅している。

「ポイントPXに現れた巨大生物は静岡で暴れた超獣と同種のものと確認。レジストコードはベロクロン!」
「ベロクロンは真っ直ぐこの基地のある場所を目指しているよ」
オペレーターであるみるちーとゆかが状況を報告する。

「分りました。みんな出撃しよう。フォーメーションはテロチルスの時と同じ奴でね。
みちるさん、ゆかさん、ここをお願いします」
「OK、任せといて」
恵那にここを頼まれた二人は指でOKのサインを出す。そして手元にあるパネルを叩き始めた。
画面上に様々な情報が表示される。その中には暴れるベロクロンの姿も映っている。

「まだ避難が終わってないみたいだぞ」
「突然の出現だったから、避難誘導が出来ていないのよ」
みうらは地上の様子を見て言った。それに対してあずさが答える。

「超獣をなるべく人のいない場所へと追い出しましょう。みんな山の方に誘導させるわよ」
「分ったぞ、恵那!」
恵那の指示によつばが一番最初に返事をする。後ろで紗奈も頷いている。

「よーし、紗奈あたし達から行こう」
「うん、よつばちゃん」
まずホワイトトルネードがベロクロンの目の前を横切る。
彼女たちの狙い通りベロクロンはホワイトトルネードを落とそうと炎を吐いてくる。

「澪、あずさ。分離して別々の場所から攻撃するぞ」
「OK、やってみるよ」
「分離」
みうら、澪、あずさはクリムゾンフレアを三機に分離させて散開して攻撃をする。

150 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 21:57 ID:???
自動照準機能があるため、狙いを外す事はない。
みうらは鼻を、澪は腕を、あずさは背中に向ってミサイルを発射するボタンを押す。
戦闘機の真下に搭載されているミサイルがベロクロンがミサイルを発射する部位を狙う。

グルルルルルル!
対するベロクロンも咆哮をあげつつ、口と指先、そして背中からミサイルを発射してそれらを相殺する。

「次は私の番ね、えい!」
その隙を逃さずにベロクロンの頭部に向って恵那の乗るブルーエクレールがレーザーを撃ち込む。
こちらも正確に当てる事に成功する。
ベロクロンが上を見上げると、そこにはホワイトトルネードが迫っていた。

「よつばちゃん、今だよ」
「いっくぞ〜。これでもくらえ!」

キシャァァァァァァ!!
ホワイトトルネードから発せられるレーザーがベロクロンの口の中にあるミサイル発射口に見事に命中する。
悲鳴らしき金きり声をあげるベロクロン。
ベロクロンはこの攻撃でダメージを負ったのか、動きを止めた。ベロクロンの目は白黒ならぬ赤黒に明滅している。

「やるじゃん、よつば」
「やったね、よつばちゃん」
「へへーん、どんなもんだい」
みうらと澪に褒められ、すっかりよつばは上機嫌である。

(あの人は今回はいないみたいね)
あずさはブラッド・クライアの姿を探したがどこにもその姿はなかった。

「これで決まりかな?」
「普通なら死んでいるよね?でも超獣だし」
紗奈の問いかけに恵那はそう答える。
しばらくするとベロクロンの口から大量の泡が吐き出され、そして空に散っていく。
ゴボゴボと不気味な音をたててさながらシャボン玉のごとく大気を舞うのだ。

151 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:00 ID:???
カッ!とその禍々しき真っ赤な瞳が光る。

「そんな!?生き返った?」
「生き返ったというより気絶していただけみたいだな」
「そんなとこだね」
ベロクロンの復活に澪は動揺するが、みうらやあずさは意外にも冷静だった。

「あの泡はベロクロンの体液だね。あの泡を変質させてミサイルに変えるの。
つまりベロクロンは体内でミサイルを作り出す事が出来るんだ」
ベロクロンのスキャニングデータの結果を伝えたのはみるちーの方だった。

「みんな、付近の住民の避難は完了したわ。あとはベロクロンを倒すだけよ」
ゆかは避難が終了した事を皆に伝える。

「よーし、一気に行くぞ〜」
「待ってよつばちゃん、うかつに近づいたら危ない」
よつばの乗るホワイトトルネードがベロクロンに接近する。
恵那は引き止めようとするが、遅かった。
ベロクロンの火炎が襲い掛かってきたのだ。この攻撃で機体後方が燃え上がる。

「うわ!」
「脱出しようよつばちゃん。このままじゃ危険だよ」
「仕方ない、脱出!」
紗奈に脱出を促され、よつばは脱出レバーを引いて脱出する。
機体上部が開かれ、よつばと紗奈が投げ出されパラシュートで降下する。

バァァァァァァン!!
機体はそのまま地面に衝突して爆発炎上した。

「この野郎!よつばと紗奈の仇はとってやるからな!澪、あずさ、行くぞ」
「OK」
クリムゾンフレアの三人は先程と同様、三方向に分かれてレーザーを撃つ。
しかし今度はベロクロンもその攻撃に対応してきた。
正面から攻撃したみうらには腕からのミサイルで、背後や側面から攻撃した
澪とあずさに対しては背中からのミサイルで反撃してきた。
今度は避ける事が出来ずに、三機とも被弾してしまう。

152 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:04 ID:???
「やられた。機体を不時着させるぞ。澪、あずさ、出来るか?」
「こんな市街地じゃ無理だよ」
「脱出するしかない。このままじゃ墜落する!」
結局、三人も脱出する事にした。尚、全員前回までと同じで機体はオートコントロールである。

「みんな!」
恵那はよつば達に気をとられた。だがそれによって隙が出来てしまった。

「危ない恵那ちゃん、前を見て!」
「そのままだとベロクロンの射程圏に入っちゃうわ」
みるちーとゆかの通信を聞いてハッとなる恵那。見ると眼前にベロクロンがいて
口を開けてミサイルを発射しようとしていた。

「くっ」
恵那のブルーエクレールは慌てて急上昇する。
しかし、一歩遅くベロクロンの口からのミサイルが機体下部を掠めた。
これにより機体はバランスを崩した。
もし、気づくのが遅れていたら直撃していた事だろう。

「しまった!」
しかし、それでも機体に影響を及ぼしたらしくどんどんと降下していく。

「脱出!」
やむをえず恵那は脱出する。しかし偶然からか、機体はベロクロンに向って落ちていく。
ベロクロンもそれに気づいたが、火炎やミサイルを使ったばかりなのですぐに迎撃体勢をとれなかった。
腕で振り払おうとしたが、間に合わずベロクロンの腹に命中した。

ドォォォォォォォン!!
流石に効いたらしく、わずかだが後方に下がる。

「紗奈、大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫だよ」
パラシュートで先に地面に着いたよつばは後から降りてきた紗奈に声をかけて無事である事を確認した。
すぐにその場から離れる二人。

153 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:06 ID:???
「いってぇ〜。おい、二人とも大丈夫か?」
「こっちは大丈夫よ」
「私も生きてます」
みうら、あずさ、澪も着地には成功しており、よつば達と合流する。
頭を打ったのか、みうらが頭をおさえていた。
彼女達がいる場所は十字路になっている交差点だった。周囲には信号機や民家などの低い建物がある。
最も民家はベロクロンの攻撃の影響で半数が壊れてしまっているが・・・・・・

「みんな、無事で何よりだわ」
最後に恵那がパラシュートで降下してきた。全員の無事を見て恵那は安堵する。

「地球人の力はこの程度か?ベロクロンの攻撃手段がミサイルと火炎だけだと思ったら大間違いだぞ。
しかし、地球人程度の戦力ならそれを披露するまでもないな」
「あくまでもウルトラマンセイバーに対して使うのね」
「そうだ。最初にも言っただろう。地球人の戦力など私達から見たら取るに足らない存在だ。
ベロクロンはウルトラマンセイバー抹殺の為に造ったと」
ゼレルとヴァリシアはスクリーンで様子を見ながら、地球人を見下す発言をする。

「さあベロクロン、邪魔な奴等は全て蹴散らせ」
ヴァリシアの命令を受けてか、それとも恵那によって受けたダメージの怒りからか、
ベロクロンはよつば達の方へ向って迫ってくる。

「固まってると狙い撃ちされるぞ。散らばるんだ!」
「紗奈、捕まって」
「ごめん、あずさちゃん」
「澪ちゃん、こっち!」
「はい!」
みうらの声を合図に散開する。紗奈はあずさに抱えられ、澪は恵那と一緒に逃げる。
紗奈とあずさは右側、澪と恵那は左側、そしてみうらは真っ直ぐ逃げる。

「だったらあたしはあいつを惹き付ける!」
ただ一人よつばだけはベロクロンの注意を惹き付けるべく、逆に奴のいる方へ向っていく。

「馬鹿!何してんだよ戻れよ、殺されるぞ!」
みうらは怒鳴りながら、よつばを追う為に来た道を引き返す。

154 :第3話 「受け継がれた絆」―Bパート― :2008/01/20(日) 22:09 ID:???
だが、それにより逆にベロクロンはみうらに向って火炎を吐こうとする。
「よつばちゃん、みうらちゃん!澪ちゃん、先に行ってて!」
「危ないよ、恵那ちゃん」
恵那も二人を追う。澪は動こうとしたが、体がいう事をきかずその場を動く事が出来なかった。

「こっちだベロクロン!あたしはここにいるぞ!」
よつばはレーザーガンでベロクロンの足元を攻撃する。
攻撃を受けたベロクロンはよつばの存在に気がつき、みうらからよつばにターゲットを変更する。
ボォォォォォッという音と共に火炎を吐いて焼き殺そうとする。

「あっつ!」
とっさに身をかがめたよつば。そのスレスレを火炎が放射された。
その熱気が伝わってきたのか、チリチリと髪が音をたてる。

「よつばが危ない!」
みうらや恵那は助けに行こうとするが、散発的に発射されるミサイルに阻まれてそれ以上近づく事が出来ない。
目の前のよつばに集中しているせいか、その狙いはでたらめである。
だが、そのせいで軌道が読めずかえって厄介な事になっている。

「このままここにいたら、私達も危ないわ!引き上げましょう」
「くそ、無事でいろよ、よつば」
やむを得ず二人はここから離れる事になった。一瞬、ミサイルの攻撃がやんだのを見計らって二人はこの場を離れる。
一方のよつばは火炎によって退路を阻まれていた。後方は炎の海となっている。
ついによつばは胸にしまってある星型のペンダント『スターフラッシャー』を取り出す。

「あたしに力を貸してくれ。セイバー!!」
スターフラッシャーを胸につけて、よつばはセイバーの名を叫ぶ。
よつばの周囲をまばゆい金色の光が包み込み、やがて一人の巨人へと変化させる。
銀を基調としており、上半身は赤と青、下半身は紫のカラーリングをしたウルトラ戦士
ウルトラマンセイバーである。
ウルトラマンセイバーは右手を高く掲げた状態で登場しする。

「ウルトラマンセイバー!」
モニターでその姿を見たみるちーとゆかが同時に口にした言葉である。

155 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/01/20(日) 22:11 ID:???
実はこれ、一度書き直しています。最初のはベロクロン相手にかなり善戦しており、
それはいくらなんでもないだろって事で変更しました。

156 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:43 ID:???
「やはり現れたなウルトラマンセイバー。さあベロクロン、奴を倒すんだ」
ヴァリシアの命令を受けてベロクロンは腕からミサイルをセイバーに向けて発射した。
しかし、セイバーはそれを避けようともせずに悠然と構えている。
ミサイルが胴体に当たるものの、彼は全く動じていない。

「ていっ!」
火炎を吐いてくるベロクロンに対し、その火炎の軌道スレスレの高さから跳ね上がり、
ドロップキックで蹴り飛ばすセイバー。
その蹴りにベロクロンは体を支えきれず、後ろへと倒れこんだ。
しかし、すぐに起き上がり今度は口からのミサイルで狙い撃ちにしてきた。
対してセイバーはそのミサイルを何と手足で弾いてしまった。
カキンカキンという金属らしき音をたててミサイルは掻き消えていく。

「ぬんっ!」
セイバーはその巨体で軽々と飛翔して、ベロクロンの背後へと回り込んだ。

「気をつけろセイバー!後ろからもミサイルが飛んでくるぞ」
とみうら。
その言葉どおり、ベロクロンは背を向けたまま豪雨のごとくミサイルをセイバーに向けて発射する。
彼はそのミサイルの軌道を全て見切り、大きく飛び越えた。
そして空中で体を捻った後に、ベロクロンの頭部を蹴り、仰向けに倒れさせた。

「はっ!」
セイバーが今度はベロクロンに接近する。
敵もセイバー目指して走り出すが、側転とバック転を交互に使いこなしやり過ごす。
これによりお互いの位置が入れ替わった。

ギシャアアアアアア!!

耳をつんざく程の唸り声をあげるベロクロン。周囲の空気が一気に張り詰めた物になる。
両手から何やら白い輪を作り出し、、それをセイバーに向って投げつける。
その白い輪はたちまちセイバーの体を締め付けてしまった。

「うっ!」
セイバーは苦悶の声をあげる。
ベロクロンは中指と人差し指と薬指の三本の指から白い光線を発射してカラータイマーの真下に当ててきた。

157 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:49 ID:???
「うおっ!」
白い輪に拘束されているセイバーは成す術もなくくらってしまう。
輪は消えたものの、セイバーはうつ伏せになって倒れこむ。

「セイバー、しっかり!」
声援を送る紗奈。その声が聞こえたのか、立ち上がるセイバー。

「確かにミサイルだけではないみたいね」
「そういう事だ」
この戦いを見ているゼレルとヴァリシアは味方が優勢であるにも関わらず淡々としていた。

咆哮をあげ、ベロクロンが頭から体当たりをしてきたのだ。
その攻撃に当たってしまったセイバーは、数メートル先まで転倒した。
さらに追い討ちをかけるべく灼熱の火炎を吐いてきた。
いくらセイバーといえどもその火炎をくらえばひとたまりもないだろう。

「はっ!」
セイバーは横転してその攻撃を回避する
ベロクロンは火炎を吐きつつ、徐々に距離を詰めてきた。
むせるような熱風が周囲に及ぶ。炎との距離も徐々に縮まっていく。
セイバーは何回か地面を転がった後に、体勢を立て直す。

だが、ここで予期せぬ攻撃が繰り出された。
ベロクロンは全ての器官からミサイルを発射してきたのだ。
しかも今度は狙いを絞っているせいか、確実にホーミングしてきている。
真上から流星雨のごとくセイバーに降り注ぎ、彼の周囲で次々に爆発!
さらに口のミサイルに被弾してしまい、うつ伏せに倒れこんだ。

「うおおおっ」
その猛攻の前についにセイバーのカラータイマーが青から赤に変わった。
エネルギーの消耗が激しい地球上では、ウルトラマンセイバーは長くは活動できない。
エネルギーが無くなると胸のカラータイマーが点滅を始める。
その輝きが消えた時、それがウルトラマンセイバーの最後の時なのだ!

「頑張ってセイバー!」
今度は澪が声援を送る。他のメンバーも固唾を飲んで見守っている。

158 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 22:58 ID:???
ベロクロンは再び全方位ミサイル発射体勢に入った。
勝ち誇ったかのような咆哮をあげる。

「しぇああああああ!」
セイバーのカラータイマーから赤色の光線が発射され、飛んでいく。
ベロクロンの口に見事に命中し、轟音をあげた。
タイマーショットと呼ばれる必殺技だ。

ギュオオオオオ!!
くらったベロクロンは悲鳴をあげながらよろめく。これによる影響か、ベロクロンはミサイルと火炎を吐けなくなった。
恐らく口にあるミサイル発射口と火炎を吐く器官を今の攻撃により破壊されたからであろう。

「チャンスだぞ、セイバー!」
「はっ!」
みうらの声に頷くセイバー。その後、右の拳で殴りかかる。
空気を切り裂くような一撃が相手の顔面に突きささり、体をぐらりと傾かせる。
よろけたベロクロンをセイバーは両腕で頭上に抱えあげる。
彼は何の苦もなく、軽々とこの物体を持ち上げてしまった。

「でやあああああ!」
力の限り放り投げるセイバー。ドスンと音をたててベロクロンは地面に叩きつけられた。
立ち上がった超獣はもはや虫の息であった。
咆哮を発するものの、その声には迫力も相手を畏怖させる力も感じられない。

「おおおおおお、はっ!」
ベロクロンとの距離をとったセイバーは腕を十字に組んで紫色の光線を放つ。
必殺技ライトニングストリームだ!
ベロクロンの頭部に命中し、爆発を起こした後に、奴は後ろにゆっくり崩れ落ちる。
直後に、ベロクロンは両腕を一度は上に上げるものの、そこまでが限界だった。
力尽きてその腕を地面に下ろし、目の赤い光も消えたのだった。
ほどなくしてその死骸は消滅していく。まるで一陣の砂のように儚く・・・・・・

「やったよ!みうらちゃん」
「セイバーが勝ったな!」
恵那とみうらがハイタッチをした。白い歯を見せて笑いあう二人。

159 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 23:09 ID:???
「シュワッ!」
セイバーは両手を挙げて空へと飛び去っていく。そしてその姿が消えた後によつばの姿になり地上へと舞い降りる。

「二人とも無事みたいでよかった」
「あずさちゃんに助けてもらったよ。ありがとうあずさちゃん」
「別に当たり前の事をしただけだよ」
澪はあずさと紗奈に合流する。互いに無事を喜び合う。
しかし、あずさだけは無表情のまま何かを探している。

(あの人はいないみたい)
あずさは周囲を見渡すが、ブラッド・クライアの姿を見つける事は出来なかった。
今回はこの近くにいないのだろう。

「どうしたの?あずさちゃん?」
「誰か探しているの?」
「いや、何でもない」
澪と紗奈にその様子を見られたからか、二人に聞かれるが、あずさははぐらかした。
あずさはブラッド・クライアを見かけた事をまだ誰にも話していない。
まだ正体もハッキリしていないという事と、あそこにいると思う反面、もしかしたら幻を見ているのではないかと
いう思いに囚われ、話すことが出来ずにいる。
そんなあずさの思いをよそに、二人は他の仲間達に声をかけた。

「よつばちゃんも無事を確認っと」
「セイバーに助けられたってとこかな」
モニターでよつばの無事を確認するみるちーとゆか。とても満足そうだ。
ベロクロンに関する情報を提示していた画面が閉じられていく。

「ベロクロンがやられたか。そうでなければ張り合いがないというものだ」
自分の手駒がやられたと言うのにヴァリシアはどことなく嬉しそうだった。

「嬉しそうね」
「まあな、単調な作業にならなくて済みそうだからな」
「私は逆ね。出来れば早く済ませてしまいたいもの、こんな事」
どことなく嬉しそうなヴァリシアとは対照的に、ゼレルは不機嫌そうだ。
何かを考えているのか、しばらく俯いていたが、おもむろに席を立つゼレル。

160 :第3話 「受け継がれた絆」―Cパート― :2008/02/10(日) 23:14 ID:???
「どこへ行くんだ?」
「地球よ。地球人やウルトラマンセイバーに挨拶をしにね」
彼女はそれを言い残して、ヴァリシアの返事を待たずに部屋を出た。
この部屋は円卓になっており、8人分の椅子があった。
ただでさえ広い部屋がヴァリシア一人となった事で、余計に広く感じられた。

(やれやれ、困ったお嬢さん方だ)
ヴァリシアは天を仰ぎ、苦笑いを浮かべる。
彼女の背後にある壁にはタペストリーがあり、鎧甲冑に身を包んだ騎士が描かれている。
やがてヴァリシアも何かを思いついたのか、外に出てこの部屋は誰もいなくなった。

地球では、変身を解いたよつばが、満足そうにスターフラッシャーを見つめていた。

「今日も勝てたなセイバー。この調子でどんどん行こう!」
上機嫌でセイバーに語りかけるよつば。

『・・・・・・』
しかし、セイバーからは何の返事も返ってこない。

「セイバー?」
『ん?ああ、そうだな。頑張ろう』
不安になり、よつばがもう一度呼びかけると今度はちゃんと答えた。
だが、彼女はセイバーの歯切れの悪い対応に不安を拭う事は出来なかった。

出来る事なら彼にその沈黙の意味を問いたい。
しかし、聞いた所で彼はこれ以上の事は答えないだろう。
敵の正体すらまだ教えてもらっていないのだ。

『心配しなくても敵の正体はもうじき明らかになる。私が教えるまでもなくな』
そんなよつばの心を読んだのか、セイバーの声が頭に響く。

「分かったよ、セイバー。今はあんたの事を信じるだけだ」
セイバーとの会話を終えたよつばは、こちらに向かって駆け寄ってくる仲間達に対して、
「おーい」と大きく手を振りながら応えたのだった。
第3話  終     第4話へ続く

161 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/02/10(日) 23:26 ID:???
次 回 予 告

テロチルスやベロクロンとの戦いで自信をつけていく彼女達。

だが、そんな彼女達の前にある敵が立ちふさがる。

「私の名前はゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード。
あなた達の敵よ」
「こいつがセイバーの言っていた敵?」

次 回 ウルトラマンセイバー
第4話 「接敵」
今、よつば達に試練が課せられる! 

162 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/02/10(日) 23:27 ID:???
3話終。色々と時間かかってしまった。

163 :名無しさんちゃうねん :2008/04/27(日) 17:16 ID:???
誰も見てないよ

164 :名無しさんちゃうねん :2008/04/27(日) 18:38 ID:???
>>163
うっさいハゲ

165 :名無しさんちゃうねん :2008/04/30(水) 02:00 ID:???
過疎なのは事実だわな

166 :名無しさんちゃうねん :2008/05/04(日) 01:59 ID:???
自然消滅ww

167 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 13:41 ID:???
おいおいこんなにageるなよ。

168 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 13:42 ID:???
なんだageと違ってこの方法じゃSageられないのか。
つまんね。

169 :名無しさんちゃうねん :2008/05/11(日) 14:42 ID:???
昔は頼まんでも勝手にsageる奴がいたが、今はそいつもここを
引退したって事か。

170 :名無しさんちゃうねん :2008/05/13(火) 22:59 ID:???
こんな過疎っててもage厨を毛嫌いする奴がいたとはな・・・

171 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:19 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(6)


「ホラよ」

緩やかな線を描いて飛来するそれを、粗暴な声と共に神楽は受け取った。
水気を含んだ左手に伝わる暖かい温もりが冷えた体に伝わってゆく。

「あ、ありがとう」

寒気で震える唇から、なんとか感謝の言葉をひり出した。
そして次の瞬間、彼女の口内は熱い液体で満たされていた。
麻痺しかけた味覚の中でもはっきりと分かる、ほのかな甘味とどこか厳かな苦味。
それらが合わさる高貴な香りが、この飲料水の名称を雄弁に語っていた。

「焦って飲むこたぁねえ。 ゆっくり飲みな」

貪るようにコーヒーを啜る神楽を他所に、竜馬は制服のポケットを漁りはじめた。

「がフっ ん ぐっ… ごくッ」

120ml。
普段一気飲みで終わらせてしまうような量の液体が、やたらと多く感じる。
いつもなら、一気飲みとは言えゆっくりと飲んでいた筈だった。
友と共に、昼休みの時間間際に飲み干し、空になった紙パックを屑篭へ放り投げない日は無かっただろう。
時には、わざと遠くから投げ飛ばして「スローイン!」なんて言ってみたものだ。
またそれに反応した智が、暦がまだ飲んでいる途中のカップを剥ぎ取り、
周囲を水浸しにさせたのはそう昔の話ではない。

172 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:20 ID:???
「なぁ」

喉の奥へと流れ込む水の音の合間を縫って、弾ける様な声が飛び込んだ。

「お前、本気か」
「…え?」
「本気で、ゲッターに乗るのかって聞いてんだよ」

自分に背中を向けたまま、竜馬は言った。
重厚なその声は胃袋に注ぎ込まれる液体に、鉛の様な重量を加えた。


沈黙。


ぼんやりと、痴呆めいたように間の口に唇を重ねたまま神楽は黙っていた。
返答するために思考を巡らせることさえおぼつかない。
それでもなんとか、声を絞り出した。

「私は--------」

一呼吸を置いて、神楽は続けた。

「私は、乗る」

その声聞いた途端、竜馬の肩が僅かに揺れた。

173 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:21 ID:???
「ほ、ホラ! 私、水泳部だろ? 運動だって人よりできるし、その気になればケンカだって」

みしり、という。
拳が握られる音を、神楽は確認できただろうか。

「だからさ、私にならきっと」

竜馬を見上げた彼女の眼前に黒い影が横切った。



ゴシャッ


ドゴッ


ドグシャッ


突如耳に飛び込んだ、区切って三つの破砕音。
目には、ただ黒みを帯びた影が横切るのみ。
鼓膜が大きく経込むほどの轟音。
脳内で何度もリピートされるそれは、聞き覚えのある音だった。
あの日、学校で初めて会ったときに聞いた。



彼の拳が、何かを砕き、壊す音。

174 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY 第12話 −始−(6) :2008/05/14(水) 01:21 ID:???
同時に、電撃のような衝撃が神楽の全身に叩きつけられた。

神楽は、目を見開いたまま固まっていた。


竜馬の拳が、彼女の顔のすぐ隣の壁面に突き刺さっていた。
半分以上壁に埋没した拳を中心から、葉脈状のヒビが広がっている。
それと同様のものが、彼女の顔を囲むように、三つ。
それぞれ人の肩幅の倍近く広がったひびが、拳の破壊力を物語っている。

「見えたか?」

その問いに、神楽は一瞬送れて首をぶんぶんと左右に振った。

「闘ってるとな、こんなのが縦横無尽に飛び掛ってくんだ」

ぱらぱらと音を立てながら、神楽の顔のすぐ左壁面から拳が抜ける。
あれほどの破壊を行いながら拳は傷一つ付いていない。
生傷は無い。
そこには、度重なる鍛錬と、実戦による細かい古傷によって
厚みを増した金剛石のような拳があった。

「自慢じゃねぇが、こんなもんは本気じゃねぇ。
 女の顔に傷付ける趣味はねえからよ」

ごくり、と。
コーヒーと唾液が入り混じった液体を神楽は無理やり飲み込んだ。


「悪いことは言わねぇ。 お前にゃ無理だ」








to be continued

175 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/05/14(水) 01:23 ID:???
久々の投稿です。
最近時間に余裕が出来るようになったので、投稿することが出来ました。

176 :名無しさんちゃうねん :2008/05/15(木) 19:39 ID:???
割とよかったと思う

177 :27GETTER ◆mRZMzGA.po :2008/05/15(木) 22:38 ID:???
>>176
どうもです。
そう言っていただけるだけで、次への励みになります。

178 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:35 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(7)

「…は…?」

奥歯を揺らしながも、自分の意思を携えた声で神楽が呟いた。

「聞き取れなかったか? お前がゲッターに乗るのは無理だ」

神楽に与えた飲料とは違う銘柄のコーヒーを喉に注ぎながら、竜馬は行った。
そしてそのまま、神楽から数歩離れ彼女に対して背を向けた。
「なっ…」

思わず、身体の硬直も忘れて立ち上がる神楽。
握られていた缶コーヒーが、主の下を離れ、からりと身を床に預けた。

「な…なんでだよッ!?」

上擦った声で、竜馬の方に視線を向ける。
視線の先にいた竜馬も、神楽の眼光に気付いたか歩を進めかけた足を止め、振り返る。

向き直った彼は、神楽に向かって右の腕を突き出した。
そこには、中身を失った缶が握られていた。
一瞬呆気に取られた神楽だったが、彼女がそれが「缶」であることを認識したのは
数秒の後だった。
彼女への振り返り様、まだほのかに温かみが残るそれを、
彼は何のモーションも無く、まるで紙切れのように握り潰した。
それも親指、人差し指、そして小指の三本のみで。

179 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:36 ID:???
「お前がゲッターに乗れば、こうなるぜ」

僅かに残った液体が、ぴたりぴたりと滴り落ちる。
それがまるで、「お前の血だ」とでも言うかのように。

「…根拠は…なんだよ」

震える奥歯を噛み締め、問いた。

「お前の身体じゃ、ゲッターの衝撃に耐えられねぇ」

ぐしゃぐじゃになった空き缶を、虚空へと打ち捨てながらそう言った。

「あれはな、ちぃと力が強すぎるのさ」
「そんなの、訓練すれば!」

そう叫んだ神楽の額を、竜馬の左手が荒々しく掴み取った。
獲物を捕えた魔獣の様に。

「その訓練にもお前は耐えられねえ!!」

今まで、比較的物静かに話していた竜馬が声を荒げて叫んだ。

「ゲッターに乗ったんなら分かるだろ。 全身を砕かれたような痛みってヤツをよ」

その問いに、神楽は顎を僅かに引いた。

「訓練って、何のためにやるのか分かるよな?――――――死なねぇためにやるんだよ」

180 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(7) :2008/06/07(土) 01:36 ID:???
ごくりと、硬い唾液を飲み込んだ。
唾液が喉を下る音を合図に、場に静寂が訪れた。
回廊に、古ぼけた電子時計の針を刻む音が響く。
普通に歩いている時でさえ気付かないその音は、やけに高く
そしてそれは無粋なまでに心と言う敷居を跨いで彼女の脳に響くのだった。

「なぁ、茜」

額に手をあてがったまま、竜馬が静かに口を開いた。


「お前、なんで戦うんだ」


疑問系ではなく、呟くように竜馬は言った。







to be continued

181 :第4話  「焦燥」ーアバン― :2008/06/30(月) 02:04 ID:???
ウルトラマンセイバー
第4話  「焦燥」

広々とした部屋にひとつの円卓がある。そこに四人の女性が座っていた。
彼女達はそれぞれ神妙な面持ちをしていた。

「今言ったようにこれから地球に向かうわよ」
「いよいよか。腕が鳴るな」
「楽しみね。新しい人間観察が出来るのね」
「そんな言い方は悪いよ」
ゼレル・ヴァン・ジェクト・レザルード、ヴァリシア・ライガ・クラウゼク、
エメノザ・トラスティーン、ロナ・ヴァン・グレーティアだ。

「地球にはウルトラマンセイバー、ウルトラブレイズを援護する存在としてTEAM HOLY、TEAM FLAMEがいる。
私とエメノザはTEAM HOLY、ヴァリシアとロナはTEAM FLAMEを頼んだわよ」
「分かった」
「さっさと行きましょう。もう私さっきからウズウズしてるのよ」
「急いだ方がいいのは同意するわ。あまりもたつくと皇帝に何言われるか分からないし」
彼女達は部屋を出て、廊下を歩く。部下達が彼女達の存在に気づき敬礼する。
彼女達もそれに習い、敬礼をする。
そして、ゼレル達がたどり着いた先には格納庫があった。2機の小型艇らしき物体があり、ドーム状の物体である。
赤と青の2種類のカラーリングがあった。

「私とエメノザは赤い方で、ヴァリシアとロナは青い方ね」
「了解した。行くぞ、ロナ」
ゼレルとエメノザは赤い小型艇に乗り込み、ヴァリシアとロナは青い小型艇に乗り込む。

「発進!」
その声を合図に、二機の小型艇は高速で発進した。
小型艇にはパネルがあり、そのパネルを操作する事で動かすようだ。

「地球に着くまで少し間があるから少し寝かせてもらうわね」
「私も、少し眠るわ」
返事を待たずに眠るエメノザとロナ。
そんな二人にゼレルとヴァリシアは呆れるものの、結局は二人と同じようにするのだった。

182 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:07 ID:???
地球の日本では、そよ風が気持ちのいい季節だった。
気温もそれほど高くなく一番過ごしやすい時期であろう。空には太陽が燦々と照らされている。
そんな中をこの物語の主人公である小岩井よつばは歩いていた。
昔は四つに束ねていた緑色の髪も一本に纏めてポニーテールにしていた。
今は怪獣出現の報もなく、暇を持て余していると言ったところか。
かつて貨物操車場だったものを公園としたもので、中央には噴水が設けられており、
滑り台やブランコなどの遊具施設なども揃っている。子供達がそれを使って遊んでいた。
かつてはよつばもここでよく遊んでいたものだ。

(何年かして、路面電車がここに保存されるようになったんだよな)
展示されている黄色い路面電車を見て、よつばは感慨にふけっていた。
そんな時、よつばは思わぬ人物と再会する。

「あっ、京介じゃないか。京介〜」
目の前を歩いてくる男性に向って、よつばは手を振って呼びかけた。
その人物は短く切り揃えた髪の為か、精悍な印象を受けた。紺のジャケットに黒のジーンズという出で立ちだ。

「お、何だよつばちゃんか。珍しいな。ロングとはいえスカートを履いているなんて」
と、いきなり服装の事を指摘された。
言われた通り今よつばは、白のカーディガンに赤のロングスカートを履いているのだ。
普段はパンツスタイルが当たり前だから、何となくこの格好には馴染めないものがある。

「やっぱ変かな?」
「正直何とも言えないな。でも見慣れれば似合ってくると思うよ」
よつばの質問に京介は正直に答えた。下手に「ぴったりだよ」と言わない分、好感がもてる。
よつばにとっては、下手におだてられるよりそっちの方が気持ちいいのだ。

「久々にあった事だし、ゆっくり話すとしようか。これ食べるかい?」
京介は展示されている路面電車の中に入っていき、鯛焼きをよつばに差し出す。

「ありがとう、もらうよ」
断る理由もないので、よつばはそれをもらう事にした。近くの店で買ったのか焼きたてほかほかだった。

「確かよつばちゃんはTEAM HOLYに入ったんだよな。それでみちる先輩やゆか先輩も一緒だったと聞いてるけど」

183 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:10 ID:???
久々に会うなり、質問を投げかけてくる京介。

「そうだよ。恵那やみうら、それに澪やあずさに紗奈もいるぞ」
「で、うまくいっているのか?」
「うん、まあうまくいってると思うぞ。特に仲間割れとかもしてないし。
何だかんだでテロチルスやベロクロンといった敵を何とか倒してるし。セイバーともうまく連携とれてるし。
それよりこの鯛焼き、白あんがとてもうまいな」
質問に答えながら鯛焼きを頬張るよつば。本当においしいらしく、至福の表情を浮かべている。
これは中々の当たりだと思う。

「そうか、うまくいっているのか。こっちと大違いだな」
「うまくいってないのか?」
「隊員同士の対立なんか日常茶飯事だからな。しかも両方とも自分でこうと思った事は絶対に曲げないだけに尚更な。
工藤や七瀬さんなら長年の付き合いでどう考えているかも分かるけれど、他の隊員は分かってくるのにもう少しかかりそうだ。
ブレイズともいまいち噛み合ってないとこがあるし」
見てすぐに分かるくらい京介の顔は疲れた表情をしていた。
しかし、そんな顔をして鯛焼きを食べてもおいしくないだろうに・・・・・・。

(オーソドックスにこしあんか)
とどうでもいい所に注目してしまうよつばだった。

「けど、今の話を聞いていて一つ思った事があるな。抜群のチームワークを誇っているみたいだけど、
もしそのチームワークが崩されたらどうなるのかな?」
「え?」
京介が真顔で言い放った言葉によつばはドキッとなる。
全く考えていなかった訳ではないが、他人にその事を言われると不安になるものだ。
前回、セイバーとの歯切れの悪いやりとりをした事を思い出して、よつばの脳裏に一抹の不安がよぎった。

「いや、ごめん。不安にさせるような事言っちゃって。別にそんなつもりで
言ったんじゃないんだ。今の俺の言った事は忘れてくれ」
京介もよつばが不安げな顔をしているのに、ばつが悪くなったのか慌てて忘れるように促す。
よつばが気にしてないと言おうとしたその時、よつばの左腕につけている通信機に呼び出しのメロディが鳴った。
どうやら、何かが起こったらしい。TEAM HOLYのみに出動要請があったらしく、京介にはそれらしい音は鳴らない。

184 :第4話 「焦燥」 ―アバン― :2008/06/30(月) 02:12 ID:???
「どうやらHOLYに出撃要請があったみたいだな」
「そうみたいだ。悪い、京介。そういう事だからあたしもう行くわ」
食べかけていた鯛焼きを急いで口の中に放り込むよつば。

「そんなに慌てて食ったら喉に詰まるぞ。ほら」
京介はそんなよつばに缶コーヒーを投げてきた。それをキャッチして、喉に流し込む。
冷たい液体が喉を潤す。

「サンキュー。」
「頑張ってきなよつばちゃん。もしかしたら俺も出動する事になるかもしれないけど、その時はその時だ。
あ、そうそううちの隊員に姫崎姫子って隊員がいるんだけど、もしかしたらよつばちゃんとは気が合うかもしれないな」
「ヒメコ?そいつあたしに似ているのか?」
「いやどっちかというと、対照的だな。でも何でかな?そう思えてならないんだ。
いや、忘れてくれ。俺の思い過ごしだろうし」
「まあ、とりあえず名前は覚えておくよ。じゃあな京介」
彼女は京介に手を振って全速力で駆けていく。

「やれやれ、相変わらずバイタリティ溢れてるな」
走り去っていったよつばを見て、京介は肩をすくめるのだった。
空を見上げると、雲が太陽を覆い隠してしまっていた。

「これは一雨きそうかもな」
京介はポツリと呟いた。

(姫崎姫子か。どんな奴なんだろ?もしかしてそいつがブレイズってのに変身する奴なのか?)
そして走りながらよつばは京介が発した最後の言葉が気にかかっていた。
よつばにしては的を得た推察である。

(ま、いいか。どうせそのうちわかることだし)
しかし、よつばはあまり深く物事を気にしない性格の為に、すぐにそれを頭の奥にしまいこんだ。
セイバーに聞こうとも一瞬思ったのだが、何でもかんでもセイバーに
聞くよりも自分で確かめた方がいいという思いもあったが・・・・・・

京介の予想通り、雨が降り出して来たが、よつばは雨が降る前に
何とか基地にたどり着く事に成功するのだった。

185 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2008/06/30(月) 02:13 ID:???
アバン終わり

186 :名無しさんちゃうねん :2008/07/01(火) 01:57 ID:???
下駄のだけ良い 

187 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:51 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(8)

頭部を掴む力は決して強くはない。
女性の力とて、抜け出すのは容易だろう。

だが、それができない。
幾つもの傷跡の走った五指に込められた鬼気が、彼女の行動を抑制している。
屠殺される家畜に感情があるならば、最期の瞬間には、そのような気配を野性の感とやらで悟るだろう。

しかし、これは違う。
勘も、野性も、その欠片も備えていない少女が触れられただけで感じる鬼気。
生物が持つ恐怖を限界まで引き上げる力を、この男は持っていた。

彼、―流竜馬は。

「なぁ お前が闘う理由って、なんだよ」

疑問形ではない。
どこか、呟くような声だった。

「…っ…ぐ……ぅ…」

答えようと、頭を可能な限り回転させたつもりだった。
だが、得られるのはノイズのような濁音のみ。
虚しく口腔から零れる声がそれを語っている。



その思考の中、神楽は思った。



なぜ、自分はここにいるのか。

188 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:52 ID:???

なぜ、あの時、『龍』と呼ばれた機体に乗ったのか。

今の自分が置かれている現状に対する、疑問が。

考えれば考えるほど、その溝は埋まらない。
考えれば、酷いものだ。
どうしようもなく滑稽で、病的な物語だ。
自分のこの現状に至るまでの、経路というものは。
言葉にせずとも、思考の波は巡り、押し寄せる。

そしてそこに、新たなノイズが割り込んだ。

連続する高い音の波。
頭上で煌く紅い点滅。

これらはあの時、この場所で体験したものだ。



敵の襲来を知らせる警戒警報。


「また出やがったか」

そこに、"トカゲどもよりしつけぇな"と竜馬は加えた。
途端、神楽の頭への力が、微弱なものから無へと変わり、鬼気も消え失せた。
最初からそんなものは無かったかのように、彼女の身体への拘束も消えた。

189 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:58 ID:???
神楽の頭から、竜馬は手を離し、彼女の顔を一瞥した。
警報と、紅い光の点滅に怯える彼女の顔がそこにあった。
すると竜馬は、息をすぅっと吸い込み天上へと吼えた。



『『『『うッせぇぞジジイ!! さっさと消しやがれ!!!』』』』



心の臓腑まで響く、獣の、魔獣のような咆哮だった。
それが聴こえたのか、警報の類の全てが止んだ。
回廊でエコーする先程の怒号が消えた時、竜馬は神楽に背を向けた。

「なが……竜馬!!」

歩き出した竜馬を、今度は名前で呼んだ。

「悪かったな」

振り返らず、彼はそう言った。

「え……」

へらへらとしたものではない。
重みのあるその言葉。
前代未聞以外の何物でもない。

「お前、喧嘩ってできるか?」
「す、少しなら……」

困惑する彼女に、唐突に疑問を投げかけた。
そういえばいつだったか、痴漢を退散させたことがある。
ターゲットは自分ではなく、榊への痴漢だった、が。
実際は争いと呼べる範疇の中の非常に小さいものだったが、少なくとも、神楽は
それを「喧嘩」だと思っていた。

190 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 00:59 ID:???


「そうか…ならいいや」

竜馬が一歩を踏み出そうとしたとき、その歩みを神楽が止めた。

「……いよな?」

「し、死なないよな…? 大丈夫、だよな…?」

問いに答えず、宙に膝半分ほどの高さで留めていた足を床へと降ろした。


その時だった。


神楽の肺が、破裂せんばかりに息を吸い込んだ。



『『『バカヤロー!!!!』』』




神楽の、咆哮が回廊に木霊した。

「流竜馬のバカヤロー!! 死ぬんじゃねーぞ! バカヤロー!!」

瞼から溢れる熱い液体と共に、神楽は叫んだ。 叫び続けた。
喉の痛みに声を止めた時、彼女は見た。

竜馬の振向きかけた横顔が、にやっと笑ったのが。
彼がよく見せる、大胆不敵なあの笑顔の片鱗が、霞みを孕んだ
眼越しにはっきりと見えた。

191 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:03 ID:???


「バーカ! 俺様が死ぬわきゃねーだろッ!!」


がばっと振り返り、ぐっと右腕を突き出しながら彼は叫んだ。
親指を突きたて、「グッド!」のサインを表しながら。

「ぐずっ……だよなっ!」

瞼にこびり付く涙をぬぐい、彼女もそれに習った。
不敵な笑みを保ったまま、彼は「ヘッ!」と一瞥し、踵を返して走り出した。

自らが討つべき敵、否、獲物へと。

竜馬の姿は視界からすぐに離れた。

彼の姿が消えると同時に、神楽も駆け出した。

2、3こ目のカーブを曲がり終えた後に広がるのは、外の景色。
施設の出入り口。
浅間山を一望できる場所だった。

外に出るのと同時に、上空から一陣の突風が吹き、彼女の身体を影が包んだ。


紅、白、黄の色が施された三機が、彼女の上空を飛び去っていった。


そして、彼女の目の前でそれは起った。
音速を遥かに越える速度で飛行する三機が白、黄の順で組み合ってゆく。

192 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:06 ID:???


閃光を纏って激突した白と黄の機体は激突した形状から人型の手足を構築させ
そのまま紅の機体と組み合った。
空中四散どころか爆散してもおかしくはない筈の衝撃の中、
紅の機体はその身を自ら引き裂き、それを己の兜とした。

紅の機体の双眸が眼光を放ち、背後の装甲から天駆ける翼を放った。


「チェエエエエンジッ!!!!! ゲッタァアアアアアア!!!!! ワンッ!!!!!!!!!」



右の拳を空へと突き出し、痛烈な喉の痛みさえも忘れ、神楽は叫んだ。

鋼の翼を与えられた、勇者の名を。

布状の翼がばさりと一閃し、雲を、烈風を切り裂いて、ゲッター1は瞬く間に
彼女の視界から消えた。



この空を、神楽茜は眺めていた。



ゲッターロボの飛び去って行った、この空を。
何時の間にか、雷煌く悪天候から、一点の曇りも無い、蒼天となったこの空を。















to be continued

193 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(8) :2008/07/02(水) 01:17 ID:???
>>181-185
乙です。
ちょっと明日(正確には今日の午後)にでも感想を創作板で書かせて頂きます。

>>186
自分の文章を読んでいただき、誠にありがとうございます。
非常に遅くなりましたが山場を越えられましたので、今後もよろしくお願いします。

194 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:34 ID:???
CHANGE GETTER ROBOT THE STORY
第12話 −始−(9)

太陽は、常に頭上にあるわけではない。
光は、やがて姿を隠し、闇が訪れる。
そして今は、それの挟間だった。

「相変わらず、ここは景色がいいな」

文字通りの崖っぷち。
眼下に広がる、緑の群れ。
光と闇の交差する、夕焼けの色を含んだそれらを見下ろしながら竜馬は言った。
首に巻かれた若葉のようなスカーフが、柔らかな線を描いてふわりと揺れた。
学生服ではない。
白色と青の混じった緑を基調とした搭乗用の戦闘スーツを、竜馬は纏っていた。
そのすぐ後ろには、神楽がいた。
服の手持ちが少ないのか、服装は変わらなかった。

彼等の立っている崖の中央には、一つの岩があった。
よく見れば、それは岩ではない。
縦長の長方形に削られた形状。
それを支える石の床。
明らかな意思の基で作られた、創造物の基盤の痕跡が確かにあった。

そして、縦に刻まれた刻まれた言葉。
神楽の視線が、その文字をゆっくりと追った。
日が暮れかけているのと、彼女自身の勉強不足。
それが祟ってか彼女の視線と思考は墓石に刻まれた最初の文字で止まっていた。

195 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:35 ID:???

「久しぶりだな、ムサシ」


墓石の前に立った竜馬が、墓石の傍らに置かれていた何かを手に取った。
今度は、神楽にはそれが何かがすぐに分かった。

「剣道の……防具?」

それは、左右から中央に向かっての大きな罅の入った、剣道の「胴」だった。
雨風に晒されながらも、本来、朱であったと思われる色を保っているそれは
彼女の知っている防具の類とはどこか異なるものであった。

墓石の前に屈み、竜馬は手で汚れを振り払った。
先程も降り続いていた雨もあり、至る所に泥が跳ねていた。

普段なら「ざけんな畜生!!」とでも叫びそうな気がするが、
竜馬の面持ちは非常に落ち着いた、慎重なものだった。
明日は拳大の雹でも降るのかと、神楽は思った。


墓石に置かれていたのは、防具だけではなかった。

手元の紐がほどけかけ、鞘に収まった日本刀。
そして、熱い窪みを持った双眸を持つ、黄色いヘルメット。

196 :CHANGE GETTER ROBOT THE STORY第12話 −始−(9) :2008/07/10(木) 01:35 ID:???
剣道の防具、日本刀、ヘルメット。
これらを装着した姿のビジョンは、神楽の脳内には存在しなかった。
しかしこれが今も尚、持ち主の傍に寄り添っているのは、
これらの持ち主が誰であるかを、何よりも確かに、言葉無き静かな声で語っていた。

「巴武蔵(トモエムサシ)。 俺のダチだ」

「竜馬の友達…っていうことは……」

「ああ。 ベアー号……ゲッター3には、こいつが乗っていた」

一通り汚れを拭い、次に日本刀を手に取った。
ほどけかけた糸を指に器用に引っ掛け、一気に刃を抜いた。
錆びの走った刃の上を、首から解かれたスカーフが駆けた。

「あいつは元柔道部の部長でな、やたら頑丈なヤツだった」

竜馬の手から放たれた胴を見る限り、
持ち主の体格は縦よりも横に伸びていたであろうということが容易に分かった。
だが、胴に覆われたそれは贅肉ではなく、
脂肪の下に蓄えられた頑強な筋肉であったことだろう。

「ハラワタが飛び出してもゲッターの操縦桿を離さなかった大バカヤロウだ」

「…凄いな。 私なんて、あれだけで気を失っちゃったのに」

懐かしさを覚えているのか、竜馬は笑った。
驚嘆を交えながら、神楽も竜馬と共に笑った。

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