世の中のすべての萌えるを。

■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 最新50 スレ内検索

きのうものすごい、恐ろしい体験をした

1 :名無しさんちゃうねん :2002/08/18(日) 15:15
夜、部屋に一人っきりのとき
どこからともなく・・・
壁のむこうから誰かの喘ぎ声が聞こえてきたんや・・・




みたいな感じで書いていってやー。

61 :眠い名有り :2004/01/23(金) 23:08 ID:???
さぁ、こんなことが貴方の身にもおこらないとは限らない。
二重人格は誰にでもおこりうる…
次にこんなことになるのは貴方かもしれない…

62 :名無しさんちゃうねん :2004/01/24(土) 07:44 ID:???
>>57-60
残酷な話ではありますが、怖さの演出が出来ていません。
これではむしろギャグになってしまいます。
なぜか?
あずまんがのキャラは普通の人間なので、
人間離れしたアクションなどは不可能です。
(首を片手で締め上げ持ち上げる、ひとりで600人以上殺すなど)
ですから人間ではありえない行動をとらせると
それはギャグにしかならないのです。

むしろオリジナルで超人的なキャラクターを使った方が良いでしょう。
(例えばモンスターが暦の姿だけを真似ているなど)
どんな話でもリアリティがないと興ざめしてしまいます。

63 :眠い名有り :2004/01/24(土) 11:41 ID:???
>>62
あれですよ。ほら、人間は力を100%出せていないって。
だから力を100%使えばそのくらいできるかな〜って…







出直してきます。

64 :名無しさんちゃうねん :2004/01/24(土) 13:29 ID:???
……また藻前か

65 :新大阪駅 ◆oSakaLmHFc :2004/01/24(土) 13:55 ID:???
>>57>>60怖かないがおもしろいのでグッドっぽい

66 :名無しさんちゃうねん :2004/01/25(日) 23:16 ID:???
家で一人勉強していると、携帯が鳴った。智からだった。
昼間のちよちゃんの家でのことを詫びていた。
「…だからさ。ごめんよ、よみ。元気出してくれな。」
「あぁ、いいよ別に。いつものことじゃないか。もう気にしてないよ。」
「そ、そっか…。…?あれ?」
「どした?」
「そっち誰か居るの?」
「いや、一人で勉強していたんだが?」
「え?だってよみ以外の声がするよ?」
「あぁ、ラジオだろ。今聞きながら勉強してるんだよ。」
「え…。でもさぁ。」
「なんだ?」
「その声、『こっち見て、こっち見て』って笑いながら言ってるんだよ…」

〜終〜

67 :名無しさんちゃうねん :2004/01/26(月) 13:23 ID:???
あう…。ちょっと会話が変。修正します。


家で一人勉強していると、携帯が鳴った。智からだった。
昼間のちよちゃんの家でのことを詫びていた。
「…だからさ。ごめんよ、よみ。元気出してくれな。」
「あぁ、いいよ別に。いつものことじゃないか。もう気にしてないよ。」
「そ、そっか…。…?あれ?」
「どした?」
「そっち誰か居るの?」
「いや、一人だが?」
「え?だってよみ以外の声がするよ?」
「あぁ、ラジオだろ。聞きながら勉強してるんだよ。」
「え…。でもさぁ。」
「なんだ?」
「その声、『こっち見て、こっち見て』って笑い声で言ってるんだよ…」

〜終〜

68 :名無しさんちゃうねん :2004/01/26(月) 14:28 ID:???
>>66-67
修正しなくても十分怖いです。
なんか想像したらどんどん怖くなってきた……。

69 :潜む者@ :2004/01/26(月) 19:34 ID:???
学校の帰り道、よみは1人で歩いて帰っていた。腐れ縁の智は、今日は大阪と一緒に駅前へ寄り道をしている。
久しぶりに物思いに耽りながらの静かな帰り道だった。

「なんだかショボくれたおっさんだなぁ」
よみは歩きながら思った。
ショボくれたおっさんというのは、しばらく前からよみの前を歩いている男のことである。
その男は背は高いが猫背気味で、ヨレヨレのスーツを着ていた。全体の雰囲気から中年ぐらいの男に思える。
その後ろ姿は古文担当の木村先生に似ているが、違うのはスーツがつんつるてんなところだ。
ファッションとかのレベルでは無く、サイズが2周りは小さいのではないかというくらいに袖の短いスーツを着ている。
ヤバイおっさんかも知れないと思い、よみは男を追い越さないように気を付けながら歩いた。

どのくらい経っただろうか。男は依然とよみの前をヒョコヒョコ歩いている。どうやら、男の目的地はよみの自宅の方向
のようである。
「こんなおっさん近所にいただろうか?」
よみの記憶では、こんな男に心当たりはない。挙動不審な人間が近所に住んでいれば、近所づきあいが薄れている現代とは
言え、うわさとして耳に入る。が、こんな男については記憶に無い。
「ま、どうでもいいか。」
同年代の男ならまだしも、ショボくれた中年男に興味を持つことが馬鹿馬鹿しくなったよみは、その男についてあれこれ考える
のを止めた。自宅への道の最後の曲がり角を曲がるまでは、完全に関心を無くしていた。

70 :潜む者A :2004/01/26(月) 19:34 ID:???
最後の曲がり角を曲がったとき、よみは信じ難い光景を見た。前方を歩いていた男が突然1軒の家の門扉をすり抜けるように
入って行ったのである。その家はよみの自宅であった。
「な?!あぁん?なんだ、あのおっさん!」
男は門扉脇の呼び鈴を鳴らすでもなく、すっと入っていった。空き巣だろうか?今日は両親の帰りは遅い。留守番はよみの
仕事である。普通の女の子ならここで近所に駆け込むか、携帯で警察を呼ぶかするところだろうが、よみは不審人物との
対決姿勢を高めていた。自宅の門扉まで走り、用心しながらも中に入る。時間的にも男はまだ家には入っていないはずだ。
表には人影は無かった。よみは庭に練習用に置いてある父親の安物のゴルフクラブを手に取ると、家の裏に回った。
しかし、人影はなかった。その後、家の周囲を何回か回ったが、不審な人物を見つけることは出来なかった。
「おっかしーなー。確かに入ったのを見たのに…」
よみはこの出来事の合理的に処理しようとし、自分が裏に回っている内に外に出ていったとストーリーで納得することにした。
ポケットから鍵を出すと鍵穴に差し込み捻る。カチャっという音と共に鍵が解除された。玄関は鍵が掛かっているのである。
中に入られたということは無いだろう。そう思ってよみは靴を脱ぎ、家に上がった。

バタン!!

戸が閉まる大きな音がした。突然の物音に、よみは思わず固まった。音のした方を見ると父親の書斎の方だった。
「な、中に入ってやがったのか?」
よみは玄関の傘立てに挿してある木刀を手に取ると、恐る恐る父親の書斎へ行った。勢いよくドアを開け木刀を構える。
が、何も気配はない。書斎を見回すが、人影はない。机の下も見たが何も居なかった。人が隠れられそうなところは
無かった。父親のクローゼットを除けば…。

71 :潜む者B :2004/01/26(月) 19:35 ID:???
父親のクローゼットは大きい。紳士服を入れるものだからそれは当然だろう。人間2人くらいは隠れることが出来そうだ。
よみは開けたらすぐ離れて何が飛び出しても木刀で打ち据える事が出来るよう、頭の中でシュミレーションを繰り返しながら
心の準備をした。覚悟が出来たところで、思い切ってクローゼットを開き、すぐさま木刀を上段に構えた。
しかし、何も居なかった。ただ、父親の紳士服やコート、Yシャツがいくつも下がっているだけであった。木刀の先でつついてみたが
服の陰に誰かが隠れている様子もなかった。
「わかわからん…。疲れてるのかな…」
ドアの閉まる音は空耳だったかも知れない。いや、空耳だったんだ。よみは自分にそう言い聞かせながら、クローゼットの戸を閉めた。
そして、ふとクローゼットの戸を見たときに、よみは眼鏡がずり落ちそうになった。
クローゼットの戸の下から、スーツの裾がはみ出していた。さっき開けたときはスーツは全て突っ張り棒に掛かっており、戸の下から
裾がはみ出るようなスーツは無かったはずだ。誰かがそこでスーツを着たまましゃがんでいるのでなければ…。
よみが見ている前で、はみ出したスーツの裾は、ズッズッと中に引っ込んでいった。

よみはゆっくり踵を返すと書斎を出、靴を履き、木刀を傘立てに戻し、外に出た。玄関の鍵を掛けると、隣の智の家へ向かった。
ちょうど智は帰ってきていたので、部屋に上がらせて貰った。そしてそのまま両親が帰ってくるまでよみは智の部屋に居座った。
智は相変わらずの馬鹿話でよみをからかったりしていたが、この時ばかりは智の馬鹿話も、よみにとっては救いになった。

(終)

72 :名無しさんちゃうねん :2004/01/26(月) 20:03 ID:ez-SomWfG7c
>>69-71
読者が気になるところをあえて伏せておくのが
良いですね。
気になって夜も眠れそうにありません。

73 :名無しさんちゃうねん :2004/01/26(月) 22:49 ID:???
俺なら放火して自宅ごとオッサンを燃やしちまうな……

74 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/26(月) 23:35 ID:???
ども。66と67、69-71を書いた者です。

>>72
お褒めに預かり恐縮です。ありがとうございます。
本当に怖い怪談というものは、やはり、聞き手の想像力を煽るような話だと思います。
敢えて正体をボカす。真相は明らかにしない。これが原則だと思ってます。

>>73
燃える相手なら、ね…。

75 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/27(火) 01:09 ID:???
「記念写真1」

2学期が始まって…。ある日の昼休み。
「お〜い。夏の別荘の写真出来たぞー」
「わー。智ちゃんありがとう」
「はい、これ大阪の分ね」
「智ちゃん、おおきにー」
「これちよちゃんの」
「ありがとうございます」
「これは〜っと、よみ」
「サンキュッ」
「神楽はこれ」
「おっ。サンキュー」
「榊ちゃんはこれ」
「…ありがとう」
「去年は榊ちゃんの後ろに怖いものが写ってたやんか〜。今年はどうやろな?」
「え…」」
「今年は、あたしもよく見たけどさー。残念ながら無かったよん」
「そっか〜。残念やな〜」
「…よかった…」
「…ん?何か変やな…。ん?」
「どした?大阪」
「ん。何でもあらへん。何でもあらへんよ」

76 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/27(火) 01:09 ID:???
「記念写真2」

下校時。
「あんな〜みんな。私あれからずっと写真見てたんやけどな〜」
「大阪…。おまえ授業中珍しく起きてると思ったら、そんなことしてたのか」
「ん〜。昼休みにパ〜と写真を見てた時に、ちょっと引っかかる写真があったんやわ〜
 で、どうしても気になってしもて」
「え?なになに。心霊写真見つけたの?」
「う〜ん。それがよくわからへんねん」
「わからん…ってどういうことだよ」
「この写真なんやけど」
「帰りに撮った集合写真じゃん。これがどうかしたのか?」
「わからんかな〜?よく見てみ」
「誰のものでもない手とか足でも写ってたのかな?」
「じゃあしらみつぶしにチェックしてみようぜ」
「あ〜。そーやなくてー」
「言うな言うな。大阪に分かって私に分からんのは悔しい。まだ言うなよ」
「まずよみの周り!…特に何も無いな〜」
「智の周り…も別に写ってないな…」
「最有力の榊ちゃんの周り…もないね」
「大阪の周り…もない」
「私の周りもないですねー」
「あたしも無いよ」
「にゃもちゃんも…ないね」
「ゆかり先生…もないな」
「ん〜?何か他にも写ってるか?」
「……。あ…!(ブルブルブル)」
「あ〜榊ちゃんは気付いたようやな」
「え?榊さんも?え〜何だろ…。…!あ、あ、あぁ…」
「え?何だよ?おまえら3人何怖がってんだよ。この写真の何がおかしいんだよ?」

「よみさん…。この写真。全員が写ってますよね…」
「あぁ。全員が写ってるよ。それがどうかした…。!!」
「気付きましたか。この写真…一体誰が撮ったんでしょう?」
「た、確かにゃも先生が、自分は他所のクラスだからって、撮ってくれた覚えが…」
「じゃ、じゃぁ…ここに写ってるにゃも先生って一体…?」

-終-

77 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/27(火) 01:57 ID:???
赤い女 其の1

「あんな〜。私、最近気になることがあるねん」
と大阪が窓枠に腰掛けながらそう言った。

薄曇の、今にも雨が降りそうな日曜の午後。ちよ、暦、智、榊、神楽、大阪の6人は
珍しく大阪の自宅へ集まって過ごしていた。
智が突発的に立てた企画「あなたのお部屋に訪問」で集まることになったのだ。
もちろん目的などはない。集まってお菓子をつまみながら話をしていた。
話のネタが尽き、6人が6人とも思い思いに過ごしている時、大阪が切り出したのだ。

「な〜に〜。ちょっとお姉さんに話してみ」
「また、大阪の気になる話か。まぁいいや、ちょうど退屈してたところだ。で、何が気になるの」
「私な。東京へ越してきてもう2年経つやんか」
「そうですね。もう2年になるんですね」
「越してきたばかりの頃はな、こうして窓から外を眺めてな、大阪と東京の違いってなんなん
 やろ?って考えてたんやわ」
「ふ〜ん。それで?」
「で、いつの間にやら窓の外を眺めるゆうんが私の習慣になってしもたんや」
「?あぁ。そうなの。で?」
「最近は、町並みよりも、この窓の下に見える細い路地を眺めてるんや。ネコとかも通るんやで」
「…ネコさんの集まる路…」
「ん。ネコも多いけど、たまに人も通るんや」
「そ、そりゃぁ通るだろ」
「でな、最近気付いたんやけど。ちょうど今日みたいな曇りの日で、雨が降り始めるとこの通りを
 同じ人が通るねん」
「ふ〜ん」
「その人、全身赤で統一した服装でな。スカートはいてたから女の人やと思うんやけど」
「それはまた派手だな」
「いつも広い通りの方から、この細い通りの方へ、あっちからそっちへ歩いていくねん」
「…それで?」
「30分ぐらいするとな。また、通りのほうから同じ格好をした人があっちからそっちへ歩いてくねん」
「ふーん。このへんをぐるぐる散歩してるんかね?」
「多い時は1時間に3回くらい見かけるねん」

78 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/27(火) 01:57 ID:???
赤い女 其の2

「か〜っ。大阪〜。おまえずっと見てたのかよ。そんなのよく眺めてられるな。暇な奴〜」
「何を話したかったのかよく分かりませんでしたが、変わった人もいるんですね」
「大阪も変わってるよ!」
5人は大阪の話を、いつものわけの分からない話として流した。
空が暗くなってきて、ポツポツと雨が降り始めた。
部屋が薄暗くなったが、部屋の主である大阪は明かりを点けようとしない。

「あんな…」
「あん?まだ続きがあるのか?」
「この通りな…。ちょっと行くと袋小路やねん」
「?」
「高い塀に囲まれて行き止まりやねん」
雨の降りがやや強くなり、窓の外からサーーッという音がした。
「この先、行き止まりなのに、あの赤い服を着た女の人、何度も何度も広い通りから、行き止まりの
 細い通りに入ってくるねん」
部屋は次第に暗さを増してくる。
「ずっと見ててもな…逆に広い通りに出て行くのは見てないねん」
部屋の空気が粘り気を帯びたように重くなってきた。
「あの人、どうやって行き止まりの道から広い通りに戻ってるんやろな?」
薄明るい窓を背景に、大阪のシルエットが浮かび上がっている。みな、大阪から目を離せなくなっている。
沈黙の中、サーーッという雨の音のみが響いている。
「あの女の人、何のために行き止まりの道へ何度も入って行くんやろな」
暗い大阪の影の中、話を続ける大阪の白い歯だけが浮かび上がっている。
「な?不思議やろ?」
雨足は少しずつ強くなって行った。
「そろそろ…。来そうやな…」
大阪が口の端を吊り上げながら笑ったように見えた。

(終)

79 :名無しさんちゃうねん :2004/01/27(火) 07:10 ID:???
>>75-76は怪談のポイントはきっちり押さえてあるものの、
お話自体は無難なものだと思います。
しかし>>77-78は本当に怖い。
赤い服、雨、袋小路などの恐怖を連想させるキーワードの使い方や
謎が謎のまま残る歯切れの悪さなどが実に巧みです。
大阪の謎の笑みが短編の締めくくりにピタリとはまっていますね。

80 :名無しさんちゃうねん :2004/01/27(火) 12:13 ID:???
「それにしても榊ちゃんが あたしの家に来てくれたなんてびっくりやった〜」
「ん?なに?大阪の家に榊ちゃん来たの?」
「せやで〜 あたしがともちゃんから借りたビデオを見てたらな〜」
「うんうん」
「なんや井戸みたいなのんが写ってて…」
(私そんなビデオ貸したっけ……?)
「その井戸から髪の長い女の人がでてきてん そうしたらTV画面から這い出てきたんや〜」
「……へ?」
「それでな?はじめは誰かわからへんかったんやけど……
 髪が長い知り合いいうたら榊ちゃんやーってピンときたんや〜」
「……それでどうしたんだ?」
「とりあえず座ってもらってー ジュースとお菓子をだしてあげた〜
 そうしたら爪が剥がれてたみたいやから…… 手当てしてあげてー
 あと 少し汚かったからお風呂に入れてあげたで〜」
「ふ、ふーん……それでどうしたんだ……?」
「そうしたらなー?榊ちゃんが妙に低い声で…」

『……………もういいよ…』

「って言ってTVの中に帰ってしもた〜」
「………あんた……すごいな… ついでにそれ榊ちゃん違うと思うぞ?」
「あーやっぱりなー…… 榊ちゃん前髪あんな長くしてへんもんな〜」
「目の付け所が………ちょっと違う」

81 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/28(水) 01:09 ID:???
>>79
ん〜。ご指摘の通り、「記念写真」はオーソドックスな怪談話です。
あずまんがのキャラたちに当てはめて書いてみましたが、
もうちょっとシンプルに書いたほうが良かったかな?
「赤い女」は、むか〜しラジオか何かで聞いた話を、うろ覚えで
思い起こして書きました。元の話はオチがあったような気がするんですが
忘れてしまいましたので。

82 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/28(水) 02:01 ID:???
よみの不合格のわけ

よみはホテルの一室で、赤本のチェックに余念が無かった。
時刻はすでに夜中の11時を廻っている。

よみが滑り止めのつもりで選んだ大学は、朝イチで行くには少しばかり遠かった。
そのため、今回に限り、大学近辺のホテルに一泊することになった。
宿泊先として選んだホテルは、この時期になると受験生向けに営業展開をしている
ごく一般的なビジネスホテルだった。部屋の中にはベッドとちょっと仕事が出来る程度の机、
ユニットバス一式が揃っており、更によみが予約したホテルの部屋はユニットバスの前に大き
な姿見が掛けてあるので、チェックアウト前に身だしなみを整えられるようになっている。

「ん〜〜〜っ。もう11時半か。明日に備えてそろそろ寝るか」
よみは明日の準備を整えた後、伸びをすると軽くストレッチをした。そして、ベッドに潜り込ん
で、枕元のスイッチを切って部屋の明かりを全て消した。
よみは真っ暗でないと眠れない性質なのだ。

83 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/28(水) 02:02 ID:???
よみの不合格のわけ 其の2

…ピチョン、…ピチョン、…ピチョン…
水が滴るような音で、よみは目が覚めた。枕もとの携帯電話を見ると午前2時を差していた。
「あれ?蛇口の栓、ちゃんと締めて無かったかな…」
よみはふとんを出るとメガネをかけ、明かりも点けずにそのままスタスタとユニットバスの戸の
前に立った。
…ピチョン、…ピチョン、…ピチョン…
音は中から聞こえてくる。戸の側のスイッチを入れて戸を開けると、ユニットバスの蛇口から
水滴が滴っていた。栓をきつく締めたが、水滴は止まらない。しばし蛇口付近を眺めていた
よみは、シャワーと蛇口を切り替えるレバーを強く蛇口側にひねってみた。
果たして、蛇口からは勢いよく水が出、すぐに止まった。シャワーのホースに溜まっていた
水が原因のようだった。原因が分かったのにホッとし、また原因を見事突き止めた自分に
「冴えてる冴えてる。今日の試験は大丈夫だ」などと嬉しくなり、よみは意気揚々とユニットバス
から出た。
戸を閉め、スイッチを切り、ベッドに向かう。途中、姿見に映った自分が目に入った。
姿見はよみの全身をはっきりと映し出していた。よみはまっすぐ立ってみたり、
ちょっとポーズをとってみたりした。
「勉強に根を詰めてたからな。少しはダイエットになったかな」
腰に手を当てたりして入念にチェックする。一通り気の済むまでチェックしたが、
こんなことしてる場合じゃないと気付き、そそくさとベッドに潜った。

84 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/28(水) 02:05 ID:???
よみの不合格のわけ 其の3

「ん?」
何かがよみの心に引っかかった。しばらく天井を眺めていたよみは、急激に自分の心に不安な
気持ちが膨れ上がるのを感じた。
何かがおかしい。
よみは上体を起こした。そして目を凝らしながら部屋を見回した。
真っ暗である。
多少、カーテンの隙間から漏れる夜明かりで朧気に室内の様子は分かる程度である。
ベッドから姿見の位置は見えるが、姿見は黒い四角い板にしか見えない。

なぜ、あの暗闇の中で、自分は姿見にはっきりと映っていたのか。パジャマの柄までもはっきりと
映っていたのか。部屋は真っ暗だったのに…。

よみはふとんを頭まで被った。
必死で眠ろうとしたが、鏡の件を合理的に納得できず、なかなか寝付けなかった。

試験の結果は無残だった。
以来、よみは明かりを点けたまま寝るようになった。

(終)

85 :名無しさんちゃうねん :2004/01/28(水) 08:11 ID:???
>>80
怖い話のあとに読むとホッとするような話ですね。
大阪らしさがよく出てます。

>>81
元ネタの方にはオチがあったのですか……。
でも>>77-78のほうが完成度は高いと思いますね。

>>82-84
少し話の流れが苦しいですね。
映らないはずのものが映っていた、というのが伝わりにくいせいでしょうか。
読者を誘導するような仕掛けがあると良いでしょう。

86 :名無しさんちゃうねん :2004/01/28(水) 12:58 ID:???
いや、ここ最近の全部素晴らしいと思う。
つーか、何だこのスレ!?
レベル高過ぎ

87 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/28(水) 14:57 ID:???
>>85
う〜ん。苦しかったですか。
読み返してみると確かにそうかも…。
元ネタは先輩に聞いた話で、サラリーマンが主人公でした。
真っ暗闇の中で見えるはずのない自分の身だしなみを整えて
寝るときにその異常さにハっと気づくという話です。

もうちっとよく推敲してみますね。
厳しい意見ですが、参考になりました。

88 :85 :2004/01/28(水) 16:27 ID:???
>>87
苦しい、というのはあくまで怪談としての部分ですから……。
あまり気にしないでください。
それよりも暦の裏話としての部分が良く書けていると思います。

89 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/28(水) 23:46 ID:???
全然怖くないですが…

「花粉症」

花粉症の季節がやってきた。
症状が目に来る人も大変だが、鼻に来る人も大変だ。
よみは鼻に来る方で、日中は薬で抑えているが、
家に帰ればティッシュ箱を抱えて過ごしている。

ある休日、その日も鼻水が止まらないよみは
ティッシュを傍に置きながら自室で本を読んでいた。
さっき新品を開けたばかりのティッシュは、もう残り
わずかしかない。
何回かかんでいたらラスト一枚になってしまった。

紙を引っ張ると抵抗があった。おかしいと思いながらも
強引に引っ張ったら難なくとれた。
が、次の瞬間箱から白い手がすっと伸びティッシュをつかんだ。
呆気にとられるよみをよそに、その白い手は箱に引っ込んでいった。

ち〜ん……。……へーちょ…。
箱からくしゃみが聴こえた気がした。

〜終〜

90 :伯爵 :2004/01/29(木) 12:03 ID:???
こう言うのは好きですw

91 :名無しさんちゃうねん :2004/01/29(木) 18:05 ID:???
>>82->>84

おい!
これ読んだら、夜暗がりで鏡が視界に入るのが
怖くなっちまったじゃねーかよ…
どうしてくれるの〜?!

92 :名無しさんちゃうねん :2004/01/29(木) 19:20 ID:???
>>91
スレの素人

93 :名無しさんちゃうねん :2004/01/29(木) 21:40 ID:???
>>92
レスじゃぁ・・・

94 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/30(金) 02:16 ID:???
「覗き」

学校で天文部に入っているかおりんは、自宅にも自分の天体望遠鏡を持っている。
学校に入って間もなく父親から贈られたものだ。
星が見える夜は天体観測をするのが日課になっているかおりんだが、最近は覘きというよからぬことも
日課にしていた。

きっかけはちょっとした好奇心だった。
「榊さんの家は遠いけど、ひょっとして窓から見えるのかな」
天体を眺めるのと、クラスメイトの榊へ一方的に憧れることは似ているのだろう。
かおりんの自宅は町ではやや高台にあり、町内を一望できる。
かおりんはすぐさま、クラス名簿の住所と地図を照らし合わせ、それを窓からの風景に置き換え、
という窓の景色から榊の家を特定する作業に没頭し始めた。まるでいつも星を探す時のように…。

その時は結局、榊の家がかおりんの自室からでは窓の中が見えない角度であることが分かり、
目的は達成できなかったが、かおりんはそれ以来、他所様のプライベートを覗き見る面白さという
ものを知ってしまった。

その日も一通りの天体観測を済ませた後、天体望遠鏡を自室に持ち帰って窓際にセットし、明かりを
消して覗き見を始めた。
「今日はどのへんを見ようかしら…」
望遠鏡には次々と、他人の生活風景が飛び込んで来る。
テレビを見てくつろいでいる人、風呂上りのおっさん、机に向かって勉強している様子、etc...。
他愛もない風景だが、それが面白い。
「あら?榊さんそっくり…」
あるコーポの窓を覘くと、こちらに背を向けてソファーに座り、テレビを見ているらしい女性が見えた。
髪が長く、様子から見て背も高そうに見えたので榊さんそっくりだと思い込んだのだ。
「どんな人なんだろう…。こっち向かないかしら。」
ドキドキと期待しながら、しばらく様子を見ていた。しかし、その女の人に動きは無かった。というより
微動だにしない。たいてい、途中で姿勢を変えたりするのだが、そういう様子はない。
「あれ?テレビを見ているんじゃないのかな…」
かおりんはしばらく見ていて気付いたが、その女の人の前にあるテレビらしきモノは画面が真っ暗だった。

95 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/30(金) 02:19 ID:???
「覘き」其の2
何分ぐらい眺めていただろうか。女の人は相変わらずソファーに座ったまま微動だにしない。
一向に動かない女の人に、かおりんもさすがに興味を失った。
しかし、もう止めようと思った頃、女の人が突然立ち上がった。そして直後その部屋の明かりが消えた。
消える寸前女の人がこちらを振り返ったように見えた。

急に室内が寒くなった。夏だというのに鳥肌が立ってくる。
同時に何か腐敗したような匂いも漂ってきた。
背後に何かの気配を感じたのと、かおりんの両肩に突然手が置かれたのはほぼ同時だった。
ぞっとするほど冷たい手だった。かおりんは思わず小さな悲鳴を上げて固まってしまう。
「覘いちゃ…ダ・メ・ヨ」
ややくぐもっているが若い女の人のような声がかおりんの頭上から聞こえた。
「でもそんなに私が見たいなら…。見せてあげる…」
手が肩を掴み、かおりんを後ろに向けさせようとする。
(見たらヤバい。絶対にヤバい)
かおりんは足を踏ん張って振り向くまいと必死で抵抗た。しかし肩を掴む手の力は強く
徐々に徐々に振り向かされる。それでもせめて首だけとも、顔を必死で背ける。
突然視界が暗闇に覆われた。暗闇の正体が長い髪の毛に覆われたことによるものと気付くのに
しばし時間を要した。突然視界を遮られ、かおりんは恐慌に陥った。
頭上から小さな柔らかいものがポロポロ落ちてくる。それは首筋などに容赦なく進入してくる。
てに落ちてきたものを見るとウジだった。ウジに驚いた瞬間、かおりんは頭を掴まれ
上を向けさせられた。

ガン!ドターン!!バタッ!ドドドドドッ

かおりんの両親が居間でくつろいでいると、階段から転げ落ちるように娘が駆け下りてきた。
顔は青ざめ、目は大きく見開き、口は何かを言おうとしているが声にならない様子で、荒い息をしながら
階段前の廊下に倒れていた。娘のただならぬ様子に、父親が用心しながら2階を見回ったが特に何も無かった。
両親が事情を聞こうとしても、かおりんは「きょ、今日は下で寝させて…」というだけで何も分からない。
結局何があったのか両親は聞きだせず、とりあえず娘を1階で休ませることになった。

これを機にかおりんは覗きをきっぱりと止めた。
あのコーポの例の部屋は、昼間に通ると空き室となっていた。
おそらくは何かあったんだろう。
しかしそれを調べてみるよりは、あの時のなにもかもを忘れてしまいたい
かおりんだった。特にあの時上を向いて見てしまったものについては…

(終)

96 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/30(金) 02:24 ID:???
予告

次に怖い目に合うのは、にゃも。

97 :伯爵 :2004/01/30(金) 02:38 ID:???
 かおりんっぽいひどい目の会い方ですなw
 思わず対抗意識が芽生えてしまうじゃないですか(←子供)
 では、私も今晩中に一つ。

98 :『一つ目』 :2004/01/30(金) 05:40 ID:???
 目を閉じて深い闇の中に落ちていく。
 深く息を吸って四つ数えて、気管を締めないで一秒
息を止めてゆっくりはきながらまた四つ。意識の区切
り呼吸の区切りをしてしまわないように気を付けて。
そうしておいて闇の中に投射する。力の赤い三角形、
知恵の黄色い四角形。
 夜の闇の中で智の胸元が深い呼吸に上下した。
 魔法使いになる本。
 智がそんな題名の本を見つけたのは、学校の図
書室の単行本コーナーだった。古い書棚の一角に
ひっそりと置かれたその本は陳腐な題名とは裏腹に、
表紙のデザインがかなりこっており、中身も緻密な
銅版画が大部分をしめる興味深い本だった。
「魔法使いになる方法、か」
 図書室から借りて読んでみようと思ったのは興味と、
ありえないとは思いつつも願望があった結果である。
 魔法使いになれるかもしれない。
 一読して理解が難しく、それでも自分なりの儀式が
出来るようになったのはつい最近のことである。
 と言っても本に書いてあるとおりではなく、(罪人
の左腕とか刑場の土なんてどうすればいいのだ! )適
当にアレンジしたものだ。
 特殊な呼吸と瞑想を真っ暗な部屋の中で横になって行なう。
細かな部分をかなり省いたが、これでも十分効果があるはずだ。
現に魔術の象徴の図形を暗闇の中に描き出すことが出来るよう
になった。
「これさえ出来るようになればもうあっという間だって書いてあったな♪」
 このイメージを暗闇の中に投影していけば遥か異世界への扉が
開かれるという。魔法使いになるためにはそこで力を手に入れな
くてはならないのだ。
「ヨッド・ヘー・バウ・ヘー」
 暗闇に智の声が溶ける。 ふわりと体が浮いた。

99 :『一つ目』 :2004/01/30(金) 05:47 ID:???
 浮いたのはイメージの身体だ。
 世界が後ろに飛び去っていく。
 闇の向こう側白い点が見える。
 白い点は地平線へと変わって。
 智はくるくると宙を舞い上り。
 その彼方のなる闇へまた闇と。

 吸い込まれていく闇の果てはぐんぐん迫ってきて。
 その闇が瞼を開いた。
 闇と目が合った。
 目に吸い込まれる前に、目が覚める。
 手にはべっそりと汗をかいていた。

「そんなことがあったんだよー」
 ちよちゃんの別荘で智がこの話をしたのは、怪談話を
せがむ大阪に答えての事。しかし、智がこの話を二度と
しなかったのは、自己の体験に比べて皆がそれほど怖がって
くれなかったからではない。

 その日同じものをみてしまったからだ。
 

100 :名無しさんちゃうねん :2004/01/30(金) 12:55 ID:???
>>99
ごめん…。どこらへんが怖いのかよく分からない。
闇=大阪の目だったってこと?

101 :名無しさんちゃうねん :2004/01/30(金) 16:32 ID:???
>>98-99
智が魔術を使うシーンは神秘的な雰囲気がよく出ていますね。
一つ目、というのは異世界への扉のことなんでしょうか?
(闇が瞼を開いた、とか……)
恐ろしいモノのイメージが伝わりきっていないためか
少し尻切れとんぼな印象なのが残念です。

102 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 01:39 ID:???
フリーマーケット

黒沢みなもは、一人暮らしに女性にはよくあることだが、
室内用の雑貨で自室をコーディネートする趣味がある。
休日ともなれば、特に学校に用事が無い限り、雑貨屋巡りをして過ごすことも多い。
最近では、雑貨屋に飽きたらず、より掘り出し物の一品を求めて
骨董市やフリーマーケットにも足を運ぶようになってきた。
気に入った物が見つかれば、多少値が張っても購入する。
ここいらへんは、同僚の谷崎ゆかりとは対照的である。

とあるフリーマーケットで、みなもは気になるチェストを見つけた。
小型でデザインはやや東南アジア風だが、自室の壁紙や家具類と並べてみても調和しそうに思えた。
少々提示額が高かったが、売り出し人と交渉した結果、あれよあれよと値を下げられ、
最終的には提示の3割で購入できた。
この時、妙に売り出し人がこのチェスト手放したがっているような気がしたが、
この時はあまり気にしなかった。
家に帰り、さっそくチェストを壁際に置いてみる。
思っていた以上に他の家具類と調和して見えた。
みなもは良い買い物が出来たので、満足げに頷いた。

その日の深夜、みなもは人がボソボソと話す声で目が覚めた。
複数の人間が声を潜めて話をしているようだった。
隣室へ気遣って声を潜めているのかも知れないが、こういう時は却って
声を潜めている方が耳障りな場合もある。
気にはなったが、抗議しに行くのも面倒だったので、その日はそのまま寝た。

翌日の晩も人の声で目が覚めた。
隣室に抗議しようかと思ったが、相手も一応は声を潜めているので
こちらの抗議を伝えるのは難しそうだとも思い、この日も我慢することにした。

その翌日も、翌々日も深夜に人の声で目が覚めた。
トータルでは十分睡眠時間を取っているとはいえ、途中で起こされるのは気分が悪いものである。
実際みなもとしては少々寝不足感があった。
学校でもイライラして些細なことで生徒を叱ったりしてしまった。

103 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 01:40 ID:???
フリーマーケット 其の2

「今日こそは抗議してやろう」
みなもは意を決すると、隣室を訪ねた。
何回か呼び鈴を鳴らすと、水商売風の女が出てきた。
言葉を選びながらみなもが抗議すると、相手もやんわりとそんなはずは無いと否定してきた。
深夜は仕事に行っており留守なのだという。
ラジオを点けっ放しにしていないかとも疑ったが、それも否定された。
そもそも、防音完備のマンションでそれはないだろうとも付け加えられた。
結局それ以上追求できなかったみなもは、その場は引き下がった。

その晩も声は聞こえてきた。みなもはベッドから抜け出すと、声の発生源を探して出した。
隣室側の壁に耳を当ててみたが、壁からは聞こえてこない。
どうやら、室内から聞こえているようである。
「私のラジオかしら」
オーディオを見たが、今電源は入れていない。
みなもは手を耳に当て、神経を集中して音源を探っていった。
するとおおよその音源の方向が掴めた。
その先にはフリーマーケットで買ったチェストがあった。

「買ったときには気付かなかったけど、小型のラジオでも入っていたかしら」
引き出しに手を掛け、引いてみると予想外に重かった。
「あれ、大したもの入れてないのに?」
勢いをつけて引き出しを引いた。

中では男女6人の生首が話をしていた。
みなもは腰が抜けて、その場に尻餅をついた。
その音に、生首はいっせいにみなもの方を向いた。
そして目が合うと、白い歯を見せてゲラゲラと笑い出した。


窓から差し込んだ朝日で、みなもは目が覚めた。床で仰向けになっていた。
どうやらあれから気絶していたようだった。
恐る恐るチェストを見たが、別段何も入っていない。

次の休日、みなもはチェストをフリーマーケットに売りに出した。
捨てると何かありそうだし、寺で供養しようにもやったことがないし、だいいち
話を信じてもらえるかどうか怪しい。それに割り引かれたとはいえ結構な金を
払って買ったものであるから、みなもとしては損害を取り返したかったのが本音だったのかもしれない。
なんともハタ迷惑な聖職者らしからぬ行動なのだが、自分の奇怪な体験を理由に
相手を気遣って売らないと判断するほどにはあれを信じたわけでもなかった。
ただ、気味が悪いので売りに出すのだ。


チェストはみなもが購入した額より高く売れた。

104 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 01:43 ID:???
すいません。ちょこっと訂正。

其の2
2段落目の1行目末
×「音の発生源を探して出した」
○「音の発生源を探し始めた」


ついでに次回予告

次に怖い目に合う人は、神楽さん。の、予定。

105 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 01:48 ID:???
>>98-99
乙です。
いやぁ、自分のと比べると表現力が数段上ですね。
こんなふうに書けるようになりたいです。

でもごめんなさい。
私も>>100同様、どこが怖い点なのか今ひとつ分かりませんでした。

106 :伯爵 :2004/01/31(土) 02:05 ID:???
>>105
 ならびに皆々様。
 確かに怖くなかったですね。猛省しております。
 自己の体験をあずキャラに投影したのが無理の始まりでしょう。

 一時期魔術の実験をしていた頃がある。
 横になって暗闇に思いを馳せると、遥か彼方に
小さな光の点があった。
 じっと見詰めると、ずんずん近づいてくる。
 ようやくわかった。あれは誰かの目だ。
 闇の中の目。じろりと私をみた。
 急いで瞑想を解くと、手足にべっそり脂汗が浮いている。
 その目を思い出した日は、寝るときに明かりが消せない。

 ってな経験をアレンジしたのですが。どうも文章では
難しい。

 PASCOさんの文章は読みやすくて、その上キャラの
特徴もよく出ていて楽しいです。お褒めの言葉、ありがとうございます。
 お詫びがてらのライナーノーツであります。

107 :名無しさんちゃうねん :2004/01/31(土) 02:14 ID:???


197 :風と木の名無しさん :03/11/23 01:36 ID:HPhFIFIi
     \   ,、-''"´::::::::::::::::::::::::::::`‐、
 い  ボ `、/..  ::::::::::ィ::::::::::::::::::::::::::ヽ
 う  .ク   ',:::::::::::.....,.../ |';......::..........:..::::. ',
 ん  に   ',:::::::イ:/.;/  |.';ト:::|l:l';::::::::::::::::::i
 で  何    i::::::;'lヘ/   | l リ_レi:::::::::::::l
 す  を   |::::;'.「ト:iヽ  -‐7'iフ‐、 l:::::::::/
 か. す    |';l:l  L;!     l::::::ノ l::::',ヽ
 ?  る   .|  ',   、    //`‐ |l 丿 ,、-‐ー、
    っ   l   ヽ  r-ー、   ニ-く /     ヽ
     て   l     >、`‐-' ,、 '    7         ',
',       /    i  `‐- ´ 、 ノ _,、'´        ',
..ヽ、__.,ノ       ',     ヽ ,' ´    ヽ,     ',
             ', ヽ            ',    '、
             ',  ',              `、.   `、
               `、. `、            `、     `、
               `、. `、     .. ``    'i、     ',
                ヽ ヽ     ::::.....    lヽ    i
                 ',  ヽ             l'´   ノ
                 ヽ. ヽ           l   /
                  `‐、.i           l_,、ァ'´
                    ノ、 `       __lニ/
                   / `〉`‐--‐''"´     .l'´
                 /i  /   l         l
               ,、-'´  l/\  /_        l
          /⌒, -'´     l   >'´   ``‐、    l
        /  /        ゝ'´       \ l'
まあ正直言って元ネタがあるなら教えて欲しいわけであるが


198 :風

108 :名無しさんちゃうねん :2004/01/31(土) 08:49 ID:???
>>107
誤爆?自爆?

109 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 09:21 ID:???
>>107
一応マジレスしておきますと、小さい頃から怖い話が好きで、
その手の本や映画は数え切れないくらい見たり読んだりしてました。

面白いもので、怖い話も数多く読んでると、同種のパターンの話や展開が見えてきたりします。
さらに読み込むと、元ネタが同じとしか思えない話も、書き手次第で恐怖が倍増したり
逆に陳腐な話になっていることにも気が付きます。
だいたい自称心霊研究家みたいな人の話は表現力に乏しくてつまらないですが、
現役の作家や、若手で怪奇物をよく書いている人の文章は巧みで些細なことも
非常に恐ろしく書いていて面白いですね。
私の元ネタは、今まで見聞きしてきた怪談ものの中で特に印象に残ったもの半分と
自分の創作1/4とあずまんが1/4です。

110 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 13:11 ID:???
団欒

神楽は基礎体力作りと小遣い稼ぎも兼ねて、早朝の新聞配達をやっている。

始めた頃は配達先の名前と場所を覚えるだけでも大変だったが、2週間も経つ頃には
自分の担当エリアの住民の名前はほとんど覚えてしまっていた。
新聞配達を始めて知ったのは、朝早くから仕事をしている人がたくさんいるということだった。
まだ高校生である神楽には新鮮な発見であった。元々社交的な性格をしているため、
配達先で会う人会う人に元気よく挨拶をし、おかげで向こうも神楽のことをよく覚えてくれた。
朝のこの時間帯は、神楽にとって水泳をしている時に次いで充実したときであった。
あの日を覗けば…。

あの日、ある家の玄関口の新聞受けに新聞を差し込もうとしたとき、神楽はおや?と思った。
この家は、いつもこの時間はまだ寝ているのか灯りがついていないのだが、今日は灯りがついている。
新聞を投函すると、
「おはようございま〜す」
「いつもご苦労様です」
と元気な声が中から聞こえてきた。
玄関が少し開き、中からまだ就学前くらいの女の子が顔を出し
「おねえちゃん、いつもありがとう〜」
とニコニコ笑いながら言ってきた。
神楽は嬉しくなり、
「おはようございます!ありがとうございます!」
と返事をした。
ここの人は何か良いことがあったのかな、と思いながら配達を続けた。

配達所に戻ってくると、所長が
「おい神楽ちゃん。キミは○○町の△×さんとこ配達してたよな?明日からあそこは配達は無しだ」
○○町の△×さんというのは、さっき家族全員が挨拶してきた家のことだ。
「え?なんでですか?他の新聞に換えられちゃったんですか」
「違う違う、あそこは昨日これで誰もいないんだそうだ」
所長は首をくくる真似をしてみせた。
あの家で一家心中があったらしい。

神楽はまだ新聞配達を続けている。
いつものように配達先の人達に元気に挨拶しながらやっている。
ただ、あの家の前を通るときは、下を向いて急いで走り抜けている。
まるで何者かに呼び止められるのを避けるように…。

(終)

111 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/01/31(土) 13:17 ID:???
次は誰にしようかな?

112 :名無しさんちゃうねん :2004/01/31(土) 15:07 ID:???
普通に「挨拶した後に心中してしまった」方がコワイ
と個人的には思ったが
それだと怪談というより単なるキツい話になってしまうか

113 :名無しさんちゃうねん :2004/01/31(土) 21:53 ID:???
>>112
スレは「恐ろしい体験」だから、それもありかと。

114 :PASCO :2004/02/01(日) 23:50 ID:???
全然怖くないですが…

経文

夏休み。恒例の美浜家別荘での合宿へ向かう道中にて。
教師谷崎ゆかりは父親の車に、教え子の滝野智、榊、隣のクラスのかおりんを乗せて
暴走していた。ただでさえめちゃめちゃな運転を、助手席の智が煽るため、今回は
いつにも増してひどい運転であった。
センターラインははみ出す、前の車を煽る、信号は無視する、ジグザグ運転するetc…。
後部座席に座った榊とかおりんは既に顔面蒼白である。

調子に乗って法定速度の倍以上のスピードで一般道を飛ばしていた時、
突然何の前触れも無く車が止まった。ブレーキの音もタイヤがアスファルトに擦れる
音も一切無く、唐突にピタっと止まった。ゆかりたちも前に放り出される反動も無く
ただ、止まった。

ゆかりと智が降りて、車をよく見てみるとタイヤに一枚の経文が張り付いていた。

(終)

115 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/01(日) 23:51 ID:???
トリップ忘れてた。

まだまだネタはありますが、誰を当てはめると怖いかで迷ってます。

116 :名無しさんちゃうねん :2004/02/01(日) 23:59 ID:???
>>114
 いい仕事ですね。
 この手の現実とのブレは意外な事件を引き起こしたり
あるいは何かのメタファーになりえます。
 ん? 
 という出来事は大好きです。

117 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/02(月) 18:16 ID:???
今回は榊さん。でもあまり怖くない…。

人形@

榊は高校2年目の夏休みに、思い切ってアルバイトを始めた。
アルバイト先は、キャラクター人形を扱う大型店舗で、神楽が探してきてくれた店だ。
時給が割とよく、ねここねこシリーズも扱っているというので、初めてのアルバイトにも関わらず、
榊は珍しく積極的に行動し、雇ってもらった。

この店では、人形は店の中央に山のように積まれ、客が実際に手で触れて商品を確かめて購入することが
出来るようになっている。人形の積み方には一定のルールがあり、人気商品や、人形の元のアニメやお話の
中で主人公である人形は上に方に配置され、その他の人形は人気商品を支えるように下の方へ積まれる。
アルバイトの仕事は、主に接客や、商品の陳列の直しである。
大好きな可愛らしい人形に囲まれ、また客もほとんどが就学前の子供を連れた若い母親であることが
多かったため、榊にとっては実に充実した夢のようなアルバイトとなった。
また客である子供達も、榊を「おっきくてきれいなおねえさん」「どんな高い棚の人形もさっと取ってくれるおねえさん」
として慕ったので榊は人気者の店員となった。

アルバイトを始めて1週間が経過する頃、榊は妙なクレームが発生することに気が付いた。
「人形が生きているのではないか?」という内容だった。
聞いただけではクレームを挙げた人間の頭を疑いたくなるような内容ではあったが、実際に榊は
子供達から「あのお人形さん怖いよ〜」と泣き付かれることがしばしばあった。
中にはある人形を乱暴に扱った子供が転んで頭を商品棚の角にぶつけて怪我をしたといった類
の相談もあった。奇妙なことにその人形というのは特定の1体の人形であった。

その人形については、榊にも心当たりがあった。
その人形は物語の中では脇役なので、当然山の下に配置しているのだが、気が付くと一番上に
乗っているのだ。初めのうちこそ、遊んでいた子供が上に放り投げてたのだろう程度にしか
思わなかったのだが、あまりにその頻度が多いにも関わらず、誰かが上に運んでしまう現場は
見たことがなかった。以来、榊は件の人形を注意して見ることにした。

118 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/02(月) 18:17 ID:???
人形A

その日のアルバイトが終わる頃、榊は上がる前に人形棚の整理をしていた。もう客はまばらであった。
例の人形はまたしても上の方に鎮座している。榊は両手を伸ばし、人形の両脇を持って下ろそうとした。

 人形が、身をよじった。
 榊の手から逃げるように身をよじった。
榊は驚いて人形を落としてしまった。人形が一瞬睨んできたような気がした。

榊はすぐに店長に相談し、人形を処分した方がいいのではないかと進言した。
店長は考え込んでいたが、そんなオカルトのような話では処分できんが、汚れが目立つと言うことでなら、
と処分を認めた。事の真相はともかく、その人形を気味悪がる客も増えていたので店長も何か対策をと
考えていたのだった。
件の人形は店員が袋に入れ、倉庫にしまわれた。
その後アルバイトの契約期間が終わるまでは、特に何事も起きなかった。

最後の日、榊はどうしても気になって、例の人形を倉庫まで見に行った。
単に機械仕掛けが入っているのか、得体の知れない何かが潜んでいるのか。
1人で確認するのが怖かったので、バイト仲間と正社員の店員にも付いてきて貰った。
みな、榊と同様に人形が身をよじるのを経験している。
糸切り鋏を手に、中を覗いてみるために、人形の縫い合わせの部分の糸を切った。
恐る恐る中を覗いたが、綿が入っている以外は別段何も無かった。
その場に居た者は一斉に安堵の溜息をついた。

榊が帰宅すると、母親から自分宛に電話があったことを知らされた。
電話の主は母親に対し、「おまえの娘。ひっで〜女だな〜」と言ったらしい。
榊は自分の無実を母親に説明するのに1時間あまり費やした。

119 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/02(月) 19:23 ID:???
これまた怖くない話。

公衆電話

神楽が夕方のランニングで某公園内を走っていたとき、ふいに電話の音がした。
音のする方を見ると、公衆電話が鳴っていた。
「え?あれ?こういう時ってとったほうがいいのかな」
誰宛かも分からない電話が鳴り続けることに不気味さを感じていたが、
このまま通り過ぎることが性格上出来なかった神楽は、意を決して
受話器を取った。

「…も…、もしもし?」
「……あ……。……もしもし?」
「もしもし?私、通りすがりに電話を取ったものですが…」
「……わ、私も通りすがりに電話が鳴っていたので取ったのですが…」
「えぇ?!そ、そうなんですか…。え…と、どうしたもんですかね」
「あの、そちらはどこの電話でしょうか?こちら北海道なんですが…」
「こっちは東京だけど…。」
「………」
「………」
「………あの」
「………うん?」
「同時に切りましょうか…」
「そ、そうだな…。じゃ、せーので切ろう」
「はい…」
「せーの」「せーの」
ガシャコ…。

神楽はしばらく公衆電話を眺めていたが、もう鳴ることはなさそうだった。
「身体、冷えちゃったな」
神楽は勢いよく走り出した。
公園を出る頃、また電話が鳴ったような気がした…。

(終)

120 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/02(月) 19:52 ID:???
心霊モノもいいですが、人間が怖いという話も書いてみたいです。
ただ、後者は書くのが結構難しい。

ゾッとする人間って、あずまんが大王キャラなら誰が適当でしょう?
無難なところで大阪かな。意表を突いて榊さんかな。
智が怖いというのもかな〜り意外かも…。

121 :名無しさんちゃうねん :2004/02/03(火) 01:25 ID:???
PASCO氏へ。
えらいペースで書き込んでますが…。
怪談を立て続けに書くといろいろあると聞きます。
貴方の身の上に起こるであろうことが、
このスレ最大の怖い話にならないことを祈ります。




ヒヒヒ…

122 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/04(水) 00:57 ID:???
ヤバイ。
体調崩してきた…。
仕事も急にテンパってきたし…。




シッカリシナクテハ…

123 :伯爵 :2004/02/04(水) 01:26 ID:???
>>122
 焦らず急がずで。
 気候の変わり目ですからお風邪などひかないよう。

124 :名無しさんちゃうねん :2004/02/04(水) 02:37 ID:SLCC8iZ6
『学校であった怖いあずまんが』

新聞部の大山君(名前はプレイヤーが変更可)が放課後、七不思議の取材をする
密室で大阪・智・暦・神楽・榊・ちよが順順に話していく
ライトノベル形式で順番次第で話の内容が変わり、もちろん選択肢次第でも変わる

そして六話目に誰を選んだかによって
七話目に登場する人物が木村・ゆかり・にゃも・後藤・かおりん・そして……
と多彩に変化する

全254話+α隠しシナリオ3本

125 :名無しさんちゃうねん :2004/02/04(水) 16:41 ID:Iqp.DqNs
昨日の夜
身体に電気ショックがかかったかと思うともう一発電気ショックをくらった
そうするといきなり赤ちゃんの画像があらわれた
そしてこの目で見たのか頭の中で見たのかわからないがそこには
要するに「グレイ」って奴がいた

126 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/04(水) 18:32 ID:???
何とか体調持ち直しました。

>>121
ははは。気を付けます。少しインターバル置こうかな。

>>123
ありがとうございます。
ご心配をお掛けしました。

>>124
あっ。そうゆう形で綴っていくのも面白そうですね。


では、1本上がりましたので…。

127 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/04(水) 18:34 ID:???
酔っぱらい -1-

土曜日の明け方、閑静な住宅街を、谷崎ゆかりはふらふらと千鳥足で歩いていた。
時々立ち止まっては、道路へ向かって派手に吐瀉物をぶちまけている。かなり酔っ払っているようだ。

「ちっくしょう〜。にゃものやつ。本当に先に帰りやがって〜〜。薄情者〜〜!」

ゆかりは昨晩、いつものように同僚であるにゃもこと黒澤みなもを誘って飲みに行った。
そしていつものように強くもないのに浴びるように酒を飲み、いつものように泥酔したのだ。
ただ、今回はみなもが愛想を尽かして先に帰ってしまった。酔いに任せてみなもを怒らせるようなことでも
言ったのであろう。

あまり有り難くない印を、飲み屋からここに至るまでにそこかしこに残しながらも、
ゆかりはついに自宅まであと100mというところまで辿り着いた。
が、ここまで来ていながら、ゆかりはもうどうだっていいやという気分になってしまい、よその家の塀に
もたれながら、しゃがんでしまった。
かったるそうに時計を見ると午前5時を指している。だが空はまだ暗い。
しばらくしゃがみこんだまま何処を見るでもなくボ〜ッとしていた。

突然、がんがんがんと音が鳴り響いた。
何か金属製の板を叩くような、今のゆかりにとっては非常に不快に頭に響く音だった。
「うるっせーなーっ!誰じゃ?」
音のする方を見ると、ちょっと行ったところに空き地があり、そこから聞こえているようだった。
「今、人が通りかかったら、確実に私が騒音の犯人にされるじゃない!」
そう思ったゆかりは、のそりと立ち上がると、空き地へ向かって歩き出した。

空き地は何かの建設予定地らしく、資材と資材小屋らしいものがある。しかし、計画が何年も滞っているのか
資材小屋は随分古びて見えた。音はその小屋から聞こえた。
ゆかりはつかつかと歩み寄った。どこかの馬鹿が中で暴れているのだろうと決めつけていた。
とにかく頭に来ている。引き戸に手を掛けると怒りにまかせて勢いよく開き、
「やっかましいぞ馬鹿野郎!!」
と怒鳴りつけた。

128 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/04(水) 18:38 ID:???
酔っぱらい -2-

小屋の中に人影は見当たらなかった。あるのは建設資材らしきものが少し。他には何もなかった。
音も止んでいる。
普通ならここで、背中に冷たいモノが走るのだが、今のゆかりはかなり酔っ払っている。吐いて幾分
楽になったとはいえまだまだ立派な酔っぱらいだ。よって普通ではない。
酔眼で小屋の中を睨み回し、犯人を捜していた。しかし何度見ても人影はない。
ゆかりは怒りをぶつける相手が居なかったので、ますます頭に来ていた。
どうにかして相手を見つけだして怒鳴りつけてやらないことには腹の虫が収まらない。
自分が納得できない事に対する、酔っぱらい独特の怒り方である。
ゆかりは戸を閉めるとその場にドカッと座り込み、戸を睨み付けた。
「んにゃろ〜。馬鹿にしやがって」
戸を閉めて暫くすると再び戸ががんがんがんと鳴り響く。
ゆかりは素早く立ち上がると、バーンと大きな音を立てて勢いよく戸を開いた。
「馬鹿野郎!てめぇ!いい加減にし……」

途中まで怒鳴って、ゆかりは固まった。
目の前に足がぶら下がっていた。
もちろん足は床に着いていない。
ゆっくりと見上げると、天井近くで横に渡してある梁に、作業着姿の男が引っ掛かっている。
特にひものようなものは見えず、引っ掛かってると言うしかないようなぶら下がり方だった。

「こいつ、一体どうやってあんなところにぶら下がってるんだろう…?」
酔ってはいたが、意外に冷静な頭でゆかりは男を観察していた。
暗がりでよく見えないが舌をだらしなく垂らし、目もカッと見開いているようだ。

ふいに、男が首を動かし白く濁った目でゆかりを見た。ゆかりと男は目が合った。
「えへっ、えへへっ、えへへへへへ…」
男は歪んだ口を更に歪めながら笑い出した。

ゆかりは戸をそっと閉め、家に向かって歩き出した。
酒は大分醒めたらしく、千鳥足ではなくなっているが、時折ひざがかくんかくんと折れている。
腰が抜けているように見えるのは気のせいではない。

空が白みはじめていた。音はもう聞こえなくなっていた。


この住宅街では、早朝けたたましく戸を叩く音が鳴り響くことがある。
住人の一部の間では既に知られていることであるが、
家の中に居る分には耐えられる程度の音なので、
あえて原因を確かめようとする者は少ない。
また、確かめに行った勇者も、その後は深く追求しようとはしないようだ。

-終-

129 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/04(水) 19:53 ID:???
もう1題

新幹線

大阪こと春日歩は親戚の家に行くために新幹線に乗っていた。
駅弁を食べてすっかり満腹になった春日家は、全員座席の上でとろけていた。
乗った新幹線は博多行き。親戚の家は岡山にあるので、寝過ごすわけには行かない。
が、春日家は歩を見れば分かるとおり全員があんな調子なので、この状況はかなりピンチである。

もうすぐ岡山というところで、歩は服の肘の部分をクイックイッ引かれて目が覚めた。
見ると一目で年寄りのものだと分かる手が、座席の隙間から肘を引っ張っていた。
後ろをふり返ると柔和な顔をした老女がにっこり笑いながら
「そろそろやでぇ」
と囁きかけてきた。
直後、間もなく岡山駅であることを告げる車内アナウンスが流れた。
歩はまだとろけている家族を起こすと、降りるために慌てて
荷物棚から荷物を下ろしたりした。

家族は全員、無事岡山駅で降りることが出来た。
しかし、歩は浮かない顔をしていた。
新幹線を降りるときに、自分が最後尾の座席に座っていたこと
を思い出したからである。

(終)

130 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/05(木) 19:52 ID:???
車窓に映る光景@

よみ抜きでマジカルランドへ行った帰り道のこと。
智、大阪、ちよ、榊の4人は電車に揺られていた。
時刻はもう午後8時を回っている。ちよは疲れたのか、榊にもたれかかりながら寝ている。
智と大阪は相変わらず馬鹿話をし、榊は静かに笑いながらそれを聞いていた。

話が途切れ、ふと智が隣を見ると同じシートに1人分間隔を開けて、中年のサラリーマン風の
男が大きく舟を漕いでいた。よほど疲れているのだろう。激しく揺れているが目を覚まさない。
「あのおじさん危なっかしいなぁ」
「よーさん働いて疲れてるんやなぁ」
智と大阪はしばらくその男が舟を漕ぐのを眺めていたが、再び他の話題に入り、盛り上がった。

何駅か過ぎた頃、智はふと正面の窓ガラスを見た。外が暗いので、車内の様子が鏡のようにはっきりと映っている。
隣を見なくても、榊にもたれて寝ているちよ、ちよが倒れないように背中に手を回して優しく支えている榊、
ぽ〜っと前を見ている大阪、そして自分がよく見える。自分の隣には女の人が座っており、そのまた隣りに
さっきから舟を漕いでいる男も映っている。

タタンタタン、タタンタタン、タタンタタン……

列車が規則的に揺れる音以外は、ほとんどの音が聞き取りづらく、それが却って列車内の静けさを
際立てている。夜の電車独特の雰囲気であろう。

話を再開しようと大阪の方へ顔を向けようとした時、智の心に何かがひっかかった。
もう一度、向かいの窓ガラスを見て、次に揺れる男の方を見る。再び窓ガラスを見る…。
「智ちゃん、どないしたん?」
智の様子に異変を感じた大阪は、智の顔をのぞき込んだ。
智の顔は心なしか血の気を失っている。
「どーしたん?お腹痛いんか?」
「お、大阪…」
「なんなん?」
「向かいの窓ガラスを見ろ…」
「見たで?」
「じゃぁ…次は私の隣を見ろ」
「?」
「なんか…気付かないか?」
「ん?……あ……」

窓ガラスに映る車内の様子では、智の隣りに女の人、そのまた隣りに大きく舟を漕ぐ中年男が寝ている。
しかし、横を見ると、智の隣は1人分空けて中年男が座っている。
大阪は智同様、血の気が引き、その場に固まってしまった。
「お、大阪にも見えたか…」

131 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/05(木) 19:54 ID:???
車窓に映る光景A

女はただじっと座っているわけではなかった。それどころか隣の中年男の頭を人差し指で小突いている。
女に小突かれるたび、中年男は身体を大きく揺らしている。
榊のように髪が長く、前髪も長く垂らしているため顔がはっきり見えないが、その様子から笑っているようだった。
しかし、声はまったく聞こえない。
まるで無声映画を見ているようだった。

智と大阪がじっと見入っている間、女の小突き方は徐々に激しくなってきた。
今まで指で小突いていたのが、だんだん平手、平手から拳になてきた。
女が男の首を突いた途端、男は激しく咽せこんだ。
かなり苦しそうである。顔色も悪い。
智と大阪が窓ガラスを見ると、女は大笑いしていた。
普通の笑い方ではなかった。
口を大きく開いて真っ黒な口腔を見せ、それとは対照的な真っ赤な舌を出し、腹を抱えながら笑っていた。
哄笑という言葉がぴったりな禍々しい笑い方であった。
しかし、それでも笑い声は全く聞こえない。

ふいに中年男が座席に倒れ込んだ。額から脂汗を流し、苦悶の表情を浮かべている。
が、すぐに身体を起こして寝始めた。その様はまるで誰かに腕を引かれて起きるように見えた。
実際、窓ガラスの中では女が男の手首を掴んで引き起こしたところだった。
男を引き起こすと、女はまた男を小突き始めた。
智と大阪の2人は、車窓に映る車内で展開する、その異様な光景から目が離せなくなっていた。

タタンタタン、タタンタタン、タタンタタン……
車内には列車の音だけが響いている。

2人が我に返ったのは、ちょうど榊がちよを抱き上げた時だった。降りるべき駅に着いたのだ。
智と大阪は逃げるように電車を降り、すぐさまふり返った。
中年男はまだ揺れている。激しく揺れる男を乗せたまま、列車は出発した。
「あのおっちゃん大丈夫やろか」
「なんか苦しそうだったよな〜」
「…うちらが小突かれんでよかったな。」
「そ、そうだな…。それに…」
「それに?」
「あの女と目が合わなくて良かった…」

榊がそんな2人を不思議そうに見ていたが、ちよちゃんを家まで送っていくとかで
ちよを背負って歩き出した。
4人はそのまま駅で解散した。


その晩、珍しくニュースを見ていた智は、最近電車内で突然死してしまうサラリーマンが多いという話を聞いた。
原因は、この不景気と苛烈なリストラにより、会社に残れた人の負担が増え、過労になってしまうということだった。
しかし、車内に限っては突然死の原因は他にもあるのではないかと、智は思った。
理解し難い不気味な原因が…。

132 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/06(金) 00:48 ID:???
眼差し

ある晩、榊は夜中にふと目が覚めた。
誰かの視線を感じる…。
半身を起こして部屋を見回すと、
部屋中のぬいぐるみが榊を見ていた。
榊はそのまま後ろに倒れると、
布団を頭まで被って無理矢理寝た。

榊は怖かった…。
ぬいぐるみが一斉に彼女を見ていたこともだが、
その目が全てアーモンド形のあの目だったから…。

133 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/06(金) 00:55 ID:???
めっちゃ忙しいときに限って、電波の受信も良好。
脳細胞が活発になってるからか、
単にSSを書いて現実逃避しているのか…。



間違いなく、後者。

134 : :2004/02/06(金) 16:15 ID:???
「あの目」って、「あの目」ですか?

135 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/06(金) 17:11 ID:???
そうです。「あの目」です。

136 :名無しさんちゃうねん :2004/02/06(金) 23:05 ID:???
ちょっと突っ込んでいいかな・・・・?
いや、やめとこう・・・・





もはや体験談じゃなくて職人さんのSSうpスレだなんて
言えるわけがないじゃないか・・・・

137 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/07(土) 13:52 ID:???
>>136
………あぅ。
まったくもってその通りですね。
といって、この手のSSは他のスレでは浮いちゃうし…。
どうしましょうね?

でも私のうpが、体験談を書き込みたい人の妨げになっているなら
控えた方がいいのかな。

138 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/07(土) 14:22 ID:???
追記

許されるなら、私はここで書いていきたいです。

139 :名無しさんちゃうねん :2004/02/07(土) 14:26 ID:???
どうせ体験談書くひとなんて誰も(ry
いいんじゃない?ここで書いても。

140 :名無しさんちゃうねん :2004/02/07(土) 16:33 ID:??-Sp0Ivvk2
>>136は精薄
気にせず書くべし

141 :名無しさんちゃうねん :2004/02/09(月) 10:48 ID:???
書くべし

142 :136やけど :2004/02/09(月) 12:37 ID:???
いや、何気ない一言があかんかったみたいや・・・・ごめんなー
気にせずにうpしてくれるとうれしいでな。


なんだかんだ言って職人さんのSSはかなり楽しみなんや・・・・

143 :名無しさんちゃうねん :2004/02/09(月) 18:02 ID:???
まー体験談でもSSでもこのスレではOKってことで。

144 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/09(月) 21:02 ID:???
>>139-143
読んで下さって、ありがとうございます。
この手の話はここしかないので、有り難いです。
遠慮なくうpさせて頂きます。

145 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/09(月) 21:03 ID:???
御守り 〜1〜

いつもと変わらぬ学校の帰り道、滝野智は道ばたで御守りを拾った。
見た目は小汚く別段何か御利益のありそうなものには見えなかったし、いつもの彼女ならこんなシケた物はまず拾わない。
が、この時智は何かに惹かれたように拾ってしまった。

家に帰ってから、智は改めて拾った御守りを眺めた。
幾種類もの糸を編んで作られた小さな御守り袋で、綺麗と言えば綺麗ではあるが、
何の変哲もない御守りだった。
「なんであたし、こんなもの拾っちゃったかな?」
智は御守りを引き出しにしまうとそれっきり忘れてしまった。

智の身に災難が起き始めたのは、その頃からだった。
学校では、些細なことで怪我をすることが多くなった。
悪ふざけがエスカレートすることも多くなり、いつものグループの中でも浮いきてしまった。
大阪や神楽と本気で口論になったり、ちよのツインテールを引っ張りすぎて本当に泣かせてしまったり、
それが元で榊を本気で怒らせてしまったり、etc…。あの暦ですらフォローしきれなくなっていた。

災難は智自身だけでなく、身内にも及んだ。
まず、父親が交通事故に遭って重傷を負い、入院してしまった。
空き巣に入られたり、不審火でボヤが起きたりと続いたために、母親が心労で倒れた。
親戚でも祖父母が相次いで入院した。


智は次第に暗くなり、表情も沈みがちになってきてしまったが、悪ふざけのツケで、声を掛ける者はいなかった。
暗く孤独な雰囲気を持った人間は、犯罪者にも狙われやすいものだ。
そんな智に追い討ちを掛けるように、ある日の帰り道、智は暴漢に襲われた。
性的な暴力こそなかったものの、殴る蹴るの暴行を受け、財布を奪われた。
翌日、智は体調を崩し、学校を休んだ。精神的にかなり参っていた。
たいがいのことは持ち前の明るさと元気さで耐えられる智だが、身内の不幸と、学校生活の不調が重なり、
とどめを刺すように暴漢に襲われてしまった。
さすがの彼女も鬱状態になっていた。
心労で臥せている母親には悪いと思ったが、とにかく現実逃避でも何でもいいから眠りたかった。

自室で1人で眠っていて、智は妙な夢を見た。
夢の中でも、智は自分の部屋でベッドに横たわっている。部屋は真っ暗だった。
ふと見ると、いつの間にかドアの傍に子供が立っている。年の頃は小学校3〜4年生ぐらいであろうか。
野球帽をかぶっており、半袖半ズボンという格好であったから男の子のようだった。
真っ暗なのに何故か少年の出で立ちがはっきり見えたのは、夢だからだろう。
ドアが開く音はしなかったが、とにかく気が付くとその少年は立っていた。
「誰?」
と声をかけるが返事はない。
やがて少年は四つん這いになって這い回りだした。その様子は何か落とした物を探しているようだった。
智は何をするでもなく、ただぼんやりとその様子を目で追っていた。
時折、ポタッポタッと何かが滴るような音がする。
少年がベッドの近くまで来たとき、その小さな手が智の顔を触ったりしてきたのでさすがにその時はビクッとなってしまったが、
不思議とそれほど恐くはなかった。
やがて、少年は智の机の前に立ち、引き出しを指差しながら何かを訴えるような仕草で
智を見つめた。
そんな夢を、何度も見るようになった。

146 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/09(月) 21:05 ID:???
御守り 〜2〜

日曜日の朝。学校に来なくなった智を心配して、暦が様子を見に来た。
暦は、母親が出て来なかったことにいつもと違う雰囲気を感じた。
そして、自分を出迎えた智が別人のようにやつれていたのを見て驚いた。
すぐに部屋に上がりベッドの上へ智と並んで腰掛けた。
始めは自分に相談も無しにずっと学校を休んでいる智を叱ろうと思っていた暦だが、智の様子に只ならぬものを感じた。
「智。様子を見るとずいぶん大変だったようだけど…。一体何があった?私で良かったら聞こうか?」
暦は努めて優しく訊いた。
暦から自分を気遣う言葉を久しぶりに聞いて、智は視界が涙でぼやけた。
そして、とつとつと、今まで自分の周囲で起きた不幸な出来事を話した。
暦はうなずきながら注意深く話に耳を傾けた。
普段怒らないようなところで無性に腹が立ったり、簡単に感情がエスカレートしたりしたこと……。
父親が交通事故にあったこと、家に放火されたこと、空き巣が入ったこと、親戚が次々と入院したこと、暴漢に襲われたこと、etc…。

話は長く、全て聞き終わる頃には昼を回っていた。

「…そっか。そんなにヒドイ目にあってたんだ…。大変だったなぁ」
「よみぃ。あたし、辛いよ〜」
「うんうん。分かるよ。今までよく耐えたよ。」
「よみ〜」
暦は智の頭をそっと抱きしめ、智が落ち着くのを待った。
そうしながら、智の身の上に立て続けに起こった不幸に、偶然ではない何かを感じていた。
しばらく泣いた後、智は次第に落ち着いてきた。
「なぁ智ー。これだけ不幸が続くのって、偶然では片付けられないような気がするよ」
「っていうと?」
「智さ、何か罰が当たるようなことをしたとか…。心当たりはない?」
「…よみってそういうの信じるほうなの?」
「いや、私もこういう非科学的なことはあまり信じないけどね。こう不幸が続くとそういう関係かなって」
「そういえば最近変な夢を何度も見るよ」
「どんな夢?」
智は暦に夢の内容を話した。何度も見ているので、詳細にわたって解説できた。
「…それって智の机の引き出しに何かあるんじゃないの?」
ここに至ってようやく、智は道ばたで拾った御守りのことを思い出した。
机の引き出しを開けて、中をさばくると、古ぼけた御守りが出てきた。

147 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/09(月) 21:06 ID:???
御守り 〜3〜

「何それ?」
「御守り。この前拾ったんだ」
「おいおい。そういうの拾って持ってるのってあまり良くないんじゃないか?」
「自分でもそう思うんだけど、何故か拾っちゃたんだよ」
「怪しいな。ちょっと見せてみ」
暦は御守りを受け取ると、つぶさに観察した。
「智。これって御守りなのか?」
改めてその御守りを見ると、御守りと呼ぶにはおかしな点があった。神社の名前が何も書いていない。
指で押さえると、中に何か入っている。取り出してみると、薬包紙に包まれて何重にも折り畳まれた小さな紙が出てきた。
「なんだこれ?妙にごわごわした紙だな。何も書いてないぞ」
暦はその紙を裏返してみたり、透かしてみたりした。
「厚みの不均一さから、和紙のような気もするけど、それにしてはきちっと平面になっていないし…」
「ん?よみ〜。なんかよく見ると小さな穴がポツポツとあるけど」
2人はまじまじとその紙を見た。穴はどうみても毛穴のように思われた。
「これって…毛穴!…ってことは、これは紙じゃなくて…皮だな…」
「よみぃ…、これって…人間のかなぁ…」
「…さ、さぁ。どうだろ…」
「あぁ!」
「な、なんだ、智」
「夢に出てきた少年って、あれボロボロ野球帽を被ってる思い込んでたけど…、頭か顔の皮がずる剥けてぶら下がっていたんじゃ……」
「…うぁ…」

ポタッ…、ポタッ…、

ふいに2人の鼻腔を、膿のような嫌な臭いが刺激した。
後ろのドアのところに誰かが立っているような気がする…。
2人は背後から濃厚な気配を感じて動けなくなった。

ボタッ…ボタタッ……

すぐ耳元で、絨毯に何か粘りけの強い液体を垂らしたような音がした。



智と暦は人気のない河原へ行き、小さな焚き火を作り、その御守りを燃やした。
御守りは呆気ないくらいに、瞬時に灰になった。

その後、智の父親の怪我は順調に回復し、親戚も病状が良くなり次々と退院していった。
空き巣及び、放火の犯人も捕まり、少し心が晴れたのか母親も快復した。
智自身も、暦の助けもあって以前の明るさを取り戻していった。

すぐにではないが、全てが少しずつ順調に好転していったようである。

148 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/10(火) 01:00 ID:???
ちよちゃんを怖い話に絡めたいのですが、
状況が思いつかないです…。

149 :名無しさんちゃうねん :2004/02/10(火) 01:47 ID:???
それは榊さんが家に泊まった日のことでした…

「おやすみマヤー…」
榊さんはそう言って眠りにつきました。
私もそれを見届けて目を閉じました。
でも…なんだか眠れなかったんです……
そうしたら突然…

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

と、戸を引掻く音がするんです。
私はてっきり忠吉さんだと思って目を開けました。
暗がりにポウと浮かび上がる白い影…
私の部屋で寝ているのは紛れもない忠吉さんでした。
それじゃあ戸を引掻いてるのは誰なの?
私は怖くて布団の中で震えていました。すると突然音がやんだのです。
恐る恐る戸を見ると… スーッと何かが入ってきました。
それはマヤーを抱いて寝てる榊さんに近寄っていきました。
榊さんが危ない!私がそう思ったとき、それは榊さんの胸のマヤーに寄り添ったのです。
私は直感で確信しました。それはマヤーの… あの時のマヤーのお母さんだと…
しばらくその光景をじっと見ていたのですが、それが榊さんにお辞儀したように見えた次の瞬間には消えていました。

あれは結局なんだったのでしょうか…?

150 :名無しさんちゃうねん :2004/02/10(火) 07:45 ID:??-A3PhhLFk
御守り怖すぎ・・・
面白いけど

151 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/10(火) 12:59 ID:???
>>149
乙です。
なるほど。他の人を絡ませて、それに巻き込まれる形なら、ちよちゃんでも
怪談ができそうですね。どうもあのキャラの幸せすぎる環境自体が、
眩しすぎるというか怪談にし辛いところがあるものですから…。

ただ、1つ指摘させてください。
>私は直感で確信しました。それはマヤーの… あの時のマヤーのお母さんだと…
とあるのに、
>あれは結局なんだったのでしょうか…?
だと、話の流れがおかしく感じます。
確信したのですから、それを根拠とした結論で結んだ方が良かったと思います。
逆に謎のままに終わらせたかったら、「私は直観で〜」の文を削除した方が
すっきりします。その上で榊さんに結論を出させるのも手だと思います。
(例:榊さんの主観でマヤーのお母さんが夢枕に立ったとか…。)

差し出がましいことをしました。気を悪くされたらごめんなさい。

152 :149 :2004/02/10(火) 15:42 ID:???
ご指摘どうもです。確かにわからないままのほうが怖いことは怖いのですが、
本当にあの時わかったんですよ。死んだうちの猫だって・・・
というのも、実体験と創作と半々なので

153 :名無しさんちゃうねん :2004/02/10(火) 16:28 ID:???
>PASCO ◆LNZbyB1zfI さんへ
家族ぐるみでとろけていた大阪家とか、智を労う暦とか、ただの怪談に止まらない部分があるのが好きです。いずれここでうpするときは宜しくです。

154 :名無しさんちゃうねん :2004/02/10(火) 17:08 ID:???
>>152
私ってそういうの見えへん人やから、見えるのってうらやましー

155 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/10(火) 18:04 ID:???
>>150
お褒め頂きありがとうございます。

>>152
いえ、こちらこそ生意気書きました。すいません。
それにしても、実体験だったんですか…。羨ましい。
私はそういう経験がほとんど(おや?ってのはありますが)ないので、
だからこそ恐いのに憧れるというか…。

>>153
ありがとうございます。
「ただの怪談に止まらない部分がある」
この点は特に注意している事なんですよね。
特に怪談っていうのは登場人物は誰でも良かったりするのですが、
彼女たちに適したシチュエーションを考え出し、彼女たちならではのリアクションを
描写していくことで、単調になりがちな怪談に膨らみを持たせていくことに
努めているつもりです。文章力や表現はまだまだだなぁと痛感しますが…。

156 :名無しさんちゃうねん :2004/02/15(日) 00:22 ID:???
今日初めてこのスレ見ました。素晴らしいですね。
特にPASCO氏、ご自分でもおっしゃっていますが、怪談という題材でしっかりあずまんがを描いている。
他の書き手さんも、共通の題材でありながらそれぞれの文章に異なるカラーがあり、非常に面白かったです。
これからもひっそりと見守らせていただきます。

で、ここからスレ違いな話題なんですが。
PASCOさん、どうも。某スレで議論してた名無しです(これでわかるか不安ですが)。
今回の一連でのあなたの発言や態度にどうしても敬意を表したく、誘導のURLを踏んできました。
残念な結果になりましたが、あなたの振る舞いから自分を省みるきっかけを得られたのは
私にとって非常に幸運な事です。言葉足らずですが、この場を借りて感謝の意を述べます。
また、今後のご活躍にも勝手に期待しています。

スレ汚し失礼しました。
次にお邪魔する時はなんか書いてこれたらいいと思います。

157 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/15(日) 23:32 ID:???
>>156
こんにちは。「ゆかりとおはなし」を書かれた方ですね?
こんなふうに書いていただいて恐縮です。照れます。

スレ違いの話の件ですが…。
私のほうこそ、結局見守ることしか出来ず、会議室で行われた議論を
後になって眺めていて正直、みなさん、特にあなたの発言・態度には
脱帽しました。
本音を言えば、今回の件で心にどす黒い感情が渦巻いてしまったのも
事実ですが、努めて頭を冷やしてから書き込みました。直接言い合っ
ている訳ではないので、頭を冷やす時間があるのがこの場のいい所です。
感情に任せて書き込んでいたら更に後味の悪い結末になっていたかも
しれません。
貴方の発言を読んでいて、紳士的かつ主張すべき点を明確に鋭く行って
いたのにはただただ感心していました。
私の方こそ、ほとんど代弁してくださって感謝しております。
言葉足らずですが、そういうわけでした。

作品ですが、もうしばらくお待ちを。仕事がめちゃくちゃ忙しくなって
家に持って帰って図面引いてる有様なので…。

158 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/16(月) 17:35 ID:???
結婚式その1

夏のちよちゃんの別荘にて

な〜に盛り上がってんだぁ?あん?誰が一番怖い怪談を話せるか競ってる?
ゆかりちゃんも参加しろ?
ふ〜ん。じゃ、とっておきのを話してやろうじゃない。
私も結構、恐いの知ってるんだからね〜。
あ、こら。榊。退席するんじゃない。人が話をする時は座って聞け。

さて、これは最近の話なんだがね。
この間親友の結婚式に呼ばれたのよ。
その親友ってのが、世間知らずのお嬢様でさ。
一体、どんな男を捕まえたのかと思って見てみたらこれがびっくりよ。
そいつは大学時代に同学年に居た、女たらしで有名だったMだったのよ。
Mってのはまさに女の敵って奴でね、学生時代はそりゃぁ何人もの女を泣かせたのよ。

えっどうやって泣かせたかって?
ん〜。ちよすけには後でゆっくり解説してやるよ。
大阪!おまえが解説せんでもいいっつーの。

ま、とにかくMはひものような生活をして、次々と女を喰ってたのね。
で、同席した同窓の奴らに聞いたら、つい最近まで相変わらずのたらしぶりだったみたいなのよ。
なんであんなのに引っ掛かって結婚なんてするのか不思議だったけど、まぁたぶん親友の家ってのが結構
資産家らしいもんでそれ目当てってのが妥当な線なんだろうね。
それ以外にMが結婚する理由なんて思いつかん。
え?私?Mをどう思ってたか?わたしゃ、そういうのはさばさばしてるからね。男に貢ぐなんてとんでもないし。
一度声をかけられたことあるけど、お互いくれくれ君じゃすぐ別れるわな。
にゃもはひっかかりそうだったんだよね〜?
痛い、痛い。分かった分かったそう怒るな。昔の事じゃないか〜。

で、まぁ、とにかくそのMと親友の結婚披露宴が始まったのよ。
ところがさぁ、どういうわけか式の進行がぎこちなくてね。
些細なミスで進行がちょくちょく止まるのよ。仲人の挨拶やら、主賓の挨拶やらでマイクが入らなかったりね。
なんかおかしいなと思ったのが新郎新婦の生い立ち紹介の時よ。
あのスライドで2人の生い立ちを写真で綴るやつね。
そんなもん見たかねーよ、と思って料理平らげるのに夢中になってたらさ、
ざわざわとみんなが騒ぎ出して、雰囲気がおかしくなったのよ。
ん?なんだ?と思って見上げたらさ、写真の中で新婦の顔が全部真っ黒になってんのよ。
きれいにマジックで塗り潰したみたいにね。
そりゃあもう新婦側の親族が怒り出しちゃってさ。なんとかその場は司会者がまとめて納めたけどね。
式場のスタッフ、もう顔真っ青でさ。痛々しくて見てらんなかったわよ。
お色直しで新郎新婦とも退室したときも、スタッフ集まって何やら慌ててチェックしてるのよ。

159 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/16(月) 17:39 ID:???
結婚式その2

で、キャンドルサービスの時もね…。凄かったよ〜〜。
こう、2人して各テーブルのキャンドルに灯を点けて回るんだけどさ、なかなか点かなかったのよ。
まぁろうそくの先っちょを濡らしておくのは友人としてのお約束だけど、親族のろうそくまでなかなか
点かなかったからね〜。で、最後にハート型に飾ったキャンドルに灯を点けたらさ、全部点けた瞬間に
室内が真っ暗になったのよ。停電で照明が消えたのなら分かるけど、蝋燭の明かりまで消えたからね。
もう会場中パニックよ。ま、しばらくして照明は回復したんだけどね。何故か蝋燭の明かりまでフワっと
回復したのよ。
司会者が停電の不手際を一言詫びてたけど、声が可哀想なくらい震えてたわよ。
ケーキ入刀の時もね、ケーキを切ったらナイフが折れたのよ。
こう、さくっとケーキに2人がナイフを入れるわね。
で、みんなが写真を撮り終わってナイフを抜こうとしたらポキッて。
あれにはみんな唖然としてね。スタッフの人が慌ててケーキを下げてたわよ。
この時ばかりはニヤニヤと不敵に笑ってた新郎も少しブルー入ってたわね。

その後はね、一応はつつがなくプログラム通り進んでいったのよ。
で、何とか会場の雰囲気も回復してね。

最後に新郎新婦から両家の両親に花束贈呈する場面になったのよ。
あの鬱陶しい儀式な。
会場を暗くして、新郎新婦とその両親にだけスポットライトを当ててな。
「かーさんがーよなべーをしてー」なんてBGMが流れてね。
もういい加減にしろっと思ってたらまたここで面白いことが起きたのよ。
両家の親が立ってる後ろになかなか見事な屏風があったんだけどさ、その上に白い手が
かかってたのよ。2本。屏風の反対側に誰かが両手でつかまってぶら下がってる感じにね。
なんだあれ?って思ってたら、隣の知り合いもそれに気付いて
「キャーーーー」って悲鳴を上げたのよ。
連鎖的に1人、2人とその手に気付き初めてもうパニックな。
しかもだんだん両手の間から頭らしいものが上がってくるんだわ。
髪の長い女みたいだったわ。そーだなー、ちょうど榊が前髪を伸ばして垂らした
感じかな。おい榊、狸寝入りするな、起きてきちんと聞け。
顔全体が上がったらさ、前髪の隙間から片目がぎょろりと新郎を睨んでるのよ。
そう、ちょうどあの映画「リング」の貞子みたいな感じね。
もう会場総立ち、みんなが悲鳴を上げて阿鼻叫喚の地獄みたいだったわよ。
あ?なんだ智?阿鼻叫喚ってなんだってか?お前は国語もちゃんと勉強しろ。

その後、スタッフが慌てて全照明を点けたらパッとその女は消えていなくなったけどね。
その後は、もうぎくしゃくしたまんま無理矢理終わってさ、新郎新婦と両親が客を送り出すときも、
みんな顔真っ青だったわよ。
はじめ不敵な笑みを浮かべていた新郎も、哀れなくらい落ち込んでてね。
元気づけようと思って「今日は最高に面白いエンターテイメントだったわよ!」
って言ったら引きつりながら笑ってたわ。

その女の正体?さぁねぇ?
前に付き合ってた女が自殺してってのが、この手の話の王道じゃないかしらねぇ?
その後、2人がどうなったかって?
はっ!そんなもん私が知るわけねー。

(終)

160 :PASCO ◆LNZbyB1zfI :2004/02/16(月) 19:07 ID:???
壁 @

大阪の部屋は、女の子の部屋にしては飾り気がない。
いや、一般的に見てもやや寂しい部屋に見える。
原因は簡単だ。壁に何も掛かっていないのだ。
服やポスターならともかく、時計やカレンダーすら掛かっていない。
よく遊びに来る智からは度々指摘されているのだが、その度に大阪は静かに笑って誤魔化している。
壁に何も掛かっていないのには、人に説明するのが難しい、ちょいとしたわけがあった。

大阪こと春日歩が東京に引っ越してきた頃のこと。
中古物件ではあるが、春日家の新居は造りもしっかりとした綺麗な家だった。

歩は父親から2階の一室を割り振られた。よく朝寝坊するのできちんと起きられるようにと
窓が東向きになっている部屋である。
8畳ぐらいの広い部屋であり、窓からの眺めも良かったので、歩はすっかりこの部屋が気に入ってしまった。
引越の荷物を運び終えると早速、部屋のコーディネートに取り組み始めた。何回かやり直しながらも、机やタンス、
小物入れなどの配置を決めて行く。
納得のいく物の配置が決まった頃には既に日はとっぷりと暮れ、夕食の時間になってしまっていた。
あとは、部屋の飾りである。それは夕食後の楽しみとして取っておくことにした。

夕食後も、部屋の飾り付けに夢中だった。歩は壁にポスターやらカレンダーやら貼りまくった。
壁掛け時計も父親に釘を打って貰い、掛けた。制服を掛けておくハンガー掛けも取り付けた。
全部終わる頃には時刻は翌日になっていた。
歩は寝る前に一通り室内を見回すと、にんまりと満足げに笑みを浮かべた。

翌朝、歩が目を覚ますと部屋の様子が変わっていた。
壁に貼ったり掛けていた物が全て落ちてしまっていた。
「あれ〜?ウチの貼り付け方が甘かったんやろか?」
しかし、ポスターやカレンダーはともかく、壁掛け時計も落ちていたし、制服もハンガーごと
落ちてしまっていた。
「わ〜。アイロンかけ直さなあかんやん」
歩は制服をつかむと慌ててアイロンをかけに階下へ下りていった。

歩は学校からの帰り道にホームセンターに立ち寄り、強力な粘着テープや糊を買ってきた。
それらを用いて、昨日落ちてしまった物をもう一度壁に貼り直した。
接着後に自分で引っ張ってみて、簡単には剥がれないことを確認した。
一安心した歩は、居間へ降りて行き、家族とテレビを見たり夕食をとったりして過ごした。
やがて風呂に入る時間になり、歩は着替えを取りに部屋に上がって行った。

424 KB  
続きを読む

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :

read.cgi ver2.0 beta3 (03/08/25)