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レス数が 1000 を超えています。残念ながらこれ以上は書き込めません。

あずまんがSSを発表するスレッド パート2

1 :名無しさんちゃうねん :2003/12/08(月) 05:50 ID:???

2chと同じつもりで投稿していたら、スレッドがいっぱいになってしまいました。
とりあえず新スレを立てておきます。

前スレ
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/oosaka/1046110813/

952 :名無しさんちゃうねん :2004/03/31(水) 12:12 ID:???
>>951
榊×神楽や大阪のSSで、ダークなの書く予定はありますが…

953 :「ゆかりとおはなし」作者 :2004/03/31(水) 17:32 ID:???
うーん、別にほのぼの系のおはなし書いてるつもりはないんだけどなあ……。
文章と言うのはかくも難しいものか。

それより、次スレどうしましょうか?
いろいろご意見はあるようですが、僕は思うところあって
今のまま控え室と分けておいたほうがいいという考えなんですが。
個人的にもその方が嬉しいし。

954 :名無しさんちゃうねん :2004/03/31(水) 22:11 ID:2TbgnkMY
転校前の大阪はいじめられこだった とかはありがちだろうか。

955 :名無しさんちゃうねん :2004/03/31(水) 22:13 ID:???
>>954
そういう設定のSSはいくつかある。
しかし、いくつかあるということは
これからも同じ設定を使える可能性は
十分にあるわけで。

956 :FFDQ板住人 :2004/03/31(水) 23:58 ID:IP8CJo4Q
>蛍石 ◆tzCaF2EULMさん
あずまんがもいいですけどターニア純愛小説の方もよろしくお願いします。
純愛スレは落ちちゃったんで「ターニアたんに萌える会」の方に書いてくださいです。

957 :名無しさんちゃうねん :2004/04/01(木) 00:42 ID:???
>>953 てか別に統合する理由も無いし、いいんじゃないだろうか。問題は誰が次スレをたてるかなんだが。

958 :私が名無しさんだー! :2004/04/01(木) 00:56 ID:???
ペースから言って、980を踏んだ人が立てればいいんじゃないか?

959 :私が名無しさんだー! :2004/04/01(木) 01:47 ID:???
>>958
あぁっ!!名前欄が!!

960 :明日に架ける橋 :2004/04/02(金) 23:34 ID:???

生きることに疲れ果て 惨めな気持ちで
ついに涙ぐんでしまう時 その涙を僕が乾かしてあげよう
僕は君の味方だよ どんなに辛い時でも
頼る友が見つからない時でも
荒れた海に架ける橋のように
僕はこの身を横たえよう

私が過去を振り返る時、いつも彼女は私の傍にいた。
彼女に纏わる思い出は今でも私の心を熱くする。
親友より上位の存在、『心友』とでもいうだろうか。

この前の同窓会の時久しぶりに彼女に会ったのだが
彼女は昔と相変わらず元気いっぱいで皆の中心となって騒いでいた。
私はその様子を見ながら「あいかわらずだな」と苦笑した。
しかし彼女の幼馴染として長年付き合ってきた中で幾度と無く
私は彼女の笑顔に励まされ、助けられてきたことだろう。
――「ありがとう」

――「どういたしまして」
私はそれほど強い人間でもない、他の人と同じように悩み苦しむ時もある。
ただ私は表面にそれを出さずに生きてきた。
周りの人は私を見て私の生き方に憧れていたのだろうか。
けれどもその私は私自身によって構築された虚像であるかもしれなかった。
そんな私の偽りの笑顔を見抜けるのは彼女だけだった。
いつも私を見守ってくれていた。

私が歩んできた人生。彼女が歩んできた人生。
思い出がかすめる同じ歳月を共に生き。
ひっそりと同じ不安を分かちあい。ひっそりと同じ幸せを分かちあう。
これからも一緒に行こう。これからもよろしく。

荒れた海に架ける橋のように
僕はこの身を横たえよう

荒れた海に架ける橋のように
僕はこの身を横たえよう

961 :名無しさんちゃうねん :2004/04/02(金) 23:35 ID:???
うーん、まあ色々と想像してください

962 :名無しさんちゃうねん :2004/04/03(土) 01:29 ID:???
はい、『私』と『彼女』が誰なのか、たっぷり想像させてもらいます。

963 :名無しさんちゃうねん :2004/04/04(日) 22:09 ID:???
つーか、冒頭とラストだけ、何故「僕」?

元ネタあり?

964 :名無しさんちゃうねん :2004/04/04(日) 23:51 ID:???
↑ある詩の引用だけど説明しても面白くないので。

965 :名無しさんちゃうねん :2004/04/05(月) 00:46 ID:???
ある詩っていうか、タイトル…

966 :名無しさんちゃうねん :2004/04/05(月) 11:11 ID:???
有名どころですね

967 :名無しさんちゃうねん :2004/04/08(木) 23:24 ID:dIjZYzd.
三年生になった、別に特に生活が変わるわけじゃない、大学も決めていない私にとっては世間が思うほど
この一年の始まりに気合を入れるほど私の中では重要ではなかった。
だが、心とは裏腹に頭はそうではないらしい、最近良く眠れない、新しいクラスになってよく話す友達もいなくなってしまい何かと考え込んでしまう
そういう風にしていると行き着く先はなぜか進路だ。
不安でしょうがなくなるたびに「どうでもいい!」と必死になって頭から離す、そこにはさすかな自己嫌悪が生まれる
もはや帰りだけ一緒になってしまった友達と家路を急いだあとにはもうやることは無くなる、ボーっとしているとまた今夜も眠れない気がする
久しぶりに走ってみよう・・・なぜか浮かんだ考えに私はトレーニングウェアに着替えた
親にはもうすぐスポーツテストだからと言って準備体操をして家を出た。
コースの四分の一くらいまではちょっときついがもうすぐなれてくるころだ、ちょうど交差点に差し掛かったとき

968 :名無しさんちゃうねん :2004/04/08(木) 23:58 ID:dIjZYzd.
やけにペースの速い・・・・・・・・女の子・・・!?
神楽さんだった、何の因果か並んで走る形になってしまった、もともとあまり女子と話すのに慣れてない私は
目が合ってへいぜんを装って会釈するしかできなかった。
神楽さんもうっすらと汗ばんだ顔に軽い笑みを浮かべ「アレ?奇遇だなあ」
少しの間無言だったが、なぜかコースが同じで、と言うかまっすぐの道だったのでとりあえず走っていた
それにしても速い、これでもすこしは体力に自信はあるほうだ、帰宅部で体力が落ちるのも嫌だったので一時期定期的にこのコースを夜走っていた
そのせいか体育では陸上部以外には何とかタメをはれている・・・・そろそろきつくなってきた・・もういつものペースよりだいぶ速い、話には聞いていたが実感するまでわからないものだ。
一方神楽さんは走ることに集中しているようだ、ちょっとその一生懸命さが溢れる様に伝わってくるその横顔を見ていた
「どうかしたか?」しゃべり方は普通だったが明らかに顔が赤くなっていた、なんとなく悪い気がしてすぐさま「あ、ごめん、」と謝った。
やはり駄目だなあ、どうも緊張してしまう、このなんともいえない空気の中で走るのは余計にきつい
まあぶっちゃけた話どうやら私は神楽に特別な感情を抱いているようだほかの女子とは違い緊張するが話したい、そんな気持ちがある、訳の解らないいきなりの自分の考えに自分で驚きながらも必死になってぺーすwを落とすまいとしていたが
そろそろ限界らしい、情けない話だ。
とそのとき

969 :名無しさんちゃうねん :2004/04/09(金) 00:31 ID:W5R9G.ak
彼女はだんだんとペースを落とし、歩き始めた、多少疑問はあったものの何よりありがたかった
「っふう〜」彼女は軽い深呼吸をした、私はと言うと顔に内心を出さないようにするのでせいいっぱいだった
「やるなあアンタ、ちょっとムキになっちゃったよ」気を使ってくれたのか本心かもうどうでも良かった
「神楽さん速いなあ〜付いていくのでやっとでした」
・・・・!?しまった、そしたらわざわざ付いてきたみたいじゃないか、
慌てている私をよそに、彼女は笑いながら「ちょうどよかったよ、競争相手がほしかったから」
無意識の助け舟に「確かに一人で走るのは飽きますしね」何とか普通の会話にすることができた、
呼吸も整ったし思考も正常に働いてきたら急に(いまさらだが)神楽さんと会話している喜びがこみ上げてきた
元々表面的には無関心なほうでにやけてしまうと言う最悪の事態は回避できたが(かろうじて)そのことに必死で会話が途切れてしまった。
「・・ぃ・・・お〜い」我に返ると彼女は不思議そうにしている、「大丈夫か?」「ハイ、ご心配なく!」すぐさま答えるとあの笑顔が見えた、
曇りの無い純粋な笑顔、本当に安らぐ「お前は面白いなあ〜」どうやらウケ狙いに聞こえたのか少しの間彼女は笑っていた
「でもアンタ部活動やってたっけ?」切り出してくる話題に私は「いや帰宅部です、ホラ、もうすぐスポーツテストだから」さっき親にも使ったいいわけだ、
ホントは、何も考えない時間がほしかった。
「へえ〜じゃあしばらく続けるのか?」「元々寒くなってたからサボってただけなんで」すると思いもよらない(だがとても感激する)事を彼女は言ってきた「じゃあさ!いっしょに走らない?」嬉しかった、内心できたらなと思っていたことが実現する、
しかしいささか慌てた「でも、私のほうがペース遅いし迷惑じゃないですか?」
だが「何言ってんだ!そのほうがお互いにいいって!」彼女のことだから深い意味は無いのだろうが妄想の翼の大きい年頃の私にとっては赤面するのに十分な言葉だった。
「嫌か?」即座に顔中の血液がなくなるような顔(といっても私が感じたほどじゃなかっただろう)になった彼女を見て「いや、神楽さんがよければ・・・」
言い終わらないうちに「よし!じゃあ決まりだ!明日はこの時間より三十分ほど早いからな」まあ別に問題は無い、だがふとした疑問があった「あの、神楽さんてどのくらい走るんですか?」
幸せには多少の苦難はつき物だ「アタシ?アタシは・・・う〜ん十キロぐらいかな?」「!?」軽く私の一点五倍だ・・・「まあ部活の無い日だから軽くだけどな!なんならもう少し多いほうがいいか?、大丈夫だぞアタシは」・・・・・
学校で挨拶されるのは夢にまで見たことだが同時に少しだら汗が出る笑顔でもあった。

970 :名無しさんちゃうねん :2004/04/09(金) 00:40 ID:W5R9G.ak
まず最初に・・・・・・・・ごめんなさい(土下座)って言うか初心者だろお前!何いきなり!
ハイ解っております、もう何もいえません・・・絵〜常連の方々、お目汚し大変失礼しました、元々文章を読むのが好きなものでここのSSは大変楽しめました
だからと言うわけではないですが今日ジョギングしていたときふと思ったことを形にさせていただきました、なにぶん何の才能も無い高校生のがきのたわごとと思い広い目で見ていただければ何よりです
では(実は続きも無いこともないのですが・・・w)

971 :名無しさんちゃうねん :2004/04/09(金) 01:23 ID:???
ならばまず助言を。
改行をしっかりしましょう。
句読点の使い方に気をつけましょう。
これだけでだいぶ読みやすくなるはずです。

こうしたWeb上で発表する小説に文才なんてものを
云々することに大した意味はないと思います。
所詮素人なんですから。自分は初心者とか下手とか
思わずに、最善を尽くしてください。

972 :( ̄〇 ̄)。○(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/04/09(金) 19:54 ID:???
改行がないと見にくいです。
参考として、メモ帳で、はみ出ないくらいが丁度いいと思います。

出来れば題名もつけてぃ

973 :( ̄〇 ̄)。○(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/04/10(土) 23:39 ID:???
>>715の続きや。短いけど、クライマックスは一気にドーンと

974 :( ̄〇 ̄)。○(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/04/10(土) 23:41 ID:???
ブウウウゥゥゥゥ…
にゃもの車が、除雪されて綺麗になった道を走っていく。時々忙しそうに除雪に追われている作業員の姿が見える。
「ちよちゃん、どうしたの?元気ないじゃん」
「そ、そうですか?」
別に元気が無いわけではない。ただ、気がかりなことがあるのだが、確証がないのだ。
「あ、そういえばゆかり先生、昨日何言おうとしてたんですか〜?」
ちよはとっさに話題を変えた。
「えっ、何のこと?」
「ほら「お前らの、みょふき…」ってやつですよ」
ちよの言葉を聞いて、ゆかりはしばらく考えて思い出したようだ。
「ああ、あれはね―――」

「そ、それです。そうですよ!!」
ちよの頭の中にバラバラになっていたものが、パズルのように一つへ結びついていく…
「ち、ちよちゃん!?」
「先生、早く戻って!!」
ちよがにゃもの腕を掴む。
「えっ!?なんなのよ!?」
「いいから早く!!」
「どけにゃも!!」
ゆかりは強引ににゃもを助手席に移らせると、急ターンして猛スピードで来た道を戻っていった。

寒い風が体を刺す。でも、何も感じない…心まで冷え切っているからかな?
チャキッ
私は猟銃に銃弾を込めた。絶対外さない。
これで確実に彼女を葬り去る。そして私は

975 :( ̄〇 ̄)。○(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/04/10(土) 23:42 ID:???
「あ、あそこです!!」
ちよが指差した先、遠くて見難いがそこには銃を持った彼女がいた。そしてその銃口は…
「な、何やってるんだよ!!止めないと!」
「で、でもどうやって?」
榊がいうように、そこは道路のカーブ沿いの崖下にあるが、道路との距離は数十メートルある。
降りて走ったとしても、この雪では行くまでに、彼女が引き金を引いてしまう…
「榊さん!!カーブの遠心力を使って、私を投げてください!」
「なっ、何言ってるのちよちゃん!?」
「今すぐ行くには迷ってる暇は無いんです!!早くしないと…」
確かに、それならばすぐにあそこまで到達できるだろう。
しかし外れれば、顔面から真っ先に雪に突っ込む。凍りついた雪は、刃物のようにちよの顔を…
「迷ってる場合じゃないわよ!もうカーブよ!!」
「榊さん!!」
ちよの一言で、榊は決心した。窓から半身乗り出すと、ちよを彼女に向かって投げつけた!!

976 :◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:39 ID:???
名有りさん、お疲れ様です。いよいよクライマックスですか。
失礼な言い方かもですが、書きはじめの頃とは見違えるようです。
あと少し、がんばって。

あと、これから僕も作品投下するんですが、それでスレがほぼ一杯になっちゃうんで、
次スレをたてようと思うんですが、構いませんかね?
あなたはたしか次スレは必要ないというご意見でしたので、一応お伺いしときます。

977 :ゆかりとおはなし(第3話 1/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:42 ID:???

 一度でいいから、やってみたかったんだ。実に一週間来の憧れ。
思いつきで恋い焦がれたシチュエーションだった。まさかこれほど早く出くわそうとは。
所在無さげに教卓にあごを乗せていたゆかりは、悪巧みに胸を高鳴らせつつ、やおら立ち上がった。
 標的の席は廊下側から2番目、後ろからも2番目。ポジションはなかなか悪くない。
クラスの全員が配られたプリントに黙々と取り組み、シャープペンシルの芯が
かりかりと机を叩く音だけが教室に響いている。
そんな中、一人だけ。机に顔を俯せもせず、ゆらゆらと舟をこいでいる少女。
狙いはその額である。ゆかりはやや短めのチョークを選んだ。
 生徒たちは一人としてゆかりの挙動に気付いていない。
ゆかりはタイミングを待っていた。まだだ、慌てるな。焦りは敗者の心理に違いない。
こいつの頭の位置が固定される一瞬。その一瞬の勝負に勝てばいいのだ。
 程なく、こくりと落ちた少女の頭が、ゆっくりと元の高さまで戻り、頂点でその動きを止めた。
勝機。ゆかりはそれを見逃さなかった。
「おらぁ!!」
静寂は引き裂かれた。空を切る白墨は粉末を散らしつつ、少女の顔面へ……。
「あだっっ!!」
「ありゃ?」
突然の飛来物。予期せぬ衝撃を受けた少女、目には涙を浮かべてわめく。
「な、何すんだよゆかり先生!!私なんもしてないぞ!?」

978 :ゆかりとおはなし(第3話 1/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:44 ID:???
 どうやら、ちょっとばかり手を離すのが遅かったようである。
投じられたチョークが命中したのは、標的の隣の前の更に前の席、滝野智の鼻っ面であった。
「あー、ごめんごめん。智ちゃんを狙ったわけじゃないのよ?ちょっと手元が狂って……」
「勘弁してよー。いたたた……。なんか絶対鼻血出てるような気がするしー。
ちょっとよみ、鼻血出てない?鼻から血」
「あ?出てないけど。っつーかぎゃあぎゃあ騒ぐな。うるせえ」
 よみ、と呼んだ眼鏡の少女に正論で毒づかれた智。この正論には理不尽を感じたはずである。
実際、智がこのような仕打ちを受ける道理はどこにも見当たらないのだから。
智の怒りの視線は教室をぐるぐる巡り、すぐに見出した。
彼女の隣の後ろの更に後ろの席。居眠りに耽る一人の少女を。
「おい、春日ちゃん、起きろよー!あんたのせいで私がとばっちり食ったじゃんか!」
 この騒ぎにも眠り続けていた少女は、自分の名前を呼び立てられて、ようやく目を覚ました。
そこからは、我らがゆかりの役目である。懲りもせず眠たげな少女の席へ歩み寄る。
「おはよう、春日さん」
「あ……おはようございます……」
「転入早々居眠りとはいい度胸ね。しかも担任の授業で。」
「ちゃ、ちゃうんです……寝てたと言うか……起きてはおらんかったんですけど……」
弁解は待たれず、ゆかりは的を外れたチョークを拾い上げ、
至近距離で少女の頭に命中させた。

 それにしても、かねて期待を寄せていた新人が斯様にすっとろい女だった事は、
ゆかりにとってとんだ誤算であった。
期待の新人とは即ち、この度の居眠り少女、春日歩の事である。

979 :ゆかりとおはなし(第3話 1/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:45 ID:???

 美浜ちよの編入からわずか一ヶ月。大阪からやってきた時期外れの転入生を
自分のクラスに獲得するのは、ゆかりといえども容易な業ではなかった。
しかしながら、だからと言って他所のクラスにほいほいと譲ってしまうには、
「関西人」とはあまりに魅力的な肩書きではないか。
こいつなら、うちのクラスを新たなカラーで彩ってくれるに違いない。
そう思ったから、無理を通し、道理を蹴散らして二人目の転入生を迎え入れたのだ。
それが――それで――それなのに!いったいなんだ、この様は。
転入から数日で、既に周囲に認識されているそのトンマっぷり。
おつむの出来から日常何気無しの所作まで、まさに万能型の劣等生である。
これでは、チョーク投げの的ぐらいにしか使えないではないか。

「がーっ、関西人め!!」
 昼休みの職員室に、あまりにも突然発せられた心の叫びは、比較的ゆかりの側にいた
ごく数名の教師を驚かせただけであった。無論その「ごく数名」の頭数には、
その時までゆかりとナチュラルな会話を展開していた黒沢みなもも含まれる。
「ど、どうしたのよ急に。関西人?って、春日さんのこと?」
「他にいるか!?関西人が!関東に!」
「いるだろいっぱい。そんで、春日さんがどうしたの」
「どう?どうっつったのか、今?いったいどの口だ、そんな戯言ぬかしやがんのは。
こっちが聞きたいわよ!何がどうしちまったんだ、あれは!」
もはや、言葉が思いを伝達しきれない。

980 :ゆかりとおはなし(第3話 4/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:46 ID:???

「……まあ、何となく言いたい事はわかるわ。彼女、なんかちょっとずれてるからねえ。
でもいいじゃない。あんたクラスの色は濃い方がいいとか言ってたでしょ、確か。
あれも個性っちゃ個性じゃん。なかなか独特の空気持ってるわよ、あの娘」
 このフォローがまったく無意味なものである事は、言った直後でみなも自身にも悟られた。
そんな事はゆかりだって充分承知している。納得いかないのは、そういう「理屈」ではない。
気持ちの問題だ。際限を知らない欲求の問題なのだ。
期待していたものに失望させられた事、それにより蓄積する遣るかたない鬱憤。
それがゆかりの場合、怒ってみせるという行為で表されるだけなのである。
即ち。放っておくのが一番よろしい。
話題はみなもによって、今もっとも相談しなければならない事柄に移された。
「そういやあんた、準備できてんの?次の日曜の」
「日曜?ああ、結婚式か。準備?……って……」
頼りない表情で行われる頼りない思案。そして生み出された頼りない返事。
「……礼服必要ですか?」
しょうがねえな、という風にみなもが肩をすくめてみせる。
それは昔馴染みの友人に対する非難の気持ち、ではなく、
あんたの事なんか何でもお見通しだよという、ある種の親しみの表れのようで――
あるいは友人よりも人品的に優位であらんとする、高慢な自尊心に安住するために――?
「要するに用意してないのね。まあ、そんなこったろうと思ったわよ。
いい機会だわ、今日一緒に買いに行こう」
「あ!?今日!?」
「今日。どうせ予定ないでしょ、あんた」
「んな急に言われたって……お金とか無いし……」
「じゃ、銀行寄ってから行こう。5万もあればそれなりの物買えるわよ。
一着持っときゃ、この先何かと使えるんだから」

981 :ゆかりとおはなし(第3話 5/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:47 ID:???

 そう言われても、あんまり突然すぎるじゃないか。
面倒な問題は先送りにしなければならない。たぶん正しい認識の筈である。
なにか体のいい言い訳はないものか。
ゆかりは体調不良やら、ドラマの再放送やらを逃げ口上にしてみたが、勿論通用するべくも無い。
切り札であった「みなもの水泳部」も、「今日は生徒に任せる」の一言で斬り捨てられ、
もはやゆかりには戦うための武器も手段も残されていなかった。
「それじゃ、帰ったら通帳とか準備して待ってて。迎えに行くから」
迎えに、と言ってもどうせ目的地まで徒歩である。この女の場合。
更に積もった不満は、最後っ屁と姿を変えて飛び出した。
「早く車買えよ」

 ゆかりにしてみりゃそれは誘拐であった。
行き先も告げられずにひた歩きひた歩き、駅についたのが銀行を出てから更に20分後。
たかが服を買うためだけに知らない街へ連行され、
改札を出たゆかりを迎えたのは、ぎらぎらまとわりつく雑音と人ごみの匂い。
胃がもたれそうだった。
「帰りは、絶対バスだかんな」
「はいはい、わかったって。ほら、そこの通り入ってすぐよ」
 雑踏をすり抜けていく二人。それぞれの姿勢で。
見失わないように監視してるのもお互い様で、半分は自分のため、半分は相手を気にかけているから。
二人はつまり、こういう関係。ずっとずっとそうだった。

982 :ゆかりとおはなし(第3話 6/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:48 ID:???

 交差点を渡って通りへ入ると、いくらか人もまばらになってきた。
これなら声も届く。
「なんだって服買うのにこんなとこ来なきゃいけないのよ」
出てきたのはやっぱり悪態だった。まあ、無理もないというか、ゆかりだから、とても自然。
「文句言うなって。いい物を安く買おうと思ったら、こういう所に来なきゃ駄目なのよ」
近所のデパートでも充分ゆかりのセンスに適うものは揃っているのだが、
それについてはもう言及しなかった。
来てしまったものは仕方ないし、それに何より
ゆかり自身も思いがけなかった、なにやら感慨めいた感覚があったのだ。
「何年ぶりだろ、わざわざこんな街まで出てきて買い物なんかすんの。
昔はよくニッポリだのハラジュクだの行ったんだけどねえ」
みなもの意外そうな表情はゆかりの予想と寸分違わなくて、可笑しかった。
「あんたが?嘘。昔っていつの話よ」
「んー?高校とか大学2、3年までとかそんぐらいかな。
で、お目当ての店はまだかよ」
「え?ああ、もう着くよ。ほら、そこの店の地下」
「地下?」
「そう。上は全然関係ない香水屋だけど、あとで覗いてく?」
「いや、いらん」
 階段は薄暗く殺風景で、洒落た感じだとか高級感と言った雰囲気はイメージしにくかった。
おや、これは、と不思議に思って店内に入ると、照明こそ明るくなったものの、
地味な装飾はあいかわらずで、どことなくごみごみとした印象さえ受ける。
ブティックだのヨーロッパ調だのといった単語しか、それまでのゆかりの頭には無かったのだが。

983 :ゆかりとおはなし(第3話 7/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:49 ID:???

「なんだここ。こんななら、地元の駅前でも良かったんじゃないの」
「モノと値段がいいのよ、この店は。店員もうざったくないから気楽に買い物できるしね。
さ、何とかあんたの予算内で一式揃えちゃおう」
何とか、とみなもが言ったのはつまり、ゆかりの預金通帳の貧弱さが彼女を驚かせたからであった。
独り身で、しかも私立高校の教師なんかやっているのだから、
けっこう金には余裕があっていいはずなのだが、そこはゆかりである。
手に入れた金は主に娯楽のために使い尽くしてしまい、
手元には金どころか物品としてすら残らないのであった。
「でも楽勝なんじゃないの?7万も下ろしたんだぜ、なけなしの預金から。
あんた5万もあれば充分とか言ってたじゃん」
「うん、けど女性の場合小物とかアクセサリーも重要だからね。
それに、そこからお祝儀も出さないといけないじゃない。けっこう厳しいわよ」
「ああ、そう言やそうだ。お祝儀ってどんくらい包めばいいの?」
「えっと、20代で女性なら、大体3万くらいが一般的なんじゃないかな」
「さんまん!?」
「たぶんそのくらい」
「円で!?」
「うん」
その金額はゆかりの色んな価値観を超越していた。
じゃあ今ここにある7万は、友人の結婚のために残らず消えると言うのか?

984 :ゆかりとおはなし(第3話 8/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:50 ID:???

「なんで今さら3万も払うんだよ!友だち同士で!」
「なんでって、そりゃ友達だからじゃないの?
まあ幾らって決まってるわけでもないし、もうちょっと少なくてもいいのかもしれないけど」
「ちくしょー……友人から3万て。お祝儀でぼろ儲けじゃねえか、理子のやつ」
 はっとした。
きまりが悪くて、目の前のマネキンから目線を外せなかった。どうやらみなもも同じ様子で、
二人して黒いドレスにつばの広いハットをかぶった品のいいマネキンを見つめていた。
 理子。それが、ゆかりたちより一足早く結婚する友人の名前。
今まで名前を口にしなかったのはおそらく、無意識のうちに働いた意識がそうさせたから。
 正直、自分たちにとっては表面的な友情だったと、ゆかりもみなもも思っている。
嫌いじゃない。嫌いじゃあないけど。
初めて知りあったのは高校の時で、ゆかりとは同じ大学へも通っていた。
と言うより、むしろ理子があえてゆかりの志望する大学を選んだようにも思える。
少しとがった気性がたたって周囲から疎まれている感のあった理子は、
自分を拒絶しようとしないゆかりを、好むポーズで、依存していた。
みなもと付き合いが深かったのも間にゆかりを介していたからだとは、確信をもって言える。

985 :ゆかりとおはなし(第3話 9/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:50 ID:???

 基本的には(上辺だけは、とも言い換えられるが)来る者拒まずの二人であったから、
向こうが懐いてくる間は交友が続いていた。
連絡が途切れだした時も、追うような事はしなかった。
ぽつりぽつりと続いていた音信がすっかり途絶えてから1年近くが経って、
出し抜けに結婚を知らせる便りが届いた時は、ゆかりも少なからず驚いたものだ。
その時すぐに電話しようかとも思ったけど、何となく出来なかった。
みなもが「式にはゆかりと一緒に出席する」と返事をして、それっきり。
ゆかりが理子と1年ぶりに言葉を交わすのは、結婚式当日の事となる。
「なーんか本当に今さらって感じだよな、理子と会うったって」
 先に沈黙を破ったのはゆかりであった。
その口調は思いのほか空々しくもなく、しかし目線は依然ハット帽のマネキンに向けられていた。
「しかもいきなり結婚とか言い出してなあ。自慢のつもりかって話だよ」
「本当にねえ。私たちなんか呼ぶ必要もなかったのに」
言いながらみなもはマネキンから目線を外し、店の奥へと進んだ。
後姿に催促されて、ゆかりもそれに続く。店内は意外に広い。
「ほら、この辺。結婚式に着ていくような感じのセミ・アフタヌーンドレス」
雑然とした店の中では、かなり小綺麗な一角であった。

986 :ゆかりとおはなし(第3話 10/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:51 ID:???

「この辺のなら何でもいいの?スーツみたいなのとか普通にあるけど。」
「えっと……ど、どうなんだろ。そんなに細かい決まりはないと思うけど」
「なんだよ、わかんねえのかよ。使えねえなあ」
「うるさいな。あ、このアンサンブル、いい色じゃない。着てみようかな」
「あ?あんたが買うのかよ!」
「何だよ、いいでしょ。あんたより金持ってるんだから」
「じゃああんたが私の分も払っとけばいいじゃん」
なんだか、悪くなかった。面白い話でもないのに、けらけら笑った。
最近は一人で買い物する方が気楽で、他人とショッピングなんか誘われても行かなかったし、
みなもとだって飲み食いや映画なんかには行っても、一緒に服を選ぶことなんか無かった。
でも、煩わしいけどでも、人から見れば退屈で馬鹿みたいな話で
こうやって盛り上がりながら品定めするってのは、久しぶりで新鮮だった。
「ねえ、さっきの話」
 浮ついた満足に浸っていたゆかりの表情は、みなもの言葉の先への悪い予感に
一気にけだるさを取り戻した。
「あんた、こういうとこ買い物来てたとかって、やっぱり理子と一緒だったの?」
果たして予想通りの話題である。
「違うわよ。一人に決まってんじゃん」
「嘘言いなさいよ。あんた大して服とかこだわってなかったじゃん。
一人ならいちいち遠出して買い物なんかしないでしょ」
「あーもう、うるさいな。好きで一緒に行ったんじゃないわよ。
めんどくせーっつってんのに、あいつがしつこいから」

987 :ゆかりとおはなし(第3話 11/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:52 ID:???

 たしかにゆかりの記憶の中では、理子とのオデカケは決して楽しいものではなかった。
そりゃそうである。みなもと理子じゃ、一緒にいる時のゆかりのテンションが違いすぎる。
「うん、まあ、なんて言うの。かなり自己主張の強い娘だったしねえ」
クラスメイトたちの理子に対する評価は、だいたいみなもと同じ感じであった。
ゆかりの目から見ると、もうちょっと情の深い奴ではあるのだけど。
「あんたとじゃ、気も合わなそうなのにね」
なるほど、それはその通りかもしれない。どうして二人は角目も立てずやってこれたのだろう。
 理子は、一言でもって言うと自意識の過剰な女性であった。
他人に気にしてもらいたい、と言う願望が並外れており、
自分を周囲に押し売りするような行動は、誰よりも激しかった。
そのせいで級友たちから敬遠されたりしたのだが、理子は他人の視線に敏感ではないものの、
ひどくそれを気にするタチではあったので、人知れずおびえ、苦しんではいたようだ。
そのくせとげとげしい態度をとって、虚栄に溢れ、変にプライドが高いものだから始末に負えない。
彼女が唯一その内なる恐怖を告白できたのが、他でもないゆかりであったのだ。
と言ってもその内容は相談のようなものではなく、烈火の如く怒ったふりをして
理子が叩きつける言葉を、ゆかりがたまに相槌を返したりしながら聞いているだけのものであった。
 問題は、なぜゆかりが理子を拒まなかったのかという事だが、
そもそもゆかりもクラスの中では微妙に浮いた存在であった。
しかし、それは理子の場合と異なり、彼女は当時から
一歩引いた所で世界を見ていようとする姿勢をとっていて、おそらくそれが原因だ。
それはひょっとすると、ゆかりがそう在りたいと願っていただけなのかもしれないけれど、
とにかくゆかりは自分が思う以上に色んな人間がいて、色んな弱さとか悩みを
抱えているのは理解しているつもりでいた。
そして、そんな人たちが自分に何を求めるのかも。

988 :ゆかりとおはなし(第3話 12/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:53 ID:???

 ゆかりは、聞き上手なのである。適当な距離で人と付き合う事を覚えているから。
(それは要するに、めんどーな関係を嫌がっているだけなんだけど)
でも、仮に理子でなく、みなもが似たような事をしてきたとしたら、
ゆかりは不愉快だろうし、聴きに徹するなんて事もしないだろう。
明確な線引きは無いけれど、間違いなくみなもはそういう位置付けになっているのだ。
「しっかし、わかんないもんよねえ」
 やけに饒舌なみなも。漏れてくるような言葉の響きは、
意味以外のもので形づくられているようにゆかりは感じた。
「高校ん時は、あいつ絶対結婚できないよなんて言う奴も多かったのにね」
「んにゃ、私は、理子はさっさと結婚すると思ってたよ。
ところでなんつったっけ?旦那の名前」
「えっと、伸行さんて言ったっけな。わりと稼ぎいいらしいよ」
「いや、それも凄い大事だけど、名字。名字なんてえの?」
「名字?たしか、栗山じゃなかったっけ」
「栗山?栗山……クリヤマミチコ、か。だははは、けっこう可愛いじゃん」
「あ?ぷ、あはははは!そうね、いいかもしんない、栗山理子」
「な。一段と映えるよなあ」
 そう言えば、理子がゆかりとの最後の電話で話したのも、彼女の旦那になる人の事だった。
大学を卒業して、小さな会社の事務を務めることになった理子は、
学生の頃にも増してゆかりに愚痴をこぼすようになった。

989 :ゆかりとおはなし(第3話 13/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:54 ID:???

自分は周りのつまらない連中とは違う。そんな意識が人一倍強い理子であったから、
脚光を浴びる事のないその仕事を不満に思うのはゆかりにもわかっていた事で、
それでもまずかったのは、理子の心のどこかに、教師になった二人への羨望があったこと。
もともとゆありは、聞き上手とは言っても、心の広い人間な訳ではない。
人の気も知らずに身勝手な独り言をゆかりに押し付ける理子は、
もはやゆかりにとって、「外」に置いておきたい存在になっていた。
 たぶん、理子もゆかりの変化、もとい自分に対するゆかりの心の変化に
気付いていたのだろうとゆかりも思う。
しだいに減っていった理子からの電話。彼女は必要以上にさっぱりとした口調で、
自分が会社で嫌われている事とか、仕事を辞めようと思っている事を話すようになった。
そして、最近付き合っている男がいる、とゆかりに言ったのが一年近く前。
素敵な人だとか、ひとしきり彼氏の自慢をされて、それが理子からの最後の電話だった。
その、栗山伸行さん、だっけ?とお付き合いが始まったのがその頃だとすると、
かなり早い結婚と言う事になる。
「どんな人なんだろうね、理子の旦那さん」
 沈黙を避けるかのように、話題を提供するみなも。
ゆかりは平気なふりをして、お値段29,800円からのコーナーを荒らしている。

990 :ゆかりとおはなし(第3話 14/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:55 ID:???

「あの理子のお眼鏡に適うくらいだからさ、よっぽどいい男なんじゃない?」
「さあ、どうだかねえ。案外、焦って妙な男につかまったのかもよ。
お、これなんかどうよ?格好良くない?」
「だめよ。パンツタイプのスーツなのは譲るとしても、思いっきり白いじゃない」
「え?なんで白が駄目なの?」
「白は花嫁さんの色なの。結婚式の主役は理子なんだから。それとも、あんたが花嫁になる?」
「う……じゃ、じゃあこれ」
ゆかりが替わりに選んだのは、落ち着いた黒のワンピースだった。
値段の割に高級感のある素材で、袖の所だけ生地と色が他の部分と違っている。
みなもとしては認め難かっただろうが、なかなかにセンスの良い選択だった。
「うん、いいんじゃない?なんだかんだ言って、あんた黒が似合うし。
店員さんに言って仕立ててもらう?」
「いいよ、面倒くせえ。多分このまま着れるし」
「そう?ならいいけど。試着室すぐそこよ」
 白は花嫁の色、か。試着室に入ったゆかりは、乱暴に服を脱ぎ捨てながら息を漏らした。
私はごく一般的なお嬢様方とは違って、生まれてこのかた花嫁衣裳に憧れた事なんか無い。
無いけど、自分の知合いが、それもあんまり好きじゃなかった友達が
自分より先に結婚するとなると、これはなんだか、なんつーかその、
嫉妬、しちまうもんだなあ。
そんな柄にもない感傷を自覚すると、なおさら溜息をつきたくなった。

991 :ゆかりとおはなし(第3話 15/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:56 ID:???

「ねえ、ゆかり」
カーテンの向こうからもみなもは話しかけてくる。
なんだか、今はありがたい。
「ゆかり。……あんた、結婚とかしたいと思う?」
「ああ?しようにも、相手がいねえもん。あんたこそどうなんだよ」
「そりゃ、素敵な人が見つかったらしたいとは思うわよ。
でも、無理に急いでしたいとは思わないわね」
「あれあれ?て事は、去年まで付き合ってた彼氏はステキな人じゃなかったのかな?」
「あ、あいつのことはもう言うなって言ってんでしょ!!」
「にゃはははは、無理しちゃって。本当は理子に妬いてるくせに」
「うるさい!あんただって同じでしょ!」
そうだよ。とは、言えないか。
「私は大丈夫だよーん。八つ当たりする相手もいることだし」
「だから妬いてんじゃん、それ。ていうか私に当たんないでよ」
「心配しなさんな。今、理子の結婚を記念した抜き打ちテストを製作中なのだ」
「生徒に当たんのかよ……」
 少しの間会話が途切れて、代わりにゆかりが着替えをするごそごそと言う音が空間を支配した。
ふと、今夜理子に電話してみようかと思ったが、その考えはすぐに打ち消した。
話さなきゃいけない事なんかないし、心にもない祝福なんか出来ない。
貧困な話題と社交辞令のストックは、日曜までとっておこう。

992 :ゆかりとおはなし(第3話 16/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:58 ID:???

「おーい、まだ着替え終わんないのー?」
 つくづくみなもは、沈黙に耐えることにおいてタフでない。
「待て、もうちょい……この、背中のファスナーが……こうか……」
苦心しながらひょいと顔をあげると、見慣れない自分がいた。
あれ?
私ひょっとして、割といい感じなんじゃないか?これ。
みなもの言う通り、ゆかりに黒い服は、いやに中性的な色気が漂ってきて、よく似合う。
鏡の前でくるりと一回転。なんだか、数年ぶりに女の子してるぞ、私。
「おい、まだかよー」
「今出るってばよ」
もうちょっと鏡と見合っていたかったけど、しかたない。
とりあえず、目の前の凛とした女の姿を見つめながら、満ち足りた気分で自分の自信を確かめた。
私は、私だ。見た目は、大事だ。
鏡の中の自分に向かって、みなもに聞こえないように呟く。
「結構きれいじゃん、あんた」

「本当きれいね、ゆかり」
 朝からずっとおだてられっぱなしであった。
流石にこれはお世辞を言ってるんじゃないかとゆかりも思ったが、
まあせっかく誉めてくれているので、気持ちよく舞い上がらせてもらう事にした。
「誉めすぎよ、みんな。こいつ調子乗っちゃうじゃない」
「おや、どうしたのかね、にゃも君。自分のおニューのドレスが全然注目されないのが
そんなに悔しいかね?」

993 :ゆかりとおはなし(第3話 17/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:58 ID:???

「だーかーら、調子に乗るな!バッグのアクセサリーも私に選ばせときながら!」
「にゃにぃ!?それ言うなら、あんたが高い小物ばっかり選んだせいで
お祝儀15000円しか包めなかったんだぞ!」
「やらしい話すんなよ!てか、それはあんたが金持ってないのが悪いんでしょ!」
周りの友人たちが吹き出しそうになっているせいで、喧嘩をしている当人たちも
なにやら可笑しくなってきてしまい、みなもが我慢できなくなったのをきっかけに
そこにいた全員、大声を出して笑ってしまった。
やはり、再会はいいものだ。大学卒業以来、一度も会っていなかった友人たちだから、なおさら。
「あはははは、あー面白い」
「でも、本当にみんな変わってないわねえ。10年近く会ってないのもいるってのに」
「そうねえ。でも、麻美のショートカットには驚いたわ。しかも似合ってるし」
「やだ、本当に?ありがと、みなも」
高校時代の友人を集めたのはおそらく、大学の違うみなもへの理子なりの気遣いで、
その点についてはありがたいと、ゆかりもみなもも思っていた。
披露宴の会場で新郎新婦を待ちながら、旧友とどうでもいい事を話している、この小さな幸せ。
「でも、理子はちょっと変わったわよね」
 言い出したのが誰かはどうでもよくて、とにかくすぐさまみんなが同調した。
「うん、何て言うか、感じ良くなった」
「そうそう。あんな良い笑顔の理子、初めて見たような気さえするわ」
みなもも含めてその席は理子の話題で盛り上がり、ゆかりだけが一人黙っていた。
変わってないよ。理子は、ちっとも。

994 :ゆかりとおはなし(第3話 17/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 01:59 ID:???

 ゆかりが理子と言葉を交わせたのは、教会での挙式が終わった後だった。
高校や大学の友人から祝福されて、職場の同僚はそこにはいなかったけど、
理子は満面の笑顔で。ゆかりは、笑顔の部品が理子に貼りついてるみたい、と思った。
 ゆかりとみなもはその直後、新郎新婦と4人で話す機会にも恵まれた。
そこでゆかりが知ったのは、理子が旦那にベタ惚れの、ふりをしていること。
栗山伸行の容姿はどう贔屓目に見てもごく平凡なサラリーマンで、
肩書きはかなりいいらしいけど、なんだか大した男じゃないっぽかった。
彼女の優しさに惹かれてなんたら、皆様に支えられながらかんたら、
一生彼女を幸せにうんたら、身を尽くす覚悟でどうたら。
そいつの言葉には、心が通っていない。
本当につまんねえ男につかまっちまったんだな、とゆかりは思ったが、
少し考えてみたら、どっちがつかまったのかもよくわからなかった。
 理子は、連絡が途絶える以前にも増してゆかりに懐いてきたが、
時折、昔は持っていなかったはずの蔭りを覗かせてみせた。
「私、幸せになるよ。死ぬほど幸せになる」
見た事もないほど、優しくて、悲しくて、きれいな表情でそう言った理子に、
ゆかりは何もこたえられなかった。

995 :ゆかりとおはなし(第3話 19/19) ◆Ry/////V2E :2004/04/11(日) 02:00 ID:???

「きゃー、理子、きれー」
 式で着ていたのとは違う、真っ白なウェディングドレスに身を包んだ理子。
ゆかりの席の連中は沸き立った。
旦那と腕を組み入場する理子の笑顔。ああ、またあの笑顔だ。
「正直、あの旦那じゃ釣り合いとれないわね」
「ほんとね。昔から美人だったしね、理子」
「何言ってんの。男は見ためじゃないのよ。仕事さえ出来りゃ、それでいいの」
「えー、やっぱり結婚するなら、奥さん想いの人じゃないと」
「まあどっちにしろ、外見はそんなに重要じゃないって事ね」
好きな事を言う友人たちの会話には参加せず、ゆかりは新郎を見つめた。
どうしてこの人は、一度も理子の顔を見ないんだろう。わけもなく腹が立つ。
 なんだか、この旦那を見ていると、ゆかりは考えてしまうのだ。
私たちは、生きている。生きてるから、情熱がある。
たぎる情熱を、燻る情熱を、後ろ向きの情熱を、私たちはあらゆる方向に推進させている。
きっとそれが生きるってこと。
この旦那は、「恋」ですらそれが出来ていないんだと思った。
 キャンドルに美しい炎が灯されて、みんなの醜さが目についた。
死人のような顔をした伸行。
幸せの虚像にすがった理子。
そんな二人を好き勝手に批評する友人。
そして、彼らと何ら変わりのないはずの、自分。

 拍手が二人を覆って、新郎新婦は、会場に灯かりを灯しながら歩きつづけた。
理子のつくる嘘の笑顔と、彼女の母親の本当の泣き顔。
「幸せになりなよ、理子」
誰にも届かなかった呟きは、心の通う言葉だった。――はず。

996 :名無しさんちゃうねん :2004/04/11(日) 22:41 ID:P6RNgMgs
どうも、967を書いたものです、先輩方からいろいろアドバイスいただきまして
またこれからもこれらのてんを改善して望みたいと思っています。
ありがとうございました

997 :( ̄〇 ̄)。○(眠い名有り) ◆CRIUZyjmw6 :2004/04/11(日) 23:28 ID:???
>>976
別にいいんじゃない?賛成の人がいるなら…
でも作るべき人物は>>1000

998 :おしらせ :2004/04/12(月) 01:03 ID:???
時々問題になっているグロ問題の解決のためグロ専門スレを立てました

グロまんが大王
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/oosaka/1081698529/l10

1 :名無しさんちゃうねん :2004/04/12(月) 00:48 ID:???
あずまんが大王の殺人・猟奇・グロ全般はこちらへどうぞ

お約束:
・絶対上げない!メール欄のsage確認は投稿直前直後必ずする
・作者さんを叩かない
・他のスレや板、住人さんに迷惑をかけない
・ここはグロ専門スレです。見ちゃっても泣かない文句を言わない
・あずまんがを愛する心はみんな一緒

住み分けが成功してみんながSSを楽しめますように

999 :名無しさんちゃうねん :2004/04/12(月) 01:21 ID:???
新スレ立てました!

http://www.moebbs.com/test/read.cgi/oosaka/1081700484/

1000 :名無しさんちゃうねん :2004/04/12(月) 01:32 ID:???
乙です
これからもあずまんがのSSが、書き続けられていきますように

1001 :1001 :Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててください。

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