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あずまんがSSを発表するスレッド パート4!!

1 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/14(土) 00:04 ID:???
前スレのリンクです。
あずまんがSSを発表するスレッド パート3

http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081700484/

暴力・猟奇・グロなど読み手を選ぶ内容のSSは以下のスレッドに投下する点は前スレと同じです。

グロまんが大王
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/oosaka/1081698529/

新しいスレでも、またがんばりましょう。

2 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 00:07 ID:???
過去スレッド
あずまんがSSを発表するスレッド パート2
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1070830253/
あずまんがSSを発表するスレッド
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1046110813/

3 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 00:07 ID:???
暴力・猟奇など読み手を選ぶ内容のSSはこちらへ。
グロまんが大王
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081698529/

4 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/14(土) 00:09 ID:???
2取ってすんませんが、グロまんが大王のリンクが間違ってたくさいので修正しときます。

http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081698529/l50

5 : :2005/05/14(土) 00:09 ID:???
>>4
どんまい、気にすんな。

6 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/14(土) 00:11 ID:???
>>2,3,5
フォロー、ありがとうございます。

7 :ミルクチョコ ◆.kY34XtGRg :2005/05/14(土) 00:14 ID:???
スレ立て乙〜♪

8 :名無しのSS書き :2005/05/14(土) 01:13 ID:???
>>1 乙〜

9 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 01:16 ID:???
前スレ893 面白かったけど、どっちかっつーと、↓このスレ向きだったかも。

2ちゃんコピペをあずまんが風にするスレッド
http://so.la/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=034992440

10 :893 :2005/05/14(土) 19:39 ID:???
>>前スレ894
素で間違えたorz榊に脳内変換しといてくださいな
>>前スレ895
元ネタにそう書いてあったのでそのまま使ったの
>>前スレ896
ありがdございます〜
>>9
そうでつね。次からそっちにします。

11 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 19:52 ID:???
>>前スレ881
あなたをぜひここに誘導したい

4コマのネタを考えてみる
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1042505620/l50

12 :誘惑の甘い罠 1 :2005/05/15(日) 14:42 ID:???
「あー、お腹すいた……」
 ちょっと風の強い冬の日、学校からの帰り道、不意に襲い掛かる空腹感に私は思わず右
手でお腹を抑えた。
「何か食べたいなぁ……」
 体が何か食べ物を欲している、それは分かっている。だけど、ガマンしなくちゃいけな
い。今はダイエット中なのだ。何かを食べることなんて許されない。今日だって朝ごはん
もお昼の弁当も少しずつ食事量を減らしてきたじゃないか。そんな涙ぐましい努力を一瞬
の空腹感とかすかな食欲でフイにしてしまうのか? 
 私は自分に強く言い聞かせた。空腹を感じてもガマンしなくちゃいけないって。
 だが、悪魔の誘惑は不意に襲い掛かってきた。

「あ! たい焼き食べたい!」
 智の奴が何の前触れもなく、そんなことを言い出したのだ。
「突然だな」
 つとめて冷静に言葉を返したが、頭の中ではたい焼きの味覚が駆け巡っている。たっぷ
り入ったアンコの甘さ、しっぽのカリカリ具合、今日みたいに寒い日に食べるたい焼きの
美味さは格別だ。たい焼きかぁ、いいなぁ。食べたいなぁ……って、いかんいかん。ガマ
ンせねば。

「この前ちよちゃんにうまい所教えてもらったんだ、行こう」
「……いや、いい」
 たい焼きは魅力的だが、今はとにかく耐えねば。ちょっとした誘惑でも崩れてしまいそ
うだが、何とか理性が残っているうちは耐えてみせる。智に見えないように拳を強く握り
締め、心に誓った。でも、ちよちゃんもともにそんな店を教えるなんて余計なことをして
くれたもんだな。

「あ! ダイエットだなこのヤロ!」
「……そうだよ」
 何か文句あるかよ。ダイエットしているから、たい焼きは食べたくてもガマンするんだ
よ。だから、たい焼きはまた今度にしよう。今日はおとなしく帰ろうぜ。
 少し照れた顔を浮かべながらも、もしかしたら聞き入れてくれるかもしれないと思い、
ささやかな願いを込めて智の顔を見つめた。だが、それは一瞬の希望でしかなかった。

13 :誘惑の甘い罠 2 :2005/05/15(日) 14:43 ID:???
「じゃ 私が食ってるの見てるだけでいいって。行こ」
 案の定と言えばそれまでだが、こいつが私の願いなど聞き入れてくれるわけがないか。
そんな優しい心などほんのカケラもないことはちょっと考えれば分かることだ。だからっ
て、満面の笑みを浮かべてそんなおぞましいことを言うか。一体何に対するあてつけだ。
 結局、自己中な悪魔の強引さに引きずられて、たい焼き屋へ行くことになってしまった。

 5分ほど歩いた先にたい焼き屋があった。店の窓からたい焼きを作っている工程が見える。
更に甘いにおいもプンと漂って、食欲をそそいでくる。
 ダメだ、見たら食べたくなってしまう。理性が音もなく崩れそうだ。
「小倉あんと抹茶とカスタードクリーム」
「3つも食うのか」
 おいおい、智よ、1つだけじゃないのかよ。1個買って食い終わるのを待つぐらいならま
だガマンできるのに、3つも食うのを待つなんてただの拷問じゃないか。「嫌がらせか」と
いう言葉が喉から出かかった。

「あんたも食う?」
 何食わぬ顔で小悪魔が尋ねてきた。私のダイエットを邪魔する気か。何でこういうこと
に限っては悪知恵が働くんだよ? だけど、悪魔のささやきに負けてたまるか。
「絶っっ対食わない」
 自分の意志の固さを裏付けるように強く言い切った。絶対に耐え抜くと心の中で繰り返
しながら。
「じゃあ、あんたの分も食べてあげるね」
「……そりゃ、どうも」
 きっぱりした返事をあっさり流すような対応に、少し呆気に取られてしまった。だが、
あいつが私の分を食べてくれれば、私は食べずに済むのだから、それはそれでいいかもし
れない。

 程なくして、智が3つのたい焼きが入った袋を持ってきた。何が入っているのかは知ら
ないが、1つをサッと取り出すと、ぱくっと頭からかぶりついた。チラッと中身が視界に入
った。どうやら小倉あんのようだ。
「うめぇーっ!!」
 人目も憚らないような大声で叫ぶな。耳障りだ。しかも、美味しそうに食いやがって。
お前はグルメリポーターか。もし、グルメ番組でこんな風に食べるリポーターがいれば、
思わず食べたいなって思うくらいじゃないか。うー、目の前でこんな美味そうに食べてい
る奴がいるのに、私は食えないなんて……。

14 :誘惑の甘い罠 3 :2005/05/15(日) 14:43 ID:???
 そう思うと、目の前でたい焼きをパクついている奴に対して、フツフツと怒りが沸いて
きた。もし、これ以上挑発的な行動をとったら、我慢できずに殴りかかるかもしれない。
 でも、仮に殴ったとしたら、「ダイエットなんて無駄なことするから、イライラすんだよ」
とか皮肉を言われるに違いない。ここは黙って耐え忍ぶしかないか。
 でも、何でこんな目に遭わなくちゃいけいないんだ、くー、食べても太らない体質にな
りたい。そうすれば、こんな思いで苦しまなくたっていいのに……。

 一瞬、店内のたい焼きを作っている光景が目に入った。私も食べようかな……。3つじゃ
なくて、1つくらいなら……。いや、ダメだ。誘惑に負けたらダイエットなんてできやしな
い、なんとしてもこの場は耐えなくては……。
 私の思惑など知らずに、いや仮に知っていたとしても我関せずといった具合に、智はも
ぐもぐと美味そうにたい焼きを食べ続けている。ダメだ、そんな姿を見ていたら、やっぱ
り食べたくなってしまう。仕方がない。食べ終わるまで他のところでも見ているか。
 ふと、視線を逸らした先にある言葉に思わず心を奪われてしまった。

――カロリーひかえめ小倉
 何だって! カロリー控えめなら、ちょっとぐらい食べてもダイエットに影響は出ない
じゃないか。そうだ、むしろ甘いものは脳の活性化にはもってこいなのだから、この後家
に帰って勉強するとしたら、その前に脳の活性化のための甘いものの摂取は欠かせない。
 それに疲労回復にも適しているから、今日の疲れを取るためにもむしろ甘いものが必要
じゃないか。きっと私がさっき感じた空腹感は、甘いものを摂取して疲労回復と脳の活性
化をしろという神様のお告げに違いない。しかも、カロリー控えめなのだから、何一つ問
題はない。理性に縛られる必要なんてなかったんだ。
 もはやブレーキの壊れた暴走車と化した私を止める術などなかった。すでに足がカウン
ターの前へと動き出している。

「あの、小倉……」
 気がついたときには小倉あんのたい焼きを注文していた。
「よわっ!」
 背後で智が何かを叫んでいたが、そんなのは私の耳には入らない。今の私には小倉あん
がぎっしり入ったたい焼きしか瞳に映らないのだから。
 あぁ、ぎっしり詰まったアンコとそれを包む皮の絶妙なハーモニー、しっぽ付近のカリ
カリしたところの食感、冷めた心と身体を温めてくれる温もり、それが今私のものになる
んだ。気を緩めるとよだれが出てしまいそうだ。

15 :誘惑の甘い罠 4 :2005/05/15(日) 14:44 ID:???
 若い店員が袋に入ったたい焼きを渡してくれた。逸る気持ちを抑えながら、ゆっくりと
熱気の伝わる袋を開け、中からアンコの入っているたい焼きを取り出す。
 はふはふと息を吹きかけると、そのまま頭からかぶりついた。何とも言えない甘さが口
の中に広がり、至福の瞬間をもたらしてくれる。
「あぁ……、美味しい……」
 こんな美味しいものをガマンしていたなんて、私のバカ……。
 感嘆のため息を漏らしながら、むさぼるように一気に食べてしまった。

「あーぁ、食べちまいやがったか。ダイエットはどうしたんだ?」
 あきれた口調で智がチクリと一言突いてきたが、たい焼きのおいしさの余韻に浸ってい
た私にはどうでもいいことだ。今日はたい焼きの味を満喫する日ってことにして、ダイエ
ットなんてまた明日から頑張ればいい。だから、今日はこの1個だけ特別サービスで食べ
たっていいじゃないか。

「なー、よみー。そろそろ行こうぜー」
 私が余韻に浸っている間に、智は3つとも食べ終えたようだ。こんな美味しいたい焼き
をそんなにあっさり食うなんてもったいない。もっと味わって食えよ。
「それじゃ帰るとするか」
「いや、まだ家には帰らないぞ」
 智の言葉が一瞬理解できなかった。たい焼きを食い終えたのだから、もう帰るだけじゃ
ないのか。
「甘いものをたくさん食べたら、ちょっとしょっぱい物がたべたくなってさー。ちよちゃ
んにたこ焼きの美味しい店も教えてもらったから、そこへ行こうぜ!」
 何も考えていないような無頓着な笑顔が妙に腹立たしい。

「いい加減にしろ!」
 気がついたときには、私は智にアッパーカットを食らわせていた。でも、この一撃で少
しかカロリー消費されていればいいんだけどな。そうすれば、カロリー控えめだけどさっ
き食べたたい焼きの分をカロリー消費できるし、あわよくばもう一個食べることもできそ
うだからな。
 しかし、私のよこしまな考えは、アッパーを食らった女の「ふとるぞ……」と言うかす
かなうめき声でやめにすることにした。でも、たい焼き美味しかったな。ダイエットに成
功したら、今度は抹茶とカスタードクリームも食べてみよう。
(完)

16 :名無しさんちゃうねん :2005/05/15(日) 20:12 ID:???
乙。読みやすくていいカンジでした。

17 :名無しさんちゃうねん :2005/05/15(日) 20:28 ID:???
>>15
おつage

18 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/15(日) 22:57 ID:???
乙です。原作であったところからか、読みやすかったっす。

あと、すいません。さっき気づいたんですが、前スレにリンク貼り忘れてました・・・。
すいません!!

19 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:15 ID:???
前スレ>>831-842の続編みたいなもの。今回は旦那視点です。

マグネトロンバーガーにて

俺 「今度の日曜どこか行きたいとこあるか?」
大阪「うーん…どっかなぁ…」
俺 「ヒマだろ?日曜」

俺たち夫婦はできるだけ結婚してからも積極的に二人の時間を取るようにしている。
夫婦共働きの現状、そういうスキンシップは大切なのだ。


大阪「そうやけど…映画もこないだ行ったし、遊園地ゆー年齢でもないし…」
俺 「ふむ…」

大阪「あっ、そや!こないだオープンした水族館行こう!!」
俺 「水族館?」
大阪「そー水族館。けっこー大きいとこらしいで。行こー」

水族館か…別に魚なんぞに興味はないが、確かにデートスポットではあるな。
俺たちもまだ若いし、周りからも普通のカップルに見えるだろう。

俺 「よし、じゃあそれにしよう」
大阪「私なー、タコが見たいねん!」
俺 「そっかータコなー……タコ?」
大阪「うん」
俺 「タコ……好きなのか?」
大阪「うん」
俺 「そうか…うん…いいよな、タコ」
大阪「せやろー」

20 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:16 ID:???
水族館前にて

ガヤガヤ

大阪「うわー、人いっぱいやな」
俺 「まぁゴールデンウィークだしな」

水族館は確かに広いが、客もまた多かった。
みんなヒマだな。魚がそんなに見たいのか?

大阪「迷子なったらあかんでー」
俺 「ならねーよ」

俺 「早くはいろーぜ」
大阪「んー……あ!」
俺 「ん?」
大阪「神楽ちゃーん!!」

大阪は、携帯で喋っている小柄な女性のもとに走っていった。

神楽「でさー、やっぱあれはあっちの方が……ん?」
大阪「神楽ちゃんやん!」
神楽「お、大阪!?こんなとこで何してんだよ?」
大阪「魚見にきてん。神楽ちゃんはー?」
神楽「私は、これから久しぶりに榊に会いに……あ、旦那さんも…」

21 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:16 ID:???
神楽さん…確か大阪の友人だ。この間結婚式にも来てくれていたな。
それにしても……

俺 「えと…おひさしぶりです…………ジー-…」

…なんというボリュームだ。犯罪級だな。
残念ながら大阪にはこれは今後とも望めそうにない。

神楽「そうですね、結婚式以来ですかねー」
俺 「どうもご無沙汰してて申し訳ありません…………ジー-……」
神楽「いえ、そんな…どうかしましたか?」
俺 「あ、いや、なんでもないですよ?」
神楽「はぁ…あ、じゃあ私もう行きますんで!それじゃあまた!」
大阪「ばいばーい」
俺 「さよならー…………ジー-…」
大阪「…ほな私らも行こかー」
俺 「…え、あぁ、そだな」

ひさびさにいいものを見た。
少なくとも今から見る魚共なんかよりは遥かに素晴らしいものだろう。

22 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:17 ID:???
水族館内にて

ガヤガヤ

大阪「あ、サメやー」
俺 「ほんとだ。でかいなー」
大阪「あんなんに噛まれたらどないなるんやろな」
俺 「そりゃ…やっぱ死ぬんじゃねえの?」
大阪「え!?あんた死ぬんか!?」
俺 「…お前は平気なのか?」
大阪「……あ、タコやー!」
俺 「人の話聞けよ。ってか勝手に行くなよ!」

ガヤガヤ
大阪はスイスイと人海の中に消えていく。

俺 「…って、あれ?歩ー?」

ガヤガヤ

俺 「……いねぇ??」

ガヤガヤ

俺 「タコん所にもいねぇし…どこ行ったんだ?……だー─!!人ごみうぜぇ!!」
   …くそっ!歩ー!?歩どこだー!?」

大人げなく声を上げて探す。それぐらいしなければ見つけ出せない状況なのだ。

客A「どうしたのかしらあの人?」
客B「迷子かしら、あのトシで」
客C「最近の男の人は情けないったらありゃしないわねー」

心ない嘲りの言葉が俺の耳にチクチク刺さる。

俺 「く……ちきしょー、どこ行ったん…あ!!」

俺は眼前にセミロングで黒髪の女を発見した。

23 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:17 ID:???
マグロの水槽前

俺 「おい!!」
大阪「あ、どこ居ったんー?」
俺 「ハーハー…そりゃこっちの台詞だ!!勝手に行きやがって!!」

実際、人ゴミを掻き分けてどこにいるかも分からない人間を探すのは、疲れる。

大阪「ごめんなさいー…でも、ほらこのトロすごいでーめっちゃ速い」
俺 「……トロってなんだ?こいつに名前つけたのか?」
大阪「え、そうやなくてこの魚、トロやろ?」

肉体的よりもむしろ精神的に疲れた俺は今現在天然ボケは求めていない。

俺 「…この魚丸々トロか。そうか。そいつは贅沢だな」
大阪「え?…え??」
俺 「いいか!ここにこの魚の名前が書いてあるだろ!?なんて書いてある!?」
大阪「いたい、いたい、頭掴まんといてー!……マグロと書いてあります」
俺 「そーだな!?この魚はマグロだ!トロなんて魚はおらん!!」
大阪「なに怒ってんのー?」
俺 「…ハーハー…すまん、少し疲れたんだ…もう外に出ようぜ」
大阪「んー、わかったー」

24 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:17 ID:???
帰宅後・自宅にて

一日の疲れを落とす為、二人で酒を飲む。

大阪「…ぷはっ〜いろんな魚がおったな〜おもろかった〜」
俺 「あぁ、確かに思ってたより良かったよ…一部激しく疲れたが」
大阪「……………」
俺 「どうした?」
大阪「いや……さっきのってどっちが迷子やったんやろなー?」
俺 「…仮に俺だとしても、原因はお前だ」
大阪「えへへー…だいぶ焦っとったなー」
俺 「な…見てたのか!?」
大阪「うん……あの時、わざと返事せーへんかってん」
俺 「は?……なんで?」

一時の沈黙を置いて、大阪は笑ったまま訊いて来た。

大阪「…あんた、胸好きか」
俺 「…なに言ってんだお前?」
大阪「さっき神楽ちゃんと話してるとき、あんた神楽ちゃんの胸ばっか見ながら喋っとったやろ」
俺 「………………!」
大阪「どうや?」

25 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:18 ID:???
いやな汗がでてきた。バカな、こいつそんなことチェックしてたのか?
そんな露骨に見てたつもりはなかったが……あれ、でも今日の神楽さんの顔が思い出せない…やっぱり胸しか見てないや。
我ながらなんてヤツだ。
……大阪はあいかわらず笑顔だ。そして、また酒をコップに注いでいる。

俺 「いや…その……」
大阪「どうなんや?」

嘘はつけない。俺は正直者なんだ。

俺 「………………ミテマシタ」
大阪「見てたんやな?」
俺 「………………ハイ」

まずい……肩身が狭すぎる。
今度から正直者やめようかな。

大阪「ふ〜ん…ま、そんな固まらんと、しゃっきり喋りいや」
俺 「…………」

だんだん取り調べ化してきた。
大阪はさらに酒を飲む。

大阪「あんたにとって私はなんや!?」

ここでやっと大阪の笑顔が崩れた。けっこう真顔で怒っている。

26 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:19 ID:???
俺 「歩は…俺にとって最愛の奥さんだよ。俺が愛してるのはお前だけだ」
大阪「ふっ…よーゆーわ」

プロポーズした時ばりに本気の眼差しで言った言葉を、大阪は軽く鼻で笑い飛ばした。そしてさらに酒を飲む。
そんなに飲んだら体にも俺の精神衛生上にも悪いぞ。

俺 「な、ホントだって」
大阪「ほなら言わしてもらうけどな、今、あんたの最愛の奥さんは激しく傷ついてるんや!」
俺 「う…」
大阪「デート中にあんな下心丸ダシの視線で他の女の子を、しかも胸ばっかり見て!!」
俺 「…いや、その…」
大阪「侮辱や!!あんたの態度は胸の小さい女の子に対する冒涜や!!」
俺 「ゴ…ゴメン…なさい」

どうやら相当コンプレックスを抱えていたようだ。それにプラスして大分酒がまわっている。

大阪「そこに座りなさい!!」
俺 「もう座ってるけど」
大阪「正座やー─!!」
俺 「…わかりました…よいしょ」

大阪は俺を正座させた後どこからか竹刀を取り出してきた。
おい、それで俺を叩く気か?

大阪「ええか!よく聞きなさい!!」

ビシ!ビシ!
俺ではなく床を叩いている。恐いっちゃ恐い。しかし…

俺 「ここマンションなんだから下に響くし、それはやめとけよ」 
大阪「……………」

今度はヒモを持ってきた。やはりペチペチ床を叩いている。まぁこれぐらいならいいが…
先ほどと違って迫力は0だ。

27 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:19 ID:???
大阪「だいたいなー、女のコのおっぱいは、もともと赤ちゃんのためにある物であって
   アンタみたいなスケベな男のためのものとちゃうねん!!」

今度は演説をはじめた。ここは従順に聞くことにしよう。

俺 「はぁ……」
大阪「それにや、大きいのも考えものなんやで!なんか、重いらしいし、肩もコるらしいし」

全部「らしい」というのがそこはかとない空しさをかもしだしているな。そんなことは口にしないが。

俺 「それは…大変だな」
大阪「せやろ!?それに胸の大きい小さいで母親としての機能なんて大差ないねん!」
俺 「…ふむ」
大阪「それやったら小さいほうがええやん!?な!?」

なんかだんだん論点がズレてきた気がするな。そんなことは口にしないが。

俺 「確かにそうだな」
大阪「そうやねん!!小さくてもええねん!!それやのに、アンタは!!」
俺 「…………」
大阪「アンタみたいなのがいるから胸の小さい女の子が肩身の狭い思いをせなあかんねやー!!ムキー─!!」

まぁ、確かに今回のことは俺が悪かった。これは口にしよう。

28 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:20 ID:???
俺 「ああ…確かに今回のことは全面的に俺が悪かった。スマン」
大阪「反省してるか!?」
俺 「はい」
大阪「もう二度とあんなことはせーへんな!?」
俺 「誓って」
大阪「ふむ…でも、言葉だけでは許せへんな……せやから、償ってもらいます」
俺 「…どうやって?」

大阪は口の端をつりあげてニヤっとする。
…大阪ってSだっけ?
俺にMの気はないし、あまり痛いのはイヤだな……もしかして、このヒモで縛る気だろうか?
明日会社の同僚に縛られた跡を見られたらどうしよう…

俺の思考回路は逆境のあまりあらぬ方向に逸脱している。
そんなことはおかまいなしに大阪が判決を下した。

大阪「おっぱいを揉んで欲しいねん」

俺 「…………………は?」

29 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:20 ID:???
『被告人をおっぱい揉みの刑に処す』大阪裁判長の判決はそれだ。
…想像とのギャップのあまり、脱線をくりかえしていた俺の思考が復活した。

俺 「あの………なんて?」
大阪「せやから、胸。揉んで」
俺 「…なんで今さら?別にいつも揉んでやってるじゃん」
大阪「あれは!…その…前戯やろ?そうやなくて…こう…もっと時間をかけて」
俺 「つーかなんのために?」
大阪「ほら……豆知識ー…胸って揉んだら大きなるねんで」
俺 「それは…え!?マジで大きくなるの?」
大阪「そう聞いた」
俺 「…誰に?」
大阪「ともちゃん」
俺 「また…あいつか……」
大阪「それはどーでもええねん!はよしなさい!!」

さっきあんだけ小さいほうがいいと言っておきながらやはり上を目指すのかい。
なにか虚しいものを感じながらも、俺は承諾する。

俺 「はいはい…わかりました。じゃ、いくぞー」
大阪「あ…待って」
俺 「なに?」
大阪「電気……消して」
俺 「なんか初々しいな」
大阪「せやかて…ずっと胸触られてるの恥ずかしいやん」
俺 「なんじゃそりゃ。……はいはい、じゃー消しますよー」

30 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:21 ID:???
カチッ

薄暗くてほとんどなにも見えない。
大阪の胸は…ここか?

大阪「ふぇ…あはは!!くすぐった…そこはお腹や!!」
俺 「もう少し上…あ、これか」
大阪「いたっ…優しくしなさい!」
俺 「ごめんごめん。え〜っと、ずっと揉んでるのか?」
大阪「うん。いいゆーまでずっと」
俺 「はいはい」

大阪の胸を揉みはじめる。しかし、わかってはいたが「揉む」ほどのボリュームがない。これは…
「掴む」というカンジだな…あれほどのコンプレックスを抱いていたのが今更になってなんとなく理解できる。

多少の罪悪感から、胸を「掴む」ことに集中する。今夜は、大阪の言うことを聞いてやろう。


むにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむに………


ひたすら「掴み」続ける。
…なんとも間抜けだ。電気消しといてよかった。

大阪「……………」
俺 「……………」

かなりの時間、、二人の息遣いだけが夜の闇に染み渡る。
その内の一人の息がだんだん荒くなってきた。


「ハァ……ハァ……」

31 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:21 ID:???
……俺だ。
手が疲れてきたのである。

俺 「ハー…ハー……まだか?」
大阪「まだまだや」

なるほど…これは拷問だ。腕が痺れてきた。ヤバイ。
くっ、なんか別のことを考えよう。
えーと、今日見たカニでかかったなー。あれ食ったらうまいんだろーなー

俺 「…ハー………ハー」
大阪「どしたん〜?息遣い荒いでー。もしかして、続きを期待してるんか〜?」

なにアホな勘違いしてんだ。
安心しろ、俺の腕はもう限界を迎えようとしている。そんなハードなアクションを行うには絶望的だ。

大阪「しゃーないな〜…もう胸はええよ」
俺 「ハー……そうか…ハー」

やっと開放された。自由ってすばらしいな。

大阪「なぁ……来ても、ええで?」

結局暗闇の中で長時間胸を揉み続けた状況は、
さきほどまで激怒していた大阪にとってもなんとなくそうゆう雰囲気を作り上げていたようだ。
しかし、残念ながらお前がよくても俺がよくない。
でも今そんなことを言ったらまたこじれるだけだし…
なんとか期待に沿えるよう努力しよう。まず手始めに挿入せねばなるまい。
…だが手に力がはいらない。

32 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:22 ID:???
俺 「く…よっ…あれ……?」
大阪「………なにしてんのー?」

どうやら、というかやはり手を使わずに挿入するのは不可能なようだ。
これは困った。けど1秒で考えるのをやめる。
面倒くさいし挿入はあきらめることにしよう。
ってゆーか疲れたし。
だけど一応、カタチだけでも抱いてやろう。

俺は、大阪の上に倒れ掛かる。

大阪「わぷっ…重いわ!なにすんねん!?」
俺 「いいから……」

大阪の胸に耳をあてる。優しい鼓動が響いてくる。

33 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:23 ID:???
俺 「歩……胸が小さいのも悪くないな」
大阪「なんやねんな、いきなり?」
俺 「こんなにはっきり心臓の音が聞こえる……いい音だ」
大阪「…それは…フォローなん?」
俺 「思ったままを言ってるだけだ…今、音が少しはやくなったな」
大阪「……………」

一度動きを止めるとさらに疲れがドッと出てきた。それに合わせて眠気も。

俺 「俺は疲れた…寝る………スー」

寝ると言って5秒で本寝だ。これは学生時代からの得意技である。

大阪「あ…ほんまに寝てもうた…」
俺 「スー………スー……」
大阪「……………」
   
  「いい音か……ありがとー……」

よく覚えていないが、誰かに抱きしめられた気がした。

34 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:23 ID:???
翌朝

俺 「あー……朝か…うわ、手が動かねぇ」

筋肉痛だ。翌日にやってくるというのは老いた証拠だろうか?

大阪「おはよー……あ…イタタ!!」
俺 「……どうした?」

大阪が起き上がろうとして、固まった。

大阪「ア…アンタ上に乗っけて寝てたから…腰が…イタタタ…」
俺 「ああ…大丈夫か?」

大阪「ちょっと……腰揉んでくれへん?」
俺 「…もうムリ」

35 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/05/15(日) 23:39 ID:???
旦那も見とれる神楽たんのおっぱい…
焼きもち大坂かわいい

36 :ミルクチョコ ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:40 ID:???
え〜と…以上です。
なんとなく即興で名前つけました。「大阪との一日」今回が2作目になりますね。
ありきたりな題名なんでどこかとカブってないか超心配です。
カブってたらすみません。次書くときがあれば換えます。

あと、とあるコピペを参考文献的なカンジでお借りしました。
もしもダメだったならすみません。二度としません。

それと、前回と今回で旦那が微妙にキャラが違いますね。
まぁ視点変更とか言い訳はありますが、
こんなん続編じゃないじゃんと言う方がいたらすみません。
もうなんか別の作品として見ても困らないんでそうして下さい。

それと前スレ>>867さん、ありがとうございます。ほんと嬉しいです。

>>15さん、乙です。原作+その後で違和感がなかったです。

長々とすみません。ご指摘お待ちしてます。

37 :名無しさんちゃうねん :2005/05/16(月) 00:44 ID:???
>>36
GJ!!オチが良かった
大阪ワールドも健在だしw

38 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/05/16(月) 22:56 ID:???
>>36
正直、久々に萌え死んだ

39 :国防委員長 ◆Ps6jeUWgS6 :2005/05/16(月) 22:57 ID:???
>>36
今日、携帯で何度も見返した。
最高だ!!

40 : :2005/05/18(水) 11:22 ID:???
>>36
素晴らしいっすね
大阪さんの独特の雰囲気を出すのって凄い難しいのに見事でした
GJ!!

41 :名無しさんちゃうねん :2005/05/19(木) 19:08 ID:???
age

42 :名無しさんちゃうねん :2005/05/22(日) 17:44 ID:???
だめだ〜〜我慢できん!!どなたかSS書いてくれ!!禁断症状で死にそうだ〜!!


というわけで、age

43 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:44 ID:???
「・・・ごしごし・・・ごしごし」
 つぎはぎだらけのドレスを着た少女が雑巾がけをしている。
「ごしごし・・・ごしごし・・・ふぅ。これで半分ですね」
「ちよ。ちよは何処?」
「あ、はい。ただいま」
 呼ばれ、少女は立ち上がる。
「あら、まだこんなところにいたの?頼んでいたドレスは出来てるのかしら?」
「おまえ・・・ずいぶんノリノリだな」
「意地悪お姉さんって、はまり役ですからね〜」
 ちよが掃除していた舞台に、3人の女性が入ってくる。
 義姉である、智とかおり。義母である暦だ。
「にしても、なんで私が母親なんだ?しかも、意地悪って」
「ぷぷぷ。はまり役」
「お前が言うな!!」
「あの〜・・・えっと・・・ドレスは出来てるんですけど・・・」
 ちよが奥からドレスを持ってくる。
 少々裾を引きずっているがそこは愛嬌でごまかした。
「意地悪やらせたらよみにかなう人はいねぇだろ!」
「なに〜!?どの口が言うんだどの口が!!」
「バーカ!バーカ!!」
「わけわかんねぇよ!!お前の方が馬鹿だろ」
 ちよは手にドレスを持ったままオロオロとその場で二人を見ている。
「えっと、じゃあ、二人でやろうか」
「あ、かおりさん・・・はい」
 笑顔になったあとに、まじめな顔になってかおりがちよに向けて指をさす。
「ドレスは受け取ったわ。いいこと。今日は舞踏会だけど、アナタはお留守番よ!!お〜っほっほっほ」
「・・・かおりさんもはまり役なんじゃ・・・」
「あ、私のセリフとった!!かおりん、ここじゃセリフねぇじゃん」
「智ちゃんが喧嘩してるのが悪いんだよ〜だ」
「はぁ、どうでもいいけど、終わったんならはけるぞ」
 暦が智とかおりんの背中を押して舞台袖へとはけていく。
 ちよがあっけにとられていると、舞台を照らしていたライトが昼間のものから夜へと唐突に切り替わった。
「あ、あははは・・・えっと・・・・・あ、続き続き・・・舞踏会に私も行きたかったなぁ」
「ホンマに行きたいんか?」
「あなたは!?」

44 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 突然、部屋の一部分がスポットライトで照らされる。
 そこに立っている黒いローブとフードで身を包んだ女性が立っている。
「魔法使いの大阪や・・・でな、ホンマに行きたいんか?舞踏会」
「え?あ。。。。あの?」
「ちよちゃんが行ってもまだおもろないで?途中で疲れて寝てまうのが落ちや」
「いや、落ちって」
 大阪が徐々にちよに近づいてくる。
「でな、思ったねん。ちよちゃんじゃなくて私が舞踏会に行くねん」
「あの。それは、シンデレラから」
「と言うわけでや。この毒リンゴ食べてくれへんか?」
 大阪がリンゴを取り出してちよに差し出す。
「何処に持ってんですか!!それに、毒リンゴはシンデレラじゃなくて白雪姫です。大阪さん、もう少しまじめに」
「私はマジメやで?そかぁ・・・行きたいかぁ。しゃあないなぁ。ならネズミとカボチャを持ってきてぇな」
「あ。はい」
 ちよが舞台袖にはける。
 数秒後、ちよはカボチャをかかえ、後ろに二人の男性をつれて戻ってくる。
 二人の男は灰色の布を頭からすっぽりとかぶっているだけだ。
「なんや、この二人?ネズミ男でももっとましやで?」
「ひ、ひどい」
「うぅ。こんな役なら裏方の方がよかったよ」
「あ、あの。カボチャとねずみさん・・・ですけど」
「ちよちゃん。もっと男を見る目つけなあかんで。・・・えぇわ。今回はこれで手を打ったる」
 大阪は持っていた杖を高くかかげ、掛け声と共にそれを振り下ろす。
 同時に舞台上に大量のスモークが。
 まったく何も見えなくなる。
「けほけほ。少し・・・煙・・・多すぎです」
 徐々に煙がはれてくる。
 ちよのそばには大阪も二匹のネズミ男もいなくなっていた。
「ちよちゃん。その馬をつかってぇな。ほななぁ」
「ふぅ・・・え!?えぇぇぇぇ」

45 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 煙が晴れ、そこに現れたのは運動着姿の1人の女性。
「強気に本気、素敵に無敵、元気に勇気!名馬神楽、神に遣わされただいま参上ぅ!」
「あ。あわわわ。。。。大阪さ〜ん、ねずみは二匹でしたし、カボチャは?カボチャは〜??」
「ふっふっふ。ちよちゃん。細かいことは言いっこなしだぜ」
 神楽はちよを背負う。
「しゃべると舌噛むから、黙ってろよ〜。いっくぜ〜〜」
 ちよを背負ったまま神楽が走り出す。
 舞台を飛び降り、客席の通路を走る。
「あ、わ、わ、わ、わ、わ」
 そのまま、ドアを開けて外に出てゆく。
 同時に、流れる優雅なメロディー。
 舞台はいつの間にか、舞踏会の会場へと変貌を遂げていた。
「王子さま。今日はお招きにあずかりありがとうございました」
「いやぁ。派手だねぇ」
「さ、さか・・・榊さんの王子様姿・・・うぅぅぅぅぅぅ・・・・写真撮らせてください!!」
 暦が智とかおりの頭を小突く。
「いや。うん・・・来てくれてありがとう」
 困ったような顔で榊が軽く手を上げる。
「今日は王子様のお妃様を探されるとか・・・では、後は若い者に任せて」
 そう言って暦がスススと後ろに下がる。
「えっと・・・」
「あ、あの。お、踊ってくれませんか?」
 真っ赤な顔をしたかおりが一歩前に出る。
「あ。う、うん」
「や、やったぁぁぁぁ。あぁ、榊さん、私は一生この日を忘れません。えぇ、忘れませんとも、日記にも書いて永久保存版ですぅぅぅ」
 あまりのかおりの壊れっぷりに一歩引く榊。
「んじゃ、私は何しようかな。あ、よみ!!料理ばっか食ってるとまた太るぞ!!」
「いいんだよ、甘いものじゃねぇから」
「・・・いや、その理屈はおかしい」
 先ほど後ろに下がった暦は、皿に大盛りの料理を載せて頬張っていた。
 かおりは、無理やり榊を引っ張って踊りだし、智は暦をからかっている。
 突然、客席側のドアが勢いよく音を立てて開かれる。

46 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 同時に鳴り止む音楽。
 全員の動きがとまり、その方を見る。
 当てられるスポットライト。
 そこには、美しいドレスに身を包んだちよ(リボンプラスバージョン)が立っていた。
「・・・王子様。私と・・・踊ってください」
 ちよは微笑みながら、舞台に向かう。
「よろこんで」
 榊は顔を真っ赤にして応える。
 かおりの手を振り解き、近づいてくるちよに手を差し出す。
 ちよは、みなが見ほれるほど可愛らしかった。
 可愛いもの好きの榊から見ればその効果は数十倍にもなっている。
「王子様」
「ちよちゃん」
 二人が手を取り合うと、再度音楽が流れ始める。
 流れるようなダンス。
 身長差がありながら、二人のダンスは息のあった綺麗なものだった。
『・・・さっき言い忘れてもうたんやけどな、ちよちゃん。12時になったら魔法のドレスは消えるで〜』
 急に場内スピーカーから大阪の声が聞こえる。
「あう。大阪さん・・・雰囲気ぶち壊しです」
 同時に鳴り出す鐘の音。
「12時!?・・・あ、帰らないと」
 ちよは王子の手を振り解き舞台を降りる。
 客席から通路を駆けてゆく。
「ちよちゃん!」
 しかし、いかんせんちよの足は遅い。
 客席を抜ける前に12時の鐘がなり終わった。
「残念やったなぁ」
 目の前に大阪が現れる。
「え?」
「12時になったら魔法のドレス消えるて言うたやん」

47 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 言うと同時に、ちよのドレスの肩から生えていた一本の紐を引っ張る。
「え?・・・きゃぁっ」
 ドレスがバラバラになり、足元へと落ちる。
 ちよは、その場でスクール水着姿になってしまった。
「ありゃ。水着きっとたんかぁ・・・下着姿を期待しとったんやけどなぁ」
「お・お・・・さか・・・さん」
「なんや?」
「そこ!どいてください!!」
 ちよは顔を真っ赤にしながら客席を駆け抜けていった。
「え・・・えっと。あ、こ、この靴はさっきのちよちゃんの!」
 呆気にとられていた榊がなんとか元の話に戻す。
「兵士たちよ!この靴にあうちよちゃんを探してくるんだ。その人が私の妃だ」
 暗転する舞台。
 いつの間にか大阪も姿を消していた。
「ふぅ。それにしてもあのちよちゃん誰だったのかな?」
「おい。その会話は何かおかしいぞ?榊のセリフもそうだったが」
「そうねぇ。ちよちゃんを探すなんて、そう簡単なことじゃないのに」
「だから!!ちよちゃんイコール謎のお姫様みたいな使い方は間違ってるだろ」
 最初のセットにもどり、暦と智とかおりがお茶をしている。
 ちよはそのすぐそばでお盆を持って立っていた。
 そこに兵士の格好をした男性がやってくる。
「ここに、可愛らしいちよちゃんはいないか?いたら、この靴を履いてみるんだ」
「・・・あぁ、もうどいつもこいつも。ほら、ちよちゃんご指名だよ。早く履いてみて」
「え?あ・・・でも、先によみさんたちが」
「いいんだよ。こんな茶番劇にはこれ以上付き合えない」
 そういって、テーブルに顔を突っ伏す。
「くくく。そんなこと言って、さっき食べ過ぎて動きたくないだけだろ」
「むぐ!そ、そんなわけないだろ」
「じゃあ、立てよ」
「てめぇ!!」
「あの、あの。私が履きますから、喧嘩はやめてください」
 ちよが差し出された靴を履く。
「あぁ、ぴったりです」
「はいはい。よかったよかった。めでたしめでたし、はい解散」
「うぅ。ともちゃんひどいです」

48 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:46 ID:???
「もう。なんなんですかあの舞台は」
「台本なし。配役も本人以外には伝えない限界ギリギリの舞台はどうだった?」
 舞台袖に集まった役者たちに担任であるゆかりが声をかける。
「むちゃくちゃですよ・・・水着を着てなかったらどうなってたか」
 むくれるちよ。
「ご飯はおいしかった。うん」
「お前、そればっかだなぁ」
 料理を思い出し悦にひたる暦とつっこむ智。
「私は榊さんが・・・かっこよかったから」
「ちよちゃんが。可愛かった」
 お互いに好きな物がみれてよかったかおりと榊。
「あんな。王子様のキスはどこいったん?」
「もう少し出番ほしかったな」
 相変わらず勘違いしている大阪。
 少しだけ不満げな神楽。
「んじゃ、今度は西遊記やってみよ〜」
『今度!?』

(完)

49 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:49 ID:???
芸術発表会・・・みたいな感じのネタ。
ちょっと長かったですかね。
実は前スレとか読んでなくて・・・・ネタかぶってるのあったらごめんなさい
では。また何か書きに来ます。

まぁ、この板の別スレでSS・・・書いてるんですけどね。
トリップはつけてないので。わからないと思いますが

50 :名無しさんちゃうねん :2005/05/23(月) 19:11 ID:???
GJ!!
展開がうまかった。

>ちよちゃん=謎のお姫様みたいな使い方

ここら辺の流れ激ワロス。

51 :名無しさんちゃうねん :2005/05/24(火) 20:07 ID:???
やべえ めちゃ笑いながら読んでた
うまいことキャラの特徴と笑いのツボをおさえてていいな。

52 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/05/26(木) 19:34 ID:SBtO6zLU
>>43-48
本当にあずまんがでありそうでな話の展開で、落ちもすっごく良く、とても楽しませていただきました。
GJ!!

53 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/26(木) 21:57 ID:???
キャラの特徴というか、役回りというか、はっきりしてて読みやすかったです。
ん―――・・キャラが立ってるってことでしょうか。

西遊記だとラブひな5巻のあずまんが版みたいになりそうで面白そうですね。
いや・・・ラブひな読んだことなかったらすんません。

54 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:01 ID:???
>50さん 
実は、自分に対する突っ込みだったりします。書いてて最初気づかなくって。
読み返してみておかしいと思って、よみちゃんを突っ込み役にしてみました。

>51-52さん
ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしい限りです。
原作の雰囲気をなくさないようにするのに気をつけてみました。

>53さん
キャラは特徴ありますからね。他作品よりもこういうのは書きやすいです。
ラブひなのは知ってますけど。西遊記はあくまでオチだったんで、何も考えてませんでした。
今度考えて見ますね

えっと。新作できました。何回かに分けるので、時間かかりそうです。
あと、作品は主人公とちよちゃんの視点でかかれます。
主人公してんの時は−TAKA− ちよちゃん視点の時は−CHIYO−と頭に書きます。
今回のは書いたことの無い分野なので、手探りで作品を書いています。
修正したほうがいい部分などは、教えてください。
内容を読んでもらえればわかると思いますが、別スレの大阪メイン小説を読んでいたら書きたくなってしまいました。
やばいです。微妙にパクッてます。
大阪の兄さん。どうか暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。

55 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:03 ID:???
−TAKA−
 美浜ちよという名の少女がある高校に通っている。
 俺の義妹だ。
 もっとも、彼女はまだ11歳。
 本来であれば小学6年生なのだが、特例中の特例で高校に飛び級。今は高校2年だ。
 俺の友人たちは、俺のことをうらやましがる。
 可愛い義妹がいて、ゆくゆくは恋人だと。
 と、いっても。俺には幼女の趣味はまったくない。
 俺とちよは8歳の年齢差だ。恋愛感情を抱くほうがおかしい。
 彼女は俺の・・・妹なのだから。
「うわ。雨か。そういや、日本は梅雨時期だったっけな」
 俺は中学を卒業して、アメリカの高校に進学をした。
 色々大変だったが、努力の甲斐もあって今はMITの学生だ。
 そして、2年ぶりの帰国。
 羽田空港に降り立った俺は雨の降る外を見ていた。
「タカお兄さん。おかえりなさい」
 外を見ていた俺の背後から声がかかる。
 可愛らしい声だ。
 最後に会ってから2年・・・俺は一日たりともこの声を忘れたことは無かった。
 振り向く。
 声のイメージ通りの可愛らしい姿の少女。
 髪を両側でお下げにし、白いワンピース姿だ。
「ただいま。ちよ」
 美浜ちよ。俺の義妹。
「また、可愛くなったな」
「えへへ。ありがとう」
 少し背も伸びたようだ。
 10歳で高校に入学と聞いて、どうなるかと思ったがどうやら元気でやっているようで安心した。
「さぁ、お家でお父さんとお母さんが待ってますよ」
「そうだな。色々土産話もあるからな、後で聞かせてやるよ」
 俺はちよの小さな手をとって歩き出す。

56 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:04 ID:???
−CHIYO−
 お兄さんが帰ってきた。
 美浜貴洋。私はタカお兄さんって呼んでいます。
 4年前にアメリカに留学して、2年前に一回帰ってきたきり。
 電話も手紙もこっちからしないと、絶対に自分からはしてこないお兄さん。
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」
「あ。ううん。なんでもないです」
 嫌われたのかなとも思ったけど、お兄さんの優しい顔は変わってませんでした。
 お母さんの言うとおりに、忙しかったのと筆不精なだけみたいです。
 大好きなお兄さん。
 お父さんとお母さんの次に大好きです。
 いつも私に優しくしてるところも好きだし、手をつないでいてくれるのも好き。あと、頭を撫ぜてくれるのも。
 こうして電車に乗っている時でも手をつないでいてくれます。
「結構ビルとか増えたな」
「私はあまり知らないけど、友達がまたビルが建ったって言ってましたよ」
「そういや、高校に行ったんだよな。学業は問題ないとして、友達とかはどうだ?」
「えへへ。大丈夫だよ。友達い〜っぱい出来たから」
「そっか。なら安心だ」
「うん。あ、お兄さんにも今度紹介しますよ」
 お兄さんの笑顔が好き。お兄さんの声が好き。お兄さんの全部が大好きです。
 あ、彼女さんとか出来たのかなぁ?
 もし、彼女さんがいるなら私はあまりくっつかないほうがいいかもですね。
 ちょっと寂しいです。
「あれ〜?どっかで聞いた声だと思ったらちよちゃんじゃん。やっほ〜」
「え?あ、ともちゃん」
 前の座席に座っていたのは、なんと同じクラスのともちゃんでした。
 こんなこともあるものなんですねぇ。
 ともちゃんは座席をひっくり返して、私たちと向かい合う形に座席を変えました。
 あ、お兄さんが不思議な顔で私とともちゃんを見ています。
「紹介しますね。クラスメートの滝野智ちゃんです。ともちゃん、こっちは私のお兄さんです」
「へぇ。ちよちゃんにお兄さんいたんだ。ども〜、滝野智でぇす」

57 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:06 ID:???
−CHIYO−
「俺は、美浜貴洋です。よろしく。いつもちよがお世話になってるみたいで」
「あはは。いえいえ、そんなことはありませんよ」
「どっちかっていうと、私が世話をしているような」
「ちよちゃん、言うようになったねぇ」
「は、き、聞こえてました〜!?」
 うぅ。ともちゃんは地獄耳さんです。
「あ、ともちゃんはどうしてここに?」
「あぁ、うちのオトンが出張で北海道に行ったんだ。それの見送り〜」
 へぇ・・・あ。そういえば、ともちゃんのお父さんってどんな人なんでしょう?
 見たことありませんねぇ。
「ねぇねぇ、ちよちゃんのお兄さん」
「ん?」
「彼女・・・いる?」
 あわわわわわ。さっき、私が疑問にしてたことをともちゃんが口に。
 ともちゃんはこういうことが大好きだから油断できません。
「残念ながら。女友達はいるけど、彼女はいないよ」
 お兄さんは肩をすくめて言います。
 なるほど。いいことを聞きました。はっ・・・ともちゃんまさか!?
「へぇ。素材はすごくいいのに・・・ひょっとして性格が悪いとか?」
 確かに。それは私も疑問です。
 って、お兄さんの性格は悪くありません。悪いのはともちゃんの方です。
「そうだ。それじゃあ、私が立候補しようかな」
「ダメです!!そんなの絶対にダメなんです!!」
「ち、ちよちゃん?」
 はっ。えっと・・・あの、私。
「そんな立ち上がってまで否定しなくても。んふふ。お兄さんの幸せ者」
 あうぅ。顔から火が出そうです。
 あっ。お兄さんが・・・頭を撫でてくれました・・・こうされていると、とても幸せな気分になれます。
「いいなぁ。お兄さんかぁ。私もお兄さん欲しかったなぁ」
「えへへ。お兄さんは私だけのお兄さんなんです」

58 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 18:01 ID:???
−TAKA−
「さ、つきました〜」
 俺とちよはタクシーを降りる。
 相変わらずこの家はでかい。
 そういえば、俺がこの家に来てからもう10年以上はたつんだよな。
 俺の両親が死んで、親父の親友だったちよの父に引き取られたのが8歳の時。
「どうしたんですか?」
「いや。相変わらず大きい家だよなと思って」
 丁度ちよが生まれたころのことだった。
 だから、ちよは俺が養子であることを知らない。本当の兄妹だと思っているはずだ。
「お兄さんの部屋はそのままです。あ、シーツとかお布団類はちゃんと洗濯されてますし、掃除もしてありますよ」
「ありがとう」
 俺は荷物を持って二階にあがる。
 お父さんとお母さんの靴が無かったところを見ると、まだ仕事から帰ってきていないようだ。
 俺は懐かしさを感じながら自室のドアを開く。
 ベッドがあって机があって。本棚やタンスがある。
「ん〜・・・やっぱここはいいなぁ」
 俺は荷物を置いて上着を脱ぐとベッドに横になる。
「あれ?これは・・・」
 ベッドと壁の隙間に何かが落ちている。
 白い布?
 ほほう。これはひょっとして。
「お兄さ〜ん。お父さんとお母さんはあと1時間で・・・って、あわわわわわ、な、何を持ってるんですか〜!」
 俺はその白い布を広げてちよに見せていた。
 ペンギンのワンポイントの入ったそれは、ちよのパンツだと思われる。
 それはちよによって奪われ隠された。
「むぅ」
「なんで、こんなのが落ちてるんだ?」
「・・・寂しかったときに・・・お兄さんの部屋で寝たから・・・」
 うつむいた顔が紅い。
「そか。ちよ。こっちにおいで」
 俺はちよを抱きしめる。俺の鼻腔をちよの甘いにおいが突き抜けていった。

59 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 18:01 ID:???
−TAKA−
「休みは短いけど、休みの間は一緒にいような・・・寂しい思いをさせてごめんな」
 ちよが頷く。
 頭もよくて高校生のちよだけど、やっぱりこういうところはまだまだ子供だな。
「お兄さん」
「ん?」
「今日は一緒に寝ていい?」
「いいぞ」
「一緒にお風呂に入ってくれる?」
「もちろん」
「・・・・・・嬉しいです」
 そうだよな。
 やっぱりちよは子供なんだ。自分よりも5歳も上の人たちに囲まれて過ごして。
 不安や寂しさや辛さがないはずがないんだよな。
 少なくとも俺がいる間だけでも、それが和らいでくれればいいな。
「そういえば、お兄さんはいつまでいるんですか?」
「えっと、今日が土曜だろ?2週間はいれるから・・・再来週の土曜までだな。日曜の朝の便で帰るから」
「2週間・・・うぅ。やりたいことがいっぱいあって全部できないかもです」
 ちよは、俺の部屋の本棚から雑誌を取り出す。
 レジャーランドの雑誌のようだ。
 俺の本じゃないな。ま、ちよがここをよく使っている証拠のようなものだ。
「えっと。ここも面白そうですし、こっちもいいですよね。あ、でも・・・」
 一生懸命に雑誌を読んでは折り目をつけている。
 そんなちよを見ているとどうにも微笑ましい雰囲気になってしまう。
「あ。私の顔に何かついてます?」
「いや。楽しそうだなって思って」
「楽しいですよ。お兄さんと出かけるなんてめったにないんですし」
「そうだな。よし、じゃあ俺も片付け終わらせてちよと計画を練るか」
「はい!」

60 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 18:01 ID:???
−CHIYO−
「ふぅ。いいお湯です」
「くく。なに年寄りみたいなこと言ってるんだ」
「そんなにお年寄りみたいな言葉ですか?」
 浴槽にはられた真っ白なお湯。
 普段はこんな入浴剤は入れないんだけど今日は特別です。
「うへ。真っ白だな。これじゃあ何も見えないぞ」
「見えないって何を見るつもりですか?」
「もちろん、ちよのおっぱいがどれだけ成長したのかをだな」
「入浴剤を入れて正解でした」
 お兄さんも湯船につかる。
 本当に入ってしまえば、自分の手すら見えないくらいに真っ白です。
「やっぱ風呂はこうだよなぁ」
「??」
「俺の住んでる場所、ユニットバスなんだけどさ。浴槽が狭くて狭くて。向こうはシャワーが多いから広さは必要ないんだと」
「あぁ。なるほど」
 そうは言っても、お兄さんは背が高いから特別な気が。
 あ、でも、アメリカの人ならお兄さんと同じくらいの背の人はいっぱいいますよね。
 じゃあ、やっぱり狭いのかな?
「温泉に行きたいなぁ。紅葉に囲まれた露天風呂・・・日本の風物詩だよな」
「そうですね。露天風呂って気持ちがいいです」
「・・・ちよ。こっちにこい」
 きゃっ。抱きしめられました。
 さっきと違って裸だから、少しドキドキします。
「あっ」
「ん〜。こっちはあんまり成長してないなぁ」
「お、お兄さん・・・」
 お兄さんの手が私の胸の上で。
「バカバカバカバカバカバカ」
「いてててて。桶でたたくな、悪かったよ」
 もぅ。お兄さんがこんなにエッチになってたなんて。注意しないといけませんね。

61 :名無しさんちゃうねん :2005/05/28(土) 00:14 ID:EUT3sCR6
>>60
GJ!!

62 :名無しさんちゃうねん :2005/05/28(土) 00:24 ID:???
>>60
つ・づ・き!!つ・づ・き!!続きキボンヌ!!

63 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:35 ID:???
−CHIYO−
「・・・なので昨日はすごく楽しかったです」
「おぉ。あのお兄さんとか」
 昨日はお父さんとお母さんとお兄さんと4人で遊園地に行ってきました。
 忠吉さんはお留守番です。
「へぇ。よかったじゃないか」
「えぇなぁ。私も遊園地に行きたかったなぁ」
 今はみんなにお土産を渡しています。
「そんなにいい兄ちゃんなんだ。どんな人なんだ?」
「えへへ。見ますか」
 私のカバンの中には昨日撮ったデジタルカメラが入っています。
 カメラのデータにはお兄さんの写真もいっぱいです。
 これで、お兄さんが帰っても寂しくはありません。
 でも、最初だけかもしれません・・・
「ちよちゃん?」
「あ、す、すみません。えっと、この人です」
 みんなが覗き込みます。
「へぇ。結構かっこいいな」
「・・・うん」
「榊さんほどじゃないですけどね」
「隣に住んでた松永さんにそっくりや〜」
「いいなぁ。こんなかっこいい兄ちゃんがいてさ」
「ふふん。どうだ」
「どうして、そこで智がいばるんだよ」
 えへへ。みなさんがお兄さんを褒めてくれると私もうれしいです。
「いつまでいるんだ?」
「えっと、再来週の日曜の朝の便だって言ってました」
「よっしゃ。その前に一回会いに行くで〜」
「おぉ。大阪にしては珍しくいい案だな」
「はい。ぜひ会いに来てください」

64 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:35 ID:???
−TAKA−
「貴洋くん。どうだい一杯」
 お父さんがブランデーをすすめてくる。
「酒は二十歳になってからですよ」
「家に居る時くらいは気にするな」
 俺もアメリカでは飲んでいたから別に酒を飲むことには問題はない。
 お父さんの向かいのソファーに腰掛ける。
「ちよは寝たのか?」
「えぇ。先ほど」
 グラスの中の液体に口を含む。
 口の中が熱くなってくる。
「そうか。じゃあ、丁度いい機会だ。帰ってきて1週間たったしな・・・聞いておきたいことがあったんだ」
「なんですか?」
「君が家に来て10年ほどか」
「えぇ。今まで本当にありがとうございます」
 俺は心から感謝している。
 俺のことを本当の子供のように育ててくれたお父さんとお母さん。
「時に貴洋くんは、ちよのことはどう思ってるのかね?」
 聞かれた。いずれそういう質問がくるだろうと思ってた。
「ちよとは血が繋がっていないんだ・・・もし君が」
 ちよは確かに可愛い。
 だけど、10年以上妹として接してきたんだ、いまさら。
「俺はちよのことは妹としか思っていません・・・それ以上でもそれ以下でも」
「・・・そうか・・・ちよ?」
「え?」
 俺は後ろを見る。
 リビングのドアが微かに開きそこからちよの顔が覗いていた。
「あ、あの・・・盗み聞きとか・・・じゃなくて、あの」
「ちよ。今度ゆっくり説明する。今日は寝なさい」
「あ・・・はい」
 俺は・・・寂しそうな顔のちよに何も言えなかった。

65 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:36 ID:???
−CHIYO−
「おはよ〜・・・!?ちよちゃんウサギさんや!!」
「え?」
「目が真っ赤やで?何かあったん?」
 昨日は一睡も出来ませんでした。
 お兄さんはお兄さんじゃなくて・・・でも私は妹で・・・
「・・・何かあったのか?」
「あ、榊さん・・・いいえ、ちょっと心配事あっただけです。今は平気です」
 平気・・・です。
 心配ではありますけど、私にはどうすることもできません。
「ちよちゃん・・・今日、放課後時間・・・ある?」
「あ。はい。大丈夫ですけど」
 榊さんが私を誘ってくるなんて珍しいです。
 その日、私は勉強が身に入りませんでした。
 お兄さんのことだけが頭の中をグルグルと回ります。
「ちよちゃん・・・一緒に帰ろう」
「あ。はい」
 今日は榊さんと一緒にどこかに行くのでした。
「どこに行くんですか?」
「・・・もうすぐ」
 私は榊さんと一緒に公園にやってきました。
「修一」
「あ、姉ちゃん」
 ブランコのところに男の子が居ます。
 あれ?どこかで見たことがあるような。
「・・・ちよちゃん。弟の修一」
「あ。美浜ちよです・・・はじめましてじゃないですよね」
「覚えててくれたんだ。よかった。俺は榊修一。小4の時に一緒のクラスだったんだぜ。まぁ、ほとんど話とかしてないけどな」
 あ、そういえば。
「先生にイタズラして怒られてた榊くん?」

66 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:36 ID:???
−CHIYO−
「うわ。そういう覚え方か。でも、まぁ・・・その榊だ」
 そっか。榊くんのお姉さんが榊さんだったんですね。
「えへへ。久しぶりですね。元気でしたか?」
「あ、お、ぉぅ」
 榊くんは顔が赤くなってうつむいてしまいました。
 あれ?さっきまで近くにいた榊さんがいません。
「あ、あのさ・・・美浜って今・・・つきあってるヤツとかいるか?」
「え?あ・・・」
 お兄さん。
 あ、あれ?どうしてお兄さんの顔が。
「い、居ません」
「そ、そうなのか。えっと、あっと・・・なんていうか・・・あのな」
「ん?」
 何の用事なのでしょう。
「あのさ。お、俺と・・・付き合ってくれないか?」
「え!?・・・えぇぇぇぇぇ!?
 付き合うって、あの、それは、遊びに行くとか・・・あのあの。
「へ、返事はすぐじゃなくていいんだ。あ、ご、ごめんな。じゃあ、またな」
「あっ」
 榊くんが走って行ってしまいました。
 ・・・私は・・・どうすればいいのでしょう。

67 :名無しさんちゃうねん :2005/05/29(日) 09:29 ID:???
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━

68 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:24 ID:???
−TAKA−
「ただいまぁ。あれ?」
 玄関に見慣れない靴がある。
 大きさはちよのよりも少し大きい程度。けど、男の子の履くような靴に見える。
「あら、貴洋さんお帰りなさい」
「あ、お母さん。お客さん?」
「えぇ。ちよのボーイフレンドみたいなの。ちよったら、違うって言うけどきっと間違いないわ」
 ちよのボーイフレンドか。
「確かにちよにもいてもいい年頃ですものね」
「えぇ。ただ、お父さんがなんて言うか」
 心配はしているようだが、娘に彼氏が出来たことの方がうれしいらしい。
 顔が笑ったままだ。
 ふむ。丁度いいかな。
「お母さん。お話しがあるんですけど」
 ・・・
 俺は部屋に戻って周りを見る。
 といっても、ベッドとタンスと机。あとはラジカセなどの小物類しかないのだが。
「ん〜・・・今のベッドとタンスは借り物だからこれをもっていくとして。小物類は処分かな」
 そんなことを考えながら俺は携帯電話をとる。
「今日が火曜だから、金曜の午前中までにっていうと時間がもうないな。けど、今はシーズン外だしどこかあるだろ」
 手に持った電話帳を机に置いてページをめくる。
 さて、今日から忙しくなりそうだな。

69 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−CHIYO−
 あれ?
 私の家の前に停まっているトラック、お兄さんの机を載せていたような。
「では、これで」
「はい。ご苦労様でした」
 お母さんに挨拶した男の人とすれ違う。
 宅配業者さん?
「ただいま。お母さん、今のはなんですか?」
「あら、ちよ・・・おかえりなさい」
 少しお母さんの顔が暗い気がします。
「トラックの中にお兄さんの机が見えたんですけど」
「・・・ちよ。お兄さんねアメリカに行ったの」
「え?でも、帰る日って日曜の朝じゃ」
「帰ったんじゃなくて、向こうに行ったのよ。ちよ宛に手紙を預かってるわ」
 手紙?
 私はとても嫌な予感がしました。
 この手紙を読んでしまったらお兄さんとの関係が全て崩れてしまうんじゃないかっていう予感が。
 けど、読まないとダメですよね。
「ちよ。家に入ってから読みなさい」
「あ、はい」
 私は重い足取りで二階にあがります。
 机に向かって手紙を・・・読みたくはないのですけど。
「・・・ちよへ。この手紙をちよが読む頃には俺はもう日本には居ないと思う」

70 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−TAKA−
 ちよへ。
 この手紙をちよが読む頃には俺はもう日本には居ないと思う。
 黙って出てしまってすまない。本当は、ちよにも言っておくべきだったと思う。
 けど、俺はどうも意気地がないらしい。こんな形での報告を許して欲しい。
 俺がちよの本当の兄じゃないことはもう知っていると思う。
 お父さんはもっと別な形でちよに教える予定だったみたいだけど、突然のことで驚いただろう。
 この家の本当の子じゃないのは俺だ。
 だから、俺は家を出ることをあらかじめ決めてたんだ。
 ちよを俺が守らなくてもよくなったら。そう決めてた。
 先日、ちよに彼氏が出来たのを聞いた。
 同い年くらいだけど、きっとちよを守ってくれるような相手になると思う。
 それに、そろそろ俺も妹離れしないといけないと思ってたところだったから。
 ちよはとっくに兄離れしてたのに、情けない兄でごめんな。
 俺の方が整理ついたら、また会いに行くよ。
 ちょっと変な文章になったけど、すまない。
 俺のほうでも少し急なことでまだ気持ちが落ち着いていないんだ。
 じゃあ、バイバイ。

71 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−CHIYO−
「・・・お兄さん・・・」
 あ、あれ。涙が・・・止まりません。
 お兄さんの手紙が濡れちゃう。
 っく・・・ひっく。
「くぅ〜ん」
「忠吉さん・・・そう・・・ですよね。お散歩・・・行きましょう」
 今は何も考えたくありません。
 お散歩に行って気分を変えるのもいいかもしれません。
 ・・・変わらないかもしれませんけど。
「じゃあ。行きましょうか」
 ・・・
「ちよちゃん」
 あ。榊さん。
「・・・何かあった?」
「うっく・・・ひっく・・・えっく」
 ・・・
「落ち着いた?」
「はい」
 私は榊さんから体を離して涙を拭きました。
 あ、榊さんの服が私の涙で濡れてしまいました。
「お兄さんが・・・行ってしまったんです」
「・・・そうだったんだ。ひょっとしてと思ったけど」
「え?」
「昨日の夜。散歩していたお兄さんに会って、少し話をしたから」
 そうだったんですか。
 榊さんは少し戸惑ったような感じでしたけど、私に昨日の夜に話をしたことを教えてくれました。

72 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−SAKAKI−
 ん?あれは確か。
「あ、あの・・・」
「え?あぁ、君は確か・・・ちよのクラスメートの」
「あ。はい。榊です」
「こんばんわ。散歩かい?」
 私の前にちよちゃんのお兄さんががいる。
 私よりも背が高くてすらりとした男性。
 物腰も柔らかくて優しくて、もっと、前に会ってみたかった。
「いえ・・・コンビニに買い物です・・・お兄さんは?」
「そっか。俺は適当にプラプラと。女の子の一人歩きには時間が遅いから送るよ」
「あ。ありがとうございます」
 いつもなら男の人にこんなことを言われたら絶対に断るのに。
 なぜか今は素直に従ってしまった。
 ・・・買い物も済み、でも全然会話が進みません。
「あのさ。ちよのことよろしく頼むな」
「え?」
 急に声をかけられて思わず立ち止まる。
「俺はもうあいつの側には居られないから」
「けど」
「君がちよの友達の中で一番頼りになりそうだからさ」
 そう言ったお兄さんの顔は少し寂しそうな笑顔だった。
 けど。お兄さんはアメリカに帰ってしまうんだ。だから、なのかもしれない。
 ふと私の頭にあることがよぎった。ひょっとして。
「お兄さんは、ちよちゃんが好き・・・なんですか?」
「兄だからね」
「・・・兄妹じゃなくて、男女として・・・です。お兄さんが恋人をつくらなかったのはひょっとして」
 お兄さんは私に背中を向けて歩き出す。
「さぁね。もう、ここでいいだろ。じゃあ・・・ちよのこと頼むな」
 肩越しに振り向いたお兄さんの顔は、先ほど以上に悲しさと笑顔の混じったそんな顔だった。

73 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:26 ID:???
−CHIYO−
「そんなことがあったんですか・・・」
 私は考えたことがありませんでした。
 お兄さんが私のことをなんて。
「榊さん・・・みなさんには内緒にしてくださいね・・・私とお兄さんは血が繋がってないんです」
「・・・義兄妹・・・なんだ。そっか。それなら」
 榊さんは夕日にしずむ町を見ている。
「ちよちゃん・・・ちよちゃんの気持ちはどうなの?」
「私の気持ち?」
「うん。お兄さんのこと・・・どう思ってるの?」
「私は」
 私は・・・お兄さんのことが。
 お兄さんのことが。
「好きです。大好きです。ずっと・・・ずっと一緒にいたいです」
 そう言った時の榊さんの表情はとても暖かいものでした。
「なら、会いに行けばいい」
「でも・・・お兄さんは」
「大丈夫。ちよちゃんの願いはきっとかなうよ」
 私の願い。
「はい!榊さん。ありがとうございます・・・あ、榊くん・・・」
「うん。ちよちゃんは、笑顔の方がいい。あと、修一のことは気にしなくて言い・・・私から言っておくから」
「いえ。帰ってきたら私が言います」
 えへへ。
 明日は土曜日です。
「明日、お兄さんに会いに行ってきます」

74 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:27 ID:???
−TAKA−
「はぁ・・・」
 本日十回目の溜息。
 先日榊さんに言われてわかった。
 俺はちよのことが好きだったらしい。
「はぁ」
 本日十一回目。
 ロリコンなのか俺は?
 あぁ・・・それだけは認めたくはないのだが。
 ちよが好きだってのは、間違いないよなぁ。
 いや。まてよ。俺が好きなのは不特定多数の女の子じゃなくてちよだけなんだし。
 ならロリコンじゃないな。うん。
「はぁ」
 本日・・・・・
 好きだとわかったとたんに失恋か。
 ピリリリリリリ。
 誰だ?俺がこんなに早くこっちに戻ってきてること誰にも言ってないはずだけど。
 ピリリリリリリ。
「はいはい今開けます」
「・・・お兄さん」
 ちよ?
 やばい。幻視じゃないだろうな。
 そんなわけはないか。いくらなんでも。
「えへへ。遊びに来ちゃいました」
「どうして」
「・・・お兄さん。ふつつかものですけどよろしくお願いします」
「へ?」
 どうして、ちよが俺に頭を下げるだ?
「お兄さん。ちよをお嫁さんにしてください」
「・・・ちょ、ちょっと待て。どういうことだ?」
「私は・・・私はお兄さんが大好きです」
 その日。俺とちよは・・・義兄妹から恋人になった。

75 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:27 ID:???
−CHIYO−
「ちよちゃん留学するんやよね」
「はい。アメリカの知り合いのお家に住まわせてもらいます」
 えへへ。
 お兄さんの家に住まわせてもらうのです。
 来年からはずっと一緒です。
「・・・なぁなぁ」
「なんですか?」
「ひょっとして、去年来たお兄さんか?」
 う。大阪さんてば、たまにするどいですよね。
「はぁ。ちよちゃんにも春が来てるんやなぁ。私もガンバらなあかんな」
 大阪さん。結構人気あるのに、本人が気づいてないからなぁ。
「ちよちゃん、がんばろな」
「はい!」
「まずは、私は大学受験や・・・彼氏つくるよりも難しいかもしれへんなぁ」
「あ。あははは・・・」

(完)

76 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:29 ID:???
長・・・長い作品ごめんなさい。
昔の少女漫画とかのオーソドックスパターンかな。
しかも、64-66までのタイトルが間違ってるし。
義兄弟じゃなくて義兄妹です。義兄弟だとちょっとヤバイ感じ。
では。長い作品にお付き合いいただきありがとうございました。

77 :名無しさんちゃうねん :2005/05/31(火) 19:08 ID:McEBvBo2
>>76
すっごく乙_〆(゚∀゚*)

78 :ペンギンダンス :2005/06/01(水) 00:52 ID:???
巧いなー(;゜∀゜)=3 
なんか胸がキュンときました。乙です。

79 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/06/01(水) 19:29 ID:0FjnkBnw
>>76
青春ってかんじですねぇ。
GJ!

80 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/01(水) 20:41 ID:???
乙です!面白かったっす!!ゴチソウサマ――

81 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/06/04(土) 08:46 ID:IGS2QQ0c
かなり遅れましたが、
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081700484/827-829
の続きですよ。

82 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/06/04(土) 08:48 ID:???
「ちよちゃん、がんばれ。あと少しだからな……」
皆が来るまで、ちよちゃんを見守っていた。
息はしてるから大丈夫だ。まだ間に合うって自分に言い聞かせながら。
「ちよちゃん!」
一番に救急箱を持った榊さんが駆けつけてくれた。
「榊ちゃん!早く解毒剤!!」
「わかってる!!」
中にはメスとかいろんなのが入ってるけど、その中から注射器を取りだして、なんかの容器に突き刺して、中の液体を吸い出している。
そうか、あれが解毒剤か。
で、ちよちゃんの腕に打った。
「どう?」
「多分大丈夫。ともが毒を吸ってくれたんだろ?だからそんなに酷い事にはならないと思う」
これでこれで安心できた。
「よかったぁ」
「ああ……」
いつのまにか皆が私の後ろに集まっていた。
「まぁ、あとはちよちゃんを別荘に運べば終わりだしな!」
「そうね」
ふと気づいた。
皆どこか悲しそうだ。まだ、ちよちゃんが意識戻らないからかな?
まぁいいや。気のせいだ気のせい。
ところで、何か忘れてるような気が……
「そうだ!私も海蛇に噛まれたんだ!!」
ちよちゃんのことですっかり忘れてた。このままじゃ私も死んじゃうところだ!!
「お前…… 本当に気づいてないんだな……」
え?よみ、何言ってんだ?
「もう私でもどうしようもなかったんだ……」
榊ちゃんも。
「本当におっちょこちょいね…… あ、あんたって……」
かおりんまで!?
「何だよ!私がどうしたんだよ!?」
「とも、手をかざしてみなさい」
なんかいきなりトンチンカンな質問だけど、かおりんに言われて左手を夜空向かってかざした。
「はいよ」
なんでこんなこと?べつにどーってことないじゃん
「あんた、本当に鈍いのね……」
へ?何が?
「じゃぁ手を私に向かってかざして、良く見ろ」
「よみ!!それは―――」
「いいんだ…… そのほうがとものためだ」
まったく、私の手に何かついてるの?
まぁわかんないけど私は手を見た。
「!!!!」
手によみの顔が映ってた。いや、よみの顔が透けて見えてる
何これ!?どうなってんだよ!?
「な、なんだよこれ!?」
まさか……まさかまさか、私……

83 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/06/04(土) 08:49 ID:???
「もう、わかっただろ……」
今度は神楽が後ろにいた。涙を零しながら、こっちを見てる。
神楽の両肩から腕が垂れ下がっている。
つまり誰かを背負ってるってことだけど、メンバーは全員ここにいる。ってことは―――
「神楽…… もう、覚悟できてる。だから―――」
神楽の持ってるのが“誰か”くらいわかるよ。怖いよ。それを見るのが……
けど…… 見なかったらどうこうなることはないんだよな……
「ほら……」
器用にその“誰か”を手前にもってきて、お姫様だっこで私のほうに向けた。
いっつも一緒にいて、別々になるなんて夢にも思わなかった。
無茶する私にいっつも耐えてくれた―――私の身体(からだ)。
毎日鏡で見ている姿がそこにあった。嘘みたいだけど―――死んじゃってるんだ。
もう、私は…… 死んじゃったんだよな。
あの時だ。別荘の前で転んだ時。あそこのあと全力疾走したのに、辛いどころか、体がフワフワしてたし。
「笑って…るんだぜ。いかにも…お前らし……っい死に方じゃっ……ねーかよ……」
なんで…… 笑ってるんだ?毒でフラフラになって…… なんで?わからない。
けど、満足したからじゃないかな。ちよちゃんを助けられたから。
別に自分の命がどうこうなんて思ってなかった。ただ、ちよちゃんがこんな悲しい中で死んでほしくなかった。ただ、それだけ……
「なぁとも……」
「何だよ?」
よみの声が震えてる。こんなに悲しそうまよみ見るの、大阪の時以来だ……
「満足……してるか?今まで……」
「ああ!」
そりゃぁもちろん―――
「大満足だ!」
大笑顔で返してやった。だって別に死んじゃったのは私だけだし、悲しむ事はないよな。
「そりゃぁこれからお前たちと喋れなくなるのは悲しいよ。
 でもさ、お前たちの事ずっと見守ってやれるし。御用とあれば、ムカツクやつらを呪い殺してやってもいいぜ」
よみのやつ、クスッって笑って―――
「そうか。ならいい」
って言った。
私も、大阪のところに行く事になったんだ。もう、こっちの人間じゃない……
「わっ!」
「うわぁぁぁぁっ!!」
な、なんだ!?
「あはははははは。変わらんなぁ、ともちゃんも」
この声、この大阪弁、このおっとり感、そして何よりもこの感覚……
「大阪ぁっ!!」
約束、守ってくれた。
会いに来てくれた。
「もう、ともちゃん。死ぬの早すぎやで!」
そう言いながら、私の胸――結構成長したんだぞ――に抱きついてきた。少し、涙声だ……
「なに泣いてんだよ〜〜〜。お前らしくねーぞ!」
「だって、ともちゃん死んでもうたんやで!」
「別にさぁ、人間いつか死ぬんだから〜〜〜。それに大阪だって死んでるじゃん。くよくよしてたってしょうがないし」
嘘じゃない。本当にそう思ってる。
だって私が死んでも、皆がそう考えてほしいから。悲しんでほしくないから……

84 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/06/04(土) 08:51 ID:???
「でも、私が死んだとき、ともちゃんやって泣いとったやん!」
大阪の抱きしめる力が強く――てか、もともとこいつ力弱いけどな――なった。
「そ、それは―――」
「まぁええ。お願いや。このままもう少しだけ……」
「ああ……」
綺麗言かもしれないけど、言葉なんて要らない。
お互いに理解しあえてるつもりだし、満足しあえればそれでいいんだ。
「っと、大阪……」
「ん?どないしたん?」
大阪が私を見上げる。
改めてみると、皆がこっちを見てる。
「お前も大阪も、本当にかわんねーな」
「ほんと、死んだなんて思えない」
「別に、女同士で愛し合うのは悪い事とは思わない」
「これなら、あっちの世界でも安心だな」
あわわわわわ。こ、これはかなり恥ずかしいぞ。
「あの、こーゆーことは成仏してからにしよう、な」
大阪をゆっくりと離らかした。
「せ、せやな」
大阪もかなり赤面してる。やっぱ、皆の前でこんな大胆なのは…… やっぱりなぁ。
「あー、成仏で思い出した。私、ともちゃんを成仏させにきたんや」
「ってことは、お迎え?」
「せやねん」
そっかぁ……
やっぱりこのままここにいるってのはダメだな。
「49日間だけこの世にいれるんやけどな。その前にともちゃんをふつーの人には見えへんようにせんとだめやねん」
へー。そうなのかぁ……
「ちょっと寝過ごして遅れてしまったんや」
……おい。
「なぁ、最期にもう少し時間くれよ。皆に一言ずつ…… な?」
「あ―――、そんなことしたら役人さんに怒られてまうんやけどなぁ……」
天国にも役人いるのか。やっぱり無理だよなぁ……
「まぁええで。ともちゃんの頼みやさかいなぁ。怒られるのはゆかり先生ので慣れとるし」
やったぁ!
やっぱりさぁ、最後くらいはけじめつけてきたいよな。
けど、もうこれで最期…… なんだよなぁ……

85 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/06/04(土) 08:59 ID:???
>>82-84
リアルで見ました。


86 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:32 ID:???
>>82-84
乙です。最後がどうなるのか気になるところです。
頑張ってください。

新作できました。一応、続くと思います。

87 :春の日を歩む2人(1) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:33 ID:???
「あんな。私、好きな人できたんや」
 佐伯雄一の手から箸が転げ落ちる。
「どうした?」
「あ、いや・・・なんでもない」
 友人の長谷川にはそう言ったが、佐伯の顔には動揺の色が出ている。
 もちろん、それは大阪こと春日歩の好きな人発言によるものだ。
 佐伯の後ろの席では、春日がいつものグループと一緒に昼食をとりながら雑談をしている。
「5組の大河内くんや」
「へぇ、大阪ってあぁいうのが好みなのか」
「ダメダメ。大河内はもっとマジメでかっこいい、そう榊ちゃんみたいな女性が好きなんだって」
「えぇ?わからんやん。ひょっとしたら私のこと」
 大河内誠。
 高校2年生にしては小柄な体と中性的な顔立ちで、学年問わずファンが多い。
「でな、実は生まれて初めてラブレターだしたんや・・・今日の放課後裏庭でって」
「うわ!ベタだ!!昭和のベタベタ女がいるぞ!!」
「とも・・・うるさい。そうか。うまくいくといいな」
「そうですね。大阪さん、頑張ってください」
「おおきに〜」
 そこから彼女らはまた別な話にうつる。
 テレビやファッションの話などに。
「大河内ねぇ・・・佐伯とは正反対だな」
「うるさいなぁ。てか、何の話だよ」
「バレバレ」
 長谷川はニヤリと笑う。

88 :春の日を歩む2人(2) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:34 ID:???
「ごめん。俺・・・好きな人いるから」
 大河内が中庭から去ってゆく。
 一人取り残された春日。
 いつものように笑顔だがどこか物悲しげな雰囲気をかもし出していた。
「・・・あはは・・・ふられてもうた」
 春日はとぼとぼと歩き出す。
 中庭を抜ける校舎の角。
「ひゃん」
「っと」
 丁度中庭に入ろうとしていた佐伯と戻ってきた春日がぶつかる。
「えく・・・えっく」
 佐伯の胸の位置がかすかに湿ってゆく。
「春日・・・」
 その一瞬で佐伯は悟った。
 春日がふられてしまったことを。
「・・・っぅ・・・かんにんな。見ず知らずの女にこんなことされて困ったやろ」
 少したって、彼女の涙声が聞こえてくる。
 どうやら春日はまだ佐伯だと気づいていないらしい。
「あ・・・あれ?」
 顔をあげて佐伯の顔を見る。
「えっと。同じクラスの・・・」
「佐伯雄一。一応去年から同じクラスなんだぜ」
「佐伯君・・・えへへ、かっこ悪いところみられてしもうたな」
「無理に笑わなくっていいって。なんとなく、理由は知ってるから。辛かったら泣いたって誰も責めねぇよ」
 春日の目に大粒の涙が浮かぶ。
 しかし、その顔は先ほどの悲しい笑顔とは違う。いつもの春日の笑顔に戻っていた。
「おおきにな。あ、用事あったんちゃうん?」
「え?しまった。備品取りに来たんだった。じゃ・・・あ、春日って可愛いからすぐにまた、いい人見つかるって」
「あはは。佐伯君って優しいなぁ。ほなら、部活頑張ってな」

89 :春の日を歩む2人(3) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:34 ID:???
「で?」
「で、ってなんだよ」
 長谷川が牛乳を飲みながら佐伯に聞く。
「その後は?ちゃんと家まで送って帰ったとか」
「だから、部活で使う備品取りに行ったって。これでも俺は野球部だぞ?」
「かぁ。それじゃあ、ダメだろ。もっとアプローチしないと。ふられて悲しんでいる彼女をだな」
「いいんだよ別に・・・それに、そういうのは卑怯な感じがして俺は嫌いだ」
「はいはい。まぁ、名無しから友達Eランクになっただけマシか」
「なんだよ友達Eランクって」
「名前を知ってるだけのただのクラスメート」
 佐伯が渋い顔になるが、当たっているだけに反論は出来ない。 
「そういや、そのお目当ての春日はどこだ?」
「今日は天気がいいから屋上だろ?」
 佐伯の読み通りに春日たちは屋上でお弁当を食べていた。
「そうなんですか」
「だから言ったじゃん。大河内は」
「お前は黙ってろ」
「あはは。でもな・・・えぇねん。ちょっと気になる人・・・いたから」
「なにーーーーー!?昨日の今日でか?誰だ」
 羽交い絞めにしていた水原を振りほどき、滝野が春日に詰め寄る。
「えへへ・・・内緒や」

90 :春の日を歩む2人(4) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:40 ID:???
「でな、新しい水着買おうと思うとるんやけど」
「いいじゃんいいじゃん。よっしゃ、アタシも買いにいくぞ〜」
 7月初頭の朝。
 外ではセミが鳴き、初夏の日差しがじりじりと肌に食い込んでくる。
「春日の水着姿か・・・見てみたい」
「へ?いややわぁ。そんなえぇもんでもないで」
 春日が顔をあからめて、佐伯の方を向いてはにかむ。
「のあ。春日!?心を読めるのか?」
「アンタ、思いっきり口に出してたし」
 席替えがあって、春日と佐伯が隣の席になってからというもの、春日と佐伯はよく話をするようになっていた。
 それはありがたかったが、どうにも滝野や水原は苦手対象なため、差し引き0と言ったところだったが。
「それにアンタ、水泳の授業で見てるじゃん」
「はぁ?授業ってスクール水着だろ。そうじゃなくて、普通の水着の春日を」
 佐伯がさも当たり前のように言ったのを見て、滝野が深いため息をつく。
「はぁ、わかってないなぁ。ひょっとして、あんたブルマ否定派?」
「ブルマ?別に肯定も否定もしないな。運動はしやすそうだけど転んだりすると危なそうだし」
「これだから根っからの体育会系はダメね。萌えがわかってないわ」
「燃え?」
「萌えよ!萌え!草冠に明るいで萌え」
 間に春日を挟んで、佐伯と滝野が口論を始める。
 まぁ、一方的に滝野が熱くなっているような気もするが。

91 :春の日を歩む2人(5) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:40 ID:???
「あのね。スクール水着もブルマももう日本の遺物なの。ありがたがられこそすれ、煙たがられる言われはないわね」
 滝野の物言いに、周りの男子生徒がうなずく。
「萌えは日本発祥の日本の新しい文化。経済効果だってあるんだから」
「そうなのか?」
「え?あ・・・はい。ニュースでそんなことを言ってましたけど。私もよくは知りません」
 佐伯に聞かれ美浜が答える。
「そんなの常識よ常識」
「お前の常識は少し偏ってるだろ」
 冷静な突っ込みの水原。
 だが、いまだに佐伯には萌えと言うのがよくわかっていない。
「アンタは・・・大阪の水着が見たいって言ってたわよね。てことは、ペタ胸萌えの天然萌えね」
「なんだそりゃ」
「ペタ胸て・・・私、そこまでちっこくは無いと思うんやけど」
「だって、大阪の属性ってそれくらいだし。あとボンクラ属性?」
「それはともちゃんもやんか」
 結局萌え討論は担任がホームルームにやってきて終了した。
 かに見えたのが、佐伯はその日の休み時間全てを使って、滝野と長谷川の2人にじっくり萌えについて教え込まれていた。

92 :春の日を歩む2人(6) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:40 ID:???
「あかん・・・東京の夏は暑くてかなわん」
「はい、アイスです」
「おおきにな〜」
「サンキューちよちゃん」
 日曜の昼。
 春日と美浜と滝野は水着を買うためにショッピングモールに来ていた。
 水原と榊は別な用事が、神楽は部活でそれぞれ今日は来ていない。
「夏だなぁ」
「夏やねぇ」
「夏ですね」
 七月も中旬となれば暑さもかなりのものだ。
 テストも終わり、あとは夏休みを待つだけといった気持ちの学生がいっぱいだろう。
「あ〜。野球やっとる〜」
 ショッピングモールから見える都営市民球場。
 そこで丁度野球の試合が行われていた。
 外から見える電光掲示板に試合状況が書かれている。
「あれ?私たちの学校ですよ?」
「あ、ほんまや」
「ちょっと見ていくか?」
「さんせ〜」
 ・・・・・・
「負けてるな」
「最終回で一点差。2アウト2塁」
「おぉ。ちよちゃん頭えぇ・・・で、どうすれば勝てるん?」
「外野を越えるヒットが出れば同点になると思います。あとはホームラン」
「おぉ!ホームラン。バースや!!バースを呼ぶんや〜」

93 :春の日を歩む2人(7) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:41 ID:???
 選手がバッターボックスに入る。
 最終バッターとなるか、同点・逆転のバッターとなるか。
「あれ?私たちのクラスの佐伯さんじゃないですか?」
「ホンマや。佐伯君や」
「へぇ、2年なのにレギュラーじゃんか」
 マウンド上のピッチャーは素早いモーションでキャッチャー目掛けてボールを放つ。
 鈍い音と共に高く舞い上がるボール。
 キャッチャーがマスクを取り上を見上げる。
 だが、ボールはバックネット裏へと落ちていった。
 佐伯は安堵のため息と共にバットを構えなおす。
 その表情は真剣で少し気負い気味にも見える。
「危なかったですねぇ」
「ほら、大阪。応援してやれよ」
「よっしゃ。佐伯く〜ん!!気合やで〜!!きばりや〜!!」
 佐伯が声の方向を見て一瞬驚きの表情を見せる。
 だが、すぐに笑顔になり主審にタイムをかける。
 天を仰ぎ大きく深呼吸。
 バットを構える佐伯の顔は余裕と自信の表情へと変わった。
 ピッチャーはそれに怒りを覚えたのか、ランナーを気にせずに大きく振りかぶる。
 放たれたボールは先ほどよりも勢いのあるストレート。
 直後。
 甲高い金属音が球場に響き渡り、白球はバックスクリーンに突き刺さる。
「やりました!!」
「おぉ〜」
「いぇい。勝ちだ勝ちだ」
 佐伯がダイアモンドを回り、ホームに戻ってくるとチームメイトたちが出迎えてくれた。
「にしても、佐伯も現金なやつだねぇ。大阪の応援一つでこうも変わるなんて」
「私の応援のおかげなん?」
「そりゃそうだ。この2点は大阪がとったようなもんだな」
「おぉ〜・・・私は幸運の女神なんや」

94 :名無しさんちゃうねん :2005/06/12(日) 00:01 ID:???
さて、どうなる?

95 :名無しさんちゃうねん :2005/06/12(日) 21:13 ID:yuEo5rcE
期待age

96 :春の日を歩む2人(8) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 09:58 ID:???
「・・・ぁ〜」
「うっす。って、なにいきなり死んでるんだ」
 2学期初日。
 佐伯が登校した時にはすでに春日は机についていた。
 座ってはいるのだが、上半身を机に突っ伏しており、完全に無気力状態だ。
(うあ。目がいっちゃってる)
「あ〜。おはよ〜」
「大丈夫か?」
「大丈夫やねん」
 そうは言っているが動作に力がない。
 軟体動物のような動きだ。
「あ〜・・・黒いなぁ」
「ん?あぁ。部活だったからな」
「野球やったんやな。ワールドカップいけたん?」
「は?いや、ワールドカップじゃなくて甲子園な。残念ながら地区大会決勝で負けてダメだったよ」
 佐伯は荷物を置いて椅子に座る。
 クラスの半分はだらけているのが目に映る。
「あ〜。そや。あんな、野球教えてくれへん?」
 顔だけを佐伯の方に向けて春日が言う。
 その目はまだ死んだ魚のような目だが、なんとか意識はあるらしい。
「かまわないけど。どうした?」
「体育でソフトボールがあるねんけどな、私、トロいから」
「ソフトボールか。じゃあ、とりあえずキャッチボールからはじめるか」
 放課後。
「さ、グラウンド行くぞ」
「へ?」
 カバンを持って帰ろうとする春日が佐伯の方を向く。
「へって。お前が言ったんだろ、野球教えろって」
「今日からなん?」
「部活休みだからな」

97 :春の日を歩む2人(9) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 09:58 ID:???
「とりあえずボール投げてみろ」
 春日が手にしているのは、やわらかいゴムボール。
「おっしゃいくで〜」
 ボールを投げる春日。
 春日と佐伯の丁度中間くらいにボールが落ちる。
「これは・・・ちゃうねん」
「ボールの投げ方から教えるか」
 ・・・・・・
「ちゃうねん」
 再度投げたボールは先ほどよりは飛んだが、それでもまだ佐伯の位置には届かない。
「ん〜・・・何がおかしいんだろうか。ちょっとすまんな」
「ひやっ」
 佐伯が春日の二の腕を掴んでみる。
「単に非力なだけか?これじゃあ、ソフトボールは重いんじゃないか?」
「む、無理なん?」
 春日の顔が少しだけ赤くなっている。
「無理ってわけじゃないけどな。バッティングもきついだろうし」
 佐伯が顎に手を当てて考える。
「下手投げで投げてみるか」
「下手投げ?」
「こんな感じだ」
 佐伯はアンダースローの構えでゆっくりとボールを投げる。
 ボールは弧を描き地面へと落ちた。
「おぉ。ほなら、やってみるで」
 春日が見よう見まねでボールを投げる。
 今度は何とか佐伯の立っていた場所まで届く。
「まぁ、試合で使えるかどうかわかんないけど、いいだろう。今度はキャッチの練習もあわせてやるぞ」

98 :春の日を歩む2人(10) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 09:58 ID:???
「ふぅ。いい時間だな」
「もうこんな時間や。今日はおおきにな」
 夕日が徐々に街に隠れ始めている。
「なに。いいってことよ。俺も部活休みで暇だったしな」
 野球部の部室に置いておいた鞄を持つ。
 密室の部室。
 二人の男女。
「あ、あんな。佐伯君」
 顔を赤らめる春日。
「あ。な、なんだ?」
「私な・・・私な」
 うつむいたまま佐伯の目の前に歩いてくる春日。
 彼女の髪の甘い匂いが佐伯の鼻腔に感じられる。
 顔を上げた春日の顔が真っ赤に染まる。
「春日」
 二人は目を瞑る。
 そして、徐々にその顔が近づき。
「お〜っす。大阪〜!!特訓はうまくいったか〜〜」
 突然、勢いよくドアが開いて滝野が部室に入ってくる。
『!?』
「お?お?お?ひょっとして。おじゃまだったかにゃ〜」
 滝野が口に手を当て目を細めて笑う。
「ちがうちがう。か、春日が目にゴミが入ったって言うから。な」
「そ、そうやねん。とってもらってたんよ」
「ふ〜ん。ま、そういうことにしておくか」
 3人は部室を出る。
 春日が後ろを歩く佐伯に近づいてきて、耳元でつぶやく。
「あ、あんな。さっきのは・・・かんにんな・・・もうせぇへんから・・・」
 それだけを言うと春日は滝野の隣に戻ってしまう。
(・・・それって・・・実は脈無し?)

99 :限界 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 10:00 ID:???
久々の更新です。あ〜、怖いSSも書かなあかんなぁ
あ、そうそう。トリップ変えました(先に言えよって感じですけど

100 :春の日を歩む2人(11) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 10:18 ID:???
「おっす。何やってんだ?」
「スタメンのオーダー決め」
「あぁ、お前キャプテンになったんだっけか」
 佐伯が机に置いた紙を前にうなっている。
 長谷川が覗き込むと、そこには野球部のメンバーの名前とポジションなどが書かれていた。
「打撃を取れば守備に穴が空くし、守備重視なら打撃力に難があるんだよなぁ」
「ま、がんばれや」
 部外者である長谷川は佐伯の元を離れる。
 佐伯の携帯が震える。
「はい・・・・・・なにーーーー!?」
 佐伯が急に立ち上がって声を張り上げる。
「松戸と円谷が事故!?なんで・・・あんの暴走バカ。で、容態は?・・・そうか。わかった」
 電話を置き頭を抱える。
「骨折か。秋の大会に間に合わないな。ヤバイ。本格的にヤバイ」
 机に置かれた紙から松戸と円谷の文字を消す。
 二人はかなりの実力者ゆえに、その穴はかなり大きい。
「1年の木戸・・・は、ダメだな。雪を一塁手にコンバートするか」
 一人ブツブツとつぶやく。
 声にかなり棘がある。気が荒立っていることは確かだ。
「おはよ〜・・・どないしたん?」
 隣の席の春日が声をかける。
「ちょっとな」
 佐伯は生返事だけで、顔はずっと紙の方に向けられたままだ。
 春日が顔を微かに赤らめて、鞄の中から一枚の紙切れを取り出す。
「あ。そや、あんな。次の土曜に映画に行かへんか?」
「後にしてくれ。忙しい」
「そ、そか。かんにんな」
 手に持ったチケットを鞄にしまい、ゆっくりと席につく。

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