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あずまんがSSを発表するスレッド パート4!!

1 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/14(土) 00:04 ID:???
前スレのリンクです。
あずまんがSSを発表するスレッド パート3

http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081700484/

暴力・猟奇・グロなど読み手を選ぶ内容のSSは以下のスレッドに投下する点は前スレと同じです。

グロまんが大王
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/oosaka/1081698529/

新しいスレでも、またがんばりましょう。

2 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 00:07 ID:???
過去スレッド
あずまんがSSを発表するスレッド パート2
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1070830253/
あずまんがSSを発表するスレッド
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1046110813/

3 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 00:07 ID:???
暴力・猟奇など読み手を選ぶ内容のSSはこちらへ。
グロまんが大王
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081698529/

4 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/14(土) 00:09 ID:???
2取ってすんませんが、グロまんが大王のリンクが間違ってたくさいので修正しときます。

http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081698529/l50

5 : :2005/05/14(土) 00:09 ID:???
>>4
どんまい、気にすんな。

6 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/14(土) 00:11 ID:???
>>2,3,5
フォロー、ありがとうございます。

7 :ミルクチョコ ◆.kY34XtGRg :2005/05/14(土) 00:14 ID:???
スレ立て乙〜♪

8 :名無しのSS書き :2005/05/14(土) 01:13 ID:???
>>1 乙〜

9 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 01:16 ID:???
前スレ893 面白かったけど、どっちかっつーと、↓このスレ向きだったかも。

2ちゃんコピペをあずまんが風にするスレッド
http://so.la/test/read.cgi?bbs=oosaka&key=034992440

10 :893 :2005/05/14(土) 19:39 ID:???
>>前スレ894
素で間違えたorz榊に脳内変換しといてくださいな
>>前スレ895
元ネタにそう書いてあったのでそのまま使ったの
>>前スレ896
ありがdございます〜
>>9
そうでつね。次からそっちにします。

11 :名無しさんちゃうねん :2005/05/14(土) 19:52 ID:???
>>前スレ881
あなたをぜひここに誘導したい

4コマのネタを考えてみる
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1042505620/l50

12 :誘惑の甘い罠 1 :2005/05/15(日) 14:42 ID:???
「あー、お腹すいた……」
 ちょっと風の強い冬の日、学校からの帰り道、不意に襲い掛かる空腹感に私は思わず右
手でお腹を抑えた。
「何か食べたいなぁ……」
 体が何か食べ物を欲している、それは分かっている。だけど、ガマンしなくちゃいけな
い。今はダイエット中なのだ。何かを食べることなんて許されない。今日だって朝ごはん
もお昼の弁当も少しずつ食事量を減らしてきたじゃないか。そんな涙ぐましい努力を一瞬
の空腹感とかすかな食欲でフイにしてしまうのか? 
 私は自分に強く言い聞かせた。空腹を感じてもガマンしなくちゃいけないって。
 だが、悪魔の誘惑は不意に襲い掛かってきた。

「あ! たい焼き食べたい!」
 智の奴が何の前触れもなく、そんなことを言い出したのだ。
「突然だな」
 つとめて冷静に言葉を返したが、頭の中ではたい焼きの味覚が駆け巡っている。たっぷ
り入ったアンコの甘さ、しっぽのカリカリ具合、今日みたいに寒い日に食べるたい焼きの
美味さは格別だ。たい焼きかぁ、いいなぁ。食べたいなぁ……って、いかんいかん。ガマ
ンせねば。

「この前ちよちゃんにうまい所教えてもらったんだ、行こう」
「……いや、いい」
 たい焼きは魅力的だが、今はとにかく耐えねば。ちょっとした誘惑でも崩れてしまいそ
うだが、何とか理性が残っているうちは耐えてみせる。智に見えないように拳を強く握り
締め、心に誓った。でも、ちよちゃんもともにそんな店を教えるなんて余計なことをして
くれたもんだな。

「あ! ダイエットだなこのヤロ!」
「……そうだよ」
 何か文句あるかよ。ダイエットしているから、たい焼きは食べたくてもガマンするんだ
よ。だから、たい焼きはまた今度にしよう。今日はおとなしく帰ろうぜ。
 少し照れた顔を浮かべながらも、もしかしたら聞き入れてくれるかもしれないと思い、
ささやかな願いを込めて智の顔を見つめた。だが、それは一瞬の希望でしかなかった。

13 :誘惑の甘い罠 2 :2005/05/15(日) 14:43 ID:???
「じゃ 私が食ってるの見てるだけでいいって。行こ」
 案の定と言えばそれまでだが、こいつが私の願いなど聞き入れてくれるわけがないか。
そんな優しい心などほんのカケラもないことはちょっと考えれば分かることだ。だからっ
て、満面の笑みを浮かべてそんなおぞましいことを言うか。一体何に対するあてつけだ。
 結局、自己中な悪魔の強引さに引きずられて、たい焼き屋へ行くことになってしまった。

 5分ほど歩いた先にたい焼き屋があった。店の窓からたい焼きを作っている工程が見える。
更に甘いにおいもプンと漂って、食欲をそそいでくる。
 ダメだ、見たら食べたくなってしまう。理性が音もなく崩れそうだ。
「小倉あんと抹茶とカスタードクリーム」
「3つも食うのか」
 おいおい、智よ、1つだけじゃないのかよ。1個買って食い終わるのを待つぐらいならま
だガマンできるのに、3つも食うのを待つなんてただの拷問じゃないか。「嫌がらせか」と
いう言葉が喉から出かかった。

「あんたも食う?」
 何食わぬ顔で小悪魔が尋ねてきた。私のダイエットを邪魔する気か。何でこういうこと
に限っては悪知恵が働くんだよ? だけど、悪魔のささやきに負けてたまるか。
「絶っっ対食わない」
 自分の意志の固さを裏付けるように強く言い切った。絶対に耐え抜くと心の中で繰り返
しながら。
「じゃあ、あんたの分も食べてあげるね」
「……そりゃ、どうも」
 きっぱりした返事をあっさり流すような対応に、少し呆気に取られてしまった。だが、
あいつが私の分を食べてくれれば、私は食べずに済むのだから、それはそれでいいかもし
れない。

 程なくして、智が3つのたい焼きが入った袋を持ってきた。何が入っているのかは知ら
ないが、1つをサッと取り出すと、ぱくっと頭からかぶりついた。チラッと中身が視界に入
った。どうやら小倉あんのようだ。
「うめぇーっ!!」
 人目も憚らないような大声で叫ぶな。耳障りだ。しかも、美味しそうに食いやがって。
お前はグルメリポーターか。もし、グルメ番組でこんな風に食べるリポーターがいれば、
思わず食べたいなって思うくらいじゃないか。うー、目の前でこんな美味そうに食べてい
る奴がいるのに、私は食えないなんて……。

14 :誘惑の甘い罠 3 :2005/05/15(日) 14:43 ID:???
 そう思うと、目の前でたい焼きをパクついている奴に対して、フツフツと怒りが沸いて
きた。もし、これ以上挑発的な行動をとったら、我慢できずに殴りかかるかもしれない。
 でも、仮に殴ったとしたら、「ダイエットなんて無駄なことするから、イライラすんだよ」
とか皮肉を言われるに違いない。ここは黙って耐え忍ぶしかないか。
 でも、何でこんな目に遭わなくちゃいけいないんだ、くー、食べても太らない体質にな
りたい。そうすれば、こんな思いで苦しまなくたっていいのに……。

 一瞬、店内のたい焼きを作っている光景が目に入った。私も食べようかな……。3つじゃ
なくて、1つくらいなら……。いや、ダメだ。誘惑に負けたらダイエットなんてできやしな
い、なんとしてもこの場は耐えなくては……。
 私の思惑など知らずに、いや仮に知っていたとしても我関せずといった具合に、智はも
ぐもぐと美味そうにたい焼きを食べ続けている。ダメだ、そんな姿を見ていたら、やっぱ
り食べたくなってしまう。仕方がない。食べ終わるまで他のところでも見ているか。
 ふと、視線を逸らした先にある言葉に思わず心を奪われてしまった。

――カロリーひかえめ小倉
 何だって! カロリー控えめなら、ちょっとぐらい食べてもダイエットに影響は出ない
じゃないか。そうだ、むしろ甘いものは脳の活性化にはもってこいなのだから、この後家
に帰って勉強するとしたら、その前に脳の活性化のための甘いものの摂取は欠かせない。
 それに疲労回復にも適しているから、今日の疲れを取るためにもむしろ甘いものが必要
じゃないか。きっと私がさっき感じた空腹感は、甘いものを摂取して疲労回復と脳の活性
化をしろという神様のお告げに違いない。しかも、カロリー控えめなのだから、何一つ問
題はない。理性に縛られる必要なんてなかったんだ。
 もはやブレーキの壊れた暴走車と化した私を止める術などなかった。すでに足がカウン
ターの前へと動き出している。

「あの、小倉……」
 気がついたときには小倉あんのたい焼きを注文していた。
「よわっ!」
 背後で智が何かを叫んでいたが、そんなのは私の耳には入らない。今の私には小倉あん
がぎっしり入ったたい焼きしか瞳に映らないのだから。
 あぁ、ぎっしり詰まったアンコとそれを包む皮の絶妙なハーモニー、しっぽ付近のカリ
カリしたところの食感、冷めた心と身体を温めてくれる温もり、それが今私のものになる
んだ。気を緩めるとよだれが出てしまいそうだ。

15 :誘惑の甘い罠 4 :2005/05/15(日) 14:44 ID:???
 若い店員が袋に入ったたい焼きを渡してくれた。逸る気持ちを抑えながら、ゆっくりと
熱気の伝わる袋を開け、中からアンコの入っているたい焼きを取り出す。
 はふはふと息を吹きかけると、そのまま頭からかぶりついた。何とも言えない甘さが口
の中に広がり、至福の瞬間をもたらしてくれる。
「あぁ……、美味しい……」
 こんな美味しいものをガマンしていたなんて、私のバカ……。
 感嘆のため息を漏らしながら、むさぼるように一気に食べてしまった。

「あーぁ、食べちまいやがったか。ダイエットはどうしたんだ?」
 あきれた口調で智がチクリと一言突いてきたが、たい焼きのおいしさの余韻に浸ってい
た私にはどうでもいいことだ。今日はたい焼きの味を満喫する日ってことにして、ダイエ
ットなんてまた明日から頑張ればいい。だから、今日はこの1個だけ特別サービスで食べ
たっていいじゃないか。

「なー、よみー。そろそろ行こうぜー」
 私が余韻に浸っている間に、智は3つとも食べ終えたようだ。こんな美味しいたい焼き
をそんなにあっさり食うなんてもったいない。もっと味わって食えよ。
「それじゃ帰るとするか」
「いや、まだ家には帰らないぞ」
 智の言葉が一瞬理解できなかった。たい焼きを食い終えたのだから、もう帰るだけじゃ
ないのか。
「甘いものをたくさん食べたら、ちょっとしょっぱい物がたべたくなってさー。ちよちゃ
んにたこ焼きの美味しい店も教えてもらったから、そこへ行こうぜ!」
 何も考えていないような無頓着な笑顔が妙に腹立たしい。

「いい加減にしろ!」
 気がついたときには、私は智にアッパーカットを食らわせていた。でも、この一撃で少
しかカロリー消費されていればいいんだけどな。そうすれば、カロリー控えめだけどさっ
き食べたたい焼きの分をカロリー消費できるし、あわよくばもう一個食べることもできそ
うだからな。
 しかし、私のよこしまな考えは、アッパーを食らった女の「ふとるぞ……」と言うかす
かなうめき声でやめにすることにした。でも、たい焼き美味しかったな。ダイエットに成
功したら、今度は抹茶とカスタードクリームも食べてみよう。
(完)

16 :名無しさんちゃうねん :2005/05/15(日) 20:12 ID:???
乙。読みやすくていいカンジでした。

17 :名無しさんちゃうねん :2005/05/15(日) 20:28 ID:???
>>15
おつage

18 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/15(日) 22:57 ID:???
乙です。原作であったところからか、読みやすかったっす。

あと、すいません。さっき気づいたんですが、前スレにリンク貼り忘れてました・・・。
すいません!!

19 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:15 ID:???
前スレ>>831-842の続編みたいなもの。今回は旦那視点です。

マグネトロンバーガーにて

俺 「今度の日曜どこか行きたいとこあるか?」
大阪「うーん…どっかなぁ…」
俺 「ヒマだろ?日曜」

俺たち夫婦はできるだけ結婚してからも積極的に二人の時間を取るようにしている。
夫婦共働きの現状、そういうスキンシップは大切なのだ。


大阪「そうやけど…映画もこないだ行ったし、遊園地ゆー年齢でもないし…」
俺 「ふむ…」

大阪「あっ、そや!こないだオープンした水族館行こう!!」
俺 「水族館?」
大阪「そー水族館。けっこー大きいとこらしいで。行こー」

水族館か…別に魚なんぞに興味はないが、確かにデートスポットではあるな。
俺たちもまだ若いし、周りからも普通のカップルに見えるだろう。

俺 「よし、じゃあそれにしよう」
大阪「私なー、タコが見たいねん!」
俺 「そっかータコなー……タコ?」
大阪「うん」
俺 「タコ……好きなのか?」
大阪「うん」
俺 「そうか…うん…いいよな、タコ」
大阪「せやろー」

20 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:16 ID:???
水族館前にて

ガヤガヤ

大阪「うわー、人いっぱいやな」
俺 「まぁゴールデンウィークだしな」

水族館は確かに広いが、客もまた多かった。
みんなヒマだな。魚がそんなに見たいのか?

大阪「迷子なったらあかんでー」
俺 「ならねーよ」

俺 「早くはいろーぜ」
大阪「んー……あ!」
俺 「ん?」
大阪「神楽ちゃーん!!」

大阪は、携帯で喋っている小柄な女性のもとに走っていった。

神楽「でさー、やっぱあれはあっちの方が……ん?」
大阪「神楽ちゃんやん!」
神楽「お、大阪!?こんなとこで何してんだよ?」
大阪「魚見にきてん。神楽ちゃんはー?」
神楽「私は、これから久しぶりに榊に会いに……あ、旦那さんも…」

21 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:16 ID:???
神楽さん…確か大阪の友人だ。この間結婚式にも来てくれていたな。
それにしても……

俺 「えと…おひさしぶりです…………ジー-…」

…なんというボリュームだ。犯罪級だな。
残念ながら大阪にはこれは今後とも望めそうにない。

神楽「そうですね、結婚式以来ですかねー」
俺 「どうもご無沙汰してて申し訳ありません…………ジー-……」
神楽「いえ、そんな…どうかしましたか?」
俺 「あ、いや、なんでもないですよ?」
神楽「はぁ…あ、じゃあ私もう行きますんで!それじゃあまた!」
大阪「ばいばーい」
俺 「さよならー…………ジー-…」
大阪「…ほな私らも行こかー」
俺 「…え、あぁ、そだな」

ひさびさにいいものを見た。
少なくとも今から見る魚共なんかよりは遥かに素晴らしいものだろう。

22 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:17 ID:???
水族館内にて

ガヤガヤ

大阪「あ、サメやー」
俺 「ほんとだ。でかいなー」
大阪「あんなんに噛まれたらどないなるんやろな」
俺 「そりゃ…やっぱ死ぬんじゃねえの?」
大阪「え!?あんた死ぬんか!?」
俺 「…お前は平気なのか?」
大阪「……あ、タコやー!」
俺 「人の話聞けよ。ってか勝手に行くなよ!」

ガヤガヤ
大阪はスイスイと人海の中に消えていく。

俺 「…って、あれ?歩ー?」

ガヤガヤ

俺 「……いねぇ??」

ガヤガヤ

俺 「タコん所にもいねぇし…どこ行ったんだ?……だー─!!人ごみうぜぇ!!」
   …くそっ!歩ー!?歩どこだー!?」

大人げなく声を上げて探す。それぐらいしなければ見つけ出せない状況なのだ。

客A「どうしたのかしらあの人?」
客B「迷子かしら、あのトシで」
客C「最近の男の人は情けないったらありゃしないわねー」

心ない嘲りの言葉が俺の耳にチクチク刺さる。

俺 「く……ちきしょー、どこ行ったん…あ!!」

俺は眼前にセミロングで黒髪の女を発見した。

23 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:17 ID:???
マグロの水槽前

俺 「おい!!」
大阪「あ、どこ居ったんー?」
俺 「ハーハー…そりゃこっちの台詞だ!!勝手に行きやがって!!」

実際、人ゴミを掻き分けてどこにいるかも分からない人間を探すのは、疲れる。

大阪「ごめんなさいー…でも、ほらこのトロすごいでーめっちゃ速い」
俺 「……トロってなんだ?こいつに名前つけたのか?」
大阪「え、そうやなくてこの魚、トロやろ?」

肉体的よりもむしろ精神的に疲れた俺は今現在天然ボケは求めていない。

俺 「…この魚丸々トロか。そうか。そいつは贅沢だな」
大阪「え?…え??」
俺 「いいか!ここにこの魚の名前が書いてあるだろ!?なんて書いてある!?」
大阪「いたい、いたい、頭掴まんといてー!……マグロと書いてあります」
俺 「そーだな!?この魚はマグロだ!トロなんて魚はおらん!!」
大阪「なに怒ってんのー?」
俺 「…ハーハー…すまん、少し疲れたんだ…もう外に出ようぜ」
大阪「んー、わかったー」

24 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:17 ID:???
帰宅後・自宅にて

一日の疲れを落とす為、二人で酒を飲む。

大阪「…ぷはっ〜いろんな魚がおったな〜おもろかった〜」
俺 「あぁ、確かに思ってたより良かったよ…一部激しく疲れたが」
大阪「……………」
俺 「どうした?」
大阪「いや……さっきのってどっちが迷子やったんやろなー?」
俺 「…仮に俺だとしても、原因はお前だ」
大阪「えへへー…だいぶ焦っとったなー」
俺 「な…見てたのか!?」
大阪「うん……あの時、わざと返事せーへんかってん」
俺 「は?……なんで?」

一時の沈黙を置いて、大阪は笑ったまま訊いて来た。

大阪「…あんた、胸好きか」
俺 「…なに言ってんだお前?」
大阪「さっき神楽ちゃんと話してるとき、あんた神楽ちゃんの胸ばっか見ながら喋っとったやろ」
俺 「………………!」
大阪「どうや?」

25 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:18 ID:???
いやな汗がでてきた。バカな、こいつそんなことチェックしてたのか?
そんな露骨に見てたつもりはなかったが……あれ、でも今日の神楽さんの顔が思い出せない…やっぱり胸しか見てないや。
我ながらなんてヤツだ。
……大阪はあいかわらず笑顔だ。そして、また酒をコップに注いでいる。

俺 「いや…その……」
大阪「どうなんや?」

嘘はつけない。俺は正直者なんだ。

俺 「………………ミテマシタ」
大阪「見てたんやな?」
俺 「………………ハイ」

まずい……肩身が狭すぎる。
今度から正直者やめようかな。

大阪「ふ〜ん…ま、そんな固まらんと、しゃっきり喋りいや」
俺 「…………」

だんだん取り調べ化してきた。
大阪はさらに酒を飲む。

大阪「あんたにとって私はなんや!?」

ここでやっと大阪の笑顔が崩れた。けっこう真顔で怒っている。

26 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:19 ID:???
俺 「歩は…俺にとって最愛の奥さんだよ。俺が愛してるのはお前だけだ」
大阪「ふっ…よーゆーわ」

プロポーズした時ばりに本気の眼差しで言った言葉を、大阪は軽く鼻で笑い飛ばした。そしてさらに酒を飲む。
そんなに飲んだら体にも俺の精神衛生上にも悪いぞ。

俺 「な、ホントだって」
大阪「ほなら言わしてもらうけどな、今、あんたの最愛の奥さんは激しく傷ついてるんや!」
俺 「う…」
大阪「デート中にあんな下心丸ダシの視線で他の女の子を、しかも胸ばっかり見て!!」
俺 「…いや、その…」
大阪「侮辱や!!あんたの態度は胸の小さい女の子に対する冒涜や!!」
俺 「ゴ…ゴメン…なさい」

どうやら相当コンプレックスを抱えていたようだ。それにプラスして大分酒がまわっている。

大阪「そこに座りなさい!!」
俺 「もう座ってるけど」
大阪「正座やー─!!」
俺 「…わかりました…よいしょ」

大阪は俺を正座させた後どこからか竹刀を取り出してきた。
おい、それで俺を叩く気か?

大阪「ええか!よく聞きなさい!!」

ビシ!ビシ!
俺ではなく床を叩いている。恐いっちゃ恐い。しかし…

俺 「ここマンションなんだから下に響くし、それはやめとけよ」 
大阪「……………」

今度はヒモを持ってきた。やはりペチペチ床を叩いている。まぁこれぐらいならいいが…
先ほどと違って迫力は0だ。

27 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:19 ID:???
大阪「だいたいなー、女のコのおっぱいは、もともと赤ちゃんのためにある物であって
   アンタみたいなスケベな男のためのものとちゃうねん!!」

今度は演説をはじめた。ここは従順に聞くことにしよう。

俺 「はぁ……」
大阪「それにや、大きいのも考えものなんやで!なんか、重いらしいし、肩もコるらしいし」

全部「らしい」というのがそこはかとない空しさをかもしだしているな。そんなことは口にしないが。

俺 「それは…大変だな」
大阪「せやろ!?それに胸の大きい小さいで母親としての機能なんて大差ないねん!」
俺 「…ふむ」
大阪「それやったら小さいほうがええやん!?な!?」

なんかだんだん論点がズレてきた気がするな。そんなことは口にしないが。

俺 「確かにそうだな」
大阪「そうやねん!!小さくてもええねん!!それやのに、アンタは!!」
俺 「…………」
大阪「アンタみたいなのがいるから胸の小さい女の子が肩身の狭い思いをせなあかんねやー!!ムキー─!!」

まぁ、確かに今回のことは俺が悪かった。これは口にしよう。

28 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:20 ID:???
俺 「ああ…確かに今回のことは全面的に俺が悪かった。スマン」
大阪「反省してるか!?」
俺 「はい」
大阪「もう二度とあんなことはせーへんな!?」
俺 「誓って」
大阪「ふむ…でも、言葉だけでは許せへんな……せやから、償ってもらいます」
俺 「…どうやって?」

大阪は口の端をつりあげてニヤっとする。
…大阪ってSだっけ?
俺にMの気はないし、あまり痛いのはイヤだな……もしかして、このヒモで縛る気だろうか?
明日会社の同僚に縛られた跡を見られたらどうしよう…

俺の思考回路は逆境のあまりあらぬ方向に逸脱している。
そんなことはおかまいなしに大阪が判決を下した。

大阪「おっぱいを揉んで欲しいねん」

俺 「…………………は?」

29 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:20 ID:???
『被告人をおっぱい揉みの刑に処す』大阪裁判長の判決はそれだ。
…想像とのギャップのあまり、脱線をくりかえしていた俺の思考が復活した。

俺 「あの………なんて?」
大阪「せやから、胸。揉んで」
俺 「…なんで今さら?別にいつも揉んでやってるじゃん」
大阪「あれは!…その…前戯やろ?そうやなくて…こう…もっと時間をかけて」
俺 「つーかなんのために?」
大阪「ほら……豆知識ー…胸って揉んだら大きなるねんで」
俺 「それは…え!?マジで大きくなるの?」
大阪「そう聞いた」
俺 「…誰に?」
大阪「ともちゃん」
俺 「また…あいつか……」
大阪「それはどーでもええねん!はよしなさい!!」

さっきあんだけ小さいほうがいいと言っておきながらやはり上を目指すのかい。
なにか虚しいものを感じながらも、俺は承諾する。

俺 「はいはい…わかりました。じゃ、いくぞー」
大阪「あ…待って」
俺 「なに?」
大阪「電気……消して」
俺 「なんか初々しいな」
大阪「せやかて…ずっと胸触られてるの恥ずかしいやん」
俺 「なんじゃそりゃ。……はいはい、じゃー消しますよー」

30 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:21 ID:???
カチッ

薄暗くてほとんどなにも見えない。
大阪の胸は…ここか?

大阪「ふぇ…あはは!!くすぐった…そこはお腹や!!」
俺 「もう少し上…あ、これか」
大阪「いたっ…優しくしなさい!」
俺 「ごめんごめん。え〜っと、ずっと揉んでるのか?」
大阪「うん。いいゆーまでずっと」
俺 「はいはい」

大阪の胸を揉みはじめる。しかし、わかってはいたが「揉む」ほどのボリュームがない。これは…
「掴む」というカンジだな…あれほどのコンプレックスを抱いていたのが今更になってなんとなく理解できる。

多少の罪悪感から、胸を「掴む」ことに集中する。今夜は、大阪の言うことを聞いてやろう。


むにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむに………


ひたすら「掴み」続ける。
…なんとも間抜けだ。電気消しといてよかった。

大阪「……………」
俺 「……………」

かなりの時間、、二人の息遣いだけが夜の闇に染み渡る。
その内の一人の息がだんだん荒くなってきた。


「ハァ……ハァ……」

31 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:21 ID:???
……俺だ。
手が疲れてきたのである。

俺 「ハー…ハー……まだか?」
大阪「まだまだや」

なるほど…これは拷問だ。腕が痺れてきた。ヤバイ。
くっ、なんか別のことを考えよう。
えーと、今日見たカニでかかったなー。あれ食ったらうまいんだろーなー

俺 「…ハー………ハー」
大阪「どしたん〜?息遣い荒いでー。もしかして、続きを期待してるんか〜?」

なにアホな勘違いしてんだ。
安心しろ、俺の腕はもう限界を迎えようとしている。そんなハードなアクションを行うには絶望的だ。

大阪「しゃーないな〜…もう胸はええよ」
俺 「ハー……そうか…ハー」

やっと開放された。自由ってすばらしいな。

大阪「なぁ……来ても、ええで?」

結局暗闇の中で長時間胸を揉み続けた状況は、
さきほどまで激怒していた大阪にとってもなんとなくそうゆう雰囲気を作り上げていたようだ。
しかし、残念ながらお前がよくても俺がよくない。
でも今そんなことを言ったらまたこじれるだけだし…
なんとか期待に沿えるよう努力しよう。まず手始めに挿入せねばなるまい。
…だが手に力がはいらない。

32 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:22 ID:???
俺 「く…よっ…あれ……?」
大阪「………なにしてんのー?」

どうやら、というかやはり手を使わずに挿入するのは不可能なようだ。
これは困った。けど1秒で考えるのをやめる。
面倒くさいし挿入はあきらめることにしよう。
ってゆーか疲れたし。
だけど一応、カタチだけでも抱いてやろう。

俺は、大阪の上に倒れ掛かる。

大阪「わぷっ…重いわ!なにすんねん!?」
俺 「いいから……」

大阪の胸に耳をあてる。優しい鼓動が響いてくる。

33 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:23 ID:???
俺 「歩……胸が小さいのも悪くないな」
大阪「なんやねんな、いきなり?」
俺 「こんなにはっきり心臓の音が聞こえる……いい音だ」
大阪「…それは…フォローなん?」
俺 「思ったままを言ってるだけだ…今、音が少しはやくなったな」
大阪「……………」

一度動きを止めるとさらに疲れがドッと出てきた。それに合わせて眠気も。

俺 「俺は疲れた…寝る………スー」

寝ると言って5秒で本寝だ。これは学生時代からの得意技である。

大阪「あ…ほんまに寝てもうた…」
俺 「スー………スー……」
大阪「……………」
   
  「いい音か……ありがとー……」

よく覚えていないが、誰かに抱きしめられた気がした。

34 :大阪との一日 ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:23 ID:???
翌朝

俺 「あー……朝か…うわ、手が動かねぇ」

筋肉痛だ。翌日にやってくるというのは老いた証拠だろうか?

大阪「おはよー……あ…イタタ!!」
俺 「……どうした?」

大阪が起き上がろうとして、固まった。

大阪「ア…アンタ上に乗っけて寝てたから…腰が…イタタタ…」
俺 「ああ…大丈夫か?」

大阪「ちょっと……腰揉んでくれへん?」
俺 「…もうムリ」

35 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/05/15(日) 23:39 ID:???
旦那も見とれる神楽たんのおっぱい…
焼きもち大坂かわいい

36 :ミルクチョコ ◆.kY34XtGRg :2005/05/15(日) 23:40 ID:???
え〜と…以上です。
なんとなく即興で名前つけました。「大阪との一日」今回が2作目になりますね。
ありきたりな題名なんでどこかとカブってないか超心配です。
カブってたらすみません。次書くときがあれば換えます。

あと、とあるコピペを参考文献的なカンジでお借りしました。
もしもダメだったならすみません。二度としません。

それと、前回と今回で旦那が微妙にキャラが違いますね。
まぁ視点変更とか言い訳はありますが、
こんなん続編じゃないじゃんと言う方がいたらすみません。
もうなんか別の作品として見ても困らないんでそうして下さい。

それと前スレ>>867さん、ありがとうございます。ほんと嬉しいです。

>>15さん、乙です。原作+その後で違和感がなかったです。

長々とすみません。ご指摘お待ちしてます。

37 :名無しさんちゃうねん :2005/05/16(月) 00:44 ID:???
>>36
GJ!!オチが良かった
大阪ワールドも健在だしw

38 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/05/16(月) 22:56 ID:???
>>36
正直、久々に萌え死んだ

39 :国防委員長 ◆Ps6jeUWgS6 :2005/05/16(月) 22:57 ID:???
>>36
今日、携帯で何度も見返した。
最高だ!!

40 : :2005/05/18(水) 11:22 ID:???
>>36
素晴らしいっすね
大阪さんの独特の雰囲気を出すのって凄い難しいのに見事でした
GJ!!

41 :名無しさんちゃうねん :2005/05/19(木) 19:08 ID:???
age

42 :名無しさんちゃうねん :2005/05/22(日) 17:44 ID:???
だめだ〜〜我慢できん!!どなたかSS書いてくれ!!禁断症状で死にそうだ〜!!


というわけで、age

43 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:44 ID:???
「・・・ごしごし・・・ごしごし」
 つぎはぎだらけのドレスを着た少女が雑巾がけをしている。
「ごしごし・・・ごしごし・・・ふぅ。これで半分ですね」
「ちよ。ちよは何処?」
「あ、はい。ただいま」
 呼ばれ、少女は立ち上がる。
「あら、まだこんなところにいたの?頼んでいたドレスは出来てるのかしら?」
「おまえ・・・ずいぶんノリノリだな」
「意地悪お姉さんって、はまり役ですからね〜」
 ちよが掃除していた舞台に、3人の女性が入ってくる。
 義姉である、智とかおり。義母である暦だ。
「にしても、なんで私が母親なんだ?しかも、意地悪って」
「ぷぷぷ。はまり役」
「お前が言うな!!」
「あの〜・・・えっと・・・ドレスは出来てるんですけど・・・」
 ちよが奥からドレスを持ってくる。
 少々裾を引きずっているがそこは愛嬌でごまかした。
「意地悪やらせたらよみにかなう人はいねぇだろ!」
「なに〜!?どの口が言うんだどの口が!!」
「バーカ!バーカ!!」
「わけわかんねぇよ!!お前の方が馬鹿だろ」
 ちよは手にドレスを持ったままオロオロとその場で二人を見ている。
「えっと、じゃあ、二人でやろうか」
「あ、かおりさん・・・はい」
 笑顔になったあとに、まじめな顔になってかおりがちよに向けて指をさす。
「ドレスは受け取ったわ。いいこと。今日は舞踏会だけど、アナタはお留守番よ!!お〜っほっほっほ」
「・・・かおりさんもはまり役なんじゃ・・・」
「あ、私のセリフとった!!かおりん、ここじゃセリフねぇじゃん」
「智ちゃんが喧嘩してるのが悪いんだよ〜だ」
「はぁ、どうでもいいけど、終わったんならはけるぞ」
 暦が智とかおりんの背中を押して舞台袖へとはけていく。
 ちよがあっけにとられていると、舞台を照らしていたライトが昼間のものから夜へと唐突に切り替わった。
「あ、あははは・・・えっと・・・・・あ、続き続き・・・舞踏会に私も行きたかったなぁ」
「ホンマに行きたいんか?」
「あなたは!?」

44 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 突然、部屋の一部分がスポットライトで照らされる。
 そこに立っている黒いローブとフードで身を包んだ女性が立っている。
「魔法使いの大阪や・・・でな、ホンマに行きたいんか?舞踏会」
「え?あ。。。。あの?」
「ちよちゃんが行ってもまだおもろないで?途中で疲れて寝てまうのが落ちや」
「いや、落ちって」
 大阪が徐々にちよに近づいてくる。
「でな、思ったねん。ちよちゃんじゃなくて私が舞踏会に行くねん」
「あの。それは、シンデレラから」
「と言うわけでや。この毒リンゴ食べてくれへんか?」
 大阪がリンゴを取り出してちよに差し出す。
「何処に持ってんですか!!それに、毒リンゴはシンデレラじゃなくて白雪姫です。大阪さん、もう少しまじめに」
「私はマジメやで?そかぁ・・・行きたいかぁ。しゃあないなぁ。ならネズミとカボチャを持ってきてぇな」
「あ。はい」
 ちよが舞台袖にはける。
 数秒後、ちよはカボチャをかかえ、後ろに二人の男性をつれて戻ってくる。
 二人の男は灰色の布を頭からすっぽりとかぶっているだけだ。
「なんや、この二人?ネズミ男でももっとましやで?」
「ひ、ひどい」
「うぅ。こんな役なら裏方の方がよかったよ」
「あ、あの。カボチャとねずみさん・・・ですけど」
「ちよちゃん。もっと男を見る目つけなあかんで。・・・えぇわ。今回はこれで手を打ったる」
 大阪は持っていた杖を高くかかげ、掛け声と共にそれを振り下ろす。
 同時に舞台上に大量のスモークが。
 まったく何も見えなくなる。
「けほけほ。少し・・・煙・・・多すぎです」
 徐々に煙がはれてくる。
 ちよのそばには大阪も二匹のネズミ男もいなくなっていた。
「ちよちゃん。その馬をつかってぇな。ほななぁ」
「ふぅ・・・え!?えぇぇぇぇ」

45 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 煙が晴れ、そこに現れたのは運動着姿の1人の女性。
「強気に本気、素敵に無敵、元気に勇気!名馬神楽、神に遣わされただいま参上ぅ!」
「あ。あわわわ。。。。大阪さ〜ん、ねずみは二匹でしたし、カボチャは?カボチャは〜??」
「ふっふっふ。ちよちゃん。細かいことは言いっこなしだぜ」
 神楽はちよを背負う。
「しゃべると舌噛むから、黙ってろよ〜。いっくぜ〜〜」
 ちよを背負ったまま神楽が走り出す。
 舞台を飛び降り、客席の通路を走る。
「あ、わ、わ、わ、わ、わ」
 そのまま、ドアを開けて外に出てゆく。
 同時に、流れる優雅なメロディー。
 舞台はいつの間にか、舞踏会の会場へと変貌を遂げていた。
「王子さま。今日はお招きにあずかりありがとうございました」
「いやぁ。派手だねぇ」
「さ、さか・・・榊さんの王子様姿・・・うぅぅぅぅぅぅ・・・・写真撮らせてください!!」
 暦が智とかおりの頭を小突く。
「いや。うん・・・来てくれてありがとう」
 困ったような顔で榊が軽く手を上げる。
「今日は王子様のお妃様を探されるとか・・・では、後は若い者に任せて」
 そう言って暦がスススと後ろに下がる。
「えっと・・・」
「あ、あの。お、踊ってくれませんか?」
 真っ赤な顔をしたかおりが一歩前に出る。
「あ。う、うん」
「や、やったぁぁぁぁ。あぁ、榊さん、私は一生この日を忘れません。えぇ、忘れませんとも、日記にも書いて永久保存版ですぅぅぅ」
 あまりのかおりの壊れっぷりに一歩引く榊。
「んじゃ、私は何しようかな。あ、よみ!!料理ばっか食ってるとまた太るぞ!!」
「いいんだよ、甘いものじゃねぇから」
「・・・いや、その理屈はおかしい」
 先ほど後ろに下がった暦は、皿に大盛りの料理を載せて頬張っていた。
 かおりは、無理やり榊を引っ張って踊りだし、智は暦をからかっている。
 突然、客席側のドアが勢いよく音を立てて開かれる。

46 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 同時に鳴り止む音楽。
 全員の動きがとまり、その方を見る。
 当てられるスポットライト。
 そこには、美しいドレスに身を包んだちよ(リボンプラスバージョン)が立っていた。
「・・・王子様。私と・・・踊ってください」
 ちよは微笑みながら、舞台に向かう。
「よろこんで」
 榊は顔を真っ赤にして応える。
 かおりの手を振り解き、近づいてくるちよに手を差し出す。
 ちよは、みなが見ほれるほど可愛らしかった。
 可愛いもの好きの榊から見ればその効果は数十倍にもなっている。
「王子様」
「ちよちゃん」
 二人が手を取り合うと、再度音楽が流れ始める。
 流れるようなダンス。
 身長差がありながら、二人のダンスは息のあった綺麗なものだった。
『・・・さっき言い忘れてもうたんやけどな、ちよちゃん。12時になったら魔法のドレスは消えるで〜』
 急に場内スピーカーから大阪の声が聞こえる。
「あう。大阪さん・・・雰囲気ぶち壊しです」
 同時に鳴り出す鐘の音。
「12時!?・・・あ、帰らないと」
 ちよは王子の手を振り解き舞台を降りる。
 客席から通路を駆けてゆく。
「ちよちゃん!」
 しかし、いかんせんちよの足は遅い。
 客席を抜ける前に12時の鐘がなり終わった。
「残念やったなぁ」
 目の前に大阪が現れる。
「え?」
「12時になったら魔法のドレス消えるて言うたやん」

47 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:45 ID:???
 言うと同時に、ちよのドレスの肩から生えていた一本の紐を引っ張る。
「え?・・・きゃぁっ」
 ドレスがバラバラになり、足元へと落ちる。
 ちよは、その場でスクール水着姿になってしまった。
「ありゃ。水着きっとたんかぁ・・・下着姿を期待しとったんやけどなぁ」
「お・お・・・さか・・・さん」
「なんや?」
「そこ!どいてください!!」
 ちよは顔を真っ赤にしながら客席を駆け抜けていった。
「え・・・えっと。あ、こ、この靴はさっきのちよちゃんの!」
 呆気にとられていた榊がなんとか元の話に戻す。
「兵士たちよ!この靴にあうちよちゃんを探してくるんだ。その人が私の妃だ」
 暗転する舞台。
 いつの間にか大阪も姿を消していた。
「ふぅ。それにしてもあのちよちゃん誰だったのかな?」
「おい。その会話は何かおかしいぞ?榊のセリフもそうだったが」
「そうねぇ。ちよちゃんを探すなんて、そう簡単なことじゃないのに」
「だから!!ちよちゃんイコール謎のお姫様みたいな使い方は間違ってるだろ」
 最初のセットにもどり、暦と智とかおりがお茶をしている。
 ちよはそのすぐそばでお盆を持って立っていた。
 そこに兵士の格好をした男性がやってくる。
「ここに、可愛らしいちよちゃんはいないか?いたら、この靴を履いてみるんだ」
「・・・あぁ、もうどいつもこいつも。ほら、ちよちゃんご指名だよ。早く履いてみて」
「え?あ・・・でも、先によみさんたちが」
「いいんだよ。こんな茶番劇にはこれ以上付き合えない」
 そういって、テーブルに顔を突っ伏す。
「くくく。そんなこと言って、さっき食べ過ぎて動きたくないだけだろ」
「むぐ!そ、そんなわけないだろ」
「じゃあ、立てよ」
「てめぇ!!」
「あの、あの。私が履きますから、喧嘩はやめてください」
 ちよが差し出された靴を履く。
「あぁ、ぴったりです」
「はいはい。よかったよかった。めでたしめでたし、はい解散」
「うぅ。ともちゃんひどいです」

48 :シンデレラ? ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:46 ID:???
「もう。なんなんですかあの舞台は」
「台本なし。配役も本人以外には伝えない限界ギリギリの舞台はどうだった?」
 舞台袖に集まった役者たちに担任であるゆかりが声をかける。
「むちゃくちゃですよ・・・水着を着てなかったらどうなってたか」
 むくれるちよ。
「ご飯はおいしかった。うん」
「お前、そればっかだなぁ」
 料理を思い出し悦にひたる暦とつっこむ智。
「私は榊さんが・・・かっこよかったから」
「ちよちゃんが。可愛かった」
 お互いに好きな物がみれてよかったかおりと榊。
「あんな。王子様のキスはどこいったん?」
「もう少し出番ほしかったな」
 相変わらず勘違いしている大阪。
 少しだけ不満げな神楽。
「んじゃ、今度は西遊記やってみよ〜」
『今度!?』

(完)

49 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/23(月) 17:49 ID:???
芸術発表会・・・みたいな感じのネタ。
ちょっと長かったですかね。
実は前スレとか読んでなくて・・・・ネタかぶってるのあったらごめんなさい
では。また何か書きに来ます。

まぁ、この板の別スレでSS・・・書いてるんですけどね。
トリップはつけてないので。わからないと思いますが

50 :名無しさんちゃうねん :2005/05/23(月) 19:11 ID:???
GJ!!
展開がうまかった。

>ちよちゃん=謎のお姫様みたいな使い方

ここら辺の流れ激ワロス。

51 :名無しさんちゃうねん :2005/05/24(火) 20:07 ID:???
やべえ めちゃ笑いながら読んでた
うまいことキャラの特徴と笑いのツボをおさえてていいな。

52 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/05/26(木) 19:34 ID:SBtO6zLU
>>43-48
本当にあずまんがでありそうでな話の展開で、落ちもすっごく良く、とても楽しませていただきました。
GJ!!

53 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/05/26(木) 21:57 ID:???
キャラの特徴というか、役回りというか、はっきりしてて読みやすかったです。
ん―――・・キャラが立ってるってことでしょうか。

西遊記だとラブひな5巻のあずまんが版みたいになりそうで面白そうですね。
いや・・・ラブひな読んだことなかったらすんません。

54 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:01 ID:???
>50さん 
実は、自分に対する突っ込みだったりします。書いてて最初気づかなくって。
読み返してみておかしいと思って、よみちゃんを突っ込み役にしてみました。

>51-52さん
ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしい限りです。
原作の雰囲気をなくさないようにするのに気をつけてみました。

>53さん
キャラは特徴ありますからね。他作品よりもこういうのは書きやすいです。
ラブひなのは知ってますけど。西遊記はあくまでオチだったんで、何も考えてませんでした。
今度考えて見ますね

えっと。新作できました。何回かに分けるので、時間かかりそうです。
あと、作品は主人公とちよちゃんの視点でかかれます。
主人公してんの時は−TAKA− ちよちゃん視点の時は−CHIYO−と頭に書きます。
今回のは書いたことの無い分野なので、手探りで作品を書いています。
修正したほうがいい部分などは、教えてください。
内容を読んでもらえればわかると思いますが、別スレの大阪メイン小説を読んでいたら書きたくなってしまいました。
やばいです。微妙にパクッてます。
大阪の兄さん。どうか暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。

55 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:03 ID:???
−TAKA−
 美浜ちよという名の少女がある高校に通っている。
 俺の義妹だ。
 もっとも、彼女はまだ11歳。
 本来であれば小学6年生なのだが、特例中の特例で高校に飛び級。今は高校2年だ。
 俺の友人たちは、俺のことをうらやましがる。
 可愛い義妹がいて、ゆくゆくは恋人だと。
 と、いっても。俺には幼女の趣味はまったくない。
 俺とちよは8歳の年齢差だ。恋愛感情を抱くほうがおかしい。
 彼女は俺の・・・妹なのだから。
「うわ。雨か。そういや、日本は梅雨時期だったっけな」
 俺は中学を卒業して、アメリカの高校に進学をした。
 色々大変だったが、努力の甲斐もあって今はMITの学生だ。
 そして、2年ぶりの帰国。
 羽田空港に降り立った俺は雨の降る外を見ていた。
「タカお兄さん。おかえりなさい」
 外を見ていた俺の背後から声がかかる。
 可愛らしい声だ。
 最後に会ってから2年・・・俺は一日たりともこの声を忘れたことは無かった。
 振り向く。
 声のイメージ通りの可愛らしい姿の少女。
 髪を両側でお下げにし、白いワンピース姿だ。
「ただいま。ちよ」
 美浜ちよ。俺の義妹。
「また、可愛くなったな」
「えへへ。ありがとう」
 少し背も伸びたようだ。
 10歳で高校に入学と聞いて、どうなるかと思ったがどうやら元気でやっているようで安心した。
「さぁ、お家でお父さんとお母さんが待ってますよ」
「そうだな。色々土産話もあるからな、後で聞かせてやるよ」
 俺はちよの小さな手をとって歩き出す。

56 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:04 ID:???
−CHIYO−
 お兄さんが帰ってきた。
 美浜貴洋。私はタカお兄さんって呼んでいます。
 4年前にアメリカに留学して、2年前に一回帰ってきたきり。
 電話も手紙もこっちからしないと、絶対に自分からはしてこないお兄さん。
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」
「あ。ううん。なんでもないです」
 嫌われたのかなとも思ったけど、お兄さんの優しい顔は変わってませんでした。
 お母さんの言うとおりに、忙しかったのと筆不精なだけみたいです。
 大好きなお兄さん。
 お父さんとお母さんの次に大好きです。
 いつも私に優しくしてるところも好きだし、手をつないでいてくれるのも好き。あと、頭を撫ぜてくれるのも。
 こうして電車に乗っている時でも手をつないでいてくれます。
「結構ビルとか増えたな」
「私はあまり知らないけど、友達がまたビルが建ったって言ってましたよ」
「そういや、高校に行ったんだよな。学業は問題ないとして、友達とかはどうだ?」
「えへへ。大丈夫だよ。友達い〜っぱい出来たから」
「そっか。なら安心だ」
「うん。あ、お兄さんにも今度紹介しますよ」
 お兄さんの笑顔が好き。お兄さんの声が好き。お兄さんの全部が大好きです。
 あ、彼女さんとか出来たのかなぁ?
 もし、彼女さんがいるなら私はあまりくっつかないほうがいいかもですね。
 ちょっと寂しいです。
「あれ〜?どっかで聞いた声だと思ったらちよちゃんじゃん。やっほ〜」
「え?あ、ともちゃん」
 前の座席に座っていたのは、なんと同じクラスのともちゃんでした。
 こんなこともあるものなんですねぇ。
 ともちゃんは座席をひっくり返して、私たちと向かい合う形に座席を変えました。
 あ、お兄さんが不思議な顔で私とともちゃんを見ています。
「紹介しますね。クラスメートの滝野智ちゃんです。ともちゃん、こっちは私のお兄さんです」
「へぇ。ちよちゃんにお兄さんいたんだ。ども〜、滝野智でぇす」

57 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 17:06 ID:???
−CHIYO−
「俺は、美浜貴洋です。よろしく。いつもちよがお世話になってるみたいで」
「あはは。いえいえ、そんなことはありませんよ」
「どっちかっていうと、私が世話をしているような」
「ちよちゃん、言うようになったねぇ」
「は、き、聞こえてました〜!?」
 うぅ。ともちゃんは地獄耳さんです。
「あ、ともちゃんはどうしてここに?」
「あぁ、うちのオトンが出張で北海道に行ったんだ。それの見送り〜」
 へぇ・・・あ。そういえば、ともちゃんのお父さんってどんな人なんでしょう?
 見たことありませんねぇ。
「ねぇねぇ、ちよちゃんのお兄さん」
「ん?」
「彼女・・・いる?」
 あわわわわわ。さっき、私が疑問にしてたことをともちゃんが口に。
 ともちゃんはこういうことが大好きだから油断できません。
「残念ながら。女友達はいるけど、彼女はいないよ」
 お兄さんは肩をすくめて言います。
 なるほど。いいことを聞きました。はっ・・・ともちゃんまさか!?
「へぇ。素材はすごくいいのに・・・ひょっとして性格が悪いとか?」
 確かに。それは私も疑問です。
 って、お兄さんの性格は悪くありません。悪いのはともちゃんの方です。
「そうだ。それじゃあ、私が立候補しようかな」
「ダメです!!そんなの絶対にダメなんです!!」
「ち、ちよちゃん?」
 はっ。えっと・・・あの、私。
「そんな立ち上がってまで否定しなくても。んふふ。お兄さんの幸せ者」
 あうぅ。顔から火が出そうです。
 あっ。お兄さんが・・・頭を撫でてくれました・・・こうされていると、とても幸せな気分になれます。
「いいなぁ。お兄さんかぁ。私もお兄さん欲しかったなぁ」
「えへへ。お兄さんは私だけのお兄さんなんです」

58 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 18:01 ID:???
−TAKA−
「さ、つきました〜」
 俺とちよはタクシーを降りる。
 相変わらずこの家はでかい。
 そういえば、俺がこの家に来てからもう10年以上はたつんだよな。
 俺の両親が死んで、親父の親友だったちよの父に引き取られたのが8歳の時。
「どうしたんですか?」
「いや。相変わらず大きい家だよなと思って」
 丁度ちよが生まれたころのことだった。
 だから、ちよは俺が養子であることを知らない。本当の兄妹だと思っているはずだ。
「お兄さんの部屋はそのままです。あ、シーツとかお布団類はちゃんと洗濯されてますし、掃除もしてありますよ」
「ありがとう」
 俺は荷物を持って二階にあがる。
 お父さんとお母さんの靴が無かったところを見ると、まだ仕事から帰ってきていないようだ。
 俺は懐かしさを感じながら自室のドアを開く。
 ベッドがあって机があって。本棚やタンスがある。
「ん〜・・・やっぱここはいいなぁ」
 俺は荷物を置いて上着を脱ぐとベッドに横になる。
「あれ?これは・・・」
 ベッドと壁の隙間に何かが落ちている。
 白い布?
 ほほう。これはひょっとして。
「お兄さ〜ん。お父さんとお母さんはあと1時間で・・・って、あわわわわわ、な、何を持ってるんですか〜!」
 俺はその白い布を広げてちよに見せていた。
 ペンギンのワンポイントの入ったそれは、ちよのパンツだと思われる。
 それはちよによって奪われ隠された。
「むぅ」
「なんで、こんなのが落ちてるんだ?」
「・・・寂しかったときに・・・お兄さんの部屋で寝たから・・・」
 うつむいた顔が紅い。
「そか。ちよ。こっちにおいで」
 俺はちよを抱きしめる。俺の鼻腔をちよの甘いにおいが突き抜けていった。

59 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 18:01 ID:???
−TAKA−
「休みは短いけど、休みの間は一緒にいような・・・寂しい思いをさせてごめんな」
 ちよが頷く。
 頭もよくて高校生のちよだけど、やっぱりこういうところはまだまだ子供だな。
「お兄さん」
「ん?」
「今日は一緒に寝ていい?」
「いいぞ」
「一緒にお風呂に入ってくれる?」
「もちろん」
「・・・・・・嬉しいです」
 そうだよな。
 やっぱりちよは子供なんだ。自分よりも5歳も上の人たちに囲まれて過ごして。
 不安や寂しさや辛さがないはずがないんだよな。
 少なくとも俺がいる間だけでも、それが和らいでくれればいいな。
「そういえば、お兄さんはいつまでいるんですか?」
「えっと、今日が土曜だろ?2週間はいれるから・・・再来週の土曜までだな。日曜の朝の便で帰るから」
「2週間・・・うぅ。やりたいことがいっぱいあって全部できないかもです」
 ちよは、俺の部屋の本棚から雑誌を取り出す。
 レジャーランドの雑誌のようだ。
 俺の本じゃないな。ま、ちよがここをよく使っている証拠のようなものだ。
「えっと。ここも面白そうですし、こっちもいいですよね。あ、でも・・・」
 一生懸命に雑誌を読んでは折り目をつけている。
 そんなちよを見ているとどうにも微笑ましい雰囲気になってしまう。
「あ。私の顔に何かついてます?」
「いや。楽しそうだなって思って」
「楽しいですよ。お兄さんと出かけるなんてめったにないんですし」
「そうだな。よし、じゃあ俺も片付け終わらせてちよと計画を練るか」
「はい!」

60 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/27(金) 18:01 ID:???
−CHIYO−
「ふぅ。いいお湯です」
「くく。なに年寄りみたいなこと言ってるんだ」
「そんなにお年寄りみたいな言葉ですか?」
 浴槽にはられた真っ白なお湯。
 普段はこんな入浴剤は入れないんだけど今日は特別です。
「うへ。真っ白だな。これじゃあ何も見えないぞ」
「見えないって何を見るつもりですか?」
「もちろん、ちよのおっぱいがどれだけ成長したのかをだな」
「入浴剤を入れて正解でした」
 お兄さんも湯船につかる。
 本当に入ってしまえば、自分の手すら見えないくらいに真っ白です。
「やっぱ風呂はこうだよなぁ」
「??」
「俺の住んでる場所、ユニットバスなんだけどさ。浴槽が狭くて狭くて。向こうはシャワーが多いから広さは必要ないんだと」
「あぁ。なるほど」
 そうは言っても、お兄さんは背が高いから特別な気が。
 あ、でも、アメリカの人ならお兄さんと同じくらいの背の人はいっぱいいますよね。
 じゃあ、やっぱり狭いのかな?
「温泉に行きたいなぁ。紅葉に囲まれた露天風呂・・・日本の風物詩だよな」
「そうですね。露天風呂って気持ちがいいです」
「・・・ちよ。こっちにこい」
 きゃっ。抱きしめられました。
 さっきと違って裸だから、少しドキドキします。
「あっ」
「ん〜。こっちはあんまり成長してないなぁ」
「お、お兄さん・・・」
 お兄さんの手が私の胸の上で。
「バカバカバカバカバカバカ」
「いてててて。桶でたたくな、悪かったよ」
 もぅ。お兄さんがこんなにエッチになってたなんて。注意しないといけませんね。

61 :名無しさんちゃうねん :2005/05/28(土) 00:14 ID:EUT3sCR6
>>60
GJ!!

62 :名無しさんちゃうねん :2005/05/28(土) 00:24 ID:???
>>60
つ・づ・き!!つ・づ・き!!続きキボンヌ!!

63 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:35 ID:???
−CHIYO−
「・・・なので昨日はすごく楽しかったです」
「おぉ。あのお兄さんとか」
 昨日はお父さんとお母さんとお兄さんと4人で遊園地に行ってきました。
 忠吉さんはお留守番です。
「へぇ。よかったじゃないか」
「えぇなぁ。私も遊園地に行きたかったなぁ」
 今はみんなにお土産を渡しています。
「そんなにいい兄ちゃんなんだ。どんな人なんだ?」
「えへへ。見ますか」
 私のカバンの中には昨日撮ったデジタルカメラが入っています。
 カメラのデータにはお兄さんの写真もいっぱいです。
 これで、お兄さんが帰っても寂しくはありません。
 でも、最初だけかもしれません・・・
「ちよちゃん?」
「あ、す、すみません。えっと、この人です」
 みんなが覗き込みます。
「へぇ。結構かっこいいな」
「・・・うん」
「榊さんほどじゃないですけどね」
「隣に住んでた松永さんにそっくりや〜」
「いいなぁ。こんなかっこいい兄ちゃんがいてさ」
「ふふん。どうだ」
「どうして、そこで智がいばるんだよ」
 えへへ。みなさんがお兄さんを褒めてくれると私もうれしいです。
「いつまでいるんだ?」
「えっと、再来週の日曜の朝の便だって言ってました」
「よっしゃ。その前に一回会いに行くで〜」
「おぉ。大阪にしては珍しくいい案だな」
「はい。ぜひ会いに来てください」

64 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:35 ID:???
−TAKA−
「貴洋くん。どうだい一杯」
 お父さんがブランデーをすすめてくる。
「酒は二十歳になってからですよ」
「家に居る時くらいは気にするな」
 俺もアメリカでは飲んでいたから別に酒を飲むことには問題はない。
 お父さんの向かいのソファーに腰掛ける。
「ちよは寝たのか?」
「えぇ。先ほど」
 グラスの中の液体に口を含む。
 口の中が熱くなってくる。
「そうか。じゃあ、丁度いい機会だ。帰ってきて1週間たったしな・・・聞いておきたいことがあったんだ」
「なんですか?」
「君が家に来て10年ほどか」
「えぇ。今まで本当にありがとうございます」
 俺は心から感謝している。
 俺のことを本当の子供のように育ててくれたお父さんとお母さん。
「時に貴洋くんは、ちよのことはどう思ってるのかね?」
 聞かれた。いずれそういう質問がくるだろうと思ってた。
「ちよとは血が繋がっていないんだ・・・もし君が」
 ちよは確かに可愛い。
 だけど、10年以上妹として接してきたんだ、いまさら。
「俺はちよのことは妹としか思っていません・・・それ以上でもそれ以下でも」
「・・・そうか・・・ちよ?」
「え?」
 俺は後ろを見る。
 リビングのドアが微かに開きそこからちよの顔が覗いていた。
「あ、あの・・・盗み聞きとか・・・じゃなくて、あの」
「ちよ。今度ゆっくり説明する。今日は寝なさい」
「あ・・・はい」
 俺は・・・寂しそうな顔のちよに何も言えなかった。

65 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:36 ID:???
−CHIYO−
「おはよ〜・・・!?ちよちゃんウサギさんや!!」
「え?」
「目が真っ赤やで?何かあったん?」
 昨日は一睡も出来ませんでした。
 お兄さんはお兄さんじゃなくて・・・でも私は妹で・・・
「・・・何かあったのか?」
「あ、榊さん・・・いいえ、ちょっと心配事あっただけです。今は平気です」
 平気・・・です。
 心配ではありますけど、私にはどうすることもできません。
「ちよちゃん・・・今日、放課後時間・・・ある?」
「あ。はい。大丈夫ですけど」
 榊さんが私を誘ってくるなんて珍しいです。
 その日、私は勉強が身に入りませんでした。
 お兄さんのことだけが頭の中をグルグルと回ります。
「ちよちゃん・・・一緒に帰ろう」
「あ。はい」
 今日は榊さんと一緒にどこかに行くのでした。
「どこに行くんですか?」
「・・・もうすぐ」
 私は榊さんと一緒に公園にやってきました。
「修一」
「あ、姉ちゃん」
 ブランコのところに男の子が居ます。
 あれ?どこかで見たことがあるような。
「・・・ちよちゃん。弟の修一」
「あ。美浜ちよです・・・はじめましてじゃないですよね」
「覚えててくれたんだ。よかった。俺は榊修一。小4の時に一緒のクラスだったんだぜ。まぁ、ほとんど話とかしてないけどな」
 あ、そういえば。
「先生にイタズラして怒られてた榊くん?」

66 :義兄弟 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/28(土) 10:36 ID:???
−CHIYO−
「うわ。そういう覚え方か。でも、まぁ・・・その榊だ」
 そっか。榊くんのお姉さんが榊さんだったんですね。
「えへへ。久しぶりですね。元気でしたか?」
「あ、お、ぉぅ」
 榊くんは顔が赤くなってうつむいてしまいました。
 あれ?さっきまで近くにいた榊さんがいません。
「あ、あのさ・・・美浜って今・・・つきあってるヤツとかいるか?」
「え?あ・・・」
 お兄さん。
 あ、あれ?どうしてお兄さんの顔が。
「い、居ません」
「そ、そうなのか。えっと、あっと・・・なんていうか・・・あのな」
「ん?」
 何の用事なのでしょう。
「あのさ。お、俺と・・・付き合ってくれないか?」
「え!?・・・えぇぇぇぇぇ!?
 付き合うって、あの、それは、遊びに行くとか・・・あのあの。
「へ、返事はすぐじゃなくていいんだ。あ、ご、ごめんな。じゃあ、またな」
「あっ」
 榊くんが走って行ってしまいました。
 ・・・私は・・・どうすればいいのでしょう。

67 :名無しさんちゃうねん :2005/05/29(日) 09:29 ID:???
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━

68 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:24 ID:???
−TAKA−
「ただいまぁ。あれ?」
 玄関に見慣れない靴がある。
 大きさはちよのよりも少し大きい程度。けど、男の子の履くような靴に見える。
「あら、貴洋さんお帰りなさい」
「あ、お母さん。お客さん?」
「えぇ。ちよのボーイフレンドみたいなの。ちよったら、違うって言うけどきっと間違いないわ」
 ちよのボーイフレンドか。
「確かにちよにもいてもいい年頃ですものね」
「えぇ。ただ、お父さんがなんて言うか」
 心配はしているようだが、娘に彼氏が出来たことの方がうれしいらしい。
 顔が笑ったままだ。
 ふむ。丁度いいかな。
「お母さん。お話しがあるんですけど」
 ・・・
 俺は部屋に戻って周りを見る。
 といっても、ベッドとタンスと机。あとはラジカセなどの小物類しかないのだが。
「ん〜・・・今のベッドとタンスは借り物だからこれをもっていくとして。小物類は処分かな」
 そんなことを考えながら俺は携帯電話をとる。
「今日が火曜だから、金曜の午前中までにっていうと時間がもうないな。けど、今はシーズン外だしどこかあるだろ」
 手に持った電話帳を机に置いてページをめくる。
 さて、今日から忙しくなりそうだな。

69 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−CHIYO−
 あれ?
 私の家の前に停まっているトラック、お兄さんの机を載せていたような。
「では、これで」
「はい。ご苦労様でした」
 お母さんに挨拶した男の人とすれ違う。
 宅配業者さん?
「ただいま。お母さん、今のはなんですか?」
「あら、ちよ・・・おかえりなさい」
 少しお母さんの顔が暗い気がします。
「トラックの中にお兄さんの机が見えたんですけど」
「・・・ちよ。お兄さんねアメリカに行ったの」
「え?でも、帰る日って日曜の朝じゃ」
「帰ったんじゃなくて、向こうに行ったのよ。ちよ宛に手紙を預かってるわ」
 手紙?
 私はとても嫌な予感がしました。
 この手紙を読んでしまったらお兄さんとの関係が全て崩れてしまうんじゃないかっていう予感が。
 けど、読まないとダメですよね。
「ちよ。家に入ってから読みなさい」
「あ、はい」
 私は重い足取りで二階にあがります。
 机に向かって手紙を・・・読みたくはないのですけど。
「・・・ちよへ。この手紙をちよが読む頃には俺はもう日本には居ないと思う」

70 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−TAKA−
 ちよへ。
 この手紙をちよが読む頃には俺はもう日本には居ないと思う。
 黙って出てしまってすまない。本当は、ちよにも言っておくべきだったと思う。
 けど、俺はどうも意気地がないらしい。こんな形での報告を許して欲しい。
 俺がちよの本当の兄じゃないことはもう知っていると思う。
 お父さんはもっと別な形でちよに教える予定だったみたいだけど、突然のことで驚いただろう。
 この家の本当の子じゃないのは俺だ。
 だから、俺は家を出ることをあらかじめ決めてたんだ。
 ちよを俺が守らなくてもよくなったら。そう決めてた。
 先日、ちよに彼氏が出来たのを聞いた。
 同い年くらいだけど、きっとちよを守ってくれるような相手になると思う。
 それに、そろそろ俺も妹離れしないといけないと思ってたところだったから。
 ちよはとっくに兄離れしてたのに、情けない兄でごめんな。
 俺の方が整理ついたら、また会いに行くよ。
 ちょっと変な文章になったけど、すまない。
 俺のほうでも少し急なことでまだ気持ちが落ち着いていないんだ。
 じゃあ、バイバイ。

71 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−CHIYO−
「・・・お兄さん・・・」
 あ、あれ。涙が・・・止まりません。
 お兄さんの手紙が濡れちゃう。
 っく・・・ひっく。
「くぅ〜ん」
「忠吉さん・・・そう・・・ですよね。お散歩・・・行きましょう」
 今は何も考えたくありません。
 お散歩に行って気分を変えるのもいいかもしれません。
 ・・・変わらないかもしれませんけど。
「じゃあ。行きましょうか」
 ・・・
「ちよちゃん」
 あ。榊さん。
「・・・何かあった?」
「うっく・・・ひっく・・・えっく」
 ・・・
「落ち着いた?」
「はい」
 私は榊さんから体を離して涙を拭きました。
 あ、榊さんの服が私の涙で濡れてしまいました。
「お兄さんが・・・行ってしまったんです」
「・・・そうだったんだ。ひょっとしてと思ったけど」
「え?」
「昨日の夜。散歩していたお兄さんに会って、少し話をしたから」
 そうだったんですか。
 榊さんは少し戸惑ったような感じでしたけど、私に昨日の夜に話をしたことを教えてくれました。

72 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:25 ID:???
−SAKAKI−
 ん?あれは確か。
「あ、あの・・・」
「え?あぁ、君は確か・・・ちよのクラスメートの」
「あ。はい。榊です」
「こんばんわ。散歩かい?」
 私の前にちよちゃんのお兄さんががいる。
 私よりも背が高くてすらりとした男性。
 物腰も柔らかくて優しくて、もっと、前に会ってみたかった。
「いえ・・・コンビニに買い物です・・・お兄さんは?」
「そっか。俺は適当にプラプラと。女の子の一人歩きには時間が遅いから送るよ」
「あ。ありがとうございます」
 いつもなら男の人にこんなことを言われたら絶対に断るのに。
 なぜか今は素直に従ってしまった。
 ・・・買い物も済み、でも全然会話が進みません。
「あのさ。ちよのことよろしく頼むな」
「え?」
 急に声をかけられて思わず立ち止まる。
「俺はもうあいつの側には居られないから」
「けど」
「君がちよの友達の中で一番頼りになりそうだからさ」
 そう言ったお兄さんの顔は少し寂しそうな笑顔だった。
 けど。お兄さんはアメリカに帰ってしまうんだ。だから、なのかもしれない。
 ふと私の頭にあることがよぎった。ひょっとして。
「お兄さんは、ちよちゃんが好き・・・なんですか?」
「兄だからね」
「・・・兄妹じゃなくて、男女として・・・です。お兄さんが恋人をつくらなかったのはひょっとして」
 お兄さんは私に背中を向けて歩き出す。
「さぁね。もう、ここでいいだろ。じゃあ・・・ちよのこと頼むな」
 肩越しに振り向いたお兄さんの顔は、先ほど以上に悲しさと笑顔の混じったそんな顔だった。

73 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:26 ID:???
−CHIYO−
「そんなことがあったんですか・・・」
 私は考えたことがありませんでした。
 お兄さんが私のことをなんて。
「榊さん・・・みなさんには内緒にしてくださいね・・・私とお兄さんは血が繋がってないんです」
「・・・義兄妹・・・なんだ。そっか。それなら」
 榊さんは夕日にしずむ町を見ている。
「ちよちゃん・・・ちよちゃんの気持ちはどうなの?」
「私の気持ち?」
「うん。お兄さんのこと・・・どう思ってるの?」
「私は」
 私は・・・お兄さんのことが。
 お兄さんのことが。
「好きです。大好きです。ずっと・・・ずっと一緒にいたいです」
 そう言った時の榊さんの表情はとても暖かいものでした。
「なら、会いに行けばいい」
「でも・・・お兄さんは」
「大丈夫。ちよちゃんの願いはきっとかなうよ」
 私の願い。
「はい!榊さん。ありがとうございます・・・あ、榊くん・・・」
「うん。ちよちゃんは、笑顔の方がいい。あと、修一のことは気にしなくて言い・・・私から言っておくから」
「いえ。帰ってきたら私が言います」
 えへへ。
 明日は土曜日です。
「明日、お兄さんに会いに行ってきます」

74 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:27 ID:???
−TAKA−
「はぁ・・・」
 本日十回目の溜息。
 先日榊さんに言われてわかった。
 俺はちよのことが好きだったらしい。
「はぁ」
 本日十一回目。
 ロリコンなのか俺は?
 あぁ・・・それだけは認めたくはないのだが。
 ちよが好きだってのは、間違いないよなぁ。
 いや。まてよ。俺が好きなのは不特定多数の女の子じゃなくてちよだけなんだし。
 ならロリコンじゃないな。うん。
「はぁ」
 本日・・・・・
 好きだとわかったとたんに失恋か。
 ピリリリリリリ。
 誰だ?俺がこんなに早くこっちに戻ってきてること誰にも言ってないはずだけど。
 ピリリリリリリ。
「はいはい今開けます」
「・・・お兄さん」
 ちよ?
 やばい。幻視じゃないだろうな。
 そんなわけはないか。いくらなんでも。
「えへへ。遊びに来ちゃいました」
「どうして」
「・・・お兄さん。ふつつかものですけどよろしくお願いします」
「へ?」
 どうして、ちよが俺に頭を下げるだ?
「お兄さん。ちよをお嫁さんにしてください」
「・・・ちょ、ちょっと待て。どういうことだ?」
「私は・・・私はお兄さんが大好きです」
 その日。俺とちよは・・・義兄妹から恋人になった。

75 :義兄妹 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:27 ID:???
−CHIYO−
「ちよちゃん留学するんやよね」
「はい。アメリカの知り合いのお家に住まわせてもらいます」
 えへへ。
 お兄さんの家に住まわせてもらうのです。
 来年からはずっと一緒です。
「・・・なぁなぁ」
「なんですか?」
「ひょっとして、去年来たお兄さんか?」
 う。大阪さんてば、たまにするどいですよね。
「はぁ。ちよちゃんにも春が来てるんやなぁ。私もガンバらなあかんな」
 大阪さん。結構人気あるのに、本人が気づいてないからなぁ。
「ちよちゃん、がんばろな」
「はい!」
「まずは、私は大学受験や・・・彼氏つくるよりも難しいかもしれへんなぁ」
「あ。あははは・・・」

(完)

76 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/05/30(月) 21:29 ID:???
長・・・長い作品ごめんなさい。
昔の少女漫画とかのオーソドックスパターンかな。
しかも、64-66までのタイトルが間違ってるし。
義兄弟じゃなくて義兄妹です。義兄弟だとちょっとヤバイ感じ。
では。長い作品にお付き合いいただきありがとうございました。

77 :名無しさんちゃうねん :2005/05/31(火) 19:08 ID:McEBvBo2
>>76
すっごく乙_〆(゚∀゚*)

78 :ペンギンダンス :2005/06/01(水) 00:52 ID:???
巧いなー(;゜∀゜)=3 
なんか胸がキュンときました。乙です。

79 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/06/01(水) 19:29 ID:0FjnkBnw
>>76
青春ってかんじですねぇ。
GJ!

80 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/01(水) 20:41 ID:???
乙です!面白かったっす!!ゴチソウサマ――

81 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/06/04(土) 08:46 ID:IGS2QQ0c
かなり遅れましたが、
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081700484/827-829
の続きですよ。

82 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/06/04(土) 08:48 ID:???
「ちよちゃん、がんばれ。あと少しだからな……」
皆が来るまで、ちよちゃんを見守っていた。
息はしてるから大丈夫だ。まだ間に合うって自分に言い聞かせながら。
「ちよちゃん!」
一番に救急箱を持った榊さんが駆けつけてくれた。
「榊ちゃん!早く解毒剤!!」
「わかってる!!」
中にはメスとかいろんなのが入ってるけど、その中から注射器を取りだして、なんかの容器に突き刺して、中の液体を吸い出している。
そうか、あれが解毒剤か。
で、ちよちゃんの腕に打った。
「どう?」
「多分大丈夫。ともが毒を吸ってくれたんだろ?だからそんなに酷い事にはならないと思う」
これでこれで安心できた。
「よかったぁ」
「ああ……」
いつのまにか皆が私の後ろに集まっていた。
「まぁ、あとはちよちゃんを別荘に運べば終わりだしな!」
「そうね」
ふと気づいた。
皆どこか悲しそうだ。まだ、ちよちゃんが意識戻らないからかな?
まぁいいや。気のせいだ気のせい。
ところで、何か忘れてるような気が……
「そうだ!私も海蛇に噛まれたんだ!!」
ちよちゃんのことですっかり忘れてた。このままじゃ私も死んじゃうところだ!!
「お前…… 本当に気づいてないんだな……」
え?よみ、何言ってんだ?
「もう私でもどうしようもなかったんだ……」
榊ちゃんも。
「本当におっちょこちょいね…… あ、あんたって……」
かおりんまで!?
「何だよ!私がどうしたんだよ!?」
「とも、手をかざしてみなさい」
なんかいきなりトンチンカンな質問だけど、かおりんに言われて左手を夜空向かってかざした。
「はいよ」
なんでこんなこと?べつにどーってことないじゃん
「あんた、本当に鈍いのね……」
へ?何が?
「じゃぁ手を私に向かってかざして、良く見ろ」
「よみ!!それは―――」
「いいんだ…… そのほうがとものためだ」
まったく、私の手に何かついてるの?
まぁわかんないけど私は手を見た。
「!!!!」
手によみの顔が映ってた。いや、よみの顔が透けて見えてる
何これ!?どうなってんだよ!?
「な、なんだよこれ!?」
まさか……まさかまさか、私……

83 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/06/04(土) 08:49 ID:???
「もう、わかっただろ……」
今度は神楽が後ろにいた。涙を零しながら、こっちを見てる。
神楽の両肩から腕が垂れ下がっている。
つまり誰かを背負ってるってことだけど、メンバーは全員ここにいる。ってことは―――
「神楽…… もう、覚悟できてる。だから―――」
神楽の持ってるのが“誰か”くらいわかるよ。怖いよ。それを見るのが……
けど…… 見なかったらどうこうなることはないんだよな……
「ほら……」
器用にその“誰か”を手前にもってきて、お姫様だっこで私のほうに向けた。
いっつも一緒にいて、別々になるなんて夢にも思わなかった。
無茶する私にいっつも耐えてくれた―――私の身体(からだ)。
毎日鏡で見ている姿がそこにあった。嘘みたいだけど―――死んじゃってるんだ。
もう、私は…… 死んじゃったんだよな。
あの時だ。別荘の前で転んだ時。あそこのあと全力疾走したのに、辛いどころか、体がフワフワしてたし。
「笑って…るんだぜ。いかにも…お前らし……っい死に方じゃっ……ねーかよ……」
なんで…… 笑ってるんだ?毒でフラフラになって…… なんで?わからない。
けど、満足したからじゃないかな。ちよちゃんを助けられたから。
別に自分の命がどうこうなんて思ってなかった。ただ、ちよちゃんがこんな悲しい中で死んでほしくなかった。ただ、それだけ……
「なぁとも……」
「何だよ?」
よみの声が震えてる。こんなに悲しそうまよみ見るの、大阪の時以来だ……
「満足……してるか?今まで……」
「ああ!」
そりゃぁもちろん―――
「大満足だ!」
大笑顔で返してやった。だって別に死んじゃったのは私だけだし、悲しむ事はないよな。
「そりゃぁこれからお前たちと喋れなくなるのは悲しいよ。
 でもさ、お前たちの事ずっと見守ってやれるし。御用とあれば、ムカツクやつらを呪い殺してやってもいいぜ」
よみのやつ、クスッって笑って―――
「そうか。ならいい」
って言った。
私も、大阪のところに行く事になったんだ。もう、こっちの人間じゃない……
「わっ!」
「うわぁぁぁぁっ!!」
な、なんだ!?
「あはははははは。変わらんなぁ、ともちゃんも」
この声、この大阪弁、このおっとり感、そして何よりもこの感覚……
「大阪ぁっ!!」
約束、守ってくれた。
会いに来てくれた。
「もう、ともちゃん。死ぬの早すぎやで!」
そう言いながら、私の胸――結構成長したんだぞ――に抱きついてきた。少し、涙声だ……
「なに泣いてんだよ〜〜〜。お前らしくねーぞ!」
「だって、ともちゃん死んでもうたんやで!」
「別にさぁ、人間いつか死ぬんだから〜〜〜。それに大阪だって死んでるじゃん。くよくよしてたってしょうがないし」
嘘じゃない。本当にそう思ってる。
だって私が死んでも、皆がそう考えてほしいから。悲しんでほしくないから……

84 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/06/04(土) 08:51 ID:???
「でも、私が死んだとき、ともちゃんやって泣いとったやん!」
大阪の抱きしめる力が強く――てか、もともとこいつ力弱いけどな――なった。
「そ、それは―――」
「まぁええ。お願いや。このままもう少しだけ……」
「ああ……」
綺麗言かもしれないけど、言葉なんて要らない。
お互いに理解しあえてるつもりだし、満足しあえればそれでいいんだ。
「っと、大阪……」
「ん?どないしたん?」
大阪が私を見上げる。
改めてみると、皆がこっちを見てる。
「お前も大阪も、本当にかわんねーな」
「ほんと、死んだなんて思えない」
「別に、女同士で愛し合うのは悪い事とは思わない」
「これなら、あっちの世界でも安心だな」
あわわわわわ。こ、これはかなり恥ずかしいぞ。
「あの、こーゆーことは成仏してからにしよう、な」
大阪をゆっくりと離らかした。
「せ、せやな」
大阪もかなり赤面してる。やっぱ、皆の前でこんな大胆なのは…… やっぱりなぁ。
「あー、成仏で思い出した。私、ともちゃんを成仏させにきたんや」
「ってことは、お迎え?」
「せやねん」
そっかぁ……
やっぱりこのままここにいるってのはダメだな。
「49日間だけこの世にいれるんやけどな。その前にともちゃんをふつーの人には見えへんようにせんとだめやねん」
へー。そうなのかぁ……
「ちょっと寝過ごして遅れてしまったんや」
……おい。
「なぁ、最期にもう少し時間くれよ。皆に一言ずつ…… な?」
「あ―――、そんなことしたら役人さんに怒られてまうんやけどなぁ……」
天国にも役人いるのか。やっぱり無理だよなぁ……
「まぁええで。ともちゃんの頼みやさかいなぁ。怒られるのはゆかり先生ので慣れとるし」
やったぁ!
やっぱりさぁ、最後くらいはけじめつけてきたいよな。
けど、もうこれで最期…… なんだよなぁ……

85 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/06/04(土) 08:59 ID:???
>>82-84
リアルで見ました。


86 :限界 ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:32 ID:???
>>82-84
乙です。最後がどうなるのか気になるところです。
頑張ってください。

新作できました。一応、続くと思います。

87 :春の日を歩む2人(1) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:33 ID:???
「あんな。私、好きな人できたんや」
 佐伯雄一の手から箸が転げ落ちる。
「どうした?」
「あ、いや・・・なんでもない」
 友人の長谷川にはそう言ったが、佐伯の顔には動揺の色が出ている。
 もちろん、それは大阪こと春日歩の好きな人発言によるものだ。
 佐伯の後ろの席では、春日がいつものグループと一緒に昼食をとりながら雑談をしている。
「5組の大河内くんや」
「へぇ、大阪ってあぁいうのが好みなのか」
「ダメダメ。大河内はもっとマジメでかっこいい、そう榊ちゃんみたいな女性が好きなんだって」
「えぇ?わからんやん。ひょっとしたら私のこと」
 大河内誠。
 高校2年生にしては小柄な体と中性的な顔立ちで、学年問わずファンが多い。
「でな、実は生まれて初めてラブレターだしたんや・・・今日の放課後裏庭でって」
「うわ!ベタだ!!昭和のベタベタ女がいるぞ!!」
「とも・・・うるさい。そうか。うまくいくといいな」
「そうですね。大阪さん、頑張ってください」
「おおきに〜」
 そこから彼女らはまた別な話にうつる。
 テレビやファッションの話などに。
「大河内ねぇ・・・佐伯とは正反対だな」
「うるさいなぁ。てか、何の話だよ」
「バレバレ」
 長谷川はニヤリと笑う。

88 :春の日を歩む2人(2) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:34 ID:???
「ごめん。俺・・・好きな人いるから」
 大河内が中庭から去ってゆく。
 一人取り残された春日。
 いつものように笑顔だがどこか物悲しげな雰囲気をかもし出していた。
「・・・あはは・・・ふられてもうた」
 春日はとぼとぼと歩き出す。
 中庭を抜ける校舎の角。
「ひゃん」
「っと」
 丁度中庭に入ろうとしていた佐伯と戻ってきた春日がぶつかる。
「えく・・・えっく」
 佐伯の胸の位置がかすかに湿ってゆく。
「春日・・・」
 その一瞬で佐伯は悟った。
 春日がふられてしまったことを。
「・・・っぅ・・・かんにんな。見ず知らずの女にこんなことされて困ったやろ」
 少したって、彼女の涙声が聞こえてくる。
 どうやら春日はまだ佐伯だと気づいていないらしい。
「あ・・・あれ?」
 顔をあげて佐伯の顔を見る。
「えっと。同じクラスの・・・」
「佐伯雄一。一応去年から同じクラスなんだぜ」
「佐伯君・・・えへへ、かっこ悪いところみられてしもうたな」
「無理に笑わなくっていいって。なんとなく、理由は知ってるから。辛かったら泣いたって誰も責めねぇよ」
 春日の目に大粒の涙が浮かぶ。
 しかし、その顔は先ほどの悲しい笑顔とは違う。いつもの春日の笑顔に戻っていた。
「おおきにな。あ、用事あったんちゃうん?」
「え?しまった。備品取りに来たんだった。じゃ・・・あ、春日って可愛いからすぐにまた、いい人見つかるって」
「あはは。佐伯君って優しいなぁ。ほなら、部活頑張ってな」

89 :春の日を歩む2人(3) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/06(月) 13:34 ID:???
「で?」
「で、ってなんだよ」
 長谷川が牛乳を飲みながら佐伯に聞く。
「その後は?ちゃんと家まで送って帰ったとか」
「だから、部活で使う備品取りに行ったって。これでも俺は野球部だぞ?」
「かぁ。それじゃあ、ダメだろ。もっとアプローチしないと。ふられて悲しんでいる彼女をだな」
「いいんだよ別に・・・それに、そういうのは卑怯な感じがして俺は嫌いだ」
「はいはい。まぁ、名無しから友達Eランクになっただけマシか」
「なんだよ友達Eランクって」
「名前を知ってるだけのただのクラスメート」
 佐伯が渋い顔になるが、当たっているだけに反論は出来ない。 
「そういや、そのお目当ての春日はどこだ?」
「今日は天気がいいから屋上だろ?」
 佐伯の読み通りに春日たちは屋上でお弁当を食べていた。
「そうなんですか」
「だから言ったじゃん。大河内は」
「お前は黙ってろ」
「あはは。でもな・・・えぇねん。ちょっと気になる人・・・いたから」
「なにーーーーー!?昨日の今日でか?誰だ」
 羽交い絞めにしていた水原を振りほどき、滝野が春日に詰め寄る。
「えへへ・・・内緒や」

90 :春の日を歩む2人(4) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:40 ID:???
「でな、新しい水着買おうと思うとるんやけど」
「いいじゃんいいじゃん。よっしゃ、アタシも買いにいくぞ〜」
 7月初頭の朝。
 外ではセミが鳴き、初夏の日差しがじりじりと肌に食い込んでくる。
「春日の水着姿か・・・見てみたい」
「へ?いややわぁ。そんなえぇもんでもないで」
 春日が顔をあからめて、佐伯の方を向いてはにかむ。
「のあ。春日!?心を読めるのか?」
「アンタ、思いっきり口に出してたし」
 席替えがあって、春日と佐伯が隣の席になってからというもの、春日と佐伯はよく話をするようになっていた。
 それはありがたかったが、どうにも滝野や水原は苦手対象なため、差し引き0と言ったところだったが。
「それにアンタ、水泳の授業で見てるじゃん」
「はぁ?授業ってスクール水着だろ。そうじゃなくて、普通の水着の春日を」
 佐伯がさも当たり前のように言ったのを見て、滝野が深いため息をつく。
「はぁ、わかってないなぁ。ひょっとして、あんたブルマ否定派?」
「ブルマ?別に肯定も否定もしないな。運動はしやすそうだけど転んだりすると危なそうだし」
「これだから根っからの体育会系はダメね。萌えがわかってないわ」
「燃え?」
「萌えよ!萌え!草冠に明るいで萌え」
 間に春日を挟んで、佐伯と滝野が口論を始める。
 まぁ、一方的に滝野が熱くなっているような気もするが。

91 :春の日を歩む2人(5) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:40 ID:???
「あのね。スクール水着もブルマももう日本の遺物なの。ありがたがられこそすれ、煙たがられる言われはないわね」
 滝野の物言いに、周りの男子生徒がうなずく。
「萌えは日本発祥の日本の新しい文化。経済効果だってあるんだから」
「そうなのか?」
「え?あ・・・はい。ニュースでそんなことを言ってましたけど。私もよくは知りません」
 佐伯に聞かれ美浜が答える。
「そんなの常識よ常識」
「お前の常識は少し偏ってるだろ」
 冷静な突っ込みの水原。
 だが、いまだに佐伯には萌えと言うのがよくわかっていない。
「アンタは・・・大阪の水着が見たいって言ってたわよね。てことは、ペタ胸萌えの天然萌えね」
「なんだそりゃ」
「ペタ胸て・・・私、そこまでちっこくは無いと思うんやけど」
「だって、大阪の属性ってそれくらいだし。あとボンクラ属性?」
「それはともちゃんもやんか」
 結局萌え討論は担任がホームルームにやってきて終了した。
 かに見えたのが、佐伯はその日の休み時間全てを使って、滝野と長谷川の2人にじっくり萌えについて教え込まれていた。

92 :春の日を歩む2人(6) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:40 ID:???
「あかん・・・東京の夏は暑くてかなわん」
「はい、アイスです」
「おおきにな〜」
「サンキューちよちゃん」
 日曜の昼。
 春日と美浜と滝野は水着を買うためにショッピングモールに来ていた。
 水原と榊は別な用事が、神楽は部活でそれぞれ今日は来ていない。
「夏だなぁ」
「夏やねぇ」
「夏ですね」
 七月も中旬となれば暑さもかなりのものだ。
 テストも終わり、あとは夏休みを待つだけといった気持ちの学生がいっぱいだろう。
「あ〜。野球やっとる〜」
 ショッピングモールから見える都営市民球場。
 そこで丁度野球の試合が行われていた。
 外から見える電光掲示板に試合状況が書かれている。
「あれ?私たちの学校ですよ?」
「あ、ほんまや」
「ちょっと見ていくか?」
「さんせ〜」
 ・・・・・・
「負けてるな」
「最終回で一点差。2アウト2塁」
「おぉ。ちよちゃん頭えぇ・・・で、どうすれば勝てるん?」
「外野を越えるヒットが出れば同点になると思います。あとはホームラン」
「おぉ!ホームラン。バースや!!バースを呼ぶんや〜」

93 :春の日を歩む2人(7) ◆QkRJTXcpFI :2005/06/07(火) 13:41 ID:???
 選手がバッターボックスに入る。
 最終バッターとなるか、同点・逆転のバッターとなるか。
「あれ?私たちのクラスの佐伯さんじゃないですか?」
「ホンマや。佐伯君や」
「へぇ、2年なのにレギュラーじゃんか」
 マウンド上のピッチャーは素早いモーションでキャッチャー目掛けてボールを放つ。
 鈍い音と共に高く舞い上がるボール。
 キャッチャーがマスクを取り上を見上げる。
 だが、ボールはバックネット裏へと落ちていった。
 佐伯は安堵のため息と共にバットを構えなおす。
 その表情は真剣で少し気負い気味にも見える。
「危なかったですねぇ」
「ほら、大阪。応援してやれよ」
「よっしゃ。佐伯く〜ん!!気合やで〜!!きばりや〜!!」
 佐伯が声の方向を見て一瞬驚きの表情を見せる。
 だが、すぐに笑顔になり主審にタイムをかける。
 天を仰ぎ大きく深呼吸。
 バットを構える佐伯の顔は余裕と自信の表情へと変わった。
 ピッチャーはそれに怒りを覚えたのか、ランナーを気にせずに大きく振りかぶる。
 放たれたボールは先ほどよりも勢いのあるストレート。
 直後。
 甲高い金属音が球場に響き渡り、白球はバックスクリーンに突き刺さる。
「やりました!!」
「おぉ〜」
「いぇい。勝ちだ勝ちだ」
 佐伯がダイアモンドを回り、ホームに戻ってくるとチームメイトたちが出迎えてくれた。
「にしても、佐伯も現金なやつだねぇ。大阪の応援一つでこうも変わるなんて」
「私の応援のおかげなん?」
「そりゃそうだ。この2点は大阪がとったようなもんだな」
「おぉ〜・・・私は幸運の女神なんや」

94 :名無しさんちゃうねん :2005/06/12(日) 00:01 ID:???
さて、どうなる?

95 :名無しさんちゃうねん :2005/06/12(日) 21:13 ID:yuEo5rcE
期待age

96 :春の日を歩む2人(8) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 09:58 ID:???
「・・・ぁ〜」
「うっす。って、なにいきなり死んでるんだ」
 2学期初日。
 佐伯が登校した時にはすでに春日は机についていた。
 座ってはいるのだが、上半身を机に突っ伏しており、完全に無気力状態だ。
(うあ。目がいっちゃってる)
「あ〜。おはよ〜」
「大丈夫か?」
「大丈夫やねん」
 そうは言っているが動作に力がない。
 軟体動物のような動きだ。
「あ〜・・・黒いなぁ」
「ん?あぁ。部活だったからな」
「野球やったんやな。ワールドカップいけたん?」
「は?いや、ワールドカップじゃなくて甲子園な。残念ながら地区大会決勝で負けてダメだったよ」
 佐伯は荷物を置いて椅子に座る。
 クラスの半分はだらけているのが目に映る。
「あ〜。そや。あんな、野球教えてくれへん?」
 顔だけを佐伯の方に向けて春日が言う。
 その目はまだ死んだ魚のような目だが、なんとか意識はあるらしい。
「かまわないけど。どうした?」
「体育でソフトボールがあるねんけどな、私、トロいから」
「ソフトボールか。じゃあ、とりあえずキャッチボールからはじめるか」
 放課後。
「さ、グラウンド行くぞ」
「へ?」
 カバンを持って帰ろうとする春日が佐伯の方を向く。
「へって。お前が言ったんだろ、野球教えろって」
「今日からなん?」
「部活休みだからな」

97 :春の日を歩む2人(9) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 09:58 ID:???
「とりあえずボール投げてみろ」
 春日が手にしているのは、やわらかいゴムボール。
「おっしゃいくで〜」
 ボールを投げる春日。
 春日と佐伯の丁度中間くらいにボールが落ちる。
「これは・・・ちゃうねん」
「ボールの投げ方から教えるか」
 ・・・・・・
「ちゃうねん」
 再度投げたボールは先ほどよりは飛んだが、それでもまだ佐伯の位置には届かない。
「ん〜・・・何がおかしいんだろうか。ちょっとすまんな」
「ひやっ」
 佐伯が春日の二の腕を掴んでみる。
「単に非力なだけか?これじゃあ、ソフトボールは重いんじゃないか?」
「む、無理なん?」
 春日の顔が少しだけ赤くなっている。
「無理ってわけじゃないけどな。バッティングもきついだろうし」
 佐伯が顎に手を当てて考える。
「下手投げで投げてみるか」
「下手投げ?」
「こんな感じだ」
 佐伯はアンダースローの構えでゆっくりとボールを投げる。
 ボールは弧を描き地面へと落ちた。
「おぉ。ほなら、やってみるで」
 春日が見よう見まねでボールを投げる。
 今度は何とか佐伯の立っていた場所まで届く。
「まぁ、試合で使えるかどうかわかんないけど、いいだろう。今度はキャッチの練習もあわせてやるぞ」

98 :春の日を歩む2人(10) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 09:58 ID:???
「ふぅ。いい時間だな」
「もうこんな時間や。今日はおおきにな」
 夕日が徐々に街に隠れ始めている。
「なに。いいってことよ。俺も部活休みで暇だったしな」
 野球部の部室に置いておいた鞄を持つ。
 密室の部室。
 二人の男女。
「あ、あんな。佐伯君」
 顔を赤らめる春日。
「あ。な、なんだ?」
「私な・・・私な」
 うつむいたまま佐伯の目の前に歩いてくる春日。
 彼女の髪の甘い匂いが佐伯の鼻腔に感じられる。
 顔を上げた春日の顔が真っ赤に染まる。
「春日」
 二人は目を瞑る。
 そして、徐々にその顔が近づき。
「お〜っす。大阪〜!!特訓はうまくいったか〜〜」
 突然、勢いよくドアが開いて滝野が部室に入ってくる。
『!?』
「お?お?お?ひょっとして。おじゃまだったかにゃ〜」
 滝野が口に手を当て目を細めて笑う。
「ちがうちがう。か、春日が目にゴミが入ったって言うから。な」
「そ、そうやねん。とってもらってたんよ」
「ふ〜ん。ま、そういうことにしておくか」
 3人は部室を出る。
 春日が後ろを歩く佐伯に近づいてきて、耳元でつぶやく。
「あ、あんな。さっきのは・・・かんにんな・・・もうせぇへんから・・・」
 それだけを言うと春日は滝野の隣に戻ってしまう。
(・・・それって・・・実は脈無し?)

99 :限界 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/13(月) 10:00 ID:???
久々の更新です。あ〜、怖いSSも書かなあかんなぁ
あ、そうそう。トリップ変えました(先に言えよって感じですけど

100 :春の日を歩む2人(11) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 10:18 ID:???
「おっす。何やってんだ?」
「スタメンのオーダー決め」
「あぁ、お前キャプテンになったんだっけか」
 佐伯が机に置いた紙を前にうなっている。
 長谷川が覗き込むと、そこには野球部のメンバーの名前とポジションなどが書かれていた。
「打撃を取れば守備に穴が空くし、守備重視なら打撃力に難があるんだよなぁ」
「ま、がんばれや」
 部外者である長谷川は佐伯の元を離れる。
 佐伯の携帯が震える。
「はい・・・・・・なにーーーー!?」
 佐伯が急に立ち上がって声を張り上げる。
「松戸と円谷が事故!?なんで・・・あんの暴走バカ。で、容態は?・・・そうか。わかった」
 電話を置き頭を抱える。
「骨折か。秋の大会に間に合わないな。ヤバイ。本格的にヤバイ」
 机に置かれた紙から松戸と円谷の文字を消す。
 二人はかなりの実力者ゆえに、その穴はかなり大きい。
「1年の木戸・・・は、ダメだな。雪を一塁手にコンバートするか」
 一人ブツブツとつぶやく。
 声にかなり棘がある。気が荒立っていることは確かだ。
「おはよ〜・・・どないしたん?」
 隣の席の春日が声をかける。
「ちょっとな」
 佐伯は生返事だけで、顔はずっと紙の方に向けられたままだ。
 春日が顔を微かに赤らめて、鞄の中から一枚の紙切れを取り出す。
「あ。そや、あんな。次の土曜に映画に行かへんか?」
「後にしてくれ。忙しい」
「そ、そか。かんにんな」
 手に持ったチケットを鞄にしまい、ゆっくりと席につく。

101 :春の日を歩む2人(12) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 10:18 ID:???
「佐伯君、忙しいん?」
 春日の質問に沈黙で答える佐伯。
 いや、声が聞こえていない可能性もある。
「そやな。忙しいんやな。うん」
「大阪!!今日は寝坊しなかったんだな」
 急に滝野が春日の側にやってきてその背を叩く。
「なんやの〜・・・私、最近寝坊しとらんやんか」
「そうか〜?ま、どっちでも私は構わないけどな、あははははは」
「笑う門には福来るや。佐伯君も根を詰めすぎたらあかんで。あはははは」
 春日と滝野がケラケラと笑う。
「・・・うるさい」
 低く怒りのこもった声。
 佐伯が滝野と春日を睨んでいる。
「お?なんだなんだ?不機嫌モードか?」
 佐伯が立ち上がる。
 勢いよく立ち上がったために椅子が大きな音をたてて倒れる。
 静まり返る教室。
「や、やる気か?そ、それに・・・大阪は佐伯が悩みがあるからと思っていったんだぞ」
「そんなの、ただの迷惑だ」
「迷惑って、ちょっと言いすぎだろ!」
 滝野が佐伯の襟首に掴みかかる。
「大阪はな、お前のことを」
「ともちゃん、えぇねん。うるさくしてかんにんな、佐伯君」
「けど」
 滝野は不満そうな顔だが春日が黙って座ったため、それ以上は何も言わなかった。
 相変わらずの不機嫌顔で椅子を戻して座る佐伯。
 滝野も水原に連れられて自分の席に戻っていった。

102 :春の日を歩む2人(13) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 10:19 ID:???
「佐伯」
 長谷川の呼びかけに答えない。
「無視はするな」
「・・・なんだ」
 昼休み、未だに佐伯はチームのオーダーを組んでいる。
「朝のことだ。あれはお前が悪いぞ」
「で」
「でって。だから春日に謝るとか」
 佐伯がもっていたペンを置き、長谷川の方を見る。
「なんで俺が謝らなきゃならないんだ」
「だから」
「俺が悪いからか?ふん、機嫌の悪い俺の横で騒いだヤツラのほうが悪いに決まってるだろ」
「おいおい。それは逆恨みだろ。それにいいのか?春日・・・結構ショックだったみたいだぞ」
 春日のことを言われて黙り込む。
「別に。もう、どうでもいい」
「は!?なんだよいきなり」
「今は逆に春日のあのノホホンとした顔が恨めしく見えるくらいだよ」
「・・・そうかよ。んじゃ、俺が春日にアプローチしていいってことだよな?」
「どうぞ。てか、いちいち俺に聞くな」
 長谷川が振り返る。
 彼らのすぐ側には、春日が立っていた。

103 :春の日を歩む2人(14) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 10:19 ID:???
 数分前屋上。
「にしても佐伯も心が狭いよな〜」
「あ、でも。朝はともちゃんたちも悪かったと思います」
「なんでだよ。ちよ助はあんなヤツの味方なのか〜〜!?」
 いつものように6人で食事を取る春日たち。
「キャプテンで大変な上に、チームメイトが事故だろ?そりゃ誰でも不機嫌になるだろ」
「あぁ。そういや、野球部の顧問も変わったんだろ?確か古木だったかな。なんかすげー嫌な先生らしいぜ」
「そうやったんか・・・悪いことしてもうたんやな・・・もう一度謝らな」
「大阪いいって、どうせ自分のことしか考えてない頑固親父なんだから」
 滝野はそう言うが、春日の顔は悲しみであふれている。
 顔色もいつにも増して青白くみえた。
「私、やっぱり謝ってくるわ」
 立ち上がり教室に向かう春日。
「ちゃんと謝らな」
 教室に入ると、佐伯はしかめっ面で長谷川を睨んでいる。
 まだ気が立っているせいで声も大きく、春日の耳に佐伯の声が入ってきた。
「今は逆に春日のあのノホホンとした顔が恨めしく見えるくらいだよ」
「・・・そうかよ。んじゃ、俺が春日にアプローチしていいってことだよな?」
「どうぞ。てか、いちいち俺に聞くな」

104 :春の日を歩む2人(15) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 10:20 ID:???
「春日」
 佐伯も春日の存在に気づく。
「あ、あんな・・・朝は・・・ほんまにかんにんな・・・あ、ごめんなさいやった」
 春日の頬を涙が伝う。
「もう。なるべく話かけへんようにするわ・・・今までごめんな」
 佐伯に背を向けると廊下に向かって走り出す。
「佐伯、追えよ」
「いい。言ったろ、どうでもいいって」
「佐伯!!お前、いつからそんなに腑抜けになったんだ。そこまで部活が大事なのかよ!!」
 長谷川が佐伯の襟首を掴み締める。
「何とか言えよ!」
「お前こそ追いかければいいだろ」
「くそっ」
 長谷川は佐伯を離して、背を向ける。
 そして、春日を追って廊下へと出て行った。
「こぼれた水は・・・もう戻らない・・・か」

105 :春の日を歩む2人(16) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:09 ID:???
 佐伯と春日が話をしなくなって数ヶ月。
 冬休みを間近に控えた日。
「さみぃ〜」
 その日、春日は長谷川と一緒に下校していた。
「そやなぁ。長谷川君は寒いの嫌いなんか?」
「あんまり好きじゃないな」
 二人は付き合ってはいない。
 しかし、最近ではこうしてたまに一緒に登下校をするような仲になっていた。
 傍目には付き合っているようにしか見えないのだが、二人の中ではそれは違うものだった。
「今日も見に行くのか?」
「うん」
「風邪引くなよ」
「うん」
 公園の前で春日と長谷川は別れる。
 そして、春日はゆっくりと音をたてないように公園の中心へと向かう。
 そこでは、佐伯が素振りをしていた。
 部活の休みの日は必ずここで素振りをしている。
 そして、それを見つからないように遠くから見るのが春日の日課だった。
「佐伯君」
 佐伯は一心不乱にバットを振る。
 秋大会ではチームが安定せずに惨敗。
 佐伯自身も不調で打撃も守備もボロボロだった。
「へ、へ、へ・・・へーちょ」
 小さなくしゃみ。
 それと同時に、春日は木の陰に隠れる。
「き、気づかれたやろうか」
 木の陰に隠れたために、佐伯の方を見ることが出来ない。
 だが、彼女のほうに近づいてくる気配は全くしなかった。
 春日がゆっくりと木の陰から顔を出して、先ほどまで佐伯の立っていた方を覗く。
「あれ?」
 だが、そこには誰も居ない。
「帰ってもうたん?」
 誰も居ない公園。
 寂しく悲しい気持ちが彼女の胸にこみ上げてくる。
 佐伯の居た場所をもう一度見る。
 すると、先ほどまで彼が鞄を置いていたベンチの上に赤い何かが置かれていた。
「なんやろ。忘れ物かな?」
 近づく春日。
 ベンチの上には赤いマフラーと一枚の紙。
『風邪引くなよ』
 殴り書きのように乱暴にかかれたその文字は、まぎれもない佐伯の字だった。
「佐伯君」
 春日がマフラーと置き手紙を手に取り、胸に抱く。
 ほんのりとしたあたたかみが彼女を包みこんだ。

106 :春の日を歩む2人(17) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:10 ID:???
 春。
 三年生になった春日。
 教室を見渡すが佐伯の姿はどこにも見当たらない。
 クラス替えは二人を別々なクラスへと引き離していた。
 冬の一件以来、挨拶程度は交わすようになった。
 だが、それだけだ。
 昔のように親しく話をすることは無くなった。
「大阪。なにしてるんだ?」
「あ〜・・・うぅん。なんでもあらへんよ」
 そうは言うが、春日の声には元気がない。
 春になり運動系の部活も始動し始めた。
 佐伯の野球部もほとんど休みが無い。
 もう、彼が公園で素振りをすることも無いだろう。
「いけばいいじゃん」
 滝野が寂しそうな顔の春日に向かって言う。
「そんなに寂しいなら行って、自分の想いを伝えてくればいいじゃん」
「えぇんや。見てることが出来れば」
 春日は首を横に振る。
「それに、甲子園行くために頑張ってるんや。邪魔しちゃあかんやん」
「大阪。それは逃げだぞ?そりゃ、私も前は色々言ったけどさ、でも、そんなに好きなら」
 春日の手が滝野の口を塞ぐ。
 そして、もう一度首を横に振った。
「そうか。なら、私たちが出る幕じゃないな。けど、それならもう少し元気を出せ。それじゃあ、同情を誘ってるようなものだぞ」
 滝野の後ろで話を聞いていた水原が口を挟む。
「うん・・・よみちゃんはかなわんなぁ」
 微笑む春日。
 だが、その表情はもの悲しい雰囲気をかもし出していた。

107 :春の日を歩む2人(17) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:10 ID:???
 野球部の練習が始まる。
 新しいオーダーにも慣れてきて、やっと打撃と守備が繋がりはじめてきた。
 いや、去年の秋の惨敗をバネに、冬に鍛え直した部員たちの力は秋の何倍もの実力をつけたためかもしれない。
 佐伯のバットも快音を響かせ続けている。
「やってるやってる」
「冷やかしならお断りだぞ。ま、部活に入ることを前提に見学に来てるならいいんだけどな」
「まさか。3年になって部活に入るわけないだろ」
 バックネット裏に立つ長谷川。
 その隣で練習を見る佐伯。
「で、用はなんだ?お前がなんの用も無しにグランドに来るとは思えなんだが?」
「ほれ」
 長谷川がポケットから白い封筒を取り出す。
 表には丸まった字で佐伯様と書かれている。
「俺にはその手の趣味は無いぞ」
「俺もだ。頼まれたんだよ、妹にな」
「妹なんていたのか?」
 封筒を受け取ってポケットにしまう。
「出来の悪い妹だ。んじゃ、練習頑張れよ」
「おう」
 長谷川が校舎の方へと歩いてゆく。
「出来の悪い妹・・・ね」
 佐伯はもう一度封筒を手にとって書かれた文字を見る。
 見覚えのある文字。
 そして、長谷川に妹が居ないことなど、友人である佐伯は知っていた。

108 :春の日を歩む2人(18) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:11 ID:???
「あ〜。懐かしぃ〜」
「神戸!!」
「みなさん、お疲れ様でした」
「いや。疲れるのはこれからだろ」
 神戸駅。
 そこのエントランスに春日・滝野・美浜・水原の4人が立っていた。
 佐伯の所属する野球部。
 地区大会では快進撃を続け、去年の優勝校を破り、ついに夏の甲子園のキップを手にした。
 4人はその応援のために夏休みを利用してここに来ているのだ。
「榊さんと神楽さんは午後にならないと来ませんし、どこかで時間を潰して待ってましょう」
「さんせ〜」
 駅を出て、手近な喫茶店へと足を運ぶ四人。
「いらっしゃいませ。4名様ですね。こちら・・・あ。春日か?」
 店員の男性が春日の顔を見て尋ねる。
「お〜・・・誰やったっけ」
「あら。あんなぁ、3年前まで同じクラスだった俺を忘れんなや。沖や、沖。ほんまに覚えてへんのか?」
「お〜おぉ〜。沖君や。東京弁やからわからんかったわ」
「お前は声と言葉で判断してんのかい」
「あははは」
 彼女が神戸に居た頃の旧友。
 それだけに掛け合いもバッチリあっている。
「沖!!」
「あ、バイト中やった。ごほん。こちらの席へどうぞ」
 沖が春日たちを席へと案内する。
「友達か?」
「うん。沖君ゆうてな、結構一緒に遊んだ仲や」
 4人ではお茶を飲みながら話をする。
 時たま、沖が会話に加わっては、店長に怒られ仕事に戻ってゆく。
「なぁ、よみ」
「うん。大阪の顔。だろ」
 心からの笑顔。
 去年の秋からほとんど見せることの無かった表情。
 春日を心配しているからこそ、今回の応援を計画した滝野と水原にとっては複雑な心境だった。

109 :春の日を歩む2人(19) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:11 ID:???
 並んで歩く沖と春日。
 榊たちと合流するために店を出たのだが、丁度、沖のバイトの終わりと重なったために彼も一緒することとなった。
「ふぅん。春日のとこの学校が甲子園でるんか。えぇなぁ」
「沖君とこはでとらんのか?」
「あ〜、無理や無理や。俺んとこ弱いんよ」
 二人だけ先を歩く。
 数歩送れて榊、神楽が合流したメンバーが歩いている。
「どうよ、あの二人」
「どうもこうもないだろ。ま、私たちがこれ以上は首突っ込む必要もないだろ」
「そうですね」
 6人が泊まるホテルの前まで歩いてきた。
 最初から最後まで春日は沖と楽しく話を弾ませていた。
「じゃあ、春日、また明日な」
「ほなな〜」
 沖が押していた自転車にまたがり走り出した。
「明日?」
「大阪、明日って佐伯の試合だぞ?応援に行かないのか」
「大丈夫や。沖君、球場まで送ってくれるさかい。応援には間に合わせるで」
 笑顔でホテルに入る春日。
 残りのメンバーは先ほど以上に複雑な顔つきだった。
「私帰ろうかな」
「はっ!?何言ってんだ、とも」
「だってさぁ」
「でも、甲子園に出るのすごいから・・・春日さんと佐伯さんのこと抜きでも」
「そうそう。応援するだけしようぜ」
「そうですよ。それに、勝ったら佐伯さんと一緒に喜びましょう」
 あまり高校野球に興味の無い滝野は未だに渋い顔をしている。
 少しだけギクシャクした感じのまま、その日は過ぎていった。

110 :春の日を歩む2人(19) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:12 ID:???
「ついに試合だ。一戦負ければ終わりだからな。死ぬ気でやれ」
 野球部の顧問が檄を飛ばす。
 ぶっきらぼうで、乱暴な言葉遣いのため誤解されがちだが、生徒想いの先生だ。
「大丈夫だ。俺たちは強い。行くぞ」
『お〜!!』
 佐伯の掛け声にあわせ、部員たちも声をあげる。
 場所は彼らが泊まっていた旅館のロビー。
 旅館の従業員や他の客も彼らを応援してくれる。
 客の中には同じ高校の生徒がちらほら。その中に長谷川の姿もあった。
「よっ」
「来てくれたのか、サンキュ」
「そりゃ、甲子園だもんな。でだ。あいつらも応援に来てるぞ」
「あいつら?」
「・・・出来の悪い妹たちさ」
 それを聞いて佐伯はバツの悪そうな顔をする。
「嫌なのか?」
「まさか・・・無様な姿は見せられないなと思って」
 一瞬、佐伯は何かを考え込む。
「そういうことだ。頑張れよ。試合も春日も」
「・・・おう」
 それだけを言うと佐伯はバスに乗り込む。
「やっぱり、あれは春日だったんだ」

111 :春の日を歩む2人(21) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:13 ID:???
 球場の前。
 選手を乗せたバスが止まる。
 バスを降りる佐伯。
「よっ。応援に来たぞ。ふっふっふ、感謝しろ」
「リラックスしていけよ」
「今日は頑張ってください」
 滝野たちが降りたすぐ側に立っている。
「当たり前だ。目指すは優勝!」
「おぉぉ。頼もしいぜ」
「・・・大丈夫。佐伯さんたちは・・・勝てる」
 佐伯の前に立つ5人の少女。
「春日は?」
「あ、あの。ちょっと寝坊しちゃって」
「・・・昨日一緒だった男か?」
「なんでわかるんだ!?佐伯エスもご」
「バカ。なんで、そんなこと言うんだよ」
 水原が滝野の口を塞ぐ。
「やっぱそうか」
「昨日、私たちを見つけたらな声をかけてくれればよかったのに」
「ん。まぁ、楽しそうに笑ってたし。まぁいいかなって」
 苦笑する佐伯。
「本当にいいのか?」
「ん?」
「本当にいいのか?だって、大阪も佐伯も」
「いいんだ・・・俺は彼女を笑わせてあげれなかったから。滝野、ごめんな。あと、心配してくれてありがと」
「バカ・・・言う相手が違うだろ」
 滝野がうつむく。
 他の4人も同じだ。
「んじゃ。会場に入るよ。頑張るから、応援してくれよ」

112 :春の日を歩む2人(22) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:14 ID:???
「あかん。試合はじまってしまうやん。もう行くで」
「春日」
 沖が春日の腕を掴む。
「好きや」
 沖がバイトしているあの喫茶店の中。
「え?」
「お前のことが好きなんや」
 沖が春日を見つめる。
 手を離し、立ち上がる。
「私」
「高校卒業したら、東京に俺も行く。そしたら・・・一緒に暮らさへんか?」
 彼女の肩を掴み抱き寄せる。
「ぁっ」
「幸せにする。だから」
「・・・沖君・・・私・・・」

113 :春の日を歩む2人(23) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:15 ID:???
 高く打ち上げられた白球は、その勢いを落とし、外野のミットに収まる。
「すまん」
 アウトになったバッターが戻ってきて一言つぶやく。
 ネクストバッターサークルに居る佐伯。
 彼に対して言ったものだった。
 最終回にして0対1。ツーアウト。ランナーは2塁。
 守りに特化した相手チーム。
 最初の緊張していたスキをつかれ、1点を取られた。
 対し、佐伯たちはこの回のツーベースヒットを除いてはヒットは出ていない。
 佐伯も三振とゴロで打ち取られている。
 そんな状況で佐伯がバッターボックスに入る。
「ま、初出場にしてはよくやったほうじゃないか?」
 キャッチャーが佐伯に対して言う。
 このチームの心理作戦の一つだろう。
 最初からキャッチャーはバッターに対してボソボソ囁きかけていた。
「俺たちは去年ベスト8まで行ってるからな。負けても恥じじゃないさ」
 冷静を装っている佐伯も、集中力はすでに無いに等しい。
 それほどまでに、初出場とキャッチャーの心理攻撃。そして、春日のことが彼を追い詰めていた。
 ピッチャーが振りかぶってボールを投げる。
 バットは空を裂き、ボールはキャッチャーミットに収まる。
「す〜・・・は〜・・・」
 深呼吸するがあまり変わらない。
 第二球。
 ボールがバットの上部をかする。
 高く上がったボールはそのまま、バックネット裏に落ちていった。
 ツーストライク。
 ピッチャーにとっては最高の。バッターにとっては最低のカウント。
 佐伯の頭に去年の地区大会がよぎる。
 春日の応援を受け、ホームランを打ったあの試合を。

114 :春の日を歩む2人(24) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:15 ID:???
「今日はさすがに来ないか」
 バットを握り、ピッチャーを凝視するがなかなか投げてこない。
 審判の方を見ると、タイムの構えを取っている。
「ん?」
 審判がタイムを指示しながら見ている先。そちらは、佐伯たちのベンチの方だ。
 佐伯もバットを構え直しながらそちらを見る。
「な!?」
 佐伯の目に映ったのは、一人の少女がチームメイトに抑えられている姿だ。
「放してぇな。応援するんや」
「だから、ここは部外者以外は立ち入り禁止だ。応援するなら客席で」
「ダメや。もう、時間ないやんか。応援したら、すぐに戻るさかい」
 春日歩。
 少女は目に涙をため、顧問の先生に懇願している。
「・・・春日!!」
 佐伯が叫ぶ。
 ベンチに背を向け、バットを片腕で高く高く上げている。
 誰もがその動きを止め佐伯に注目する。
「ありがとう」
 バットを構え直し、ピッチャーを睨む。
 ベンチの騒動が納まりタイムが解ける。
 地区大会とは違って冷静なピッチャーだ。
 何事もなかったかのように、先ほどと同じテンポでボールを投げる。
 しかし、佐伯は先ほどとは違った。
 集中力を取り戻した佐伯のバットは、ボールを芯でとらえ快音を響かせる。
 青い甲子園の空に白球は吸い込まれていった。

115 :春の日を歩む2人(25) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/14(火) 22:15 ID:???
「おめでとう」
「ありがと」
 球場の外で春日と佐伯が顔をあわせる。
 長谷川と滝野のお膳立てだ。
「春日のおかげで勝てたよ・・・これで、2度目だな」
「えへへ。私は勝利の女神やもん」
 ほんのりと染まった頬。
「・・・そういや、一緒だった男は?」
「あ〜、しっとるんや。沖くんな・・・告白されたんや」
 黙り込む二人。
 セミの鳴き声だけが耳に入ってくる。
「そ、そうか」
「えぇんか?」
「え?」
「私が、沖君と付き合ってえぇんか?」
 うつむいた春日の顔は佐伯からは見えない。
「昨日。春日の顔を見てたら。すごい笑顔だったから」
 また、沈黙が二人の間に訪れる。
「なら・・・私・・・行くわ・・・沖君・・・待ってるさかい」
 佐伯に背を向け歩き出す春日。
 一歩。また一歩とゆっくりと歩き出す。
「・・・っ」
 背中から抱きしめる佐伯。
 目を瞑り背中を預ける春日。
「行くな」
「・・・うん」
「俺でいいんだよな」
「うん」
「いらいらしてると、好きな子でも八つ当たりしちゃうような男だぞ」
「えぇよ。人間だれでもそうやねん」
「巨人ファンだぞ」
「あかん。それだけは許されへん」
 そう言うと、春日が振り向く。
 見つめあい、微笑む。
「キス・・・してくれたら許したる」
「んっ」
 目を瞑り、近づく顔。
 交わされる口付け。
「佐伯君・・・好きやねん」

116 :春の日を歩む2人(26) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/15(水) 09:45 ID:???
 春。
 卒業と入学。別れと出会い。
「・・・またな」
「ぃゃゃ」
 駅のホーム。
 春日の顔は涙でぐしゃぐしゃに濡れている。
 佐伯が春日を抱きしめる。
「毎日電話する」
「ほんまに?絶対の絶対に?」
「あぁ。同じ日本なんだ。月に一回は歩の所に遊びにくるよ」
「・・・二回や」
「わかった」
「大学卒業したら、雄一の所にいってえぇ?」
「あぁ。待ってる」 春。
 卒業と入学。別れと出会い。
「・・・またな」
「ぃゃゃ」
 駅のホーム。
 春日の顔は涙でぐしゃぐしゃに濡れている。
 佐伯が春日を抱きしめる。
「毎日電話する」
「ほんまに?絶対の絶対に?」
「あぁ。同じ日本なんだ。月に一回は歩の所に遊びにくるよ」
「・・・二回や」
「わかった」
「大学卒業したら、雄一の所にいってえぇ?」
「あぁ。待ってる」
 佐伯は春日の身体を離すと彼女の手をとる。
 そして、ポケットから取り出した小さなリングを薬指にはめ込む。
「そうしたら。結婚しよう」
 今度は春日の方から抱きつく。
「幸せや」
「あぁ。俺もだよ。じゃあ・・・行ってくる」
「頑張ってな。あ、浮気したらあかんよ」
「んっ。愛してる」
 身をかがめ、キスをする。
 長く、しかし二人にとっては短いキス。
「いってらっしゃい」
 佐伯が電車に乗り込む。
 それと同時に閉まるドア。
 彼女は想い人の居なくなったホームで一人、また涙を流した。
 嬉しさ。悲しさ。待ち遠しさ。寂しさ。
 そんな感情が彼女の胸を締め付けていた。

(完)

117 :限界 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/15(水) 09:50 ID:???
どうも。長かった割にはあまりメッセージ性もなにもない作品?
中途半端な終わり方に見えている人も多いかと思います。
本当はこの後。大阪が大学を卒業して結婚するまでの2年間の話も考えてはあるんですが。
とりあえず止めます。
ひょっとしたら第2章として書くかもです。

・・・最終話。崩れた!?
同じ文章が2回・・・あうあう。2行目から14行目は飛ばして読んでください。
ごめんなさい。

118 :名無しさんちゃうねん :2005/06/15(水) 22:16 ID:???
いや、お疲れさまでした。
今後も頑張ってください。

119 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/06/16(木) 04:59 ID:???
珍しい大阪の純愛ストーリー…
切ないです

120 :名無しさんちゃうねん :2005/06/19(日) 02:58 ID:???
>>117
続きがあるのなら、最後までウプすべし! SSスレにテーマに沿ったSSをウプすることに、何も、誰も遠慮を
することはない。……だろ?
評価を求めるのなら、それからだ。

121 :春の日を歩む2人〜第2章〜(1) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/21(火) 09:33 ID:???
「はぁ。もうあかん」
「どした?」
 大学の食堂のテーブルにつっぷす春日。
 同じテーブルについてオムレツを食べる滝野が聞く。
「雄一が恋しい」
「昨日、会ったばかりだろ」
「だからやねん。毎日でも会いたいんや」
「重症だな」
 大学に入学して3ヶ月。
 過去にも似たようなことはあったが、今日の春日はいつにもまして暗い。
「そら、ともちゃんは彼氏が近くにおるからえぇわ。遠距離の辛さなんてしらんもん」
「そうだけどさ。でも、佐伯も同じように苦しみながら頑張ってるんだろ」
「………多分」
「なら、大阪も頑張らないと」
「そやな。がんばらな」
 春日が顔をあげる。
 先ほどよりは明るさを取り戻したようだ。
「そうだ。今週の日曜にさ、よみ誘ってデパートにいかねぇか?新しい水着でも買おうぜ」
「よみちゃんか。久しぶりやな」
 高校卒業を境に春日たちはバラバラになった。
 水原は春日たちとは別な4年生の大学。美浜はアメリカに留学。榊は北海道で獣医師を目指し、神楽は他県の体育系大学へ。
 一緒なのは春日と滝野だけだ。
 佐伯雄一。彼は、スポーツ推薦で、関西にある大学へと進学していた。
「変わってないぜ」
「そか。楽しみにしとるわ」
 幼馴染の滝野と水原。進む道は違えどその関係は変わらなかった。
 もっとも、お互いに出来た恋人のせいで昔ほどの関係ではないのだが。
「………元気だせよ」
「おおきにな、ともちゃん」

122 :春の日を歩む2人〜第2章〜(1) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/21(火) 09:33 ID:???
 日曜日。
 春日は一人デパートの中を歩いていた。
「あかん。暇や」
 水原はサークルの会合。滝野も前日に急にキャンセルになっため、一人で来ていた。
「家に居たほうがよかったやろか」
 当初の目的であった水着売り場の前を通り過ぎる。
 横目でチラリと見たが、買い物をするような気分ではなかった。
 10分くらい売り場を見て、エレベーターに乗る。
「かえろ」
 珍しく空いているエレベーター。
 乗っているのは春日の他に一人の男性のみ。
「……春日?」
「え?」
 不意に男に声をかけられ振り返る春日。
 型の古いエレベーターがゆっくり下がり始める。
「沖君」
 沖和雅。春日の旧友で去年、一度再会した青年。
「買い物か?」
「そやで。沖君はなんでここにおるん?」
「大学はこっち来る言ったやん」
 沖の顔が険しくなる。
 沖は一度春日に告白した。
「一度は振られたけど、忘れられへんかったんや」
 結果は彼の言ったとおり。
 春日は沖の下を離れ、佐伯と想いを遂げた。
「私は……?」
 エレベーターが止まる。
 表示は1階を指しているが、ドアが開かない。
「あかん。どのボタンもきかんで?」
「どういうことや?」
「故障やろか」
 沖が非常用通信ボタンを押すと、係員の声が返ってくる。
 どうやら、機械のトラブルで止まってしまっているらしい。
 10分ほどで1階に下ろすとのことなので、それまでおとなしく待つことになった。

123 :春の日を歩む2人〜第2章〜(1) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/21(火) 09:33 ID:???
「あ〜、今日は厄日や」
「そうか?俺にとっては嬉しいで。春日と一緒におれるんやからな」
「沖君」
「ほんで、春日の彼氏は今日はきいへんのか?」
 春日の頭に佐伯の顔が浮かぶ。
 今頃は大学のグラウンドで野球の練習をしているだろう。
「近くにおらんのや。遠くの大学に行って」
「なんや。そうなんか。俺なら、春日を置いてどっか行ったりせぇへんで?」
「ちゃうねん。雄一は、そんなんやあらへん」
「春日」
 沖が春日に近づく。
 それにあわせて春日も下がるが狭いエレベーターの中。すぐに追い詰められてしまう。
「あかんよ」
「……俺を見てはくれへんのか」
 春日を抱きしめる沖。
「あかん。私は」
「俺は春日が好きやねん。一生幸せにする」
 幸せ。
 その言葉が春日の頭に響く。
「私は」
 沖の顔が春日の顔に徐々に近づく。
 涙を流すが、はっきりとした否定を表さない春日。
「好きや」
 春日の涙が零れ落ちる。
 彼女の脳裏にフラッシュバックする佐伯の顔。
 そして、一つのシルバーリング。
「ダメや」
 もう少しで唇が触れ合いそうな瞬間。
 春日は両手で沖を拒絶する。

124 :春の日を歩む2人〜第2章〜(1) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/21(火) 09:34 ID:???
「春日」
「かんにんな。けど、私には雄一しかおれへんのや」
 そう言って、左手を見せる春日。
 その薬指には綺麗に光る飾り気の無いシルバーリング。
 丁度その時、エレベーターのドアが開いて店員が入ってくる。
 エレベーターから降ろされる二人。
「春日。幸せか?」
「……幸せや。あまり会えへんことは寂しいけど、その分、会った時は心が張り裂けるくらいに幸せなんや」
「そうか」
 店員の謝罪を受け、粗品を受け取る。
 そして、二人は外に出た。
「春日」
「え?」
「幸せにならんと、あかんからな」
 それだけを言うと沖は走って行ってしまう。
 人ごみの中、すぐに春日の視界からその姿は消えてなくなる。
「沖君」

125 :限界 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/21(火) 11:58 ID:???
えっと、春の日を歩む2人の第2章です。
のっけからやってしまいました。
タイトルNoが、全部(1)orz
本当は(1)〜(4)です。
これにめげずに更新するので、長い目で見守っていてくれると幸いです。

126 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:05 ID:???
ズル‥‥ズル‥‥。
後左足を引き摺る音と降り注ぐ雨の音が耳障りだ。

………痛ぇ…。
動かすたびに脳に衝撃が走り地面の赤い跡が数を増やす。

とにかく痛ぇ、足が…全身がいてぇ…。
これが俺の足かって思うほどいてぇ…でも結局は俺の足だからいてぇ…。
何故こんなに足が痛いのか、何故こんなを説明すると一時間前の事、
といえども一言で済む。

今日他所の野良猫が俺の喧嘩を吹っかけてきやがった。
「チチッ…あいつ…5匹で襲いやがって……」
最後には俺が勝ったが俺も全身ボロボロ、特に足の怪我が酷い。
もし今犬にでも襲われたりすれば一たまりも無い。

ドサリッ

127 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:06 ID:???
背中が雨に晒されているらしく凍えそうだ。
「?」
気が付くと俺のすぐ目の前に地面があった。
地面にうつぶせのまま倒れている。
体を起こそうとするが両手両足への命令が全く伝わらない。
感覚も無くなってきている。

自分の血が小さい水溜りを濁した。

ああ…突然だが…俺も…か。

思えば色々な事があったよな…
今まで人間のデマかと思っていた走馬灯とか言う物が頭をめぐる。
実際にあるんだな…。

俺を包んだお袋の暖かい体に…
兄弟はみんな優しい白猫だった事…
お袋の優しい笑顔…
姉貴や妹は一匹だけの雄である俺を差別もせずに優しくしてくれた事…

そして───

128 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:07 ID:???
ある日俺だけが目を覚ますとダンボールに居て
理由は俺が黒かったと言う事…

────走馬灯は続く────

すぐに飢えて天敵に襲われた痛み…
そこに駆けつけてくれたマル兄貴の大きい後ろ姿…
マル兄貴の背中を付いて行った時の兄貴の男らしさ…

そして───

129 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:07 ID:???
そして
人間を憎むきっかけとなったお袋、そして姉妹の死体…
お袋達をボロ雑巾のようにしたクズみてぇなクズども…
金髪、歯が抜けた顔、ガキ…
そして気が付いたら金髪の足に噛み付いた事、

────走馬灯でも記憶に無い事は思い出せないらしく
そこからの走馬灯は無い────

気が付いたらマル兄貴の背中に乗っていた事、
マル兄貴のあの時のたくましい背中、
俺と同じ位傷だらけだった兄貴、
誰一人として俺を責めなかった仲間達、

そして…

そして…

あの、人間。
そうだ、あの人間あの女。

130 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:08 ID:???
体が揺すられる感覚に声も聞こえる。
誰だ?
そうかあいつだ。

「…み……こ」
走馬灯が続いている…。

「…み…ねこ! かみねこ!」
記憶には無い姿だ。
人間は慌てている。
雨の中傘もささず、全身を濡らして。

「しっかりしろかみねこ!」
まだ感覚の残る体を暖かい───まるでお袋の腹のような───
───マル兄貴の背中のような───
そんな気持ちになれる物に包まれている。

131 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:09 ID:???
そういえば一度だけこいつに撫でられた時、
気持ち悪いと思った。
今思えば…それは嫌悪では無く…安d…

「頑張って!今病院に…」
走っているらしく多少ゆれているがそんな事は気にならない位に安心出来た。
「他の野郎には…知らせられないな…」
まさか人間を憎む自分が幻覚の中とは言え、人間なんかに抱かれて
落ち着いてるなん…て。

「かみねこ…?」
人間の腕がこんなに温かいなんて知らなかった…。

132 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:09 ID:???
「かみねこ!!」
もしそうだと知ってるなら…仲間が…居る以上仲良く…する訳にはいかない…だ…
ろうが…
「かみねこ!!」
頭…くら…いは…撫でてさせ…やっても…良かったかもな…
「かみね…こ…!」

雨とは違う何かが俺の顔に滴った。
しょっぱい…何の液体だろう…?
目を開けても何も見えない。耳を澄ましてももう何も聞こえない。
結局それが何かは分からなかった。
とりあえず暖かい…それだけは分かった。

目の前は赤く赤く黒く黒く染まっていく…。



もう一度頭を撫でて欲しいなと思った。

FIN

133 :かみねこ物語 :2005/06/21(火) 21:16 ID:???
以上…。
とりあえずこの続きみたいなもんでかみねこが生きていたらバージョンも
いずれ考えてたり。

134 :名無しさんちゃうねん :2005/06/22(水) 23:28 ID:XxjVTo4A
切ない話乙!

135 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/27(月) 03:33 ID:???
明日学校だけど、深夜にずぅっと前の続きを投稿します。遅れてごめんなさい。
そして例のごとくまた続きは不定期です。けどこれほどは遅くはならないです。

↓ずぅっと前の(忘れられてたり・・・!?)
http://so.la/test/read.cgi/oosaka/1081700484/713-716

136 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/27(月) 03:34 ID:???
 雨は静かに、降っていた。コンクリートやアスファルトをぬらし、
雨の日特有の香りがした。花がすべて枯れたアジサイがサ――ッと、音を立てている。
静かな、午後。一人ぼっちの、下校時間。
登校初日から天気予報を見ないというのも少し投げやりな感じだが、傘を持っていなかった。
前髪から垂れてくる雨がうざったい。
なんとなく、本当になんとなく過ごしていると、一日は簡単に過ぎていった。
これからもそんな風に安易に流されていってしまうんだろうか。
楽なままに、退屈なままに何もかも過ぎていくんだろうか。
思うと、少しだけぞっとした。
早いところダチ作って、また馬鹿騒ぎみたく出来ればいいな・・・
そんな願いは、簡単にはかないそうになかった。
・・・どうすりゃいいんだろうな・・・・・・
分からなかった。
このボッコボコの顔の理由ってさ、***で****なんだよ、それで・・・・
こんなような事を言って回りたかった。
けど、勿論そんな情けない、逆効果なことはしない。するはずもない。
大山とかいういかにも真面目そうなひょろい奴になるべく社交的に話しかけてはみたが、
これでもかってくらいに相手はおどおどしていた。
思い出すだけであんまり情けなくて逆に笑える。
今は焦らないほうがいいのかな・・・
こういうことで自己完結はした。
けど、昨日公園で会った(、と、いうよりは見かけた)二人とかが同じクラスだったこと
は驚いたし、(特に小さいほう)それに気にもなったけど、話すのはだいぶ先になりそうだな、と思った。

しばらくして次の角を曲がって、家のそばに出たとき。
淡い水色の傘をさしたまま中腰になってる奴がいた。

137 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/27(月) 03:34 ID:???
「・・・榊か?」
言ってから違ったら困るな、と思ったけど、その心配の必要はなかったようだ。
「・・・! あぁ・・うん」
体制はそのままで振り向いて、気まずそうにしていたのは、今日名前を覚えた榊だった。
制服のままだけど、かばんを持っていなかった。
「聞いていいかな・・・何してんの?」
「・・・いや・・・その・・猫が・・雨に打たれて寝てたから、つい・・。」
「ふぅん・・・」
「帰りがけに見かけて、やっぱり気になったから・・・。」
「・・・そっか・・。」
気持ちは分からないでもない。
そしてこういう状況で相手がやっぱり気まずいだろうなっていうのも分からないでもない。
何か話しかけようかと少し考えてる間に、先を越された。
「・・傘は?」
「あったらさしてる」
「そうだよね・・ごめん」
「別に謝ることじゃないと思う・・・そのネコさ、とりあえず家に連れてって体でも拭いてやるか?
気になるから見にきたんだろ?ただ見てたって始まらんし、さ。
もしお前んとこが都合悪いなら俺んちでやるから。家、近いんだ」
「・・・手を出すと噛まれるかもしれない・・・この子にはよく、噛まれるんだ・・・。」
「ふーん・・」
何気なく、その灰色のネコに手を伸ばした。すると、寝てたはずなのに、一瞬で軽く手を噛むと、
すごい勢いで逃げていった。
「いってぇ・・・ま、これはこれで良かったんじゃない?元気だったじゃん。」
「手・・だいじょぶ?」
「うん。よゆー。」
返事を聞くと、榊はすっくと立ち上がって、
そしてためらっているのか、恥ずかしいのか、分からない感じで言った。
「あの・・・傘、・・・入る?風邪、引いちゃうと・・・」
「さっきも言ったけど、近いから大丈夫だ。どうも。」
榊は、すこしだけ困ったような顔をして、そして・・・そっか、とだけ言った。

138 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/27(月) 03:36 ID:???
俺も立ち上がって、それからそれじゃ、と言った。けど、榊と俺の家の方向は同じらしく、
100mくらいだけど、一緒に歩く感じになった。
「家、同じ方向だったからそれじゃって言うことなかったな。」
「・・・うん。」
「昨日さ、お前はこっち知らなかったろうけど、公園にいたっしょ?」
「・・・。うん。・・・・気づいてた。」
っそっか。
そう言ってしばらくして、榊に本当の「それじゃ」を言った。
そして以外にも家は、隣だった。
昨日見たく雨は止まずに、夜まで降り続いた。本当に聞きたいことは、聞けなかった。

139 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/27(月) 03:38 ID:???
>>138
そして以外にも→そして意外にも
昨日見たく→昨日みたく    ・・・アチャー

140 :名無しさんちゃうねん :2005/06/27(月) 20:19 ID:???
和むSSだな…続きがんばれ…!

141 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:53 ID:???
ものすごく思いつきで、即席の短編を一つ。>>138の続きじゃないです。
あと、積極的にageてみます。

まずないとは思うけど、もし既出ネタだったら、本当申し訳ないッス。

142 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:53 ID:???
 少女の目は、虚ろだった。本来なら、小学校2年生であるはずの歳。
静かな、雨の降る小さくて薄暗い路地の端っこに、少女は生気のない顔で寄りかかって座っていた。
着の身着のまま。肩くらいまである黒い髪は、雨でストレートのようになっている。
その先からはひっきりなしにぽたぽたと雫が垂れていた。人は全然通らない。
哀れみなんてそこにはなく、ただひたすらに冷たく雨が降っていた・・・。

一ヵ月後。前よりは少しだけ元気になったその少女は、孤児院に引き取られていた。
入ったのはあのすぐ後だった。
広くて明るい部屋で、同じ部屋にいる子供たち(とはいっても歳はずいぶん上しかいないが)
と話そうともしないで、一人で絵を描いている。
人が二人、クレヨンで書かれていて、その下には「おとうさん」、「おかあさん」と書かれている。
奥の事務室では男の経営者が名簿をめくり、個人情報の整理だろうか、
コンピューターになにやら打ち込んでいた。
パサ、とめくられて、入居者名簿の一番新しい一ページが開かれた。

両親は事故で32日前に死去。両祖父母は既に亡くなっていたため、事故二日後に警察から引き取り、入居。
名前:滝野
パサッッ
ここまで見えたところで、また次のページが開かれた。

143 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:54 ID:???
・・・しばらくすると孤児院の経営者は、コンピューターのフロッピーを換え、
その中の過去の日記を開き、すべてに目を通しながら考えていた。

○月×日 火曜日
今日、新しい入居者が来る。これまでの子供たちの中でも最年少だ。
引き取り先がいないとのことで預かることになる。
ひどくつらいことがあったようでひどく落ち込んでいるとのことだが、
健やかに成長できるように、少しでも早く友達を作って、明るく、幸せになってほしい。
ここの子供たちにも、その旨伝えておこう。

○月*日 金曜日
滝野ちゃんが来てから、数日が立った。周りが話しかけても、上手く対応できていないようだ。
無理もない。週末の楽しい思い出が打って変わってあんなことになってから、まだ一週間もたっていない。
・・あせらない程度に、けど出来るだけ早く明るさを取り戻せるようにしよう。

ここまで読んで、経営者はなんとも複雑な顔をしてため息をついて、なにかをしばらく考えていたようだった。
そして、今日の日記を書き始めた。

144 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:55 ID:???
○月●日 
昨日の晩御飯で、小松君はニンジンが食べれるようになった。
すごく渋い顔をしなければまだ無理なようだが、すごくいいことだ。
滝野ちゃんは、だいぶ明るくなってきた。こっちも、すごくいいことだ。
東京の出資者の財閥も、一昨日こちらに見学に来てくれた。
小松君と庄司さんからの花束贈呈ではとても喜んでいただいたようだが、
元をたどればあの花を買った金も彼らの金なのかもしれない。
・・・・その財閥についてだが、社長が滝野ちゃんを引き取ってもいいとの旨を昨日、
電話でもらった。すごくいいことではあるのだけど、滝野ちゃんはそれでいいんだろうか。
まだあれから一ヶ月しか経っていないのに、対応できるだろうか。この私が不安になっているようじゃダメだが。
滝野ちゃんは昨日聞いたら、とりあえず「だいじょうぶです」と言っていた。
社長さん夫婦は本当にいい人だと良く聞くが、その中で彼女の明るさを取り戻せるだろうか。
もう少しここで対人関係を学んでからのほうが、良いのかもしれない。

書いてから、一度これをまたざっと読み、経営者はまた息をフゥ、と吐いた。

145 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:55 ID:???
「おじさん、私絵書いたんですよー!」扉を開けて、いきなり滝野ちゃんが入ってきた。
"おじさん"はよしてよーと笑って言いながら、頭をわっしわっしと撫でた。
極度のストレスのせいだろう、元々黒かった髪は色素が落ちて茶色くなっている。
うん、上手だね。そう言って、経営者は思った。
大人の勝手かもしれない。けどこの子なら、きっとうまくやっていけるな。
小松おにいさんにも見せておいで、と言うと、少女はうんと言って、とててて、
と駆け出した。それを見送って、美浜財閥に、電話をかけた。
もしもし。あ、ハイいつも大変お世話になっております。社長さんいらっしゃいますか?
・・・・・・・・・あ、ハイ、○○○園です、大変いつもお世話になっております。
滝野ちよちゃんの件なんですが、本人も了承してます。ハイ。ハイ。
あ、分かりました。じゃぁ日程などは後日。ハイ。失礼します。

フゥ。
本日何回目かのため息をついた。

146 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:55 ID:???
数年後。
「いってーきまぁーす!」
明るく通る少女の声が、豪邸から聞こえる。
「忠吉さん、いってきますね!」
わん!
すがすがしい、朝。かつての暗さは少女にはかけらも残っていなかった。
前までにとり損ねた幸せを、今全力で取り戻しているかのような毎日。
今の名前は、美浜ちよ。笑顔の可愛い、元気な少女に成長していた。


 
 ともちゃんは、昔の私と苗字が一緒なんで、親近感が沸きます。
だから、なんでか説明はしないけどともちゃんだけは"ちゃん"です。
けど性格はけっこう、違うかなぁ?

今のお父さんとお母さんには、言葉では言い表せないくらい、ほんとうに感謝してます。
そしてあの事故の後引き取ってくれた○○○園のおじさんにも。
だから、お年玉なんてお受け取りできないです。

147 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/28(火) 19:57 ID:???
age忘れ〜

オオバカヤロウ

148 :名無しさんちゃうねん :2005/06/29(水) 02:38 ID:???
乙です!面白かった

ちよちゃんの出生とか、智とは実は生き別れの・・・とか、
なんかもっと秘密がありそうでワクワクする。
続編待ってます

149 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/06/29(水) 23:02 ID:???
あぁッッと、すみませんこれは読みきりのつもりでした。
続きも一応考えてはみますが、思いつきだったしもう一つ手がけてるのがあるので
(むしろそっちに力入れたいんで)ちと無理かもです。
他力本願と言われればそれまでですが、もし「続きを書きたい!」「(続きで)面白そうなのが思いついた!」
という人は、どうぞ。

すみません先にこっちを書くべきだとは思いましたが、
>>140>>148
ありがとうございます!これがあるからやめられない!
和む、というのは意識したことなかったです。
まぁけど変に意識すると作風変わったりするかもしれないので、
これまで通りにやっていきます。ど素人なんでそこら辺、まだ制御できてないです。

150 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:07 ID:???
王子さん乙。
>>138は期待してますよ。。
これからどうなるのか、最後はどんな結末か、楽しみにしてます。
>>146は以外にありそうな展開で、とても面白かったです。。


さてさて、自分も遅れていた>>84の続きを落としますよ。。

151 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:08 ID:???
「じゃぁ、ともちゃんのさよならの言葉だ。まずは神楽からだな」
そう言って神楽のほうを向いた。
まだ何も言ってないのに、もう涙で顔をグシャグシャにしてやがる。
こいつ、前からこういうシリアスなのが苦手なんだよなぁ。
「ほら、神楽。何泣いてるんだよ」
「だ、だって…… お前死んじまったんだぞ!」
「別にいいじゃんか。人間いつか死ぬんだからさぁ。
 さ、お前はこれからも水泳がんばれよ。お前ならオリンピックも夢じゃねーぞ!」
「もちろんがんばるさ!けどっ、けど……」
「神楽……」
私は神楽に近づいて、半分抱きしめるような格好になって、耳元で―――
「愛してるよ」
って言った瞬間もう顔真っ赤になって、触れないのに私を無理に振り払おうとしてやんの。
「なっ、なななななっっ!!」
「あっははははは〜〜〜!冗談だよ冗談。私は大阪ともう結ばれてるもん」
「せやで、ともちゃん。浮気はあかん」
「ともっ!お、お前〜〜〜っ!」
神楽はまだ顔真赤だ。
「そう、それでいい。これでいつものお前じゃねーか」
「……もうっ、最期の最期までお前わぁ〜〜〜っ!!」
「あ〜はいはい。神楽かわいいよ。胸大きいよ」
「っかぁ〜〜〜〜〜っ!!」
ま、この調子ならいいよな。
さてと、次は―――

152 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:09 ID:???
「榊ちゃん」
「とも……」
榊ちゃんも涙もろいんだよなぁ。
「前に、マヤー怒らせちゃったね。ま、マヤーに悪かったって伝えといてよ」
「あ、ああ。わかった……」
ま、最期くらい素直に謝っておこう。
引っかかれたけど、なんかあいつは私に似てるような気がしたんだ。出来れば、仲直りしたかったな……
「あとさぁ、かおりんが榊さんのこと好きなんだって!」
「ちょっ……と、と、と、ともっ!!」
あー、今度はかおりんが赤面だ。
「もう一年の時からずーっとさぁ」
「そうなのか?」
「は、はいそうれす!」
もうかおりん緊張しすぎてろれつが回ってない。
「ま、そういうことだから」
「とも!ちょっと待ちなさいよ!」
「ん?」
「その、あ、ありがとう」
うわぁー。お礼を言われたのなんて久しぶりだよ。
えっと、こんな時はどう返事すればいいんだっけ……
「あ、どういうたしまして」
これでいいよな。
そんで、次は…… 次は―――

153 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:10 ID:???
「長かったな小学校から高校まで、12年間か……」
よみから切り出してきた。
「なんでだろうな。昔からちょっとお前の事はうるさい奴だと思ってた。
 いっつもハイテンションで、人を食ったような態度で……」
「それは元気って言うんだろ!」
「正直な話、お前の事を邪魔だと思ったこともあった。
 別に大学が別になってからでも、何ともなくて、静かに過せるようになってよかったと思ってた」
コノヤロウ!こいつは私をそんな風に思ってやがったのか!
「よくさ、『大切なものは、失ってからわかる』って言うけど、本当なんだな。
 私も、お前が死んでやっとわかったんだ。お前が、私にとってどれだけ大切な奴だったかが……」
「せやな。私にもわかる。ともちゃんのことは、よみちゃんが一番よく知っとるって」
「大阪には悪いけど、やっぱり大阪が死んだときよりもショックだよ。
 それに、大阪の時はお前らの様子が変だったら、まさか、なんて考えてたりしてたこともあるけど……」
「よみ…… 最後のお願い、聞いてくれる?」
「なんだよ?」
「私の体、大阪の隣に埋めてくれない?」
「ま、そんくらいなら、やってやるさ」
「サンキュー!」
「ったく、お前はいっつも突然だけど…… 最期までそうだとはな」
月明かりの反射で、よみの眼鏡の奥は見えない。けど、その下からは涙が零れてきてる。
「あれ?」
今になって気づいた。私も泣いてる。何時から……?
「おいおい、気づいてなかったのかよ」
「ともは大阪と抱き合っていた時から泣いてた」
「ほんっとう、自分のことは棚に上げるんだから」
「ともちゃんはいつもこんなんやもんなぁ」
「ま、いいじゃんいいじゃん!」
私が笑うと、皆がつられてちょっと笑ってくれた。
これなら、私が逝っても大丈夫だな。
さてと、最後は―――

154 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:17 ID:???
「う……ん?」
丁度いい具合にちよちゃんが起きた。
さてと、最期にこいつにもキツ――――く言っておかなきゃな。
「こるぁっ!ちよすけ起きろ!!」
「とも……ちゃん?」
あー、やっと起きた。まったく、こいつが事をややこしくしたんだ!
「うそ…… ともちゃん、その体……」
どうやら、私の体に気がついたみたいだ。
「そんな…… わ、私のせいで…… 私が、私がともちゃんを……」
ちよちゃんの目からぶわっ、て涙が溢れる。
「悪いな」
「ともぢゃっ…… 私、私……」
「私が海に誘っちまって、こんな怖いめにあわせちまって」
「え?」
仲のいいあいつらでも、ちよちゃんが私を殺したなんて知っても何も変らないと思う。
けど、それでもちよちゃんの心は傷つくと思うんだ――何だかんだ言っても子供だしな――。
だから、このことはちよちゃんと私の秘密だ。
「悪いな。今まで意地悪しちゃってよー。ま、最期だから謝らせてくれよ」
「あ、謝るのは私のほゔじゃないですか!」
「ちよちゃん……」
大阪がちよちゃんに近づく。
「ちよちゃんも私のこと好きやったなんて気づかんかったなぁ……」
「で……でも私っ……に゙は、大阪ざんを愛する資格な゙んてっ!」
「ちよちゃん」
泣き叫ぶちよちゃんに、大阪がそっと手をかざす。手が、ちよちゃんの髪の中に吸い込まれていく……
「好きな人って、一人じゃなきゃあかんのかな」
「へ?」
「せやろ。ちよちゃんにも友達はたくさんおる。友達と恋人の境目なんてちょっとのもんや。
 さかいな、別にともちゃんっつー恋人がおる私がちよちゃんを好きになってもええと思うんや」
確かにそうだよな。
「ともちゃんも、かまわへんやろ?」
私だってさ、実はちよちゃんと一緒にいた時、大阪に対してと同じような感覚を持った。
もしかしたら、私もちよちゃんのこと―――
「ああ、もっちろん!」
でもそのことは胸の奥にしまっておこう。
だって、ちよちゃんとはもうすぐ別れなきゃいけない。ちよちゃんはまだ生きなきゃいけないから……
それに私には大阪がいる。やっぱりちよちゃんには悪いけど、今は大阪が誰よりも大切だ。
「ともぢゃん、大阪さん……」
「ちよちゃんはな、私たちの分まで生かなあかん」
大阪がさっきからちよちゃんをなでる格好だけ――もう幽霊だから触れないしな――してる。けど、やっぱりちよちゃんにはこれが落ち着くみたいだ。
「私に…… ぞの資格がある゙んでずか?」
「生きることに、資格なんているわけあらへんやろ?せやから、な」
「うっく、わ゙かりましだっ!!最低でも100歳まで生きまずっ!!」
「せやせや。それでええんやで」
「ほら。だからなくなちよすけ。な!」
そう言ってちよちゃんの背中をおもいっきし叩いた。

155 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:21 ID:???
「うわああぁぁぁっっ!!」
ってそうだった。私今何にも触れないんだっけ。おもいっきし空中でグルグルって回転する羽目になった。
「っ。もう、ともちゃんったら」
「ほんま、あわてんぼうやなぁ」
それを見て、ちよと大阪が笑いやがったんだよ
「もー!!ちよすけも大阪もさっきまで泣いてたくせにー!!」
「ともちゃんかて、今から天国行くのになぁ」
「そ、そうだけどさぁ……」
「すっごく大変なことなんやで!」
「そ、そうなのか!?」
「もう死んでしもうたから、ともちゃんの言っとった成長中の胸も成長ストップやねん」
な、何ィ〜〜〜〜!?
「くっそぉ〜〜〜!!大阪っ!何とかしろ!!」
そうだ!せっかく“急”成長してて、榊ちゃんとか神楽とかよみも夢じゃなかったのに!!
「何とかせえ言うても、そんなの死んでもうたら……」
「だぁ〜〜〜っからとにかくなぁ」
「とにかくってもなぁ。別にええやん。私よりはかなりええで」
「なぐさめになってねぇ〜〜〜!!」
「あのっ……」
そんなこんなで大阪と口論――って言えるのかなこれ?――してたら、ちよちゃんが口を挟んできた。
「笑っても…… いいですか?」
「へ?」
いきなりの事ですっごくすっとんきょうな声あげちゃったけど……
「せやな。私も…… くくっ…… 笑ってええ?」
大阪まで言いやがった。けど、こいつもう半分笑ってるし。
や、やめろよ。そんな変な顔で見られたら、つ、つられ笑いが……
「じ、じゃぁ…… っっ…… 私もっっっ」
も、もう限界!!
「だ、だめだもうっ!あはははははは!!大阪、笑いこらえたのすっごく変。あはははは」
「はははははっ、ひどいなぁともちゃん」
「だ、ダメです。私も……あはははははっ!」
ちよちゃんも大阪も笑い出した。
「ぷははははっ。お前ら、こんな時に笑うなんてなぁっ」
「神楽ちゃんかて笑い泣きやん。あっはははは」
結局、皆笑った。大声出して。ちよちゃんも、大阪も、神楽も、私も。
私達みたいに爆笑じゃないけど、よみも、榊ちゃんも、かおりんも、後ろのほうで笑ってる。
やっぱ、こうじゃなきゃなぁ。やっぱりこれだろ。かしましいのが一番いいんだ。
「あはははははぁ〜〜〜〜」
今がチャンスだ。私は葬式とかが得意じゃない。だから今のうちにとっとと成仏しちまおう。
そう思って、私は小声で大阪をつついた。

156 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/07/16(土) 17:21 ID:???
――大阪
「せやなぁ。ほんともう」
――大阪!
「ともちゃんもちよちゃんも―――」
――大阪!!
「なんや〜〜?」
――ほら!今のうちに成仏させろよ!!
――なんで?まだ皆に―――
――いいから!ほら、さっさとしろ!
――わかったわかった。いくで。せぇ〜〜のっ!!
一瞬、体がカッと熱くなった。キツイんじゃなくて、柔らかくて優しい感じ。

けど、あくまで一瞬。それからは何も変らないい。私にとっては。
「あれ?ともちゃんと大阪さんは?」
やっぱり、も私と大阪は皆の前から消えてるんだ。
「逝っちまった…… みたいだな」
「あいつらしいな。いっつも私達を出し抜いてさ」
笑いが止まった。皆から。
ったく、また泣き出すのかよー。本当、私がいないとだめだなこいつら。
「智の…… お墓をつくろうか」
榊ちゃんが私の体を抱え上げた。
「そうだな。今ならあいつらも見てるだろうしな」
「それじゃぁ、私はスコップとってくるよ」
そう言って神楽が別荘の中に入っていく。
「大阪。行こう」
「へ?今からともちゃんの葬式やねんで?」
「いいよ。行こうぜ」
ったく、葬式ってどーも苦手だしなぁ。あの暗〜〜〜い雰囲気ってのがどうも……
通夜の時に出る寿司とかお菓子とかは好きだけどな。
ま、自分自身の葬式見るのも何か変な気分だしな。
「なぁ大阪。天国逝くのって、49日たたないといけないのか?」
「んなことあらへんで。別に今からでもええねん」
「そっか。じゃぁすぐ行こう」
「せっかく今からともちゃんの墓穴を掘るのになぁ……」
お、おい!それって確かに正しいけど、ある意味かなり失礼だぞ!
「んじゃ逝くで〜〜〜 1、2、の3!」
―――――…………
「で逝くで」
っておい、紛らわしいなぁ。
「本当に、ええんやな?」
「いいって言ってるだろ」
「1、2、の……3!」

157 :名無しさんちゃうねん :2005/07/16(土) 19:35 ID:???
またこの終わり方か。

158 :名無しさんちゃうねん :2005/07/18(月) 01:28 ID:???
別に…悪い事じゃ…ねぇと…思うがな…

159 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/07/18(月) 23:25 ID:???
現実的ではない場面でもすぅっと入ってけるのは、そういった箇所の表現とかが
上手いからだと思います。乙!!

160 :名無しさんちゃうねん :2005/08/13(土) 13:09 ID:qKAuteSs
誰か書くと期待age

161 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/08/13(土) 22:47 ID:???
久しぶりっす

>>138の続きを書いてはみたものの、最近ルーズリーフとかにまとめないでやってるんで
明らかに文章力落ちてます。「〜た。」みたいな文が連続したり。
とりあえずちょっとだけ投稿しますね。

162 :あずまんが王子 ◆N1Y4rpky/o :2005/08/13(土) 22:48 ID:???
 Y-1 主人公視点

 窓から街灯のほんわりとした明かりが入り込んで、それだけが部屋をうす明るくした。
ぼんやりと見える時計は、大体午後9時を指している。秋虫の鳴き声が交錯するのがかすかに聞こえた。
学校から帰って自分の部屋に戻り、湿気でべとつくフローリングに寝そべってふと目を覚ますと、もうこんな時間だった。
むくっと起き上がって真っ暗な部屋のドアを開けると、そこにはやっぱり真っ暗な廊下がある。
・・・なんだか自分のこれからを見せ付けられた気がして、階段の電気をつける手が早まった。
家には誰もいないようで、ダイニングにも電気はついていない。
テーブルの上に紙が置いてあって、明かりをつけてみると
「パートで遅くなります。ごはんは炊いてないので、台所にカップ麺置いときます。」
とだけ書いてあった。
なんか食欲も湧かないし、テレビも見たくなかった。
と、いうより、何もしたくなかった。そして何も考えたくなかった。
暗いままの部屋に戻り、窓を開けると、涼しい風が入り込んでカーテンを静かに揺らした。かすかだった虫の鳴き声が強くなる。
窓の向かいの数メートル離れたところには、隣の家の壁がある。
家と家の間には街灯の明かりが淡く差し込んでいた。
しばらくボ―――っとして虫の声を聞きながら、窓枠に頬杖をついて物思いにふけった。
例えば、前の席の高岡。水泳部だったかな?うるさい奴だけど、面白そうだ。仲良くなれるかなぁ。
例えば、大山。あんなにびびんなくてもいいだろ。
例えば、美浜。何者だ!?て感じだけど、馴染んでるのもまたすごい。
そして例えば、榊。俺が言えたことじゃないけど、微妙に怖そうな顔してネコにおせっかいってのも変な奴だ。
・・・そんな少しくだんない事をどんくらい考えていたんだろう?
しばらくして、向かいの家の窓・・・自分のいる窓から少し左側の所に光が灯った。近くで鳴いていた虫の声が止まった。
カーテンが閉まってないので、部屋の大部分は見えてしまっている。なんか結構な数の人形が置いてあって、そのほとんどはネコだった。
あんまり見ちゃいけないだろうな、と思って窓から離れようとして、最後に見えたのは・・・。榊だった。

163 :名無しさんちゃうねん :2005/08/18(木) 21:19 ID:???
む、続きは?

164 :あずまんが王子 :2005/08/19(金) 23:10 ID:UljFt60o
む、PC壊れました

165 :あずまんが王子 :2005/08/19(金) 23:13 ID:???
しまった〜ageちゃった
すんません、ケータイからは慣れとらんもんで…
ささやかながら下げます

166 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/08/21(日) 22:31 ID:???
びみょ〜なところですがあゆかぐ
【病院】
「悪い、私は部活があるから後で行くよ。5時半には終わるから間に合うだろ?」
「ええ、市民病院の面会時間は確か7時までですから」
ちよちゃんが答え、榊が無言で頷いた。
帰り際。
珍しく榊の方から話し掛けてきたと思ったら、大阪が風邪をこじらせて入院したんで、一緒に
見舞いに行こうって誘われたんだ。
ああ、線が細くて体力なさそうだもんな。
そのときはせいぜいそのくらいしか思わなかったんだ。
でも。

病院に着いたのは6時半。
受付の人に病室を聞いたら、病状が急変して手術室に運ばれたって言われた。
みんなはもう帰った後みたいで、いなかった。
頭に白髪が混じったおばさんが、赤いランプに向ってぎゅっと目を瞑って祈っていた。お母
さんなんだろうと思って挨拶をすると、ありがとうってお礼をされた。なんと言っていいかわ
からなかったから、とりあえず「きっと大丈夫ですよ」なんて無責任な励ましをしたら、ありが
とうありがとうって手を握られた。
しばらくするとスーツ姿のサラリーマンが、額に汗を浮かべて早足でやってきた。
きっと必死だったんだろう。鬼みたいな形相で「どうだ」と聞かれて、私は一瞬ぎょっとしたけれど、
おばさんが「まだ、わからない」と答えると、「そうか」と言ってソファーにどかりと座った。
それからしばらく、秒針が時を刻む音と鉛のような空気が辺りを支配した。

……もしかしたら時間がループしているんじゃないかと思い始めた時、ようやく手術室のドアが
開いた。
おばさんが跳ねるように立ち上がり、お医者さんに駆け寄った。
「うちの、うちの娘は……」
すると、お医者さんは目だけでにこりと笑った。
「ご安心ください。手術は成功しました。まだ予断は許しませんが、もう大丈夫でしょう」

「それで昨日は見舞いに来ぃへんかったんやなー。なっとくやー」
大阪がベッドの上でふわっと笑った。
「うん、ごめんな。大阪は大阪だと思ってたから。本当の苗字が春日だなんて、昨日まで知ら
なかったよ」
(FIN)

167 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/08/21(日) 22:34 ID:???
最後のオチ笑ったww

168 :名無しさんちゃうねん :2005/08/25(木) 18:50 ID:???
お久ー
忙しい中、SS書き継続しているようで嬉しいです

169 :名無しさんちゃうねん :2005/08/31(水) 19:45 ID:???
だれか投下をキボンヌ

170 :名無しさんちゃうねん :2005/08/31(水) 23:49 ID:???
10日

171 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:29 ID:???
保護監察中のためトリップなしで。

172 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:29 ID:???
【樹海】
「真っ暗だね」
隣に座っているはずのともだちが、私の手をぎゅっと握った。
見えるものは木々の間からかすかにこぼれる明かりのみ。尻に敷いているビニールシートすら見えない。
ただ、時折聞こえる車の走行音だけが、人の領域のそばにいることを教えてくれる。
……どうしてこんなことになっちゃったんだろう。

173 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:30 ID:???
猫の写真を取ることに失敗した私に気を使って、ちよちゃんが子猫の写真を持って遊びに来てくれたあの日の夜。
ふいに、みんなと遊んできなさいと父さんが渡してくれた富士級ハイランドのフリーパスが事の発端。
みんなを誘ったら、どうせなら泊りがけで遊んだほうがいいぜとか、それならちよちゃんの宿泊分はいつもお世話に
なっている分みんなで出しあわへんかーとか、(せっかくCDコンポ買おうと思っていたのにそりゃないぜセニョール
とか、ダブルチョップとか、)いろいろ話が進んで9月の3連休に1泊2日でミニ旅行が決まって。
結局ちよちゃんの宿泊代の一部を負担することに同意させられた滝野さんが、民宿についてすぐに強引にねじ込んだ
樹海探索。
そして、遊歩道を横切った狸かなんかを追って滝野さんが道を外れ、後を追おうとする水原さんを「私が追いかける」
と制して……
その子を見失ったときには私たちも道を見失っていた。
いけどもいけども同じような景色。
目印も見当たらない。
ならばつけようと思っても、10メートルも進めばそれすらも見失ってしまう。
足場もでこぼこしていてまっすぐ進めない。
そうしているうちに日が落ちて、何も見えなくなってしまった。

174 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:30 ID:???
「ごめんね、榊ちゃん。巻き込んじゃって」
学校では聞いたこともないしおらしい声。
顔は見えないけれど、きっと泣いているんだろう。
違う、そうじゃない。
私は首を振る。
あの子をよく見たかったのは、私もだから。
だから、利用した。
私も樹海を甘く見ていたんだ。
それを告げたら、滝野さんは急に明るい声に戻った。
「そうか、榊ちゃんも同じだったか。悩んで損した」
学校で聞きなれた、自分勝手で暴走気味な、いつもどおりの彼女の声。
その行動力にちょっぴり憧れてた、彼女の声。
だから、私はそっとチョップした。
「やったな、榊ちゃん」
「あ、ごめん、水原さんならこうするかと思って」
「よみのチョップなら、もっと激しいぞー。頭かち割られるかと思うくらいだし」
滝野さんが笑った。
「ここから出たとたん、飛んでくるぞ、きっと」
ふと、手に水滴が当たった。
「雨?あっちゃー」
「大丈夫、傘、持ってる。二本」
「さすが榊ちゃん」
私は手探りでリュックから折り畳み傘を取り出し、一本を滝野さんに渡した。
差してみる。
「あー、だめだなこりゃ。離れ離れになっちゃう。榊ちゃん、私なるべく身を寄せるからそっちの傘に入れてよ」
答えるどころか、え?と思う間もなく、傘を閉じる音がして滝野さんがぴったりくっついてきた。
「これでよし。服についたコケ臭さがちょっち気になるけど、あったかいし、この方がずっといいよ」
滝野さんの野球帽がほほを軽く掠めた。
確かに暖かくて、とくんとくんと脈打つ生命の息吹がすごく感じられて、さっきよりもずっと安心できる。
「こりゃあ、かおりんにもチョップ食らうかなぁ」
えっと……
なんて答えてよいやら迷っているうちに、滝野さんの寝息が聞こえてきた。

175 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:31 ID:???
どれほど経っただろうか。
「うひゃぁ!」
滝野さんの声にぼんやりした意識が戻った。
「い、今、靴の上を何か駆けていった」
その声に、靴のほうに目を向けたけど、もう何もいなかった。
でも、ふと気がつく。
見える。
地面も、木々も、ちゃんと見える!
夜が明けたんだ。
車の通る音もひっきりなしに聞こえるようになっている。
「これだけ聞こえていれば」
「うん、十分目印になるよね」
はやる気持ちを抑え、ビニールシートをたたんでしまおうとして、見つけた。
夜には見えなくて気づかなかったけど、リュックの底にアルファベットチョコがいくつか。
「あせるのはよくない。その前に、食べよう」
滝野さんに一つ渡し、自分の一つ口に含む。
そうして簡単な食事を終えると、私たちは歩き出した。

176 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:31 ID:???
歩き出してすぐ、滝野さんの姿が視界から消えた。
一瞬ドキッとしたけれど、ただ転んだだけだった。
「ごめん、大丈夫。ちょっとこけちゃった。こんなところに穴があるんだもんなー」
滝野さんを助け起こそうと手を差し伸べたら、今度は私が転んでしまった。
つかんで体重をかけていた木が、腐っていてぽっきり折れてしまったのだ。
「あはは、榊ちゃんも同類ー」
あっけらかんと笑う彼女に、状況にもかかわらず思わず私も笑う。
「とにかく」
滝野さんはぬるぬるする服を気持ちだけ払うと、自分にも言い聞かせるように言った。
「雨上がりの地面は思った以上に滑りやすいみたいだね。気をつけていこー」
それから、しばらく進んだ。
音に向かって。
希望に向かって。
間もなく木の天井に切れ目が見えた。
きっとそこが国道。そう信じて、少し急いだ。
でも、そこは、本当にただの切れ目だった。
目指して進んできた方向には、一瞬コンクリートかと思うような厚い木の壁が、いまだ続いていた。
それはまるで、私たちをあざ笑うかのような、絶望の壁。
腰から力が抜けて、思わずその場に座り込む。
だめなのかな?
樹海からは絶対出ることはできないのかな。

177 :蛍石 :2005/09/07(水) 19:32 ID:???
「ねえ、榊ちゃん」
ふと、滝野さんがしゃがみこんだ。
「これ、ビニールテープじゃないかな」
摘み上げたそれは、確かに白いビニールテープで。
目で追ったら延々地面を這っていた。
「もしかしたら」
「うん」
これをたどれば出られるかもしれない。
「行こう」
再びつながった頼りない希望。
でもそれは、細々と長くつながって。
たまに切れてもすぐそばに続きが見つかって。
私たちは見失わないよう、足も滑らさないよう気をつけながら歩いて。
それでも何度かバランスを崩して。
そして……とうとうその末端にたどり着いた。
そこはまだ樹海の中だったけれど。
今まで通ってきた道とはぜんぜん違う道。
下草もない。
コケもほとんど生えていない。
何より足の踏み心地がぜんぜん違う。
硬い。
明らかに人の歩く道。
それが、ずっと続いている。
「榊ちゃん。私たち戻ってきたんだよね」
「うん」
「いやっほぉ!!!!!!」
滝野さんは叫んで飛び上がり、転んだ。
(Fin)

178 :名無しさんちゃうねん :2005/09/08(木) 20:41 ID:???
乙いやっほぉ!!!!!!

179 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/10(土) 01:19 ID:???
乙です
いやっほぉぉぉう、何度でも転ぼうぜぇぇ

180 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/09/11(日) 08:59 ID:NhAPJ6b.
>>162
おおーおつおつー
PC直ったら、またがんばってください。。
続きに期待してます。

>>166
うはー
最後のオチがすっごく面白かったです。
おつかれですー

>>156の続きです。

181 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/09/11(日) 09:00 ID:NhAPJ6b.
ザック、ザック、ザック……
私は神楽さんからスコップを借りて、ともちゃんの墓を掘っていました。
「ちよちゃん…… そろそろキツくなってきただろ。交代する?」
「いいえ。私に掘らせてください……」
ともちゃんは逝ってしまいました。大阪さんと一緒に。
たとえともちゃん自身が私を許しても、私は…… 身勝手な理由でともちゃんを殺してしまいました。
言い訳なんてありません。私は許されない存在です。
大阪さんやともちゃんに許してほしいなんて想いません。
でも…… せめてもの償いに、ともちゃんの墓ぐらいは私が作ってあげたいんです。
そのくらいは…… 許してもらえますよね。
ドサァッ
突然、掘っていたところの一部が崩れて、穴の中に落ちてしまいました。
「きゃっ!」
びっくりしました。
とりあえず、また掘るために穴から這い出ようとして…… 気づきました。
「!!」
「こ、これって―――!」

182 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/09/11(日) 09:00 ID:???
何ででしょうか。
いつもなら、こんなもの見たら絶対驚いて悲鳴をあげてます。
けど、今回は不思議と冷静でした。
恐怖でも、驚きでもなく、最初に出てきたのは…… 涙でした。
「大阪さん……」
ボロリと崩れた土の中から、腕が見えたんです。もう、骨になった腕が……
不思議な話ですが、それが大阪さんだとわかる前に、私は泣いていました。
わからない。わからないけど……
「ちよちゃん…… そろそろ滝野さんを眠らせてあげよう。
 大阪さんも、起こしちゃったから…… その、早く……」
「そうですね」
涙を拭いました。私は強くならなきゃいけないんです。
大阪さんや、ともちゃんの分も生きるために!
だから…… だからだから、絶対に強くなって、100歳でも200歳でも生きて見せます!!
「もう、この辺でいいよ」
「そうですね……」
私とよみさんがともちゃんの頭を、神楽さんが足を持って、その穴にともちゃんを横たわらせました。
ともちゃんは最期の最期まで―――いえ、死んだ後も笑ってます。
なんででしょうね。ともちゃんはいっつも私のこといじめて、弄って、おちょくって……
けど、いっつも笑ってました。時々行き過ぎたこともありましたけど……
人は死ぬときに走馬灯を見るといいます。
走馬灯を見たいと言ってた大阪さんも、多分見れたと思います。
けど…… 自分とが死んだときも見てしまうものだと今わかりました。
本当に走馬灯としか例えられません。
フラッシュバック――といっても経験した事ないのでなんともいえませんが――のように瞬間的に、パッパッとしたものではなくて、
大阪さんやともちゃんと過した時間が、そのときの流れのまままで頭の中で駆け巡りました。
本当に、3年間をそのままやり直したような…… そんな感覚でした。
「それじゃぁ、埋めようぜ…… とももこのままじゃかわいそうだろ?」
「ああ」
よみさんと神楽さんが、ともちゃんを埋めようとスコップを手に取りました。
「ちょっと待ってください!」
私はそれを咄嗟に止めていました。
そして、ともちゃんの手をとって、大阪さんの骨になった手の上に乗せました。
これで二人とも永遠に一緒です。いつまでも……
――私が逝くまで、かなり長くなりますが…… それまでお幸せに
涙が零れました。
それは、冷たくなったともちゃんの手を伝って、大阪さんの骨へ染込んでいきました……

183 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/09/11(日) 09:01 ID:???
ミーンミンミンミ゙ィ〜〜〜
早いもので、あれから10年もの月日が流れました。
「去年は榊さんとよみさんが、仕事で来れませんでしたけど…… 今年は来れるそうですよ」
何年前からでしょうか。
こうやってともちゃんの命日の前の夜から、夜通しで二人のお墓の前でお話するようになったのは。
「今年は、榊さんが自分の病院をつくりました。それから―――」
こうやって、最近の皆さんの報告するようになりました。
きっと大阪さんは、私のわからないようなすごいことを言って、ともちゃんは何だかんだで笑って聞いていると思います。
「私は毎日元気ですよ。  くすっ。大丈夫ですよー。アメリカ行ってもみんながみんな撃たれるわけじゃありません」
二十歳になってから、一年にこの日だけ、お酒を飲んでいます。ちなみに今年は日本酒です。
飲む前に二人のお墓にも全部の半分くらいのお酒をかけてあげます。
健康に悪い事はわかっています。けど、二人にに本当の自分を見てもらいたい。
それに私自身、こうでもしないと本当の自分になれないような気がするんです……

「へぇーよみちゃんに赤ちゃんがなぁー」
「どんな旦那だろうな。大変だぜー、あいつ小言多いし」
にしても、よみが結婚して、もう子供ができてるとはなー
私は絶対30過ぎてもよみは結婚できない――俗に言うあれですよ、負け犬ってやつ――とふんでたのに。
なんだろうな。こうやって実際は話してないのに、結構会話が成り立つんだよな。
やっぱりあれか。友情パワーってやつ?
「ちよちゃんは結婚とかせんのかなぁー」

「私は結婚なんてできませんよ。大阪さんがいるんですからぁー」
だんだんと体がポカポカしてきました。アルコールが体に回ってきたみたいです。
今日は夏なのに結構涼しいので、丁度いい感じがします。

「ひゅーひゅー!大阪愛されてるねー。ちよちゃんからラブラブ告白ぅ!」
「あー、そんなこと言っとると、私、今度ともちゃん抜きでちよちゃんとデートしてまおうかなぁ〜〜?」
わっ!わっ!ごめんなさい。それは冗談ですから。
「えーん。大阪が二股して私のこといじめるー! 大阪がぁ―――」
まぁここは泣きまねだ。かわいい子の泣きまねは絶対グッっとくるって言うし。
このともちゃんのかわいい泣き顔を見たら大阪も―――
チュッ……
「うわわわわぁぁぁっ!?」
キスされた。な、ななな、何だああぁぁぁ!?
「かわええからなー」
「は、恥ずかしいだろー!」
こっちは顔から火がでるほど恥ずかしいのに、大阪ったらなーんも反省してない。
「誰も見てないやん」
「ちよすけがいるだろー!!」
ったくー、こいつ、お墓に酒かけられて酔ってるのかー?

184 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/09/11(日) 09:01 ID:???
「私はまだ100年くらいそっちに行く予定じゃありませんけど…… それでも待っててくれますよね」
何だか…… 今年は妙にお酒を飲んでしまいます。
「いつか…… 私がそっちに行ったら…… また……
 よみさんとか、神楽さんとか…… 榊さんとかかおりんさんとかも一緒に、おしゃべりしましょう。
 何十年後…… いえ、百何十年後になるかわかりませんけど」
涙が溢れてきました。でも泣きません、絶対に。
だって…… 私は強く生きなきゃいけないから……
「だから゙…ひっく……ぅぅ」
今年も泣いちゃいました。いっつも来年こそは泣かないと決めてるのに。
やっぱり、まだ二人の死を現実として受け止められない。
だから八年間も吹っ切れないんです。

あーあーあー、ま〜た泣いちゃったよ。何だかんだ言っても、まだまだ大人じゃないねぇ、ちよすけは。
やっぱりここは大人の私が慰めてあげねば!
「ほら、ちよすけ泣かない泣かな〜い」
「そうやで〜、泣いていいのは玉葱切っとるときだけやで〜」
「大阪、まだまだだな」
「?」
「目にシャンプーが入った時も許可しないと駄目だろ!」
「あ―――!!そうや。それがないと大変や!」
うむ、我ながら的確は指摘だ。

「わがってま゙すよ…… 泣ぎまぜんっよ!」
私だって成長してます。身長は150センチ超えましたし、ゆかり先生の車に乗ってもなんとか大丈夫になりました。
よみさんには子供ができて、神楽さんだって水泳の日本代表になりました。
かおりんさんは、動物を中心に撮影するカメラマンになって、ちょくちょく榊さんに仕事を協力してもらっています。
ゆかり先生とにゃも先生は、すでに旦那さんと子供を持って、主婦になっています。
みんな、たくさん大人になったんです!
私だって、大阪さんやともちゃんの死を乗り越えることぐらい……
「あ……」
その時、すごいものが私の目に入ってきました。

185 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/09/11(日) 09:02 ID:???

「うっわー、今まで気づかなかったなぁ」
「ほんまや」
驚いたのなんのって。いつの間にか、辺り一面黄緑色の光でいっぱいになっちゃってるんだから!

「す、すごい……」
この別荘には何度も来ていますが、こんなのは初めてです。
何十もの蛍が、パァッと一面に漂っています。すっごく幻想的で、神秘的で……
例えるなら都会の夜景でしょうか?それとも天の川……
いえ、魂みたいだと思いました。

「きれいやなぁ」
「こんなにワラワラ集まってるの初めて見た」
ほーんと、綺麗だよなぁ。
ピカソとかムンクみたいなただの落書きなんかよりも、こっちの方がず〜〜〜〜〜っと価値あるぜ?

「ぁ……」
いつの間にか、涙が止まってました。
来年からは泣かない…… 何故かわかりませんけど、そうなるのがわかりました。
大阪さんもともちゃんも、死んでしまいました。
けど、人間はいつか死んでしまう。ただ、別れるのが人より少し早かっただけ。
そして、それを早めたのは……
私は一生罪の十字架を背負っていく運命です。それを捨てるつもりはまったくありません。
けど、これは身勝手な考え方かもしれませんが、大阪さんとともちゃんが、いっつも側で励ましてくれている。そんな気がします。
だから、私はその励ましに誠意一杯答えて、この一生を全うするつもりです。

186 :Moment But Happy Life 〜あっというまだけど幸せな命〜 :2005/09/11(日) 09:02 ID:???
キラッ!
「あっ!!」
流れ星が空を翔けました。
でも、願い事を思い浮かべる間もなく、すぐに消えてしまいました。

「ともちゃん、願い星にお願いできた?」
「ああもっちろん」
こう見えても反射神経には自信があるんだからなー。ばっちしに決まってるだろ!
「何や?」
「ひ・み・つ。 大阪は?」
「あかんあかん。最初の文字の子音くらいで星が消えてもーた」
あっちゃー。日本語の一文字もいけなかったかー
「けど一応お願いはしたで」
「で?なんてお願いしたの?」
「私もひ・み・つや」
「いじわるぅ―――!」
ふーんだ。でも、私は大阪の考えてるくらいわかるさ。
なんせこのともちゃんは天然ボケの大阪の恋人で、天才高校生のちよすけと恋のライバルなんだからな!!
多分、ここにいる全員私とおんなじだろうな。そんで、私の願い事は―――

流れ星は消えてしまいました。まるで、短い一瞬を生きた大阪さんかともちゃんの魂ように。
けど、周りにはまだたくさん流れ星が飛んでいます。
だから、そっと願い事をお願いしました。

――また、みんな一緒になって、どうでもいいようなおしゃべりができますように……

187 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/09/11(日) 09:04 ID:???
やっとこさ完結できましたー
一年前のものよりも、かなり上手くなったと思っているのですが、いかがなものでしょうか。
ちなみに、ここまで長くなる作品を新たに書く気はありません。
創作板とかクロスオーバーの方がかなり長くなる予定なので。
でも、短編とかをたまに投下しようと思ってますので、そのときはよろしくお願いします。

188 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/11(日) 11:27 ID:???
大長編御疲れ様でした
病者的なものに関しては上達してると思います
これからも期待してます

189 :名無しさんちゃうねん :2005/09/13(火) 20:44 ID:aCjvH9..
だれかきぼんぬ

190 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/13(火) 21:09 ID:???
今気づいた描写ですね
アホか俺は

191 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/16(金) 17:17 ID:???
野望のラスト。よみちよ投下します。

192 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/16(金) 17:17 ID:???
【タイピング】
「えーと、ここは『ルーズベルト大統領』でいいのかな?」
「うーん……間違いではないですが、ルーズベルト大統領はセオドアとフランクリンの二人がいますから、『F=ルーズベルト』がより正解だと思います」
「そうか。じゃあ、三角ということで1点、と。合計は……86点か」
「一応合格ラインには達してますねー。そろそろ一休みしましょうか。お茶を入れてきますね」
ちよちゃんがすっと立ち上がり、部屋を出て行く。
たったった。
階段を警戒に下りる音がだんだん遠ざかる。
時はもう3月。
九州ではもう桜も咲き始めたところもあるらしい。
でも、私の桜はまだ咲いていない。
(はぁ……どうして私だけ取り残されちゃったんだろう)
在学中はそう悪い点を取ったことはない。
授業だってまじめに聞いていた。
それなのに、今、私は自分より5歳も年下の娘の家にお邪魔してその娘に勉強を教えてもらっている。
(情けないな。智や大阪ですら志望校に受かったというのに)
確かにあの二人よりはレベルの高い大学を受験した。
でも、それは関係ない。
あいつらは自分達のレベルより高い大学に合格し、私は私の偏差値なら楽に合格して当然の滑り止めすら落ちてしまった。
不運はあった。
1校目は英語で、2校目は古典と世界史で、今までの傾向からすると絶対に出題されないはずの範囲の問題が出題されていた。
(ちよちゃんなら天才だから対応できたかなぁ)

そんな事を考えながら本棚をなんとなく眺めていて、ふと一冊の本に目が止まった。
いや、本ではなかった。
ただそういう風に見えただけ。
パソコンソフトのケース……その背表紙には『ねこねこたいぴんぐ』とあった。
(あれ?ちよちゃんパソコンなんて持っていないはずなのに)
とんとんとん。
ちよちゃんが階段を上ってくる音が聞こえる。
そうだ、本人に聞くのが一番早いよね。

193 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/16(金) 17:18 ID:???
「ああ、あれは1年生の時に買ったんです」
ちよちゃんは紅茶をスプーンでかき混ぜながらそう言った。
「私、最初の情報実習の時、何も知らなくて恥ずかしかったから、練習して早くみんなに追いつこうと思って。本当は公共の端末にソフトをインストールなんかしちゃいけないんですけどね。てへっ」
ぺろりと舌を出す。
その言葉を聞いて、私は思わず顔が赤くなった。
あの時、ちよちゃんがブラインドタッチできた本当の理由がわかったから。
天才だからじゃない。
陰で努力していたんだ。
問題に真正面から立ち向かっていったんだ。
やっとわかった。
思えば、智も大阪も問題に立ち向かう時はちゃんと真正面から立ち向かっていた。
私みたいに、姑息な受験技術の研究なんてしていなかった。
だから私は取り残されたのか。

「よぉし」
気合を入れなおす。
「ちよちゃん、もう一回一問一答お願いできるかな。今度は全範囲で」
ちよちゃんは親指を立てて力強く微笑んだ。
「はい、頑張りましょう!」
(END)

194 :名無しさんちゃうねん :2005/09/16(金) 21:54 ID:???
よみ「おめでとう」
ちよ「おめでとうございます!」
神楽「おめでとう!」
大阪「めでたいな〜」
榊「おめでとう」
智「おめでとー!」

195 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/17(土) 12:02 ID:???
>>194
なんかシンジ君になった気分w

196 :名無しさんちゃうねん :2005/09/18(日) 19:07 ID:AY6iBKCM
なんかいろいろキタ━━━━(゚∀゚)━━━━

197 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:43 ID:???
35 2005/9/19 秘密 (創作)

 なぜなんだろう?
 3年生になって、担任の木村に気に入られている。

 親しくもなかったのに私を授業中に愛称で呼ぶし、
鶴というか怪奇の一声で委員長にしてしまうし、
榊さんとは別のクラスになってしまったし、
私の3年生はこのままでは不幸の湖底で泥となってしまう。
しかもその泥を木村という魚に掻き回されたのでは、
もはやなんと形容していいか分からない。

198 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:43 ID:???
 すべては木村のせいだ。
いったい彼は私のどこを気に入ったというのだろう。
木村の基準は胸が大きく、美しいということのはず。
私はサイズも普通だし、背も普通だし、
容姿も目立っているわけじゃない。
木村の奥さんはとても美人で、胸はとても大きく、
いつか奥さんを見かけたとき男子が興奮しながら話題にしていた。
 これにはなにか秘密が、裏があるにちがいない。
私と木村の好みを結びつけるなにかが。
それを解き明かし、木村を退け、
私はあるべき自由を獲得するのだ。

そう、これは私の戦いだ!

199 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:45 ID:???
 ――その決心から、すでに2ヶ月も経過してしまった。
一時的とはいえ木村から解放される夏休みはまだはるか彼方なわけで、
私はいまだに木村の地獄から脱出することができないでいる。
クラスメイトは誰もが木村を気味悪がっていて、
私に蜘蛛の糸を垂らしてもくれない。
みんな私ひとりだけを犠牲者として地獄に押し込め、
天国でのうのうと暮らしている。
 頼れるのは自分しかいない。

 そうだ。他力本願はいけない。4月に誓ったじゃないか。
これは私の戦いである、と。いままであまり行動に移さなかったけど、
こうなったら木村の秘密がどうのこうのという以前に、
その弱みを掴んで脅すといったくらいはやらないといけないだろう。
 私は犯罪に手を染めることにした。
お母さんお父さんごめんなさい。かおりは悪い子になります。

200 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:46 ID:???
 週末というか土曜日、木村は一家3人で車に乗って
出かけたのを見計らい、木村の家に侵入することにした。
金曜に木村が私に言っていたからだ。
やつは気味が悪くて女子高生大好きで
セクハラまがいのこともしでかす変態のくせに、
やたらと家族想いで良い父親を演じている。
きっとそれはそのままの演技に違いない。
今日、私は木村の裏を暴き、英雄になるんだ。

 木村の家はローンが20年残る一軒家で、まだ新しい。
だけど犯罪があまり起こらない平凡で平和な団地にあるためか、
戸締まりはいいかげんだ。新聞受けを開け、
中に入っていた自転車用のオイル容器を取ると、
ほら、娘さんのために用意してある、予備のカギが隠れてる。
 簡単なものだ。

201 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:46 ID:???
 家の中を捜索する。普通の、幸せな家庭そのものだ。
木村の奇人さを示す証左はそこにはなにもない。
まるで文字通りの頼れる大黒柱に支えられた、
完璧な理想の一家の香りが漂ってくる。
だが騙されないぞ。私はついに木村の部屋と
おぼしきものを2階で見つけ、ゆっくりと侵入した。
私の父の部屋と雰囲気がよく似ているが、
書斎にでもあるような大きな机が鎮座している。
家でも仕事をするためだろう。
古典の参考書や本などがたくさん並んでいる。
私はその机に向かう。
こういうところに大事なものも収納しているはずだ。

202 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:47 ID:???
 ……あった。いきなり私の写真が出てきた!
学校の制服を着ていて、夏服だ。
なかなか可愛く撮れてるじゃないか。
カメラのほうを見て、にっこりと笑っている……おかしい。
私は木村にこういう笑顔を向けたことはないし、
写真に撮られた記憶もない。そもそも木村は学校に
カメラを持ってきたのを見たことがない。
木村は変人だが、真性の変態ではない。
それならやつはとっくに職を失ってる。
失業しないていどのきわどさで木村は自身の欲望を発散し、
だからこそ私は耐え難い精神的な負担を受けているのだ。
やつは決定的なことをしない。つまり終わりがない。
それがかえってたちの悪さとなっている――そんなことはどうでもいい。
この写真の正体だ……そうか。

 これは私じゃない。

203 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:48 ID:???
 木村の、奥さんだ。そうだ、やっぱりそうだ。
引き出しの奥をさらに探すと、ちいさなアルバムが出てきた。
開いてみると、昔の木村がそこにいた。
「うわ木村先生って髪型もメガネもそのまんま!」
 うちの学校ではない。詰め襟の黒い制服を着ている。
となりには例の私によく似た、私の学校の制服を着た少女が立っている。
背景は知らない学校の文化祭で、
周囲には木村の学校の制服がわらわらと背景となっている。
木村の通ってた高校で撮ったものだろう。
二人は仲良く手を繋ぎ、あの変態がやはり大きく口を開いたまま、
頬だけ染めて棒立ちだ。そして――ようやく得心した。
少女の微笑みが、誰に似ているのか、わかった。

「奥さんなんだ……」
 木村が私を気に入っている理由がわかった。
奥さんの若いころに私はよく似ているのだ。
顔形、髪型、背丈、そして胸のサイズまで。
しかも学校までおなじ。あまりにも似ているので、
私自身が奥さん自分と見間違えたほどだし。

204 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:48 ID:???
 いまの木村の好みはおそらく、
現在の奥さんの体格そのまんまなのだろう。
高校2年や3年の段階からあれほどのグラマーな体にどうやって
成長できたのか分からないけど――私はどうだろう?
きっとだめだな。私の母を見たらわかる。
私は木村の奥さんのように美しくはなれないし、
胸も大きくなれない。私はあくまで凡庸なままで終わるだろう。
だけどいまの私はとにかく奥さんの若いころに似てるわけで、
だから木村は私を気に入ってるんだ。

 それだけ分かれば長居は無用だった。
私は自分でも感心するくらい慎重に侵入者がいたという痕跡を消すと、
家に帰った。秘密さえ分かれば、あとはなんとでもなる。

205 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:49 ID:???
 月曜、私は木村先生を校舎の裏に呼び出した。
「どうしたんだいかおりん?」
 婉曲に言っても仕方ない。私はいきなり本題を切り出した。
「木村先生の奥さんって、若いころは私に似ていたんですってね」
「…………」
 木村が黙った。反応しない。
「それで木村先生が私だけを特別扱いするのは、
教師としてどうかと思います」
「…………」
「あのー。それで、できれば、今後は」
「一等賞ーー!!」
「ええええ?????」
「あなたは私の一等賞になってね。ぴったしかんかーん!」
「ええ?」
「髪の色が違いますね」
「……はい?」
「黒い髪のかおりんは、私の一等賞になってね、
と言いました。だから私は一等賞になりました」
 木村は完全にどこかの世界の住人になっている。
私でない、誰かに語りかけるように。
「だけど! ――黒い髪の彼女は、私が大学3年生のときに、
別の世界に旅立ったのです」
「え?」
 木村の濃いメガネの間から、きらめく筋が垂れ落ちていた。
「召された彼女には、茶色の髪の妹さんがいました。
彼女は私にいいました。二等でもいいから、私を側に置いて下さい」
「あの……木村先生」
「私はいいました。だめだ、君はボクの一等賞になりなさい、と」
 重い話になってきた。これは、かなり秘密なんてどころじゃない話だ。
「だから互いに一等賞になったのです! おしまい!」
 木村はそれ以上語ろうとしなかった。
私をじいっと見つめ、そして奇声を発すると、
そのまま怪しい足取りで私の元から去った。

206 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:51 ID:???
 ……断片だけだが、なんとなく事情はわかる。
黒い髪の私によく似た彼女は、すでにこの世の人ではない、
ということが。妹なら、笑顔が似てるわけだ。
髪の色も、体格も違っている。
だけど笑顔はおなじだった――私の戦いはおそらく、
私の敗北でその幕を閉じそうだった。私にはもう、
これ以上「戦う」ことは、きっとできない。

207 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/19(月) 01:52 ID:jpqwowDk
「かおりーん、なんか最近、
あまりキムリンのこといわなくなったな。どうしたんだ?
なにかあるんなら相談してみろよ。クラスが違ったといっても、
いちおうは友達なわけだしさ」
「え――ああ。滝野さん心配してくれてありがとう。
でももうそれはいいの」
「どうしたんだー、かおりん。抵抗を止めたのかー?」
「うん、なんか疲れちゃって」
「大丈夫か、大事にしろよ」
「ありがとう」

 で。

「滝野さん! あなたね! 私が木村先生と出来たって噂流したの!」
「えー、違うのー?」
「キー! 私は榊さんひと――とにかく、違うったら違う!」

  END

208 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/19(月) 02:57 ID:???
木村先生にそんな過去があったとは…

このスレは木村×かおりんを応援しています

209 :名無しさんちゃうねん :2005/09/19(月) 06:20 ID:???
かおりんメインの話とっても良かった
やる時はやる女の子だったのね

210 :名無しさんちゃうねん :2005/09/19(月) 12:26 ID:???
ちょっとホロリとした。グッジョブ。
誰か絵のうまい人、挿絵キボンヌ。

211 :名無しさんちゃうねん :2005/09/19(月) 21:52 ID:???
いい話だな・・こういうのを待っていた。

212 :名無しさんちゃうねん :2005/09/19(月) 22:08 ID:???
>挿絵
確かにあずまんがが一番熱かった時代なら、誰かがウプしてくれる可能性
もあったが……それも遠い昔の話。

213 :名無しさんちゃうねん :2005/09/19(月) 23:16 ID:???
木村の大学3年のエピソードも詳しく知りたい

214 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/20(火) 00:22 ID:???
思わぬご好評を頂きかたじけない。
長編に集中したいのでSSはよほどのことがない限り
書かないことにしてるけど、今回は突然降ってきたネタが
なにげに良さそうだったので、忘れぬうちに書き殴って
推敲もせず投稿してしまった。あちこち接続おかしいまま。

>>213
長くなりそうなので私にはむりぽ。原作から離れすぎたオリジナルストーリーは
なるだけ展開しないようにしてるので(というか調子に乗って長編のネタを注ぎ込んで
しまったりしたら目も当てられない)、書きたい人が適当に書いてくんなまし。
そこで「なぜキムリンがモテたのか」をなんとかして明かさないといけない、
という難問中の難問に挑戦しなければいけないわけですが。

215 :名無しさんちゃうねん :2005/09/21(水) 19:56 ID:???
>>214
良い話でした・・・木村は実はナイスガイていうのは好きだなあ・・・
とにかく乙。

216 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/09/21(水) 20:20 ID:???
>>214
木村の違う一面が見える良い作品でした。

おつ。

217 :名無しさんちゃうねん :2005/09/22(木) 03:11 ID:???
>>214
いい話です・・・乙。

>>原作から離れすぎたオリジナルストーリーはなるだけ展開しないようにしてるので

確かに原作から離れたオリジナルストーリーは作品の世界観が壊れる事もありますからね。
もはやあずまんが大王じゃなくて完璧オリジナルみたいになっちゃうと・・・

218 :名無しさんちゃうねん :2005/09/22(木) 03:36 ID:???
小説としては凄くよくできていて、読んでいて面白いんだけど、
でも、よく考えると「あずまんがSSである必然性はあるのか?」
ってのがたまにあるよね。

219 :名無しさんちゃうねん :2005/09/22(木) 13:29 ID:???
個人的には名前のあるオリジナルキャラが出てくるのはちょっと…
なんかオリキャラだと感情移入しずらいんだよな。
まあ、一人ぐらいならぎりぎり許せても複数になるとなあ…

あずまんがSSから離れてただのオリジナルになる危険性があると思う。

220 :名無しさんちゃうねん :2005/09/22(木) 23:53 ID:???
魅力的なキャラクターや世界観を自前で作り上げるのは、難易度が超高いですよ。
でも、プロが描いた大ヒット作品の設定を流用すれば、難易度は下がり、ある程度
の力量がある人なら、自分のアイデアのSS化にチャレンジできるわけです。
「必然性」と問われれば、書き手がその元ネタが好きだから! と答えるしかない
ですね。

221 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/25(日) 17:01 ID:???
久しぶりにSS以外で意見を言いますね。

>>220
難易度は既存設定を使って作品を作ることの方が上ですよ。
自分で設定を作ることの方がよほど楽です。
面白いネタが湧いてもそれが設定に合っていない場合は没にしなければならないし、
設定からネタを考えるとネタ自体がチープになりやすいですから。
そしてつい短絡的に目先を変えてみて、後で激しく自己嫌悪に陥ることに。

222 :名無しさんちゃうねん :2005/09/27(火) 00:42 ID:???
既存作品を元ネタにSSを書く場合、
元の世界を大事にする人にとっては難易度は高く、
己の妄想を最優先する人にとっては難易度は低いということかな。

223 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/09/27(火) 00:57 ID:???
難しいかという難易度よりは、その人にとって根気が続くのは
どちらの方法かな、という気もする。腕というのは必要に応じて、
すなわち挑戦することで勝手に追いつくんで。まああんまし
続けてもスレ違いな気もするんで、これ以上はSS書きの控え室で
行うということでどうでっしゃろ。誰か新作投下してくれたら早いですけどね。

224 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/27(火) 12:47 ID:???
>>223
じゃあ、投下
【頑張りやさん】

225 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/27(火) 12:48 ID:???
「ハッピバースデー ディア大阪さん〜♪ ハッピバースデー トゥーユ〜♪」
わーぱちぱち
今日は大阪さんの誕生日。
大阪さんの家にみんなで集まってパーティーです。
歌の後はお約束の、ふー。
そのケーキ、頑張ってスポンジから作ったから腕が筋肉痛です。
焼きメレンゲのねここねこも苦労したんですよ。
……あれ?なんで吹き消さないんですか?
「ちよちゃん、ごめん。ろうそく一本足らへん」
え?ごめんなさい。
慌ててろうそくの数を数えてみます。
1、2、3、……17
あれ?
「合ってますよ?大阪さん17歳ですよね」
「ちゃうねん。18やねんで」
「おいおい、大阪。何ボケてんだよ。高二だから誕生日がくれば17だろ」
よみさんが突っ込みを入れましたけれど、それでも大阪さんは首を横に振りました。
「ちゃうねん。私、小学校の頃、1年間学校行けへんかったからみんなより一つ年上やねんで」
……そんな大事なこと、今言われても……
場が一気に沈みかけた、その時。
「そんなのどーでもいいじゃん」
強引に雰囲気を戻したのは、智ちゃんでした。
「ろうそく足りないんならさっさと付け足そーぜ」
「うん、早くちよちゃんのケーキ食べたいもんな」
「また太るぞー」
「うるせーバカ」
「あはは……じゃあ、付け足しますね」
その場は何とか持ち直し、それからは何事もなくパーティーは進みましたが、大阪さんの
一言はパーティーの間中、私の心にわだかまっていました。

226 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/27(火) 12:49 ID:???
ですから、パーティーが終わって洗い上げをお手伝いさせてもらっている途中に、大阪
さんのお母さんにそれとなく聞いてみる事にしたんです。
……後悔しました。
私はまだまだ子供です。
大阪さんのお母さんが話しにくそうに困っているのを見て、あきらめれば良かったのに。
それでなければ、ちょっと嫌がる素振りを見せてくれれれば良かったのに。
でも、お母さんも大阪さんと同じく優しかったから、私は人の家庭の事情に踏み入って
しまいました。

227 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/27(火) 12:50 ID:???
――大阪さんは、こちらに引っ越してくる前は、お父さんがいませんでした。
それも、死んでしまった訳ではなく、離婚。
大阪さんの妹さんはお父さんが引き取り、大阪さんはお母さんが引き取って。
お母さんは頑張りやさんで大阪さんを一人で育てようとして。
大阪さんもいい子で頑張りやさんだったので、お母さんが一所懸命働いてるのを見て、
わがままも言わず、ついでに体の不調も言わず、気づいた時には栄養失調で……
前々からおかしいと思っていたんです。
高校生の大阪さんが私と同じくらい足が遅いなんて。
やっと理解しました。
子供の時、そんなことがあったから。
成長期の栄養失調は身体を萎縮させて、後々まで尾を引くそうですから。
「それなのに、あの子ったら、中学を卒業したら働いてお母さんを楽にしたるから、
なんて言うんよ。だから、そんなんあかんって、高校くらい行かせてやらなって、
再婚することにしたのよ」
お母さんはそう私に言った後に、つぶやくように付け加えました。
「でも、神様っているものやね。まさか再婚したおかげで弥生の成長した姿も見ることが
できるなんてね」
だから、私は事情を知ってしまった罪をなんとか埋め合わせようと、一所懸命に説明しま
した。
榊さんが大阪さんに負けないくらい優しくて、頑張りやさんで、思いやりのある人だってことを。
(Fin)

228 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/27(火) 18:31 ID:???
大阪…そんな泣かせるエピソードがあったなんて…

229 :名無しさんちゃうねん :2005/09/27(火) 18:35 ID:???
大阪と榊さんが姉妹だったのかー!
GJ!!

230 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/27(火) 20:28 ID:???
話は変わりますが、そろそろ自分の作品をまとめて(気になるところは修正して)
WEB公開しようかと思っていますがいかがでしょ。

231 :(ー・∋眠)<.。oO(眠い名有り) ◆4sS6D/pkQc :2005/09/27(火) 21:09 ID:???
見たい!早く!!
作品乙でした。またまた独創的でポンポンと読めて面白かったです。


萌えBBSのSS全部をまとめるのって不可能かなぁ……
少なくとも一人じゃ絶対無理だな。

232 :名無しさんちゃうねん :2005/09/27(火) 21:47 ID:???
SSのリンク集サイトみたいのをCGIで作ってみようか…って思ったこともあったんだけど。
気分が乗らなくてやめた。

233 :名無しさんちゃうねん :2005/09/28(水) 17:49 ID:???
>>230
是非!

234 :名無しさんちゃうねん :2005/09/28(水) 22:54 ID:???
すげー久しぶりに大阪板にキタら,蛍石氏の野望が達成されていたとは…!

とりあえずおめでとうございます。


しかし,前スレ581で野望の進捗状況をお尋ねしたのは俺なんですが,あれからもう10ヶ月もの月日が流れてしまったのね……

>>230 は,是非おながいします。

235 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/28(水) 23:00 ID:???
いいと思います

236 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/09/30(金) 22:26 ID:???
ウェブページ作ってみた。
宣伝やー
http://www91.sakura.ne.jp/~fluorite/

237 :質問推奨委員長 ◆EIJIovdf8s :2005/09/30(金) 22:48 ID:???
>>236
お疲れ様です

238 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/10/01(土) 00:21 ID:???
アニメ化前に作ったgif四コマが出てきたので公開。
当時はごく仲間内だけ(非あずまんがコミュニティ)に公開し、
2ちゃんねるにも大阪板にも投下しなかった。

こすぷれい (創作)
http://nekojarashi.ojaru.jp/az/az_ss_extra.html#36

中国 (創作)
http://nekojarashi.ojaru.jp/az/az_ss_extra.html#37


>>236


239 :名無しさんちゃうねん :2005/10/01(土) 18:56 ID:???
>>236 乙 

早速,お気に入りに追加しましたー

240 :名無しさんちゃうねん :2005/10/17(月) 00:17 ID:???
ミルクチョコ氏のSSをもう一度読みたい。。。

241 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/11/08(火) 20:02 ID:???
編集会議室の次スレです。
http://so.la/test/read.cgi/azuentrance/1131446577/
前スレはあと40ちょっと程あります(11月8日8時現在)。

>>240
妻大阪に萌え萌えだった・・・俺もまた読みたい。。。。。

242 :名無しさんちゃうねん :2005/11/21(月) 01:11 ID:AhN.Bun6
・・・ここで、話すのもなんですが、蛍石さん、うちゅーさん、限界さん、念のためにお聞きしますが
あなたがたは、あずまんがラウンジの「SS書きの編集会議室」の存在に気付いておられますか?

243 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/11/21(月) 21:48 ID:???
>>242
私はすでに過去の人ですよ。

244 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/11/21(月) 22:12 ID:???
気付いていますけど何でですか?
書き込まない訳なら、私は個人的に某光の巨人が大嫌いなので、光の巨人コラボ作品
の打ち合わせをやっているようなところにはいまいち足が向かないんですよ。

245 :名無しさんちゃうねん :2005/11/21(月) 22:44 ID:???
>>244
はぁ・・・それより、あなたのウェブページの更新が停滞しているようですが(「4コマ」という
部文をはやく読みたいです)・・・・・・

246 :名無しさんちゃうねん :2005/11/21(月) 22:46 ID:???
>>124
限界さん、続きまだなんですか?

247 :名無しさんちゃうねん :2005/11/22(火) 00:09 ID:???
>>246
ここまで時間が経ってたらもう無いでしょ。

248 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2005/11/22(火) 02:00 ID:???
>>244
そこまで嫌われているとは思いませんでした。
残念です。

249 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/11/22(火) 07:48 ID:???
>>244
精進します。(この頃忙しくてすみません)

>>248
別にあなたが嫌いな訳でもあなたの作品が嫌いな訳でもないし、私が光の巨人を
嫌いだからと言って光の巨人ファンの人を軽蔑するとかそういうわけではない
ので勘違いしないでね。

250 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/11/22(火) 17:25 ID:???
http://www.ringolab.com/note/natsume2/archives/004000.html
これの上のほうにある

「あずまきよひこ『あずまんが大王』『よつばと』
(メディアワークス)の、ひたすらキャラが存在する空間を
読者に遊ばせ、読者が勝手に想像する多様さをできるかぎり
保証しようとした「間」は、いわば受け手の「読み」と「表現」が
かぎりなく近くなった時代のマンガ様式なのかもしれない。」

という一文は、あずまんが系のコラージュが他の漫画・アニメと
強烈な親和性を持つ理由としてなるほどと頷けるものがある。
ほとんどのコラはコラ元の作品の作風や勢い、絵柄、癖というものを
利用したものだが、あずまんが系だけはコラ先に対して溶け込む
という性質を持っている。これは他の多用されるコラボレーションの
方法論とはあきらかに異なるもので、ポストあずまんがを目指す
後発作品のどれもが到達できていない特徴であろう。

といった話題もOKなのでしょうか?

251 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/11/22(火) 17:27 ID:???
間違えて発表スレのほうに投下してしまったorz

252 :ケンドロス ◆KPax0bwpYU :2005/11/22(火) 22:55 ID:???
>>249
あ、そういう事ですか。
早とちりしてすいません。

253 :名無しさんちゃうねん :2005/11/24(木) 01:50 ID:???
>>250-251
いったい、どこのスレに投下するつもりだったんです?

254 :うちゅー ◆UCHU/Xh/xE :2005/11/26(土) 00:16 ID:???
(`・ω・´)

255 :名無しさんちゃうねん :2005/11/26(土) 06:54 ID:???
内容的にコラボ・クロスオーバースレかな?
(でもその後投下した様子がないんだよな)

256 :眠名有 :2005/12/01(木) 22:37 ID:SrN9ZjQo
思いつきネタです。とりあえず投下

257 :キトクの智 :2005/12/01(木) 22:38 ID:SrN9ZjQo
その事件は、一本の電話から始まった。
ちよ、よみ、榊は冬休みの日曜日ということで、ちよの家に集まっていた。
コタツに入り、蜜柑とお茶をその上において雑談をしている。
「あー、来年は私たちも受験生だなぁ……」
「そうですね。よみさんはどこを受験するつもりですか?」
「そうだな、私は―――」
ピピピピピピ……
部屋においてあった電話の子機の五月蝿い電子音が、会話を中断させた。
「はい、美浜です」
「ちよちゃん!!」
声の主は大阪だった。
いつものおっとりした声とは違い、かなりあせっているようである。
「大阪、どうしたんだ?そんなに焦って」
「あんな、ともちゃん……肺ガ……で…… 今キトク……やねん」
「は!?」
あまりに唐突なことだったので、状況がわからないようだ。
「だから、とも…ゃんが肺……んになって……もーて、今キトク……やねん!」
泣いているようで、ところどころ詰まったり、途切れたりして良く聞こえないが、状況は理解できた。
「え、どどどどういうことですか!ともちゃんが!?」
「ええから……早ぉ病院に来て!!住所は―――」
ちよはすぐに言われた住所をメモすると、すぐに電話を切った。

それからは何があったか覚えていない。
とにかくそこにいる全員に電話の内容を伝え、大通りに出てタクシーを拾い、大阪が言った病院へ向かった。

258 :キトクの智 :2005/12/01(木) 22:39 ID:SrN9ZjQo
「ともちゃん!」
「ともっ!!」
口々にその病人の名前を言いつつ、病室のドアを開けて入ってきた。
すでに大阪と神楽がベッドの側に立っている。
涙もろい神楽はもちろん、大阪のとぼけ顔も涙や涎でグシャグシャになっている。
「大阪さんっ!智ちゃんは…… 智ちゃんはどうなんですか!?」
ちよが大阪に迫って、半分泣きながら尋ねた。
「ちよちゃん。残念やけどな、ともちゃんは……」
その言葉で、先ほどまで半泣きだった顔が本泣きになってしまった。
会話を始められない空気が、病室の中を満たしていく。
「ったく、うるせぇよお前ら」
沈黙を破ったのは、ベッドの中にいる病室の主だった。
ちょっと不機嫌なようで、どうやら寝ていたのを起こしてしまったらしい。
真っ先に布団の首の部分に駆け寄ったのはちよだった。
「ともちゃん…… あの、その……」
「ちよすけ、心配しなくていいぞ。私は大丈夫だから」
満面の笑みで、智がちよの頭をなでる。
ちよは気づいていた。布団の上に沢山のシミができているのに。
それと、智の声が少し震えていた……

259 :キトクの智 :2005/12/01(木) 22:39 ID:SrN9ZjQo
コトンと自販機の取り出し口に、カップに入ったミルクティーが出てきた。
「……人間、突然だよな」
「うん」
「ともぢゃん……」
暦と榊とちよの三人は、とりあえず気分を落ち着かせようとしていた。
自販機でドリンクを買って、まずは状況を自分に飲み込ませようとしている。
「なんでこんなことに、なっちゃったんでしょう……」
ちよのミルクティーに少しずつ塩味が足されていく。
「ともちゃん、何にも悪い゙っこどなんてしてないのに」
そういえばカップが落ちてこなくて、智が泣き叫んだ時もミルクティーだった。
智は調子に乗っていろんなことをした。
おさげを引っ張るのは日常茶飯事。
人の怖いもの、嫌がるものをわざとやったりする。
妙な因縁をつけたりもした。
それなのに憎めない存在だった。
いや、憎めないどころか楽しい思い出になった。
「何で……」
そういえば大阪が走馬灯を見たいと言っていたのも思い出した。
きっとこういうのが走馬灯なのだろう。
人間の意識というものはすごい。
本当はとてつもなく長い時間なのに、脳内ではそれが数分、数秒で整理されてしまう。
まるで人間の人生の儚さと同じように……
「そろそろ病室戻ろうか」
「そうだな。あいつもいつまで持つかわからないし……」
「はい……」

病室に戻ろうとすると、智の主治医と見られる医者が部屋から出てきたところだった。
そんなにおじさんというのではなく、かなり若い医者のようだ。
それを見て、思わずちよはその医者に駆け寄ってしまった。
「と、ともちゃんは治らないんですか!?お願いします、ともちゃんを治してあげてください!!」
「ちょっと、お嬢ちゃん」
流石に医者も困っている。
それでもかまわず、ちよは彼の足にしがみつく
「すみません。ほら、ちよちゃん」
とっさに榊がちよを制す。
「だって、ともちゃんが…… ともちゃんが……」

260 :眠名有 :2005/12/01(木) 22:40 ID:SrN9ZjQo
とりあえず前半投下。
後半も今週の土曜日か日曜日には投下する予定です。

261 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/02(金) 22:19 ID:???
>>260
お疲れ様です。

去年の丁度今頃の名無しさん時代に
俺は名有り氏の作品を拝見させてもらっていました。
>>大阪が亡くなる作品(のリメイク)。

262 :眠名有 :2005/12/04(日) 20:17 ID:Ai/cX5oI
さーて、予告どおり続きの投下じゃー

263 :キトクの智 :2005/12/04(日) 20:17 ID:Ai/cX5oI
「大丈夫だよお譲ちゃん。人間、肺炎くらいじゃ死なないよ」
「「「へ!?」」」
流石にこれの答えには全員が素っ頓狂な声を上げた。
肺炎!?
智は肺がんで危篤のはずである。
「あの、だってともちゃん『キトク』って……」
それを聞いて、その医者が突然笑い出した。
「はっ、あははははは」
「え、ええ?」
突然のことに動揺する三人。
「貴方たちもですか。まぁうちの病院では良くあることらしいですけど……
 私がこういうのに遭遇したのは初めてなもんで」
「私も、ちょっと気になっていたんだ」
どうやら榊も少し気になっていた節があるようだ。
「ここの病院の名前って……」
榊に言われ、ちよと暦が医者の胸の刺繍に視線をやる。
「「ああ――――――――っ!!!!」」
そこには緑色の糸でこう縫われていた。



『木徳病院』

264 :キトクの智 :2005/12/04(日) 20:18 ID:Ai/cX5oI
「私が?肺がんで危篤!?んなわけねーに決まってるじゃん!あはははははは」
「あははははは〜〜〜 そうやったんかぁ。どおりで妙にあせっとるおもったけど」
「やべぇ、腹痛ぇよ〜〜」
病室にも聞こえたらしく、三人が入った瞬間もう大爆笑である。
まさかボンクラーズにこうも笑われることがあるとは思っても見なかった。
「ほ、本当に心配したんですからっ!」
「っくそぉ。今ほど恥ずかしい思いはしたことねぇぞ」
「けど、こうなって本当に良かった。」
まったくもってその通りだ。
ギャグとして済んでめでたしめでたしである。
「で、大阪さんと神楽さんはさっきなんで泣いてたんですか?」
確かに。
事情を知っている二人があんなグシャグシャの顔をしていなければ、すぐに誤解が解けたはずだ。
「それはだな」
「これやー」
大阪が背後から取り出したのは…… シャキッとした歯ごたえが美味しそうなタマネギサラダだ。
「大阪がさぁ、家で作ってくればいいのにこっちで作るんだって言うからさぁ」
「せや、これは切り立てのシャキッと感が大切なんや」
どうやらそれが大阪のこだわりらしい。
「まぁ火使わないからいいけど、私の頭の側で切るもんだからこっちも目が痛いのなんの」
なるほど、三人が泣いていたのはこれが原因というわけである。
結局、こういうオチになってしまった。
「ったく、どうしてこういうのでも心配してバカ見るかなぁ……」
本当に智がいなくなるという事を真剣に受け止めようとしていた暦は嬉しいやらアホくさいやらだ。
「普段野菜食べへんからなー、ともちゃんの血がドロドロ血や思うて作ったんや。タマネギは血をサラサラにするねんで」
確かに。智は鍋などでも肉ばかりしか食べなさそうだ。
「あの、ところで電話の時はなんていってたんですか?」
そう。もう一つの誤解の原因である。
「あー、あれなぁ。えーっと……」
はて、何と言ったかと大阪は頭の整理をしていく。
答えが出るのには数秒かかった。
「『ともちゃんが肺が肺炎になってもーて今木徳病院やねん』て言ったんや」
「『前に前進する』とか『馬から落馬する』とかならばまだわかるが……」
この大ボケには、流石のよみも突っ込む気がうせた。
大体「が」を連続して使用すること自体、日本語としておかしい。
普段なら訂正が聞くものの、今回は本当に洒落になって…… 否、洒落になってしまったか。

265 :キトクの智 :2005/12/04(日) 20:19 ID:Ai/cX5oI
「これで良かったじゃないですか」
「まぁな」
これでよかったのだ。
智は死なないし、悲しみなんてものも無い。
どんなにバカにされたって、悪戯されたって、こうして全て笑って終わればそれでいい。
帰る途中で、暦は泣いたり心配したりして疲れた分という理由をこじつけてタイヤキを買った。
また智に何か言われるかもしれないが、それでもいい。
どうせ笑って終わらせれるから。

266 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/04(日) 22:36 ID:???
>>263-265
やられた・・・
見事に騙されました。
お疲れ様です。

267 :名無しさんちゃうねん :2005/12/05(月) 01:52 ID:???
>>263-265
うわ、すごいですね。
こういうとき電話の「…」の部分はオチが隠されてるものだけど今回は騙されましたよ。

268 :あさひわ ◆UCHU/Xh/xE :2005/12/15(木) 18:46 ID:???
>>257-265
逆手に取ったネタや良し

269 :眠名有 :2005/12/23(金) 20:05 ID:3MYyrnCE
皆さん、感想ありがとうございます。
死ぬようなSSばっかり書いていたので、引っ掛けてみようとやってみました。
初めての挑戦でしたが、好評でよかったです。

さて、次を投下します。。

270 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/23(金) 20:06 ID:3MYyrnCE
 神楽…… あの、その……

 ?

 き、君の事が好きなんだ。

 何言ってるんだ?そんなの当たり前じゃないか。

 いや、友達としてじゃなくて、恋愛対象として……

 えぇっ!?

 変だよな。女の子同士でこんなこと。

 あの、その……

 ごめん。私、どうかしてた。今のは忘れ―――

 いいよ。

 え?

 別に榊のこと嫌いじゃねーし、愛せるかどうかは付き合ってみなきゃわかんねぇよ。

 本当に、本当にいいのか?

 ったく、今言ったじゃねーかよ。

 ――っ。神楽ぁ……!

 おいおい泣くなよ。お前らしくもねえぞ。

271 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/23(金) 20:07 ID:3MYyrnCE
早いなぁ。
あれからもう一年半も経つのか。
昼休み。屋上で寝そべってた私は、青空を見上げながらあの時のことを思い出していた。
我ながら、何でその場でOKできたのかわからない。
けど、榊と一緒になって本当のあいつを知ることができた。
それまでは無口で無愛想。それでいて成績もスポーツも抜群で、単にライバルとしてかっこいいと思ってた。
だけど、本当はやさしくてかわいいものが好き。
今思うと、あいつを無視してマウンテンバイクの話をしていたのが恥ずかしいな。
あいつにそんな趣味は無い。
でも、私の話を聞いてくれた。
何であんなに真剣に聞いてくれたのか、聞いたことがあった。
答えは「神楽とお喋りするなら、どんな話でもいい」だった。
いつもあいつは私を優先して、気を配ってくれている。
友人やライバルとしてではなく、恋人としてあいつを見るようになって、いつの間にか、あいつといる時が一番の幸せになっていた。
「はぁ……」
でも、それも今日でお別れだ。
今日は卒業式―――皆が離れ離れになってしまう日だった。
ちよちゃんはアメリカに。
ともと大阪は同じ大学、
私とよみは同じ大学にいくメンバーはいないけど、大学はともや大阪のと近い。
けど、榊は……

272 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/23(金) 20:08 ID:3MYyrnCE
 神楽。私、本命が受かったんだ。

 マジかよ!やったな、榊!!

 うん……

 どうしたんだよ?うかない顔して。

 それが、北海道大学なんだ。まさか、受かるとは思ってなくて、半分記念受験で……

 …… 遠いな。

 神楽とも、離れ離れに……

 そうだな。

 蹴ろうかな。この大学。

 な、何言ってるんだよ!せっかく受かったんだろ!?

 私は、この高校に来るまで友達と呼べるような友達を持ったことがなかった。
 初めてがちよちゃんや智だったんだ。
 そして、友達を超えて親友になったのも、それをも超えて恋人になったのも、君が始めてだ。

 …………

 私が何を心の支えにしてきたと思う?
 胸を張って「神楽の恋人です」て言えるようになりたい。
 その気持ちと、神楽と一緒にいる時間。
 それが心の支えになっていたんだ。

 それと大学と何の関係があるんだよ?別に別れるわけでもあるまいし。

 神楽……

 なんだよ。

 君は強いな。

 ?

 私は弱い。君がいないとダメになってしまいそうだ。

 え?

273 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/23(金) 20:08 ID:3MYyrnCE

 私、無口だろ?
 だから、誰にも話せないで、一人で悩んで……
 それなのに、何でかわからないけど、君には全て言えた。
 いや、こっちから言いたくなった。
 いつも私の悩みや相談を聞いてくれて、慰めて、癒してくれた。

 そ、そうなのか?

 もう、神楽無しじゃ生きていけない気がするんだ。
 北海道で暮らし始めたら、私は誰と顔を向けて話せばいいんだ?
 手紙やメールでも、君には会えない。
 遠く離れた人になったという虚しさが増すだけだ。

 …………

 バカなのかもしれない。
 神楽と別れるというわけでもないのに、自分の夢を捨てるのは。
 理性ではわかっている。けど、感情がそれを許さない。
 君と会えなくなるのが怖い。

 お前、そこまで……

 神楽。いつも君は、私をリードしてくれた。
 学校でも、お喋りの時も、デートの時も。
 そして、私が悩んだときも……

 榊……
 
 この前の大学だって、あそこほどではないけど良い所だし、神楽の大学とも近い。
 頼む、今回も私を導いてくれ。
 君の選択で間違ったことは無い。

 …………私は、
 私は榊が正しいと信じる方をやるしかないと思う。
 私だって、榊と離れ離れになるのは辛い。
 だけど、そんなことで人生振っちゃいけないと思うんだ。
 でも、もし私がいないことが、榊を潰してしまう。
 それだけは嫌だ。
 だから、榊の決断に任せる。

 …………

 こ、これじゃぁ導いたことになってないよな。けど……

 ううん。今回も導いてくれたよ。
 まだ、入学金の振込みまで時間がある。だから、その間一人で考えてみる。
 ありがとう、神楽。

274 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/23(金) 20:10 ID:3MYyrnCE
私は、それから榊とあまり喋らないようにした。
榊の決断に干渉しないように。
確か、あいつの入金て明日だっけ?
結局答えはどうなったんだろう。
カチャ
屋上の扉が開いた。
「あんた、こんなとこで何やってんの?」
かおりんだ。
「別に。ちょっと考え事。これからのこととか」
「へぇー」
何だろ。かおりん、どこか幸せそうだ。
妙にウキウキしてる。
「どうした?何か嬉しいことでもあったのか?」
「へっへー。実は、北海道大学の獣医学科。合格しちゃった!」
「!!それって」
「まさか、繰り上げで合格できるなんて夢にも思わなかった。ああ、神様。私を見捨てなかったんですね……」
それからも「ああ、榊さんと同居申し込もうかな」とか「もしも榊さんと職場まで同じになったら」とか、自分の世界に入り込んでる。
でも、すごいよなこいつ。ここまで榊に惚れてるんだから。
私よりも、かおりんの方が恋人になる資格があるのかもしれない。
「でさ。丁度あんたに聞きたいことがあったのよ」
「何?」
「どうすれば榊さんと仲良くなれるの!?」
そんなこと考えてもなかった。
いつの間にか仲良くなって、いつの間にか付き合って。
私は私らしく、榊は榊らしく行動していただけ。
それだけだったから。
「あんた、あの無口な榊さんとすっごく上手く喋れるじゃない。
 どうすればあんなに話題が繋がるのよ?
 私は、榊さんと同じ大学に行くんだ。だから、上手に話せるコツとかあれば教えてほしいなぁ……」
かおりんは、自分の夢が榊と一緒になることになっている。
人生をかけていると言ってもいいな。
「あいつは、喋るのが苦手だ。だから、こっちから話しかけていけばいい」
「うんうん」
「それと、ああ見えてかわいいものが好きだ。ねここねことかな」
「へぇー」
真剣な目でこっちを見ている。
もしメモ用紙とシャーペンがあれば、メモを取りそうなくらい真剣だ。
すごい。榊に対してここまで……
こいつと一緒の方が、榊は幸せかもしれない。
そんなことを考えてしまった。
ただでさえ不器用なのに、こんな不安定な精神。
思いついてしまったことを止めることはできなかった……
「あ、ちょっと用事を思い出した。悪い!じゃぁな、かおりん!!」
適当に理由をつけて、私はその場を去った。
榊は、まだ校内にいるはずだ。

275 :眠名有 :2005/12/23(金) 20:11 ID:3MYyrnCE
前半終了です。
後半は(もしかしたら3回になるかもしれないから、中盤?)は今週か来週の土日に。
それではまたー

276 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/23(金) 21:01 ID:???
>>270-274
乙!
何方の作品かと思えば、名有り氏の作品でしたか。
ああ・・・なんて言うか・・・萌えるなぁ、もう。

後半にご期待させていただきます。

277 :名無しさんちゃうねん :2005/12/24(土) 15:57 ID:???
>>275
GJ!
ああ…神楽、はやまらないでくれよ
榊さんにとって自分がどういう存在かよ〜く思い出せよ

ドキドキして待ってます

278 :眠名有 :2005/12/24(土) 23:43 ID:xd2ebIE2
短いけど区切りがいいので投下しまつ

279 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/24(土) 23:44 ID:xd2ebIE2
「神楽、どうしたんだ?こんな所に連れてきて」
私は、教室の前にいた榊を体育館に連れ込んだ。
誰もいない体育館の壁は、校舎からの笑い声などを遮ってしまい、不気味なほど静かだった。
「今日、決心したんだ」
「何をだ?」
「その、そのだ……」
言いたくねぇ。言いたくねぇよ。
けど、言わなくちゃいけねぇんだ!
もう決心したんじゃないか。何を迷ってるんだよ私!!
「うん」
私の葛藤が通じてるのかもしれない。
榊は、無言で待ってくれた。
「――っ、別れよう」
「え?」
言っちまった。
とうとう、言ってしまった。
「神楽、もう一度言ってくれ」
榊だって、今のを幻聴だと思いたいんだ。
聞き逃してなんかいないのはわかる。
目尻に涙が浮かんでるから。
「別れ……よう」
もう一度、今度は少し涙声で言った。
それを聞いた榊の目から、涙が溢れ出した。
でも、目を拭わなかった。
「嘘…… だろ?」
「私の存在が榊を苦しめるなら、私は」
「苦しんでなんかない」
「苦しんでるじゃねぇか!」
思わず怒鳴ってしまった。
榊が一歩後ずさる。
「そうやってお前は、いっつも一人で考え込んで。
 私だけにしか、言いたいことを言えないのか!?
 私無しじゃ生きていけないのか!?
 もし、もしもだ。私が死んだりしたら、お前は私を追って死ぬのかよ!!」
「私は……」
チクショウ。何で視界が霞むんだよ。
これでいいのに。これでいいはずなのに……

280 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/24(土) 23:45 ID:xd2ebIE2
「お前言ったよな。私がいつもリードしたって!
 だから、今回も私が先だ。
 榊が私のために人生を振るのは嫌だ!!」
「…………」
私だって、これを決心するまでにすごく悩んだ。
こんなこと言って北海道に行っても、榊が潰れるような感じがした。
けど、かおりんがいる。
あいつと一緒なら、榊も安心だ。
「分かってる。分かってるんだ……」
こいつだって分かってるんだ。
分かってるけど、できないんだろ?
だから、もう私という幻影に振り回されちゃいけない。
叶わない想いは、キッパリと断たないといけないんだ。
「それと…… 好きな人ができたんだ。男で。告白したら、OKされた」
「!!」
嘘だ。けど、こうでもしねぇとこいつは別れることができない。
そんなやつだって事は、この付き合ってきた時間でよく分かっていた。
「どうして……!」
榊の顔が見る見る青ざめていった。絶望しているのかもしれない。
榊の気持ちは痛いほど良く分かるさ。けど、もう少し、もう少しなんだ。
私は無理に平静を装って話を続けた。
「別にお前が嫌いになったわけじゃない。けどさ、私たち女同士だろ?
 結婚もできないし、子供も作れない。虚しくなるだけのような気がしてさ。
 だから、卒業を機に」
「もういい!!」
私の言葉を最後まで聞かないで、榊は体育館から飛び出していった。
こんなのは初めてだ。
涙を拭いもせずにドアを開けっ放しにして、あいつは出て行った。
これで会うことも無いから、あいつとの最後の別れか……
「―――っ、ひっく」
溜まっていた涙が溢れ出した。
榊と別れることじゃない。嘘をついてしまったことに。
どうしてこう私は無神経なんだろう?
最後の嘘なんて必要なかったんじゃないのか。
榊を、絶望させるつもりなんてなかった。
だけど、これでいいんだ。これが私たちにとって最善の道なんだから……

281 :眠名有 :2005/12/24(土) 23:46 ID:xd2ebIE2
>>276-277
どうも。今回は短いですが、たぶん予想できてたんだろうなぁ。
この後どうしようかすごく迷っているので、少し遅れるかもです。

282 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/24(土) 23:49 ID:???
>>279-280
お疲れ。
リアルで見ました。
自分は百合とかあまり分からない人ですが、
恋愛物として普通に読むことができました。
続きにご期待しています。

283 :名無しさんちゃうねん :2005/12/24(土) 23:51 ID:???

>>281
この手のものはageるなと前から何度も言われてるはずですが?
学習能力ないんですか?あなたは。

284 :名無しさんちゃうねん :2005/12/24(土) 23:53 ID:???
仕方ない下げに協力しよう
>>281さんいい加減に理解してね
そんなだから叩かれるんじゃないの?

285 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/25(日) 00:00 ID:???
沈下にご協力させていただきます。

百合っていうジャンルも、やはり読み手を選ぶのですかね。

286 :名無しさんちゃうねん :2005/12/25(日) 00:06 ID:???
>>279-281
お疲れ様です。

さて、自分も沈下に協力しますよ。

>>284
その言い方は流石にあてつけがましいのでは?

287 :名無しさんちゃうねん :2005/12/25(日) 00:07 ID:???
上げていいSSのジャンルってなんなんだろうね
沈下協力さげ

288 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/25(日) 00:15 ID:???
>>287
ほのぼのマターリ系〜ソフトなえっち未満な作品とかでしょうか?
誰でも気兼ねなく読めるといった感じの。

まぁ、敢えてage、sageの選択方法を決め付けてしまう必要は無いと思うのですが、
そこは作者さんの自己判断と言った具合でしょうかね?

289 :名無しさんちゃうねん :2005/12/25(日) 01:00 ID:???
百合は百合萌えスレでだけやれよなとは思うな
百合嫌いとしては。

290 :名無しさんちゃうねん :2005/12/25(日) 01:50 ID:???
>>281
乙です。
自分としては復縁して欲しいけどなぁ
個人的にTHE ENDよりはHAPPY ENDが読んだ後ホッとするし
何より好き同士なら困難があっても一緒にいる方が幸せだと思うしね。
とにかく期待と不安を渦ませながら続きを待ってます。

291 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:26 ID:???
せっかくクリスマスなので一本書いてみました。
【諸人こぞりて】

292 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:27 ID:???
刺すような寒さの中を夕日が静かに地平線の下に沈んでゆく。
クリスマスソングをハミングしながら、目標は西に向かって歩いていく。
いつもは勘の強いヤツだけど、浮かれてて私達には気付かれていない。
ちきしょう。絶対現場を抑えてやるからな。

293 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:28 ID:???
「かぐらー。明日のイブ、ちよちゃん家でお泊り会するんだ。あんたも来ない?」
私は昨日そう言って誘ったら。
「あ、ごめん。用事があるんだ」
断りやがった。
彼氏か?って聞いたらそんなんじゃねえよって言ってたけど、この智ちゃんの目は節穴じゃない。
裏切り者は許せねー。
というわけで今日はお泊り会は中止。
神楽を尾行する会に変更だ。
「ねえ、ともちゃん。人のプライベートを覗くのはよくないですよー」
「わかってないなあ、ちよちゃん。友達なのに隠し事する方がまずいに決まってるじゃん」
「そうかなー?」
「大丈夫、神楽の選んだ彼氏がどんな顔かちょっと見るだけだから」
よみの声に榊ちゃんも無言で頷く。
「うー……でもやっぱりだめですよー」
「そういうちよちゃんは何でここにおるん?」
「それはその……えへへ」
ちよちゃんが照れくさそうに笑う。
なんだ、優等生ぶってるくせしてやっぱり神楽の彼氏見たいんじゃん。

294 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:28 ID:???
美味しい豚まん屋の前を30mほど行った店の前で神楽は立ち止まった。
私達は急いで電柱の陰に隠れる。
そっと様子をうかがうと、神楽はガラス越しに店の中を覗いていた。
「何の店だ?えーと、ローマ字でなんか書いてあるな。……ほげつどってなんだ?」
「宝月堂。ケーキ屋だな。あ、誰か来るぞ」
よみの声に少し頭を引っ込めて、注意深くその誰かを確認する。
そいつは白髪で眼鏡をかけていた。同じくケーキ屋の前で立ち止まる。
すると神楽はそのおっさんと何か話を始めた。
「神楽、オヤジ趣味だったのか?」
「ちょっと待ってください。あれは教頭先生じゃないですか?」
「何?」
なるほどな、昔から疑問だったんだ。
あいつが私と同じ高校に入れるなんて絶対おかしい。
きっとあの胸で教頭を誑かしていたに違いない。
よし、みんな踏み込むぞ!
と思った瞬間口をふさがれた。
「うーうー」(なにするんだよ、よみー)
「慌てるな。まだ決まった訳じゃない」
そんな事言って決定的瞬間を逃したらどうするんだよー。
「あ、神楽ちゃん教頭先生と別れてまた歩き始めたで」
……
「ほらな」
うるせー。

295 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:29 ID:???
しばらく尾行を続けると神楽はコンビニに入っていった。
「ここで待ち合わせかな」
「ありえるな。暖かいし雑誌とか立ち読みしてれば時間を潰せるし」
「それに対して私達は寒空の下で待たなきゃならないわけか。ちくしょー!責任者でてこーい!」
「言い出しっぺはお前だろ」
なにおう!
よみにあまりに腹立つことを言うので何か言い返そうといろいろ考えてみたけれど、うまい文句が思い
つかなかった。
これで勝ったと思うなよ、よみ。
「でも、そんなに待たなくて済みそうですよ。ほら、もう出てきました」
もうかよ。ちょっと拍子抜けだな。
見ると玄関の辺りで誰かと話してる。
背は私と同じくらいの短髪の男の子……
「ちゃうねん。あれは千尋ちゃんや」
なんだとー!!
「相手とは違うみたいだな」
「いや、わかんないぞ。神楽は男っぽいし女の子を好きになっても不思議はない」
「んなわけないだろ。第一千尋にはちゃんと彼氏がいるぞ」
「え?ウソ」
「ウソなもんか。ほら、噂をすれば陰だ」
よみの指先をたどると良く知った顔が向こうから歩いてきた。
「うちのクラスの長谷川?あいつら付き合ってたの?」
「知らなかったのか」
……どいつもこいつも私に黙ってうかれやがって。
ひやかしてやるー!
と思った瞬間羽交い絞めにされた。
なにするんだよ、よみー。
「あとにしろ。今は神楽の相手を探る方が先だ」
あ、そうか。
仕方ない、千尋の件は冬休み明けの楽しみに取っておこう。

296 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:30 ID:???
さらにしばらく尾行を続けると、神楽はなんか白い家の前で立ち止まった。
神楽がドアチャイムを鳴らすとすぐドアが開いて、誰か出てきた。
神楽はぺこりと頭を下げると家の中に入っていく。
ドアが閉まった。
「なあ、今神楽を招きいれた人の顔、見えたか?」
「いいや。逆光だったからな。大阪はどうだ?視力両方2.0なんだろ?」
「あかんかった。でも大人の男の人みたいやったで」
「これは確定だな。顔を見れなかったのが残念だけど、しかたない」
ちっちっ。よみくん。ここであきらめるなんて2年3組の峰不二子こと滝野智の名が廃るってものよ。
横目でよみを確認する。
……よし、油断してるな。
いっせーのーで!
私はチャイムに向かってダッシュした。

297 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2005/12/25(日) 20:31 ID:???
「おい、こら待て!」
よみも追ってきたけどもう遅い。
間一髪でチャイムをプッシュ。
ぴんぽーん♪
「やっちゃった」
「やっちゃったじゃねー!」
ちょっとあって、ドアが開いた。
「はい、どなたですか?」
落ち着いた男の声。
そこにいたのは30歳くらいのちょっと渋くてかっこいい男だった。
「おまえが神楽の彼氏かー!」
「こら、智。ごめんなさい、なんでもないんです」
すると男はにっこり微笑んだ。
「ああ、神楽さんのお友達ですか。私達の教会へようこそ。歓迎しますよ」
教会?
あれ?
まごまごしていると神楽がドアからひょっこり顔を出した。
「あれ、何でおまえらここに?ちよちゃん家でお泊り会じゃなかったのか?」
あー、その、えーと。
「実はー、たまには教会でクリスマスを迎えるのもいいかな、って思いまして」
お、ちよちゃん、ナイスフォロー。
「へー、そうなんだ」
「しかし、意外だな。神楽が切支丹なんて」
「切支丹ってなんだよ。クリスチャンだよ」
「まあまあ、外で話しているのもなんですから中にお入りください。いくつか賛美歌を歌いますので
これをどうぞ」
そう言って牧師さんが渡してくれたのは、楽譜のコピー。
題名は聞いたことのないものだったけど、ちよちゃんがこっそり小声で歌ってくれたのを聞いたら
よく知ってる曲だった。
だからそこでついほっとしてしまったんだ。
その後起こる惨劇を予測するべきだったのに。
(Fin)

298 :風児 ◆iQwkicAw :2005/12/25(日) 22:33 ID:???
神楽が・・・新しいですね。
よみにかかれば賛美歌も惨事歌に・・・w

乙です。

299 :名無しさんちゃうねん :2005/12/26(月) 21:14 ID:???
久しぶりの蛍石さんだー。
乙です。

300 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2005/12/26(月) 22:13 ID:???
>>292-297
お疲れ様です。
神楽についての題材の着眼点にとても良い意味で凄く驚かされました。

それにしても・・・嗚呼。 その後の惨事が目に浮かぶ・・・

301 :眠名有 :2005/12/27(火) 18:26 ID:???
>>283-288
すいません。
sage進行スレじゃなかったのでつい……

>>291-297
蛍石さん乙ー
最後のよみさんの歌という落ちもよかったです。

302 :眠名有 :2005/12/31(土) 20:50 ID:???
大晦日一斉投下、3回目ー

303 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/31(土) 20:50 ID:???
私は、また屋上にいた。
これでいいはずだ。
榊は私を忘れて、新しい大学生活を始める。
たぶん私のことを恨んでる。
だからこそ私を忘れて、かおりんと榊は一緒に幸せに暮らす。
もしかしたら、二人は恋人になるかもしれない。
いや、きっとそうなるな。
ぶっきらぼうで、マイペースな私と違って、かおりんは榊が全てだ。
榊が好きになったっておかしくない。
私があいつの中にいたら、またあいつは悩んで、苦しむ。
だから、これが一番の方法のはずだ。
なのに……
「何で、何でだよ」
何で涙が止まらねーんだよ!?
「榊ぃ」
やっぱり、榊と別れるのはつらい。
でも、私が決めたことだ。
もう済んだことだ。
これから悩んだってしょうがないじゃないか!
私は自分にそう言い聞かせて涙を拭いった。
けど、すぐに視界が曇る。
くそっ、止まれよ!ちくしょう……

ドタドタドタ
やけに派手に階段を上る音がした。
ともか?
丁度良いいや。
あいつとだべりながら帰ったら気もまぎれるだろうな。
そんなことを思いながら、私は明るく振舞おうと涙をぬぐって、無理に笑みを作った。
そんで、出入り口から出てきた人物に挨拶しようとした時だった。
「ちょっと、あんた!」
その影は私の胸倉を掴んで、壁に叩きつけた。
「な、なにするんだよ!」
「あんたこそ、何で榊さんを泣かせたのよ!!」
影はかおりんだった。
半分怒って、半分泣いている。
「全部聞いてたわよ!あの話!」
どうやら全部聞かれてたみたいだ。
「で、それが何なんだよ?」
「何なんだよじゃないわよ!あんた、あんなこといわれて榊さんがどれほど傷ついたか分かってるの!?」
「榊と一緒に暮らすんだろ?私はもうあいつの力にはなれない。だから、お前が」

304 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/31(土) 20:52 ID:???
パァン!
私の頬に平手打ちが飛んだ。
手加減なし。かなり痛い。頬がヒリヒリする。
「あんたはまったく分かってないわ!私じゃ、あんたほど榊さんの力にはなれない!
 私は、榊さんと仲良くなれる方法聞いた。けど、あんたに別れろなんて言ってない!!」
かおりんの押し付ける力が、前よりも強くなった。
後ろのコンクリートに背中がゴリゴリ当たる。
「榊さんは、私じゃだめなの!あんたじゃなきゃ!!
 何年間も付き合ってきて、そんなことも分からなかったの!?
 それとも、あんたは榊さんに別れ話を言われて耐えれる?耐えれないでしょ!」
耐えられるわけねーだろ。
くそっ、また視界が霞んできた。
「私だって辛いさ!今も泣いてたよ!!
 けど、私のせいで榊の夢を潰すんなら、私はあいつの前から姿を消す。
 私なんかのために、人生を振ってほしくねーんだよ!」
「まだ分からないの!?
 榊さんにとって、あんたは生き甲斐になってるのよ!
 あんたと一緒に喋って、笑って、愛し合って…… それが全てだったの!
 北海道に行ってもあんたを忘れずに、いつか戻ってきてくれる。
 そのぐらい自分の恋人に自信持ったらどうなのよ!?」
また、力強く壁に押し付けられた。
頭を思いっきり打ったけど、不思議と痛みは感じない。
今、そんなことよりも考えることすらできなかったから。
「もう、いいんだよ」
誰に言ったんだろう。
かおりん?榊?
それとも私自身に?
私はかおりんの腕を引き離した。
ぜんぜん力をこめずに、ただ、普通に物をどかすように。
「ちょっとあんた!」
無論、かおりんはそれを許さない。
もっと強く私を押し付ける。
かおりん、お前の言いたいことは良く分かるよ。
けど、私はもうダメなんだ……
榊に言われて気づいちまったんだよ。
あいつを忘れないで離れ離れになってしまったら、私は―――
榊は私を強いと言った。
けど、あいつに言われて気づいちまったんだ。
だから―――
「一人にしてくれ」
もう傷を抉らないでくれよ。
私は、もう戻れないんだから。

305 :神楽と榊とかおりんと :2005/12/31(土) 20:52 ID:???
「もういいわ!」
ガッ!!
今度は平手打ちじゃなかった。
思いっきりグーで、まだ痛みのひいていない頬を。
受け身を取る気力もなかった。
頬と同じように後頭部ももう一回強打した。
口の端から血が流れた。
「あんたがどういう人間かもう分かった!榊さんは、榊さんは私がっ―――」
途中で言葉を止めて、踵を返してしまった。
結局、私は望みどおり一人になった。一人ぼっちに……
「良いんだよな。これで……」
起き上がる気力も、痛みを感じる気力も、血や涙を拭う気力すらも、体から消えうせていた。
空を見上げた。
卒業式の天気の代名詞とでも言いたくなるような春の青空が、どこまでも広がっていた……

306 :眠名有 :2005/12/31(土) 20:54 ID:???
うーん、最後のやつは神楽が何も考えられていないっていうのを表現してみたかったんだが……
難しいなぁ……

307 :名無しさんちゃうねん :2006/01/04(水) 19:23 ID:???
百合萌えスレでやれって、また叩かれるぞ。

308 :名無しさんちゃうねん :2006/01/04(水) 20:09 ID:???
やってしまった以上、もうどうにもなりますまい。

309 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:13 ID:???
投下します。

「婦警さん」

310 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:13 ID:???
天気がいい。本当に天気がいい。でも、仕事。私は憂悶気にミニパトに乗り込んだ。
あぁ・・・面倒くさい・・・。天職だと思ってたけど、どうだかなぁ・・・。
高校も大学も何となく・・・さすがに警察学校だけは何となくじゃ入れなかったけど。
やるときはやるっていうか、やっとかないとまずかったし・・・。

「大人になった」って言われるようになった。
・・・どうなのかな?良く分からない。大人になるってどういうことかな?
「大人になった」っていうか・・・今までが「子供すぎた」んじゃないかな?
いや、あんまり偉そうな事は言えないけど・・・打算的なところはあんまり変わってないし。
いつまでも「暴走女子高生」・・・「暴走婦警官」・・・なんて言ってられないじゃん。

昨日、よみから電話がかかってきた。結婚式来てくれって。
「ギャグ?」って言いかけちゃったけどなんとか呑み込んだ。
素直に「おめでとう」って言えた。(これも大人になったからかな?)
来週の日曜日は久々に皆に会えるっぽい。なんとまぁちよちゃんは研究で
忙しいのに教授さんに無理言って時間つくってもらって帰国して来る・・・らしい。
・・・でも分かんない。そりゃ勿論嬉しいんだけど。・・・不安なのかな?何がって。
変わってしまった自分を皆に見られることが・・・、怖い。
元気で、明るくて、羞恥心を知らない滝野智はもう・・・いないから。
全然恥じる事じゃ無いのも分かってる。人は変わるものだから・・・。・・・だけど。

311 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:14 ID:???
「大人になる」って「つまらない人間になる」って事なんだよね、多分。
私自身、こんなに変わるなんて思わなかった。あの頃は・・・
「大人になってもこのままだな!」なんて思ってた。頭悪くて。運動できなくて。
人に迷惑かけまくって。そんな自分がどういうわけか・・・嫌いじゃなかった。
楽しかった。周りもそんな私を蔑む事なんてなかった。今思うと・・・私はすごく
友達に恵まれてたんだ。それが実感できる。皆に、「ありがとう」って言いたい。
心の底から、「こんな私と友達でいてくれてありがとう」って言いたい。

そう。こんな事を考えてる私はきっとつまらない人間なんだよ。
現状じゃなくて、過去ばっかり見て、「あの頃は良かった」の繰り返し。
その上、現状を「つまらない」「面倒くさい」なんて思ってる。最悪だよ。
どうしようもないんだ。こんな自分を見られたくない。これが、会いたくない理由。
・・・きっとよみに怒られるだろうなぁ・・・「子供じゃないんだから」って。

―ぁあ、あんなところに。駐禁だよそこ。私はミニパトを止めた。
ドアを開けると爽やかな風が舞い込んだ。真夏ってことを忘れさせてくれる。
まるで小春日和・・・夏でもこんな日はたまにあるもんだよね。

312 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:15 ID:???
印をつける。交通違反の検挙率って低いんだよね。きっとこの車の運転手も
「どうして自分が当たってしまったんだ・・・」なんて言い訳するんだろうな・・・。
ご愁傷様。運が悪かったとしか言い様がありません。徹底してないからね。
「運が悪かった」なんてきっと警官の私が言っちゃいけないんだろうけど。
だって実際徹底してないじゃん。点数稼ぎのためにふらりと気まぐれに街に出て検挙。
そんなもんじゃん。・・・私も・・・そうだもん・・・。職務怠慢?・・・はっ。「仕事」はしてんじゃん。
・・・「怠慢」じゃないもん・・・。
嫌だな。「するべきこと」して、「点数稼ぎ」なんてレッテル貼られる。
・・・ううん。「するべきこと」・・・つーか、「それしかできない」んだよ。

「おわ!?」

・・・な、何だぁ?私は不意に声をあげた。・・・え・・・と、・・・お花・・・かな?
いや、そうじゃなくて。・・・子供は音もなく傍らに忍び寄ってきたりする。
気付かなかった。私は、傍らにかがみこんで地面に花の落書きをしていた子供を見やった。
私の駐禁の印が、「お絵描き」に見えたんだろう、きっと。・・・不思議な子・・・いや、
変な子、かな?変わった格好をしてる。頭には白いバンダナ、腰にポーチを下げている。
傍らのかごには満開のバラが詰め込まれていた。着込んでるのは・・・なんて言ったらいいんだろう。
とりあえず、「マッチ売りの少女」?っぽい。背中に羽がついてるけど。・・・よくわからん。
でも、可愛いかな。4つに結った緑の髪に、緑の目。日本人じゃなさそう。
ちょっと雰囲気がちよちゃんに似てる・・・かな。いや、幼すぎるか・・・。

313 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:15 ID:???

「あ あのね これはお絵かきしてるんじゃなくてね?えーと」

私は言葉を選んだ。駐禁って言っても分からないだろうな・・・。

「悪い車にしるしをつけてるの。だからおえかきしないでね?」

「だから」って全然理由になってないけど、まあいいや・・・。伝わってくれれば。

「あ!ねーちゃんおまわりさんだ!!」
「あ うん そう」

緑目の女の子は頓狂な顔を私に向けた。・・・そんなリアクションされても・・・。
私はただ黙っていた。邪険に「あっちへいけ」と言うわけにもいかず、女の子の
次の一手を待った。・・・別に子供は嫌いじゃないしね・・・。

「これわるいくるま!?」
「うん そーなのよー」

そう。本当にそう。公衆の迷惑・・・それ以上に、いつも私をさっきみたいな
嫌ーな気分にさせる駐禁車。本当に嫌。この子よく分かってくれてる。ありがとう。

314 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:17 ID:???
「みろ!みろ!」
―女の子はポーチをごそごそと探り、水鉄砲を取り出した。なんだろう?
・・・・・・。

「な?」

―あ?

「あ?」

・・・・・・・・・。

「これを やる」

―え?

「え?」

唐突に差し出されたバラ。・・・わぁ。綺麗だな。花のことは
良く分からないけど、「綺麗」なら「いい」んだよね。

「わぁ ありがとう」

ありがとう・・・。そう。素直に感嘆できるようになったんだよね、私。

・・・大人になったから。

315 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:17 ID:???
「じゃあよつばはゆく! ねーちゃんもがんばれ!」

よつば・・・?よつばちゃん?うん、ありがとう。

「ありがとうねー」

・・・何でもない、体験。それでも、大切にしたい、体験。
不思議でちょっと変な子。背の羽が遠ざかる。私はその小さな背をしばらく見送った後、
もう一度手の中のバラを見やった。綺麗。本当に、綺麗。

「がんばろう」

自然に口をついて出てきた。なんだか、すがすがしい。仕事への憂鬱も、自分への嫌悪も、
どうでもよくなった。どことも知れない、どこから来たのかも知れない不思議でちょっと変な
女の子から貰った、不思議な気持ち。これからもきっと私は悩むんだろう。だけど、この不思議な
気持ちはきっと忘れない。ただ、ここにいる幸せ。忘れてしまっていたあの気持ち。
思い出させてくれてありがとう。・・・よつばちゃん。

来週の日曜日、楽しみだな。皆に会える。
・・・さっさと仕事済ませちゃおう。私は警棒を握りなおした。
                    
                                    終

316 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/09(月) 23:19 ID:???
以上です・・・
あず&よつばとリンクな妄想でした。

317 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2006/01/09(月) 23:20 ID:???
>>310-315
お疲れです。
あー・・・なんかこう、しみじみと情景や感情が伝わって来るって言うんでしょうか。
時の流れは残酷であるっていうのも感じられましたが、
それ以上に、爽やかな感じも受け止められました。

随分と挨拶が遅れましたが、今年もまたよろしくお願いいたします。

318 :眠名有 :2006/01/09(月) 23:27 ID:???
乙です。
宿題に負われながら読ませていただきました。

最初から最後までは短時間。それでいて感情がガラリと変化するのに、
ぜんぜん違和感が無く、スラスラと読むことができました。

319 :名無しさんちゃうねん :2006/01/12(木) 17:39 ID:???
乙。

あずとよつばとがうまくリンクしてるなぁ・・・。

320 :風児 ◆iQwkicAw :2006/01/12(木) 22:34 ID:???
>>317
げたさん感想ありがつです。
2人称小説は個人的にも好きな型でして。
ただ語り手の心情を淡々と書き綴っていくのが
どうしようもなく楽しい。そんな自分がいる。

あけまして・・・今年もよろしくです。
余談ですが今年の詣で引いたおみくじは凶。
・・・いざ現実でやらかすと全然おいしくねえっつの。
そんな近況。合掌。

>>318
感想ありがとです。眠さん。
上記参照のように2人称小説が好きな私。
全体の「流れ」を大切にして書きました。
違和感なく、見てくれが風の如くスラスラと読める作品。
・・・そう、眠さんの感じて下さったそれこそ私の求める
至高なる作風だったりします。・・・私は風になりたいのです。

>>319
感想ありがとうです。
・・・あの婦警さんの後姿がなんとな―――く成長した
ともちゃんに見えるのは多分私だけ・・・。
たこさんウインナーは成長とともに消えていった・・・。
合掌。

321 :27GETTER ◆pXWVmj9lto :2006/01/12(木) 22:37 ID:???
>>320
俺は自分の文章にもっと狂気さとか迫力とかを出したいですね。
ですが、風ですか・・・なってみたいなぁ・・・

322 :名無しさんちゃうねん :2006/01/23(月) 01:01 ID:???
>>305の続きってどうなったの?
ちょっと気になるのだが。

323 :名無しさんちゃうねん :2006/01/24(火) 20:02 ID:???
ところで>>305の続きはどうなるんだ?
少し気になるのだが。

324 :名無しさんちゃうねん :2006/01/25(水) 00:41 ID:???
続きは百合スレで書け。

325 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/02/05(日) 12:13 ID:???
時期ネタ。
【いじわる】

326 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/02/05(日) 12:14 ID:???
冬って何ですぐに日が落ちてしまうのかな。
まだ5時半なのに、辺りが暗くなり始めている。
さっきまで波間から見えていた川底の石も、見えなくなってしまった。
岸壁のコンクリートに腰をおろし、ふと思いついて奪ってきた教科書を開いてみる。
えーと、てゃれ……あれ……
だめだ。まるで暗号だ。全然読めない。
「かず君、こんなところにいたんだ」
聞きなれた自分の名前を呼ばれて振り向くと、僕の幼馴染が立っていた。
ちょっとだけ息を切らしているところを見ると、僕を追ってきたらしい。
「何の用?」
「何の用ってことは無いでしょ。ちよちゃん、泣いてたよ。悪いこと何もしてないのに、
どうしていじわるされるのかわかりませんって」
わかってるさ。
僕を悪く言いに来たんでしょ?
みるちーは幼馴染の僕より、ちよちゃんとの方が仲良しだもんね。
「謝ったほうがいいと思うよ」
言うと思った。
だけど。
「謝らないよ。ちよちゃんは裏切り者だから」
「裏切り者?」
「そうさ。だって考えてみろよ。いくら勉強ができるからって、一人で高校行かなくたっ
ていいじゃないか。5年のキャンプも、6年の修学旅行も一緒に行って、それから一緒に
中学に上がって、同じ制服着て、部活にも入って、それが普通だろ?なのにちよちゃんは
僕達を置いて、高校生になっちゃおうとしてる。そんなの卑怯じゃないか。これが裏切り
じゃなくて何なんだよ!」
「それで、ちよちゃんの教科書を奪って逃げ出したんだ。邪魔をするつもりで」
みるちーはため息をついた。

327 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/02/05(日) 12:14 ID:???
……そうだよ。高校にはテストでいい点を取らないと入れないって、親戚のお姉ちゃんか
ら聞いたんだ。いくらちよちゃんでも教科書が無きゃ勉強できないし、勉強が出来なきゃ
いい点なんて取れないはずだ。そしたらちよちゃんが高校に行っちゃうことは無いだろ?
「バカ」
「バカってなんだよ」
「バカだからバカなのよ。もう2月も真ん中じゃない。高校入試は3月の始めだよ?それ
に、ちよちゃんはちっちゃいけどすごく頑張りやさんだから、教科書なんかなくっても高
校受かっちゃうよ。かず君が何をしても、もう無駄。だからさ、謝ったほうがいいと思う。
早く謝っておかないと、ちよちゃんは高校に行っちゃって謝れなくなっちゃうよ。そした
ら一生いじわるっこだって思われちゃうよ?それでもいいの?」
そして、みるちーは僕からちょっと目をそらしたような気がした。
「好きなんでしょ?ちよちゃんのこと」
「な、何でわかるんだよ、そんなこと」
「それだけ顔に書いていればわかるよ。ましてや、かず君のことなら私は何でも知ってる
もん。とにかく、ちよちゃんとかず君が気まずいのは、私は嫌なの。どっちとも仲良くし
たいもん」
「そんなこと言ったって、もう手遅れだよ」
「そんなことない。大丈夫。ちよちゃん優しいから、謝れば許してくれるって」
「でも」
「そんなに心配なら、私も一緒に謝りにいってあげようか?」
ばかやろ。女の子につきそわれて謝りに行くなんて、いくらなんでもそんな格好悪いこと
できるかよ。
僕は勢いをつけて立ち上がった。
「行くよ。行けばいいんだろ?」
「うん。行ってらっしゃい」
みるちーがにっこり笑って手を振る。
あれ?うまくのせられたかな?
まあいいや。

328 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/02/05(日) 12:15 ID:???
ちよちゃんの家は、話には聞いてたけど、すごく大きかった。
門とかあって、庭が広くて、玄関までちょっと遠い。
だから、門についてたチャイムを鳴らしてもなかなか出てこないって思ってたのに。
その間に覚悟を決めるつもりだったのに、すぐ女の人の声で「どなたですか?」って返事
が返ってきたので意表をつかれてしまった。
おかげで少し声が上ずっちゃったじゃないか。
それでも何とか名前を告げると、声がちよちゃんに変わった。
「山内君ですか?どうしてうちへ?」
「あ、いや、今日のこと謝ろうと思って。それに教科書も返さなきゃいけないだろ」
「そうですか。今そちらへ行きますね」
ちょっとあって、家のドアが開いて、ちよちゃんが出てきた。
軽く駆け足で、こちらに来る。
「わざわざありがとうございます」
……まずこっちから謝ろうって決めてたのに、先にお礼を言われてしまった。
仕方ない。鉄格子の間から教科書をねじ込む。
「確かに返したからな。それと、今日はごめん」
そして今までしたことが無いくらい頭を下げる。
「そんな、いいですよ。ちゃんと、こうして返しに来てくれたんですし、気にしません」
「あ、ありがとう」
思わずお礼の言葉が出て、そして気付いた。
「ちよちゃん、エプロン姿だね」
「え?あ、えへへ」
ちよちゃんが照れくさそうに笑う。
「お母さんみたいだね。お手伝い?」
「今日は違いますよ。実は……あ、ちょっと待ってて下さいね」
そういい残してちよちゃんは家に戻っていった。
一体なんなんだ?
でも、その疑問はすぐに解けた。
「はい、これ。一日早いですけど」
ちよちゃんがそう言って差し出したものは。

329 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/02/05(日) 12:15 ID:???
「バレンタインチョコ?」
「手作りですよー。お口に合うといいんですが」
そんな。
「もらえないよ。僕、ちよちゃんにひどい事したのに」
「気にしませんって言ったじゃないですか。クラスのみんなには内緒にしておくから大丈
夫ですよ。それとも私の手作りじゃ嫌なんですか?」
そんなわけ絶対ありえない。あるわけない。
でも、はずかしいからなるべくあっさりと答える。
「そんなことないよ。嬉しいよ」
「じゃあ、もらってください」
僕は、素直にこくりとうなずいた。
「じゃあ、また月曜日に」
くるりときびすを返したちよちゃんに、僕は呼び止めるように言った。
「あのさ、ちよちゃん」
「はい、何でしょう?」
えーと
「……高校行っても頑張れよ」
「はい。ありがとうございます」
ちよちゃんが、僕の方を見て。
にっこり笑った。
(Fin)

330 :眠名有 :2006/02/05(日) 21:12 ID:???
乙ー
ほのぼのしていて、尚且つ歯切れが良くてよかったです。

331 :名無しさんちゃうねん :2006/02/07(火) 19:47 ID:???
あずまんが的ほのぼの感が満ちてますな。
ただ台詞にちょっとひっかかりを感じた。
説明口調っぽかったり、小学生らしいのかマセているのかの
語調が一定でなかったり。
あと蛍石さんなら、話の展開にもう一ひねり加えることもできるのでは。
まぁでもよかった。次作も期待。

332 :蛍石 ◆tzCaF2EULM :2006/02/08(水) 06:47 ID:???
>>331
感想ありがとうございます
口調の調整はHP掲載時に直すとして、一ひねりということはちゃんとみるちー側の
視点でも書いたほうがいいかな?




ところでなぜ「山内君」なのか気付く人は何人いるんだろう……

333 :風児 ◆iQwkicAw :2006/02/14(火) 00:16 ID:???
>蛍石様
はじめまして。
そして乙です。みるちーサイドも是非見たいです。

山内君・・・?はて・・・?

334 :名無しさんちゃうねん :2006/04/02(日) 17:48 ID:???
「オチツケともちゃん」

原作
オチツケオチツケこうたオチツケ
さとうとしなお作 岩崎書店

335 :オチツケともちゃん@ :2006/04/02(日) 17:49 ID:???
オチツケオチツケともちゃんオチツケ

パパ ママになんどいわれたろう
せんせいに なんど いわれたろう

オチツケオチツケ
いつのまにかあたしの口からも
オチツケオチツケともちゃんオチツケ

せんせいの ふやふやした こえ
ともだちの ほうせきばこみたいな ふでばこ
うんどうじょうから きこえる うんどうかいの れんしゅう
あの子の くるくるかわる えがお
きゅうしょくの おばさんの スリッパの音
あたしの あたまのなかは はやまわしの ビデオのよう

とおくから きゅうきゅうしゃの音
なに なに?
おもわず 立ちあがって
まどまで かけだしたら
ともちゃん スワリナサイ
ともちゃん オチツキナサイ
そうそう オチツケ オチツケ

オチツカナイ ぼくは
オチツイテル みんなと
オチツカナイ

ちひろちゃん パレットの上に とってもきれいないろ
がようしには とってもじょうずな おかあさんのかお
あたしの おかあさんは へんなかお

「ちひろちゃん そのいろ ちょうだい」
「やーよ まだ つかうんだから」
「かして」
「や」
「かして」といって あたしが手を のばしたら
水のたっぷりはいった バケツが ばーん!

あたしの はやまわしのビデオは
ときどき ていしボタンもきかなくなる
アタシハ ワルイコナンダ

336 :オチツケともちゃんA :2006/04/02(日) 17:50 ID:???
ひるやすみ こよみちゃんと ぶらんこ
ジュンバンよ ジュンバン
そう ジュンバン ジュンバン

でも あたしの はやまわしのビデオは
やっぱり とまらない
いつのまにか こよみちゃんの せなかをおして

こよみちゃん ぶらんこの下で ないている
こよみちゃん はなから ちが ながれている

せんせい とんできて
どうして ともちゃんは ワルイコなの
どうして ジュンバンが まもれないの
どうして こよみちゃんを なかせるの
どうして? どうして? どうして?
おおきなこえで ワンワンワン
アタシ コヨミチャン ダイスキダ
アタシ ダレヨリ コヨミチャント トモダチニナリタイ
アタシハ ワルイコナンダ

ママ また 学校に よばれた
せんせいたちの こまった かお
くどくど くどくど ちくちく ちくちく
ナントカ ナリマセンカ オカアサン
ママ あたまを さげたまま
いちども かおを あげないまま
ハイ ハイ ハイ ハイ
ちいさなこえで
スミマセン スミマセン スミマセン

アタシハ ワルイコナンダ

かえりみち
ママ
あたしのうでを
きつく にぎって
どんどん どんどん
ひっぱっていく
夕やけのなかに
ママのかおが
きえていく

337 :オチツケともちゃんB :2006/04/02(日) 17:51 ID:???
うちのなか あさ あたしが ひっくりかえした
テーブルが そのままに なっている
さらが われ ごはんが ちらばっている

ママ はえたたきを もつと
あたしのせなかを なんども たたく
ドウシテ ママヲ コマラセルノ
ママのかおも あたしのかおも ぐちゃぐちゃ
あたし ママ だいすきなのに
どうして イイコに なれないんだろう
あたしは どうして ワルイコなんだろう

ぱちんと はえたたきのさきが とんだ

338 :オチツケともちゃんC :2006/04/02(日) 17:52 ID:???
それから なんにちかして
でんしゃに のって
あたしは となりまちの
おいしゃさんに いった
あたしは くるくるまわる
いすに のって
おいしゃさんのまえを
ローラースケート
おいしゃさんは
にこにこして
あたしを みている

「おこまりのことは なんですか」
おいしゃさんが ママに やさしく きいた

ママ ぽつりぽつり ぽつりぽつり しゃべりはじめた
とちゅうで ハンカチ とりだした
「おかあさん ほんとうに よく がんばってきましたね」
と おいしゃさんが しずかに いった
ママ こえをあげて なきはじめた

「ともちゃん おいで ここに すわってくれる」
おいしゃさんが あたしを よんだ
あたしが いすに すわると
「ありがとう すわってくれて ありがとう」
そういった
「ともちゃんは かしこい子だ
おちつかなきゃ いけないって わかってる
ともだちに いじわるしちゃ いけないって わかってる」
ソウ ソウナンダ ワカッテルンダ
アタシハ ワカッテルンダ
「でも ついつい やっちゃう
それはね ともちゃんが いま
ブレーキのききにくい 車に
のっているようなものなんだ」
そういって あたしのあたまを なでた

あたしは ADHDなんだって
さんすうの にがてな 車
おんがくの にがてな 車
みんな いろんな 車に のっている
あたしが のってる ADHD号は
ブレーキが にがてな 車
あたしが じょうずに のれば
この車は けっこう すごいらしい
そう おいしゃさんが おしえてくれた

339 :オチツケともちゃんD :2006/04/02(日) 17:52 ID:???
かえりみち ママ あたしの手を
やさしく にぎって あるいてくれた
「ママ べんきょうしなくっちゃ
ともちゃんのきもちが わかるように
べんきょうしなくっちゃ」
そういって あたしのかおを にこにこみた
わらってる ママのかお ひさしぶりに みた

それから ママも パパも 学校のせんせいも みんな みんな
はげましてくれる ほめてくれる
ありがとうと いってくれる
あたしを みていてくれる
あたしの オチツカナイむしも
イジワルむしも やっぱり ときどき かおを だすけど
でも ママが わらっている日
おおくなってきた

きょうも あたしは つぶやく
オチツケ オチツケ
ともちゃん オチツケ
アタシ スグ イイコニ ナレナイケド
デモ アタシハ ワルイコジャ ナインダ

340 :オチツケともちゃん :2006/04/02(日) 22:24 ID:???
以上、滝野智が自称暴走女子高生であることの所以

たまたま絵本を読んでそのまま思いついて書きました。
原作が良く出来ているのでいじるにいじれず、結果としてほぼ丸写しになりましたが。

341 :名無しさんちゃうねん :2006/04/02(日) 23:00 ID:???
(o^-')bグッジョブ
よみが何だかんだ言って、腐れ縁で長く付き合っているのも、
智の真の理解者は、自分しかいないという思いもあるのか(*´Д`)ハァハァ

342 :名無しさんちゃうねん :2006/06/19(月) 04:09 ID:i-FD33ahhE
人集めのためにあえてageさせてもらいます。

343 :衣刀 ◆I179IHOA0g :2006/06/30(金) 19:25 ID:???
書いてもよろしいですか?

344 :衣刀 ◆I179IHOA0g :2006/06/30(金) 19:29 ID:???
「本音」

(中略)
ちよ「…ミートボール」
智「うわっ子供がいる!」
ちよ「子供じゃありませんー」
智「♪こっども〜こっども〜こっども〜!」
ちよ「じゃあ智ちゃんは何が好き?」
智「お、私か!?私は…」
よみ(どうせバナナとでも言うんだろうなぁ)
智「…ちよちゃんかな」
ちよ「へ?」
よみ「何!?お前…どういう意味で?」
智「そのままだよ。ちよちゃんが好き。」
よみ「バカだなコイツ。ちよちゃん、こんな奴の相手なんてしなくていいよ……ちよちゃん?」
ちよ「あの、智ちゃん。私のこと好きなんですかぁ?」
智「おうよ!私は嘘はつかないよ!」
ちよ「そうですか、えへへ…//
 ………でも、私は食べ物じゃないですよ(にこにこ)」
よみ(うわー、ちよちゃん、かわいー)

345 :衣刀 ◆I179IHOA0g :2006/06/30(金) 19:29 ID:???
一応終わりです、あ、もしかしてageた方が・・?

346 :名無しさんちゃうねん :2006/06/30(金) 20:02 ID:i-E17F7W0s
おお、確かに可愛い(≧∀≦)

347 :眠名有 :2006/06/30(金) 23:12 ID:???
おお、短くまとまってて面白く手よかったです。
乙。

348 :衣刀 ◆I179IHOA0g :2006/07/01(土) 21:20 ID:???
ありがとうございます、光栄です。m(__)m
暇ができたら、また書かせていただきますです。

349 :名無しさんちゃうねん :2006/07/02(日) 00:13 ID:i-m9hb2USY
>>344
ちよ好きの私にとっては、効きました。
百合なんだけど、百合ということをあまり感じさせず、シリアスに、尚且つ短くて、何度でも読み直せる…
今までの小説とはちょっと違った感じです。シリアスだけど効くってのは。ってか、保存しました。

350 :名無しさんちゃうねん :2006/07/02(日) 01:27 ID:???
どうでもいいけどさげようね。

351 :名無しさんちゃうねん :2006/07/02(日) 02:58 ID:???
新作投稿の直後は、ageてもいいと思うけど。

352 :名無しさんちゃうねん :2006/07/02(日) 03:01 ID:???
いや〜SSスレはsupersage進行がお約束でしょう
てかageられた方が書き手がやりにくいような気が

353 :名無しさんちゃうねん :2006/07/02(日) 03:13 ID:???
今まで色々あったからねえ

354 :名無しさんちゃうねん :2006/07/02(日) 08:28 ID:???
控え室はsageだけど、ここは別にageでもいい希ガス

355 :名無しさんちゃうねん :2006/07/03(月) 16:33 ID:???
しかし、今までにSSスレが上がったことによって息を吹き返した例も、あります。


では、このスレはageでもsageでもよくて、控室はsage進行っとのはどうでしょう?

356 :衣刀 ◆I179IHOA0g :2006/08/25(金) 23:28 ID:???
今回はギャグ。しかも一部パクリ・・出展は「せん○いのお時○」


ちよ「智ちゃん、すごい熱ですよ??お医者さんに注射してもらった方が・・」
智「痛いのイヤッ!私かよわいしー!こわいーー!!」
ちよ「智ちゃん?」
智「・・今度は何よ」
ちよ「そういえばそのピアスの穴、どうやってあけたの?」
智「 『ふとん針』 金ねーし」

357 :名無しさんちゃうねん :2006/10/31(火) 20:28 ID:???
ここはまったりしてていいねぇ

358 :USA :2006/11/15(水) 04:32 ID:???
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359 :USA :2006/11/16(木) 23:11 ID:???
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360 :USA :2006/11/19(日) 11:26 ID:???
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361 :USA :2006/11/21(火) 07:19 ID:???
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362 :(ひみちゅ) :2007/04/07(土) 13:39 ID:???
1.ムーンブルク炎上

はるか昔。伝説の勇者ロトの血をひく若者によって竜王はたおされ、世界は光をとりもどしました。
若者はその後ひとりの女性とともに旅に出ていくつかの新しい国を築いたのでした。
それらの国は若者の子供たちによって、代々治められたと伝えられています。
そして100年の月日が流れました……

ここはムーングルク。ローレシアよりはるか南西の国。
城の中庭では王さまと若き姫さまが 平和な語らいの時をすごしていました。

「あーれー」
「よいではないか、よいではないか」

……何してるんですか。

「よいではないかごっこ」

……そうですか。まあ確かに平和かもしれませんね。太平楽とも言いますが。
しかし。
突然、空気を切り裂くような爆音が響き渡り、城が大きく揺れました。
王様はすぐにまじめな顔に戻り、叫びます。
「こ これは……!一体何が起こった!? 誰か!誰かいないのかっ!」
すると、それに答えるように一人の兵士が中庭に飛び込んできました。
「おお、アイダか。一体どうしたんだ」
「大変でございます!大神官キムラの軍隊が我がムーンブルクのお城を!」
「なんだと!キムラの野郎……こうしちゃいられねえ!すぐに兵士供を集めろ!それから足の速い奴を選んで、各国に救援を求めに走らせろ!」
「はっ!ただちに!」
指令を受けた兵士はすぐに中庭を飛び出していきました。
それから王は姫を中庭の端に連れて行きました。
しかじかの操作をすると、地面が割れて階段が現れます。
「いいか、トモ。おまえはここに隠れていろ」
「って父さんはどうするんだよ」
「俺は兵士供と戦うさ。……なんだ、その顔は?俺の娘がしけた面してんじゃねー。例え俺の身に何が起こっても笑ってろ」
空を何かが横切ります。
「さあ早く行け!」
王は娘を地下室に突き飛ばすと、身構えました。
「おのれ怪物!地下室の娘は死んでも渡さないぜ!」
「ほう。王女は地下室にいるのか」
いつのまにか王の後ろに現れていたホークマンがにやりと笑いました。
「何あっさりばらしてんだよ!」
しかし姫の叫びは地上の王の耳には届きませんでした。
「ぎょえー!!」
「ぎょえー!!じゃねーよ!このバカおやじー!!!」

そんな寸劇を繰り広げながら炎上するムーンブルク城を、やっとの思いで背にした兵士は、先ほど不意打ちでつけられた肩の傷を押さえつつ北に向かって走り出しました。
「一刻も早くこのことをローレシアに知らせなくちゃっ!」

363 :(ひみちゅ) :2007/04/07(土) 13:40 ID:???
2.ローレシア

数日後。
兵士はようやくローレシアにたどり着きました。
気づいたローレシアの衛兵達が駆け寄ります。
「そのキズはなに!?」
「一体何があったの!?」
しかし、兵士は力を振り絞って言いました。
「キズの手当てなどかまわない!すぐに王様に会わせて!私にはお伝えしなくてはならぬことがあるの!」
「……わかった。マツダ!そっちを支えて!城のみんなに気づかれちゃったら大さわぎになる!静かに運ぶのよ!」
「OK!」

衛兵二人に肩を抱えられてようやくローレシア王の元までたどり着いた兵士は叫びました。
「ローレシアの王様!大神官キムラの軍団が我がムーンブルクの城を!大神官キムラは禍禍しい神を呼びだし世界を破滅させるつもりです!王様!なにとぞご対策を……!」
王は立ち上がり、言いました。
「あいわかった。すぐに援軍をさしむけよう」
それを聞いて安心したのか、兵士はそのまま倒れてしまいます。
「イノウエ、この勇敢な兵士を教会へ運んでやってくれ。それからマツダ。将軍をここへ」
その時です。
「ちょっと待てよ、親父」
そこに現れたのは王子と見まごう程にガサ……もとい凛々しいカグラ王女でした。
「軍なんか出す必要はない。昔うちのご先祖様は魔王を倒したんじゃないか。私だってご先祖様と同じく勇者ロトの血を引いているんだ。キムラくらい私が倒して来てやるぜ!」「おまえはご先祖様と違って呪文が使えないだろう」
「気持ちがあれば大丈夫さ!!それに、ご先祖様は一人だったけれど勇者ロトは仲間がいたじゃないか。私が呪文を使えなくても呪文を使える奴を仲間にすれば」
「仲間か……確かにサマルトリアの王女達は呪文を使えるそうだが」
「それだ!」
カグラは言うなり部屋を飛び出していきました。
「ちょっ……おい待て!イノウエ、マツダ、何をしている!早くあいつを捕まえろ!」
「ですが、この兵士は?」
「他の奴を呼ぶから!」
「将軍を呼びに行くのは?」
「それも別の奴に頼む!」
3人がそんな問答を繰り返しているうちに、カグラはまんまと城から抜け出してしまったのでした。

364 :名無しさんちゃうねん :2007/04/09(月) 00:06 ID:v/LNZRyQ
ageage

365 :名無しさんちゃうねん :2007/04/09(月) 18:48 ID:???
ドラゴンクエスト?しかも2?
やはりボンクラ3人組なのか?

366 :693 :2007/04/29(日) 00:44 ID:???
長谷川小説です、良かったら読んでやってください。
ttp://so.la/test/read.cgi/oosaka/1074518861/697-706

367 :名無しさんちゃうねん :2007/04/30(月) 10:34 ID:???
かゆいね(誉め言葉)

368 :RebfLoole :2021/05/05(水) 09:30 ID:???
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